JP2013158289A - アクリルアミド分解性セルフクローニング麹菌 - Google Patents

アクリルアミド分解性セルフクローニング麹菌 Download PDF

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Abstract

【課題】アミダーゼを誘導培養なしに発現し、アクリルアミド分解活性の高いセルフクローニング麹菌、および前記麹菌を用いたアクリルアミド低減方法を提供する。
【解決手段】麹菌由来の特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子または前記ポリペプチドをコードする核酸分子と相補的な塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る配列を有し、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が誘導培養なしに発現する状態で遺伝子導入されたセルフクローニング麹菌、前記麹菌とアクリルアミド含有物を接触処理する工程を含むアクリルアミドを低減させる方法、およびアクリルアミド低減飲料または食品の製造方法。
【選択図】図8

Description

本発明は、セルフクローニング麹菌、その麹菌を用いてアクリルアミド含有物からアクリルアミドを低減させる方法、およびその麹菌を用いたアクリルアミド低減飲食品の製造方法に関する。さらに詳細には、アクリルアミドを分解するアミダーゼを誘導培養することなく常時産生することのできるセルフクローニング麹菌とその利用に関する。
アクリルアミドは、CH=CHCONHで表される構造を有する有機化合物であり、常温において無色無臭で白色の結晶であり、水やアルコール、アセトンに溶けやすい性質がある。室温では安定であるが、溶融すれば加熱や紫外線によって激しく重合してポリアクリルアミドになる。
ヒトに対する影響として、アクリルアミドの摂取は、皮膚障害、言語障害、末梢神経炎、小脳性失調等を引き起こすことが知られている。職業曝露や事故によりアクリルアミドを口、肺、皮膚から大量に吸引した場合、中毒症状として中枢神経および末梢神経に障害を引き起こすことが確認されている。国際がん研究機関(IARC)の調査によると、発がん性物質の分類において「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(グループ2A)」としている。また、米国カリフォルニア州の有害物質管理法であるプロポジション65(安全飲料および有害物質執行法)では、2011年2月にアクリルアミドは、がんまたは生殖毒性を引き起こす物質として記載されるようになった。
食品においては、アクリルアミドは、原材料に含まれるアスパラギン等の特定のアミノ酸と果糖やブドウ糖等の還元糖とが、揚げる、焼く、焙るなどの高温での加熱処理によりアミノカルボニル反応(メイラード反応)を起こすことで生成すると考えられている。この生成経路の他にも、アスパラギンや還元糖以外の食品成分が原因物質となっている可能性や、アミノカルボニル反応以外の経路からもアクリルアミドが生成する可能性があると考えられている。アクリルアミドは、例えば、食品では、ポテトチップスなどのじゃがいもを揚げた食品、ビスケットなどの穀類を原料とする焼き菓子などに含まれ、飲料ではコーヒーやほうじ茶などに含まれる。コーヒーにおけるアクリルアミドの含量は高いことが知られており、1杯のコーヒーに含まれるアクリルアミドは約2μgになると考えられている。
微生物の中には、アクリルアミドを分解するアミダーゼを産生する種があることが知られており、これまでに種々の微生物を用いて食品中や飲料中のアクリルアミドを分解する方法が開発されてきた。例えば、麹菌を用いてアクリルアミドを分解する方法が知られている(特許文献1)。また、アクリルアミドの分解活性能を短期的に向上させるための、糸状菌の培養方法が知られている(特許文献2)。微生物を用いて食品や飲料中のアクリルアミドを分解する場合、遺伝子組換え微生物では安全性が疑問視されている。したがって、遺伝子組換え微生物によらないアクリルアミド高分解性菌のスクリーニング方法が開発されている(特許文献3)。
特開2010−183867号 特開2011−92185号 特開2010−35449号
自然界の微生物においてアミダーゼは誘導酵素であり、一定量のアクリルアミドの存在下で培養した後でないとアミダーゼを産生しないため、飲料や食品中のアクリルアミドを分解する場合は、微生物を誘導培養することによりアミダーゼを発現させる必要があり、工業的な観点からは応用が困難である。したがって、本発明は、誘導培養を行わずともアミダーゼを発現することができ、アクリルアミド分解性が非常に高い麹菌を提供することを目的とする。さらに、本発明は、アクリルアミドの低減方法、アクリルアミド低減飲食品の製造方法、およびアクリルアミド低減飲食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すアクリルアミド分解性セルフクローニング麹菌、その麹菌を用いてアクリルアミド含有物からアクリルアミドを低減させる方法、アクリルアミド低減飲食品の製造方法、およびアクリルアミド低減飲食品により、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の対象となるセルフクローニング麹菌は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子または前記ポリペプチドをコードする遺伝子と相補的な塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る配列を有し、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、誘導培養なしに発現し得る状態で導入されることを特徴とする。
また本発明の遺伝子は、改良エノラーゼプロモーターの下流に作用的に連結されていることを特徴とする。
本発明にかかるセルフクローニング麹菌は、アミダーゼの比活性が少なくとも27μmol/min/mg以上であることを特徴とする。
本発明にかかるセルフクローニング麹菌は、リアルタイムPCR法において、アミダーゼ遺伝子の発現量がセルフクローニング前の元株と比較して少なくとも2000倍以上であることを特徴とする。
また本発明にかかるアクリルアミド含有物からアクリルアミドを低減させる方法は、本発明にかかるセルフクローニング麹菌をアクリルアミド含有物と接触処理する工程を含むことを特徴とする。
前記方法において、本発明にかかるセルフクローニング麹菌を、乾燥ヘチマ、セルロース、ゲル状ビーズ、多孔性ガラスビーズ、多孔質セラミックス、および不織布からなる群より選択される担体に保持することができる。前記セルフクローニング麹菌を担体に保持することは、培養時に菌体が脆弱になることを防ぐことができる点で好ましい。
本発明にかかる接触処理は、25℃以上、45℃以下の温度で往復振とう培養する工程を含むことができる。往復振とう培養する場合の温度は、下限の温度が25℃以上であり、好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは32℃以上である。上限の温度が45℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。往復振とう培養する場合の温度は、25℃以上であれば酵素反応の至適温度を下回ることがなく、45℃以下であれば酵素失活が起こることはない。
また本発明にかかるアクリルアミド低減飲食品の製造方法は、セルフクローニング麹菌をアクリルアミド含有飲食品と接触処理する工程を含むことを特徴とする。
また本発明によると、セルフクローニング麹菌を接触処理することにより、処理前と比較してアクリルアミドの残存率が50%以下である飲食品を提供することができる。
本発明によると、セルフクローニング麹菌を接触処理することにより、1−プロパノール、酢酸エチル、2−メチル−1−ブタノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、エタノール、および2−ペンタノンが、処理前と比較してそれぞれ2倍以上増加した飲食品を提供することができる。
本発明によると、アクリルアミドの含有量が4ppb以下であるコーヒー飲料を提供することができる。
本発明によれば、アクリルアミドを分解するアミダーゼ活性の高いセルフクローニング麹菌を提供することができる。このようなセルフクローニング麹菌を用いることにより、アクリルアミドの含有率が高い飲食品、例えばコーヒー、ほうじ茶などから効率的かつ安全にアクリルアミドを分解することができる。また、本発明の菌株は、誘導培養を行わずにアミダーゼを産生することができるため、誘導培養の工程を省いて工業的にアクリルアミド低減飲食品を提供することができる。
製造例1におけるセルフクローニングに用いたベクターPenoA142の構築手順を示す図である。 製造例2におけるセルフクローニングに用いたpSENSelf2プラスミドの構築手順を示す図である。 製造例4および5における染色体上の形質転換用遺伝子断片の模式図を示す。 製造例5におけるサザンブロッティング法による解析結果を示す。図4Aは、ターミネーター部分を認識するプローブを用いた場合、図4Bは、pUC118部分を認識するプローブを用いた場合の解析結果を示す。 試験例1におけるセルフクローニング麹菌のアミダーゼ比活性の測定結果を示す。 試験例2におけるセルフクローニング麹菌のアミダーゼ遺伝子発現量をリアルタイムPCR法により測定した結果を示す。 試験例3におけるアクリルアミド添加水でのセルフクローニング麹菌のアクリルアミド低減試験の結果を示す。 試験例4におけるアクリルアミド添加コーヒーでのセルフクローニング麹菌のアクリルアミド低減試験の結果を示す。 試験例5におけるアクリルアミド無添加コーヒーでのアクリルアミド低減試験の結果を示す。図9Aはアクリルアミド無添加のコーヒー抽出液におけるアクリルアミド低減効果を示し、図9Bはアクリルアミド無添加のコーヒー製品におけるアクリルアミド低減効果を示す。 試験例6におけるコーヒー抽出液でのカフェイン低減試験の結果を示す。 試験例7におけるコーヒー抽出液でのリン酸および有機酸量の測定結果を示す。 試験例8におけるコーヒー抽出液でのクロロゲン酸類量の測定結果を示す。 試験例10におけるコーヒー抽出液での官能評価試験の結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、アクリルアミドを分解するタンパク質であるアミダーゼをコードする遺伝子を高発現するセルフクローニング麹菌に関する。本発明が対象とする麹菌は、アクリルアミド分解活性を有するものであれば、いかなるアスペルギルス属(Aspergillus)麹菌であっても良いが、アクリルアミド分解活性が高いものが好ましい。アスペルギルス属(Aspergillus)の糸状菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、およびアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、歴史的に飲食品として安全に摂取されてきたアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)が挙げられる。
本発明において「セルフクローニング」とは、宿主に導入されたDNAが、当該微生物と分類学上の同一の種に属する微生物のDNAのみであることをいう。食品安全委員会でセルフクローニングであることの認定を受けることにより、当該微生物を「遺伝子組換え体」ではなく、通常の食品微生物として用いることができる。本発明においては、例えば、アスペルギルス・オリゼ由来のDNAを用いて遺伝的に改変されてアミダーゼ遺伝子を高発現するアスペルギルス・オリゼは「セルフクローニング麹菌」である。アスペルギルス・オリゼ由来のアミダーゼタンパク質のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。また、アスペルギルス・オリゼ由来のアミダーゼ遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
本発明において「核酸分子」とは、DNAやRNAの遺伝情報の保存、遺伝情報の伝達に関与する分子をいい、特定のタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子、またはこれと相同な遺伝子を含む。「遺伝子」は、自然物に限られず、人工的に生成された遺伝子も含まれる。「相同な遺伝子」とは、当該遺伝子と塩基配列において相同性の高い遺伝子をいい、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有する遺伝子をいう。本発明では、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子またはこれと相同な遺伝子は、自然物だけでなく、人工的にも生成され得る。本発明において「ハイブリダイゼーション」との用語は、Sambrook et al.(Molecular Cloning. A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)において定義されているように用いられる。「ストリンジェントな条件」とは、塩濃度、有機溶媒、温度、その他の条件によって定義される。すなわち、塩濃度の低下、有機溶媒濃度の増加、またはハイブリダイゼーションの温度上昇などによってストリンジェンシーは増加する。ハイブリダイゼーション後の洗浄条件もストリンジェンシーに影響を与える。洗浄条件においても、塩濃度や温度により影響を受ける。例えばストリンジェントな条件とは、6×SSCの高イオン濃度下、65℃でハイブリダイズさせた後、1×SSCおよび0.1%SDSにより55℃で1時間洗浄した後に、なおハイブリダイゼーションを形成しているような条件をいう。
本発明において、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(以下、アミダーゼ遺伝子、または目的遺伝子とも言う)を高発現させるためのセルフクローニング麹菌は、麹菌由来のプロモーター配列、アミダーゼ遺伝子、およびターミネーター配列を有する。さらには、形質転換において好適に利用され得る選択マーカー配列を有していてもよい。前記プロモーターは麹菌において機能し得るプロモーターであればよく、例えば、エノラーゼプロモーター、ADH1プロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、α−アミラーゼプロモーター、グルコアミラーゼプロモーター、セルラーゼプロモーター、セロビオハイドラーゼプロモーター、アセトアミダーゼプロモーター等のプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。好適には、恒常的に高い転写能を有することからエノラーゼプロモーターが用いられる。
本発明において、「改良エノラーゼプロモーター」とは、麹菌のエノラーゼプロモーター中に麹菌のアミラーゼプロモーター内に共通して存在するシスエレメントであるregionIIIを12タンデム導入したプロモーターである。導入前に比べ、20倍の強さを有する転写能の高いプロモーターである(引用文献:Biosci. Biotechnol. Biochem., 69(1), 206−208, 2005)。
本発明における目的遺伝子は、前記プロモーター配列の下流(3‘末端側)に作用的に連結され得る。「作用的に」連結しているとは、ある2つの核酸配列が、メッセンジャーRNAに転写されるために正しい配向および正しい読み取り枠で連結されていることをいう。形質転換用ベクターを構築するための核酸配列の挿入、連結、および除去などには、公知の遺伝子工学的手法を用いることができる。
本発明のターミネーター配列は、目的遺伝子の発現においてメッセンジャーRNAの転写を停止させる機能があれば特に限定されない。
本発明の選択マーカー配列は、麹菌の形質転換体を作成する際に使用されている選択マーカー配列であれば特に限定されない。例えば、sCマーカー、niaDマーカー、argBマーカー、adeAマーカー、ptrAマーカー、pyrGマーカー等を使用することができるが、染色体上にホモロガスに遺伝子導入できるため、安定的な遺伝子発現を期待できるという理由からsCマーカーが好ましい。
本発明において、各塩基配列の連結または除去には制限酵素認識配列を使用することができる。制限酵素を用いることにより、大腸菌由来の核酸配列を除去し、セルフクローニング麹菌の作成が容易となる。しかし、形質転換用ベクターには余分な制限酵素配列を含まずに設計することが好ましい。
また本発明において、形質転換用ベクターにはエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリAシグナル、複製起点などを付加することができる。
本発明の形質転換体は、麹菌細胞内で目的遺伝子を発現するための発現単位(プロモーター配列、目的遺伝子のオープンリーディングフレーム、ターミネーター配列)が少なくとも1つ含まれるが、前記発現単位が複数含まれていてもよい。本発明において「コピー数1」の形質転換体とは、宿主DNAに目的遺伝子の発現単位が1つ形質転換されていることを示し、その発現単位の形質転換された数によって、「コピー数2」、「コピー数3」、「コピー数4」、またはそれ以上のコピー数を有する形質転換体があり得る。
本発明において、「ホモロガスな状態での形質転換」とは、宿主の染色体における目的の部位に対して目的遺伝子が挿入されることをいう。また、「ヘテロガスな状態での形質転換」とは、形質転換を行うことにより、宿主の染色体における目的としていない部位に対して目的遺伝子が挿入されることをいう。
本発明において形質転換方法は、例えばプロトプラスト−PEG法、カルシウム−PEG法、エレクトロポレーション法等の公知の方法を採用できる。プロトプラスト−PEG法による遺伝子導入は、Negrutiu et al. Plant Mol.Biol.(1987) 8:363−373およびMathur et al.“PEG−mediated protoplast transformation with naled DNA”、 Methods in Molecular Biology 82:Arabidopsis Protocolsに記載の方法を採用することができる。
麹菌の染色体内に目的遺伝子を含む発現単位が形質転換により挿入されたことは、プローブを用いたサザンブロット法、PCR法等の公知の方法により確認することができる。本発明において「プローブ」とは、目的とする配列に対して特異的にハイブリダイズするように設計された分子をいう。例えば、DNA、RNA、PNA等が挙げられる。
上記形質転換方法により得られた形質転換体は、目的遺伝子を発現し得るため、培養することにより目的タンパク質を得ることができる。形質転換体の培養方法は、麹菌の培養に通常用いられる培地で、通常の培養条件を採用することができる。例えば、YPD(Yeast peptone dextrose)培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、デキストロース2%、いずれもw/v、pH6.5)およびCD(Czapek−Dox)培地(スクロース3%、NaNO0.3%、MgSOO 0.05%、KCl 0.05%、KHPO 0.01%、FeSO・HO 0.001%、いずれもw/v、pH9.0)等を用いることができるが、これらに限定されない。形質転換体の培養温度の下限は、25℃以上であり、好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは32℃以上である。形質転換体の培養温度の上限は、45℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。形質転換体の培養温度が25℃以上であれば酵素反応の至適温度を下回ることがなく、45℃以下であれば酵素失活が起こることはない。
得られた目的タンパク質は、必要であれば適宜単離または精製された後、定性分析または定量分析に供されるが、必ずしも精製されなくてもよい。精製方法としては、エタノール沈殿、酸抽出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、中高圧液体クロマトグラフィー(FPLC)、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、および超臨界流体クロマトグラフィー等の公知の方法を採用することができる。
本発明において得られたアミダーゼタンパク質の酵素活性は、例えば上記YPD培地で培養された麹菌の菌体を、予めアクリルアミドを添加したMcllvaine緩衝液に加えて、一定時間反応後に生成したアクリル酸をHPLCで定量することにより算出することができる。具体的な一例として、以下の測定方法を示す。麹菌胞子を1×10spores/mlでYPD培地を用いて、30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行った後、菌体を集菌、洗浄後、液体窒素により凍結させた菌体を乳鉢ですりつぶす。湿菌体量の2倍量の0.1M−Mcllvaine緩衝液(pH7.0)0.4mlを加え、菌体内酵素を抽出する。得られた抽出液0.4mlにアクリルアミド2000ppm含有0.1M−Mcllvaine緩衝液(pH7.0)0.4mlを加え、30℃で30分間反応後、0.5N−HClを0.2ml添加して反応を停止させる。この反応液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、生成したアクリル酸量をHPLCで定量する。アクリルアミドは東京化成社製を用い、HPLCは島津製作所社製LC−2010AHT HPLCシステム、カラムは資生堂社製CAPCELL PAK C8を用いる。移動層は0.1%(w/v)リン酸水溶液、測定条件はカラム温度40℃、検出波長200nm、送液速度1ml/minで行う。アミダーゼの比活性はタンパク質1mgあたり1分間に生成したアクリル酸量で算出する。本発明のセルフクローニング麹菌のアミダーゼの比活性は、少なくとも27μmol/min/mg以上であり、50μmol/min/mg以上が好ましく、100μmol/min/mg以上がより好ましい。
本発明において得られるセルフクローニング麹菌のアミダーゼ遺伝子の発現量は、公知の方法により測定することが可能であり、例えばリアルタイムPCR法により測定することができる。リアルタイムPCR法によれば、ハウスキーピング遺伝子等の発現量を標準として、目的遺伝子であるアミダーゼ遺伝子の発現量の相対値を測定することが可能である。リアルタイムPCR装置としては7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems社製)、Light Cycler 2.0(Roche社製)などを用いることができるが、これらに限定されない(参考文献:Watson, R. 1993. Kinetic PCR: Real time monitoring of DNA amplification reactions. Biotechnology 11:1026−1030)。
リアルタイムPCR法により、アミダーゼ遺伝子の増幅を検出するためにはプライマー配列としては、以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用することができる。
フォワードプライマー: TGTCGCTCAATTAGCCAATGG(配列番号3)
リバースプライマー: TGATGAGCCAGTGCAGCTCTT(配列番号4)
リアルタイムPCR法により、アミダーゼ遺伝子の増幅を検出するためのサイクリング・プロトコル(サイクル条件)としては、50℃で2分、95℃で10分、その後45サイクルを95℃で15秒、60℃で60秒で行うことができる。本発明のセルフクローニング麹菌のアミダーゼ遺伝子の発現量は、セルフクローニング前の元株と比較して少なくとも2000倍以上であり、5000倍以上が好ましく、10000倍以上がより好ましい。
本発明により得られたセルフクローニング麹菌は、様々な工業的および商業的な利用法に用いられ得る。例えばセルフクローニング麹菌をアクリルアミド含有物に接触処理することにより、アクリルアミド含有物からアクリルアミドを低減させることが可能である。またセルフクローニング麹菌をアクリルアミド含有飲食品に接触処理することにより、アクリルアミド低減飲食品の製造方法を提供することが可能である。またセルフクローニング麹菌からアミダーゼタンパク質を精製して、アクリルアミド含有物に加えることも可能である。
本発明において「接触処理」とは、アクリルアミド含有物に対して、本発明のセルフクローニング麹菌を物理的に接触させることをいう。アクリルアミド含有物は液体に限らず、固体または粉状物であってもよい。
上記接触処理に際しては、本発明のセルフクローニング麹菌を、そのまま使用することもできるが、担体に保持(以下、固定とも言う)させた状態でアクリルアミド含有物に接触させることもできる。担体としては、乾燥ヘチマ、セルロース、ゲル状ビーズ、多孔性ガラスビーズ、多孔質セラミックス、不織布等の適宜なものを使用することができるが、麹菌の付着のために担体表面が粗いものが好ましく、培養時に本発明のセルフクローニング麹菌が弱らないように多孔性の担体であることが好ましい。乾燥ヘチマは公知の方法で調整することができ、例えば、4mm角程度に裁断したヘチマを乾燥させて作成することができる。
本発明のセルフクローニング麹菌の固定化の方法としては、公知の方法で採用することができ、例えば結合法および包括法にて行うことができるが、これらに限定されない。結合法は、焼結ガラス、多孔質セラミックス、多孔性ガラスビーズ、キトサン、セライト、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、スポンジ、綿等の水不溶性担体にセルフクローニング麹菌を固着させる方法である。包括法は、アルギン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、カラギーナン、アガロース、セルロース、デキストリン等の天然または合成のポリマーのマトリクス中に菌体を取り込ませる方法である。
上記接触処理に際しては、適宜な条件によりアクリルアミド含有物と本発明のセルフクローニング麹菌とを接触させることができる。振とう方法としては、回転振とう、往復振とう等の公知の方法を採用することができるが、これらに限定されない。振とう中の溶存酸素濃度を高めるために、往復振とうが好ましい。往復振とう時の回転速度の下限は、50rpm以上で行うことができ、好ましくは80rpm以上で行うことができ、さらに好ましくは90以上で行うことができる。往復振とう時の回転速度の上限は、200rpm以下で行うことができ、好ましくは150rpm以下で行うことができ、さらに好ましくは120rpm以下で行うことができる。50rpm以上の回転速度であれば、菌体吸着量が不足せず、200rpm以下の回転速度であれば、菌体同士が激しく接触することがなく、菌体量が確保できる。振とう時の温度条件の下限は、25℃以上であり、好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは32℃以上である。振とう時の温度条件の上限は、45℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。振とう時の温度条件が25℃以上であれば酵素反応の至適温度を下回ることがなく、45℃以下であれば酵素失活が起こることはない。
本発明のセルフクローニング麹菌をアクリルアミド含有飲食品と接触処理することにより、アクリルアミド低減飲食品を製造することが可能である。ここで「飲食品」とは、飲料および食品を示しており、「アクリルアミド含有飲食品」とは、アクリルアミドを含む飲食品として知られているものをいい、飲料ではコーヒー、ほうじ茶、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ビール、カカオ飲料などが挙げられ、食品では、じゃがいもの加工品であるポテトチップス、フライドポテトなど、穀物加工品であるトースト、朝食用シリアルなど、チョコレート製品、乳製品、ココアパウダー、乳幼児用ビスケット、またはベビーフードなどが挙げられるが、これらに限定されない。
アクリルアミド低減飲料を製造する場合は、液体の飲料に本発明のセルフクローニング麹菌を接触させて処理することで、アクリルアミドを低減させる。その後、セルフクローニング麹菌を沈殿、ろ過等の公知の分離方法により除去するか、高温、低温、凍結等の公知の方法により不活化させることができるが、これらに限定されない。また、食用としての安全性が認められる場合は、セルフクローニング麹菌の除去や不活化を行わずにアクリルアミド低減飲料とすることも可能である。
アクリルアミド低減食品を製造する場合は、製造段階において、本発明のセルフクローニング麹菌を食品の原料に混ぜ込むこと、または、固体の食品に対して、本発明のセルフクローニング麹菌を含む液体を噴霧することができるが、これらに限定されない。食品が製造段階において液状物である場合は、この液状物に本発明のセルフクローニング麹菌を接触させて処理することができる。本発明のセルフクローニング麹菌と接触処理した液状物を、固形物に加工すること、またはフリーズドライ処理等の方法により、急速に凍結乾燥させて加工することも可能である。
本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理することにより、処理前と比較してカフェインをも低減させたアクリルアミド低減飲食品を製造することもできる。
本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理することにより、処理前と比較してクエン酸、リンゴ酸、キナ酸、グリコール酸、乳酸、ギ酸、酢酸等の有機酸を低減させ、かつ処理前と比較してリン酸を増加させたアクリルアミド低減飲食品を製造することもできる。
本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理することにより、処理前と比較してモノクロロゲン酸、フェルロイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸等のクロロゲン酸類を低減させたアクリルアミド低減飲食品を製造することができる。
本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理することにより、処理前と比較して1−プロパノール、酢酸エチル、2−メチル−1−ブタノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコールなどの香気成分を増加させたアクリルアミド低減飲食品を製造することができる。これらの香気成分は、処理前と比較して、2倍増加させることができ、好ましくは5倍、さらに好ましくは8倍増加させることができる。
アクリルアミド低減飲食品がコーヒーである場合は、本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理したことにより、様々な香気成分が増減して、コーヒーに花のような香りを与え、苦味や濃厚感の少ない軽い風味のコーヒーとすることができる。
次に、製造例、試験例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1](PenoA142の作成手順)
pSENSelf2プラスミドの作成手順を、図1および図2に沿って説明する。図1に示すように、アスペルギルス・オリゼ由来の改良プロモーターであるPenoA142の作成手順を説明する。プラスミドpUC118(タカラバイオ社製)を制限酵素DraIIIおよびSalIで消化した。PenoA前半部分をプライマーX1(配列番号5)、Y1(配列番号6)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株(独立行政法人酒類総合研究所より入手)のゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素DraIIIにより消化をして、さらにregionIIIをプライマーX2(配列番号7)、Y2(配列番号8)を用いて、PCR法による増幅を行い、制限酵素XhoI処理後に平滑末端化後、制限酵素SalIで消化した。次に上述のpUC118、PenoA前半部分、およびregionIIIの3断片をライゲーションした。
次に、得られたプラスミドを制限酵素EcoRVおよびSalI消化した。PenoA後半部分をプライマーX3(配列番号9)、Y3(配列番号10)を用いてPCR法による増幅を行い、制限酵素SalIで消化した後、2断片をライゲーションした。
続いて、得られたプラスミドを制限酵素EcoRVで消化し、脱リン酸化した。さらにregionIIIをプライマーX4(配列番号11)、Y4(配列番号12)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株のゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素EcoRV処理後にリン酸化した。これら2断片をライゲーションした。
続いて、得られたプラスミドを制限酵素EcoRVで消化し、脱リン酸化した。さらにregionIIIをプライマーX4(配列番号11)、Y4(配列番号12)を用いて得られたプラスミドを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素EcoRV処理後にリン酸化した(regionIII2タンデム断片)。これら2断片をライゲーションした。これにより得られたプラスミドに上述の方法でさらに2個のregionIII2タンデム断片をライゲーションした。この方法を2回繰り返し、regionIIIの個数を6個にした。
得られたregionIII6タンデムを有するプラスミドを鋳型としregionIII6個をプライマーX5(配列番号13)、Y4(配列番号12)を用いて、PCR法による増幅を行い、制限酵素EcoRV処理後にリン酸化した。この断片を同プラスミドの制限酵素EcoRV部位に導入した。これによりPenoA142(pUC118−PenoA142)を構築した。
[製造例2](pSENSelf2プラスミドの構築)
図2に示すように、前述のPenoA142(pUC118−PenoA142)を制限酵素SalIおよびSapIにて消化した。2512ターミネーターをプライマーX6(配列番号14)、Y6(配列番号15)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株ゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素SalI処理後にリン酸化した。次に、後半1050塩基を欠失したsCマーカーをプライマーX7(配列番号16)、Y7(配列番号17)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株ゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素SapI処理後にリン酸化した。続いてこれらの3断片をライゲーションした。
得られたプラスミドを制限酵素NarIおよびPshAIにて消化した。次に前半565塩基を欠失したsCマーカーをプライマーX8(配列番号18)、Y8(配列番号19)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株ゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素NarIおよびPshAIにて処理した。次にこれら2断片をライゲーションした。
これによりpSENSelf2プラスミドを構築することができた。pSENSelf2プラスミドへのアミダーゼ遺伝子導入後に制限酵素KpnIで消化し、アミダーゼ遺伝子を有する断片を精製すれば、麹菌以外の配列を1塩基も持たない遺伝子断片を取得することができる。この断片を用いて麹菌の形質転換を行うことにより、外来の塩基を1塩基も持たないセルフクローニング株の取得が可能となった。
[製造例3](pSENSelf2−amidaseプラスミドの作成)
得られたpSENself2プラスミドを制限酵素PmlIおよびNruIにより消化し、アガロースゲル電気泳動により単離、精製後に脱リン酸化した。プライマーX9(配列番号20)、Y9(配列番号21)を用いてアスペルギルス・オリゼRIB40株ゲノムを鋳型として、PCR法による増幅を行い、制限酵素PmlIおよびNruIにて消化し、リン酸化した。プライマーX9(配列番号20)にはenoA 5’UTRの3’端の5塩基、プライマーY9(配列番号21)には2512ターミネーターの5’端の6塩基を含んでおり、この断片をライゲーションにて導入した。これにより、pSENSelf2−amidaseプラスミドを構築することができた。
[製造例4](形質転換用遺伝子断片の作成)
得られたpSENself2−amidaseプラスミドを大腸菌DH5αに遺伝子導入し、その大腸菌を50μg/mLのアンピシリンナトリウムを含むLB培地50mLで、37℃、一晩培養した後、遠心分離により大腸菌を回収した。市販のプラスミドDNA精製キット(キアゲン社製QIAprep Spin Miniprep Kit)を用いて大腸菌からプラスミドを精製抽出した。次いでこのプラスミドを制限酵素KpnIおよびSwaIで消化し、アガロースゲル電気泳動により、約7.5kbpのsCマーカーとアミダーゼ遺伝子からなる形質転換用遺伝子断片を切り出し、精製を行った。
[製造例5](形質転換体の作成およびサザンブロッティング法による確認)
得られた形質転換用遺伝子断片10μgを用いて、プロトプラスト−PEG法(参考文献:生物工学会誌第76巻、第5号、187−193、1998)により、アスペルギルス・オリゼNS4株(RIB40株から派生した、niaDおよびsC二重欠損株:独立行政法人酒類総合研究所から分譲)(参考文献:Biosci. Biotech. Biochem., 61(8), 1367−1369, 1997)を形質転換し、30株の形質転換体を得た。これら形質転換体をデキストリン・ペプトン培地(2%デキストリン、1%ポリペプトン、0.5%KHPO、0.05%MgSO・7HO)で30℃、3日間振とう培養した後、培養液と菌体を分離した。
ΔΔCT法(参考文献:Relative Quantitation Of Gene Expression : ABI PRISM 7700 Sequence Ditection System : User Bulletin #2 : Rev B)を用いて、各株に挿入された形質転換用遺伝子断片のコピー数を確認した。すなわち、ゲノム中に1コピー存在する遺伝子をコントロールとしてリアルタイムPCRを行い、その比からコピー数の推定を行った。この結果、30株のうち、形質転換用遺伝子断片が挿入されたコピー数がコピー数1であるものは13株、コピー数2であるものは9株、コピー数3であるものは2株、コピー数4であるものは2株であった。形質転換用遺伝子断片が挿入されなかったものは4株であった。
染色体上の形質転換遺伝子断片の模式図を図3に示す。上段のシングルコピー(コピー数1)では、セルフクローニング麹菌の染色体上に形質転換用遺伝子断片が1つ組み込まれた状態を示している。下段のマルチコピーでは、セルフクローニング麹菌の染色体上に形質転換用遺伝子断片が複数組み込まれた状態(この図ではコピー数2)を示している。
次いで、得られた形質転換体から4株を選び、常法によりゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを、制限酵素BglIIで消化し、ターミネーター部分またはpUC118部分を認識するプローブを用いてサザンブロッティング法により解析を行った。図3において、ターミネーター配列上部の横棒は、下記サザンブロッティング法におけるプローブの認識部位を示している。斜体文字Bで示す制限酵素による切断部によりシングルコピー株では11.6kbp、マルチコピー株では11.6kbpおよび7.6kbpが形成されることが示されている。また、BglIIはベクターのpUC118部分を切断することはないため、pUC118部分が仮に混入し、それがゲノムに組み込まれていたとしても、検出することができる。
サザンブロッティング法による解析結果を図4に示す。図4Aは、ターミネーター部分を認識するプローブを用いた場合、図4Bは、pUC118部分を認識するプローブを用いた場合の解析結果を示している。図4Aに示すように、サンプル番号11、18、26では、11.6kbpおよび7.6kbpの2本のバンドが検出され形質転換用遺伝子断片が宿主染色体にホモロガスな状態で挿入されていることが確認された。サンプル番号6では、7.6kbpのバンドは検出されたが、11.6kbpのバンドは検出されなかったため、形質転換用遺伝子断片が宿主染色体にヘテロガスな状態で挿入されていることが確認された。なお、3.7kbpのバンドは、宿主ゲノム上に存在するターミネーターに由来する。図4Bに示すように、pUC118部分を認識するプローブを用いた場合、サンプル11、18、26では、バンドが検出されなかった。この解析結果から、形質転換体のゲノムには、大腸菌プラスミド由来のDNAは挿入されておらず、形質転換体はセルフクローニング株であることが確認できた。
[試験例1](セルフクローニング麹菌のアミダーゼ比活性の測定)
セルフクローニングを行う前の元株(親株ともいう)であるNS4株、コピー数1の麹菌株、コピー数2の麹菌株、コピー数3の麹菌株、およびコピー数4の麹菌株は、YPD(Yeast peptone dextrose)培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、デキストロース2%、いずれもw/v、pH6.5)を用いて、2×10spores/ml、30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行った。No.100株はYPD培地で30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行った後、200ppmアクリルアミド添加CD(Czapek−Dox)培地(スクロース3%、NaNO0.3%、MgSOO 0.05%、KCl 0.05%、KHPO 0.01%、FeSO・HO 0.001%、いずれもw/v、pH9.0)を用いて、35℃、2日間、100rpmで振とう培養を行った。ここで、No.100株はセルフクローニングされた菌株ではなく、アクリルアミド添加CD培地で誘導培養を行うことにより、従来株より多くのアミダーゼを産生することが知られている株である(特許文献1)。
アミダーゼ比活性の測定結果を図5に示す。図5の縦軸は測定されたアミダーゼの比活性値(μmol/min/mg)、横軸は実験に用いた菌株の種類を示す。麹菌胞子を1×10spores/mlでYPD培地を用いて、30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行った後、菌体を集菌、洗浄後、液体窒素により凍結した菌体を乳鉢ですりつぶし、湿菌体量の2倍量の0.1M−Mcllvaine緩衝液(pH7.0)0.4mlを加え、菌体内酵素を抽出した。得られた抽出液0.4mlにアクリルアミド2000ppm含有0.1M−Mcllvaine緩衝液(pH7.0)0.4mlを加え、30℃で30分間反応後、0.5N−HClを0.2ml添加して反応を停止させた。
この反応液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、生成したアクリル酸量をHPLCで定量した。アミダーゼの比活性はタンパク質1mgあたり1分間に生成したアクリル酸量で表した。アクリルアミドは東京化成社製を用いた。HPLCは島津製作所社製LC−2010AHT HPLCシステム、カラムは資生堂社製CAPCELL PAK C8を用いた。移動層は0.1%(w/v)リン酸水溶液、測定条件はカラム温度40℃、検出波長200nm、送液速度1ml/minで行った。
[試験例2](セルフクローニング麹菌のアミダーゼ遺伝子発現量の測定)
セルフクローニング麹菌におけるアミダーゼ遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法で測定した結果を図6に示す。図6の縦軸はセルフクローニングを行っていない元株(NS4)を1とした各麹菌株のアミダーゼ遺伝子の発現量を示す。横軸は実験に用いた麹菌株の種類を示す。リアルタイムPCR装置は、7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems社製)を用い、アミダーゼ遺伝子の増幅を検出するためにはプライマー配列としては、以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用した。
フォワードプライマー: TGTCGCTCAATTAGCCAATGG(配列番号3)
リバースプライマー: TGATGAGCCAGTGCAGCTCTT(配列番号4)
アミダーゼ遺伝子の増幅を検出するためのサイクリング・プロトコルは、50℃で2分、95℃で10分、その後45サイクルを95℃で15秒、60℃で60秒の条件で行った。
[試験例3](アクリルアミド添加水におけるアクリルアミド低減試験)
セルフクローニングを行う前の元株であるNS4株、コピー数1の麹菌株、コピー数2の麹菌株、コピー数3の麹菌株、およびコピー数4の麹菌株は、YPD(Yeast peptone dextrose)培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、デキストロース2%、いずれもw/v、pH6.5)を用いて、30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行った。
乾燥ヘチマは、市販のヘチマを4mm角程度に裁断して、栄養源として、ヘチマ0.5gにYPD培地1.5mlを吸着させ、オートクレーブにより滅菌処理した後、60℃で24時間乾燥させることで作成した。100mlの容器にその乾燥ヘチマ0.5gとYPD培地40mlを加え、オートクレーブにより滅菌処理した後、各セルフクローニング麹菌を2×10spores/ml植菌後、30℃、3日間、100rpmで振とう培養を行うことにより、各菌株を乾燥ヘチマに固定した。この固定化菌株を滅菌水で洗浄した。No.100株はアミダーゼの産生を誘導するため、200ppmアクリルアミド添加CD培地を用いて30℃で3日間、100rpmで振とう培養を行った。ここで乾燥ヘチマは菌体が付着しやすく、かつ菌体の生育に適している。振とう培養を行っても菌体を傷つけずに乾燥ヘチマに保持できるため、菌体を固定化した乾燥ヘチマを再利用することも可能である。
アクリルアミド10ppm添加水に前記固定化菌株を加え、35℃、100rpmで往復振とうさせることにより反応を開始した。反応開始後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間で反応液を回収して、0.45μmフィルターでろ過後、HPLCでアクリルアミドの濃度を測定した。アクリルアミド10ppm添加水におけるアクリルアミド低減試験の結果を図7に示す。図7の縦軸はアクリルアミドの残存率(%)、横軸は各セルフクローニング麹菌を接触処理した経過時間を示す。図7において、No.100株はセルフクローニングされた菌株ではなく、200ppmアクリルアミド添加CD培地で誘導培養を行うことにより、従来株より多くのアミダーゼを産生することが知られている株であり、NS4株はセルフクローニングを行う前の元株である。また、サンプル番号のamd#2は、コピー数1のセルフクローニング麹菌株を示し、サンプル番号のamd#1は、コピー数2のセルフクローニング麹菌株を示し、サンプル番号のamd#18は、コピー数3のセルフクローニング麹菌株を示し、サンプル番号のamd#11は、コピー数4のセルフクローニング麹菌株を示している。
ここで往復振とうによる反応は、反応液中の溶存酸素濃度を増加させることにより、アクリルアミド低減効率を高めることができるため有効である。ここで反応温度を35℃に設定することにより、酵素分解の最適温度であることにより、アクリルアミド低減効率を高めることができるため有効である。
[試験例4](アクリルアミド添加コーヒーにおけるアクリルアミド低減試験)
アクリルアミド10ppm添加コーヒーに前記固定化菌株を加え、35℃、100rpmで往復振とうさせることにより反応を開始した。反応開始後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間で反応液を回収して、0.45μmフィルターでろ過後、HPLCでアクリルアミドの濃度を測定した。アクリルアミド10ppmコーヒーにおけるアクリルアミド低減試験の結果を図8に示す。縦軸はアクリルアミドの残存率(%)、横軸は菌株を接触処理した経過時間を示す。図8において、各麹菌のサンプル番号は試験例3と同様である。
[試験例5](アクリルアミド無添加コーヒーにおけるアクリルアミド低減試験)
アクリルアミド無添加のコーヒー抽出液におけるアクリルアミド低減効果をGC−MSにより測定した結果を図9Aに示す。図9Aの縦軸はアクリルアミドの残存量(ppb)、横軸は本発明のセルフクローニング麹菌を接触処理した経過時間を示す。コーヒー豆(L値17.7)を粉砕した後、95℃の熱水を加水比1:17になるように加水し抽出を行った後、室温まで自然冷却して、コーヒー抽出液とした。このコーヒー抽出液に、前記固定化菌株(コピー数4の麹菌株)を加え、35℃、100rpmで往復振とうさせることにより反応を行った。コーヒー抽出液に対し、前処理として固層抽出を行いサンプル中の夾雑物の除去を行なった。
その後、誘導体化を行なった後GC−MS(GCMS−QP2010、島津製作所製)に供した。GC条件としては、膜厚1.0μmのZB−1(30m×0.32mmI.D.、島津ジーエルシー株式会社製)カラムを用いて、カラム温度は、70℃で1分間、12℃/分で120℃まで温度上昇させ、120℃からは5℃/分で160℃まで上昇させ、その後20℃/分で温度上昇させて300℃で5分間に設定した。気化室温度は270℃、キャリアガスはヘリウムガスを用いた。線速度は55cm/secで行った。MS.条件としては、イオン源270℃、検出器電圧が0.05kv、SIMサンプレートは0.2秒、選択イオンはアクリルアミド、アクリルアミド13C3、ナフタレン−d8、フェナンスレンを用いた。
アクリルアミド無添加のコーヒー製品におけるアクリルアミド低減効果をGC−MSにより測定した結果を図9Bに示す。図9Bの縦軸はアクリルアミドの残存量(ppb)、横軸は麹菌を接触処理した経過時間を示す。コーヒー製品は、一般的な生産工程により製造、販売されている缶コーヒー(無糖タイプ:BRIX1.0)の内容液を用いた。この缶コーヒーに、前記固定化菌株(コピー数4の麹菌株)を加え、35℃、100rpmで往復振とうさせることにより反応を行った。その後、誘導体化を行なった後、上記条件で、GC−MS(GCMS−QP2010、島津製作所製)に供した。
[試験例6](コーヒー抽出液でのカフェイン低減試験)
上記コーヒー抽出液中におけるカフェイン量の経時的変化を測定した結果を図10に示す。図10の縦軸はカフェイン量(mg/100ml)、横軸は処理時間(時間)を示している。コーヒー抽出液の調整、固定化菌株(コピー数4の麹菌株)との接触、および反応は試験例5に記載の方法により行った。検量線は、β−フェネチルアルコールを内部標準とし、HPLCクロマトグラムより得られるカフェインとβ−フェネチルアルコールの面積比を求めることにより作成した。コーヒー抽出液中のカフェインをHPLCにて分析し、カフェインとβ−フェネチルアルコールの面積比を求め、試料中のカフェイン含有量を算出した。HPLC用のカラムは、Nucleosil 10 C18(250mm×4mm I.D.)を用い、移動層はメタノールと0.2M過塩素酸とを2:8の割合で混合した溶液を用い、流速は1.0mL/minで行った。検出には、紫外線分光光度計(検出波長270nm)を用いた。
[試験例7](コーヒー抽出液でのリン酸および有機酸量の測定結果)
コーヒー抽出液中のリン酸および有機酸(クエン酸、リンゴ酸、キナ酸、グリコール酸、乳酸、ギ酸、酢酸)の定量をHPLCによるポストラベル(BTB指示薬)検出法にて行なった結果を図11に示す。図11の縦軸はコーヒー抽出液中のリン酸および有機酸の含有量(mg/100ml)、横軸はセルフクローニング麹菌とコーヒー抽出液との接触処理時間を示している。コーヒー抽出液の調整、固定化菌株(コピー数4の麹菌株)との接触、および反応は試験例5に記載の方法により行った。カラムはShodex RSpak KC−811(30cm x 8mm I.D. ×4)を用い、カラム温度は60℃、移動相は3mM HClO / HOを用い、移動相流速は1ml/minで行った。ラベル化液は15mM NaHPO、2mM NaOH、0.2mM BTBを用い、ラベル化液の流速は0.5ml/minで行った。検出には、紫外線分光光度計(検出波長445nm)を用いた。
[試験例8](コーヒー抽出液でのクロロゲン酸類量の測定結果)
コーヒー抽出液中のクロロゲン酸類(モノクロロゲン酸類、フェルロイルキナ酸類、ジカフェオイルキナ酸類)の定量をHPLCにより行った結果を図12に示す。図12の縦軸はコーヒー抽出液中のクロロゲン酸類の含有量(mg/ml)、横軸はセルフクローニング麹菌とコーヒー抽出液との接触処理時間を示している。コーヒー抽出液の調整、固定化菌株(コピー数4の麹菌株)との接触、および反応は試験例5に記載の方法により行った。カラムはInertsil ODS−3(150mm x 4.6mm I.D.)を用い、カラム温度は40℃、移動相はA)10mM リン酸緩衝液、およびB)10mMリン酸のアセトニトリル溶液を用い、移動相流速は1ml/minで行った。HPLC時のグラジエント条件を表1に示す。
(HPLC時のグラジエント条件)
Figure 2013158289
[試験例9](コーヒー抽出液での香気成分の変化)
セルフクローニング麹菌との接触処理によるコーヒー抽出液中の香気成分の変動をGC−MSにより測定した結果を表2に示す。表2に記載の香気成分のうち、接触処理により増加した香気成分を表3に示す。コーヒー抽出液の調整、固定化菌株(コピー数4の麹菌株)との接触、および反応は試験例5に記載の方法により行った。ヘッドスペース条件は、温度60℃、保温時間30min、トランスファー温度180℃、ニードル温度120℃、試料注入時間0.1min、キャリアガス圧力110kPaで行った。GC条件は、カラムZB10.32mmI.D.膜厚3.0μm、カラム温度40℃(5min)−5℃/min−60℃−15℃/min−250℃(3min)、He圧力80kPa、注入口温度250℃、スプリット比0、スプリット流量20.4mL/minで行った。MS条件は、インターフェース温度300℃、SIMサンプリングレート0.2秒で行った。
Figure 2013158289

Figure 2013158289
[試験例10](官能評価試験)
セルフクローニング麹菌との接触処理によるコーヒーの香味の変化についての官能評価試験結果を図13に示す。図13の縦軸は、各評価項目についての平均評点、横軸は各評価項目の別を示している。各評価項目について4種の棒グラフがあり、左から順に、接触処理前、接触処理後3時間、接触処理後6時間、または接触処理後16時間における評価結果を示している。
UCC上島珈琲株式会社R&Dセンターに所属する20〜40代の中から男性7名、女性4名の合計11名(平均年齢30.5歳)をパネラーとして選出し官能評価試験を実施した。コーヒー抽出液の調整、固定化菌株(コピー数4の麹菌株)との接触、および反応は試験例5に記載の方法により行った。そのコーヒー抽出液試料および無処理試料(コントロール)を適宜プラスチック容器に分注し、サンプル名は記号化し、品温10℃で供試し、官能検査室で実施した。コーヒー抽出液試料は、試験例5のアクリルアミド無添加コーヒーの調整条件に準じた。
評価項目はHayakawaらの提案した属性評価用語を参考に、香りの質として「花のような香り」、「果実のような香り」、「カラメルのような香り」、味覚の評価として「酸味」、「苦味」、「渋味」、「濃厚感」、「後味」を選定した(参考文献:Hayakawa, F., Kazami, Y., Wakayama,H., Oboshi, R., Tanaka, H., Maeda, G., Hoshino, C., Iwawaki, H and Iyabayashi, T. Sensory Lexicon of Brewed Coffee for JapaneseConsumers, Untrained Coffee Professionals and Trained Coffee Tasters. Journal of sensory studies,25 (2010) 917−939.)。評価尺度は0を中心に+4点から−4点までの9段階の絶対評価を官能評価用紙に自己記入することにより実施した。さらに同じ官能用紙にコメント欄を設け、パネラーは自由に感想を記述した。匂いについてはサンプルを鼻先で嘆いで評価し、その他の属性についてはサンプルをロに含んで評価を行った。評価結果についてはデータを回収した後、SPSS statistics 17.0 for Windows(登録商標)(エス・ピー・エス・エス(株))を用いて多重比較を行った。自由記述によるコメントについては、「日本酒や甘酒を連想させる香り」「アルコールを感じる香り」「香りが良い」との回答があった。
アミダーゼ遺伝子をエノラーゼプロモーター遺伝子の下流に接続して遺伝子導入を行ったセルフクローニング麹菌を作成することによって、誘導培養をすることなく、アミダーゼ遺伝子を発現させることが可能となり、アクリルアミドを低減させた飲食品の製造が可能となる。

Claims (11)

  1. 配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子または前記ポリペプチドをコードする遺伝子と相補的な塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る配列を有し、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、誘導培養なしに発現し得る状態で導入されたセルフクローニング麹菌。
  2. 前記遺伝子が、改良エノラーゼプロモーターの下流に作用的に連結されている請求項1記載のセルフクローニング麹菌。
  3. アミダーゼの比活性が少なくとも27μmol/min/mg以上である、請求項1または2記載のセルフクローニング麹菌。
  4. リアルタイムPCR法において、アミダーゼ遺伝子の発現量がセルフクローニング前の元株と比較して少なくとも2000倍以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載のセルフクローニング麹菌。
  5. アクリルアミド含有物からアクリルアミドを低減させる方法であって、前記請求項1〜4のいずれか1項記載の麹菌を、前記アクリルアミド含有物と接触処理する工程を含む方法。
  6. 前記請求項1〜4のいずれか1項記載の麹菌が、乾燥ヘチマ、セルロース、ゲル状ビーズ、多孔性ガラスビーズ、多孔質セラミックス、および不織布からなる群より選択される担体に保持されている、請求項5記載の方法。
  7. アクリルアミド低減飲食品の製造方法であって、前記請求項1〜4のいずれか1項記載の麹菌を、アクリルアミド含有飲食品と接触処理する工程を含む方法。
  8. 前記請求項1〜4のいずれか1項記載の麹菌が、乾燥ヘチマ、セルロース、ゲル状ビーズ、多孔性ガラスビーズ、多孔質セラミックス、および不織布からなる群より選択される担体に保持されている、請求項7記載の方法。
  9. 前記請求項1〜4のいずれか1項記載の麹菌を接触処理することにより、処理前と比較してアクリルアミドの残存率が50%以下である飲食品。
  10. セルフクローニング麹菌を接触処理することにより、1−プロパノール、酢酸エチル、2−メチル−1−ブタノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、エタノール、および2−ペンタノンが、処理前と比較してそれぞれ2倍以上増加した飲食品。
  11. アクリルアミドの含有量が4ppb以下であるコーヒー飲料。
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