JP7398992B2 - 易開封性フィルム、共押出易開封性フィルム、および、その包装体 - Google Patents

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本発明は、シール機能を有する易開封性フィルム、共押出易開封性フィルム、および、これらのフィルムを用いた包装体に関する。
食品、飲料の包装容器として、容易に開封できる易開封性のプラスチック包装材が用いられている。易開封性の一般的な付与方法としては、蓋材や容器のシール層と、その隣接する樹脂層との層間強度調整によりシール強度を調整する層間剥離タイプ、シール層を構成する樹脂の組成を変えることで被着体との接着性、粘着性を制御し、シール層同士の界面を剥離して開封を行う界面剥離タイプ、および、シール層を非相溶のポリマーブレンドとすることにより、該シール層を凝集破壊させて開封する凝集破壊タイプが挙げられる。中でも、水分を含んだ内容物や、液体などを含んだ包装には、夾雑シール性を有する凝集破壊タイプの易開封性シーラントが用いられることが多い。
このような食品包装材の要求特性として、内容物の密封性(ヒートシール性)、容易に開封できる軽剥離(イージーピール)性、剥離面の膜引き、糸引きがない事、内容物が視認できる透明性など、その要求レベルは非常に高いものとなっている。特にポリプロピレン容器に対する凝集破壊タイプの蓋材として、これまでに様々な検討がなされている。
特許文献1には、低温シール性、耐熱性、易開封性を両立するため、ポリオレフィン系樹脂からなる支持層と、例えばメルトフローレート(MFR)1.0g/10分以上のポリプロピレン系樹脂30~90重量%と、例えばMFR0.5~2.0g/10分のポリエチレン樹脂10~70重量%との混合物からなるシート層とからなり、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン樹脂のMFRの比を特定した包装用複合多層シートが開示されている。
特許文献2には、密封性と易開封性のため、第1層がMFR1~7g/10分の高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂20~60重量部と、MFR1~15g/10分のポリプロピレン-エチレンのランダムコポリマー40~80重量部からなり、第2層がシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、第2層の面に基材フィルムを積層する蓋材が開示されている。
特許文献3には、ピロー包装袋用シーラントフィルムとして、3層構成であって、中間層が低密度ポリエチレン及びエチレン-α-オレフィン共重合体からなり、シール層がメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン-α-オレフィン共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる共押出多層フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献1のシール層の開示技術は、多種類のポリプロピレン系樹脂と多種類のポリエチレン樹脂を列挙した構成であり、両者の樹脂種類の組合せではその多くが透明性の悪いヘイジーとなるものであった。
また、特許文献2で開示されている高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂とポリプロピレン-エチレンランダムコポリマーとの組合せで構成される第1層(シール層)は、本願発明者が検討したところ、特許文献2の実施例3と同様な層組成では、シール層の凝集破壊が不十分で、開封した後の表面に顕著な糸引きが生じ、内容物への異物混入や衛生安全性の点で問題があることが判明した(本願比較例3参照)。またフィルムの糸引き等は、容器中の飲料物を口にする場合に、唇を切傷してしまう可能性もあり、大きな改善点と考えられている。
また、特許文献3は、その実施例1、2で、シール層にメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン-エチレン共重合体(密度0.900g/cm、融点125℃、MFR7g/10分)90質量部と、メタロセン触媒を用いて製造された直鎖状低密度ポリエチレン(融点68℃、密度0.880g/cm、MFR8.0g/10分)10質量部との混合物を用いて、シール層同士を密着させたピロー包装で易開封性を示しているが、同様な層構成について本願発明者が検討したところ、シール層の凝集破壊が不十分で、開封した後の表面に著しい樹脂の糸引きが生じるものであって、内容物への異物混入や衛生性の点で問題があることが判明した(本願比較例1参照)。
特開2000-272064号公報 特開2006-256637号公報 特開2007-136866号公報
プラスチック包装体の製造分野のポリプロピレン系樹脂からなる包装材料を用いた包装体においては、内容物を密封包装でき、かつ剥離時には凝集破壊タイプのイージーピールを起こすことができ、凝集破壊した面に顕著な糸引き等が生じず、内容物への異物混入や衛生性の点で問題がなく、さらには内容物を視認できる透明性の高いフィルムが求められている。
上記実状を鑑み、本発明の課題は、被着体のポリプロピレン系樹脂包材に対して良好な密着性、および、凝集破壊タイプのイージーピール性を有し、更に剥離開封した表面に顕著な糸引き等を生じず、透明性にも優れた易開封性フィルムを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つ特定のメルトフローレート(MFR)を有する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を含む樹脂組成物で構成されるシール層を有するフィルムによって、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性フィルムである。
第1の本発明において、前記樹脂組成物が、さらにMFR1.0g/10分以下の低密度ポリエチレン樹脂(c)を含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRが1.0g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましい。
第1の本発明において、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)が、シングルサイト触媒を用いたイオン重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテンのα-オレフィンを共重合したものであることが好ましい。
第1の本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂(a)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン(c)の総含有率を100質量%とした場合、前記ポリプロピレン系樹脂(a)が90~50質量%、前記低密度ポリエチレン樹脂(b)が10~50質量%であり、前記低密度ポリエチレン樹脂(c)が0~25質量%であることが好ましい。
第1の本発明において、前記シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有することが好ましい。
第1の本発明において、前記シール層の厚みが1~10μmであり、易開封性フィルムが共押出フィルムであることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明の易開封性フィルムを用いてなる包装体である。
第3の本発明は、第1の本発明の易開封性フィルムを用いてなる蓋材と、ポリプロピレン系樹脂からなる容器とをヒートシールしてなる包装体である。
本発明のフィルム(以下、本フィルムと称することがある)は、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体、例えば、カップ、トレー等の容器とヒートシールして包装体を作製した際に、内容物を密封包装でき、それを開封させる際に、本フィルムのシール層が凝集破壊して軽い力で容易に開封でき、その際に顕著な毛羽立ちや糸引きが発生し難く、食品衛生性および食の安全性に秀でる。従って、ポリプロピレン系樹脂容器用の易開封性フィルムとして有用である。
また、本フィルムは透明性を有するので、本フィルムを用いてなる包装体は内容物の視認性が良好となり、包装体の製造・輸送・保管・販売等の際に内容物状態の確認のし易さに優れる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のフィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本願において、イージーピール性は易開封性、易剥離性と同義である。また、シーラントフィルムは、ヒートシールフィルム、ヒートシール性フィルムと呼称する場合がある。剥離強度は、シール強度、開封強度と同義であり、易開封性、密封シール性(密着性)の尺度となる。
また、「ポリプロピレン系樹脂容器用」とは、ポリプロピレン系樹脂からなる、特に形状は限定されないが例えばカップ、トレー等の容器や、内容物側の内面がポリプロピレン系樹脂からなる容器に対し、その容器のフランジ部に、本発明のフィルムをヒートシールして蓋材として用い得ることを意味する。
数値範囲を「○○~△△」で示した場合は、「○○以上△△以下」を意味する。
<易開封性フィルム>
本フィルムはシール層を有するフィルムであり、シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を含む樹脂組成物で構成される。シール層を構成する樹脂組成物が、さらにMFR1.0g/10分以下の低密度ポリエチレン樹脂(c)を含有することが好ましく、この場合、凝集破壊性を向上させることができる。本フィルムの形態は、当該シール層を有すればよく、シール層のみからなる単層フィルムでも、他の層も設けた多層フィルムでもよい。
(ポリプロピレン系樹脂(a))
本フィルムのシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(a)は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂であれば特に制限なく、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等を用いることができる。柔軟性、透明性の観点からプロピレン-エチレンランダム共重合体であることが好ましい。シングルサイト触媒を用いて重合されるポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒を用いた場合よりも、分子量分布が狭く、組成分布が狭く、低規則性成分が少ない。そのため、製膜されたフィルムは、低温シール性に優れ、剛性が強く、引張強度、耐衝撃強度が高く、また空冷インフレーション製膜法においても高い透明性を現す特徴を有する。さらに耐ブロッキング性に優れる特徴も有する。
シングルサイト触媒の種類は特に限定されないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。メタロセン系ポリプロピレンの製造には一般的に、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒を用いる。この助触媒は必要により、有機アルミニウム化合物などで反応処理されていてもよい。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソタクチック規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物である。
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂(a)の製造方法は、特に制限はなく、公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等を用いることができる。また、多段重合法を利用して製造することも可能である。
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)は、1.0~20g/10分が好ましく、2.0~15g/10分がより好ましく、5.0~10g/10分が更に好ましい。MFRが1.0g/10分未満の場合は、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体とヒートシールした場合に密着が強大となり、易開封性が得難い。またフィルムの成形面においても流動性が乏しく、薄膜層の形成が難しい。
短時間のヒートシール工程で十分密着するシール性を得るためには、ポリプロピレン系樹脂(a)の融点は120~160℃が好ましく、上限は150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)の密度は、一般に880~920kg/mが好ましく、890~910kg/mがより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRは、JIS K7210-1:2014法に基づき、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
融点は、JIS K7121:2012法に基づき測定する。
密度は、JIS K7112:1999法に基づき測定する。
本フィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対し易開封性フィルムとして用いるため、本フィルムのシール層を構成する樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、ポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として配合される。ここでの「主成分」とは、下限が好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、上限が好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b))
本フィルムのシール層を構成する樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン(b)を含む。
直鎖状低密度ポリエチレン(b)の重合法や分岐構造は特に限定されず、チーグラー系触媒、メタロセン触媒を用いた低~中圧ラジカル重合法や、フィリップス型触媒を用いた中圧法及びその他の公知の方法で製造することが可能である。中でも、シングルサイト触媒を用いたイオン重合法による方法が好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレン(b)は、石油由来原料から製造されたものでも、植物由来原料から製造されたものでもよい。
直鎖状低密度ポリエチレン(b)は、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン等のα-オレフィンを共重合したものが好ましく、中でもエチレン・ヘキセン-1共重合体(C6直鎖状低密度ポリエチレン)が透明性と凝集破壊性のバランスの面で好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン(b)中のコモノマー含有率としては、0.5~20モル%の範囲であることが好ましく、1~18モル%の範囲であることがより好ましい。コモノマーの含有率が上記範囲であれば、シール層の主成分であるシングルサイト触媒を用いて製造されるプロピレン系樹脂(a)中に直鎖状低密度ポリエチレン(b)が適度に相容し、分散粒子径が比較的細かい、透明なシーラントフィルムを得ることができる。またシール層として用いた場合には、被着体との剥離時に良好なイージーピール性を示す。
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV、またはV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒を用いることができる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐衝撃性に優れた物性のフィルムが得られるので好ましい。
本フィルムのシール層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン(b)は、MFRが5.0g/10分以下であり、4.0g/10分以下が好ましく、3.0g/10分以下がより好ましい。MFRが5.0g/10分以下であれば、シール層の主成分であるシングル触媒により製造されるプロピレン系樹脂(a)中において、直鎖状低密度ポリエチレン(b)が適度な分散径を有し、透明性と凝集破壊性のバランスに優れるシール層となる。
直鎖状低密度ポリエチレン(b)のMFRの下限は、0.6g/10分以上が好ましく、0.8g/10分以上がより好ましい。これによりシール層の透明性とフィルム製膜安定性を確保できる。
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)の融点は、90~140℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。融点90℃以上であれば、耐熱性が得られやすく包装体用途として好ましい。また融点が140℃以下であれば、低温シール性を阻害しないため好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)のMFRは、JIS K7210-1:2014法に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
融点は、JIS K7121:2012法に基づき測定する。
密度は、JIS K7112:1999法に基づき測定する。
(低密度ポリエチレン樹脂(c))
本フィルムのシール層にはプロピレン系樹脂(a)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)の他に、さらに、非直鎖状の低密度ポリエチレン樹脂(c)を含んでもよい。低密度ポリエチレン樹脂(c)のMFRは1.0g/10分以下が好ましく、0.9g/10分以下がより好ましく、0.8g/10分以下がさら好ましい。MFRが1.0g/10分以下であれば、ポリプロピレン系樹脂(a)中に比較的粗大な分散粒子径を形成することができ、凝集破壊性に優れる。下限は特に制限はないが、0.1g/10分以上が好ましく、0.2g/10分以上がより好ましい。
低密度ポリエチレン樹脂(c)は、密度930kg/m未満のポリエチレン樹脂であればよく、密度910~925kg/mが好ましい。この範囲であればフィルムの製膜性が良好であり、結果として良好なイージーピール性が得られる。
低密度ポリエチレン樹脂(c)の融点は、90~140℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。融点を140℃以下とすることにより、良好なフィルム製膜性が得られ、また二次成形が可能となる。また、融点を90℃以上とすることにより、耐熱性が得られやすく、またヒートシールした後、剥離した際にも糸引きがなく剥離外観に優れる。
また、低密度ポリエチレン樹脂(c)は、石油由来原料から製造されたものでも、植物由来原料から製造されたものでもよい。また、重合法や分岐構造は特に限定されず、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型、または、メタロセン触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法で製造された低密度ポリエチレン樹脂を用いることができる。中でも、フィルム製膜時のフィッシュアイが少ない点で、高圧重合法により得られた低密度ポリエチレンが好ましい。高圧重合法による低密度ポリエチレンは、側鎖の分岐が長いことから、前記ポリプロピレン系樹脂(a)との非相溶性が強く、易破壊性に優れたドメインを形成することができる。
本フィルムの易開封性は、シール層のポリプロピレン系樹脂とポリエチレン樹脂の非相溶性に起因する海/島(マトリックス/ドメイン)分散構造の海相と島相の相界面解離がフィルム水平方向に伝播して凝集破壊することによって生じる。そのため、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン樹脂の分子構造による非相溶性や、それぞれの樹脂の溶融粘度により、ドメイン径(分散粒子径)を制御し、凝集破壊性を発現させることができる。本フィルムのシール層は、ポリプロピレン系樹脂(a)が主成分であるので、ポリプロピレン系樹脂(a)の海相に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)の島相がドメインとして分散する形態を有する。
本発明は、上記樹脂組成物の構造と凝集破壊機能の発現機構を検討する中で、ポリプロピレン系樹脂(a)、および、特定のメルトフローレート(MFR)の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を用いることにより、フィルムの透明性、ヒートシール性、および、凝集破壊性を兼ね備えるフィルムが得られることを見出したものである。具体的にはシングル触媒により製造されるポリプロピレン系樹脂(a)と、MFR5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)からなる樹脂組成物から構成されるシール層を有する易開封性フィルムに関する。
分散粒子は、粒子径の大きい方が凝集破壊は起きやすいが、非相溶性によるヘーズやシール層表面の凹凸粗大化によって不透明度が高まるという関係にあるため、大きい分散粒子だけが存在する形態に比べ、分散粒子径が大きい低密度ポリエチレン樹脂(c)の島の間に分散粒子が小さい直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)の島が多数存在する形態を作り出すことにより、透明性を維持しつつ凝集破壊の伝播を効率的に行うことが可能となる。更に、分散粒子が大きい低密度ポリエチレン樹脂(c)の島が存在することにより、剥離方向に依らず凝集破壊が起きやすくなり、易開封性の等方性向上に寄与する効果が期待できる。また、ポリプロピレン系樹脂(a)の海相に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン樹脂(c)の島相が分散することから、両者の分散性の違いが凝集破壊性、すなわちイージーピール性に寄与する。
(組成比)
本フィルムのシール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、メルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を含む樹脂組成物で構成され、該樹脂組成物は、さらにMFR0.1g/10分以下の低密度ポリエチレン樹脂(c)を含んでもよい。
シール層を構成する樹脂組成物の総含有率を100質量%とした場合、ポリプロピレン系樹脂(a)と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)と低密度ポリエチレン樹脂(c)の合計量の質量比は、(a):(b+c)=(90~50):(10~50)が好ましく、(90~60):(10~40)がより好ましい。また、(a):(b):(c)では、(90~50):(10~50):(0~25)が好ましく、(85~60):(10~40):(5~20)がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)を50質量%以上とすることにより、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対し十分な密着性が得られ、耐熱性も付与できる。また、ポリプロピレン系樹脂(a)を90質量%以下とすることにより、良好なイージーピール性を得やすい。
各樹脂の組成比は、1H-NMR法、FT-IR法、DSC法、高温GPC法、昇温溶出分別法(TREF)、結晶化溶出分別法(CEF)などを組み合わせることで分析される。中でもポリオレフィン系樹脂を分析する手法としてはTREFが好適に用いられる。溶媒に溶解させた樹脂を所定の温度に温められたTREFカラムへ注入した後、一定の速度で降温してカラム担体に結晶化させる。この時、結晶性の高い分岐の少ない成分が最初に結晶化され、温度の低下に伴って結晶性の低い分岐の多い成分が結晶化される。その後、昇温させることで結晶性の低い成分から高い成分へ順に溶出し、短鎖分岐度による分別が行われる。更にサイズ排除クロマトグラフ(GPC)の特徴を持ち合わせたCFCにTREFカラムを用いることで、ポリオレフィン系樹脂の結晶性と分子量の二次元の分布を決定することができ、結晶性や溶融粘度の異なるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂の分離が可能となる。また、測定温度領域を-20℃まで拡張することで、結晶性の低い熱可塑性エラストマーも分離することができる。
(その他の樹脂)
(高密度ポリエチレン樹脂)
本フィルムのシール層を構成する樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに高密度ポリエチレン樹脂を含んでもよい。高密度ポリエチレン樹脂の密度は、930~970kg/m以上であり、下限は935kg/m以上が好ましく、上限は960kg/m以下がより好ましい。
高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は4.0g/10分以上が好ましい。一般に、ポリエチレン樹脂は、密度と融点に相関関係があるので、高密度ポリエチレン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン樹脂(c)に比べて、融点や融解熱量が高いが、高密度ポリエチレン系樹脂のMFRと密度の値がこの範囲であれば、140℃の低温ヒートシールにおいても、被着体であるポリプロピレン樹脂との密着性が阻害されずに良好な密着性が得られる。また、高密度ポリエチレン樹脂は比較的高融点であるため、シール層中にその分散粒子(ドメイン)が存在することにより、例えば200℃の高温シール温度条件においても、シール層と被着体のポリプロピレン樹脂との密着性が強くなり過ぎず、良好なイージーピール性を得やすくできる。
高密度ポリエチレン樹脂は、石油由来原料から製造されたものでも、植物由来原料から製造されたものでもよい。重合法や分岐構造は特に限定されず、チーグラー系触媒、メタロセン触媒を用いた低~中圧ラジカル重合法や、フィリップス型触媒を用いた中圧法及びその他の公知の方法で製造された樹脂を用いることができる。
(水素化石油樹脂)
本フィルムのシール層を構成する樹脂組成物には、易破壊性を向上する目的で、その他の樹脂を含有することができ、中でも透明性を阻害せずにシール層の凝集破壊性を向上させことができる水素化石油樹脂を含んでいてもよい。石油樹脂の例としては、ナフサの熱分解などによる副生物から得られるC4~C10の脂肪族オレフィン類やジオレフィン類、オレフィン性不飽和結合を有するC8以上の芳香族化合物で、それらの中に含まれる化合物の一種又は二種以上を単独若しくは共重合することにより得られる脂肪族系、芳香族系及び共重合系石油樹脂が挙げられ、中でも、C5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、それらの共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂を好ましく挙げることができる。水素化石油樹脂は、これら石油樹脂を慣用の方法によって水素化することにより得られ、例えば、水素化脂肪族系石油樹脂、水素化芳香族系石油樹脂、水素化共重合系石油樹脂及び水素化脂環族系石油樹脂、並びに水素化テルペン系樹脂が挙げられる。中でも、水素化脂環族系石油樹脂として、シクロペンタジエン系化合物、芳香族ビニル系化合物、インデン系化合物とを共重合して水素添加したものが特に好ましい。
水素化石油樹脂の水素化率は、シール層を構成するポリプロピレン系樹脂(a)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)等との相溶性、特にポリプロピレン系樹脂(a)との相溶性、形成されたフィルムの色調、熱安定性、耐透湿性などの観点から、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。また、水素化石油樹脂は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲンなどの極性基、あるいは二重結合などの不飽和結合を実質上含有しないものが好ましい。
水素化石油樹脂は、軟化点が80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下がより好ましい。軟化点が80℃以上であれば、樹脂ペレットの固着や、本フィルム製膜時、本フィルムの二次加工時、輸送・保管時等におけるフィルムのブロッキングや表面のベタつきが生じることがない。また、軟化点が150℃以下であれば、シール層を構成する樹脂との相溶性が良好となり、フィルムからブリードアウトし粉吹きなどの発生が低減される。
水素化石油樹脂の軟化点は、JIS K6863:1994法によって測定される。
水素化石油樹脂は、フィルム製膜でポリプロピレン系樹脂(a)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)等の結晶化過程において樹脂の結晶部から排出され、主にポリプロピレン系樹脂(a)の非晶部に存在するようになり、水素化石油樹脂がポリプロピレン系樹脂(a)の非晶部の分子鎖の運動を抑制して樹脂の柔軟性を低下させ、凝集破壊を促進する作用に働く。その結果、凝集破壊における糸引き・膜引き現象の発生を低減することができる。
また、水素化石油樹脂はポリプロピレン系樹脂(a)と相溶性がよいことから、本フィルムやシール層の透明性を低下させることなく凝集破壊性を向上させることができる
(隣接層)
本フィルムは、シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有することで、シール層の強度を保持したり、凝集破壊を効果的に発現させたりすることができる。
隣接層に用いるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、上述のシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(a)または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン樹脂(c)を用いると、シール層と隣接層との層間密着力が高まり好ましい。中でも、低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンが共押出フィルム製膜性の観点から好ましい。例えば、インフレーション法により共押出フィルムを成形する場合に、バブルが安定し、任意のブローアップを行いやすい。
また、隣接層のポリオレフィン系樹脂には、変性された接着性樹脂を用いることができる。例えば不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等を用いることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記の不飽和カルボン酸のエステルや無水物等を用いることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。その他、酢酸ビニル等も用いることができる。隣接層を接着性樹脂で構成すると、隣接層のシール層側と逆側に他の層を有する場合に、フィルム各層間の密着性を向上させることができる。
(その他の層)
本発明のフィルムは、少なくともシール層と、該シール層に隣接して上述の隣接層を有すればよいが、該隣接層のシール層側とは反対側に、さらに他の層を有していてもよい。
他の層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物や芳香族ポリアミドに代表されるガスバリア性樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66、ポリアミド6,10共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、粘着性樹脂等をフィルム要求機能に応じて用いることができる。またその他の層は複数設けてもよい。
(その他の成分)
本発明のフィルムの各層は、その特性を阻害しない範囲であれば、適宜、添加剤を含有することができる。例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
<易開封性フィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、特に限定されず、公知のTダイ法やインフレーション法などにより製造することができる。
シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層(隣接層)を設けてフィルムを製造する方法は、特に限定されないが、公知のフィードブロック方式、マルチマニホールド方式、または、これらの組み合わせを用いた共押出法を好適に用いることができる。
該隣接層のシール層側とは反対側に他の層を設けてフィルムを製造する方法は、同様に共押出法を用いたり、熱ラミネート法、押出ラミネート法、ドライラミネート法で形成したりすることもできる。
本発明のフィルムは、無延伸でもよく、一軸延伸、同時二軸延伸、または、逐次二軸延伸されていてもよい。
また、本発明のフィルムまたは共押出フィルムは必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理や表面加工を行うこともできる。また、隣接層にその他の層を設ける際に、隣接層に対してコロナ処理などの表面処理を行ってからその他の層をラミネートすることができる。
本フィルムがシール層のみの単層フィルムの場合、その厚みは1~30μmが好ましい。
本フィルムが共押出フィルムの場合は、ヒートシール性と、糸引き、膜引きのない良好な凝集剥離性との両立、透明性の点から、シール層の厚みは1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、凝集破壊がフィルム水平方向に伝播しやすく易開封性がより良好となる点から、2~5μmが更に好ましい。隣接層、その他の層を含めた共押出フィルムの総厚は、フィルム強度、ハンドリング性、二次加工性の点から、下限は10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。上限は200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。
フィルムの厚み、および、共押出しフィルムの総厚や各層厚は、触針式厚み計、フィルム断面観察から計測することができる。
<易開封性フィルム特性>
本発明のフィルムは、以下の特性を有することが好ましい。
(ヒートシール性、易開封性)
本フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、中でもポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対して、140℃、160℃前後のヒートシール温度条件で十分な密着性と、また、開封剥離時に優れた凝集破壊タイプの易開封性とを兼備することが好ましい。特に、ポリプロピレン製被着体に対し、低温領域、例えば140℃のヒートシール温度条件で、十分な密着性を有することは、包装体製造の生産安定性の点で有益である。また、開封剥離後の剥離面に顕著な糸引き等がなく、美麗な剥離面であることが、異物混入を防ぎ、消費者の安全性及び衛生性を守る点で好ましい。
被着体のポリプロピレン系樹脂には、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンが挙げられる。本フィルムは、被着体が高融点であるホモポリプロピレンであっても、良好なヒートシール性と易開封性を発現することができる。
ヒートシール性、易開封性の評価方法は、例えば、以下の通りである。被着体として300μm厚のホモポリプロピレンシートを用いて、これに本フィルムを重ね合わせ(共押出フィルムについては、シール層側を重ね合わせる)、シール温度140~160℃、シール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール1秒間の条件で、ヒートシールし評価用サンプルを作製する。ヒートシール密着性と易開封性の測定は、ヒートシールしたサンプルを15mm幅の短冊状にカットして試験片を作製し、JIS Z0238:1998に基づき、ヒートシール部を中央にし、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、剥離強度(単位:N/15mm幅)を測定する。
剥離強度の下限は、5N/15mm幅以上が好ましく、8N/15mm幅以上がより好ましい。上限は20N/15mm幅以下が好ましく、18N/15mm幅以下がより好ましく、16N/15mm幅以下が更に好ましい。係る範囲の剥離強度を有していれば、被着体に対して十分な強度で密着しており水や汁物などの液体の内容物を包装した場合の夾雑物シール性に優れ、また使用時には手で容易に剥離開封できる。本フィルムは、シール層内部が凝集破壊して剥離開封でき、糸引きや膜引きが起きずに易剥離すること、剥離後の両剥離面に樹脂が不定形に残る顕著な毛羽立ちや樹脂千切れが生じずに美麗な剥離外観になることが好ましく、毛羽立ちや樹脂千切れが生じずに美麗な剥離外観になることがより好ましい。
(透明性)
本フィルムの透明性は、内容物の視認性、美観性、意匠性等の観点から、全ヘーズ20%以下が好ましく、15%以下がさらに好ましく、下限は特に限定されず、値がより小さい方が透明性が良好であり好ましい。全ヘーズの測定は、JIS K7136:2000に準拠して行う。
<包装体>
本フィルムは、良好なヒートシール性、易剥離性を有するので、収容物に応じた形状で被着体とヒートシールし包装体を為すことができる。特に、本フィルムから構成される蓋材と、ポリプロピレン系樹脂から構成される容器とをヒートシールした包装体が有用である。
なお、共押出フィルムを用いる場合は、シール層側を、被着体(例えば、容器)側にして、容器とヒートシールして、包装体が作製される。容器を構成するポリプロピレン系樹脂には、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンが挙げられる。本フィルムでは、被着体が高融点であるホモポリプロピレンであっても、良好なヒートシール性と易開封性を発現することができる。また、本フィルムは、他のプラスチックフィルム及びシート、金属箔、紙などと、例えばドライラミネート等の公知の方法で積層し、包装材料とすることもでき、それらを用いて包装体を作製できる。
以下の実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等によって制限を受けるものではない。
下記の原材料を用い、下記の方法によりフィルムを作製し、試験、評価を行った。シール層の樹脂組成および評価結果を、結果を表1にまとめた。
<原材料(シール層)>
(ポリプロピレン系樹脂)
PP1:メタロセン触媒で重合したプロピレン-エチレン共重合体
(MFR:7.0g/10分、融点:124℃、密度900kg/m
(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)
LLD1:C6直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:0.8g/10分、融点:124℃、密度926kg/m
LLD2:C6直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:1.5g/10分、融点:121℃、密度923kg/m
LLD3:C6直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:4.0g/10分、融点:122℃、密度923kg/m
LLD4:C6直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:6.0g/10分、融点:116℃、密度919kg/m
LLD5:C8直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:2.1g/10分、融点:119℃、密度919kg/m
(高圧重合法低密度ポリエチレン)
LD1: 高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:0.7g/10分、融点:112℃、密度924kg/m
LD2: 高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:4.0g/10分、融点:111℃、密度923kg/m
LD3: 高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂
(MFR:8.4g/10分、融点:107℃、密度923kg/m
<原材料(隣接層)>
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(MFR:1.5g/10分、融点:121℃、密度923kg/m
<実施例1~6、比較例1~4>
上記原材料を用い、シール層は表1に示した配合で、各層用の各押出機に原材料を供給し、Tダイ共押出法により押出温度200℃の条件で、シール層、隣接層を共押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、シール層5μm厚/隣接層25μm厚の共押出フィルムを得た。
次いで、共押出フィルムの隣接層表面をコロナ放電処理し、エーテル系ポリウレタン接着剤を用いて、12μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとドライラミネートして積層フィルムを得た。
<評価方法>
(1)ヒートシール試験、剥離試験
被着体として300μm厚のホモポリプロピレンシートと、実施例および比較例で得られた積層フィルムのシール層面を対向させて重ね、その一端を、ヒートシール機を用いてシール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールした。設定シール温度は140℃、160℃の2通りで試験した。
その後、長さ50mm、幅15mmの短冊片に切り出し、JIS Z0238:1998に準拠して、ヒートシール部を中央にして2枚のフィルムの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で、短冊片の長さ方向に剥離又は破断するまで引張り、測定された最大応力をヒートシール強度(単位:N/15mm幅)として測定し、ヒートシール強度が5N/15mm幅以上、20N/15mm幅以下の場合を密着性と易剥離性が良好と評価した。
次いで、剥離試験後の剥離面の形態を観察して次の基準で判断し、シール層が凝集破壊した場合(◎と〇)を凝集破壊性良好と評価した。
◎:凝集破壊し、糸引き等がない
〇:凝集破壊し、僅かに糸引き等がある
▲:凝集破壊不十分で、顕著な糸引き、膜引き、毛羽立ち、等がある
■:剥離せず、フィルムが破れる
×:フィルムと被着体が密着していない
(2)透明性
実施例および比較例で得られた共押出フィルムについて、JIS K7136:2000に準拠して、日本電飾工業社製ヘーズメーターNDH5000を使用し、全ヘーズを測定した。
全ヘーズが20%以下であるものを良好と判断とした。
実施例1~4のシール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)を含む樹脂組成物で構成され、そのフィルムは、いずれも全ヘーズ10.0%以下であり、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体用の易開封性シーラントフィルムとして、大変優れた透明性を有した。また、ヒートシール温度140℃、160℃において、十分な密着性と易開封性の兼ね備え、更に凝集破壊した面に顕著な糸引き等がなく美麗な剥離面を得られた。
実施例5、6のシール層は、実施例2、3のシール層組成に、それぞれMFR0.7g/10分の高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂(c)を加えた樹脂組成物で構成され、そのフィルムは全ヘーズ20.0%以下の透明性と、全く糸引きのない大変優れたイージーピール性を発現した。これは、実施例1~4の様な、ポリプロピレン系樹脂(a)中に直鎖状低密度ポリエチレン(b)からなる微小な分散粒子だけが存在する形態に比べ、実施例5、6の様な、低密度ポリエチレン樹脂(c)由来の大きい分散粒子も共に存在する形態によって、凝集破壊の伝播が効率的に行われ、糸引き等のない、特に優れた剥離外観を得ることができたものと考えられる。
比較例1のシール層は、シングル触媒によるポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つMFR5.0g/10分超の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物で構成され、そのフィルムは、低粘度の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、微細な分散粒子として存在することにより、透明性は良好であった。他方、剥離試験では、マトリックスのポリプロピレン系樹脂(a)相とドメインの樹脂の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂相との界面で凝集破壊せず、顕著な糸引きが発生してしまい、イージーピール性が不十分であった。
比較例2のシール層は、シングル触媒によるポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つMFR0.7g/10分の低密度ポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物で構成され、高粘度の低密度ポリエチレンが大きなドメイン粒子として存在することにより、優れたイージーピール性を示したが、全ヘーズが非常に高く透明性の悪いフィルムであった。
比較例3、4のシール層は、シングル触媒によるポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つMFR4.0g/10分、8.4g/10分の低密度ポリエチレン樹脂をそれぞれ含む樹脂組成物で構成され、そのフィルムは、全ヘーズ20.0%以下であったが、140℃、160℃のヒートシール条件では顕著な糸引き、膜引き、毛羽立ちが発生してしまった。
本発明のフィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体とヒートシールした場合に、十分な密着強度を発揮し、夾雑物シール性を有する。また、包装体を作製し開封する際に、シール層が凝集破壊し軽い力で剥離開封することができると共に、糸引きや毛羽立ち、樹脂千切れが発生し難いので、食の安全性や衛生性に秀でる。更に、透明性を有するので、包装体の内容物視認性が良好である。

Claims (8)

  1. 少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)5.0g/10分以下、密度が919kg/m 以上の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、MFR1.0g/10分以下の低密度ポリエチレン樹脂(c)を含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性フィルム。
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRが1.0g/10分以上、20g/10分以下である請求項に記載の易開封性フィルム。
  3. 前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)が、シングルサイト触媒を用いたイオン重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテンのα-オレフィンを共重合したものである請求項1又は2に記載の易開封性フィルム。
  4. 前記ポリプロピレン系樹脂(a)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン(c)の総含有率を100質量%とした場合、前記ポリプロピレン系樹脂(a)が90~50質量%、前記低密度ポリエチレン樹脂(b)が10~50質量%であり、前記低密度ポリエチレン樹脂(c)が0~25質量%である請求項1~のいずれかに記載の易開封性フィルム。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の易開封性フィルムのシール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有する易開封性フィルム。
  6. 前記シール層の厚みが1~10μmであり、共押出フィルムである、請求項に記載の易開封性フィルム。
  7. 請求項1~のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いてなる包装体。
  8. 請求項1~のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いてなる蓋材と、ポリプロピレン系樹脂からなる容器とをヒートシールしてなる包装体。
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