JP7402723B2 - 偏光板およびその製造方法、ならびに該偏光板を用いた画像表示装置 - Google Patents

偏光板およびその製造方法、ならびに該偏光板を用いた画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、偏光板およびその製造方法、ならびに該偏光板を用いた画像表示装置に関する。
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、表示セルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。しかし、偏光板は、実質的に偏光板の光学特性を支配する偏光子の光学特性が高温高湿環境下で低下するという耐久性の問題がある。より具体的には、偏光子は、高温高湿環境下において端部の偏光性能が消失し、結果として、いわゆる色抜けという現象が生じる場合がある。近年、画像表示装置の狭額縁化(場合によっては、いわゆるベゼルレス化)の要望が強まっており、端部の色抜け防止の必要性が高まっている。
特開2000-338329号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、高温高湿環境下においても優れた光学特性を維持し、色抜けが防止された偏光板およびその簡便な製造方法を提供することにある。
本発明の実施形態による偏光板は、枚葉状であり、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成された偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護層と、を有し、該偏光子の端部にポリエン化部が形成されている。
1つの実施形態においては、上記ポリエン化部は、上記偏光子の外周端から面方向内方に25μm以上の位置まで形成されている。1つの実施形態においては、上記ポリエン化部は、上記偏光子の外周端から面方向内方に1000μm以下の位置まで形成されている。
1つの実施形態においては、上記偏光板には、外周端面を覆う封止部が形成されている。1つの実施形態においては、上記封止部は、上記保護層を構成する樹脂フィルムの溶融固化物である。
本発明の別の局面によれば、上記の偏光板の製造方法が提供される。この製造方法は、偏光板の端部をレーザー照射により切断すること;あるいは、偏光板の端面に電子線を照射した後、該照射部分を加熱すること;を含む。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、表示セルと、該表示セルの少なくとも一方の側に配置された上記の偏光板と、を備える。
本発明の実施形態によれば、偏光子の端部にポリエン化部を形成することにより、高温高湿環境下においても優れた光学特性を維持し、色抜けが防止された偏光板が提供され得る。
本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。 図1の偏光板における偏光子の概略平面図である。 色抜け量の算出を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図であり;図2は、図1の偏光板における偏光子の概略平面図である。偏光板100は、枚葉状であり、偏光子10と、偏光子10の一方の側に配置された第1の保護層20と、偏光子10の他方の側に配置された第2の保護層30とを有する。目的等に応じて、第1の保護層20または第2の保護層30のいずれか一方は省略されてもよい。偏光子10は、二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。本発明の実施形態においては、偏光子10の端部には、ポリエン化部40が形成されている。
ポリエン化部40は、名称のとおり偏光子(実質的には、PVA系樹脂)がポリエン化した部分である。より詳細には、ポリエン化部は、PVA系樹脂において熱分解等により3つ以上の二重結合が形成された部分をいい、ラマン分光測定の吸収スペクトルにおいて1134/cm-1および1527/cm-1にピークが現れることにより確認され得る。偏光子のポリエン化は偏光性能を低下または消失させるので、偏光子のポリエン化の抑制または防止が好ましいことは当業界の技術常識である。本発明者らは高温高湿環境下における偏光子(最終的には、画像表示装置)の色抜けに対して鋭意検討した結果、驚くべきことに、あえて偏光子をポリエン化することにより高温高湿環境下における色抜けが顕著に抑制され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。このように、本発明は業界の技術常識とは全く逆方向の技術的思想に基づくものであり、その効果は、そのような技術的思想に基づく試行錯誤により得られた予期せぬ優れた効果である。
ポリエン化部40は、偏光子10の外周端から例えば25μm以上の位置まで形成されている。言い換えれば、ポリエン化部の幅Wは、例えば25μm以上である。幅がこのような範囲であれば、高温高湿環境下における色抜けが顕著に抑制された偏光子を得ることができる。ポリエン化部の幅Wは、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上であり、特に好ましくは200μm以上であり、とりわけ好ましくは500μm以上である。一方、ポリエン化部の幅Wは、偏光子の光学特性および画像表示装置の表示特性に対する悪影響を防止する観点から、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは800μm以下である。このように、ポリエン化部の幅を所定範囲とすることにより、偏光子の光学特性および画像表示装置の表示特性に悪影響を与えることなく、高温高湿環境下における色抜けが顕著に抑制された偏光子を得ることができる。
ポリエン化部の単体透過率は、好ましくは25%~45%であり、より好ましくは35%~45%である。ポリエン化部の偏光度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは98%以上である。ポリエン化部のポリエン化度を構造的・定量的に特定することは実質的に困難であり、単体透過率および偏光度がポリエン化度の指標となり得る。すなわち、偏光子の偏光性能の低下度合いがポリエン化度の指標となり得る。ポリエン化部における単体透過率および偏光度をこのような範囲に調整することにより、偏光子の光学特性および画像表示装置の表示特性に悪影響を与えることなく、高温高湿環境下における色抜けが顕著に抑制された偏光子を得ることができる。
1つの実施形態においては、偏光板100には、外周端面を覆う封止部50が形成されていてもよい。封止部を形成することにより、高温高湿環境下における色抜けがさらに抑制され得る。封止部50は、代表的には、第1の保護層20および/または第2の保護層30を構成する樹脂フィルムの溶融固化物である。封止部の透湿度は、好ましくは300g/m/24hr以下であり、より好ましくは100g/m/24hr以下であり、さらに好ましくは50g/m/24hr以下であり、特に好ましくは25g/m/24hr以下である。透湿度の下限は、例えば0.01g/m/24hrであり、好ましくは検出限界未満である。封止部50の透湿度がこのような範囲であれば、偏光子を空気中の水分および酸素から良好に保護し得る。なお、透湿度は、JIS Z0208に準じて測定され得る。
封止部50の厚みは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは5μm~300μmである。本明細書において「封止部の厚み」とは、特に明記しない限り、偏光板の外周端面から外側に延びる方向の厚みである。
本発明の実施形態による偏光板は、65℃および90%RH環境下で240時間保持した後の色抜け量が、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは30μm以下であり、とりわけ好ましくは10μm以下である。色抜け量の下限は好ましくはゼロである。色抜け量は、例えば以下のようにして算出され得る:偏光板(または偏光子)から、延伸方向に直交する方向および延伸方向をそれぞれ対向する二辺とする所定サイズの試験片を切り出す。なお、延伸方向は、代表的には偏光子の吸収軸方向に対応する。延伸方向は、例えば偏光板の長尺方向(搬送方向(MD方向))に対応し得る。次いで、粘着剤で試験片を同じサイズの無アルカリガラス板に貼り合わせる。これを画像表示装置代替品とする。なお、液晶表示装置代替品は、ガラス板の両面に視認側試験片および背面側試験片をそれぞれ貼り合わせる。有機EL表示装置代替品は、ガラス板の片面に視認側試験片のみを貼り合わせる。この画像表示装置代替品を65℃および90%RHのオーブン内で240時間放置して加熱加湿する。液晶表示装置代替品は、加熱加湿後の端部の色抜け状態を顕微鏡により調べる。有機EL表示装置代替品は、加熱加湿後の有機EL表示装置代替品を標準偏光板とクロスニコルの状態に配置した時の、端部の色抜け状態を顕微鏡により調べる。いずれの場合にも、具体的には、試験片(偏光板または偏光子)端部からの色抜けの大きさ(色抜け量:μm)を測定する。図3に示すように、延伸方向の端部からの色抜け量aおよび延伸方向と直交する方向の端部からの色抜け量bのうち、大きい方を色抜け量とする。なお、色抜けした領域は偏光特性が著しく低く、偏光板としての機能を実質的に果たさない。したがって、色抜け量は小さければ小さいほど好ましい。本発明の実施形態によれば、上記のとおり、偏光子の端部をあえてポリエン化することにより、加熱加湿試験後の色抜けを顕著に抑制することができる。これは、当業界の技術常識からは全く予期できない優れた効果である。
A-1.偏光子
偏光子は、上記のとおり、二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)を含むPVA系樹脂フィルムから構成される。二色性物質は、好ましくはヨウ素である。偏光子は、単層の樹脂フィルムから形成されてもよく、二層以上の積層体から形成されてもよい。
単層の樹脂フィルムから形成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護フィルムとしてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護フィルムを積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.9モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.5モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~5000、さらに好ましくは1500~4500である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
PVA系樹脂フィルム(偏光子)中のヨウ素濃度は、例えば5.0重量%~12.0重量%である。また、PVA系樹脂フィルム中のホウ酸濃度は、例えば12重量%~25重量%である。
偏光子の厚みは、例えば12μm以下であり、好ましくは8μm以下であり、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(ポリエン化部を除く)の単体透過率は、好ましくは40.0%~46.0%であり、より好ましくは40.5%~43.0%である。偏光子(ポリエン化部を除く)の偏光度は、好ましくは99.9%以上であり、より好ましくは99.95%以上であり、さらに好ましくは99.98%以上である。
A-2.保護層
第1および第2の保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
偏光板100を画像表示装置に適用したときに表示セルとは反対側に配置される保護層(外側保護層)の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、外側保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
偏光板100を画像表示装置に適用したときに表示セル側に配置される保護層(内側保護層)の厚みは、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。1つの実施形態においては、内側保護層は光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。別の実施形態においては、内側保護層は、任意の適切な位相差値を有する位相差層である。この場合、位相差層の面内位相差Re(550)は、例えば110nm~150nmであり、その遅相軸と偏光子の吸収軸とがなす角度は、例えば40°~50°である。「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差であり、式:Re=(nx-ny)×dにより求められる。「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差であり、式:Re=(nx-nz)×dにより求められる。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率であり、「d」は層(フィルム)の厚み(nm)である。
B.偏光板の製造方法
以下、上記A項に記載の偏光板の製造方法を、その特徴的な部分についてのみ説明する。偏光板の製造方法に関して下記で説明されていない操作、条件等については、当業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
製造方法は、1つの実施形態においては、偏光板の端部をレーザー照射により切断することを含む。偏光板の端部をレーザー照射により切断することにより、端部(すなわち、切断部)にポリエン化部40が形成され、封止部50も同時に形成され得る。より詳細には、偏光板の端部をレーザー照射により切断する際、偏光子のレーザー照射部分が熱分解し、ポリエンが形成される。レーザー照射部分は、偏光子の切断された部分および切断で残った偏光子の両方に存在し、切断で残った偏光子はその端部がレーザー照射部分となるので、偏光子の端部にポリエン化部が形成される。同時に、レーザー照射により、照射部分の保護層(実質的には、保護層を構成する樹脂フィルム)が溶融し、当該溶融樹脂が流動して偏光板の端面を覆い、その後固化する。その結果、保護層を構成する樹脂フィルムの溶融固化物で構成された封止部が形成される。
レーザー照射に用いられ得るレーザー光源としては、例えば、発振するレーザー光の波長が赤外域の9μm~11μmであるCOレーザー光源を含む赤外線レーザーが挙げられる。赤外線レーザーは、数10W級のパワーを容易に得ることができ、さらに、偏光板(実質的には、偏光子)を赤外線吸収に伴う分子振動によって効率的に発熱させることで、物質の相転移に伴うエッチングを起こすことが可能である。レーザー照射に用いられ得るレーザー光源の別の例としては、発振するレーザー光の波長が5μm近傍であるCOレーザー光源が挙げられる。レーザー光源のさらに別の例としては、近赤外線(NIR)、可視光(Vis)および紫外線(UV)パルスレーザー光源が挙げられる。NIR、VisおよびUVパルスレーザー光源としては、発振するレーザー光の波長が1064nm、532nm、355nm、349nmまたは266nm(Nd:YAG、Nd:YLF、またはYVOを媒質とする固体レーザー光源の高次高調波)であるもの、発振するレーザー光の波長が351nm、248nm、222nm、193nmまたは157nmであるエキシマレーザー光源、発振するレーザー光の波長が157nmであるFレーザー光源を例示できる。
レーザー光源の発振形態としては、偏光子の過度な熱ダメージを抑制する観点から、連続波(CW)よりもパルス発振が好ましい。パルス幅は10フェムト秒(10-14秒)~1ミリ秒(10-3秒)の範囲で適宜設定することができる。2種類以上のパルス幅を設定して加工することも可能である。レーザー光の偏光状態に関する制約はなく、直線偏光、円偏光、ランダム偏光が適用可能である。レーザー光の空間強度分布にも制約はない。良好な集光性を示し、小スポット化が可能で、かつ、生産性向上が期待できるガウシアンビームが好ましい。回折光学素子等を用いてフラットトップビームに整形されていてもよい。
レーザー光の照射条件は、任意の適切な条件に設定され得る。例えばCOレーザーを用いる場合、パルスエネルギーは、好ましくは2.67mJ~6.67mJであり、より好ましくは4.00mJ~6.00mJである。スキャン速度は、好ましくは100mm/秒~1000mm/秒であり、より好ましくは250mm/秒~700mm/秒である。繰返し周波数は、例えば5kHz~30Hzである。パルスレーザーの投入エネルギーは、好ましくは80000μJ/mm~200000μJ/mmであり、より好ましくは120000μJ/mm~180000μJ/mmである。なお、投入エネルギーE(μJ/mm)は下記の式から求められる。
E=(e×M)/(V)
e:パルスエネルギー(J)
M:繰り返し周波数(Hz)
V:スキャン速度(mm/秒)
レーザー光の照射形態(走査様式)は、目的に応じて適切に設定され得る。レーザー光は、例えば、直線状に走査されてもよく、S字状に走査されてもよく、渦巻き状に走査されてもよく、これらを組み合わせてもよい。
上記レーザー光の照射条件、上記レーザーの種類等を適切に設定することにより、ポリエン化部のポリエン化度および幅、ならびに、封止部の厚み等を調整することができる。
製造方法は、別の実施形態においては、偏光板の端面に電子線を照射した後、当該照射部分を加熱することを含む。このような操作によっても、ポリエン化部40および封止部50が同時に形成され得る。電子線は、代表的には、偏光板の端面に照射され得る。処理速度は、好ましくは1m/分~10m/分であり、より好ましくは2m/分~5m/分である。ビーム電流は、好ましくは5mA~30mAであり、より好ましくは、12.5mA~17.5mAである。電子線照射の効率係数Kは、好ましくは60~130であり、より好ましくは80~120である。効率係数は加速電圧により決定される数値であるが、装置ごとに加速電圧と効率係数の対応関係は異なる。電子線の線量は、好ましくは200kGy~1000kGyであり、より好ましくは250kGy~500kGyである。なお、線量D(kGy)は下記の式から求められる。
D=K×I/V
K:効率係数
I:ビーム電流(mA)
V:処理速度(m/分)
加熱温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃~130℃であり、さらに好ましくは100℃~120℃である。加熱時間は、好ましくは10時間以上であり、より好ましくは15時間~30時間であり、さらに好ましくは22時間~26時間である。このような加熱条件であれば、所望のポリエン化度および幅を有するポリエン化部ならびに所望の厚みを有する封止部が形成され得る。
C.画像表示装置
上記A項およびB項に記載の偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、このような画像表示装置も、本発明の実施形態に包含される。画像表示装置は、表示セルと、表示セルの少なくとも一方の側に配置された上記A項およびB項に記載の偏光板と、を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が挙げられる。画像表示装置の構成は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成した。
2.偏光板の作製
上記で得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層として、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、17μm)を紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離して露出した偏光子表面にアクリル系フィルム(東洋鋼鈑社製、40μm)を上記と同様にして貼り合せた。このようにして、シクロオレフィン系フィルム(保護層)/偏光子/アクリル系フィルム(保護層)の構成を有する偏光板を得た。
3.ポリエン化部の形成
上記で得られた偏光板から、延伸方向に直交する方向および延伸方向をそれぞれ対向する二辺とする50mm×50mmサイズの枚葉状の偏光板を切り出した。電子線照射装置(岩崎電気株式会社製、製品名「標準EB実験機、型式:EC250/15/180L」)を用いて、切り出した偏光板の端面に電子線を照射した。電子線の照射条件は、効率係数は85、電流は15mA、処理スピード3.9m/minであった。またこの時の加速電圧は225kVであった。次いで、偏光板を105℃で24時間加熱して、偏光子の端部にポリエン化部を形成した。ポリエン化部の幅は250μmであった。なお、ポリエン化部の幅は、顕微鏡を用いて撮影した画像から測定した。以上のようにして、ポリエン化部が形成された偏光板を作製した。
4.色抜け量の測定
上記で得られたポリエン化部が形成された偏光板を2枚用意し、これらを試験片とした。粘着剤で2枚の試験片を同じサイズの無アルカリガラス板の両面にそれぞれ貼り合わせ、視認側試験片/ガラス板/背面側試験片の積層体を作製し、画像表示装置代替品とした。視認側試験片および背面側試験片は、それぞれの偏光子の吸収軸が互いに直交するようにしてガラス板に貼り合わせた。画像表示装置代替品を65℃および90%RHのオーブン内で240時間放置して加熱加湿し、加熱加湿後の偏光板(実質的には、偏光子)の端部の色抜け状態を顕微鏡により調べた。具体的には、偏光子端部からの色抜けの大きさ(色抜け量:μm)を測定した。顕微鏡としてOlympus社製、MX61Lを用い、倍率10倍で撮影した画像から色抜け量を測定した。図3に示すように、延伸方向の端部からの色抜け量aおよび延伸方向と直交する方向の端部からの色抜け量bのうち、大きい方を色抜け量とした。結果を表1に示す。
[実施例2]
以下のようにしてポリエン化部を形成したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエン化部が形成された偏光板を作製した。ポリエン化部の幅は30μmであった。また、ポリエン化部の形成と同時に封止部が形成されていることを確認した。封止部の透湿度は18g/m/24hrであり、厚みは約13μmであった。得られた偏光板について、実施例1と同様にして色抜け量を測定した。結果を表1に示す。
(ポリエン化部の形成)
20cm×30cmの偏光板を用意し、この偏光板の中央部にパルスレーザー光を照射することにより、延伸方向に直交する方向および延伸方向をそれぞれ対向する二辺とする50mm×50mmサイズの枚葉状偏光板を切り出した。レーザー光の照射条件は、出力は85W、パルスの周波数は15kHz、処理速度は15mm/sであった。
[比較例1]
電子線照射およびその後の加熱処理のいずれも行わなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。偏光板にポリエン化部は形成されなかった。得られた偏光板について、実施例1と同様にして色抜け量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
電子線照射後の加熱処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。偏光板にポリエン化部は形成されなかった。得られた偏光板について、実施例1と同様にして色抜け量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007402723000001
表1から明らかなように、本発明の実施例は、偏光子の端部にポリエン化部を形成することにより、加熱加湿試験後の色抜け量を顕著に抑制できることがわかる。これは、当業界の技術常識からは全く予期できない優れた効果である。
本発明の実施形態による偏光板は、画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置)に好適に用いられる。
10 偏光子
20 第1の保護層
30 第2の保護層
40 ポリエン化部
50 封止部
100 偏光板

Claims (3)

  1. 枚葉状の偏光板の製造方法であって、
    該偏光板は、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成された偏光子と、該偏光子の両側に配置された保護層と、を有し、該偏光子の端部にポリエン化部が形成されており、
    該方法は、枚葉状に切り出した偏光板の端面に電子線を照射した後、該照射部分を加熱すること、を含み、
    該電子線の照射における電子線の線量が200kGy~1000kGyであり、
    該加熱の際の温度が90℃~130℃であり、加熱時間が15時間~30時間である
    製造方法。
  2. 前記ポリエン化部が、前記偏光子の外周端から面方向内方に50μm以上の位置まで形成されている、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ポリエン化部が、前記偏光子の外周端から面方向内方に1000μm以下の位置まで形成されている、請求項2に記載の製造方法。
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