以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本発明の実施形態にかかるエアバッグ装置(以下、エアバッグ装置100)の概要を例示する図である。図1(a)はエアバッグ装置100の作動前の車両を例示した図である。図1(a)その他の図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(up)、D(down)で例示する。
本実施形態では、エアバッグ装置100を、左ハンドル車における運転席102(前列左側の座席)に着座している乗員134(図4(a)参照)を拘束するものとして実施している。以下では、前列左側の運転席102を想定して説明を行うため、例えば車幅方向外側(車外側)とは車両左側を意味し、車幅方向内側(車内側)とは車両右側を意味する。また、上方とは運転席102に正規に着座した姿勢の乗員134から見て頭部136の方向のことであり、下方とは当該乗員134から見て下肢部の方向のことである。
エアバッグ装置100は、乗員134(図4(a)参照)を拘束する部位として、ドライバエアバッグクッション104(図1(b)参照)と、カーテンエアバッグクッション106を備えている。ドライバエアバッグクッション104は、ステアリングホイール108の中央部分110に設けられていて、運転席102の乗員134を前方から拘束する。ドライバエアバッグクッション104は、折畳みや巻回等されて、ステアリングホイール108の中央部分110の内側のハウジング等に収納されている。
図1(b)は、図1(a)のエアバッグ装置100の作動後の様子を例示した図である。ドライバエアバッグクッション104およびカーテンエアバッグクッション106は、その表面を構成する2枚の基布を重ねて縫製や接着することや、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによって袋状に形成されている。
車両に衝撃等が発生すると、車両に備えられた各種センサ(図示省略)が衝突を検知し、これに起因して各エアバッグクッションが備えるインフレータに信号が発信される。この信号を受けることでインフレータからガスが供給され、ドライバエアバッグクッション104はステアリングホイール108の中央部分110のカバーを開裂して膨張展開する。このとき、ドライバエアバッグクッション104は、運転席102の車両前方にて、円形の立体に膨張展開する。
カーテンエアバッグクッション106は、各種センサによってオフセット衝突や側面衝突が検知された場合に、ドライバエアバッグクッション104の車外側にて、サイドウィンドウ112(図2(a)参照)の上方のルーフサイドレール114付近からサイドウィンドウ112に沿って上下方向に膨張展開する。
図2は、図1(b)のカーテンエアバッグクッション106を車内側から見て例示した図である。図2(a)は、カーテンエアバッグクッション106の全体の概要を例示している。
カーテンエアバッグクッション106は、前列の運転席102および後列座席の車外側にて、車両前後方向に広く膨張展開する。カーテンエアバッグクッション106の各所の膨張領域は、ガスの流れや乗員および座席等の構造物に応じて、チャンバと呼ばれる小部屋に区画されている。
カーテンエアバッグクッション106は、上縁に備えられた複数のタブ116を介して車両のルーフサイドレール114に固定されていて、上縁には円筒状のシリンダ型のインフレータ118も併設されている。カーテンエアバッグクッション106の前端は、ストラップ120によって車両のAピラー122に接続されている。なお、作動前のカーテンエアバッグクッション106は、車両下方から巻回や折り畳み等され、車両前後方向に細長い収納形態となって内装材であるヘッドライニング(図示省略)に覆い隠されているため、乗員からは視認不能である。
図2(b)は、図2(a)のカーテンエアバッグクッション106の前側を拡大して例示した図である。カーテンエアバッグクッション106は、前側に設けられた各チャンバを利用して、運転席102の乗員134(図4(a)参照)を拘束する。
第1チャンバ124は、各チャンバの中でも前方に設けられたチャンバであり、運転席102(図1(b)等参照)の乗員134(図4(a)参照)から見て車外側の斜め前方にて膨張展開する。第2チャンバ126は、第1チャンバ124の後方にて、運転席102の乗員134から見て車外側の範囲に膨張展開する。なお、これら第1等の番号は、前方から順に付した便宜的なものに過ぎない。
第2チャンバ126は、車両前後方向において、ステアリングホイール108(図1(a)参照)と運転席102のシートバックとの間に設けられている。この構成の第2チャンバ126によって、乗員134(図4(a)参照)の頭部136を側方から好適に拘束することが可能になっている。
第1シーム部128は、第1チャンバ124と第2チャンバ126とを区分けしている。本実施形態の第1シーム部128は、カーテンエアバッグクッション106の下縁から上方に延びるよう形成され、カーテンエアバッグクッション106の車外側のアウタパネル140(図3参照)と車内側のインナパネル138とを接合または連結している。
第2シーム部130は、第1シーム部128の後方にて、アウタパネル140(図3参照)とインナパネル138とを連結等して形成されている。第2シーム部130は、下縁から上方に向かって第1シーム部128よりも短い寸法で上下方向に延びるよう形成されていて、主に第2チャンバ126の容量の調節のために設けられている。
図3は、図1(b)のエアバッグ装置(エアバッグ装置100)の概略的なA-A断面図である。図3では、図中左側を車両前方として例示している。
カーテンエアバッグクッション106の第1シーム部128は、ドライバエアバッグクッション104を車外側に投影した範囲E1内にて、カーテンエアバッグクッション106の車内側のインナパネル138とアウタパネル140とを接合または連結等して形成されている。
第1チャンバ124は、第1シーム部128の前側で第1シーム部128よりも車幅方向に厚く膨張している。また、第2チャンバ126は、第1シーム部128の後側で第1シーム部128よりも車幅方向に厚く膨張している。したがって、カーテンエアバッグクッション106のうち、ドライバエアバッグクッション104の車外側には、第1シーム部128によって車外側に窪んだ凹部R1が形成されている。なお、一例として、第2チャンバ126の車幅方向の厚みは180mm±20mm程度に設定すると好適である。
ドライバエアバッグクッション104は、第2チャンバ126のうち第1シーム部128に向かって湾曲した湾曲部132に接触しつつ、第1チャンバ124から離間した状態に膨張展開する。すなわち、膨張展開したドライバエアバッグクッション104およびカーテンエアバッグクッション106の間には、ドライバエアバッグクッション104から見て車外側斜め前方に隙間S1が形成されることが本実施形態のエアバッグ装置100の大きな特徴である。なお、一例として、隙間S1は、上面から見て10mmから50mm程度に設定することができる。
図4は、図3のエアバッグ装置(エアバッグ装置100)がオブリーク衝突時の乗員134を拘束する過程を例示した図である。図4(a)は、各エアバッグクッションが膨張展開した初期の状態である。
前列の左側座席である運転席102(図1(b)参照)の乗員134から見て、車幅方向の左側(車外側)は衝突に近い側、いわゆるニアサイドである。反対に、運転席102の乗員134から見て車幅方向の右側(車内側)は衝突に遠い側、いわゆるファーサイドである。車両は、各種センサおよび所定の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を介してニアサイドの衝突が検知されると、ドライバエアバッグクッション104に加えてカーテンエアバッグクッション106も膨張展開させる。
本実施形態では、運転席102に正規に着座した乗員134から見て、車外側の斜め前方には、ドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124との間に隙間S1が形成されている。
図4(b)は、図4(a)よりも乗員134が車外側斜め前方に移動した状態を例示している。車両左側のオブリーク衝突が起こると、乗員134は慣性によって車外側斜め前方に移動し、ドライバエアバッグクッション104の中心よりも車外側の箇所に進入する。この時、本実施形態では、ほぼ同時に、ドライバエアバッグクッション104が乗員134の頭部136の前部に接触し、カーテンエアバッグクッション106の第2チャンバ126が乗員134の頭部136の側部に接触する。
ここで、図2(b)を参照して説明したように、第2チャンバ126には第2シーム部130(図2(b)参照)が設けられている。第2チャンバ126は、第2シーム部130を形成して車幅方向の厚みを調整することで、ドライバエアバッグクッション104と同じタイミングで乗員134の頭部136が接触するよう設定可能になっている。
図4(c)は、図4(b)よりもさらに乗員134が車外側斜め前方に移動した状態を例示している。図3を参照して説明したように、本実施形態では、ドライバエアバッグクッション104から見て車外側斜め前方には、カーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124との間に隙間S1(図3参照)が形成されている。そのため、ドライバエアバッグクッション104は乗員134の頭部136が接触したときに車外側の前方へ回転するように移動することが可能になっている。
ドライバエアバッグクッション104は、ステアリングホイール108の中央部分110を支点にして車幅方向外側に回転させたとき、第2チャンバ126に接触したままスライドして第1チャンバ124に接触可能になっている。このドライバエアバッグクッション104の回転を伴う移動により、乗員134の頭部136に与え得る反力は減り、首を軸にした頭部136の回転を抑えることができる。
例えば、ドライバエアバッグクッション104が前方からカーテンエアバッグクッション106に支えられていて移動不能になっている場合、車外側斜め前方へ移動する頭部136がドライバエアバッグクッションに接触すると、頭部136には上から見て首を軸に時計回りの回転力が生じる場合がある。頭部136にこのような回転が起こると、傷害値は高くなる傾向にある。そこで本実施形態では、隙間S1(図4(a)等参照)を確保しておくことによってドライバエアバッグクッション104を回転可能にし、頭部136に与える反力を抑えている。
上記の作用によって、当該エアバッグ装置100は、乗員134の頭部136と肩等との動きをそろえることができ、頭部136の肩等に対して左右に振り向く回転、および頭部136を上下や左右に傾けるいずれの回転をも大幅に減少または打ち消して拘束する。このように、エアバッグ装置100は、ドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション106の両方によって頭部136を多方向から拘束しつつ、頭部136の角速度を小さくして乗員134の傷害値を効率よく抑えている。
当該エアバッグ装置100の作用効果についてさらに説明する。図5は、図3のエアバッグ装置(エアバッグ装置100)が形成する空間を例示した図である。図5(a)は、図4(a)に対応して、各エアバッグクッションが膨張展開した初期の状態を例示した図である。エアバッグ装置100では、空間S2が存在することで、ドライバエアバッグクッション104はよりスムーズに回転することが可能になっている。
当該エアバッグ装置100では、カーテンエアバッグクッション106は、第1チャンバ124がステアリングホイール108から車幅方向外側に離間した状態に膨張展開する。これによって、膨張展開した状態の第1チャンバ124とドライバエアバッグクッション104との間に、空間S2が形成される。
空間S2は、車幅方向においては、カーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124とステアリングホイール108との間に形成されている。一方、車両前後方向においては、空間S2は、ドライバエアバッグクッション104のうちステアリングホイール108よりも車外側に突出した端部104aから見て、車両前方に広がるように形成されている。
図5(b)は、図5(a)の乗員134が車外側斜め前方に移動した状態を例示した図である。上記の空間S2によって、ドライバエアバッグクッション104は、乗員134によって車両前方に押されたときに、端部104aが空間S2に進入しながら回転することが可能になっている。例えば、乗員134の頭部136が当初はドライバエアバッグクッション104にのみ接触した場合にも、ドライバエアバッグクッション104が空間S2を利用して回転することで頭部136をカーテンエアバッグクッション106にも接触するよう導き、頭部136をドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション106を共に利用して拘束することが可能になっている。
以上のように、当該エアバッグ装置100では、空間S2の作用によって、乗員134の頭部136はドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション106との間によりスムーズに入ることが可能になっている。これによって、当該エアバッグ装置100は、乗員134の首を軸にした頭部136の回転を抑えて、乗員134の傷害値をより低く抑えて拘束することができる。
なお、以上説明した例以外にも、他の例として、当該エアバッグ装置100を前列の右側座席に実施した場合などには、例えば乗員134は車幅方向右側の斜め前方に移動し、頭部136には上方から見て首を中心に反時計回りの回転が生じる場合もある。この反時計回りの回転に対しても、上記のドライバエアバッグクッション104およびカーテンエアバッグクッション106を右側座席に応用すれば、回転を減少または打ち消し、そして頭部136の角速度を小さくすることができる。すなわち、本実施形態のエアバッグ装置100は、左側座席または右側座席のいずれにおいても、同様に実施しその効果を発揮することが可能である。
(変形例)
以下、上述した各構成要素の変形例について説明する。図6以降では既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
図6は、図4(a)のエアバッグ装置100の変形例(エアバッグ装置200)を例示した図である。図6(a)は、図4(a)と同じく、各エアバッグクッションが膨張展開した初期の状態を例示している。エアバッグ装置200は、ドライバエアバッグクッション202が円筒状になっている点で、図4(a)等のエアバッグ装置100と構成が異なっている。
円筒状のドライバエアバッグクッション202は、ステアリングホイール108に底面が接した状態に膨張展開する。ドライバエアバッグクッション202は、車外側かつ後側の角部204で、カーテンエアバッグクッション106の第2チャンバ126の湾曲部132に接触する。エアバッグ装置200においても、ドライバエアバッグクッション202とカーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124との間に隙間S1が確保され、カーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124とステアリングホイール108との間に空間S2が確保されている。
図6(b)は、図6(a)よりも乗員134が車外側斜め前方に移動した状態を例示している。オブリーク衝突において乗員134が車外側斜め前方に移動すると、ほぼ同時に、ドライバエアバッグクッション202が乗員134の頭部136の前部に接触し、カーテンエアバッグクッション106の第2チャンバ126が乗員134の頭部136の側部に接触する。
図6(c)は、図6(b)よりもさらに乗員134が車外側斜め前方に移動した状態を例示している。上述したように、本変形例においても隙間S1(図6(b)参照)および空間S2が形成されているため、乗員134の頭部136がドライバエアバッグクッション202に接触すると、ドライバエアバッグクッション202は車幅方向外側の一部が隙間S1および空間S2に進入し、ドライバエアバッグクッション202は車幅方向外側へ回転するように移動する。
円筒状のドライバエアバッグクッション202は、球形に比べて側部が平面的であり、角部204でカーテンエアバッグクッション106に接触するため、角部204がカーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124に接触して止まるまで、より大きく回転移動することができる。
以上のように、エアバッグ装置200においても、ドライバエアバッグクッション202の回転を伴う移動により、乗員134の頭部136に与え得る反力を減らし、首を軸にした頭部136の回転を抑えてより好適に乗員134を拘束することができる。
図7は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の第1から第3変形例を例示した図である。図7(a)は、第1変形例のカーテンエアバッグクッション220を例示している。カーテンエアバッグクッション220が備える第1シーム部222および第2シーム部228は、それぞれ第1環状部226および第2環状部232を備えている点で、図2(b)の第1シーム部128および第2シーム部130と構成が異なっている。
第1シーム部222はカーテンエアバッグクッション220の下縁から上方に線状に延びた第1線状部224を備え、第1環状部226は第1線状部224の上部から車両前側に湾曲して突出した状態に形成されている。第1シーム部222に第1環状部226を設けることで、第1チャンバ124と第2チャンバ126との間のガス容量を制限して、第1シーム部222の周囲の領域に形成される凹部R1(図3参照)をより広く形成することができる。
第2シーム部228はカーテンエアバッグクッション220の下縁から上方に線状に延びた第2線状部230を備え、第2環状部232は、第2線状部230の上部から車両後側に湾曲して突出した状態に形成されている。第2シーム部230に第2環状部232を設けることで、第2チャンバ126のガス容量を制限し、カーテンエアバッグクッション220とドライバエアバッグクッション104(図4(a)参照)とに乗員134の頭部136が同時に接触するよう、第2チャンバ126の膨張の程度を調節することができる。
図7(b)は、第2変形例のカーテンエアバッグクッション240を例示している。カーテンエアバッグクッション240が備える第1シーム部242は、第1線状部244から第1環状部246が、図7(a)の第1環状部226よりも前側に大きく突出している。この第1環状部246を備える第1シーム部242であれば、凹部R1(図3参照)を前後方向により広く形成することが可能になる。
図7(c)は、第3変形例のカーテンエアバッグクッション260を例示している。カーテンエアバッグクッション260が備える第1シーム部262は、縦長の円形に形成されている。第1シーム部262は、その上下方向にわたって、前後方向により広い凹部R1(図3参照)を形成することができる。
図8は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の第4および第5変形例を例示した図である。図8(a)は、第4変形例のカーテンエアバッグクッション280を例示している。カーテンエアバッグクッション280が備える第2チャンバ282は、下端284が半円状に下方に突出している。
上記の第2チャンバ282は、下端284が車両のドアトリム111(図2(a)参照)の車幅方向内側に重なる程度にまで下方に延びている。一例として、第2チャンバ282は、ドアトリム111の上端から50mm以上重なるよう膨張展開すると好適である。
第2チャンバ282は、車内側から乗員134(図4(c)等参照)が接触した時に、下端284側がドアトリム111(図2(a)参照)に支えられることで、ドアトリム111から反力を得てエネルギー吸収量を高めることができる。したがって、乗員134を受け止めたときの車外放出量を抑えつつ、乗員134の頭部136の回転速度も抑えることが可能になる。第2チャンバ282は、第2シーム部130によって車幅方向の厚みを薄くすると、乗員134との接触のタイミングが調節できる一方でエネルギー吸収量が下がるおそれもある。そのため、第2チャンバ282をドアトリム111に重ねた状態に膨張展開させることは、乗員保護の観点において極めて有益である。
図8(b)は、第5変形例のカーテンエアバッグクッション300を例示した図である。カーテンエアバッグクッション300が備える第1チャンバ302は、下端304が車両のドアトリム111(図2(a)参照)の車幅方向内側に重なる程度にまで下方に延びている。この第1チャンバ302もまた、下端304側がドアトリム111に支えられることで、乗員134を受け止めたときの車外放出量を抑えることが可能になる。第1チャンバ302を備えることによっても、カーテンエアバッグクッション300は乗員134(図4(c)等参照)を受け止めたときの車外放出量を抑えることが可能になる。
図9は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の第6から第8変形例を例示した図である。図9(a)は、第6変形例のカーテンエアバッグクッション320を例示した図である。カーテンエアバッグクッション320が備える第2チャンバ322は、下端324が矩形に下方に突出している。この第2チャンバ322もまた、下端324が車両のドアトリム111(図2(a)参照)の車幅方向内側に重なり、乗員134(図4(c)参照)を受け止めたときの車外放出量を抑えつつ、乗員134の頭部136の回転速度も抑えることが可能になっている。
図9(b)は、第7変形例のカーテンエアバッグクッション340を例示した図である。カーテンエアバッグクッション340が備える第2チャンバ342は、前側半分から下方に突出してドアトリム111(図2(a)参照)に重なって膨張展開する延長部344を有している。延長部344を備えることによっても、第2チャンバ322はドアトリム111から反力を得てエネルギー吸収量を高め、乗員134(図4(c)参照)を受け止めたときの車外放出量を抑えつつ、乗員134の頭部136の回転速度も抑えることが可能になる。
図9(c)は、第8変形例のカーテンエアバッグクッション360を例示した図である。カーテンエアバッグクッションが備える第2チャンバ362は、中央側から下方に突出してドアトリム111(図2(a)参照)に重なって膨張展開する延長部364を有している。延長部364を備えることによっても、第2チャンバ362はドアトリム111から反力を得てエネルギー吸収量を高め、乗員134(図4(c)参照)を受け止めたときの車外放出量を抑えつつ、乗員134の頭部136の回転速度も抑えることが可能になる。
図10は、図2(b)のカーテンエアバッグクッションの第9変形例を例示した図である。カーテンエアバッグクッション380は、第1シーム部382が内部に備えた編み込みテザー384によって形成されている点で、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106と構成が異なっている。
編み込みテザー384は、車両前後方向に並んだ複数のテザー(図10(b)のテザー384a、384b参照)それぞれを、カーテンエアバッグクッション106のインナパネル138とアウタパネル140とに交互に接続するよう上下方向に折れ線状に渡らせることで形成されている。
図10(b)は、図10(a)のカーテンエアバッグクッション380のB-B断面図である。編み込みテザー384は、カーテンエアバッグクッション106のインナパネル138とアウタパネル140それぞれの上下方向の複数個所(例えば接合部386)を、車両前後方向から見て複数のテザー384a、384bが複数回交差しながら連結している。
第1シーム部382は、編み込みテザー384でアウタパネル140とインナパネル138とを連結させてガスの流入を制限した領域として形成されている。第1シーム部382は、ガスの流入量が制限されて窪んだ状態を保ちつつもある程度は膨張することができ、乗員に対する荷重吸収性を発揮することが可能になっている。したがって、カーテンエアバッグクッション380は、第1シーム部382をも含めた広い範囲にて乗員を好適に保護することができる。
図11は、図1(b)のエアバッグ装置100の変形例(エアバッグ装置400)を例示した図である。図11(a)は、前列左側の運転席102用のものを車内側から見て例示している。エアバッグ装置400は、ドライバエアバッグクッション104と、カーテンエアバッグクッション402を備えている。
カーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404は、車両前後方向において、ステアリングホイール108と運転席102のシートバック103との間に設けられている。この構成によって、第2チャンバ404は、乗員134の頭部136を好適に拘束することが可能になっている。
図11(b)は、図11(a)のドライバエアバッグクッション104を単独で例示した図である。ドライバエアバッグクッション104は、ステアリングホイール108のリム109に接触しながら、やや扁平な球形に膨張展開する。
図12および図13は、図11(a)のエアバッグ装置400の各断面図における乗員拘束の過程を例示した図である。図12(a)から図12(c)は、エアバッグ装置400の可動開始から50ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。
図12(a)は、図11(a)のエアバッグ装置400のC-C断面図である。エアバッグ装置400のカーテンエアバッグクッション402は、第2チャンバ404の膨張展開が、ドライバエアバッグクッション104の膨張展開よりも早く完了する構成となっている。これによって、第2チャンバ404は、例えばドライバエアバッグクッション104に乗員134が触れるよりも先に、乗員134の頭部136に側方から触れることが可能になっている。
図12(b)は、図11(a)のエアバッグ装置400のD-D断面図である。E-E断面は、C-C断面よりも下方の位置における水平方向の断面である。エアバッグ装置400においても、ドライバエアバッグクッション104は、第2チャンバ404の湾曲部406に接触しつつ、第1チャンバ408との間に隙間S1を形成する。また、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間には、空間S2が形成される。
図12(c)は、図11(a)のエアバッグ装置400のE-E断面図である。E-E断面は、D-D断面よりもさらに下方の位置における水平方向の断面である。上述したように、ドライバエアバッグクッション104と第1チャンバ408との間に隙間S1が形成され、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間に空間S2が形成されている。
図12(d)から図12(f)は、エアバッグ装置400の可動開始から60ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図12(d)は、図12(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上述したように、カーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404がドライバエアバッグクッション104よりも先に乗員134の頭部136に側方から接触することで、頭部136は回転が抑えられている。
図12(e)は、図12(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。ドライバエアバッグクッション104の中心側は大きく膨張し、乗員134の頭部136は中心よりもやや下側からドライバエアバッグクッション104に接触する。
図12(f)は、図12(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上記図12(e)で乗員134の頭部136がドライバエアバッグクッション104に接触したため、図12(f)に例示するドライバエアバッグクッション104の下側も、前方にやや押されている。
図13(a)から図13(c)は、エアバッグ装置400の可動開始から70ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図13(a)は、図12(d)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。エアバッグ装置400では、先にカーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404が乗員134の頭部136に側方から接触することで、ドライバエアバッグクッション104が頭部136を前方から拘束するときの頭部136の回転を抑えることができる。よって、乗員134の傷害値を好適に抑えることが可能になっている。
図13(b)は、図12(e)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図4(c)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション104は、ステアリングホイール108の中央部分110(図1(a)参照)を支点にして車幅方向外側に回転させたとき、第2チャンバ404に接触したままスライドして第1チャンバ408に接触可能になっている。このドライバエアバッグクッション104の回転を伴う移動によって、乗員134の頭部136に与え得る反力は減り、首を軸にした頭部136の回転を抑えることができる。
図13(c)は、図12(f)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図5(b)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション104は、乗員134によって車両前方に押されたときに、端部104aが空間S2に進入しながら回転することが可能になっている。これによって、エアバッグ装置400においても、頭部136をドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション402を共に利用して拘束することが可能になっている。
図13(d)から図13(f)は、エアバッグ装置400の可動開始から80ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図13(d)は、図13(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。乗員134は、車外側の斜め前方に移動しつつも、上述したドライバエアバッグクッション104およびカーテンエアバッグクッション402の作用によって、頭部136の回転を抑えたまま拘束される。
図13(e)は、図13(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置400においても、乗員134の頭部136と肩等との動きをそろえることができる。すなわちエアバッグ装置400によれば、乗員134の頭部136の肩等に対して左右に振り向く回転、および頭部136を上下や左右に傾けるいずれの回転をも大幅に減少または打ち消して乗員134を拘束することができる。
図13(f)は、図13(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置400であれば、乗員134の首を軸にした頭部136の回転を抑え、これにより乗員134の傷害値をより低く抑えて乗員134を拘束することができる。
このように、エアバッグ装置400においても、ドライバエアバッグクッション104とカーテンエアバッグクッション402の両方によって頭部136を多方向から拘束しつつ、頭部136の角速度を小さくして乗員134の傷害値を効率よく抑えることが可能になっている。
図14は、図6のエアバッグ装置100の変形例(エアバッグ装置420)を例示した図である。図14(a)は、前列左側の運転席用のものを車内側から見て例示している。エアバッグ装置420は、円筒状のドライバエアバッグクッション202と、カーテンエアバッグクッション402を備えている。
図14(b)は、図14(a)のドライバエアバッグクッション202を単独で例示した図である。ドライバエアバッグクッション202は、ステアリングホイール108のリム109に接触しながら円筒状に膨張展開する。
図15および図16は、図14(a)のエアバッグ装置420の各断面図における乗員拘束の過程を例示した図である。図15(a)から図15(c)は、エアバッグ装置420の可動開始から50ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。
図15(a)は、図14(a)のエアバッグ装置420のF-F断面図である。エアバッグ装置420のカーテンエアバッグクッション402は、第2チャンバ404の膨張展開が、ドライバエアバッグクッション202の膨張展開よりも早く完了する構成となっている。これによって、第2チャンバ404は、例えばドライバエアバッグクッション202に乗員134が触れるよりも先に、乗員134の頭部136に側方から触れることが可能になっている。
図15(b)は、図14(a)のエアバッグ装置420のG-G断面図である。G-G断面は、F-F断面よりも下方の位置における水平方向の断面である。エアバッグ装置420においても、ドライバエアバッグクッション202は、後側の端部が第2チャンバ404の湾曲部406に接触しつつ、第1チャンバ408との間に隙間S1を形成する。また、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間には、空間S2が形成される。
図15(c)は、図14(a)のエアバッグ装置420のH-H断面図である。H-H断面は、G-G断面よりもさらに下方の位置における水平方向の断面である。上述したように、ドライバエアバッグクッション202と第1チャンバ408との間に隙間S1が形成され、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間に空間S2が形成されている。
図15(d)から図15(f)は、エアバッグ装置420の可動開始から60ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図15(d)は、図15(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上述したように、カーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404がドライバエアバッグクッション202よりも先に乗員134の頭部136に側方から接触することで、頭部136の回転が抑えられている。
図15(e)は、図15(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。ドライバエアバッグクッション202の中心側は大きく膨張し、乗員134の頭部136は中心よりもやや下側からドライバエアバッグクッション202に接触する。
図15(f)は、図15(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上記図15(e)で乗員134の頭部136がドライバエアバッグクッション202に接触したため、図15(f)に例示するドライバエアバッグクッション202の下側も、前方にやや押されている。
図16(a)から図16(c)は、エアバッグ装置420の可動開始から70ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図16(a)は、図15(d)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。エアバッグ装置420では、先にカーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404が乗員134の頭部136に側方から接触することで、ドライバエアバッグクッション202が頭部136を前方から拘束するときの頭部136の回転を抑えることができる。よって、乗員134の傷害値を好適に抑えることが可能になっている。
図16(b)は、図15(e)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図4(c)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション202は、ステアリングホイール108の中央部分110(図1(a)参照)を支点にして車幅方向外側に回転させたとき、第2チャンバ404に接触したままスライドして第1チャンバ408に接触可能になっている。このドライバエアバッグクッション202の回転を伴う移動によって、乗員134の頭部136に与え得る反力は減り、首を軸にした頭部136の回転を抑えることができる。
図16(c)は、図15(f)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図5(b)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション202は、乗員134によって車両前方に押されたときに、端部202aが空間S2に進入しながら回転することが可能になっている。これによって、エアバッグ装置420においても、頭部136をドライバエアバッグクッション202とカーテンエアバッグクッション402を共に利用して拘束することが可能になっている。
図16(d)から図16(f)は、エアバッグ装置420の可動開始から80ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図16(d)は、図16(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。乗員134の頭部136は、車外側の斜め前方に移動しつつも、上述したドライバエアバッグクッション202およびカーテンエアバッグクッション402の作用によって、頭部136の回転を抑えたまま拘束される。
図16(e)は、図16(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置100においても、乗員134の頭部136と肩等との動きをそろえることができ、頭部136の肩等に対して左右に振り向く回転、および頭部136を上下や左右に傾けるいずれの回転をも大幅に減少または打ち消して拘束する。
図16(f)は、図16(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置420であれば、乗員134の首を軸にした頭部136の回転を抑えて、乗員134の傷害値をより低く抑えて乗員134を拘束することができる。
このように、エアバッグ装置420においても、ドライバエアバッグクッション202とカーテンエアバッグクッション106の両方によって頭部136を多方向から拘束しつつ、頭部136の角速度を小さくして乗員134の傷害値を効率よく抑えている。
図17は、図6のエアバッグ装置100の変形例(エアバッグ装置440)を例示した図である。図17(a)は、前列左側の運転席102用のものを車内側から見て例示している。エアバッグ装置440は、円錐台状のドライバエアバッグクッション442と、カーテンエアバッグクッション400を備えている。
図17(b)は、図17(a)のドライバエアバッグクッション442を単独で例示した図である。ドライバエアバッグクッション442は、ステアリングホイール108のリム109に天面444が接しながら円錐台状に膨張展開する。
図18および図19は、図17(a)のエアバッグ装置440の各断面図における乗員拘束の過程を例示した図である。図18(a)から図18(c)は、エアバッグ装置440の可動開始から50ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。
図18(a)は、図17(a)のエアバッグ装置440のI-I断面図である。エアバッグ装置440のカーテンエアバッグクッション402は、第2チャンバ404の膨張展開が、ドライバエアバッグクッション442の膨張展開よりも早く完了する構成となっている。これによって、第2チャンバ404は、例えばドライバエアバッグクッション442に乗員134が触れるよりも先に、乗員134の頭部136に側方から触れることが可能になっている。
図18(b)は、図17(a)のエアバッグ装置440のJ-J断面図である。J-J断面は、I-I断面よりも下方の位置における水平方向の断面である。エアバッグ装置440においても、ドライバエアバッグクッション442は、後側の端部が第2チャンバ404の湾曲部406に接触しつつ、第1チャンバ408との間に隙間S1を形成する。また、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間には、空間S2が形成される。
図18(c)は、図17(a)のエアバッグ装置440のK-K断面図である。K-K断面は、J-J断面よりもさらに下方の位置における水平方向の断面である。上述したように、ドライバエアバッグクッション442と第1チャンバ408との間に隙間S1が形成され、第1チャンバ408とステアリングホイール108との間に空間S2が形成されている。
図18(d)から図18(f)は、エアバッグ装置440の可動開始から60ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図18(d)は、図18(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上述したように、カーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404がドライバエアバッグクッション442よりも先に乗員134の頭部136に側方から接触することで、頭部136は回転が抑えられている。
図18(e)は、図18(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。ドライバエアバッグクッション442の中心側は大きく膨張し、乗員134の頭部136は中心よりもやや下側からドライバエアバッグクッション442に接触する。
図18(f)は、図18(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。上記図18(e)で乗員134の頭部136がドライバエアバッグクッション442に接触したため、図18(f)に例示するドライバエアバッグクッション442の下側も、前方にやや押されている。
図19(a)から図19(c)は、エアバッグ装置440の可動開始から70ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図19(a)は、図18(d)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。エアバッグ装置440では、カーテンエアバッグクッション402の第2チャンバ404が乗員134の頭部136に側方から接触することで、ドライバエアバッグクッション442が頭部136を前方から拘束するときの頭部136の回転を抑えることができる。よって、乗員134の傷害値を好適に抑えることが可能になっている。
図19(b)は、図18(e)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図4(c)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション442は、ステアリングホイール108の中央部分110を支点にして車幅方向外側に回転させたとき、第2チャンバ404に接触したままスライドして第1チャンバ408に接触可能になっている。このドライバエアバッグクッション442の回転を伴う移動によって、乗員134の頭部136に与え得る反力は減り、首を軸にした頭部136の回転を抑えることができる。
図19(c)は、図18(f)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。図5(b)を参照して行った説明と同様に、ドライバエアバッグクッション442は、乗員134によって車両前方に押されたときに、端部442aが空間S2に進入しながら回転することが可能になっている。これによって、エアバッグ装置440においても、頭部136をドライバエアバッグクッション442とカーテンエアバッグクッション106を共に利用して拘束することが可能になっている。
図19(d)から図19(f)は、エアバッグ装置440の可動開始から80ms(ミリ秒)の時点における各断面を例示している。図19(d)は、図19(a)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。乗員134の頭部136は、車外側の斜め前方に移動しつつも、上述したドライバエアバッグクッション442およびカーテンエアバッグクッション402の作用によって、頭部の回転を抑えたまま拘束される。
図19(e)は、図19(b)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置440においても、乗員134の頭部136と肩等との動きをそろえることができる。すなわちエアバッグ装置440によれば、頭部136の肩等に対して左右に振り向く回転、および頭部136を上下や左右に傾けるいずれの回転をも大幅に減少または打ち消して乗員134を拘束することができる。
図19(f)は、図19(c)に続く乗員拘束の様子を例示した図である。当該エアバッグ装置440であれば、乗員134の首を軸にした頭部136の回転を抑え、これにより乗員134の傷害値をより低く抑えて乗員134を拘束することができる。
このように、エアバッグ装置440においても、ドライバエアバッグクッション442とカーテンエアバッグクッション106の両方によって頭部136を多方向から拘束しつつ、頭部136の角速度を小さくして乗員134の傷害値を効率よく抑えている。
図20は、図5のエアバッグ装置100(エアバッグ装置460)の変形例を例示した図である。図20(a)は、エアバッグ装置460が膨張展開した初期の状態を例示した図である。エアバッグ装置460では、ステアリングホイール108が、当該ステアリングホイール108を支えるコラムシャフト462に沿って前方に移動することが可能になっている。
図20(b)は、図20(a)のエアバッグ装置460が乗員134を拘束した状態を例示した図である。コラムシャフト462はステアリングホイール108に荷重がかかった場合に縮小するように変形し、乗員134がドライバエアバッグクッション104に接触したときの衝撃をやわらげることができる。このとき、ステアリングホイール108は、カーテンエアバッグクッション106の第1チャンバ124との間に空間S2を形成したまま所定の距離だけ前方に移動可能になっている。
図5(b)を参照して説明したように、空間S2が形成されていることによって、ドライバエアバッグクッション104は乗員134の頭部136が接触したときに車幅方向外側へ回転するように移動することができる。よって、エアバッグ装置460によれば、コラムシャフト462の縮小によって乗員134に与える負荷を抑えつつ、空間S2を保持して乗員134の頭部136の首を軸にした回転を抑えるなど、乗員134の傷害値をより低く抑えて拘束することが可能になっている。
図21は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図21(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション480を例示している。
カーテンエアバッグクッション480の第2チャンバ126は、車両前後方向において、ステアリングホイール108(図11(a)参照)と運転席102のシートバック103との間に設けられている。この構成によって、第2チャンバ126は、乗員134の頭部136を好適に拘束することが可能になっている。
第2チャンバ126の範囲内には、2つの第2シーム部が設けられている。第2シーム部130および第2シーム部482は、第1シーム部128よりも短い寸法で、カーテンエアバッグクッション480の下縁484に連続して上下方向に延びるよう形成されている。これら第2シーム部130、482によって、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能になっている。
図21(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション500を例示している。カーテンエアバッグクッション500は、第2チャンバ126の範囲内に、第2シーム部502が設けられている。第2シーム部502は、円形で、第2チャンバ126の下縁504および上縁506から離間した箇所に形成されている。
この構成の第2シーム部502によっても、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能となる。なお、第2シーム部502は、円形のほか、三角形や四角形など、さまざまな形状の非膨張の領域として設けることが可能である。
図21(c)は、変形例のカーテンエアバッグクッション520を例示している。カーテンエアバッグクッション520は、第2チャンバ126の範囲内に、2つの第2シーム部502、522が設けられている。第2シーム部522もまた、円形で、第2チャンバ126の下縁504および上縁506から離間した箇所に形成されている。2つの第2シーム部502、522を備えることによって、第2チャンバ126の車幅方向の厚みをより効率よく調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能となる。
図22は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図22(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション540を例示している。
第2シーム部542もまた、第2チャンバ126の下縁504および上縁506から離間した箇所に形成されていてもよい。第2シーム部542は、車両前後方向に延びた状態に形成されている前後線状部544と、前後線状部544の両端に形成された環状部546a、546bを含んでいる。この構成の第2シーム部542によっても、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能となる。
図22(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション560を例示している。第2シーム部562は、第2チャンバ126の下縁504から連続して上方に延びる上下線状部564と、上下線状部564から車両後方に延びた状態に形成された前後線状部566、および環状部568を含んでいる。この構成の第2シーム部562によっても、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能となる。
図22(c)は、変形例のカーテンエアバッグクッション580を例示している。第2シーム部582は、第2チャンバ126の下縁504から連続して上方に延びる上下線状部584と、上限線状部584から車両前方に延びた状態に形成された前後線状部586、および環状部588を含んでいる。この構成の第2シーム部582によっても、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能となる。
図23は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図23(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション600を例示している。
カーテンエアバッグクッション600では、第2チャンバ126の範囲内に、第2シーム602部が設けられている。第2シーム部602は、車両前後方向に延びた状態に形成された前後線状部604と、前後線状部604の両端に上側に湾曲した環状部606a、606bを含んでいる。
第2シーム部602は、第2チャンバ126の下縁504および上縁506から離間した箇所であって、下方の第2シーム部130との間に乗員134の頭部136が接触する位置の上方に設けられている。この構成によって、上側の第2シーム部602と下側の第2シーム部130との間にて、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを効率よく調整し、第2チャンバ126が乗員134の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能になっている。この構成は、特に天井の高い車種に取り付けられるカーテンエアバッグクッションにおいて利用することが可能である。
図23(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション620を例示している。カーテンエアバッグクッション620が備える第2シーム部622は、第2シーム部602(図23(a)参照)とほぼ同様の構成で、前後線状部604の両端に下側に湾曲した環状部624a、624bを備えている。この構成によっても、上側の第2シーム部622と下側の第2シーム部130との間にて、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを効率よく調整し、第2チャンバ126が乗員134の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能になっている。
図23(c)は、変形例のカーテンエアバッグクッション640を例示している。カーテンエアバッグクッション640は、第2チャンバ126の範囲内に、第2シーム部642が設けられている。第2シーム部642は、車両前後方向に延びた楕円形状で、第2チャンバ126の下縁504および上縁506から離間した箇所に形成されている。この構成によっても、上側の第2シーム部642と下側の第2シーム部130との間にて、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを効率よく調整し、第2チャンバ126が乗員134の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能になっている。
図24は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図24(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション660を例示している。カーテンエアバッグクッション660では、第2チャンバ126の下側に、第2シーム部130(図2(b)参照)の変形例として非膨張部662を有している。
詳しくは、第2チャンバ126の前側には、第1チャンバ124との間に第1シーム部128が設けられている。また、第2チャンバ126の後側には、第2チャンバ126よりも遅いタイミングで膨張するディレイチャンバ664が設けられ、ディレイチャンバ664との間にディレイシーム666が設けられている。非膨張部662は、第2チャンバ126の範囲内の下側における第1シーム部128からディレイシーム666にわたる領域を非膨張の領域とすることで形成されている。
非膨張部662を設けることによっても、第2チャンバ126のうち非膨張部662よりも上方の領域の車幅方向の厚みを効率よく調整し、第2チャンバ126が乗員134(図11(a)参照)の頭部136に触れるタイミング等を調節することが可能になっている。
図24(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション680を例示している。カーテンエアバッグクッション680は、第2チャンバ126の範囲内に、上方に突出した突出部682を有している。突出部682は、第2チャンバ126の膨張領域の上端を上方に延長することで形成されている。突出部682を設けることによって、カーテンエアバッグクッション680を天井の低い車種に取り付けた場合であっても、乗員134(図11(a)参照)の頭部136を車幅方向に厚みのある部位をもって拘束することが可能になる。
図25は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図25(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション700を例示している。
第1シーム部702は、図2(b)の第1シーム部128と同様に、アウタパネル140(図3参照)およびインナパネル138を連結した非膨張の領域として設けられている。特に、第1シーム部702は、アウタパネル140およびインナパネル138それぞれのうち、車両前後方向に所定の寸法を有しつつ上下方向に延びた領域を連結した状態になっている。
上記構成の第1シーム部702によれば、第1チャンバ124と第2チャンバ126との間のガス容量を制限することで、第1シーム部702の周囲の領域を広く窪ませることができる。これによって、第2チャンバ126の車幅方向の厚みを調節したり、隙間S1(図3参照)を形成しやすくしてドライバエアバッグクッション104の回転する動きを生じさせたりするなどの作用を得ることができる。
図25(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション720を例示している。カーテンエアバッグクッション720では、図8(b)を参照して説明したように、第1チャンバ302および第2チャンバ282の下端がドアトリム111(図2(a)参照)の車幅方向内側に重なる構成になっている。
第1チャンバ302および第2チャンバ282は、車内側から乗員134(図4(c)等参照)が接触した時に、下端284側がドアトリム111(図2(a)参照)に支えられることで、ドアトリム111から反力を得てエネルギー吸収量を高めることができる。これに加え、第1シーム部702を備えることで、第1チャンバ302および第2チャンバ282の車幅方向の厚みを調節したり、隙間S1(図3参照)を形成しやすくしてドライバエアバッグクッション104の回転する動きを生じさせたりするなどの作用を得ることが可能になる。
図26は、図2(b)のカーテンエアバッグクッション106の各変形例を例示した図である。図26(a)は、変形例のカーテンエアバッグクッション740を例示している。
第1シーム部742は、上下方向に延びる楕円形状の非膨張部として、カーテンエアバッグクッション740の上縁744および下縁746から離間した状態に形成されている。この構成によっても、第1チャンバ302および第2チャンバ282と併せて、ドアトリム111(図2(a)参照)から反力を得てエネルギー吸収量を高めつつ、第1チャンバ302および第2チャンバ282の車幅方向の厚みを調節したり、隙間S1(図3参照)を形成しやすくしてドライバエアバッグクッション104の回転する動きを生じさせたりするなどの作用を得ることが可能になる。
図26(b)は、変形例のカーテンエアバッグクッション760を例示している。カーテンエアバッグ760では、上縁762から下方に連続して延びるように第1シーム部764が設けられている。この構成によっても、第1チャンバ302と第2チャンバ282のガスの流入量を制限し、これら第1チャンバ302の車幅方向の厚みを調節し、乗員拘束力の向上に資することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。