JP7412753B2 - α-リノレン酸産生能が向上した微生物またはその培養物 - Google Patents
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Description
〔1〕糸状菌に属し、糖質代謝経路および脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を含む微生物において、宿主と同属同種の微生物由来の核酸が細胞外から少なくとも1つ導入されており、導入された核酸の少なくとも1つにより脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を高発現する、α-リノレン酸産生能が向上した微生物またはその培養物。
〔2〕微生物が、食品安全性または飼料安全性を有する微生物である、〔1〕の微生物またはその培養物。
〔3〕微生物が、アスペルギルス属微生物である、〔1〕または〔2〕の微生物またはその培養物。
〔4〕 高発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が、配列番号2のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有し、かつ脂肪酸不飽和化活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかの微生物またはその培養物。
〔5〕 高発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が、配列番号9のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有し、かつ脂肪酸不飽和化活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかの微生物またはその培養物。
〔6〕宿主と同属同種の微生物由来の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現が、宿主と同属同種の微生物由来のプロモーターで制御されている、〔1〕~〔5〕のいずれかの微生物またはその培養物。
〔7〕プロモーターが、TEF1プロモーターである、〔6〕の微生物またはその培養物。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれかの微生物またはその培養物を含む、食品または飼料。
〔9〕〔1〕~〔7〕のいずれかの微生物またはその培養物を含む、食用性物質発酵用組成物。
〔10〕以下を含む、α-リノレン酸を高含有量で含む食品または飼料の製造方法:
(i)食用性物質と、〔1〕~〔7〕のいずれかの微生物またはその培養物あるいは〔9〕の組成物とを接触させる工程;および
(ii)食用性物質を発酵させる工程。
〔11〕食用性物質が、食品またはその廃棄物である、〔10〕の方法。
〔12〕食用性物質が、糖質を含む、〔10〕または〔11〕の方法。
〔13〕食用性物質が、デンプンおよびラクトースの少なくともいずれかを含む、〔10〕~〔12〕のいずれかの方法。
〔14〕食用性物質が、米飯を含む、〔10〕~〔12〕のいずれかの方法。
〔15〕食用性物質が、ホエイを含む、〔10〕~〔12〕のいずれかの方法。
〔16〕以下を含む、α-リノレン酸の製造方法:
(i)糖質供給源と、〔1〕~〔7〕のいずれかの微生物またはその培養物あるいは〔9〕の組成物とを接触させる工程;および
(ii)糖質供給源を発酵させる工程。
〔17〕糖質供給源が、デンプンおよびラクトースの少なくともいずれかを含む、〔16〕の方法。
〔18〕〔8〕の飼料を動物(但し、ヒトを除く)に給与して飼育しα-リノレン酸を高含有させることを含む、畜産物または水産物の生産方法。
糖質から脂肪酸に至る生合成経路上の遺伝子の発現量を高めることで、脂質の生産量が増加することが知られている。ヤロウィア属酵母の場合、アセチルCoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子とジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現量を高めることで脂質生産量が高まることが報告されている(Tai M et al、Metabolic Engineering、15、1-9、2013)。アスペルギルス属菌の場合でも、アセチルCoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子、パルミトイルACPチオエステラーゼ、アセチルCoAクエン酸リアーゼ、脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を高めることで、脂質の生合成が高まることが報告されている(Tamano K et al、Applied Microbiology and Biotechnology、97、269-281、2013)。こうした遺伝子の発現強化を組み合わせることで、α-リノレン酸の生産量をより高めることができる。
本明細書において糖質とは、微生物が資化できる糖であればよく、その分子量は特に限定されない。三糖以上の場合直鎖でも分岐鎖でもよい。例えば、単糖(例、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース)、二糖(例、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース)、オリゴ糖(例、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖)、多糖(例、デンプン、セルロース、アガロース、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン)、糖アルコール(例、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール)、プロテオグリカン(例、グリコサミノグルカン、ガラクトサミノグリカン)、糖タンパク質、糖脂質が挙げられる。これらのうち、デンプン、ラクトースが好ましい。
食用性物質発酵用組成物は、いわゆる麹であり、上述した微生物またはその培養物を含めばよく、任意成分(例えば、保存剤、発酵促進剤等)をさらに含んでもよい。食用性物質発酵用組成物の製造方法は、特に限定されないが、従来の麹の製造方法によればよい。
食用性物質は、微生物の発酵原料となり得るものであればよく、例えば、食品または飼料、それらの原料(いわゆる食材)、廃棄物であり、特に限定されない。食用性物質は、糖質を含むことが好ましい。中でも、デンプン系食品(例えば、米飯類、パン類、麺類、豆類、その他のデンプンを含む食材の加工品)、デンプン系飼料、それらの原料、廃棄物(例、残飯、製造時の副産物)がより好ましい。ラクトース系食品(例えば、牛乳、スキムミルク、ホエイ、チーズ、ヨーグルト、バター、その他の乳製品等、ラクトースを含む加工食品)、ラクトース系飼料、それらの原料、廃棄物(例、残飯、製造時の副産物)もより好ましい。飼料を製造する場合、食用性物質は食品又はその原料の廃棄物でもよく、澱粉系食品の廃棄物、ラクトース系食品の廃棄物が好ましい。
(i)食用性物質と、上述した微生物またはその培養物とを接触させる工程;および
(ii)食用性物質を発酵させる工程。
(i)糖質供給源(例、デンプン供給源もしくはラクトース供給源)と、上述した微生物またはその培養物とを接触させる工程;および
(ii)糖質供給源(例、デンプン供給源もしくはラクトース供給源)を発酵させる工程。
アスペルギルス属微生物としてAspergillus oryzae RIB40株(NBRC100959株)を使用した。RIB40株のゲノムはGenbankに多数登録されている。この情報の中には、複数の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が登録されていたが、α-リノレン酸の生合成に直接関与することを意味する「delta-15 desaturase」等として登録されているものは存在しなかった。そこで、RIB40株のゲノム内に存在する複数の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のうち、「SC010」のLocus tag AO090010000714として登録されている遺伝子(配列番号1の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子)をα-リノレン酸の生産に関与するものであると仮定し研究を行うこととした。
(アスペルギルス属微生物培養用培地の組成)
酵母エキス(粉末;Difco Laboratories)1%、ペプトン(Difco Laboratories)2%、D-グルコース(和光純薬工業)2%を純水に溶かしたものをYPD培地(YPD液体培地)とし、以降の実施例で用いた。
YPD液体培地をプラスチックチューブに添加し、RIB40株を培養し、得られた菌体からゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出には、ISOPLANT(株式会社ニッポンジーン)を使用した。得られたゲノムDNAを鋳型として配列番号4および5のヌクレオチド配列からなるプライマーでPCRを行い、アスペルギルス・オリゼの高発現プロモーターとして報告されているTEF1プロモーター領域を増幅してPCR断片を得た(Kitamoto N et al. Appl. Microbiol. Biotechnol 50, 85-92 (1998))。
また、アスペルギルス属用形質転換ベクターにはpPTRI(タカラバイオ株式会社)を用いた。pPTRIを制限酵素NdeI(株式会社ニッポンジーン)で切断した。この切断断片をアガロースゲルで電気泳動後、DNA断片をゲルから切り出して、QIAEX II Gel extraction kitを用いてDNA断片を精製した。これを、pPTRIベクター精製断片とした。
トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%含む培地をLB液体培地とし、これに寒天を培地1リットルあたり15gとアンピシリンナトリウムを加え、アンピシリンナトリウムを100μg/mLで含むアンピシリン入りLB寒天培地を調製し、それぞれ、以降の実施例で用いた。
TEF1プロモーター精製断片、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子/3’非翻訳領域精製断片、pPTRIベクター精製断片の3つをGibson Assembly Master mix(ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社)と混合し、50℃で30分間反応させた。この反応液を形質転換用大腸菌(NEB 5-alpha Competent E. coli (High Efficiency);ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社)と混合し、マニュアルに従い、形質転換処理を行った。
(アスペルギルス属微生物用培地の組成)
純水1リットルあたり、硝酸ナトリウム6.0g、塩化カリウム0.52g、リン酸二水素カリウム1.52g、グルコース10g、硫酸マグネシウム7水和物0.49g、硫酸鉄七水和物0.001g、硫酸亜鉛七水和物0.0088g、硫酸銅五水和物0.0004g、四ほう酸ナトリウム十水和物0.0001g、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.00005gを含むpH6.5の培地をCzapek-Dox(CD)培地とし、CD培地1リットルあたりに寒天20gを加えて調製したものをCD寒天培地とし、それぞれ以降の実施例で用いた。
pPTRI(タカラバイオ株式会社)のマニュアルに従い、宿主となるRIB40株のプロトプラストを調製し、実施例2に記載した発現カセットを含む精製DNA断片をRIB40株に導入した。DNA断片導入処理されたRIB40株を、ピリチアミンを0.1μg/mlの終濃度で含有するCD寒天培地で培養した。このピリチアミン含有CD寒天培地で生育が見られたコロニーをYPD培地で培養した。続いて、培養菌体を遠心分離で回収し、ISOPLANTでゲノムDNAを抽出して、ピリチアミン耐性遺伝子とTEF1プロモーター、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、3’非翻訳領域を含む発現カセットがゲノム内に導入されていることをPCRで確認した。導入したDNAを構成する塩基配列は、すべて宿主と同じアスペルギルス・オリゼ由来のものであることから、この遺伝的改変はセルフクローニングとみなすことができる。得られたRIB40株を、「脂肪酸不飽和化酵素遺伝子セルフクローニング株」(以下「セルフクローニング株」)と呼ぶ。
上記CD培地のグルコース10gの代わりに可溶性デンプン30gを加えた培地を、デンプンCD培地とし、以降の実施例で用いた。CD寒天培地でRIB40株を培養し、滅菌綿棒で胞子を回収して、胞子懸濁液を調製した。また、ピリチアミン含有CD寒天培地でセルフクローニング株を培養し、同様に滅菌綿棒で胞子を回収し、胞子懸濁液を回収した。デンプンCD培地50mLを300mL容の羽根つきフラスコに調製した。上記の胞子懸濁液のOD600を測定し、吸光度が0.05になるようにデンプンCD培地に接種した。30℃、120r.p.mで4日間振とう培養し、十分量の菌体を回収した。
実施例4に記載の菌体から脂質を抽出した。菌体を水で洗浄後、乳鉢と乳棒で摩砕した。摩砕物を凍結乾燥して、乾燥重量を測定した。この乾燥物に、水2ml、クロロホルム2.5mL、メタノール5mLを添加して、2時間振とうした。さらに、クロロホルムを2.5mL、水を1mL添加して、遠心してクロロホルム・メタノール層を回収した。このクロロホルム・メタノール層から溶媒を留去し、残った脂質の重量を測定した。その結果、脂質含量は、表1に示すとおり、RIB40株とセルフクローニング株でほぼ同等であった。
実施例4で残った菌体をビーズとともにプラスチックチューブに入れ、ビーズ破砕装置FastPrep(Thermo Electron社)で処理を行い、破砕した。遠心エバポレーターを用いて60℃で1時間処理し、水分を除去し、脂肪酸組成分析試料とした。これに、ヘプタデカン酸メチルエステルのヘキサン溶液(2g/L)を内部標準として50μL添加し、その後、直ちに、0.5Nの水酸化ナトリウムメタノール溶液を500μL添加して、均一に混合後、1200r.p.mで1時間攪拌した。さらに、硫酸を40μL添加してpHを調整した後、ヘキサンを500μL添加して、30分間攪拌した。ヘキサン層を回収し、ガスクロマトグラフ分析装置で分析を行った。ガスクロマトグラフ分析装置には、水素炎イオン化検出器を備えた株式会社島津製作所製GC-2010 plusを用いた。サンプルは、スプリットレスモードで1μLを注入した。気化室は60℃で分析を開始し、100℃/分で温度を上げ、240℃で保持した。カラムにはDB-225(30m、0.25mm、0.25μm、アジレント・テクノロジー株式会社)を使用し、カラムオーブンは50℃で開始し、30℃/分で上昇させ、200℃で保持した。ヘリウムをキャリアガスとして線速度33cm/分で流し、20分間で分析を完了した。検出器は、240℃、25Hzで使用した。水素は40ml/分、空気は400mL/分で流し、メイクアップガスはヘリウムを30mL/分で使用した。
上記CD培地のグルコース10gの代わりにラクトース30gを加えた培地を、ラクトースCD培地とし、以降の実施例で用いた。CD寒天培地でRIB40株を培養し、滅菌綿棒で胞子を回収して、胞子懸濁液を調製した。また、ピリチアミン含有CD寒天培地でセルフクローニング株を培養し、同様に滅菌綿棒で胞子を回収し、胞子懸濁液を回収した。ラクトースCD培地50mLを300mL容の羽根つきフラスコに調製した。上記の胞子懸濁液のOD600を測定し、吸光度が0.05になるようにラクトースCD培地に接種した。30℃、90r.p.mで4日間振とう培養し、十分量の菌体を回収した。
実施例7で得た菌体をビーズとともにプラスチックチューブに入れ、ビーズ破砕装置FastPrep(Thermo Electron社)で処理を行い、破砕した。遠心エバポレーターを用いて60℃で1時間処理し、水分を除去し、脂肪酸組成分析試料とした。これに、ヘプタデカン酸メチルエステルのヘキサン溶液(2g/L)を内部標準として50μL添加し、その後、直ちに、0.5Nの水酸化ナトリウムメタノール溶液を500μL添加して、均一に混合後、1200r.p.mで1時間攪拌した。さらに、硫酸を40μL添加してpHを調整した後、ヘキサンを500μL添加して、30分間攪拌した。ヘキサン層を回収し、ガスクロマトグラフ分析装置で分析を行った。ガスクロマトグラフ分析装置には、水素炎イオン化検出器を備えた株式会社島津製作所製GC-2010 plusを用いた。サンプルは、スプリットレスモードで1μLを注入した。気化室は60℃で分析を開始し、100℃/分で温度を上げ、240℃で保持した。カラムにはDB-225(30m、0.25mm、0.25μm、アジレント・テクノロジー株式会社)を使用し、カラムオーブンは50℃で開始し、30℃/分で上昇させ、200℃で保持した。ヘリウムをキャリアガスとして線速度33cm/分で流し、20分間で分析を完了した。検出器は、240℃、25Hzで使用した。水素は40ml/分、空気は400mL/分で流し、メイクアップガスはヘリウムを30mL/分で使用した。
アスペルギルス属微生物としてAspergillus kawachii NBRC4308株(Aspergillus luchuensis mut. kawachiiと呼ばれることもある。以下カワチ株とする)を使用した。カワチ株のゲノムはGenbankに多数登録されている。この情報の中には、複数の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が登録されていたが、α-リノレン酸の生合成に直接関与することを意味する「delta-15 desaturase」等として登録されているものは存在しなかった。そこで、カワチ株のゲノム内に存在する複数の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のうちGenbank Accession No. DF126480 「Aspergillus kawachii IFO 4308 DNA, contig: scaffold00034, whole genome shotgun sequence」のLocus Tag AKAW_09486として登録されている遺伝子(配列番号8の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子)をα-リノレン酸の生産に関与するものであると仮定し研究を行うこととした。
(アスペルギルス属微生物由来プロモーターおよび脂肪酸不飽和化酵素遺伝子ゲノムDNA断片の調製)
YPD液体培地をプラスチックチューブに添加し、カワチ株を培養し、得られた菌体からゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出には、ISOPLANT(株式会社ニッポンジーン)を使用した。得られたゲノムDNAを鋳型として配列番号10および11のヌクレオチド配列からなるプライマーでPCRを行い、アスペルギルス・カワチの高発現プロモーターとして配列番号12のTEF1プロモーター領域を増幅してPCR断片を得た。
また、アスペルギルス属用形質転換ベクターにはpPTRI(タカラバイオ株式会社)を用いた。pPTRIを制限酵素NdeI(株式会社ニッポンジーン)で切断した。この切断断片をアガロースゲルで電気泳動後、DNA断片をゲルから切り出して、QIAEX II Gel extraction kitを用いてDNA断片を精製した。これを、pPTRIベクター精製断片とした。
TEF1プロモーター精製断片、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子/3’非翻訳領域精製断片、pPTRIベクター精製断片の3つをGibson Assembly Master mix(ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社)と混合し、50℃で30分間反応させた。この反応液を形質転換用大腸菌(NEB 5-alpha Competent E. coli (High Efficiency);ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社)と混合し、マニュアルに従い、形質転換処理を行った。
(アスペルギルス・カワチ株の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子導入株の作成)
宿主となるカワチ株のプロトプラストを調製し、実施例10に記載した発現カセットを含む精製DNA断片をカワチ株に導入した。DNA断片導入処理されたカワチ株を、ピリチアミンを0.2μg/mlの終濃度で含有するCD寒天培地で培養した。このピリチアミン含有CD寒天培地で生育が見られたコロニーをYPD培地で培養した。続いて、培養菌体を遠心分離で回収し、ISOPLANTでゲノムDNAを抽出して、ピリチアミン耐性遺伝子とTEF1プロモーター、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、3’非翻訳領域を含む発現カセットがゲノム内に導入されていることをPCRで確認した。得られたカワチ株を、「遺伝子導入カワチ株」と呼ぶ。
CD寒天培地で通常のカワチ株を培養し、滅菌綿棒で胞子を回収して、胞子懸濁液を調製した。また、ピリチアミン含有CD寒天培地で遺伝子導入カワチ株を培養し、同様に滅菌綿棒で胞子を回収し、胞子懸濁液を回収した。デンプンCD培地100mLを500mL容の羽根つきフラスコに調製した。上記の胞子懸濁液のOD600を測定し、吸光度が0.05になるようにデンプンCD培地に接種した。30℃、90r.p.mで4日間振とう培養し、十分量の菌体を回収した。
実施例12で残った菌体をビーズとともにプラスチックチューブに入れ、ビーズ破砕装置FastPrep(Thermo Electron社)で処理を行い、破砕した。遠心エバポレーターを用いて60℃で1時間処理し、水分を除去し、脂肪酸組成分析試料とした。これに、ヘプタデカン酸メチルエステルのヘキサン溶液(2g/L)を内部標準として50μL添加し、その後、直ちに、0.5Nの水酸化ナトリウムメタノール溶液を500μL添加して、均一に混合後、1200r.p.mで1時間攪拌した。さらに、硫酸を40μL添加してpHを調整した後、ヘキサンを500μL添加して、30分間攪拌した。ヘキサン層を回収し、ガスクロマトグラフ分析装置で分析を行った。ガスクロマトグラフ分析装置には、水素炎イオン化検出器を備えた株式会社島津製作所製GC-2010 plusを用いた。サンプルは、スプリットレスモードで1μLを注入した。気化室は60℃で分析を開始し、100℃/分で温度を上げ、240℃で保持した。カラムにはDB-225(30m、0.25mm、0.25μm、アジレント・テクノロジー株式会社)を使用し、カラムオーブンは50℃で開始し、30℃/分で上昇させ、200℃で保持した。ヘリウムをキャリアガスとして線速度33cm/分で流し、20分間で分析を完了した。検出器は、240℃、25Hzで使用した。水素は40ml/分、空気は400mL/分で流し、メイクアップガスはヘリウムを30mL/分で使用した。
CD寒天培地でカワチ株を培養し、滅菌綿棒で胞子を回収して、胞子懸濁液を調製した。また、ピリチアミン含有CD寒天培地で遺伝子導入株を培養し、同様に滅菌綿棒で胞子を回収し、胞子懸濁液を回収した。ラクトースCD培地100mLを500mL容の羽根つきフラスコに調製した。上記の胞子懸濁液のOD600を測定し、吸光度が0.05になるようにラクトースCD培地に接種した。30℃、90r.p.mで4日間振とう培養し、十分量の菌体を回収した。
実施例14で得た菌体をビーズとともにプラスチックチューブに入れ、ビーズ破砕装置FastPrep(Thermo Electron社)で処理を行い、破砕した。遠心エバポレーターを用いて60℃で1時間処理し、水分を除去し、脂肪酸組成分析試料とした。これに、ヘプタデカン酸メチルエステルのヘキサン溶液(2g/L)を内部標準として50μL添加し、その後、直ちに、0.5Nの水酸化ナトリウムメタノール溶液を500μL添加して、均一に混合後、1200r.p.mで1時間攪拌した。さらに、硫酸を40μL添加してpHを調整した後、ヘキサンを500μL添加して、30分間攪拌した。ヘキサン層を回収し、ガスクロマトグラフ分析装置で分析を行った。ガスクロマトグラフ分析装置には、水素炎イオン化検出器を備えた株式会社島津製作所製GC-2010 plusを用いた。サンプルは、スプリットレスモードで1μLを注入した。気化室は60℃で分析を開始し、100℃/分で温度を上げ、240℃で保持した。カラムにはDB-225(30m、0.25mm、0.25μm、アジレント・テクノロジー株式会社)を使用し、カラムオーブンは50℃で開始し、30℃/分で上昇させ、200℃で保持した。ヘリウムをキャリアガスとして線速度33cm/分で流し、20分間で分析を完了した。検出器は、240℃、25Hzで使用した。水素は40ml/分、空気は400mL/分で流し、メイクアップガスはヘリウムを30mL/分で使用した。
実施例1~8において、Aspergillus oryzae RIB40株の配列番号2の酵素がα-リノレン酸の生産に寄与する酵素であることが確認された。この配列番号2の酵素と同株のもつ類似酵素のアミノ酸配列を比較した。評価には、アライメント作成プログラムのCrustal omegaを用いた。比較する2つの配列のアライメントを作成し、完全に一致するアミノ酸残基の数を算出し、それをアライメント全体の長さで除して求められる百分率をアミノ酸の同一性とした。まず、Genbankに登録されているRIB40株の情報からBLAST検索を行い、配列番号2の酵素とアミノ酸配列の相同性が高いRIB40株の5つのタンパク質を見出した。続いて、これらのタンパク質と配列番号2の酵素とのアミノ酸の同一性を算出した(表7)。
配列番号2:アスペルギルス・オリゼRIB40株の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子がコードするアミノ酸配列。
配列番号3:ピリチアミン耐性遺伝子及びTEF1プロモーター、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、および3’非翻訳領域を含む遺伝子発現カセット。
配列番号4および5:アスペルギルス・オリゼTEF1プロモーター領域を増幅するためのプライマー。
配列番号6および7:アスペルギルス・オリゼ脂肪酸不飽和化酵素遺伝子とその3’非翻訳領域を増幅するためのプライマー。
配列番号8:アスペルギルス・カワチ株の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のヌクレオチド配列。
配列番号9:アスペルギルス・カワチ株の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子がコードするアミノ酸配列。
配列番号10および11:アスペルギルス・カワチ株TEF1プロモーター領域を増幅するためのプライマー。
配列番号12:アスペルギルス・カワチ株TEF1プロモーター領域。
配列番号13および14:アスペルギルス・カワチ株脂肪酸不飽和化酵素遺伝子とその3’非翻訳領域を増幅するためのプライマー。
配列番号15:アスペルギルス・カワチ株に導入したピリチアミン耐性遺伝子及びTEF1プロモーター、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、および3’非翻訳領域を含む遺伝子発現カセット。
Claims (18)
- 糸状菌に属し、糖質代謝経路および脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を含む微生物において、宿主と同属同種の微生物由来の核酸が細胞外から少なくとも1つ導入されており、導入された核酸の少なくとも1つにより脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を高発現し、
微生物が、アスペルギルス属微生物であり、
高発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が、配列番号2又は9のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、かつ脂肪酸不飽和化活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む、
α-リノレン酸産生能が向上した微生物。 - 微生物が、食品安全性または飼料安全性を有するアスペルギルス属微生物である、請求項1記載の微生物。
- アスペルギルス属微生物が、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・リュウキュウエンシス、アスペルギルス・リュウキュウエンシス・カワチ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ソヤ、アスペルギルス・タマリ、又はアスペルギルス・アワモリである、請求項1または2記載の微生物。
- 宿主と同属同種の微生物由来の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現が、宿主と同属同種の微生物由来のプロモーターで制御されている、請求項1~3のいずれか一項記載の微生物。
- プロモーターが、TEF1プロモーターである、請求項4記載の微生物。
- 糸状菌に属し、糖質代謝経路および脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を含む微生物において、宿主と同属同種の微生物由来の核酸が細胞外から少なくとも1つ導入されており、導入された核酸の少なくとも1つにより脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を高発現し、
微生物が、アスペルギルス属微生物であり、
高発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が、配列番号2又は9のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、かつ脂肪酸不飽和化活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む、
α-リノレン酸産生能が向上した微生物またはその培養物の生産方法。 - アスペルギルス属微生物が、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・リュウキュウエンシス、アスペルギルス・リュウキュウエンシス・カワチ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ソヤ、アスペルギルス・タマリ、又はアスペルギルス・アワモリである、請求項6に記載の方法。
- 請求項1~5のいずれか一項記載の微生物を含む、食品または飼料。
- 請求項1~5のいずれか一項記載の微生物、またはその培養物を含む、食用性物質発酵用組成物。
- 以下を含む、α-リノレン酸を高含有量で含む食品または飼料の製造方法:
(i)食用性物質と、請求項1~5のいずれか一項記載の微生物、またはその培養物あるいは請求項9記載の組成物とを接触させる工程;および
(ii)食用性物質を発酵させる工程。 - 食用性物質が、食品またはその廃棄物である、請求項10記載の方法。
- 食用性物質が、糖質を含む、請求項10または11記載の方法。
- 食用性物質が、デンプンおよびラクトースの少なくともいずれかを含む、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
- 食用性物質が、米飯を含む、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
- 食用性物質が、ホエイを含む、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
- 以下を含む、α-リノレン酸の製造方法:
(i)糖質供給源と、請求項1~5のいずれか一項記載の微生物、またはその培養物あるいは請求項9記載の組成物とを接触させる工程;および
(ii)糖質供給源を発酵させる工程。 - 糖質供給源が、デンプンおよびラクトースの少なくともいずれかを含む、請求項16に記載の方法。
- 請求項8記載の飼料を動物(但し、ヒトを除く)に給与して飼育しα-リノレン酸を高含有させることを含む、畜産物または水産物の生産方法。
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