以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10という。)の斜視図である。図2は、プリンタ10の主要部を示す正面図である。図面中、符号Lおよび符号Rは、それぞれ左および右を示している。符号Fおよび符号Rrは、それぞれ前および後を示している。符号Uおよび符号Dは、それぞれ上および下を示している。また、符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yのうち一方(ここでは右)から他方(ここでは左)に向かう方向を行き方向Y1という。主走査方向Yのうち他方から一方に向かう方向を帰り方向Y2という。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。ただし、これらの方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
図1に示すように、プリンタ10は、媒体5を順次前方(ここでは、副走査方向Xの下流側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動する後述の吐出ヘッド25(図2参照)からインクを吐出させることによって、媒体5に画像を印刷する。媒体5は、例えば記録紙であり、インクが吐出される対象物である。
図2に示すように、プリンタ10は、ケーシング12と、ケーシング12内に配置されたガイドレール13と、キャリッジ11と、ヘッド移動機構18と、プラテン14と、を備えている。ガイドレール13は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール13には、インクを吐出する吐出ヘッド25が設けられたキャリッジ11が摺動可能に係合している。キャリッジ11は、ヘッド移動機構18によって、ガイドレール13に沿って主走査方向Yに往復移動する。
なお、ヘッド移動機構18の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構18は、ガイドレール13の左端側および右端側に配置されたプーリ29b、29aと、キャリッジモータ18aと、を有している。プーリ29aにはキャリッジモータ18aが連結されている。なお、キャリッジモータ18aはプーリ29bに連結されていてもよい。プーリ29aは、キャリッジモータ18aによって駆動される。両プーリ29a、29bには、それぞれ無端状のベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ11はベルト16に固定されている。プーリ29a、29bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ11が主走査方向Y、すなわち行き方向Y1および帰り方向Y2に移動する。
プリンタ10は、大判のインクジェットプリンタであり、例えば家庭用の卓上型プリンタと比べて大きい。プリンタ10は、例えば業務用のプリンタである。解像度との兼ね合いもあるが、スループットを向上させる観点からは、キャリッジ11の走査速度が速めに設定されることがある。例えば走査速度は、駆動周波数が16kHz程度で、概ね1300~1400mm/s程度に設定され得る。
本実施形態では、媒体5は、媒体送り機構(図示せず)によって、副走査方向Xに搬送される。ケーシング12内には、媒体5が支持されるプラテン14が設けられている。プラテン14上で媒体5に対して印刷が行われる。プラテン14は、ガイドレール13の下方に配置され、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。プラテン14にはグリットローラ(図示せず)が設けられている。グリットローラの上方にはピンチローラ(図示せず)が設けられている。グリットローラはフィードモータ(図示せず)に連結されている。グリットローラはフィードモータによって駆動され、回転する。グリットローラとピンチローラとの間に媒体5が挟まれた状態でグリットローラが回転すると、媒体5は副走査方向Xに搬送される。
プリンタ10は、複数のインクカートリッジ21を備えている。それら複数のインクカートリッジ21には、色の異なるインクが貯留されている。本実施形態では、プリンタ10は、それぞれシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインクを貯留する5つのインクカートリッジ21を備えている。
プリンタ10は、吐出ヘッド25を備えている。吐出ヘッド25は、インクカートリッジ21毎に設けられている。ここでは、吐出ヘッド25の数は5つであるが、特に限定されない。吐出ヘッド25とインクカートリッジ21とは、インク供給路22により接続されている。インク供給路22は、インクカートリッジ21から吐出ヘッド25へインクを供給するインク流路である。インク供給路22は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。インク供給路22には、インクを供給するための送液ポンプ23が設けられている。ただし、送液ポンプ23は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。インク供給路22の一部は、ケーブル類保護案内装置17により覆われている。
図3は、プリンタ10の構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリンタ10は、液体吐出装置20を備えている。液体吐出装置20は、吐出ヘッド25と、吐出ヘッド25の動作を制御する制御装置28とを備えている。
吐出ヘッド25は、インクを吐出する。図2に示すように、吐出ヘッド25は、プラテン14に支持された媒体5に向かってインクを吐出し、媒体5上にインクのドットを形成するものである。このドットが複数並べられることにより、媒体5上に画像などが形成される。吐出ヘッド25は、媒体5と対向する側の面(本実施形態では吐出ヘッド25の下面)に、インクを吐出するための複数のノズル35(図4参照)を備えている。
図4は、吐出ヘッド25の1つのノズル35近傍における部分断面図である。図4に示すように、吐出ヘッド25は、開口31aを有する中空のケース31と、開口31aを塞ぐようにケース31に取り付けられた区画板32とを備えている。ケース31には、内部にインクが貯留される圧力室33が形成されている。区画板32は圧力室33の一部を区画している。区画板32は、圧力室33の内側および外側に弾性変形可能なものである。区画板32は、圧力室33の容積を増加および減少させるように変形可能に構成されている。区画板32は、典型的には樹脂フィルムである。
ケース31の側壁には、インクが流入するインク流入口34が形成されている。なお、インク流入口34は圧力室33とつながっていれば、その位置は特に限定されない。圧力室33には、インク流入口34を通じてインクカートリッジ21(図2参照)からインクが供給され、一時的に所定量のインクが貯留される。ノズル35は、ケース31の下面31bに形成されている。ノズル35は、圧力室33と連通している。ノズル35は媒体5に向かって液滴(インク滴)を吐出する。ノズル35内部のインクの液面(自由表面)がメニスカス35aを形成している。
区画板32の圧力室33側と反対側の面には、圧電素子36が連結されている。圧電素子36の一部は、ケース31に設けられた固定部材39に固定されている。圧電素子36は、アクチュエータを構成している。圧電素子36は、フレキシブルケーブル37を介して制御装置28に接続されている。圧電素子36には、フレキシブルケーブル37を介して電気信号が供給される。本実施形態では、圧電素子36は、圧電材料層と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子36は、制御装置28から電気信号を受けると膨張または収縮し、区画板32を圧力室33の外側または内側に弾性変形させるように機能する。ここでは、圧電素子36として、縦振動モードのピエゾ素子(PZT)を採用している。縦振動モードのPZTは、上記積層方向に伸縮自在であり、例えば放電すると収縮し、充電すると伸長するようになっている。ただし、圧電素子36の形式は特に限定されない。
このような構成の吐出ヘッド25では、例えば圧電素子36の電位を基準電位から下降させることによって、圧電素子36が収縮する。これに追従して区画板32が初期位置から圧力室33の外側に弾性変形し、圧力室33が膨張する。なお、圧力室33が膨張するとは、区画板32の変形により圧力室33の容積が大きくなることをいう。次いで、圧電素子36の電位を上昇させることによって、圧電素子36が積層方向に伸長する。これにより、区画板32が圧力室33の内側に弾性変形し、圧力室33が収縮する。なお、圧力室33が収縮するとは、区画板32の変形により圧力室33の容積が小さくなることをいう。
このような圧力室33の膨張および収縮によって、圧力室33内の圧力が変動する。この圧力室33内の圧力変動によって、圧力室33内のインクが加圧され、インク滴となってノズル35から吐出される。その後、圧電素子36の電位を基準電位に戻すことにより、区画板32が初期位置に復帰して、圧力室33が膨張する。このとき、インク流入口34から圧力室33内にインクが流入する。
図3に示すように、制御装置28は、ヘッド移動機構18のキャリッジモータ18aと、紙送り機構のフィードモータ(図示せず)と、送液ポンプ23と、吐出ヘッド25とに対して、通信可能に接続されている。制御装置28は、これらの動作を制御する。制御装置28は、典型的にはコンピュータである。制御装置28は、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器からの印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
本実施形態では、制御装置28は、記憶部41と、第1ドット吐出部51と、第2ドット吐出部52と、第3ドット吐出部53と、を備えている。制御装置28の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置28の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
図5は、第1ドットDt1、第2ドットDt2、第3ドットDt3を示す図である。ところで、本実施形態では、吐出ヘッド25は、サイズの異なる3種類のドットのインクを吐出することができる。ここでは、吐出ヘッド25は、図5に示すように、第1ドットDt1のインク、第2ドットDt2のインク、および、第3ドットDt3のインクを吐出することが可能である。ここで、第1ドットDt1の径(ここでは直径)は、第1径L1である。第1ドットDt1は、いわゆる小ドットである。第2ドットDt2は、第1ドットDt1よりも径が大きい。ここでは、第2ドットDt2の径は、第2径L2であり、第2径L2は第1径L1よりも大きい。第2ドットDt2は、いわゆる中ドットである。
第3ドットDt3の径は、第1ドットDt1の径よりも大きく、かつ、第2ドットDt2の径よりも大きい。ここでは、第3ドットDt3の径は、第3径L3であり、第3径L3は、第1径L1および第2径L2よりも大きい。第3ドットDt3は、いわゆる大ドットである。例えば第1ドットDt1はインク質量が凡そ3ng~凡そ5ngであり、第2ドットDt2はインク質量が凡そ6ng~凡そ10ngであり、第3ドットDt3はインク質量が凡そ12ng~凡そ30ngである。
図6、図7は、それぞれ第1駆動波形W1、第2駆動波形W2を示す波形図である。記憶部41には、第1駆動波形W1(図6参照)、第2駆動波形W2(図7参照)および第3駆動波形(図示せず)が記憶されている。図6に示す第1駆動波形W1は、第1ドットDt1のインクを吐出するための波形である。本実施形態では、第1駆動波形W1は、第1駆動波形W1の最大の電圧値を示す最大電圧値V1と、第1駆動波形W1の最小の電圧値を示す最小電圧値V2とを有している。
また、本実施形態では、第1駆動波形W1には、最大範囲R1が予め設定されている。この最大範囲R1に収まるようにして第1駆動波形W1は作成されている。本実施形態では、図3に示す第1ドット吐出部51は、第1駆動波形W1を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25(詳しくは、圧電素子36)に供給する。このことで、第1駆動波形W1に沿って圧力室33が膨張および収縮を繰り返し、吐出ヘッド25のノズル35から第1ドットDt1(図5参照)のインクが吐出される。
図7に示す第2駆動波形W2は、第2ドットDt2のインクを吐出するための波形である。第2駆動波形W2には、第1駆動波形W1と同様に、最大範囲R1が設定されている。最大範囲R1に収まるようにして第2駆動波形W2は作成されている。図3に示す第2ドット吐出部52は、第2駆動波形W2を含む第2駆動信号を吐出ヘッド25(詳しくは、圧電素子36)に供給する。このことで、第2駆動波形W2に沿って圧力室33が膨張および収縮を繰り返し、吐出ヘッド25のノズル35から第2ドットDt2(図5参照)のインクが吐出される。
図示は省略するが、上記第3駆動波形は、第3ドットDt3のインクを吐出するための波形である。図3に示す第3ドット吐出部53は、上記第3駆動波形を含む第3駆動信号を吐出ヘッド25の圧電素子36に供給する。このことで、上記第3駆動波形に沿って圧力室33が膨張および収縮を繰り返し、吐出ヘッド25のノズル35から第3ドットDt3(図5参照)のインクが吐出される。
本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる双方向印刷が可能である。ここで、双方向印刷では、吐出ヘッド25が主走査方向Yの行き方向Y1に移動しているとき、および、吐出ヘッド25が主走査方向Yの帰り方向Y2に移動しているときの両方で、吐出ヘッド25から、プラテン14に支持された媒体5(図1参照)に向かってインク(第1ドットDt1、第2ドットDt2および第3ドットDt3のインク)が吐出されることで印刷が行われる。
ところで、吐出ヘッド25は、長期間使用することなどで劣化することがあり得る。劣化した吐出ヘッド25では、インクを吐出する速度が速くなったり遅くなったりすることで、媒体5の目標着弾位置からズレた位置にインクが着弾することがあった。以下、吐出ヘッド25が劣化したことで、インクの吐出速度が遅くなった場合について説明する。
本実施形態に係る吐出ヘッド25では、劣化することで、インクを吐出する速度に遅れが生じ、媒体5の目標着弾位置より遅い位置にインクが着弾することがあった。例えば行き方向Y1でインクを吐出する場合、上記目標着弾位置よりも左の位置にインクが着弾することがあった。帰り方向Y2でインクを吐出する場合、上記目標着弾位置よりも右の位置にインクが着弾することがあった。このように、本実施形態では、吐出ヘッド25が劣化してインクを吐出する速度に遅れが生じることで、印刷物の品質が低下するおそれがあった。
また、本実施形態のように、ドットのサイズが異なる第1~第3ドットDt1~Dt3のインクを吐出する場合、ドットのサイズが最も小さい第1ドットDt1のインクにおいて、着弾位置のズレが多い傾向があった。一般的に、双方向印刷を行うプリンタにおいては、行き方向Y1で吐出したインクと帰り方向Y2で吐出したインクとが同一の目標着弾位置に着弾するように、基準ドット(本例では第2ドットDt2)を用いて帰り方向Y2の吐出タイミングの調整を行う。しかしながら、ドット毎に着弾位置ズレの度合が異なる場合、この方法では基準ドット以外のドット(本実施形態では第1ドットDt1)の着弾位置を正確に補正することができないことがあった。
そこで、本実施形態では、吐出ヘッド25が劣化した場合であっても、制御装置28によって第1ドットDt1のインクを吐出する速度を補正することで、インクの位置ズレが解消され、印刷物の品質が低下することを抑制する。ここで、本願出願人は、種々検討した結果、第1ドットDt1が吐出される際に使用される第1駆動波形W1の最大電圧値V1(図6参照)を変更することで、第1ドットDt1のインクを吐出する速度を補正することができることを見出した。
詳しくは、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高く(言い換えると大きく)するように第1駆動波形W1を変更することで、第1ドットDt1のインクの着弾位置を早い位置(行き方向Y1における右側の位置、または、帰り方向Y2における左側の位置)にすることができる。一方、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を低く(言い換えると小さく)するように第1駆動波形W1を変更することで、第1ドットDt1のインクの着弾位置を遅い位置(行き方向Y1における左側の位置、または、帰り方向Y2における右側の位置)にすることができる。本実施形態では、吐出ヘッド25が劣化した場合、第1ドットDt1のインクの吐出の速度が遅くなるため、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くするように第1駆動波形W1を変更するとよい。
図8は、印刷可能領域AR1を示す平面図である。本実施形態では、図8に示すように、プラテン14には、印刷可能領域AR1が設定されている。印刷可能領域AR1上の媒体5に向かってインクが吐出される。印刷可能領域AR1には、主走査方向Yの位置である目標位置P100が設定されている。ここでは、第1ドット吐出部51は、目標位置P100に向かって第1ドットDt1のインクを吐出させる。
ここで、第1ドット吐出部51によって吐出されたインクの第1ドットDt1における印刷可能領域AR1内の実際の位置を第1実位置P1という。本実施形態では、プリンタ10は双方向印刷が可能であるため、第1実位置P1は、第1行き実位置P11と、第1帰り実位置P12とを有する。第1行き実位置P11は、吐出ヘッド25が行き方向Y1に移動しているときに、第1ドット吐出部51によって吐出されたインクの第1ドットDt1(図8において紙面上の上側に示された第1ドットDt1)の実際の主走査方向Yの位置である。第2帰り実位置P12は、吐出ヘッド25が帰り方向Y2に移動しているときに、第1ドット吐出部51によって吐出されたインクの第1ドットDt1(図8において紙面上の下側に示された第1ドットDt1)の実際の主走査方向Yの位置である。
本実施形態では、目標位置P100と第1実位置P1との主走査方向Yの距離を位置誤差E1という。位置誤差E1は、行き位置誤差E11と、帰り位置誤差E12とを有する。ここでは、行き位置誤差E11は、目標位置P100と第1行き実位置P11との主走査方向Yの距離のことをいう。帰り位置誤差E12は、目標位置P100と第1帰り実位置P12との主走査方向Yの距離のことをいう。ここで、吐出ヘッド25の移動速度が同じ場合、行き位置誤差E11と帰り位置誤差E12とは同じになる。
位置誤差E1、言い換えると行き位置誤差E11および帰り位置誤差E12の値が大きいほど、第1ドットDt1のインクを吐出する速度の遅れが大きいといえる。そこで、本実施形態では、位置誤差E1が所定の許容範囲R2内となるように、第1駆動波形W1を変更する。ここで、許容範囲R2とは、位置誤差E1を許容することができる範囲のことであり、印刷物の品質が低下し難いように許容範囲R2が適宜設定されるとよい。なお、許容範囲R2には、範囲なしも含まれる。許容範囲R2が範囲なしの場合、位置誤差E1が0であり、目標位置P100と、実位置P1(詳しくは行き実位置P11および帰り実位置P12)とが同じ位置(詳しくは主走査方向Yにおいて同じ位置)になるように、第1駆動波形W1を変更する。
なお、本実施形態では、目標位置P100に向かって第2ドットDt2を吐出するときの位置誤差は、許容範囲R2内である。ここで、第2ドット吐出部52によって吐出されたインクの第2ドットDt2における印刷可能領域AR1内の実際の位置を第2実位置P2という。第2実位置P2は、第2行き実位置P21と、第2帰り実位置P22とを有する。第2行き実位置P21は、吐出ヘッド25が行き方向Y1に移動しているときに、第2ドット吐出部52によって吐出されたインクの第2ドットDt2(図8において紙面上の上側に示された第2ドットDt2)の実際の位置である。第2帰り実位置P22は、吐出ヘッド25が帰り方向Y2に移動しているときに、第2ドット吐出部52によって吐出されたインクの第2ドットDt2(図8において紙面上の下側に示された第2ドットDt2)の実際の位置である。
本実施形態では、目標位置P100と第2実位置P2との間の主走査方向Yにおける誤差は、許容範囲R2内である。言い換えると、目標位置P100と第2行き実位置P21との間の主走査方向Yの誤差は、許容範囲R2内であり、目標位置P100と第2帰り実位置P22との間の主走査方向Yの誤差も、許容範囲R2内である。
本実施形態では、第1駆動波形W1の変更に関する処理を実行するために、図3に示すように、制御装置28は、誤差特定部61と、駆動波形変更部62とを備えている。まず第1ドット吐出部51は、図6に示す第1駆動波形W1を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25(詳しくは圧電素子36(図4参照))に供給し、図8に示すように、目標位置P100に向かって第1ドットDt1のインクを吐出させる。ここでは、第1ドット吐出部51は、行き方向Y1および帰り方向Y2において、目標位置P100に向かって第1ドットDt1のインクを吐出させる。このことで、図8に示すように、行き方向Y1では、第1行き位置P11に第1ドットDt1が着弾し、帰り方向Y2では、第1帰り位置P12に第1ドットDt1が着弾する。
次に、図3に示す誤差特定部61は、第1ドットDt1の第1実位置P1(図8参照)を特定する。ここでは、誤差特定部61は、第1ドットDt1の第1行き実位置P11および第1帰り実位置P12を特定する。なお、誤差特定部61による第1実位置P1を特定する方法は特に限定されない。例えば、媒体5に吐出された第1実位置P1の第1ドットDt1をユーザが目視して、ユーザが操作パネル(図示せず)を操作して第1実位置P11を入力することで、特定されてもよい。また、プリンタ10は、図示しないカメラを備え、カメラによって媒体5を撮影してもよい。そして、カメラによって撮影された画像に対して画像処理を施すことで、第1実位置P1を特定してもよい。
このように、第1実位置P1、すなわち第1行き実位置P11および第1帰り実位置P12を特定した後、誤差特定部61は、図8に示すように、位置誤差E1を特定する。すなわち、誤差特定部61は、行き位置誤差E11および帰り位置誤差E12を特定する。本実施形態では、目標位置P100に関する情報は、記憶部41に予め記憶されている。そのため、誤差特定部61は、記憶部41に記憶された目標位置P100と、上記で特定された第1実位置P1との主走査方向Yの距離を、位置誤差E1とする。誤差特定部61は、目標位置P100と第1行き実位置P11との主走査方向Yの距離を、行き位置誤差E11とし、目標位置P100と第1帰り実位置P12との主走査方向Yの距離を、帰り位置誤差E12とする。
次に、図3に示す駆動波形変更部62は、誤差特定部61によって特定された位置誤差E1に基づいて、位置誤差E1(詳しくは行き位置誤差E11および帰り位置誤差E12)が所定の許容範囲R2内になるように、第1駆動波形W1(図6参照)を変更する。ここでは、駆動波形変更部62は、図6に示す第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くすることで、第1駆動波形W1を変更する。図9は、変更後の第1駆動波形W1´を示す波形図である。駆動波形変更部62は、第1駆動波形W1を、図9に示すように、変更後の第1駆動波形W1´に変更する。
なお、本実施形態では、図6の第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くする具体的な処理は特に限定されない。ここでは、例えば駆動波形変更部62は、第1駆動波形W1の振幅を大きくすることで、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くする。本実施形態では、第1駆動波形W1は、図6に示すように、基準軸A1が設定されており、基準軸A1を基準に振幅が設定されている。駆動波形変更部62は、基準軸A1を変更することなく、基準軸A1よりも上の値を高くし、基準軸A1よりも下の値を低くすることで、第1駆動波形W1の振幅を大きくし、最大電圧値V1を高くする。例えば駆動波形変更部62は、第1駆動波形W1の各値に、所定の係数(例えば絶対値が1より大きい係数)を掛け合わせることで第1駆動波形W1の振幅を大きくする。
このように、第1駆動波形W1の振幅を大きくすることで、第1駆動波形W1の最小電圧値V2は更に小さくなる。このとき、振幅を大きくした第1駆動波形W1の最小電圧値V2は、最大範囲R1の下限値LM1未満となることがあり得る。このような場合、駆動波形変更部62は、図9に示すように、変更後の第1駆動波形W1´の最小電圧値V2を最大範囲R1の下限値LM1に設定する。なお、本実施形態では、振幅を大きくした変更後の第1駆動波形W1´の最大電圧値V1は、最大範囲R1の上限値LM2以下である。
ここでは、駆動波形変更部62による第1駆動波形W1の最大電圧値V1の上げ幅のことを上昇値V100(図9参照)という。本実施形態では、上昇値V100を決定するために、図3に示すように、制御装置28は、更に、試し駆動波形変更部65と、試し第1ドット吐出部66と、位置差特定部67とを備えている。
図10は、試し第1駆動波形W11を示す波形図である。ここでは、まず試し駆動波形変更部65は、図10に示すような試し第1駆動波形W11を作成する。この試し第1駆動波形W11は、図6に示す第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くして、第1駆動波形W1を変更することで作成される。ここで、試し駆動波形変更部65によって試し第1駆動波形W11が作成されたときの第1駆動波形W1の最大電圧値V1の上げ幅のことを試し値V110(図10参照)という。ここで、試し値V110は、典型的には上昇値V100(図9参照)よりも大きい値である。試し値V110は、ユーザによって設定されるものであってもよいし、記憶部41に予め記憶されたものであってもよい。試し駆動波形変更部65は、最大電圧値V1を所定の試し値V110分高くするように変更した第1駆動波形W1を、試し第1駆動波形W11(図10参照)とする。
図11は、印刷可能領域AR1を示す平面図であり、試し第1駆動波形W11に基づいて吐出されたインクの第1ドットDt1´の位置を示す図である。次に、試し第1ドット吐出部66は、試し駆動波形変更部65によって作成された試し第1駆動波形W11を含む試し第1駆動信号を吐出ヘッド25(詳しくは、圧電素子36)に供給し、図11に示すように、目標位置P100に向かって第1ドットDt1´のインクを吐出させる。
試し第1ドット吐出部66によって、第1ドットDt1´は、試し実位置P3に着弾する。ここでは、試し第1ドット吐出部66は、行き方向Y1および帰り方向Y2において、目標位置P100に向かって第1ドットDt1´のインクを吐出させる。このことで、図11に示すように、行き方向Y1では、試し実位置P3が有する試し行き実位置P31に第1ドットDt1´のインクが着弾し、帰り方向Y2では、試し実位置P3が有する試し帰り実位置P32に第1ドットDt1´のインクが着弾する。
次に、位置差特定部67は、試し第1ドット吐出部66によって吐出されたインクの第1ドットDt1´の試し実位置P3(詳しくは、試し行き実位置P31および試し帰り実位置P32)を特定する。試し実位置P3を特定する具体的な処理は特に限定されず、ここでは誤差特定部61による第1実位置P1を特定する処理と同様である。
図12は、位置差E2との関係を示す図である。上記のようにして試し実位置P3を特定した後、位置差特定部67は、図12に示すように、位置差E2を特定する。ここで、位置差E2は、行き位置差E21と、帰り位置差E22とを有する。位置差特定部67は、行き位置差E21および帰り位置差E22を特定する。ここでは、位置差特定部67は、誤差特定部61によって特定された第1実位置P1と、上記で特定された試し実位置P3との主走査方向Yの距離を、位置差E2とする。詳しくは、位置差特定部67は、誤差特定部61によって特定された第1行き実位置P11と、試し行き実位置P31との主走査方向Yの距離を、行き位置差E21とする。位置差特定部67は、誤差特定部61によって特定された第1帰り実位置P12と、試し帰り実位置P32との主走査方向Yの距離を、帰り位置差E22とする。
以上のようにして、位置差E2(詳しくは行き位置差E21および帰り位置差E22)を特定した後、駆動波形変更部62は、第1駆動波形W1の最大電圧値V1の上げ幅である上昇値V100(図9参照)を特定する。ここでは、駆動波形変更部62は、試し値V110(図10参照)、位置差E2(図12参照)および位置誤差E1(図8参照)に基づいて、上昇値V100を算出する。ここでは、V110:V100=E2:E1の式が成り立つ。そのため、上昇値V100は、以下の式(1)で算出することができる。
V100=V110×(E1/E2)・・・(1)
なお、上記式(1)において、位置誤差E1で行き位置誤差E11が使用される場合には、位置差E2では、行き位置差E21が使用される。位置誤差E1で帰り位置誤差E12が使用される場合には、位置差E2では、帰り位置差E22が使用される。
本実施形態では、図13~図15に示すような目盛りM1を媒体5に印刷することで、上昇値V100(図9参照)を算出することができる。図13に示すように、目盛りM1は、複数の目盛り群C1~C5を含む。各目盛り群C1~C5は、それぞれ一対の第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とを有している。第1目盛り線L1は、行き方向Y1に吐出ヘッド25が移動しているときに吐出されるインクによって形成される。第2目盛り線L2は、帰り方向Y2に吐出ヘッド25が移動しているときに吐出されるインクによって形成される。
ここでは、目盛り群C1~C5ごとに、第1目盛り線L1における吐出ヘッド25のインクの吐出間隔と、第2目盛り線L2における吐出ヘッド25のインクの吐出間隔とが異なる。本実施形態では、第1目盛り線L1を基準としたとき、隣り合う目盛り群C1~C5において、第2目盛り線L2の吐出間隔が1分解能分異なる。例えば目盛り群C1と目盛り群C5との間における、第1目盛り線L1と第2目盛り線L2の間隔の差は、4分解能分である。
本実施形態では、目盛りM1は、第2ドットDt2で印刷された第2ドット用目盛りM12(図13参照)と、第1ドットDt1で印刷された第1ドット用目盛りM111(図14参照)と、第1ドットDt1´(図11参照)で印刷された第1ドット用目盛りM112(図15参照)とを有する。ここでは、まず第2ドット吐出部52によって、図13に示す第2ドット用目盛りM12を媒体5に印刷する。第2ドット用目盛りM12において、目盛り群C3の第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置である。そのため、第2ドット用目盛りM12における目盛り群C3における位置が目標位置P100(図8参照)となる。
次に、第1ドット吐出部51によって、図14に示す第1ドット用目盛りM111を媒体5に印刷する。この第1ドット用目盛りM111は、例えば第1駆動波形W1(図6参照)を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給することで吐出される第1ドットDt1のインクで印刷される。第1ドット用目盛りM111では、目盛り群C5の第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置である。この例では、目盛り群C3において第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置になるように、第1駆動波形W1を変更する。本実施形態では、目盛り群C3と、目盛り群C5との位置差が位置誤差E1(図8参照)である。すなわち、位置誤差E1は、2分解能分である。
次に、試し第1ドット吐出部51によって、図15に示す第1ドット用目盛りM112を媒体5に印刷する。この第1ドット用目盛りM112は、例えば第1駆動波形W1の最大電圧値V1を試し値V110分高くした試し第1駆動波形W11(図10参照)を含む試し第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給することで吐出される第1ドットDt1´(図11参照)のインクで印刷される。第1ドット用目盛りM112では、目盛り群C1の第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置である。本実施形態では、目盛り群C1と、目盛り群C5との位置差が位置差E2(図12参照)である。すなわち、位置差E2は、4分解能分である。
本実施形態では、第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とで主走査方向Yの位置が同じである目盛り群は、ユーザの目視によって特定される。そして、ユーザは、図示しない操作パネルを操作することで、制御装置28が第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とで主走査方向Yの位置が同じである目盛り群を特定するように構成されている。
以上のように、第2ドット用目盛りM12と、第1ドット用目盛りM111、M112とに基づいて、上述した位置差E2(図12参照)および位置誤差E1(図8参照)を特定することができる。そのため、駆動波形変更部62は、試し値V110、位置差E2および位置誤差E1に基づいて、上述の式(1)V100=V110×(E1/E2)を使用して、上昇値V100を算出することができる。
以上、本実施形態では、プリンタ10は、図2に示すように、媒体5を支持するプラテン14と、プラテン14の上方に配置され、主走査方向Yに延びたガイドレール13と、ガイドレール13に摺動可能に係合したキャリッジ11と、吐出ヘッド25と、キャリッジ11を主走査方向Yに移動させるヘッド移動機構18と、制御装置28とを備えている。図8に示すように、プラテン14には、所定の印刷可能領域AR1が設定されている。図2に示すように、吐出ヘッド25は、キャリッジ11に設けられ、かつ、図5に示すように、第1ドットDt1のインクと、第1ドットDt1よりも径が大きい第2ドットDt2のインクと、第2ドットDt2よりも径が大きい第3ドットDt3のインクを吐出可能である。図3に示すように、制御装置28は、吐出ヘッド25に通信可能に接続されている。制御装置28は、記憶部41と、第1ドット吐出部51と、誤差特定部61と、駆動波形変更部62とを備えている。記憶部41には、図6に示すように、最大電圧値V1を有し、かつ、第1ドットDt1のインクを吐出するための第1駆動波形W1が記憶されている。第1ドット吐出部51は、第1駆動波形W1を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給し、図8に示すように、印刷可能領域AR1内に設定された目標位置P100に向かって第1ドットDt1のインクを吐出させる。誤差特定部61は、第1ドット吐出部51によって吐出されたインクの第1ドットDt1における印刷可能領域AR1内の実際の位置である第1実位置P1を特定し、目標位置P100と第1実位置P1との主走査方向Yの位置誤差E1を特定する。駆動波形変更部62は、誤差特定部61によって特定された位置誤差E1に基づいて、位置誤差E1が所定の許容範囲R2内になるように最大電圧値V1を高くして第1駆動波形W1を変更する。ここでは、変更後の駆動波形は、図9に示す第1駆動波形W1´である。
本実施形態では、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くすることで、第1ドットDt1のインクを吐出ヘッド25から吐出する際の吐出速度を速くすることができ、媒体5に対するインクの着弾位置を目標位置に近づけることができる。本実施形態では、吐出ヘッド25が劣化することで、目標位置P100と第1実位置P1との間に位置誤差E1(図8参照)分のズレが生じる。そこで、位置誤差E1が所定の許容範囲R2内になるように第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くして第1駆動波形W1を、図9に示す第1駆動波形W1´に変更する。このことによって、変更後の第1駆動波形W1´を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給して第1ドットDt1のインクを吐出させることで、位置ズレを抑制することができる。したがって、吐出ヘッド25が劣化した場合であっても、印刷物の品質が低下することを抑制することができる。
本実施形態では、第1ドット吐出部51は、吐出ヘッド25が行き方向Y1に移動しているとき、および、吐出ヘッド25が帰り方向Y2に移動しているときに、第1ドットDtのインクを吐出ヘッド25から吐出させる。図8に示すように、第1実位置P1は、第1行き実位置P11と、第1帰り実位置P12とを有している。第1行き実位置P11は、吐出ヘッド25が行き方向Y1に移動しているときに、第1ドット吐出部によって吐出されたインクの第1ドットDt1の実際の位置である。第1帰り実位置P12は、吐出ヘッド25が帰り方向Y2に移動しているときに、第1ドット吐出部51によって吐出されたインクの第1ドットDt1の実際の位置である。誤差特定部61は、第1行き実位置P11と第1帰り実位置P12とを特定し、目標位置P100と第1行き実位置P11との主走査方向Yの第1行き位置誤差E11と、目標位置P100と第1帰り実位置P12との主走査方向Yの第1帰り位置誤差E12を特定する。駆動波形変更部62は、第1行き位置誤差E11および第1帰り位置誤差E12が許容範囲R2内になるように最大電圧値V1を高くして第1駆動波形W1を変更する。
ここでは、吐出ヘッド25が劣化した場合、行き方向Y1における印刷では、第1ドットDt1の着弾位置が目標位置P100よりも左にズレ、帰り方向Y2における印刷では、第1ドットDt1の着弾位置が目標位置P100よりも右にズレる。そのため、双方向印刷では、第1行き位置誤差E11と第1帰り位置誤差E12との合計の誤差が生じることになる。そのため、吐出ヘッド25の劣化に起因した印刷物の品質が低下し易くなるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、第1行き位置誤差E11および第1帰り位置誤差E12が共に許容範囲R2になるように、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を変更するため、印刷物の品質が低下することを特に抑制することができる。
本実施形態では、記憶部41には、第2ドットDt2のインクを吐出するための第2駆動波形W2(図7参照)が記憶されている。制御装置28は、第2駆動波形W2を含む第2駆動信号を吐出ヘッド25に供給し、目標位置P100に向かって第2ドットDt2のインクを吐出させる第2ドット吐出部52を備えている。第2ドット吐出部52は、吐出ヘッド25が行き方向Y1に移動しているとき、および、吐出ヘッド25が帰り方向Y2に移動しているときに、第2ドットDt2のインクを吐出ヘッド25から吐出させる。図8に示すように、第2ドット吐出部52によって吐出されたインクの第2ドットDt2における印刷可能領域AR1内の実際の位置である第2実位置P2と、目標位置P100との間の主走査方向Yの誤差は、許容範囲R2内になるように構成されている。
ここでは、双方向印刷において、目標位置P100を基準にした、行き方向Y1の印刷における第2ドットDt2のインクの着弾位置と、帰り方向Y2の印刷における第2ドットDt2のインクの着弾位置との主走査方向Yの誤差は、許容範囲R2内となる。本実施形態では、第1位置誤差E1が許容範囲R2内になるように第1駆動波形W1を、図9に示す第1駆動波形W1´に変更することで、目標位置P100を基準にした、行き方向Y1の印刷における第1ドットDt1および第2ドットDt2のインクの着弾位置と、帰り方向Y2の印刷における第1ドットDt1および第2ドットDt2のインクの着弾位置との誤差を、許容範囲R2内にすることができる。よって、第1ドットDt1および第2ドットDt2における位置ズレが小さくなるため、印刷物の品質が低下することをより抑制することができる。
本実施形態では、図3に示すように、制御装置28は、試し駆動波形変更部65と、試し第1ドット吐出部66と、位置差特定部67とを備えている。試し駆動波形変更部65は、図10に示すように、最大電圧値V1を所定の試し値V110分高くするように変更した第1駆動波形W1を試し第1駆動波形W11とする。試し第1ドット吐出部66は、試し第1駆動波形W11を含む試し第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給し、図11に示すように、目標位置P100に向かって第1ドットDt1´のインクを吐出させる。位置差特定部67は、試し第1ドット吐出部66によって吐出されたインクの第1ドットDt1´における印刷可能領域AR1内の実際の位置である試し実位置P3を特定し、第1実位置P1と試し実位置P3との主走査方向Yの位置差E2(図12参照)を特定する。駆動波形変更部62は、位置差E2と位置誤差E1(図8参照)と試し値V110(図10参照)に基づいて、図9に示す上昇値V100を特定し、最大電圧値V1を上昇値V100分高くするように第1駆動波形W1を変更する。本実施形態では、上昇値V100は、上記式(1)V100=V110×(E1/E2)によって算出することができる。このように、試し実位置P3を特定することで、位置差E2を特定することができる。そのため、位置差E2に対する位置誤差E1の割合を算出し、その割合を試し値V110に掛け合わせることで、上昇値V100を算出することができる。よって、位置差E2と位置誤差E1と試し値V110に基づいて、上昇値V100を特定し易い。
本実施形態では、駆動波形変更部62は、図6および図9に示すように、位置誤差E1が許容範囲R2内になるように第1駆動波形W1の振幅を大きくして、変更後の第1駆動波形W1´(図9参照)にする。このように、第1駆動波形W1の振幅を大きくするという簡単な方法で、吐出ヘッド25が劣化したとき、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を高くすることができる。
本実施形態では、図6に示すように、第1駆動波形W1は、最小電圧値V2を有している。第1駆動波形W1には、振幅の最大範囲R1が予め設定されている。駆動波形変更部62は、第1駆動波形W1の振幅を大きくしたときに最小電圧値V2が最大範囲R1の下限値LM1未満となる場合、最小電圧値V2を最大範囲R1の下限値LM1に設定する。このことによって、第1駆動波形W1を変更した際に、最小電圧値V2が低くなり過ぎることを防止することができる。
本実施形態では、吐出ヘッド25は、図4に示すように、内部にインクが貯留される圧力室33が形成されたケース31と、ケース31に設けられ、圧力室33の一部を区画する区画板32と、区画板32に連結され、電気信号が供給される圧電素子36と、ケース31に形成され、圧力室33と連通するノズル35と、を有している。第1ドット吐出部51は、圧電素子36に対して第1駆動波形W1または第1駆動波形W1´を含む第1駆動信号を供給する。このことによって、第1駆動波形W1または第1駆動波形W1´に沿って圧力室33が膨張および収縮を繰り返し、吐出ヘッド25のノズル35から第1ドットDt1のインクを吐出することができる。
なお、上記実施形態では、吐出ヘッド25が劣化したとき、インクを吐出する速度に遅れが生じていた。しかしながら、吐出ヘッド25が劣化したとき、インクを吐出する速度が速くなることもあり得る。このように吐出ヘッド25が劣化してインクを吐出する速度が速くなった場合、第1駆動波形W1の最大電圧値V1を低くすることで、媒体5に対するインクの着弾位置を目標位置に近づけることができる。この場合、駆動波形変更部62は、誤差特定部61によって特定された位置誤差E1に基づいて、位置誤差E1(詳しくは、行き位置誤差E11および帰り位置誤差E12)が所定の許容範囲R2内になるように最大電圧値V1を低くして第1駆動波形W1を変更する。詳しくは、駆動波形変更部62は、位置誤差E1が許容範囲R2内になるように第1駆動波形W1の振幅を小さくする。よって、吐出ヘッド25が劣化してインクを吐出する速度が速くなった場合、最大電圧値V1を低くした変更後の第1駆動波形W1を含む第1駆動信号を吐出ヘッド25に供給して第1ドットDt1のインクを吐出させることで、位置ズレを抑制することができる。したがって、吐出ヘッド25が劣化してインクを吐出する速度が速くなった場合であっても、印刷物の品質が低下することを抑制することができる。
上記実施形態では、圧電素子(アクチュエータ)36は縦振動モードの圧電素子であったが、これには限定されない。アクチュエータ36は横振動モードの圧電素子であってもよい。また、アクチュエータ36は、圧電素子に限らず、例えば磁歪素子などであってもよい。