以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「接続」、「固定」、「取り付け」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
(第1の実施の形態)図1を参照する。引込装置10は、スライド式開閉部材12に用いられる。開閉部材12は、外部部材14に開閉方向Daにスライド可能に支持される。本実施形態において、開閉部材12は建具の引き戸であり、外部部材14は建具のサッシである。開閉部材12は、開閉方向Daのスライドによって開閉可能である。開閉部材12は、可動範囲の一方側にある全閉じ位置と、可動範囲の他方側にある全開き位置との間を移動可能である。
引込装置10は、開閉部材12を引込方向Db1に引き込むことによって、開閉部材12を引込完了位置Paに保持可能である。本実施形態の引込完了位置Paは全閉じ位置である。引込方向Db1は、開閉部材12の開閉方向Daの一方側をいう。以下、開閉方向Daにおいて引込方向Db1とは反対方向を反引込方向Db2という。この他に、説明の便宜のため、図の向きに従って、引込方向Db1を左側、左向きともいい、反引込方向Db2を右側、右向きともいう。
図2を参照する。引込装置10は、引込装置10の他の構成要素を収容するケーシング16を備える。「他の構成要素」とは、後述する前段伝動経路20、変速機構22、後段伝動経路24等である。ケーシング16は、外部部材14に固定される。
(引込部材)引込装置10は、引込部材18を備える。本実施形態の引込部材18は引張コイルばね、つまり、弾性体である。引込部材18の一端部は、ケーシング16に設けられる固定部16aに固定され、その他端部は前段伝動経路20の入力部材42(後述する)に固定される。引込部材18は、開閉方向Daに弾性変形可能であり、その弾性変形に起因する弾性反発力を左向き(引込方向Db1)の付勢力として蓄積可能である。
(伝動経路)引込装置10は、引込部材18から付勢力が第1引込荷重Fa1として入力される前段伝動経路20と、前段伝動経路20に変速機構22を介して接続される後段伝動経路24とを備える。前段伝動経路20と後段伝動経路24は、引込部材18の付勢力を伝達可能な直列的な荷重伝達経路を構成する。
前段伝動経路20は、引込部材18が接続される第1索状部材26と、第1索状部材26が巻き回される第1巻胴28と、第1巻胴28と一体的に回転可能な第1シャフト30と、第1シャフト30と一体的に回転可能な大径歯車32とを備える。
後段伝動経路24は、大径歯車32と噛み合う小径歯車34と、小径歯車34と一体的に回転可能な第2シャフト36と、第2シャフト36と一体的に回転可能な第2巻胴38と、第2巻胴38に巻き回される第2索状部材40とを備える。
索状部材26、40は、ワイヤー、チェーン等の索状の物体である。第1索状部材26は、引込部材18の付勢力が引込部材18から直接に入力される入力部材42として機能する。引込部材18は、入力部材42に対して左側に配置される。シャフト30、36は、ケーシング16に軸受(不図示)を介して回転自在に支持される。引込部材18の付勢力は、第1索状部材26→第1巻胴28→第1シャフト30→大径歯車32→小径歯車34→第2シャフト36→第2巻胴38→第2索状部材40の順で伝達される。
前段伝動経路20は、開閉方向Daに沿って直動可能な前段直動部分44を備える。本実施形態の前段直動部分44は、第1巻胴28から繰り出される第1索状部材26の繰り出し部分である。後段伝動経路24は、開閉方向Daに沿って直動可能な後段直動部分46を備える。本実施形態の後段直動部分46は、第2巻胴38から繰り出される第2索状部材40の繰り出し部分である。
(変速機構)引込装置10は、変速機構22を備える。変速機構22は、前述の小径歯車34と大径歯車32によって構成される歯車機構である。変速機構22は、前段伝動経路20から入力される第1引込荷重Fa1を後段伝動経路24に出力する。このとき、変速機構22は、第1引込荷重Fa1よりも小さい第2引込荷重Fa2に変換し、第2引込荷重Fa2を後段伝動経路24に出力する。これにより、前段伝動経路20に作用する第1引込荷重Fa1と後段伝動経路24に作用する第2引込荷重Fa2とを変化させることができる。
図2、図10を参照する。変速機構22の変速比は、後段直動部分46の移動距離La2に対する前段直動部分44の移動距離La1の比として表すことができる。変速機構22の変速比は、第2引込荷重Fa2に対する第1引込荷重Fa1の比の逆比に比例した大きさとなり、La1:La2=(1/Fa1):(1/Fa2)として表すことができる。たとえば、変速機構22によって、第1引込荷重Fa1が45N、第2引込荷重Fa2が15Nに変換されるとき、La1:La2=1(=1/45):3(=1/15)となる。つまり、後段直動部分46の移動距離La2は、前段直動部分44の移動距離La1よりも大きくなる。大径歯車32の半径をra1、小径歯車34の半径をra2とする。変速比は、たとえば、歯車機構を用いる場合、歯車比の逆比に比例した大きさとなり、La1:La2=(1/ra1):(1/ra2)として表すことができる。
図2を参照する。以下、変速機構22を構成する回転要素48の回転軸線に沿った方向を高さ方向Dcという。ここでの回転要素48とは、本実施形態では小径歯車34及び大径歯車32である。開閉方向Da及び高さ方向Dcと直交する方向を幅方向Dd(不図示)という。
(経路切替機構)引込装置10は、前段伝動経路20及び後段伝動経路24から開閉部材12に引込荷重を伝達可能に接続する経路切替機構50を備える。経路切替機構50は、開閉部材12に固定される固定部材52と、固定部材52に対して開閉方向Daにスライド可能に取り付けられるスライダ54と、を備える。経路切替機構50は、固定部材52に対してスライダ54をロック可能なロック機構56と、スライダ54を付勢可能なスライダ付勢手段58と、を備える。経路切替機構50は、前段伝動経路20にスライダ54を接続する前段接続機構60と、後段伝動経路24に固定部材52を接続する後段接続機構62と、を備える。
(スライダ)固定部材52及びスライダ54は、開閉方向Daに沿って延びる長尺体である。スライダ54は、固定部材52に設けられる不図示のレールを介して、固定部材52に対してスライド可能である。前段伝動経路20は、前段接続機構60を介して、スライダ54の左側の端部に接続される。前段伝動経路20は、スライダ54を介して固定部材52に接続されることになる。後段伝動経路24は、後段接続機構62を介して、固定部材52の右側の端部に接続される。後段伝動経路24は、スライダ54を介さずに、固定部材52に接続されることになる。スライダ54は、可動範囲の右側にある末端位置を初期位置Pbとして、初期位置Pbから左向きの方向Deに固定部材52に対して相対移動可能である。
本実施形態のスライダ付勢手段58は、スライダ54とは別体に設けられる引張コイルばね、つまり、弾性体である。スライダ付勢手段58は、固定部材52に対して初期位置Pbから左向きの方向Deにスライダ54が移動したとき、右向きにスライダ54を付勢可能である。本実施形態のスライダ付勢手段58は、固定部材52とスライダ54を接続している。
(前段接続機構)前段接続機構60は、第1引込荷重Fa1を伝達可能に前段伝動経路20に連結される第1フック64と、スライダ54に固定される第1ピン66と、第1フック64を案内する第1案内溝68とを備える。本実施形態の第1フック64は、引込部材18と前段伝動経路20との接続箇所69に連結される。本実施形態の第1案内溝68はケーシング16に形成される。第1案内溝68は、開閉方向Daに直線状に延びる第1直線領域68aと、第1直線領域68aの右側端部に曲げ部を介して連なる第1端部領域68bとを備える。
第1フック64は、第1案内溝68に沿って摺動可能な一対の第1摺動突起70と、第1ピン66に右側から引っ掛け可能な第1引掛部72と、第1ピン66を左側から受けることができる受け部74とを備える。
第1摺動突起70は、右側に動いたとき、第1直線領域68a、第1端部領域68bの順で第1案内溝68を摺動する。第1直線領域68aは、第1フック64が開閉方向Daに直動するように、第1摺動突起70を案内する。第1端部領域68bは、左側の第1摺動突起70周りの方向Dfに第1フック64が回転するように、右側の第1摺動突起70を案内する(図3参照)。前段接続機構60は、第1フック64の開閉方向Daでの動きに連動して第1フック64を回転させることになる。
第1フック64は、回転することによって、引掛姿勢Pc1(図2参照)と引掛解除姿勢Pc2(図3参照)との間で姿勢を変更可能である。第1フック64が引掛姿勢Pc1にあるとき、第1ピン66に対して第1引掛部72が右側から引っ掛け可能となる。第1フック64が引掛解除姿勢Pc2にあるとき、第1ピン66に対する第1引掛部72の引っ掛けが解除される。このように、第1フック64は、引掛姿勢Pc1と引掛解除姿勢Pc2との間で姿勢を変更することで、第1ピン66に対する引っ掛けの有無を切り替え可能である。
第1フック64が引掛姿勢Pc1にあるとき、第1フック64及び第1ピン66を介して、前段伝動経路20からスライダ54に第1引込荷重Fa1を伝達可能となる。このとき、前段接続機構60は、第1引込荷重Fa1を伝達可能に前段伝動経路20にスライダ54を接続することになる。
第1フック64が引掛解除姿勢Pc2にあるとき、前段伝動経路20による拘束を受けることなく、スライダ54が動くことができる。このとき、前段接続機構60は、前段伝動経路20に対するスライダ54の接続を解除することになる。
(後段接続機構)後段接続機構62は、第2引込荷重Fa2を伝達可能に後段伝動経路24に連結される第2フック76と、固定部材52に固定される第2ピン78と、第2フック76を案内する第2案内溝80とを備える。本実施形態の第2案内溝80はケーシング16に形成される。第2案内溝80は、開閉方向Daに直線状に延びる第2直線領域80aと、第2直線領域80aの右側端部に曲げ部を介して連なる第2端部領域80bとを備える。
第2フック76は、第2案内溝80に沿って摺動可能な一対の第2摺動突起82と、第2ピン78に右側から引っ掛け可能な第2引掛部84とを備える。第2フック76は、第1フック64とは異なり、第2ピン78を左側から受ける受け部を備えていない。第2端部領域80bは、第1端部領域68bと同様、左側の第2摺動突起82周りの方向Dgに第2フック76が回転するように、右側の第2摺動突起82を案内する(図4参照)。後段接続機構62は、前段接続機構60と同様、第2フック76の開閉方向Daでの動きに連動して第2フック76を回転させることができる。
第2フック76は、第1フック64と同様、回転することによって、引掛姿勢Pc1(図2参照)と引掛解除姿勢Pc2(図4参照)との間で姿勢を変更可能である。第2フック76は、第1フック64と同様、引掛姿勢Pc1と引掛解除姿勢Pc2との間で姿勢を変更することで、第2ピン78に対する引っ掛けの有無を切り替え可能である。
第2フック76が引掛姿勢Pc1にあるとき、第2フック76及び第2ピン78を介して、後段伝動経路24から固定部材52に第2引込荷重Fa2を伝達可能となる。このとき、後段接続機構62は、後段伝動経路24から固定部材52に第2引込荷重Fa2を伝達可能に後段伝動経路24に固定部材52を接続することになる。
第2フック76が引掛解除姿勢Pc2にあるとき、後段伝動経路24による拘束を受けることなく、固定部材52が動くことができる。このとき、後段接続機構62は、後段伝動経路24に対する固定部材52の接続を解除することになる。
(ロック機構)図5を参照する。本図は、図2の下側からロック機構56を見た図でもある。本実施形態のロック機構56はハートカム機構86を備える。ハートカム機構86そのものは公知のため、ここでは説明を簡易にとどめる。
ハートカム機構86は、ハートカム部88と、ハートカム部88の周りに形成されるカム溝90と、ハートカム部88に対して進退方向Dhに相対移動可能なフォロアピン92を備える。ここでの進退方向Dhとは開閉方向Daに沿った方向である。進退方向Dhのうちの一方を進み方向Dh1といい、そのうちの他方を退き方向Dh2という。本実施形態では進み方向Dh1は左向きであり、退き方向Dh2は右向きである。
ハートカム部88は、スライダ54及び固定部材52のうちの一方部材94(本実施形態ではスライダ54)に設けられる。フォロアピン92は、スライダ54及び固定部材52のうちの他方部材96(本実施形態では固定部材52)ととともに進退方向Dhに移動可能に設けられる。フォロアピン92の一端部92aは、ハートカム部88に対するフォロアピン92の進退方向Dhでの相対移動に追従してカム溝90に沿って摺動可能である。
図6A~図6Eを参照する。図6A→図6B→図6C→図6D→図6Eの順でロック機構56の状態が遷移する。
スライダ54は、固定部材52に対する相対位置を、切替位置Pd1(図6B、図6D参照)、ロック位置Pd2(図6A、図6E参照)及びロック解除位置Pd3(図6C参照)の中から切り替え可能である。切替位置Pd1は、ロック位置Pd2よりも右側に位置し、ロック解除位置Pd3は、ロック位置Pd2よりも左側に位置する。
図6Aに示すように、スライダ54がロック位置Pd2にあるとき、フォロアピン92は、ハートカム部88により退き方向Dh2でのハートカム部88に対する相対移動が拘束される拘束位置Pe1に配置される。これにより、ロック機構56は、固定部材52に対するスライダ54の左向きの動きをロックするロック状態となる。このように、ロック状態とは、スライダ54の左向き(引込方向Db1)の動きを少なくともロックする状態をいう。スライダ54は、コイルスプリング等のロック付勢手段(不図示)から左向きの付勢力Fcが付与されることで、ロック位置Pd2に保持される。
図6A~図6Cに示すように、スライダ54は、ロック位置Pd2にあるとき、右向きの力Fbを入力することで、ロック付勢部材の左向きの付勢力Fcに抗して、切替位置Pd1まで右向きに動かすことができる。このとき、スライダ54の左向きの動きは、ロック機構56ではなく、スライダ54に入力される右向きの力Fbによって拘束される。このとき、ロック機構56そのものは、スライダ54の左向きの動きのロックを解除するアンロック状態にある。スライダ54に対する力Fbの入力を解除すると、ロック付勢部材の付勢力Fcによって、スライダ54は、切替位置Pd1からロック解除位置Pd3まで左向きに動かされる。この過程において、フォロアピン92は、拘束位置Pe1→第1限界位置Pe2→拘束解除位置Pe3の順で動くように、カム溝90によってガイドされる。
図6Cに示すように、スライダ54がロック解除位置Pd3にあるとき、フォロアピン92は、ハートカム部88によるフォロアピン92の拘束が解除される拘束解除位置Pe3に配置される。これにより、ロック機構56は、スライダ54の左向きの動きのロックを解除するアンロック状態になる。このとき、スライダ54は、ロック付勢部材による付勢力を受けることなく、固定部材52に対して開閉方向Daに自由に動かせるようになる。
図6C~図6Eに示すように、スライダ54は、ロック解除位置Pd3にあるとき、右向きの力Fbを入力することで、ロック付勢部材の左向きの付勢力Fcに抗して、切替位置Pd1まで右向きに動かすことができる。スライダ54に対する力Fbの入力を解除すると、ロック付勢部材の付勢力Fcによって、スライダ54は、切替位置Pd1からロック位置Pd2まで左向きに動かされる。この過程において、フォロアピン92は、拘束解除位置Pe3→第2限界位置Pe4→拘束位置Pe1の順で動くように、カム溝90によってガイドされる。このように、スライダ54は、右向きの力Fbが入力されることで切替位置Pd1まで動く毎に、ロック機構56によって、ロック位置Pd2とロック解除位置Pd3の間で静止位置を切り替え可能である。
図8、図12を参照する。経路切替機構50は、前段伝動経路20及び後段伝動経路24から開閉部材12に荷重が伝達される経路を、複数の荷重伝達経路98、100の中から選択的に切り替え可能である。複数の荷重伝達経路98、100は、引込動作時に用いられる引込動作用経路98(図12参照)と、開閉操作時に用いられる開閉操作用経路100(図8参照)とを含む。
図12を参照する。引込動作用経路98は、ロック機構56がロック状態になるときに形成される。引込動作用経路98は、前段伝動経路20から、前段接続機構60、スライダ54及びロック機構56を経由して、固定部材52に至る。引込動作用経路98は、後段接続機構62を経由しない。引込動作用経路98は、前段伝動経路20から開閉部材12に第1引込荷重Fa1を実引込荷重として伝達可能である。
図8を参照する。開閉操作用経路100は、ロック機構56がアンロック状態になるときに形成される。開閉操作用経路100は、後段伝動経路24から、後段接続機構62を経由して、固定部材52に至る。開閉操作用経路100は、前段接続機構60、スライダ54及びロック機構56を経由しない。開閉操作用経路100は、後段伝動経路24から開閉部材12に第2引込荷重Fa2を実引込荷重として伝達可能である。
以上の引込装置10の動作を説明する。まず、開閉操作時の動作を説明する。図7~図10を参照する。図7→図8→図9→図10の順で引込装置10の状態が遷移する。
図7を参照する。開閉操作の開始時には開閉部材12は引込完了位置Paに配置される。スライダ54は、ロック位置Pd2から、初期位置Pbとしての切替位置Pd1(図6B参照)に動いた状態で保持される。つまり、ロック機構56は、アンロック状態になる。第1フック64及び第2フック76は引掛姿勢Pc1になる。つまり、前段接続機構60は、前段伝動経路20に対してスライダ54を接続した状態となり、後段接続機構62は、後段伝動経路24に対して固定部材52を接続した状態となる。これにより、経路切替機構50は、開閉操作の開始時に、開閉操作用経路100に切り替えた状態となる。
引込完了位置Paから開閉部材12を右向きに動かそうとすると、後段伝動経路24から開閉操作用経路100を介して左向きの第2引込荷重Fa2が実引込荷重として開閉部材12に伝達される。開閉部材12に第2引込荷重Fa2を超える右向きの初動操作荷重Fdを入力することで、第2引込荷重Fa2に抗して開閉部材12を右向きに動かすことができる。
本実施形態のスライダ付勢手段58は、固定部材52とスライダ54を接続している。よって、開閉部材12に右向きの初動操作荷重Fdを入力しようとすると、スライダ付勢手段58が弾性変形することで、スライダ付勢手段58の左向きの付勢力Fe1が開閉部材12に作用する。このため、本実施形態では、開閉部材12を右向きに動かすため、スライダ付勢手段58の付勢力Fe1と第2引込荷重Fa2との合力を超える初動操作荷重Fdを開閉部材12に入力すればよい。
スライダ付勢手段58の付勢力Fe1と第2引込荷重Fa2の合力が第1引込荷重Fa1を超えてしまうと、前段伝動経路20から開閉部材12に第1引込荷重Fa1が伝達されてしまう。つまり、経路切替機構50において開閉操作用経路100が形成されなくなってしまう。これを避けるため、スライダ付勢手段58のばね定数k2は、開閉部材12を右向きに動かすときに、第1引込荷重Fa1と第2引込荷重Fa2の差分よりも小さい付勢力を生じさせる大きさに設定されると好ましい。また、初動操作荷重Fdを軽くするうえで、スライダ付勢手段58の付勢力は、引込部材18の付勢力と比較して十分に小さくすることが好ましい。この観点から、スライダ付勢手段58のばね定数k2は、例えば、引込部材18のばね定数k1の0.1倍以下であると好ましい。
図8を参照する。ロック機構56がアンロック状態にあるため、固定部材52の動きにスライダ54が拘束されない。よって、開閉部材12を固定部材52とともに右向きに動かすと、固定部材52に対してスライダ54が相対的に左向きに動く。これにより、スライダ54は、初期位置Pb(切替位置Pd1)からロック解除位置Pd3(図6C参照))に動くことになる。
開閉部材12を第2ピン78とともに右向きに動かすと、第2ピン78によって、後段伝動経路24の後段直動部分46とともに第2フック76が右側に動かされる。これと同時に、前段伝動経路20の前段直動部分44が第1フック64とともに右向きに動かされる。スライダ54は、第1フック64の第1引掛部72に第1ピン66が当たるまで、スライダ付勢手段58の付勢力によって右向きに動かされる。スライダ54は、固定部材52に対して相対的に左向きに動きつつ、絶対的に右向きに動くことになる。
図9を参照する。開閉部材12を引込解除位置Pfまで右向きに動かすと、この動きに連動して第2フック76が右側に動くことで、第2フック76が引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に姿勢を変更する。これと同時に、第1フック64は、開閉部材12に連動して右側に動くことで、引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に姿勢を変更する。この結果、各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除される。これにより、引込装置10による引き込みが解除され、開閉部材12を自由に動かせるようになる。
図10を参照する。各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除されると、スライダ付勢手段58の付勢力によって、固定部材52に対して初期位置Pb側(右向き)にスライダ54が動かされる。スライダ54は、スライダ付勢手段58の付勢力によって、ロック解除位置Pd3から切替位置Pd1まで右向きに動かされる(図6Dも参照)。この後、スライダ54は、ロック付勢部材の付勢力Fcによって、切替位置Pd1からロック位置Pd2まで左向きに動かされる(図6Eも参照)。以上の一連の動きによって、ロック機構56はアンロック状態からロック状態に切り替えられる。
図3、図4、図10を参照する。各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除されるときを考える。このとき、第1案内溝68の第1端部領域68bに対して右側の第1摺動突起70が引っ掛かることによって、引込部材18の付勢力(第1引込荷重Fa1)に抗して第1フック64の位置が保持される。ひいては、引込部材18の付勢力に抗して前段伝動経路20及び後段伝動経路24の位置も保持され、後段伝動経路24に連結される第2フック76の位置も保持される。
次に、引込動作時の動作を説明する。図11~図13を参照する。図11→図12→図13の順で引込装置10の状態が遷移する。
引込動作の開始時には、前述の通り、スライダ54は、ロック位置Pd2に配置される。ロック機構56はロック状態になる。第1フック64及び第2フック76は引掛解除姿勢Pc2になる。つまり、前段接続機構60は、前段伝動経路20に対するスライダ54の接続を解除した状態となり、後段接続機構62は、後段伝動経路24に対する固定部材52の接続を解除した状態となる。
開閉部材12を引込開始位置Pgまで左向きに動かすと引込装置10による引込動作が開始される。この引込開始位置Pgは、引込解除位置Pf(図9参照)よりも左側に位置する。引込装置10による引き込みが解除された状態にある開閉部材12を引込開始位置Pgまで動かす過程で、第2ピン78は、第2フック76に当たることなく、開閉部材12とともに左向きに動く。
開閉部材12を引込開始位置Pgまで動かすと、開閉部材12とともに左向きに動く第1ピン66が、引掛解除姿勢Pc2にある第1フック64の受け部74によって受けられる。図12に示すように、この状態で、第1ピン66を開閉部材12とともに左向きに動かすことで、第1フック64は、左向きの動きを伴い、第1案内溝68によって、引掛解除姿勢Pc2から引掛姿勢Pc1に姿勢を変更する。これと同時に、前段伝動経路20の前段直動部分44、後段伝動経路24の後段直動部分46及び第2フック76が左向きに動かされる。これにより、第2フック76は、第2案内溝80によって、引掛解除姿勢Pc2から引掛姿勢Pc1に姿勢を変更する。
第1フック64が引掛姿勢Pc1に姿勢を変更することにより、前段伝動経路20に対して経路切替機構50が接続される。これにより、前段伝動経路20の第1引込荷重Fa1によって、前段伝動経路20の前段直動部分44とともに第1フック64を左向きに動かすことができるようになる。つまり、経路切替機構50は、引込動作用経路98に切り替えられる。これにより、引込動作用経路98を介して、前段伝動経路20から開閉部材12に第1引込荷重Fa1を伝達できる。
図13に示すように、この第1引込荷重Fa1によって、開閉部材12は、引込完了位置Paまで左向きに動かされる。ロック機構56は、引込完了位置Paまで開閉部材12を左向きに動かしたときに、ロック位置Pd2にあるスライダ54を右向きに弾性的に押圧する押圧部材102を備える。引込完了位置Paまで開閉部材12を動かしたとき、押圧部材102の弾性変形を伴いスライダ54がロック位置Pd2から切替位置Pd1(初期位置Pb)まで右向きに押圧される。これにより、ロック機構56がロック状態からアンロック状態に切り替わる。
以上のように、第1フック64は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して、第1ピン66に対する引っ掛けの有無を切り替え可能である。前段接続機構60は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して、前段伝動経路20に対するスライダ54の接続の有無を切り替え可能であるともいえる。この他に、第2フック76は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して、第2ピン78に対する引っ掛けの有無を切り替え可能である。後段接続機構62は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して、後段伝動経路24に対する固定部材52の接続の有無を切り替え可能であるともいえる。
以上の引込装置10の効果を説明する。
(A)引込装置10は、引込動作用経路98(図12参照)と開閉操作用経路100(図7参照)を切り替え可能な経路切替機構50を備える。これにより、引込動作時には、引込動作用経路98に切り替えることで、第1引込荷重Fa1を実引込荷重として開閉部材12に伝達できる。開閉操作時には、開閉操作用経路100に切り替えることで、第1引込荷重Fa1よりも小さい第2引込荷重Fa2を実引込荷重として開閉部材12に伝達できる。このとき、第2引込荷重Fa2を超える初動操作荷重Fdを開閉部材12に付与すれば、開閉部材12の開閉操作を開始できる。つまり、引込動作時に開閉部材12に付与される実引込荷重(第1引込荷重Fa1)を大きくしつつ、開閉操作時に開閉部材12に付与すべき初動操作荷重Fdを軽くできる。
引込部材18(図7参照)の付勢力は、引込部材18の弾性変形量に比例する大きさとなる。よって、初動操作荷重Fdは、開閉部材12の右向きの移動量が大きくなるに連れて増大する。本実施形態では、開閉部材12を引込解除位置Pfまで動かしたときに初動操作荷重Fdがピーク荷重となる。この初動操作荷重のピーク荷重を軽くできる点で有効となる。
前段伝動経路20と後段伝動経路24とは変速機構22を介して接続される。よって、前段伝動経路20の前段直動部分44と後段伝動経路24の後段直動部分46とは、開閉方向Daでの移動距離が異なっている。このため、前段伝動経路20に対する経路切替機構50の接続位置と、後段伝動経路24に対する経路切替機構50の接続位置との移動距離を同じにしてしまうと、次の問題が生じる。この問題とは、開閉操作時に、前段伝動経路20に対する経路切替機構50の接続位置を介して、前段伝動経路20から第1引込荷重Fa1が実引込荷重として開閉部材12に伝達されることである。
(B)この点、本実施形態によれば、開閉操作用経路100に切り替えたとき、ロック機構56がアンロック状態になるため、開閉部材12の右向きの動きをスライダ54によって拘束させずに済む。よって、引込完了位置Paから右向きに開閉部材12を動かすとき、前段伝動経路20に対する経路切替機構50の接続位置を介して、前段伝動経路20から第1引込荷重が開閉部材12に伝達される事態を避けることができる。
この他に、本実施形態によれば、引込動作用経路98に切り替えたとき、ロック機構56がロック状態になるため、スライダ54の左向きの動きを開閉部材12によって拘束させることができる。よって、前段伝動経路20に対する経路切替機構50の接続位置を介して、前段伝動経路20から第1引込荷重Fa1を開閉部材12に伝達できる。
(C)引込装置10は、開閉部材12の開閉方向での動きに連動して接続の有無を切り替え可能な前段接続機構60及び後段接続機構62を備える。よって、開閉部材12が右側に動いたときは開閉部材12及びスライダ54の各伝動経路20、24に対する接続を解除することで、引込装置10に対して開閉部材12を自由に動かせるようになる。
(D)前段接続機構60は、第1フック64と第1ピン66を用いて構成される。よって、簡易な構成によって、前段接続機構60を実現できる。
(E)後段接続機構62は、第2フック76と第2ピン78を用いて構成される。よって、簡易な構成によって、後段接続機構62を実現できる。
(F)本実施形態の第2フック76は第2ピン78を左側から受ける受け部を備えていない。よって、引込動作時に、第1フック64の受け部74に第1ピン66が当たるよりも先に、第2フック76に第2ピン78が当たる事態を避けることができる。ひいては、後段接続機構62の索状部材40の弛みを抑えることができ、その弛みに起因する不具合の発生を防止できる。ここでの不具合とは、例えば、索状部材40が周辺構造物に絡まることである。
(G)ロック機構56は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して、ロック状態とアンロック状態を切り替え可能である。よって、開閉部材12を開閉方向Daに動かすだけで、無電源でロック状態とアンロック状態を切り替えることができる。
第1実施形態の引込装置10の他の特徴を説明する。図2を参照する。第2索状部材40は、第2索状部材40を縮み方向に付勢する縮み付勢部104を備える。本実施形態の縮み付勢部104は第2索状部材40全体に設けられる。これは、例えば、伸縮性を持つケーブルによって第2索状部材40を構成することで実現される。縮み付勢部104は、開閉部材12が引込完了位置Paにあるときに弾性的に伸び変形した状態となる。これにより、縮み付勢部104は、弾性変形に起因する弾性反発力によって、第2索状部材40を縮み方向に付勢する。第2索状部材40は縮み付勢部104によって張力が付与された状態となる。
(H)第1フック64が引掛解除姿勢Pc2にあるとき、引込部材18の付勢力に抗して第1フック64の位置が保持される。このとき、後段伝動経路24には引込部材18の付勢力が伝達されないため、第2索状部材40に弛みが生じ得る。この場合でも、本実施形態によれば、縮み付勢部104によって第2索状部材40に張力を付与した状態を維持でき、第2索状部材40の弛みを抑制できる。
図14A、図14Bを参照する。第1ピン66に対する第1フック64の引掛箇所を第1引掛箇所Lb1とする。第2ピン78に対する第2フック76の引掛箇所を第2引掛箇所Lb2とする。このとき、第1引掛箇所Lb1と第2引掛箇所Lb2とは、開閉部材12の開閉方向Daと平行な直線Lb上に設けられる。この条件は、高さ方向Dcから見たとき(図14Bの視点から見たとき)に満たされ、かつ、幅方向Ddから見たとき(図14Aの視点から見たとき)に満たされる。ここでの「平行」は、字句通りに開閉方向Daと平行な場合の他に、開閉方向Daに対してほぼ平行な場合との両方を含む。
(I)第1引掛箇所Lb1には引込動作時に大荷重(第1引込荷重)が付与され、第2引掛箇所Lb2には開閉操作時に大荷重(初動操作荷重)が付与される。このような大荷重の入力箇所を直線上Lbに配置することによって、引込装置10の可動要素(フック64、76等)を開閉方向Daに沿って真っ直ぐに動かし易くなる。よって、引込装置10の可動要素が姿勢の変化を伴いつつ動く場合と比べ、他要素に対する可動要素の摩擦を抑えられる。ひいては、摩擦に起因する実引込荷重の損失の他に、初動操作荷重の増大を避けられる。
(J)図3、図15を参照する。前述の通り、第1フック64は、第1フック64の右側への動きに連動して回転することによって、引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に姿勢を変更可能である。前段接続機構60は、前段伝動経路20の前段直動部分44に対して第1フック64を回転可能に接続する接続軸106と、接続軸106に支持される回転付勢部材108とを備える。回転付勢部材108は、例えば、ねじりバネである。ねじりバネは、弾性的なねじれ変形に起因する弾性反発力を第1フック64及び前段直動部分44のそれぞれに付与する。これにより、回転付勢部材108は、引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に向かう回転方向に第1フック64を付勢する。これにより、回転付勢部材108の付勢力によって、第1引込荷重Fa1に抗して、第1フック64を引掛解除姿勢Pc2に安定的に維持できる。
(第2実施形態)図2を参照する。第1実施形態において、第1案内溝68の第1直線領域68a及び第2案内溝80の第2直線領域80aは、幅方向Ddから見て、開閉方向Daに沿った直線Lc上に配置された。図16を参照する。本実施形態の第1案内溝68の第1直線領域68a及び第2案内溝80の第2直線領域80aは、幅方向Ddから見て、開閉方向Daに沿った異なる直線Ld1、Ld2上に配置される。このように、各案内溝68、80の位置関係は特に限定されない。
(第3実施形態)図17、図18を参照する。本実施形態の引込装置10は、第1実施形態と比べて、前段伝動経路20、後段伝動経路24及び変速機構22の点で異なる。本図では、ケーシング16、接続機構60、62の案内溝68、80を省略する。
本実施形態の前段伝動経路20は、引込部材18が接続されるラック120を備える。ラック120は、引込部材18の付勢力が引込部材18から直接に入力される入力部材42として機能する。本実施形態の後段伝動経路24は、ラック120と噛み合うピニオン122と、ピニオン122と一体的に回転可能な一対の第3巻胴124とを備える。後段伝動経路24は、一対の第3巻胴124に巻き回される個別の第3索状部材126と、個別の第3索状部材126が固定される可動部材128と、可動部材128に固定される第4索状部材130とを備える。引込部材18の付勢力は、ラック120→ピニオン122→第3巻胴124→第3索状部材126→可動部材128→第4索状部材130の順で伝達される。
引込装置10は、第3巻胴124から送り出される第3索状部材126を巻き掛けるプーリ132を備える。プーリ132は、可動部材128に対する第3索状部材126の巻き掛け位置を高さ方向Dcに合わせるために用いられる。
本実施形態の前段伝動経路20の前段直動部分44は、ラック120である。本実施形態の後段伝動経路24の後段直動部分46は、第3巻胴124から繰り出される第3索状部材126の繰り出し部分、可動部材128及び第4索状部材130である。
本実施形態の変速機構22は、ケーシング16に回転可能に支持される輪軸134である。輪軸134は、ピニオン122が設けられる小径部134aと、第3巻胴124が設けられる大径部134bとを備える。小径部134aと大径部134bは共通の回転軸線Le周りに回転可能である。変速機構22の変速比は、輪軸を用いる場合、大径部134bの半径rb2に対する小径部134aの半径rb1の比に比例した大きさとなり、La1:La2=rb1:rb2として表すことができる。変速機構22の変速比は、第1実施形態と同様、La1:La2=(1/Fa1):(1/Fa2)として表すことができる。
以上の引込装置10の動作を説明する。まず、開閉操作時の動作を説明する。図19~図22を参照する。図19→図20→図21→図22の順で引込装置10の状態が遷移する。
図19を参照する。開閉操作時の動作は、第1実施形態と同様である。開閉部材12は引込完了位置Paに配置される。スライダ54は、初期位置Pbとしての切替位置Pd1(図6B参照)に動いた状態で保持される。つまり、ロック機構56は、アンロック状態になる。第1フック64及び第2フック76は引掛姿勢Pc1になる。これにより、経路切替機構50は、開閉操作の開始時に、開閉操作用経路100に切り替えた状態となる。
図20を参照する。引込完了位置Paにある開閉部材12に第2引込荷重Fa2を超える右向きの初動操作荷重を入力することで、第2引込荷重Fa2に抗して開閉部材12を右向きに動かすことができる。開閉部材12を右向きに動かすと、第2ピン78、第2フック76、後段伝動経路24の後段直動部分46、前段伝動経路20の前段直動部分44、第1フック64が右向きに動かされる。これに連動して、スライダ54は、固定部材52に対して相対的に左向きに動きつつ、絶対的に右向きに動かされる。これにより、スライダ54は、初期位置Pb(切替位置Pd1)からロック解除位置Pd3に動くことになる。
図21を参照する。開閉部材12を引込解除位置Pfまで右向きに動かすと、この動きに連動して第2フック76及び第1フック64が引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に姿勢を変更する。この結果、各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除される。これにより、図22に示すように、スライダ付勢手段58の付勢力によって右向きに動くことで、スライダ54は、ロック解除位置Pd3から切替位置Pd1を経由してロック位置Pd2まで動かされる。これにより、ロック機構56は、アンロック状態からロック状態に切り替えられる。
次に、引込動作時の動作を説明する。図23~図25を参照する。図23→図24→図25の順で引込装置10の状態が遷移する。
図23を参照する。引込動作時の動作は、第1実施形態と同様である。引込動作の開始時には、第1実施形態と同様、スライダ54はロック位置Pd2に配置される。ロック機構56はロック状態になる。第1フック64及び第2フック76は引掛解除姿勢Pc2になる。
開閉部材12を引込開始位置Pgまで左向きに動かすと、引込装置10による引込動作が開始される。図24を参照する。開閉部材12を引込開始位置Pgまで動かすと、第1フック64は、引掛解除姿勢Pc2から引掛姿勢Pc1に姿勢を変更する。これにより、経路切替機構50は引込動作用経路98に切り替えられる。この結果、引込動作用経路98を介して、前段伝動経路20から開閉部材12に第1引込荷重Fa1を伝達できる。
図25に示すように、この第1引込荷重Fa1によって、開閉部材12は、引込完了位置Paまで左向きに動かされる。引込完了位置Paまで開閉部材12を動かしたとき、押圧部材102によって右向きにスライダ54が押圧されることで、スライダ54がロック位置Pd2から切替位置Pd1(初期位置Pb)まで右向きに押圧される。これにより、ロック機構56がロック状態からアンロック状態に切り替わる。
本実施形態の引込装置10も、前述した(A)~(J)で説明した構成要素(図示せず)を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。
(第4実施形態)図26、図27を参照する。本実施形態の引込装置10は、第3実施形態と比べて、引込部材18の点で異なる。本実施形態の引込部材18は圧縮コイルばねである。引込部材18は、前段伝動経路20の入力部材42(ラック120)に対して右側に配置される。引込部材18は、高さ方向Dcから見て、後段伝動経路24の一部(例えば、可動部材128)と重なる位置に配置される。これにより、入力部材42に対して左側に引込部材18を配置する場合と比べ、引込装置10の開閉方向Daでの寸法の小型化を企図できる。このように、入力部材42に対する引込部材18の配置位置は、特に限定されない。
(第5実施形態)図28を参照する。本実施形態の引込装置10は、第1実施形態と比べて、ロック機構56、スライダ付勢手段58の点で異なる。
図29A~図29Eを参照する。図29A→図29B→図29C→図29D→図29Eの順でロック機構56の状態が遷移する。
ロック機構56は、ノック機構150を備える。ノック機構150は、押込荷重Fgが入力されるノック部材152と、ノック部材152を押込方向Djに沿った方向に移動自在に支持する外筒部材154とを備える。ノック部材152は、外筒部材154に対する相対位置を、切替位置Pj1(図29B、図29D参照)、押込位置Pj2(図29A、図29E参照)及び押込解除位置Pj3(図29C参照)の中から切り替え可能である。切替位置Pj1は、押込位置Pj2よりも押込方向Djに位置し、押込解除位置Pj3は、押込位置Pj2よりも反押込方向Dkに位置する。ノック部材152は、押込解除位置Pj3にあるとき、押込位置Pj2にあるときよりも、外筒部材154からの反押込方向Dkでの突出量が大きくなる。
ノック部材152は、コイルスプリング等の押込付勢手段(不図示)の付勢力Fhに抗して押し込み可能である。図29A~図29Cに示すように、押込位置Pj2にあるノック部材152に押込荷重Fgを入力してから解除すると、ノック機構150は、押込位置Pj2→切替位置Pj1→押込解除位置Pj3の順でノック部材152を動かすことができる。図29C~図29Eに示すように、押込解除位置Pj3にあるノック部材152に押込荷重Fgを入力してから解除すると、ノック機構150は、押込解除位置Pj3→切替位置Pj1→押込位置Pj2の順でノック部材152を動かすことができる。つまり、ノック部材152は、切替位置Pj1まで押し込む毎に、ノック機構150によって、押込解除位置Pj3と押込位置Pj2の間で静止位置を切り替え可能である。これは、ノック機構150の回転子、カム機構、押込付勢手段(何れも不図示)を用いることによって実現できる。ここまでのノック機構150の構成は公知のため、ここでは説明を簡易にとどめる。
図28に戻る。固定部材52は、外筒部材154が取り付けられる取付孔156を備える。ノック機構150は、ノック部材152と一体的に押込方向Djに沿った方向に移動可能なロックピン158を備える。スライダ54は、ロックピン158を差し込むためのロック孔160を備える。
ロック機構56は、ノック部材152の開閉方向Daでの動きに連動してノック部材152を押し込み可能な複数の押込部162A、162Bを備える。複数の押込部162A、162Bは、開閉方向Daに間隔を空けてケーシング16に設けられ、ケーシング16から固定部材52側に突出している。複数の押込部162A、162Bは、開閉部材12が引込完了位置Paにあるときにノック部材152を押し込み可能な第1押込部162Aと、第1押込部162Aよりも右側に設けられる第2押込部162Bとを備える。第2押込部162Bは、弾性変形可能な弾性体である。
図37を参照する。ノック部材152が押込位置Pj2にあるとき、ロックピン158はロック孔160に差し込まれる。このとき、固定部材52に対するスライダ54の開閉方向Daでの動きがロックピン158によってロックされる。つまり、ノック部材152が押込位置Pj2にあるとき、ロック機構56はロック状態となる。
図31を参照する。ノック部材152が押込解除位置Pj3にあるとき、ロックピン158はロック孔160から抜け出た状態となる。このとき、固定部材52に対するスライダ54の開閉方向Daでのロックピン158によるロックが解除される。つまり、ノック部材152が押込解除位置Pj3にあるとき、ロック機構56はアンロック状態となる。
図32を参照する。押込解除位置Pj3にあるノック部材152は、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重ならない位置にあるとき、押込部162A、162Bによって、切替位置Pj1まで押し込み不能となる。これは、ノック部材152を押し込んだとしても、スライダ54にロックピン158が当たるためである。図36を参照する。これに対して、押込解除位置Pj3にあるノック部材152は、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重なる位置にあるとき、押込部162A、162Bによって、切替位置Pj1まで押し込み可能である。
図28に戻る。本実施形態のロック機構56は、スライダ54の右向きの動きを規制することによって、固定部材52に対するスライダ54の相対位置を初期位置Pbに保持するストッパ164を備える。
スライダ付勢手段58は、スライダ54そのものの自重によって構成される。スライダ54の自重によって、スライダ54を右向きに移動させるため、スライダ54及び固定部材52は次の条件を満たす。詳しくは、スライダ54は、固定部材52に接触するとともに固定部材52に支持される接触面54aを備える。スライダ54の接触面54aは、右側に向かって下向きに延びるように水平面に対して傾斜している。これにより、スライダ54の自重の一部をスライダ54を右向きに移動させる荷重として作用させることができ、スライダ54を右向きに移動させることができる。
以上の引込装置10の動作を説明する。まず、開閉操作時の動作を説明する。図30~図35を参照する。図30→図31→図32→図33→図34→図35の順で引込装置10の状態が遷移する。
図30を参照する。引込動作の開始時には開閉部材12は引込完了位置Paに配置される。スライダ54は初期位置Pbに配置される。ノック部材152は、第1押込部162Aによって、押込位置Pj2から切替位置Pj1(図29B参照)まで押し込まれた状態で保持される。つまり、ロック機構56はロック状態となる。第1フック64及び第2フック76は、引掛姿勢Pc1にある。
図31を参照する。引込完了位置Paにある開閉部材12を僅かに右向きに動かすと、第1押込部162Aによるノック部材152の押し込みが解除される。これにより、ノック部材152は、切替位置Pj1から押込解除位置Pj3(図29C参照)まで戻される。ひいては、ロック機構56はアンロック状態になる。経路切替機構50は、開閉操作の開始直後に、開閉操作用経路100に切り替えた状態となる。これにより、第1実施形態と同様、開閉部材12に第2引込荷重Fa2を超える右向きの初動操作荷重Fdを入力することで、第2引込荷重Fa2に抗して開閉部材12を右向きに動かすことができる。
この状態で開閉部材12を右向きに動かすと、第1実施形態と同様、第2ピン78、第2フック76、後段伝動経路24の後段直動部分46、前段伝動経路20の前段直動部分44、第1フック64が右向きに動かされる。スライダ54は、第1実施形態と同様、固定部材52に対して相対的に左向きに動きつつ、絶対的に右向きに動く。この結果、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重ならない位置に配置される。
図32を参照する。開閉部材12を引込完了位置Paから引込解除位置Pfまで右向きに動かす途中に、押込解除位置Pj3にあるノック部材152は、第2押込部162Bによって押込方向Djに押し込まれる。このとき、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重ならない位置に配置されるため、押込解除位置Pj3にあるノック部材152は、切替位置Pj1(図29D参照)まで押し込み不能となる。第2押込部162Bは、このようにノック部材152を押し込み不能なとき、ノック部材152の開閉方向Daでの動きを許容できる程度の硬さを持つ弾性体によって構成される。図33に示すように、開閉部材12を更に右向きに動かすと、第2押込部162Bによる押し込みが解除され、ノック部材152は押込解除位置Pj3に戻される。
図34を参照する。開閉部材12を引込完了位置Paまで動かすと、第1実施形態と同様、各フック64、76が引掛姿勢Pc1から引掛解除姿勢Pc2に姿勢を変更する。この結果、各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除される。図35を参照する。各伝動経路20、24に対する経路切替機構50の接続が解除されると、スライダ付勢手段58の付勢力(スライダ54の自重)によって、固定部材52に対して初期位置Pb側(右向き)にスライダ54が動かされる。スライダ54は、アンロック状態にあるとき、自重によって右向きに移動可能であるといえる。これにより、スライダ54とは別体にスライダ付勢手段58を設ける必要がなくなる。スライダ54は、ストッパ164によって右向きの動きが規制され、初期位置Pbにて開閉部材12に対する位置が保持される。この結果、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重なる位置に配置される。
次に、引込動作時の動作を説明する。図36~図38を参照する。図36→図37→図38の順で引込装置10の状態が遷移する。
図36を参照する。引込装置10による引き込みが解除された状態にあるとき、ストッパ164と固定部材52の接触によって、固定部材52ととともにスライダ54を左向きに動かすことができる。つまり、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重なる位置に配置した状態のまま、開閉部材12を左向きに動かすことができる。
開閉部材12を引込開始位置Pgより右側にある押込動作位置Pkまで左向きに動かすと、押込解除位置Pj3にあるノック部材152は、第2押込部162Bによって押込方向Djに押し込まれる。このとき、ロックピン158がロック孔160と押込方向Djに重なる位置に配置されるため、第2押込部162Bによって、ノック部材152を切替位置Pj1(図29D参照)まで押し込むことができる。この状態で開閉部材12を左向きに動かすと、図37に示すように、第2押込部162Bによる押し込みが解除され、ノック部材152は押込位置Pj2(図29E参照)に戻される。これにより、ノック機構150は、ロック状態となる。
この後、開閉部材12を引込開始位置Pgまで左向きに動かすと、第1実施形態と同様の要領で、引込装置10は引込動作を開始する。引込動作を開始すると、各フック64、76が引掛解除姿勢Pc2から引掛姿勢Pc1に姿勢を変更する。これにより、経路切替機構50は、引込動作用経路98に切り替えられる。この結果、引込動作用経路98を介して、前段伝動経路20から開閉部材12に第1引込荷重Fa1を伝達できる。
図38を参照する。引込装置10によって引込完了位置Paまで開閉部材12が引き込まれると、押込位置Pj2にあるノック部材152は、第1押込部162Aによって押込方向Djに押し込まれる。この結果、ノック部材152は、第1押込部162Aによって切替位置Pj1(図29B参照)まで押し込まれた状態で保持される。
本実施形態の引込装置10も、前述した(A)~(J)で説明した構成要素(図示せず)を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。
各構成要素の他の変形例を説明する。
開閉部材12は、実施形態とは異なり、戸棚等の什器の引き戸、抽斗でもよい。この場合、外部部材14は、什器の本体となる。
引込完了位置Paは、実施形態とは異なり、全開き位置でもよい。つまり、引込装置10は、全開き位置に開閉部材12を引き込んでもよい。引込方向Db1は、説明の便宜から、図の向きに従って、図の左向きである例を説明した。この他にも、引込方向Db1は、図の右向きであってもよい。
前段伝動経路20及び後段伝動経路24は、引込部材18の付勢力を伝達可能であればよく、その具体例は実施形態に限定されない。実施形態のように、索状部材、歯車、ラック、シャフト等の他、ベルト、チェーン等が用いられてもよい。
後段伝動経路24の第2索状部材40は縮み付勢部104を備えなくともよい。縮み付勢部104は、実施形態とは異なり、第2索状部材40の一部によって構成されてもよい。これは、伸縮性のないケーブルと、伸縮性を持つケーブル、コイルバネ等を組み合わせることで実現される。
変速機構22の具体例は特に限定されない。変速機構22は、例えば、実施形態とは異なり、ベルト、チェーン、スプロケット等を用いてもよい。
経路切替機構50は、電動式の前段接続機構と、電動式の後段接続機構とを備え、スライダ54及びロック機構56を備えなくともよい。これら前段接続機構及び後段接続機構は、制御装置による制御のもと、前段伝動経路20及び後段伝動経路24に対する接続の有無を切り替え可能である。開閉操作時には前段伝動経路20の接続を解除し、後段伝動経路24を接続することで、開閉操作用経路100が形成される。引込動作時には前段伝動経路20を接続し、後段伝動経路24の接続を解除することで、引込動作用経路98が形成される。このように、経路切替機構50は、引込動作用経路98と開閉操作用経路100を形成できればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
接続機構60、62は、開閉部材12の開閉方向Daでの動きに連動して接続の有無を切り替え可能であればよく、その具体例は実施形態に限定されない。前段接続機構60は、たとえば、前段伝動経路20の引張力を回転力として伝達可能なピニオンと、スライダ54に固定されるラックとを備えてもよい。この場合、ピニオンは、ラックの開閉方向での動きに連動して、ラックに対する噛み合いの有無を切り替え可能であればよい。ラックに対してピニオンが噛み合う状態にあるとき、第1引込荷重を伝達可能に前段伝動経路20に対してスライダ54が接続される。一方、ラックに対するピニオンの噛み合いが解除された状態にあるとき、前段伝動経路20に対するスライダ54の接続が解除される。同様の構成は後段接続機構62に用いられてもよい。
第2フック76は、第2ピン78を左側から受けることができる受け部を備えてもよい。
第1引掛箇所Lb1と第2引掛箇所Lb2は開閉方向Daに沿った直線上に設けられていなくともよい。
スライダ54は、複数段のスライダ部材を組み合わせることで、開閉方向に伸縮可能に構成されてもよい。
ロック機構56は、実施形態とは異なり、電動式のロック機構56を用いて、制御装置による制御のもと、ロック状態とアンロック状態を切り替え可能でもよい。
回転付勢部材108は、前述の回転方向に第1フック64を付勢できればよく、その具体例は、ねじりバネに限定されない。回転付勢部材108は、例えば、コイルバネ等の弾性体を用いて構成されてもよい。
以上の実施形態及び変形例は例示に過ぎない。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定されない。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定しない。
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態及び他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。