JP7413834B2 - 中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールの製造方法 - Google Patents

中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールの製造方法に関する。
近年、中空糸膜を内蔵した中空糸膜モジュールによる物質の分離が盛んに行われている。例えば、血液透析や血液濾過などの医療用途、家庭用浄水器や浄水処理などの水処理用途、飲料品などの除菌や果汁の濃縮など食品製造プロセス用途など、広い用途で用いられている。
例えば、医療用途、なかでも血液処理用の中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜としては、孔径が大きな高性能タイプの中空糸膜が主流となっており、β-ミクログロブリンなどの中・高分子量の病因タンパク質を多く除去できるもので、膜素材として主に疎水性高分子が利用されている。しかし、疎水性高分子ではその疎水性の強さから血液適合性が低く、タンパク質や血小板などが付着すると分離性能の低下や生体反応を引き起こす原因となる。そのため、疎水性高分子表面を親水化し、血液適合性を向上させる方法が広く知られている。
親水性を付与する方法としては、中空糸膜の製膜原液に親水性基含有ポリマーを添加する方法や製膜時に使用する芯液に親水性基含有ポリマーを添加する方法、形成された中空膜に親水性成分を含有する溶液を通液または含浸して付与させる方法が一般的である。
特許文献1には、製膜原液に親水性基含有ポリマーであるポリビニルピロリドンを添加することで膜に親水性を付与する方法が開示されている。製膜原液に添加することにより、膜表面を均一に親水化することができる。
特許文献2には、中空糸膜の製膜後に親水性基含有ポリマーを含有する溶液を表面に接触させることで親水性を付与する方法や製膜時の芯液に親水性基含有ポリマーを添加することで親水性を付与する方法が開示されている。これらの方法を用いることで、膜の表面に均一に親水性基含有ポリマーを付与することができ、生体適合性を向上させることができる。
特許文献3には、中空糸膜の濾過性能の不均一性を改善するために、中空糸膜モジュールの両端部の中空糸膜内表面を改質した中空糸膜モジュールが開示されている。
特許文献4には、活性酸素が中空糸膜に血液が接触することによって発生することに着目し、血液導入部、特に血液の通過量が多い中心部の脂溶性ビタミン固定化量を多くした中空糸膜型血液浄化装置が開示されている。
特公平2-18695号公報 国際公開第2009/123088号 特開2011-509号公報 国際公開第2015/093493号
上述したように、疎水性高分子表面を親水化することが血液適合性を向上させるためには重要である。特に、血液は中空糸膜と最初に接触する時にもっとも膜表面との刺激により活性化による凝固を起こしやすい。そのため、中空糸膜モジュールにおいて、血液側入口側の近傍の中空糸膜内表面の親水性が高い方が好ましい。
また、中空糸膜の内径が小さい中空糸膜モジュールを使用する血液透析の場合、血液側入口の圧力と血液側出口の圧力との圧力差が大きくなるため、内部濾過が促進される。つまり、血液側入口部分において血液側から透析液側への濾過圧力がもっとも高くなり、血液が膜表面の押しつけられるため、血液の活性化を引き起こしやすくなる。この理由からも血液入口側の中空糸膜内表面の親水性が重要となる。
しかしながら、特許文献1の方法では、使用できる親水性基含有ポリマーが基材となる高分子と相溶するものに限定されることや、材料や用途に合わせて、最適な原液組成を検討する必要がある。また、これらの方法では中空糸膜の製膜時に親水性基含有ポリマーを添加しているため、血液への刺激が強い被処理液入口側の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率を高くするためには、中空糸膜全体の親水性基含有ポリマー含有率を増加させる必要がある。その場合、中空糸膜からの親水性基含有ポリマーの溶出量の増加や膜性能の低下などの懸念がある。
また、特許文献2の方法では中空糸膜表面全体に親水性基含有ポリマーを均一に付与している。そのため、処理液入口側の親水性を向上させるためには、膜表面全体に付与する親水性基含有ポリマー量を増加させる必要がある。そのため、溶出物の増加や膜性能の低下などの懸念がある。
特許文献3の方法では、中空糸膜束を反応溶液に浸漬させ、表面改質を行っているため、片方の端部のみを選択的に改質することは難しい。また、血液への刺激が少ないと考えられる被処理液出口側まで不必要に改質されているため、溶出物量の増加につながる懸念がある。
特許文献4の方法では、血液と初期に接触する5等分割した最端部の脂溶性ビタミン固定化量を多くしており、内部ろ過や血液透析ろ過などのろ過による押しつけの影響が考慮されていない。また、中空糸膜束の端部全体をコーティング溶液に浸漬しているため、血液と接触しない中空糸膜外表面側にも脂溶性ビタミンがコーティングされている。
すなわち、血液の活性化が起こりやすい処理液入口側の中空糸膜内表面の血液適合性を選択的に高めた中空糸膜モジュールは未だ存在していない。
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、中空糸膜モジュールの処理液入口側の生体適合性を高めた中空糸膜モジュールを提供する。
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討を進めた結果、処理液入口側の生体適合性が高い中空糸膜モジュールは、下記の構成によって達成されることを見いだした。
すなわち、本発明によれば、中空糸膜束がケースに内蔵され、糸束の両端がケースの両端に固定化された中空糸膜モジュールにおいて、該中空糸膜を長さ方向に3分割し、中空部に連通する被処理液入口側端部の中空糸膜束、中央部の中空糸膜束、被処理液出口側端部の中空糸膜束の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率をそれぞれA、B、Cとしたとき、下記(1)、(2)および(3)を満たす中空糸膜モジュールが提供される。
(1)Aが20質量%以上、50質量%以下
(2)A>B、A>C
(3)BおよびCが15質量%以上、40質量%以下
さらに本発明の好ましい形態によれば、 A/B≧1.1、A/C≧1.1である。
本発明の好ましい形態によれば中空糸膜が疎水性高分子を含有しており、さらに好ましい形態によれば、上記疎水性高分子がポリスルホン系高分子である。
本発明の好ましい形態によれば上記親水性基含有ポリマーが親水性ユニットと疎水性ユニットからなる高分子を含んでおり、より好ましい形態としては、上記疎水性ユニットがエステル基を含有し、さらに好ましい形態では上記親水性ユニットと疎水性ユニットからなる親水性基含有ポリマーの疎水性ユニットがカルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つをユニットに持つものである。また、さらに好ましい形態としては上記親水性基含有ポリマーの疎水性ユニットが酢酸ビニルとビニルピロリドンの共重合体を含むことである。
本発明の別の形態としては。中空糸膜束を同心円状に観察した際の糸束中心部と糸束外周部の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率をそれぞれD、Eとした時、D/E≦1.2を満たすことである。
本発明の別の形態によれば血液浄化用途に用いられる中空糸膜モジュールが提供される。
本発明の別の形態によれば中空糸膜モジュールの中空部に連通する被処理液入口側の端部から、中空糸膜内部に親水性基含有ポリマーを含有する液滴を噴霧する中空糸膜モジュールの製造方法が提供される。
本発明の別の形態によれば中空糸膜モジュールの被処理液入口側の端部から、中空糸膜内部に親水性高分子の微粒子を噴霧する中空糸膜モジュールの製造方法が提供される。
本発明において、被処理液入口側の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率を選択的に多くすることで、中空糸膜モジュール入口における血液の活性化を抑制した中空糸膜モジュールを提供することができる。
中空糸膜モジュール概略図である。 糸束端面図である。
被処理液、例えば血液は中空糸膜表面と接触する際に、活性化の影響を受けやすい。また、血液透析や血液透析濾過では、血液入口側端部において、血液側から透析液側へ濾過がかかり、血液が膜へ押しつけられるため、血液入口側端部における血液適合性が重要である。通常、中空糸膜の血液適合性を高めるために中空糸膜内表面に均一に親水性基含有ポリマーが付与されているが、上記課題を解決するためには、それに加えて血液入口側端部の親水性基含有ポリマー含有率をより増加させる必要がある。中空糸膜モジュール全体に付与する親水性基含有ポリマー含有率を増加させても同様の効果が得られると考えられるが、使用する親水性基含有ポリマー含有率が増加するため、血液と接触した際に親水性基含有ポリマーが溶出する可能性が高まる。被処理液、例えば血液への被処理液入口側における刺激を低減するには、被処理液入口側40の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率Aが20質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらには30質量%以上が好ましい。一方で、親水性基含有ポリマー含有率が多すぎると溶出物量の増加につながるため、親水性基含有ポリマー含有率は50質量%以下、好ましくは48質量%以下、さらには45質量%以下が好ましい。ここで、本発明における被処理液入口側の中空糸膜内表面とは、図1に示す様に、中空糸膜モジュールを長手方向に3等分割した時の被処理液入口側40の中空糸膜の内表面である。
また、被処理液出口側ほど血液への刺激は少ないが、多少は中空糸膜との接触による刺激があるため、中空糸膜モジュールを長手方向に3等分割したときの中央部50の中空糸膜および被処理液出口側60の中空糸膜における内表面の親水性基含有ポリマー含有率(それぞれBおよびC)は15質量%以上、好ましくは20質量%以上である。一方で、親水性基含有ポリマー含有率が多すぎると溶出物量増加につながるため、親水性基含有ポリマー含有率は45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。ここで、本発明における中央部および被処理液出口側の中空糸膜内表面とは、図1に示す様に、中空糸膜モジュールを長手方向に3等分割した時の中央部50、または被処理液出口側60の中空糸膜の内表面である。
被処理液入口側の血液適合性を上昇させ、かつ溶出物量を低減したモジュールとするには、被処理液入口側40の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率が、モジュール中央部分50および被処理液出口側60の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率の1.1倍以上が好ましく、より好ましくは1.3倍以上、さらには1.5倍以上が好ましい。一方で、中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率の差が大きすぎると血液への刺激が強くなるおそれがあるため10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。
中空糸膜モジュールの被処理液入口側40の中空糸膜内表面に親水性基含有ポリマーを導入する方法としては、特に限定はしないが、導入する親水性基含有ポリマーを溶解させた溶液を微細な液滴に霧化し、それを気体と混合した混合流体を中空糸膜モジュールの被処理液入口側10から流入する方法や、親水性基含有ポリマーの微粒子と気体を混合した混合流体を中空糸膜モジュールの被処理液入口10から流入する方法が好適に用いられる。一般的に中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜の内径はマイクロメートルオーダーと小さいため、長手方向での圧力損失が高くなる。そのため、乾燥した中空糸膜に気体が流入すると、圧力損失の大きい長手方向には流れにくく、膜厚方向に気体は流れやすくなる。そのため、霧化した親水高分子を含有する混合流体を中空糸膜モジュールの被処理液入口10から流入させることによって、被処理液入口側40の中空糸膜内表面のみ親水性基含有ポリマー含有率を増加させることができる。
また、中空部に連通する側に第1のノズルを持ち、中空糸膜外表面に連通する側に第2のノズルを2つ有する中空糸膜モジュールにおいて、中空部に連通する被処理液入口側の中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率が高い中空糸膜モジュールを作製するには、被処理液出口20と被処理液出口側に近い方の第2のノズル80にキャップをし、意図的に中空部に連通する被処理液入口10から、被処理液入口側に近い第2のノズル70に向かって、上記の混合流体を流すことがより効果的である。
後述するが、微量の水分が存在することでγ線照射時の膜素材と親水性基含有ポリマーの架橋反応が有利になるため、霧化した親水性基含有ポリマーを含有する溶液と気体を混合した混合流体を流入する方法がより好ましい。
親水性基含有ポリマーを含有する溶液を霧化した際の液滴の粒径が大きいと流入させる流路内での液滴同士の凝集が起こりやすくなることや、均一に付与することが難しくなるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下、さらには2μm以下が好ましい。一方で液滴径が小さいと表面に付与するのに時間がかかるため0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらには0.5μm以上が好ましい。
親水性基含有ポリマーを含有する溶液を霧化する方法としては、特に限定はしないがATM230(TOPAS社製)などのエアロゾル発生器や超音波式の霧化装置などが挙げられる。また、発生させた液滴をシリカゲルが封入されたエアドライヤーを通過させることで、親水性基含有ポリマーの微粒子を得ることができる。液滴の粒径やポリマー微粒子の粒径は、レーザ回折法(光散乱方式)を用いて測定することができる。具体的には、「粒子径解析-レーザ回折・散乱法(JISZ8825:2013年度版)」を参照し測定することができる。
これらの方法による親水性基含有ポリマーの付与方法では、中空糸膜への水分の付与がほとんどないため、完全ドライ型の中空糸膜モジュールへ親水性基含有ポリマーを付与する方法として好適である。
本発明における親水性基含有ポリマーの具体例としては、特に限定はしないが、親水性高分子として、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロース、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。中でも、安全性や経済性の観点からポリビニルピロリドンが好ましい。
また、疎水性ユニットを含有する親水性基含有ポリマーを用いることもできる。膜素材である疎水性高分子との親和性が向上し、疎水性相互作用により親水性基含有ポリマーの溶出の懸念が低下する。ここでいう疎水性ユニットとは、それ単独の重合体では水に難溶または不溶である繰り返し単位と定義し、水に難溶または不溶とは、20℃の純水に対する溶解度が1g/100g未満のことをいう。なお、当該定義を満たさない、20℃の純水に対する溶解度が1g/100g以上である場合はその化合物もしくはユニットは親水性である。詳細なメカニズムはわかっていないが、血液適合性の観点から、疎水性基がエステル基であることが好ましい。疎水性ユニットを有する親水性基含有ポリマーの具体例としては、特に限定はしないが、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、メチルアクリレート、メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ、これらに由来するエステル基を有することが好ましい。本発明においては、膜素材との親和性、血液適合性の観点から酢酸ビニルとビニルピロリドンからなる共重合体を親水性基含有ポリマーとして用いることが好ましい。本発明において、目的とする用途、特性を得るために、親水性基含有ポリマーは、1種類のみに限定されるものではなく、異なる複数の種類の親水性高分子を適宜組み合わせて用いても良い。例えば、疎水性高分子としてポリスルホン、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを含む中空糸膜に、親水性基含有ポリマーを付与する形態が挙げられる。
疎水性ユニットを含有する親水性基含有ポリマーとしては、疎水性ユニットの比率が小さいと膜素材である疎水性高分子との相互作用が弱まる。一方で、疎水性基の比率が大きいと中空糸膜内表面の親水性が低下し、血液適合性が悪化する。そのため、疎水性ユニットの比率は20モル%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。一方で、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
疎水性ユニットとして、カルボン酸ビニルエステルを用いる場合は、カルボン酸の製造コストの観点からカルボン酸は飽和脂肪族であることが好ましい。また、飽和脂肪族鎖の炭素数が少ないことは、カルボン酸ビニルエステルの疎水性を低くし、血小板やタンパク質との疎水性相互作用を小さくし、付着を防止する上で好ましい。一方で、飽和脂肪族鎖の炭素数が多すぎると疎水性が高くなり過ぎるため、血小板やタンパク質との相互作用が大きくなり付着が起こり易くなる。そのため、飽和脂肪族の炭素数は1~7が好ましい。
本発明における中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率は、X線電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。測定角としては90°で測定した値を用いる。測定角90°とすれば、中空糸膜の最表面からの深さが約10nmまでの領域が検出される。すなわち、本発明において、「内表面に親水性基含有ポリマーを有する」とは、中空糸膜最表面からの深さが約10nmまでの領域に親水性基含有ポリマーを有することを意味する。
ひとつの測定対象について、異なる中空糸膜3本の測定を行い、各測定結果について平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入した値を用いる。例えば、疎水性高分子がポリスルホンであり、親水性基含有ポリマーがポリビニルピロリドンである場合、窒素量(a(原子数%))と硫黄量の測定値(b(原子数%))から、次の式により表面でのポリビニルピロリドンの含有率を算出することができる。
ポリビニルピロリドン含有率(c)=100×(a×111)/(a×111+b×442)
親水性基含有ポリマーとして疎水性ユニットを有する場合も同様にXPSを用いて測定することができる。例えば、エステル基を有する親水性基含有ポリマーがビニルピロリドンと酢酸ビニルの6/4の共重合体である場合、エステル基(COO)由来の炭素ピークはC1sのCHやC-C由来のメインピークから+4.0~4.2eVに現れるピークをピーク分割することによって求めることができる。全元素に対する該ピーク面積の割合を算出することで、エステル基由来の炭素量(原子数%)が求まる。より具体的には、C1sには、主にCHx、C-C、C=C、C-S由来の成分、主にC-O、C-N由来の成分、π―π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。したがって、5つの成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC-Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0~4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比は、小数点第1桁目を四捨五入し、算出する。C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗ずることで求めることができる。ピーク分割の結果、0.4%以下であれば検出限界とした。ビニルピロリドンユニットの分子量は111、ポリスルホンの分子量は442、酢酸ビニルの分子量86であるから、表面の酢酸ビニル量は窒素量(a(原子数%))と硫黄量(b(原子数%))、エステル基由来の炭素量(d(原子数%))の値から、下式より算出した。
中空糸膜表面酢酸ビニル含有率(e(質量%))=(d×86/(a×111+b×442+d×86))×100
中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率はビニルピロリドン含有量(c)と酢酸ビニル含有量(e)の和で表すことができる。
中空糸膜内表面親水性基含有ポリマー含有率(f(質量%))=c+e
他にも、全反射赤外分光法(ATR)によっても各部位における親水性基含有ポリマーの含有率を比較することが可能である。なお、ATRでは表面から深さ数マイクロメートルまでの組成分析の測定が可能である。例えば、親水性基含有ポリマーとしてビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体を用いた場合、1711~1751cm-1の範囲にエステル基C=O由来の赤外吸収ピークが表れる。また、基材がポリスルホンなどの芳香族基を有する高分子からなる場合、1549~1620cm-1の範囲に芳香族基C=C由来の赤外吸収ピークが表れる。得られたそれぞれのピーク面積、ACO、ACCの比率を算出し、比較することで、各部位の親水性基含有ポリマー含有率を算出することもできる。ATRの測定方法としては、測定範囲を3μm×3μm、積算回数は30回以上として赤外吸収スペクトルを25点測定する。この25点測定を、1本の中空糸膜について異なる3箇所で、各部位当たり3本の中空糸膜について測定、平均値を算出し、小数点以下第3位を四捨五入した値を用いる。
中空部に連通する被処理液入口側40の中空糸膜、中央部50の中空糸膜、被処理液出口側60の中空糸膜におけるそれぞれの内表面の親水性基含有ポリマー含有率をそれぞれA、B、Cとすると、各部分における親水性基含有ポリマー含有率の比率はA/B、A/Cで計算することができ、当該比率としては小数点第2位を四捨五入した値を用いる。
また、中空部に連通する被処理液入口側の中空糸膜束の中心部100と外周部90についても同様に測定することができ、それぞれの親水性基含有ポリマー含有率をD、EとするとD/Eで計算することができる。この値も小数点第2位を四捨五入した値を用いる。ここでいう中心部とは中空糸膜束の3/4半径の内円内を中心部100とし、それ以外の部分を外周部90とする。外周部90は、中心部に比べ血液流量も少なく、血液が活性化しやすいため、外周部にも均一に親水性基含有ポリマーを付与することが望ましい。そのため、D/Eは1.5以下が好ましく、さらには、1.3以下が好ましい。
血液適合性は、中空糸膜に付着する血小板に付着数で評価できる。血小板の付着数が多い場合、血液の凝固に繋がる。そのため、中空糸膜内表面を走査型電子顕微鏡にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察した際、1視野4.3×10μmに付着する血小板の付着数は10個以下が好ましく、より好ましくは4個以下、さらに好ましくは2個以下である。血小板の付着数は、異なる10視野を観察した際の平均値を用いる。
膜素材となる疎水性高分子としては、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
この中でも、ポリスルホン系高分子は、中空糸膜を形成させることに適しており、また酢酸ビニルなどのエステル基との相互作用が強く、当該エステル基を疎水性基として含有する親水性基含有ポリマーを中空糸膜に導入させることを容易とすることから、好適に用いられる。ポリスルホン系高分子とは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基を持つものであり、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホンなどが挙げられる。例えば、次式(1)、(2)の化学式で示される繰り返し単位を有するポリスルホン系高分子が好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。また(3)および(4)の式中のnは、例えば50~80の如き整数である。
Figure 0007413834000001
ポリスルホンの具体例としては、“ユーデル”(登録商標)ポリスルホンP-1700、P-3500(Solvay社製)、“ウルトラソン”(登録商標)S3010、S6010(BASF社製)、などのポリスルホンが挙げられる。また、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)および/または(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で、他のモノマーと共重合していてもよい。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、二重管口金のスリット部から疎水性高分子およびその良溶媒、貧溶媒を含む製膜原液を、円管部から該芯液を吐出し、乾式部を通過させた後に凝固浴で凝固させることによって中空糸膜を製造することが好ましい。
上記製膜原液中の疎水性高分子の濃度を高くすることで、中空糸膜の機械的強度を高めることができる。一方で、疎水性高分子の濃度が高すぎると、溶解性の低下や製膜原液の粘度増加による吐出不良などの問題が生じる。また、疎水性高分子の濃度によって透水性、分画分子量を調整することができる。疎水性高分子の濃度を高くすると、中空糸膜内表面の密度が上がるため、透水性および分画分子量は低下する。以上のことから、製膜原液中の疎水性高分子の濃度は14質量%以上が好ましく、一方で24質量%以下が好ましい。
本発明における良溶媒とは、製膜原液において実質的に疎水性高分子を溶解する溶媒のことである。特に限定はしないが、ポリスルホン系高分子を用いる場合は、その溶解性から、N,N-ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。一方、貧溶媒とは、製膜温度において、実質的に疎水性高分子を溶解しない溶媒のことである。特に限定はしないが、水が好適に用いられる。
製膜原液に貧溶媒を添加することで、貧溶媒が核となって、相分離の進行が促進される。一方で貧溶媒の添加量が多すぎると、製膜原液が不安定となって、製膜の再現性を得ることが難しくなる。貧溶媒の最適な添加量は、貧溶媒の種類によって異なるが、代表的な貧溶媒である水を用いる場合は、製膜原液中の貧溶媒の添加量は、0.5質量%以上が好ましく、一方で、4質量%以下であることが好ましい。
製膜原液に別途親水性基含有ポリマーを添加することで、増孔剤としての効果による透水性の向上や親水性の向上が期待できる。ただし、かかる製膜原液中の親水性基含有ポリマーの添加量が多すぎると、製膜原液の粘度増加による溶解性の低下や吐出不良が起こることや、中空糸膜中に多量の親水性基含有ポリマーが残存することで、透過抵抗の増大による透水性の低下などが起こる恐れがある。最適な親水性基含有ポリマーの製膜原液への添加量は、その種類や目的の性能によって異なるが、1質量%以上が好ましく、一方で15質量%以下が好ましい。かかる製膜原液に添加される親水性基含有ポリマーとしては、特に限定はしないが、疎水性高分子としてポリスルホン系高分子を用いる場合、相溶性が高いことからポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
高分子を溶解する際は、高温で溶解することが溶解性向上のために好ましいが、熱による高分子の変性や溶媒の蒸発による組成変化の懸念がある。そのため、溶解温度は、30℃以上、120℃以下が好ましい。ただし、疎水性高分子および添加剤の種類によってこれらの最適範囲は異なることがある。
中空糸製膜時に用いる芯液は良溶媒と貧溶媒の混合液であり、その比率によって中空糸膜の透水性および分画分子量を調整することができる。貧溶媒としては、特に限定しないが、水が好適に用いられる。良溶媒としては、特に限定しないが、N,N―ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。
製膜原液と芯液が接触することで、貧溶媒の作用によって製膜原液の相分離が誘起され、凝固が進行する。芯液における貧溶媒比率を高くし過ぎると、膜の透水性および分画分子量が低下する。一方で、貧溶媒比率が低すぎると、液体のまま滴下されることになるため、中空糸膜を得ることができない。芯液における適正な両者の比率は、良溶媒と貧溶媒の種類によって異なるが、貧溶媒が上記両溶媒の混合液中10質量%以上であることが好ましく、一方で80質量%以下であることが好ましい。
吐出時の二重管口金の温度は、製膜原液の粘度、相分離挙動、芯液の製膜原液への拡散速度に影響を与え得る。一般的に、二重管口金の温度が高い程、得られる中空糸膜の透水性と分画分子量は大きくなる。ただし、二重管口金の温度が高過ぎると製膜原液の粘度の低下や凝固性の低下によって、吐出が不安定となるため紡糸性が低下する。一方で、二重管口金の温度が低いと、結露によって二重管口金に水分が付着することがある。そのため、二重管口金の温度は20℃以上が好ましく、一方で90℃以下が好ましい。
乾式部では、外表面が空気と接触することで、空気中の水分を取り込み、これが貧溶媒となるため、相分離が進行する。そのため、乾式部の露点を制御することで、外表面の開孔率を調整することができる。乾式部の露点が低いと相分離が充分に進行しないことがあり、外表面の開孔率が低下し、中空糸膜の摩擦が大きくなって紡糸性が悪化し得る。一方で、乾式部の露点が高過ぎても、外表面が凝固するため開孔率が低下することがある。乾式部の露点は60℃以下が好ましく、一方で10℃以上が好ましい。
凝固浴は貧溶媒を主成分としており、必要に応じて良溶媒が添加される。貧溶媒としては水が好適に用いられる。製膜原液が凝固浴に入ることで、凝固浴中の多量の貧溶媒によって製膜原液は凝固し、膜構造が固定化される。凝固浴の温度を高くする程、凝固が抑制されるため、透水性と分画分子量は大きくなる。
凝固浴で凝固させることによって得られた中空糸膜は、溶媒や原液に由来する余剰の親水性基含有ポリマーを含んでいるため、水洗が必要である。
水洗が不充分だと、使用前の洗浄が煩雑になり、また溶出物の処理液への流入が問題になり得る。水洗温度を上げることで水洗効率が上がることから、水洗の温度は、50℃以上が好ましい。
中空糸膜モジュールの含水率は保管時に凍結などによる性能変化の懸念が低いことや、軽量化の観点から、特に限定はしないが、中空糸膜の自重に対して20%以下であることが好ましい。
中空糸膜の含水率が20質量%以下の中空糸膜モジュールとする方法としては、モジュール化前に含水率20質量%以下に乾燥させた中空糸膜を束とし、ケースに組み込み、モジュール化する方法やモジュールとした後に乾燥させる方法がある。特に限定はしないが、モジュール化した後に乾燥させる場合、含水率20質量%以下に乾燥させるのに時間がかかる問題や、中空糸を束とした状態で乾燥するときに膜同士の固着が起こる懸念があるため、モジュール化前に中空糸膜を乾燥させておくことが好ましい。
中空糸膜を乾燥処理する方法としては、熱風乾燥やマイクロ波を照射し乾燥させる方法がる。特に限定はしないが、簡便さから熱風乾燥による乾燥が好適に用いられる。
熱風による乾燥では、乾燥温度が高いと親水性基含有ポリマーの分解や劣化を招くおそれや、中空糸膜同士の癒着がひきおこされることがある。一方で、乾燥温度が低いと乾燥処理に長い時間がかかる。そのため、乾燥温度は50℃以上が好ましく、さらに好ましくは70℃以上であり、一方で150℃以下が好ましく、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。また、熱風による乾燥の場合は、乾燥効率の観点から、中空糸を熱風で乾燥した後に束とすることが好ましい。
中空糸膜の膜厚は、薄くなるほど境膜物質移動係数を低減できるために中空糸膜の物質除去性能は向上する。一方で、膜厚が薄すぎると糸切れや乾燥つぶれが発生しやすく、製造上問題となる可能性がある。中空糸膜のつぶれ易さは、中空糸膜の膜厚と内径に相関がある。そのため、中空糸膜の膜厚は20μm以上が好ましく、さらには25μm以上が好ましい。一方、50μm以下、さらには45μm以下が好ましい。中空糸膜の内径は80μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは120μm以上であり、一方、250μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは160μmである。
上記中空糸膜内径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の膜厚をマイクロウォッチャーの1000倍レンズ(VH-Z100;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して平均値aを求め、以下の式より算出した値をいう。なお、中空糸膜外径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の外径をレーザ変位計(例えば、LS5040T;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して求めた平均値をいう。
中空糸膜内径(μm)=中空糸膜外径-2×膜厚
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状のケースに入れる。その後、両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング材を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング材を入れる方法は、ポッティング材が均一に充填できるため好ましい方法である。ポッティング材が固化した後。中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断する。ケースの両端にヘッダーを取り付け、ヘッダーおよびケースのノズル部分に栓をすることで中空糸膜モジュールを得る。
中空糸膜のモジュールに対する充填率は、中空糸膜をポッティング材でケース端部と接着させるときに中空糸膜の糸束の偏りが少なくなり、中心部100と外周部90の親水性ポリマー含有率の比率が小さくなる。そのため、充填率は50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。一方で、中空糸膜の充填率は、中空糸膜が局所的に変形することがなく、血液が中空糸膜モジュールの全体に流れやすいため、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましい。ここで、中空糸膜の充填率は中空糸膜モジュールのケースの筒部の平均内径から算出される断面積に対する、中空糸膜外径から算出される中空糸膜部分の断面積の総和の比である。
モジュールの糸束端面径は大きすぎると外周部への親水性基含有ポリマーの付与が不十分になることから、糸束端面径は10cm以下が好ましく、7cm以下がより好ましく、5cm以下がさらに好ましい。
人工腎臓などの血液浄化用の中空糸膜モジュールは滅菌することが必要であり、残留毒性の少なさや簡便さの点から、放射線滅菌法が多用されている。使用する放射線としては、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。中でも残留毒性の少なさや簡便さの点から、γ線や電子線が好適に用いられる。また、中空糸膜内表面に付与した親水性基含有ポリマーは放射線の照射によって膜素材と架橋を起こすことで固定化でき、溶出物の低減にも繋がるため、放射線を照射することが好ましい。放射線の照射線量が低いと滅菌効果が低くなる、一方、照射線量が高いと親水性基含有ポリマーや膜素材などの分解が起き、血液適合性が低下する。そのため、照射線量は15kGy以上が好ましく、100kGy以下が好ましい。
中空糸膜の透水性としては200mL/hr/m/mmHg以上、好ましくは300mL/hr/m/mmHg以上、さらには400mL/hr/m/mmHgが好ましい。また、人工腎臓用途の場合、透水性が高すぎると残血などの現象が見られることがあるので、好ましくは2000mL/hr/m/mmHg以下、さらには1500mL/hr/m/mmHgが好ましい。
また、人工腎臓用途で用いる場合、透析アミロイドーシスの原因物質とされているβ2-ミクログロブリンクリアランスは50mL/min以上、好ましくは60mL/min以上、さらには65mL/min以上が好ましい。一方で、β2-ミクログロブリンのクリアランスが高い場合、有用タンパク質であるアルブミンが漏洩しやすくなるため、90mL/min以下、好ましくは85mL/min以下である。
(1)X線光電子分光法(XPS)による親水性基含有ポリマー量の測定方法
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を3点測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。測定装置、条件としては、以下の通り。
測定装置: ESCALAB220iXL
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 0.15mm
光電子脱出角度: 90 °(試料表面に対する検出器の傾き)
C1sには、主にCHx,C-C,C=C,C-S由来の成分、主にC-O,C-N由来の成分、π-π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。従って、5つ成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC-Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0~4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比を、小数点第2桁目を四捨五入し、算出した。エステル基由来の炭素量(原子数%)は、C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗じることで求めた。なお、ピーク分割の結果、0.4%以下であれば、検出限界以下とした。
(2)ヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸膜は中空糸膜モジュールを解体して取り出した中空糸膜を長手方向に3等分に分割して得られた被処理液入口側と被処理液出口側の中空糸膜束を使用した。中空糸膜内表面に汚れやキズ、折り目が存在すると、その部分に血小板が付着するため正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒の内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。ヒトの静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mLになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を採血後30分以内に円筒管内に1.0mL加え、37℃にて1時間振とうさせた。その後、中空糸膜を10mLの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水を加え、静置し、血液成分を中空糸膜に固定化させた。1時間以上経過後、20mLの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温、0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt-Pdの薄膜を中空糸表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S-800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×10μm)の付着した血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着した血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×10μm)とした。1視野で50個/4.3×10μmを超えた場合は、50個としてカウントした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいため、血小板付着数の計測対象からはずした。
[実施例1]
ポリスルホン(アコモ社製“ユーデル”P-3500)16質量%、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)4質量%およびポリビニルピロリドン(ISP社製 K90)を2質量%、N,N-ジメチルアセトアミド77質量%、水1質量%を加熱溶解し、製膜原液とした。
N,N-ジメチルアセトアミド66質量%、水34質量%の溶液を芯液とした。
製膜原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重管口金の外側の管より吐出し、芯液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は乾式長350mm、温度30℃、露点28℃のドライゾーン雰囲気を通過した後、水100%、温度40℃の凝固浴に導かれ、60~75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。中空糸膜の内表面積が1.5mになるように、中空糸膜をケースに充填し、かつ中空糸の両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端の中空糸膜を両面開口させ、ケース両側にヘッダーを取り付け、モジュール化した。ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64”)を1質量%の水溶液をTOPAS社製ATOMIZER AEROSOL GENERATOR ATM230を用いて水溶液を霧化させ、圧縮空気と共に上記モジュールの中空部に連通する被処理液入口側から30分間流入させることで、親水性基含有ポリマーを塗布し、中空糸膜モジュール1を得た。このときのATM230の使用圧力は0.4barであった。また、中空糸膜モジュールの被処理液出口側および中空糸膜外表面に連通する側の開口部を全て開放した状態で実施した。
得られた中空糸膜モジュール1を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
親水性基含有ポリマー含有率は、被処理液入口側の中空糸膜内表面に多く存在し、被処理液入口側において高い血液適合性を示した。
[実施例2]
塗布する親水性高分子をビニルピロリドン/酢酸ビニル(5/5)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA55”)とした以外は実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール2を得た。
得られた中空糸膜モジュール2を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
親水性基含有ポリマー含有率は、被処理液入口側の中空糸膜内表面に多く存在し、被処理液入口側において高い血液適合性を示した。
[実施例3]
塗布する親水性基含有ポリマーをポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)とした以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール3を得た。
得られた中空糸膜モジュール1を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
親水性基含有ポリマー含有率は、被処理液入口側の中空糸膜内表面に多く存在し、被処理液入口側において血液適合性が改善されていた。
[実施例4]
親水性基含有ポリマーを塗布する溶液として10%エタノール水溶液にビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体(ビニルピロリドン/プロパン酸ビニル共重合体)(プロパン酸ビニルユニットのモル分率40%、数平均分子量16,500)を1質量%となるように溶解した溶液を用いた以外は実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール4を得た。
得られた中空糸膜モジュール4を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
親水性基含有ポリマー含有率は、被処理液入口側の中空糸膜内表面に多く存在し、被処理液入口側において高い血液適合性を示した。
[比較例1]
親水性基含有ポリマーを添加していない水を塗布する溶液として用いた以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール5を得た。
得られた中空糸膜モジュール5を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
親水性基含有ポリマーが塗布されていないため、両端部の中空糸内表面の親水性高分子量にはほとんど差が見られず、血液適合性も改善されていなかった。
[比較例2]
親水性基含有ポリマーの溶液の濃度を0.1質量%にした以外は実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール6を得た。
得られた中空糸膜モジュール6を長手方向に3等分に解体し、被処理液入口側、モジュール中央部および被処理液出口側の中空糸膜において、XPS測定を実施した。また、被処理液入口側および被処理液出口側の中空糸膜束において血小板付着試験を実施した。その結果を表1に示した。
被処理液入口側に塗布された親水性高分子量が少ないため、被処理液入口側で高い生体適合性を得られていなかった。
Figure 0007413834000002
10:被処理液入口
20:被処理液出口
30:解体する中空糸膜部分
40:被処理液入口側
50:中央部
60:被処理液出口側
70:被処理液入口側第2ノズル
80:被処理液出口側第2ノズル
90:糸束外周部
100:糸束中心部

Claims (12)

  1. 内表面に親水性基含有ポリマーを有する中空糸膜の膜束と、前記中空糸膜の膜束を覆うケースと、前記ケースの長さ方向の端部に設けられた被処理液入口側および被処理液出口側とを含む中空糸膜モジュールであって、
    前記中空糸膜の膜束をその長さ方向に、それぞれ(a)被処理液入口を含む領域と、(b)中央部の領域と、および(c)被処理液出口を含む領域と、に3等分割し、
    各領域の前記親水性基含有ポリマーの含有率をそれぞれA、B、およびCとしたとき、次の要件を満たす、中空糸膜モジュール。
    (1)A>B、およびA>Cである
    (2)Aが20質量%以上、50質量%以下の範囲内である
    (3)BおよびCが15質量%以上、45質量%以下の範囲内である
  2. 前記親水性基含有ポリマーの含有率をそれぞれA、B、およびCが、次の要件を満たす、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
    A/B≧1.1、A/C≧1.1である
  3. 前記中空糸膜が疎水性高分子を含有する、請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 前記疎水性高分子がポリスルホン系高分子である、請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
  5. 前記親水性基含有ポリマーが親水性ユニットと疎水性ユニットとからなる高分子を含む、請求項1~4のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  6. 前記疎水性ユニットがエステル基を有する、請求項5に記載の中空糸膜モジュール。
  7. 少なくとも前記エステル基を含むカルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つを疎水性ユニットとして有する、請求項1~6のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  8. 前記親水性基含有ポリマーがカルボン酸ビニルとビニルピロリドンの共重合体を含む、請求項1~7のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  9. 前記(a)被処理液入り口を含む領域の中空糸膜束における、中心部と外周部のそれぞれの中空糸膜内表面の親水性基含有ポリマー含有率をD、Eとしたとき、次の要件を満たす、請求項1~8のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
    D/E≦1.5
  10. 血液浄化用途である、請求項1~9のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを製造する方法であって、前記(a)被処理液入口を含む領域における中空糸膜内部に、前記親水性基含有ポリマーを噴霧する工程を有する、中空糸膜モジュールの製造方法。
  12. 前記親水性基含有ポリマーを噴霧する工程が、前記親水性基含有ポリマーを0.01μm以上、5μm以下の粒径を有する液滴として、噴霧する工程である、請求項11に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
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