以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの正規内圧は、例えば、180kPaである。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの正規荷重は、例えば、前記荷重の88%に相当する荷重である。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リム(正規リム)のリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対の支持層18及びインナーライナー20を備える。
トレッド4は、その外面22、すなわちトレッド面22において路面と接触する。トレッド面22には、溝24が刻まれる。トレッド4は、ベース部26と、このベース部26の径方向外側に位置するキャップ部28とを備える。ベース部26は、発熱性が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部28は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
図1において、符号PCはトレッド面22と赤道面との交点である。この交点PCはこのタイヤ2の赤道である。両矢印HSは、ビードベースラインから赤道PCまでの径方向距離である。この径方向距離HSは、タイヤ2の断面高さである。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4よりも径方向内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かって延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、カーカス12を保護する。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。クリンチ8は、リムと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
図1において、符号PWはこのタイヤ2の軸方向外端である。この外端PWは、サイドウォール6及びクリンチ8を含む部分の外面30、すなわちサイド面30に、模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる仮想サイド面に基づいて特定される。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
図1に示されるように、クリンチ8の外端32はサイドウォール6で覆われる。このクリンチ8の外端32は、径方向において、最大幅位置PWよりも内側に位置する。
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10は、コア34と、エイペックス36とを備える。コア34はリング状である。コア34はスチール製のワイヤーを含む。図1に示されるように、コア34は矩形状の断面形状を有する。エイペックス36は、コア34よりも径方向外側に位置する。エイペックス36は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。図1に示されるように、エイペックス36は径方向外向きに先細りである。図1において、符号PAはエイペックス36の外端である。このエイペックス36の外端PAは、径方向において、クリンチ8の外端32よりも内側に位置する。
図1において符号PMは、エイペックス36の、コア34との接触面の、軸方向幅の中心である。両矢印LAは、この幅中心PMからエイペックス36の外端PAまでの長さである。このタイヤ2では、この長さLA、すなわち、エイペックス36の長さLAは、25mm以上50mm以下の範囲で適宜設定される。
前述したように、エイペックス36は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。具体的には、このエイペックス36の複素弾性率E*aは60MPa以上120MPa以下である。このエイペックス36の損失正接LTaは、0.16以上0.18以下である。
タイヤ2を構成する要素の複素弾性率及び損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠して測定される。具体的には、複素弾性率及び損失正接は、粘弾性スペクトロメータを用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
振幅=±1%
周波数=10Hz
変形モード=引張
測定温度=70℃
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10とを架け渡す。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ38を含む。
このタイヤ2のカーカス12は、2枚のカーカスプライ38で構成される。図示されないが、それぞれのカーカスプライ38は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。
このタイヤ2では、カーカス12を構成する2枚のカーカスプライ38のうち、内側に位置するカーカスプライ38が第一カーカスプライ40であり、外側に位置するカーカスプライ38が第二カーカスプライ42である。
第一カーカスプライ40は、それぞれのコア34の周りにて折り返される。この第一カーカスプライ40は、一方のコア34と他方のコア34とを架け渡す第一本体部40aと、この第一本体部40aに連なりそれぞれのコア34の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第一折り返し部40bとを有する。図1に示されるように、第一折り返し部40bの端40eは、径方向において、最大幅位置PWよりも外側に位置する。
図1において、両矢印Hf1はビードベースラインから第一折り返し部40bの端40eまでの径方向距離を表す。このタイヤ2では、径方向距離Hf1は断面高さHSの40%以上が好ましい。この第一折り返し部40bの端40eがベルト14と第二カーカスプライ42との間に挟まれてもよい。
第二カーカスプライ42は、それぞれのコア34の周りにて折り返される。この第二カーカスプライ42は、一方のコア34と他方のコア34とを架け渡す第二本体部42aと、この第二本体部42aに連なりそれぞれのコア34の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第二折り返し部42bとを有する。図1に示されるように、第二折り返し部42bの端42eは、径方向において、エイペックス36の外端PAよりも内側に位置する。この第二折り返し部42bの端42eは、軸方向において外側から第一折り返し部40bで覆われる。
図1において、両矢印Hf2はビードベースラインから第二折り返し部42bの端42eまでの径方向距離を表す。このタイヤ2では、径方向距離Hf2は断面高さHSの10%以上が好ましく、40%以下が好ましい。
ベルト14は、トレッド4の径方向内側において、カーカス12と積層される。ベルト14は径方向に積層された少なくとも2層のベルトプライ44で構成される。
このタイヤ2のベルト14は、2層のベルトプライ44からなる。図示されないが、この2層のベルトプライ44はそれぞれ、並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
バンド16は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。このバンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。このタイヤ2のバンド16は、ベルト14全体を覆うフルバンド46と、このフルバンド46の端部を覆う一対のエッジバンド48とで構成される。このバンド16がフルバンド46のみで構成されてもよく、一対のエッジバンド48のみで構成されてもよい。
図示されないが、バンド16はバンドコードを含む。フルバンド46及びエッジバンド48のそれぞれにおいて、バンドコードは周方向に螺旋状に巻かれる。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。
それぞれの支持層18は、軸方向においてサイドウォール6の内側に位置する。この支持層18は、軸方向においてカーカス12のさらに内側に位置する。この支持層18は、サイドウォール6の軸方向内側において、カーカス12よりも軸方向内側に位置する。図1に示されるように、支持層18は三日月様の断面形状を有する。支持層18の外端50は、軸方向において、ベルト14の端よりも内側に位置する。支持層18の内端52は、径方向において、エイペックス36の外端PAよりも内側に位置する。
支持層18は架橋ゴムからなる。パンクによって内圧が低下した状態、すなわちパンク状態において、この支持層18は荷重を支持する。このタイヤ2を装着した車両はパンク状態においてある程度の距離を走行できる。このタイヤ2は、サイド補強タイプのランフラットタイヤである。
このタイヤ2では、荷重の支持の観点から、支持層18の複素弾性率E*sは9MPa以上が好ましい。乗り心地の観点から、この支持層18の複素弾性率E*sは14MPa以下が好ましい。
インナーライナー20は、カーカス12及び支持層18の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
図2には、タイヤ2がリム54に組み込まれている状態が示される。図2には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面の一部が示される。この図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
リム54は、正規リムである。このリム54には、タイヤ2のビード10の部分(以下、嵌合部56とも称される。)が嵌め合わされる。リム54は、コーナー58と、フランジ60と、シート62と、ハンプ64とを備える。
コーナー58は、フランジ60とシート62との境界部分である。コーナー58は、タイヤ2がリム54に組み込まれた状態においてタイヤ2のヒール66と対向する。コーナー58は曲面で構成される。図2に示された断面において、コーナー58の形状は円弧で表される。
フランジ60は、コーナー58の径方向外側に位置する。フランジ60には、軸方向内側から嵌合部56が当接する。フランジ60は、タイヤ2の軸方向外側への動きを制限する。
シート62は、コーナー58の軸方向内側に位置する。ハンプ64は、シート62の軸方向内側に位置する。このシート62には、ハンプ64を乗り越えた嵌合部56が載せられる。シート62に載せられた嵌合部56は、このシート62を締め付ける。
図2において、符号P0から符号P8はリム54上の特定の位置を表す。符号P0で表される位置は、フランジ60の外端である。符号P1からP8は、このフランジ60の外端P0を基準位置とし、この基準位置P0から5mm刻みで特定される位置を表す。例えば、P8は基準位置P0からの距離が40mmとなるリム54上の位置である。P5は、基準位置P0からの距離が25mmとなるリム54上の位置である。基準位置P0から位置P8に向かう方向が、タイヤ2のトー68側である。この図2において、符号Peはタイヤ2とリム54との接触面の径方向外端である。
以上説明したタイヤ2は、次のようにして製造される。詳述しないが、このタイヤ2の製造では、成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6、ビード10等のタイヤ2を構成する要素を組み合わせて、未加硫状態のタイヤ2(以下、生タイヤ2rとも称される。)が準備される。生タイヤ2rは、加硫機(図示されず)のモールドに投入される。生タイヤ2rは、モールド内で加圧及び加熱され、タイヤ2が得られる。タイヤ2は、生タイヤ2rの加硫成形物である。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤ2rを準備する工程、及び生タイヤ2rをモールド内で加圧及び加熱する工程を含む。なお、このタイヤ2の製造では、温度、圧力、時間等の加硫条件に特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
図3には、加圧及び加熱工程における生タイヤ2rの状態が示される。図3には、タイヤ2の回転軸に対応する生タイヤ2rの回転軸を含む平面に沿った、生タイヤ2rの断面の一部が示される。この図3において、左右方向は生タイヤ2rの軸方向であり、上下方向は生タイヤ2rの径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、生タイヤ2rの周方向である。なお、生タイヤ2rが十分に加硫しタイヤ2が形成されていれば、この図3は、加圧及び加熱工程によって形成されたタイヤ2の状態を示す。
加圧及び加熱工程において、生タイヤ2rは、膨張したブラダー70によってモールド72のキャビティ面74に押し付けられる。これにより、タイヤ2の外面が形づけられる。タイヤ2は、モールド72によって形づけられた外面を有する。図示されないが、ブラダー70に代えて、剛性中子が用いられてもよい。
このタイヤ2では、特に言及がない限り、外面の形状、すなわち輪郭はモールド72、具体的にはモールド72のキャビティ面74の形状により特定される。
タイヤ2がリム54に組み込まれた状態において、タイヤ2の嵌合部56はリム54と接触する。嵌合部56はリム54に押し当てられる。このタイヤ2では、嵌合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性の向上を達成するために、接触圧分布がコントロールされる。
図4には、このタイヤ2とリム54との接触圧分布が示される。この接触圧分布は、例えば、Tekscan社製の「圧力分布測定装置」を用いて得られる。この接触圧分布の測定に使用したタイヤ2のサイズは、245/50RF19である。この測定に使用したリム54のサイズは、19×8.0Jである。
図4において、縦軸は接触圧を表す。横軸は、図2に示されたリム54の基準位置P0からの距離を表す。原点(0mm)がこの基準位置P0に対応する。原点から20mmまでのゾーンは、フランジ60との接触面に概ね対応する。20mmから30mmまでのゾーンは、コーナー58との接触面に概ね対応する。30mmから50mmまでのゾーンは、シート62との接触面に概ね対応する。基準位置P0側において、接触圧の立ち上がりが確認される位置が符号Psで示される。この位置Psは、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peに対応する。このグラフに示された接触圧分布の左側が接触面の径方向外側部分に相当し、右側がタイヤ2のトー68側に相当する。
図4には、負荷状態の接触圧分布が実線で、無負荷状態の接触圧分布が点線で示される。負荷状態とは、タイヤ2をリム54(正規リム)に組み込み、タイヤ2の内圧を正規内圧に調整し、タイヤ2に正規荷重の75%の荷重を作用させた状態である。詳述しないが、タイヤ2のキャンバー角を0°に設定して、タイヤ2を路面(平面)に押し付けることで、正規荷重の75%の荷重が縦荷重としてタイヤ2に付与される。無負荷状態とは、タイヤ2をリム54(正規リム)に組み込み、タイヤ2の内圧を正規内圧に調整し、タイヤ2に荷重を作用させていない状態である。
図4に示されるように、負荷状態の接触圧分布は、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外側部分に接触圧の第一ピーク76と、この第一ピーク76よりもタイヤ2のトー68側に接触圧の第二ピーク78とを有する。この第二ピーク78は、タイヤ2とリム54との接触面のうち、フランジ60との接触面に対応するゾーンの、コーナー58側の部分に位置する。
このタイヤ2では、負荷状態の接触圧分布も、無負荷状態の接触圧分布も複数のピークが含まれる。そして、負荷状態においても、無負荷状態においても、接触面の径方向外端Peからタイヤ2のトー68の部分に至るゾーン全体が途切れることなくリム54と接触する。このタイヤ2では、接触面の径方向外端Peからタイヤ2のトー68の部分に至るゾーンにおいて、特に、フランジ60との接触面に対応するゾーンと、コーナー58との接触面に対応するゾーンとにおいて、タイヤ2とリム54との間に隙間は形成されない。なお、所望の接触圧分布が得られるのであれば、接触面の径方向外端Peからタイヤ2のトー68の部分に至るゾーンにおいて、タイヤ2とリム54との間に隙間が形成されていてもよい。
図5には、接触圧分布のコントロールが行われていない、従来のタイヤ(図示されず)とリム54との接触圧分布が示される。この従来タイヤの接触圧分布は、図4に示された接触圧分布と同様の方法で計測されている。
図5に示されるように、従来タイヤの負荷状態の接触圧分布は、フランジ60との接触面に対応するゾーンに複数の接触圧のピークを有する。この接触圧分布においては、これらピークのうち、基準位置P0側のピーク76cが、前述の第一ピーク76に対応する。これらピークのうち、コーナー58側に位置するピーク78cが、前述の第二ピーク78に対応する。
従来タイヤでは、フランジ60との接触面に対応するゾーンにおいて、第一ピーク76cは第二ピーク78cよりも高いが、この第一ピーク76cと第二ピーク78cとの間に第二ピーク78cよりも接触圧が低い領域は含まれない。従来タイヤでは、嵌合部はフランジ60に点というよりも面で支持される。この従来タイヤでは、接触圧は分散する傾向にある。なお、接触圧が低い領域を含むとは、対象となるゾーンにおいて、基準となるピーク(ここでは、第二ピーク78c)に対して10%以上の接触圧の低下が確認される領域を含むことを意味する。
これに対して、このタイヤ2では、図4に示されるように、第一ピーク76は第二ピーク78よりも高く、特に、フランジ60との接触面に対応するゾーンにおいて、第一ピーク76と第二ピーク78との間に、第二ピーク78よりも接触圧が低い領域が含まれる。このタイヤ2は、フランジ60に、従来タイヤのように面というよりも、接触面の径方向外側部分と、コーナー58側の部分とにおいて、点に近い状態で支持される。このタイヤ2では、接触圧の分散が抑えられ、局所的にしかも高い接触圧が得られる。このタイヤ2では、走行中の、リム54に対する位置ずれが抑えられるので、操縦安定性の向上が図られる。
このタイヤ2では、操縦安定性の向上のために、従来タイヤのように嵌合部56に凹みを設ける必要はない。このタイヤ2では、この凹みが設けられていない従来タイヤと同等の、タイヤ2のリム54への組み込みやすさが得られる。このタイヤ2では、嵌合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性の向上が達成される。
車両旋回時の外輪には、大きな負荷が作用する。このため、旋回時の外輪においては、リム54に対してタイヤ2が動き、音が生じることが懸念される。
前述したように、このタイヤ2では、走行中の、リム54に対する位置ずれが抑えられる。旋回時に大きな負荷が作用する外輪においても、リム54に対してタイヤ2は動きにくい。このタイヤ2では、リム54に対する位置ずれを起因とする音の発生も抑えられる。このタイヤ2では、静粛性の向上も図られる。このタイヤ2では、嵌合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性の向上が達成されるとともに、静粛性の向上も図られる。
前述したように、このタイヤ2の負荷状態における接触圧分布では、第一ピーク76は第二ピーク78よりも高い。このタイヤ2では、操縦安定性及び静粛性の向上を図る観点から、第二ピーク78に対する第一ピーク76の比は、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。この比は、1.7以下が好ましく、1.6以下がより好ましい。
図5に示されるように、従来タイヤでは、負荷状態における、接触面の径方向外端Peに対応する位置Psは、無負荷状態における、接触面の径方向外端Peに対応する位置Psよりも基準位置P0側に位置する。従来タイヤでは、荷重の作用により、接触面の径方向外端Peに対応する位置Psの位置が基準位置P0側に移動する。従来タイヤでは、荷重の作用による接触領域の変化が大きい。
これに対して、このタイヤ2では、図4に示されるように、負荷状態における、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peに対応する位置Psは、無負荷状態における、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peに対応する位置Psと同じである。このタイヤ2では、荷重の作用による接触領域の変化が小さい接触面が形成される。このタイヤ2では、リム54に対する位置ずれが効果的に抑えられる。この観点から、負荷状態における、基準位置P0に対する、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peの位置は、荷重を作用させていない無負荷状態における、基準位置P0に対する、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peの位置と同じであるのが好ましい。
負荷状態における、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peの位置が、無負荷状態における、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外端Peの位置と同じであるとは、接触圧分布において計測される、負荷状態における、基準位置P0から接触面の径方向外端Peに対応する位置Psまでの距離と、無負荷状態における、基準位置P0から接触面の径方向外端Peに対応する位置Psまでの距離との差が-1mm以上1mm以下の範囲にあることを意味する。
図5に示されるように、従来タイヤの、無負荷状態における接触圧分布には、負荷状態における接触圧分布に確認される第一ピーク76cのようなピークは含まれていない。フランジ60との接触面に対応するゾーンで明確に確認できるのは、トー側のピーク、すなわち第二ピーク78cのみである。
これに対して、このタイヤ2では、図4に示されるように、無負荷状態の接触圧分布は、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外側部分に接触圧の第一ピーク76と、この第一ピーク76よりもタイヤ2のトー68側に接触圧の第二ピーク78とを有し、この第二ピーク78は、タイヤ2とリム54との接触面のうち、フランジ60との接触面に対応するゾーンの、コーナー58側の部分に位置する。そして、第一ピーク76は第二ピーク78よりも低い。このタイヤ2では、無負荷状態においても、局部的に高い接触圧を有する複数の箇所で嵌合部56はフランジ60に支持される。このタイヤ2は、無負荷状態において、リム54に安定に保持されるので、その後、荷重を作用させて負荷状態としても、リム54に対するタイヤ2の動きが効果的に抑えられる。しかも接触面の径方向外側部分において接触圧が著しく高まるので、タイヤ2はリム54に安定に保持される。このタイヤ2では、操縦安定性及び静粛性の一層の向上が図られる。この観点から、無負荷状態において、タイヤ2とリム54との接触面の径方向外側部分に接触圧の第一ピーク76と、この第一ピーク76よりもタイヤ2のトー68側に接触圧の第二ピーク78とを有し、第二ピーク78が、接触面のうち、フランジ60との接触面に対応するゾーンの、コーナー58側に位置し、第一ピーク76が第二ピーク78よりも低いのが好ましい。
さらに、このタイヤ2では、図4に示されるように、無負荷状態の接触圧分布には、第一ピーク76と第二ピーク78との間に第一ピーク76よりも接触圧が低い領域が含まれる。このタイヤ2は、無負荷状態においても、フランジ60に対して、接触面の径方向外側部分と、コーナー58側の部分とにおいて、点に近い状態で支持される。このタイヤ2は、接触圧の分散が抑えられ、局所的にしかも高い接触圧が得られるので、無負荷状態においても、リム54に安定に保持される。この観点から、このタイヤ2では、無負荷状態の接触圧分布に、接触面の径方向外側部分に第一ピーク76が、そしてフランジ60との接触面に対応するゾーンの、トー側部分に第二ピーク78が含まれる場合には、第一ピーク76と第二ピーク78との間に第一ピーク76よりも接触圧が低い領域がさらに含まれるのが好ましい。
このタイヤ2では、以上説明したように、リム54との接触圧分布がコントロールされ、このコントロールされた接触圧分布によって、嵌合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性及び静粛性の向上が達成される。このタイヤ2では、リム54との接触圧分布を前述したようにコントロールできるのであれば、この接触圧分布のコントロール方法に特に制限はない。このタイヤ2では、例えば、サイド面30の一部をなすクリンチ8に突部を設けることで、前述したような、篏合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性及び静粛性の向上に貢献できる、リム54との接触圧分布が得られる。
図3に示されるように、このタイヤ2のクリンチ8は、本体82とこの本体82から突出する突部84とを備える。図3に示されるように、突部84はクリンチ8からなる。このタイヤ2では、この突部84の一部がサイドウォール6により構成されてもよい。この場合、クリンチ8とサイドウォール6との境界は後述する突部84の頂よりも径方向外側に位置するのが好ましい。
図3において、二点鎖線DLは本体82と突部84との境界を表す。この境界DLは、前述の仮想サイド面の一部をなす。
図3において、実線ALは最大幅位置PWを通り軸方向に延びる直線である。符号PLは、サイド面30上の特定の位置である。このタイヤ2では、位置PLは、最大幅位置PWからクリンチャーライン86までのゾーンにおいて、装飾等が設けられていない部分において選定されればよく、その選定位置に特に制限はない。この図3では、2本のクリンチャーライン86の間の部分において位置PLが選定されている。なお、クリンチャーライン86とは、タイヤ2をリム54に組み込んだ後、タイヤ2とリム54とのフィッティングを目視で確認するために用いられる、周方向に延びる凸条である。
矢印Rは、最大幅位置PWと特定位置PLとを通り、実線AL上に中心を有する円弧の半径を表す。このタイヤ2では、この半径Rの円弧は仮想サイド面の輪郭線の一部をなす。このタイヤ2では、この半径Rの円弧は、フランジ60と対向する面から径方向外向きに延びる輪郭線と、中心がサイド面30の外側に位置する円弧で繋げられる。
このタイヤ2では、本体82の外面88の形状は仮想サイド面の輪郭線で表される。前述の突部84は、この仮想サイド面で表された本体82の外面88からの突出部分として特定される。
図3において、符号TSは突部84の径方向外端である。符号TUは、突部84の径方向内端である。符号TTは、突部84の頂である。頂TTは、本体82の外面88の法線に沿って計測される、この本体82の外面88から突部84の外面90までの距離が最大となる突部84の外面90上の位置により特定される。突部84の外端TS及び内端TUは、本体82の外面88と突部84の外面90との交点、具体的には接点である。
図6には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面における、このタイヤ2の嵌合部56の輪郭が表される。図6に示された輪郭において、サイド面30の形状はモールド72のキャビティ面74の形状に一致する。
図6において、両矢印aはビードベースラインから突部84の頂TTまでの径方向距離である。両矢印bは、突部84の高さである。この高さbは、本体82の外面88の法線に沿って計測される、この本体82の外面88から突部84の頂TTまでの距離により表される。
このタイヤ2では、負荷状態ではもちろんのこと、無負荷状態においても、突部84はフランジ60と接触する。この接触により突部84は反力を保持した状態で押し潰され、嵌合部56はリム54と接触する。これにより、図4に示された接触圧分布が得られる。この観点から、このタイヤ2では、無負荷状態において、フランジ60と接触し、この接触により反力を保持した状態で押し潰される突部84が嵌合部56に設けられるのが好ましい。この場合、嵌合部56の一部をなすクリンチ8に突部84が設けられるのがより好ましい。
このタイヤ2では、無負荷状態においてフランジ60と接触する突部84が得られる観点から、ビードベースラインから突部84の頂TTまでの径方向距離aは15mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。フランジ60との接触により反力を保持した状態で押し潰され、嵌合部56がリム54と接触する観点から、突部84の高さbは0.30mm以上が好ましく、0.65mm以上がより好ましく、0.90mm以上がさらに好ましい。この高さbは、1.50mm以下が好ましく、1.40mm以下がより好ましく、1.20mm以下がさらに好ましい。
図4に示された接触圧分布の測定に使用したタイヤ2の嵌合部56には、ビードベースラインから突部84の頂TTまでの径方向距離aが18mmである位置に頂TTを有し、高さbが1.00mmである突部84が設けられている。図5に示された接触圧分布の測定に使用した従来タイヤでは、突部84が設けられなかった他はこのタイヤ2と同等の構成を有している。
図6において、両矢印cは突部84の頂TTから突部84の内端TUまでの径方向距離である。突部84が接触圧分布のコントロールに効果的に貢献できる観点から、この距離cは2mm以上が好ましく、4mm以下が好ましい。
このタイヤ2では、突部84の輪郭は円弧で表される。この突部84は、接触圧分布のコントロールに効果的に貢献できる。この観点から、突部84の輪郭は円弧で表されるのが好ましい。
図6において、矢印Rpは、突部84の外面90形状を表す円弧の半径である。このタイヤ2では、突部84の輪郭は円弧で表される場合、この円弧の半径Rpは5mm以上が好ましく、50mm以下が好ましい。なお、図4に示された接触圧分布の測定に使用したタイヤ2では、この円弧の半径Rpは10mmに設定されている。
図7には、突部84の変形例が示される。この図7に示されるように、突部84が、突部84の頂TTから突部84の外端TSに向かって延びる第一斜面92と、この頂TTから突部84の内端TUに向かって延びる第二斜面94とを含んでもよい。この場合、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2断面において、第一斜面92及び第二斜面94の輪郭は直線で表されるのが好ましい。
図7において、角度θpは、第一斜面92の輪郭を表す直線と第二斜面94の輪郭を表す直線とがなす角度を表す。このタイヤ2では、突部84が接触圧分布のコントロールに効果的に貢献できる観点から、第一斜面92の輪郭を表す直線と第二斜面94の輪郭を表す直線とがなす角度θpは、120°以上が好ましく、175°以下が好ましい。
図3において、両矢印dは突部84の頂TTにおけるクリンチ8の厚さを表す。この厚さdは、頂TTを通るカーカス12、詳細には第一折り返し部40bの法線に沿って計測される。この図3において、実線BLは、エイペックス36の、コア34との接触面の、軸方向幅の中心PMを通り軸方向に延びる直線である。両矢印eは、この実線BLに沿って計測されるクリンチ8の厚さである。このタイヤ2では、この厚さeが、コア34の軸方向外側におけるクリンチ8の厚さである。
このタイヤ2では、クリンチ8が接触圧分布のコントロールに効果的に貢献できる観点から、突部84の頂TTにおけるクリンチ8の厚さdはコア34の軸方向外側におけるクリンチ8の厚さeよりも厚いのが好ましい。具体的には、コア34の軸方向外側におけるクリンチ8の厚さeに対する突部84の頂TTにおけるクリンチ8の厚さdの比は、1.1以上が好ましく、2.5以下が好ましい。
前述したように、突部84はクリンチ8の一部をなす。突部84が接触圧分布のコントロールに効果的に貢献できる観点から、クリンチ8の複素弾性率E*cは、30MPa以上が好ましく、45MPa以上がより好ましい。このクリンチ8の複素弾性率E*cは、70MPa以下が好ましく、60MPa以下がより好ましい。
図3に示されるように、このタイヤ2では、支持層18の内端52は、径方向において、突部84の外端TSと内端TUとの間に位置する。言い換えれば、支持層18の内端52部分と突部84とが軸方向において重複する。支持層18の内端52部分は内向きに先細りな形状を呈しているので、この支持層18の内端52部分が、突部84が設けられた部分の剛性をバランスよく整える。このタイヤ2では、突部84が接触圧分布のコントロールにより効果的に貢献できる。この観点から、このタイヤ2では、支持層18の内端52は、径方向において、突部84の外端TSと内端TUとの間に位置するのが好ましい。
このタイヤ2では、断面高さHSは141mm以下が好ましい。これにより、タイヤ2のサイドウォール6及びクリンチ8を含む部分、すなわちサイド部の剛性が高まり、突部84が接触圧分布のコントロールにより効果的に貢献できる。この観点から、断面高さHSは135mm以下がより好ましい。サイド部の剛性が適切に維持される観点から、この断面高さHSは110mm以上が好ましく、120mm以上がより好ましい。
図1に示されたタイヤ2以外にも、例えば、図8に示されたタイヤ102においても、篏合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性及び静粛性の向上に貢献できる、リムとの接触圧分布が得られる。次に、このタイヤ102の構成について説明する。
図8は、タイヤ102の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ102の断面の一部を示す。図8において、左右方向はタイヤ102の軸方向であり、上下方向はタイヤ102の径方向である。図8の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ102の周方向である。図8において、一点鎖線CLはタイヤ102の赤道面を表す。
このタイヤ102は、トレッド104、一対のサイドウォール106、一対のクリンチ108、一対のビード110、カーカス112、ベルト114、バンド116、一対の支持層118、インナーライナー120及び一対の補強層122を備える。
このタイヤ102では、クリンチ8、ビード10及びカーカス12の構成を変えて補強層122を設けた以外は、図1に示されたタイヤ2と同等の構成を有する。トレッド104、サイドウォール106、ベルト114、バンド116、支持層118及びインナーライナー120については、説明を省略する。
このタイヤ102では、ビード110は、コア124とエイペックス126とを備える。コア124はリング状である。コア124はスチール製のワイヤーを含む。このタイヤ102においても、図1に示されたタイヤ2と同様、コア124は矩形状の断面形状を有する。エイペックス126は、コア124よりも径方向外側に位置する。エイペックス126は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。図8に示されるように、エイペックス126は径方向外向きに先細りである。このエイペックス126には、図1に示されたタイヤ2のエイペックス36の材質と同等の材質が用いられる。
図8において、両矢印LAはエイペックス126の長さである。この長さLAは、図1に示されたタイヤ2のエイペックス36と同様、エイペックス126の、コア124との接触面の、軸方向幅の中心PMからエイペックス126の外端PAまでの長さにより表される。
このタイヤ102では、エイペックス126の長さLAは10mm以上15mm以下である。このタイヤ102のエイペックス126は、図1に示されたタイヤ2のエイペックス36よりも小さい。このエイペックス126は、軽量化に寄与する。
このタイヤ102では、カーカス112とクリンチ108との間に補強層122が設けられる。後述するが、この補強層122には、高い剛性を有する架橋ゴムが用いられる。嵌合部128の剛性を適切に維持する観点から、クリンチ108には、補強層122の架橋ゴムよりも低い剛性を有する架橋ゴムが用いられる。具体的には、このタイヤ102のクリンチ108の複素弾性率E*cは5MPa以上15MPa以下である。このクリンチ108は、図1に示されたタイヤ2のクリンチ8よりも軟質である。このタイヤ102では、クリンチ108の損失正接LTcは0.04以上0.11以下である。
このタイヤ102では、カーカス112による剛性への影響が考慮され、カーカス112は一枚のカーカスプライ130からなる。このカーカスプライ130は、それぞれのコア124の周りにて折り返される。このカーカスプライ130は、一方のコア124と他方のコア124とを架け渡す本体部130aと、この本体部130aに連なりそれぞれのコア124の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部130bとを有する。図8に示されるように、折り返し部130bの端130eは、径方向において、エイペックス126の外端PAと補強層122の外端132との間に位置する。折り返し部130bの端130eは、本体部130aと補強層122との間に位置し、補強層122で覆われる。
図8において、両矢印Hfはビードベースラインから折り返し部130bの端130eまでの径方向距離である。このタイヤ102では、折り返し部130bによる嵌合部128の剛性への影響を抑える観点から、径方向距離Hfは、20mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ102では、カーカス112とクリンチ108との間に、補強層122が設けられる。この補強層122は、エイペックス126よりも径方向外側に位置する。図8に示されるように、補強層122の内端134は、径方向において、エイペックス126とコア124との境界部分に位置する。補強層122の外端132は、径方向において、最大幅位置PWよりも内側に位置する。
前述したように、このタイヤ102の補強層122には、高い剛性を有する架橋ゴムが用いられる。具体的には、補強層122の複素弾性率E*rは60MPa以上100MPa以下である。この補強層122は、クリンチ108よりも硬質である。このタイヤ102では、補強層122の損失正接LTrは0.16以下である。
図8において、両矢印Hrはビードベースラインから補強層122の外端132までの径方向距離である。この距離Hrは補強層122の高さである。両矢印HSは、このタイヤ102の断面高さである。このタイヤ102では、補強層122が嵌合部128の剛性コントロールに効果的に貢献できる観点から、補強層122の高さHrは断面高さHSの20%以上が好ましく、50%以下が好ましい。
詳述しないが、このタイヤ102のクリンチ108にも、図1に示されたタイヤ2の突部84と同様の形状を有する突部136が、図1に示されたタイヤ2と同様の位置に設けられる。したがって、このタイヤ102においても、篏合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性及び静粛性の向上に貢献できる、リムとの接触圧分布が得られる。特に、このタイヤ102では、補強層122が、小さなエイペックス126とともに、嵌合部128の剛性をバランスよく整えるので、突部136が接触圧分布のコントロールにより効果的に貢献できる。しかも横剛性を損なうことなく、縦剛性の低減が図られるので、このタイヤ102では、乗り心地の向上も達成される。
図9には、図8に示されたタイヤ102の嵌合部128がリム138とともに示される。この図9において、符号P25は、両矢印H25で示される、ビードベースラインからの径方向距離が25mmである、タイヤ102の外面上の位置である。両矢印Tcは、この位置P25におけるクリンチ108の厚さである。厚さTcは、位置P25を通るカーカス112の本体部130aの法線に沿って測定される。両矢印Hcは、ビードベースラインからクリンチ108の外端140までの径方向距離である。
このタイヤ102では、嵌合部128の剛性コントロールの観点から、クリンチ108の厚さTcは4mm以上が好ましく、5mm以下が好ましい。クリンチ108の高さHcは30mm以上が好ましく、40mm以下が好ましい。
図9において、符号PBはエイペックス126の径方向高さが半分となる位置に対応するエイペックス126の内側面142上の位置である。実線BAは、この位置PBとエイペックス126の外端PAとを通る直線である。この実線BAは、軸方向に対して傾斜する。
このタイヤ102では、嵌合部128においては、カーカスプライ130の本体部130aは、エイペックス126の内側面142に沿ってコア124からこのエイペックス126の外端PAに向かって延びる。図9に示されるように、このタイヤ102では、本体部130aは軸方向に対して傾斜する。このタイヤ102では、エイペックス126の内側面142に沿って延びる本体部130aの傾斜方向は、前述の実線BAの傾斜方向によって特定される。
図9において、実線BLはコア124とエイペックス126の、コア124との接触面の、軸方向幅の中心PMを通り軸方向に延びる直線である。符号θsで表される角度は、実線BAが実線BLに対してなす角度である。このタイヤ102では、嵌合部128において、エイペックス126の内側面142に沿って延びる本体部130aが軸方向に対してなす角度は、この角度θsで表される。このタイヤ102では、角度θsは、タイヤ102がリム138(正規リム)に組み込まれ、このタイヤ102の内圧が正規内圧の10%に調整され、そしてこのタイヤ102に荷重がかけられていない状態で測定される。
前述したように、このタイヤ102では、エイペックス126の内側面142に沿って延びる本体部130aは、軸方向に対して傾斜する。特に、このタイヤ102では、嵌合部128において、本体部130aが軸方向に対してなす角度θsは40°以上60°以下である。
図9において、符号Peはタイヤ102とリム138との接触面の径方向外端である。実線LSは、この外端Peを通り径方向に延びる直線である。
このタイヤ102では、カーカスプライ130の本体部130aには、最大幅位置PWとコア124との間に、この本体部130aの傾斜角度θsを特定する実線BAに沿って延びる部分が存在する。図9に示されるように、このタイヤ102では、少なくとも実線LSよりも軸方向内側部分においては、この本体部130aはこの実線BAに沿って直線状に延びる。このタイヤ102では、エイペックス126の内側面142上の位置PBから実線LSまでのゾーンにおいて、実線BAに対する本体部130aの輪郭線のずれが1mm以内にあれば、本体部130aは実線BAに沿って直線状に延びると判断される。実線BAに対する本体部130aの輪郭線のずれは、本体部130aの輪郭線の法線に沿って計測される実線BAからこの本体部130aの輪郭線までの距離により表される。
このタイヤ102では、補強層122とともに、小さなエイペックス126が採用され、このエイペックス126の内側面142に沿って延びる本体部130aの傾斜角度θcが40°~60°の範囲で設定される。このタイヤ102では、最大幅位置PWとコア124との間において、本体部130aは、図1に示されたタイヤ2のように曲線を描くように延びるのではなく、概ね直線状に延びる。嵌合部128において本体部130aが短い長さで構成されるので、このタイヤ102では、ボリュームの低減が図れる。しかもこのタイヤ102では、面内ねじれ剛性が適切に維持されるので、小さなエイペックス126が採用されているにも関わらず、十分な剛性が確保される。このタイヤ102はリム138に安定に保持されるので、リム138に対する位置ずれが効果的に抑えられる。
以上説明したように、本発明によれば、嵌合圧の上昇を抑えつつ、操縦安定性の向上が達成された、空気入りタイヤが得られる。リムに対する位置ずれが抑えられるので、このタイヤでは、この位置ずれを起因とする音の発生も抑えられる。サイド補強タイプのランフラットタイヤに基づいて本発明の内容が説明されたが、支持層が設けられない通常タイプのタイヤにおいても、同様の効果が奏される。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。