JP7405361B2 - 抗腫瘍ペプチドおよびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成された抗腫瘍ペプチドとその利用に関する。詳しくは、cytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA4)のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列と、膜透過性ペプチド配列とを備える合成ペプチドの利用に関する。
近年、免疫監視機構の働きを利用したがんの「免疫療法」に関する基礎研究および臨床研究が、精力的に行われている。
がん化した細胞(がん細胞、腫瘍細胞)は、生体内においては異物として認識され、免疫監視機構によって排除されている。しかしながら、この免疫監視機構の働きが阻害されると、腫瘍細胞は免疫監視機構の攻撃から逃れて増殖することができる。その結果、腫瘍組織は拡大してしまう。免疫監視機構の働きを阻害する要因としては、例えば、T細胞の活性化抑制、および、腫瘍細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の増殖抑制等が挙げられる。
T細胞の活性化は、例えばT細胞受容体(T cell receptor;TCR)および補助刺激受容体を介したシグナルによって制御されている。例えば腫瘍抗原を提示する抗原提示細胞(樹状細胞等)が、TCRを介して腫瘍抗原の情報をT細胞に伝達するとき、抗原提示細胞上のCD80/CD86がT細胞上の補助刺激受容体の1つであるCD28と結合する。そして、T細胞に活性化シグナルが伝達される。
T細胞は、他の補助刺激受容体としてcytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA4)を発現している。CTLA4は、上述したCD80/CD86と結合し得る。CTLA4は細胞内ドメインとして抑制性モチーフを有しているため、上記結合によって、T細胞に抑制性のシグナルを発生させる。そして、CTLA4とCD80/CD86との結合によってT細胞の活性化が抑制されると、細胞傷害性T細胞の増殖が抑制される。これによって、腫瘍細胞の除去が阻害され得る。そして、このことは、腫瘍組織の拡大を促す要因となり得る。
ところで、CTLA4は、今日のがんの免疫療法における重要なターゲットとなっている。CTLA4とCD80/CD86との結合が、抗CTLA4抗体によって阻害されることによって、上述したT細胞の活性化抑制および細胞傷害性T細胞の増殖抑制が解除される。特許文献1では、抗CTLA4抗体の投与によって、一部の腫瘍の増殖が抑制されることが確認されている。そして、臨床において、抗CTLA4抗体が治療薬として使用されている(非特許文献1)。
抗CTLA4抗体の作用機序は、上述したようなCTLA4とCD80/CD86との結合阻害に基づく、T細胞活性化の抑制および細胞傷害性T細胞の増殖抑制の解除に限られない。その他の作用機序として、例えば制御性T細胞(regulatory T細胞;Treg)の機能抑制およびTregの除去が挙げられる。
Tregが腫瘍組織中で機能すると、例えば細胞傷害性T細胞による腫瘍細胞の除去が抑制される。TregもCTLA4を発現しており、CTLA4を介した刺激によって、機能が抑制されることが知られている。抗CTLA4抗体は、Treg上に発現したCTLA4を刺激することによって、Tregの機能(即ち、細胞傷害性T細胞の機能抑制)を抑制することができる。また、抗CTLA4抗体は、Treg上のCTLA4との結合に基づく抗体依存性細胞傷害活性によって、Tregを腫瘍組織から除去することができる。
WO00/32231
CTLA-4 and PD-1/PD-L1 Blockade: New Immunotherapeutic Modalities with Durable Clinical Benefit in Melanoma Patients, 2013, Clinical Cancer Research, 19, 5300-5309
治療薬としての抗CTLA4抗体は、上述したような複数の作用機序を有し、臨床的な効果も実際に認められている。しかしながら、このような抗体医薬品は極めて高価である。そのため、当該治療薬による治療によって、がん医療にかかるコストが深刻な問題となっている。
そこで本発明は、高価な抗体を使用する抗腫瘍剤とは異なる構成、かつ、抗腫瘍(抗がん)性を有する合成ペプチドを提供することを課題(目的)として創出されたものである。
本発明者は、各生物種、特に哺乳類において発現されるCTLA4のシグナルペプチドに着目した。そして、驚くべきことに、CTLA4のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列と、従来知られた細胞膜透過性ペプチド(CPP;cell penetrating peptide)を構成するアミノ酸配列とを組み合わせた合成ペプチドが、種々の腫瘍細胞に対して優れた抗腫瘍性(抗がん性)を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、ここで開示される合成ペプチドは、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する合成ペプチドである。当該ペプチドは、以下の(1)および(2)に示すアミノ酸配列:
(1)CTLA4(cytotoxic T lymphocyte antigen-4)のシグナルペプチド(signal peptide;SP)を構成するアミノ酸配列、または、該アミノ酸配列において1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された改変アミノ酸配列からなるCTLA4-SP関連配列;および、
(2)膜透過性ペプチド(CPP)として機能するアミノ酸配列からなるCPP関連配列;
をともに備えることを特徴とする。
好ましい一態様では、ここで開示される合成ペプチドは、総アミノ酸残基数が100以下である。製造コスト、合成のしやすさ、取り扱い性の観点からは、総アミノ酸残基数が80以下(例えば、70以下)であるものがさらに好ましい。
あるいは、上記(1)に示すアミノ酸配列と、(2)に示すアミノ酸配列とが全体の80個数%以上(より好ましくは90個数%以上、例えば100個数%)を占めるような合成ペプチドは、ここで開示される合成ペプチドのうちの特に好適な一態様である。
好ましい一態様では、ここで開示される合成ペプチドは、上記CTLA4-SP関連配列が、配列番号1~8のうちのいずれかに示すアミノ酸配列である。
さらに、ここで開示される合成ペプチドの好適な他の一態様では、上記CPP関連配列が、ポリアルギニン(特に限定しないが、典型的には、5個以上9個以下のアルギニン残基から構成される)、または、配列番号9~26のうちのいずれかに示すアミノ酸配列であることを特徴とする。
ここで開示される合成ペプチドの好適な他の一態様では、上記CPP関連配列が、上記CTLA4-SP関連配列のN末端あるいはC末端側に隣接する。あるいは、10個以下(好ましくは5個以下、例えば1個または2個)のアミノ酸残基からなるリンカーを介して配置される。
好ましい一態様では、ここで開示される合成ペプチドは、配列番号27に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする。
また、本発明は、ここで開示されるいずれかの合成ペプチド(抗腫瘍ペプチド)と、薬学上許容され得る少なくとも一種の担体とを備える、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する抗腫瘍組成物を提供する。
かかる組成物は、ここで開示される合成ペプチドを含むことにより、抗腫瘍剤(抗がん剤を包含する。以下同じ。)としての利用、あるいは新たな抗腫瘍剤の開発のための材料として利用することができる。
また、本発明は、ここで開示されるいずれかの合成ペプチド(抗腫瘍ペプチド)を、対象とする腫瘍細胞に対して(例えば生体外=インビトロにおいて、或いは、生体内=インビボにおいて)、少なくとも1回供給することを特徴とする、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
かかる構成の方法では、ここで開示される合成ペプチドを腫瘍細胞に供給することによって、該腫瘍細胞の増殖(好ましくはさらに腫瘍、がん組織の拡大)を阻止若しくは抑制することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項(例えばここで開示される合成ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチドの化学合成法、細胞培養技法、ペプチドを成分とする薬学的組成物の調製に関するような一般的事項)は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、遺伝学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、アミノ酸を1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
本明細書において「腫瘍」とは、広義に解釈される用語であり、癌腫及び肉腫或いは血液や造血組織の病変(白血病、リンパ腫等)を含む腫瘍一般(典型的には悪性腫瘍)をいう。また、「腫瘍細胞」とは、「がん細胞」と同義であり、そのような腫瘍を形成する細胞であって、典型的には周辺の正常組織とは無関係に異常に増殖を行うに至った細胞(いわゆる、がん化した細胞)をいう。従って、特別に規定しない限り、正常細胞ではなく腫瘍細胞(がん細胞)に区分される細胞であれば、該細胞の起源や性状に関わりなく腫瘍細胞と呼称される。上皮性腫瘍(扁平上皮癌、腺癌等)、非上皮性腫瘍(各種の肉腫、骨肉腫等)、各種の細胞腫(神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等)、リンパ腫、メラノーマ等を構成する細胞は、ここでいう腫瘍細胞に包含される典型例である。
また、本明細書において「合成ペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみ独立して自然界に安定的に存在するものではなく、人為的な化学合成あるいは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって製造され、所定の組成物中で安定して存在し得るペプチド断片をいう。ここで「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されないが、典型的には全アミノ酸残基数が概ね100以下(好ましくは80以下、より好ましくは70以下、特に好ましくは60以下)のような比較的分子量の小さいものをいう。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する機能(例えば抗腫瘍活性や細胞膜透過性)を損なうことなく、1個から数個(典型的には9個以下、好ましくは5個以下)のアミノ酸残基、例えば、1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個、2個または3個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列:例えばリジン残基とアルギニン残基との相互置換)、あるいは、所定のアミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。従って、ここで実施例として開示される合成ペプチドには、各配列番号のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列で構成される合成ペプチドに加え、各配列番号のアミノ酸配列において1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換(例えば、上記の同類置換)、欠失又は付加された改変アミノ酸配列であって、同様に抗腫瘍活性を示すアミノ酸配列からなる合成ペプチドを包含する。
ここで開示される人為的に合成される合成ペプチドは、腫瘍細胞の増殖を抑制すること(即ち、抗腫瘍活性)が本発明者によって見出された天然には存在しない短鎖のペプチドであり、上述する2種のアミノ酸配列、即ち、
(1)CTLA4-SP関連配列、および、
(2)CPP関連配列、
をともに備えることで特徴付けられるペプチドである。
ここで、CTLA4-SP関連配列とは、CTLA4(cytotoxic T lymphocyte antigen-4)を構成するタンパク質の、シグナルペプチド(signal peptide;SP)を構成するアミノ酸配列またはその改変アミノ酸配列のことをいう。
CTLA4は、典型的には223程度のアミノ酸残基からなる膜タンパク質である(UniProtKB-P16410)。上掲の特許文献1および非特許文献1には、CTLA4はT細胞表面に発現しており、例えば抗原提示細胞(例えば樹状細胞等)表面に発現するCD80/CD86と結合することによって、例えば過剰なT細胞の活性化を抑制する負の調節因子として機能することが記載されている。
しかしながら、CTLA4のシグナルペプチドそれ自体が、抗腫瘍活性を有することは見出されておらず、かかるシグナルペプチドのアミノ酸配列を合成し、該配列にCPPを付加することにより、人為的に合成された抗腫瘍ペプチドが得られることは、本願出願当時、全く予想されていないことであった。
例えば、CTLA4をコードする遺伝子(cDNAである場合を包含する。)の情報ならびにアミノ酸配列情報は、種々の公的な国際機関の知識ベース(データベース)にアクセスすることにより取得することができる。例えば、Universal Protein Resource (UniProt)において、種々の生物種由来のCTLA4の全アミノ酸配列情報ならびにシグナルペプチドのアミノ酸配列情報を得ることができる。当該データベースによると、少なくともヒト、イヌ、マウス、ラビット、ブタ等の哺乳類におけるCTLA4の情報を取得することができる。
本発明の実施に当たって好ましく使用される上記(1)に係るCTLA4-SP関連配列は、例えば配列番号1~8にそれぞれ示されている。
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列は、ヒト(Homo sapiens)由来のCTLA4のシグナルペプチドを構成する合計35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
なお、上記配列番号1には、ヒト由来のCTLA4のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列を示したが、当該配列はあくまでも例示であり、利用可能なアミノ酸配列はこれに限定されない。
例えば、配列番号2のアミノ酸配列は、イヌ(Canis familiaris)由来のCTLA4(UniProtKB-Q9XSI1)のシグナルペプチドを構成する合計35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
また、配列番号3のアミノ酸配列は、マウス(Mus musculus)由来のCTLA4(UniProtKB-P09793)のシグナルペプチドを構成する合計35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
さらに、配列番号4のアミノ酸配列は、ラビット(Oryctilagus cuniculus)由来のCTLA4(UniProtKB-42072)のシグナルペプチドを構成する合計35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
また、配列番号5のアミノ酸配列は、ブタ(Sus scrofa)由来のCTLA4(UniProtKB-Q9MYX7)のシグナルペプチドを構成する合計35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
なお、CTLA4をコードする遺伝子(cDNAである場合を包含する。)の情報ならびにアミノ酸配列情報を、National Center for Biotechnology information (NCBI)において取得することができる。
例えば、配列番号6のアミノ酸配列は、ナイトモンキー(Aotus trivirgatus)由来のCTLA4(GenBank:AAK37530.1)のシグナルペプチドを構成する合計37アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
また、配列番号7のアミノ酸配列は、アヌビスヒヒ(Papio anubis)由来のCTLA4(NP_001106104.1)のシグナルペプチドを構成する合計37アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
さらに、配列番号8のアミノ酸配列は、アカゲザル(Macaca mulatta)由来のCTLA4(NP_001038204.1)のシグナルペプチドを構成する合計37アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
上記配列番号1~8に示されるアミノ酸配列は、いずれもCTLA4-SP関連配列として好ましく採用され得る。
ここで開示される合成ペプチドを構築するために使用されるCPPとして機能するアミノ酸配列(即ち、CPP関連配列)として、従来公知の種々のCPPを採用することができる。例えば、3個以上、好ましくは5個以上であって11個以下、好ましくは9個以下のアルギニン残基からなる、いわゆるポリアルギニン(Rn)は、ここで用いられるCPPとして好適である。その他、公知である種々のCPPを採用することができる。
特に限定するものではないが、配列番号9~26にCPPとして機能するアミノ酸配列の好適例を示す。具体的には、以下のとおりである。
配列番号9のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLS(核小体局在シグナル:Nucleolar localization signal)に対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、核小体タンパク質の1種(ApLLP)由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、HSV-1(単純ヘルペスウイルス タイプ1)のタンパク質(γ(1)34.5)由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、HIC(human I-mfa domain-containing protein)のp40タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、MDV(Marek病ウイルス)のMEQタンパク質由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、アポトーシスを抑制するタンパク質であるSurvivin- deltaEx3由来の合計17アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、血管増殖因子であるAngiogenin由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号16のアミノ酸配列は、核リンタンパク質であってp53腫瘍抑制タンパク質と複合体を形成するMDM2由来の合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号17のアミノ酸配列は、ベータノダウイルスのタンパク質であるGGNNVα由来の合計9アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号18のアミノ酸配列は、NF-κB誘導性キナーゼ(NIK)由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号19のアミノ酸配列は、Nuclear VCP-like protein由来の合計15アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号20のアミノ酸配列は、核小体タンパク質であるp120由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号21のアミノ酸配列は、HVS(ヘルペスウイルスsaimiri)のORF57タンパク質由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号22のアミノ酸配列は、細胞内情報伝達に関与するプロテインキナーゼの1種であるヒト内皮細胞に存在するキナーゼ2(LIM Kinase 2)の第491番目のアミノ酸残基から第503番目のアミノ酸残基までの合計13アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号23のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号24のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計9アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号25のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号26のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計18アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
これらのうち、特にNoLSやTATに関連するアミノ酸配列(又はその改変アミノ酸配列)が好ましい。例えば、配列番号22や配列番号23に示すようなNoLS関連のCPP配列、或いは配列番号9~26のTATやANT関連のCPP配列は、ここで開示される合成ペプチドを構築するために好適に用いることができる。
ここで開示される合成ペプチドのペプチド鎖(アミノ酸配列)は、上述したように、
(1)CTLA4-SP関連配列、および、
(2)CPP関連配列
を備えておればよく、例えば、CPP関連配列は、CTLA4-SP関連配列の、相対的にN末端側あるいはC末端側に配置されていればよい。
また、CPP関連配列は、CTLA4-SP関連配列の、N末端側あるいはC末端側に、隣接して配置されていることが好ましい。
具体的には、CTLA4-SP関連配列とCPP関連配列との間に、両配列部分に包含されないアミノ酸残基が存在しないことが好ましい。あるいは、リンカーが存在していても、上記2つの配列を連結させるリンカーとしては、10個以下(より好ましくは5個以下、例えば1個または2個のアミノ酸残基)であることが好ましい。
少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る抗腫瘍活性を失わない限りにおいて、CTLA4-SP関連配列とCPP関連配列を構成するアミノ酸配列以外の配列(アミノ酸残基)部分を含み得る。
ここで開示される合成ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下であることが適当であり、80以下が好ましく、70以下(例えば、好ましくは40~60程度のペプチド鎖)が好ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に合成ペプチドを提供することができる。特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はヘリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。
合成したペプチド全体のアミノ酸配列に対するCTLA4-SP関連配列およびCPP関連配列の占める割合は、抗腫瘍活性を失わない限り特に限定されないが、当該割合は概ね60個数%以上が望ましく、70個数%以上が望ましく、80個数%以上が望ましく、90個数%以上が好ましい。なお、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、抗腫瘍活性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部または全部がD型アミノ酸に置換されているものであってもよい。
好ましくは、ここで開示される合成ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、合成ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させることができる。例えば、合成ペプチドのC末端をCPP関連配列部分が構成するとき、該配列部分のC末端アミノ酸残基をアミド化することが好ましい。一方、合成ペプチドのC末端をCTLA4-SP関連配列部分が構成するとき、該配列部分のC末端アミノ酸残基をアミド化することが好ましい。好ましい他の一態様では、例えば配列番号9~26のアミノ酸配列を有する合成ペプチドのC末端アミノ酸残基をアミド化して、合成ペプチドの安定性を向上することができる。
ここで開示される合成ペプチドは、一般的な化学合成法に準じて容易に製造することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)或いはFmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。
ここで開示される合成ペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
或いは、遺伝子工学的手法に基づいて合成ペプチドを生合成により作製してもよい。即ち、所望する合成ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(ATG開始コドンを含む。)のポリヌクレオチド(典型的にはDNA)を合成する。そして、合成したポリヌクレオチド(DNA)と該アミノ酸配列を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する。)とから成る発現用遺伝子構築物を有する組換えベクターを、宿主細胞に応じて構築する。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からペプチドを単離し、必要に応じてリフォールディング、精製等を行うことによって、目的の合成ペプチドを得ることができる。
なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち合成ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の(株)セルフリーサイエンスから入手可能)が市販されている。
ここで開示される合成ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に製造(合成)することができる。即ち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを選択することによって、合成ペプチドのアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNA合成機等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、種々の酵素的合成手段(典型的にはPCR)を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。また、ポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNAは、二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
こうして得られるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、合成ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
ここで開示される合成ペプチドは、腫瘍細胞の増殖を抑制(或いは阻害)する用途の組成物(即ち、抗腫瘍剤等の薬学的な抗腫瘍組成物)の有効成分として好適に使用し得る。なお、合成ペプチドは、抗腫瘍活性を失わない限りにおいて塩の形態であってもよい。例えば、常法に従って通常使用されている無機酸又は有機酸を付加反応させることにより得られ得る合成ペプチドの酸付加塩を使用することができる。従って、本明細書および特許請求の範囲に記載の「ペプチド」は、かかる塩形態のものを包含する。
ここで開示される抗腫瘍組成物は、有効成分である合成ペプチドの抗腫瘍活性を失わない限りにおいて、使用形態に応じて薬学(医薬)上許容され得る種々の担体を含み得る。例えば、希釈剤、賦形剤等としてペプチド医薬において一般的に使用される担体を適用し得る。
ここで開示される抗腫瘍組成物の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、典型的には、水、生理学的緩衝液、種々の有機溶媒が挙げられる。適当な濃度のアルコール(エタノール等)水溶液、グリセロール、オリーブ油のような不乾性油であり得る。あるいはリポソームであってもよい。また、抗腫瘍組成物に含有させ得る副次的成分としては、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、色素、香料等が挙げられる。
抗腫瘍組成物(抗腫瘍剤)の典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、水性ジェル剤等が挙げられる。また、注射等に用いるため、使用直前に生理食塩水または適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、合成ペプチド(主成分)および種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の組成物(薬剤)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。この書籍の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
ここで開示される抗腫瘍組成物(合成ペプチド)の適用対象細胞は、腫瘍細胞(がん細胞)であれば特に制限されず、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に発生する種々のタイプの腫瘍細胞に対して適用可能である。例えば、多くの種類の扁平上皮がんや腺がんが含まれる。例えば、胃がん、肺がん(非小細胞肺がん及び小細胞肺がん、肺胞基底上皮腺がん等)、乳がん、メラノーマ等のがん細胞、或いはまた、腎がん、肝がん、大腸がん、すい臓がん、基底細胞がん等の皮膚がん、神経芽細胞腫(神経芽腫)、網膜芽細胞腫、褐色細胞腫その他の細胞腫を構成する細胞が挙げられる。
近年のがんの治療法としては、いわゆる「がんの三大治療法(手術療法、放射線療法、および化学療法)」に加え、「免疫療法」が採用され得る。臨床では、がんの種類および進行度等によって最適な治療方法が検討されて採用されるが、場合によっては、患者が選択し得る治療法が制限されることがある。そして、がんの種類等によって、効果的な治療薬は異なることもある。
例えば、メラノーマの治療としては、初期であれば、腫瘍部位を切除する手術療法が採用され得る。しかし、メラノーマは転移性が強いため、発見時には切除不能となっているケースがある。また、胃がんの治療としては、手術療法および化学療法が典型的に採用され得る。一方、放射線療法は一般的には採用されない。胃がんに対する放射線療法の治療成績は高くないといわれている。
ここで開示される抗腫瘍組成物(合成ペプチド)は、メラノーマおよび胃がん等を構成する腫瘍細胞に対して好ましく適用することができる。これによって、メラノーマや胃がんの治療薬の選択肢を増やすことができる。
ここで開示される抗腫瘍組成物は、従来のペプチド製剤と同様、その形態および目的に応じた方法や用量で使用することができる。例えば、液剤として、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは腹腔内への注射によって患者(即ち生体)の患部(典型的には悪性腫瘍組織)に所望する量だけ投与することができる。あるいは、錠剤等の固体形態のものや軟膏等のゲル状若しくは水性ジェリー状のものを、直接所定の組織(即ち腫瘍細胞を含む組織や器官等の患部)に投与することができる。あるいは、錠剤等の固体形態のものは経口投与することができる。経口投与の場合は、消化管内での消化酵素分解を抑止すべくカプセル化や保護(コーティング)材の適用が好ましい。
あるいは、生体外(インビトロ)において培養している腫瘍細胞(培養細胞株、又は生体から摘出された細胞塊又は組織又は器官である場合を包含する。)に対し、ここで開示される抗腫瘍組成物の適当量(即ち合成ペプチドの適当量)を、少なくとも1回、対象とする培養細胞(組織等)の培地に供給するとよい。1回当たりの供給量および供給回数は、培養する腫瘍細胞の種類、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されないが、培地中の合成ペプチド濃度が概ね0.5μM以上100μM以下の範囲内、好ましくは3μM以上50μM以下(例えば6.25μM以上25μM以下)の範囲内となるように、1回、2回またはそれ以上の複数回添加することが好ましい。
ここで開示される抗腫瘍組成物の、インビトロにおける抗腫瘍活性の評価方法としては、特に限定されないが、例えば、テトラゾリウム塩を用いた細胞増殖測定用試薬を用いた試験を用いた評価方法が挙げられる。
上記試験によって、例えば、評価対象となる腫瘍細胞を、ここで開示される抗腫瘍組成物(合成ペプチド)が添加された培養液(即ち、ここで開示される抗腫瘍ペプチドを含有する培養液)を用いて所定期間(例えば24~72時間)培養した際の細胞生存率(あるいは細胞増殖率ということができる)を算出することができる。当該細胞生存率は70%(例えば、60%、50%、40%または30%)以下であることが好ましい。なお、細胞生存率の具体的な算出方法については、下記の実施例において説明する。
あるいは、別の一態様では、ここで開示される抗腫瘍組成物の、腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を評価する。腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性の評価方法としては、例えば、ここで開示される抗腫瘍組成物(合成ペプチド)が添加された培養液を用いて上記所定期間培養した腫瘍細胞および正常細胞の細胞生存率を比較することによって評価する方法が挙げられる。
具体的には、例えば、まず、腫瘍細胞および正常細胞の培養を、同濃度の抗腫瘍ペプチド存在下で同期間行う。次いで、上記細胞増殖測定用試薬を用いて、腫瘍細胞の細胞生存率Aおよび正常細胞の細胞生存率Bを算出する。そして、これら細胞生存率に基づいて以下の式:

比細胞生存率=A/B

で表される比細胞生存率を算出する。当該比細胞生存率は、0.6(0.5、0.4または0.3)以下であることが好ましい。なお、上記式(1)で表される比細胞生存率には、便宜上100をかけてもよい。この場合、当該比細胞生存率は、60(50、40または30)以下であることが好ましい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<試験例1:ペプチド合成>
表1に示す1種のサンプルペプチドを市販のペプチド合成機を用いて製造した。具体的には次のとおりである。
サンプル1は、一実施例として設計されたものである。サンプル1は、CTLA4-SP関連配列として配列番号1に示されるヒトCTLA4のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、および、CPP関連配列として配列番号22に示されるアミノ酸配列(LIMキナーゼ2)をともに備える合成ペプチドである。サンプル1においては、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端側に、配列番号22に示されるアミノ酸配列が隣接して配置されている(配列番号27)。
Figure 0007405361000001
上記サンプル1は、市販のペプチド合成機を用いてマニュアルどおりに固相合成法(Fmoc法)を実施することによって、合成された。なお、ペプチド合成機の使用態様自体は本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。なお、表1に記載した合成ペプチドは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するペプチドにおいて、C末端アミノ酸残基のカルボキシル基(-COOH)はアミド化(-CONH)された。
合成したサンプル1は、DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶かされ、サンプル1のストック液(濃度2.5mM)が調製された。
<試験例2:サンプル1の抗腫瘍活性の評価試験>
上記試験例1で合成したサンプル1について、ヒト由来培養腫瘍細胞を対象として抗腫瘍活性を評価した。
[供試細胞]
供試腫瘍細胞として、現在市場において入手可能な、ヒト胃がん細胞株(FU97)、ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞株(A549)、ヒト乳がん細胞株(MDA-MB-231)、および、ヒトメラノーマ細胞株(A375)を用意した。また、比較対象としては、正常ヒト乳腺上皮細胞の培養株(MCF-12F)を用意した。
各細胞の培養液は、以下のとおりである。
(1)ヒト胃がん細胞株(FU97):
10μg/mLのインスリン、50ユニット/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、および10%の胎児ウシ血清(FBS;fetal bovine serum)を含むDMEM培地(和光純薬(株)製品)
(2)ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞株(A549):
2mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES、4500mg/mLのグルコース、50ユニット/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、および10%のFBSを含むRPMI-1640培地(和光純薬(株)製品)。
(3)ヒト乳がん細胞株(MDA-MB-231):
0.1mMの非必須アミノ酸(non-essential amino acids)、50ユニット/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、および10%のFBSを含むDMEM培地。
(4)ヒトメラノーマ細胞株(A375)
50ユニット/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、および10%のFBSを含むDMEM培地。
(5)正常ヒト乳腺上皮細胞の培養株(MCF-12F):
20ng/mLのリコンビナントEGF、10μg/mLのインスリン、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン、および10%のFBSを含むDMEM/F12培地(和光純薬(株)製品)。
[試験区]
本実験においては、上記5種の細胞株の各々について、以下の表2に示す比較試験区およびペプチド添加区を設定した。
Figure 0007405361000002
上記比較試験区として、サンプル1を添加しない培養液(即ち、サンプル1を含有しない培養液)を用いて、評価対象である細胞株を培養する試験区を設けた。
ペプチド添加区として、サンプル1を添加した培養液(即ち、サンプル1を含有する培養液)を用いて、評価対象である細胞株を培養する試験区を設けた。また、当該ペプチド添加区には、試験区1、試験区2および試験区3を設けた。
試験区1:培養液におけるサンプル1の濃度が6.25μMである試験区。
試験区2:培養液におけるサンプル1の濃度が12.5μMである試験区。
試験区3:培養液におけるサンプル1の濃度が25μMである試験区。
[サンプルペプチド存在下における細胞培養]
上記5種の細胞株を、それぞれ上記指定の培養液で培養した。各々の細胞株を、96穴(ウェル)プレートの1ウェルあたりの細胞数が約5×10個となるように播種した。なお、1ウェルあたりの培養液量は、100μLとした。
次いで、当該96ウェルプレートを、COインキュベータ内に配置した。そして、37℃、5%COの条件下、約1日間(23時間程度)のプレインキュベーションを行った。
次いで、ペプチド添加区のための培養液として、サンプル1の濃度が6.25μM、12.5μMおよび25μMのいずれかとなるように、濃度別にサンプル1を含有する培養液をそれぞれ調製し、1ウェルあたり90μLとなるように、評価対象とする細胞が培養されているウェル(即ち、上記プレインキュベーション後のウェル)に供給した。一方、比較試験区のための培養液として、サンプル1を添加しない培養液を準備し、1ウェルあたり90μLとなるように、評価対象とする細胞が培養されているウェル(即ち、上記プレインキュベーション後のウェル)に供給した。
次いで、当該96ウェルプレートを、COインキュベータ内に配置し、37℃、5%COの条件下、48時間インキュベートした。
なお、ペプチド添加区において、上記各試験区における試験培養ウェル数(n)は、いずれも3に設定した。したがって、以下の表3に示す結果の値は、試験ウェル数3のそれぞれで得た結果の平均値である。
そして、細胞生存率を、以下の手順によって算出した。
[細胞生存率の算出]
上記48時間のインキュベーションの後、各ウェルの培養液を、サンプル1を含有しないフレッシュな培養液100μLと交換した。次いで、発色試薬として「水溶性テトラゾリウム塩(WST-8)」を含有する細胞増殖測定用試薬「Cell Counting Kit-8」((株)同仁化学研究所製品)を各ウェルに10μLずつ添加した。
そして、当該96ウェルプレートを、COインキュベータ内に配置し、37℃、5%COの条件下、1.5時間インキュベートした。
上記1.5時間のインキュベーションの後、上記試薬を添加した培養液を回収した。次いで、当該培養液における、テトラゾリウム塩の還元に基づく波長450nmの吸光度(波長620nmの吸光度で補正した値:A450-A620)を測定した。そして、比色法によって、細胞生存率を算出した。
ペプチド添加区の各試験区(試験区1~3)における、上記5種の細胞株各々の細胞生存率は、同細胞株の比較試験区の測定値(測定吸光度)を100%とした相対値として算出された。即ち、上記5種の細胞株各々について、ペプチド添加区の各試験区(試験区1~3)の測定吸光度を、それぞれ同細胞株の比較試験区の測定吸光度で除し、100を乗じることにより、細胞生存率(%)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 0007405361000003
表3に示されるように、サンプル1は、本試験例で供試した各腫瘍細胞に対し、高い抗腫瘍活性を有することが確認された。また、サンプル1は、特に胃がんに対し、より優れた抗腫瘍活性を有することが確認された。
また、各腫瘍細胞の細胞生存率と、正常細胞であるMCF-12F細胞の細胞生存率とを比較すると、サンプル1は、腫瘍細胞に対して選択的に増殖抑制活性(即ち、腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性)を有することがわかる。そして、腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を評価するために、以下の比細胞生存率を算出した。
[比細胞生存率の算出]
具体的には、サンプル1の12.5μM濃度条件試験区(即ち、試験区2)における比細胞生存率を、以下の式:

比細胞生存率=
(供試腫瘍細胞の細胞生存率)/(MCF-12F細胞の細胞生存率)×100

に基づいて算出した。結果を表4に示す。
Figure 0007405361000004
表4に示されるように、試験区2において、サンプル1は、いずれの供試腫瘍細胞に対しても、優れた腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を有することが確認された。
上述した試験結果は、サンプル1が、本試験において供試されたいずれの腫瘍細胞に対しても、優れた抗腫瘍活性および腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を有することを示すものである。そして、このことは、ここで開示される抗腫瘍ペプチドが、ヒトの腫瘍細胞の増殖を抑制し得ることを示している。
なお、詳細なデータは示していないが、ヒト以外の哺乳類由来の腫瘍細胞を対象としても、上記サンプル1の、高い抗腫瘍活性および腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を確認することができる。また、ここで開示される抗腫瘍ペプチドは、CTLA4-SP関連配列をヒト以外の哺乳類由来の配列で構成しても(即ち、CTLA4-SP関連配列を配列番号2~8に示されるアミノ酸配列で構成しても)、各種腫瘍細胞に対する優れた抗腫瘍活性および腫瘍細胞選択的な抗腫瘍活性を有する。
上述したように、ここで開示される合成ペプチドによると、腫瘍細胞の増殖を選択的に抑制する(または阻害する)ことができる。このため、本発明によって提供される合成ペプチドを使用することによって、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する抗腫瘍組成物(抗腫瘍剤)を提供することができる。
配列番号1~27 合成ペプチド

Claims (4)

  1. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する合成ペプチドであって、
    以下の(1)および(2)に示されるアミノ酸配列:
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列;および、
    (2)配列番号9~26のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列
    からなり
    前記(1)に示されるアミノ酸配列のC末端側に、前記(2)に示されるアミノ酸配列が隣接して配置されている、合成ペプチド。
  2. 配列番号27に示すアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の合成ペプチド。
  3. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する抗腫瘍組成物であって、
    請求項1または2に記載の合成ペプチドと、
    薬学上許容され得る少なくとも一種の担体と、
    を備える、抗腫瘍組成物。
  4. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、
    インビトロにおいて対象とする腫瘍細胞に対して請求項1または2に記載の合成ペプチドを少なくとも1回供給することを包含する、腫瘍細胞の増殖抑制方法。
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