JP7398095B2 - ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体 Download PDF

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Description

本発明は機械的特性、長期耐熱エージング性のみならず、熱エージング処理後の表面光沢性にも優れたポリアミド樹脂組成物およびそれらからなる成形体に関するものである。
ポリアミド樹脂は、機械的強度、剛性、靭性、耐衝撃性等の機械的特性、耐熱性、耐薬品性に優れていることから、衣料、産業資材、自動車、電気・電子といった様々な産業分野で利用されている。また、ポリアミド樹脂は、他の樹脂に比較して、耐熱エージング性にも優れているため、自動車エンジンルーム内等の非常に大きな熱を帯びる箇所の部品用素材として用いられている。より高い機械特性が求められる用途では、ガラス繊維、炭素繊維、タルク等の強化材が併用される場合がある。しかしながら、その場合、熱エージング処理後に強化材が樹脂表面に浮き出てしまい、表面光沢性が悪化するという問題があった。
ポリアミド樹脂の長期耐熱エージング性を向上させる技術としては、例えば、ポリアミド樹脂に銅のハロゲン化物とカリウムのハロゲン化物を配合する技術(特許文献1)、融点の異なる2種類のポリアミド樹脂に銅のハロゲン化物とカリウムのハロゲン化物と酸化鉄を配合する技術(特許文献2)、ポリアミド樹脂に微粒元素鉄を配合する技術(特許文献3)、ポリアミド樹脂に微細分散化金属粉末を配合する技術(特許文献4)、ポリアミド樹脂に銅のハロゲン化物とアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物と酸化鉄(II)を配合する技術(特許文献5)、ポリアミド樹脂にシュウ酸鉄を配合する技術(特許文献6)、ポリアミド樹脂にポリエチレンイミン樹脂を配合する技術(特許文献7)が開示されている。
特開平8-325382号公報 特表2008-527129号公報 特表2006-528260号公報 特表2008-527127号公報 特開2010-270318号公報 特表2015-516477号公報 特表2012-508314号公報
しかしながら、特許文献1~7に記載された処方では、長期耐熱エージング性は向上するものの、強化材と併用した場合では熱エージング処理後の表面光沢性を保持させることができなかった。
本発明は、かかる従来技術に鑑み、機械的特性および長期耐熱エージング性のみならず、熱エージング処理後の表面光沢性にも優れたポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本明細書中、長期耐熱エージング性とは、長期の熱エージング処理後においても、優れた機械的特性を維持し得る特性を意味する。なお、熱エージング処理とは、比較的高温環境下で保持することである。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂に、セルロース繊維、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物および多価アルコールを特定量配合することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1) ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、
平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維(B)0.1~50質量部、
銅化合物(C)0.005~5質量部、
ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)0.01~20質量部、および
多価アルコール(E)0.05~20質量部
を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2) 前記セルロース繊維(B)が、未変性のセルロース繊維であるか、またはセルロース由来の水酸基が親水性もしくは疎水性の置換基で変性された変性セルロース繊維である、(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3) 銅化合物(C)がハロゲン化銅である、(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4) ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)が、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、および塩化ナトリウムからなる群から選択される1種以上の化合物である、(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5) 多価アルコール(E)が飽和脂肪族多価アルコール化合物、不飽和脂肪族多価アルコール化合物、脂環式多価アルコール化合物、芳香族多価アルコール化合物、および糖類からなる群から選択される1種以上の化合物である、(1)~(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(6) 前記セルロース繊維(B)の平均繊維径が500nm以下であり、
前記セルロース繊維(B)の含有量が1~40質量部であり、
前記銅化合物(C)の含有量が0.02~5質量部であり、
前記ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量が0.01~8質量部であり、
前記多価アルコール(E)の含有量が0.5~8質量部であり、
セルロース繊維以外の強化材(F)を5質量部以下で含む、(1)~(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(7) 前記ポリアミド樹脂(A)がポリアミド6であり、
前記セルロース繊維(B)が未変性のセルロース繊維であり、
前記セルロース繊維(B)の平均繊維径が100nm以下であり、
前記セルロース繊維(B)の含有量が4~30質量部であり、
前記銅化合物(C)がヨウ化銅であり、
前記銅化合物(C)の含有量が0.02~0.2質量部であり、
前記ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)がヨウ化カリウムであり、
前記ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量が0.01~3質量部であり、
前記多価アルコール(E)の含有量が0.5~3質量部であり、
セルロース繊維以外の強化材(F)を5質量部以下で含む、(1)~(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(8) ポリアミド樹脂(A)単独と対比した引張強度比が110%以上であり、
大気雰囲気下、150℃で1000時間の熱エージング処理後の引張強度保持率および成形体表面の60°入射角におけるグロス保持率がそれぞれ80%以上であること特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(9) (1)~(8)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形体。
本発明によれば、機械的特性および長期耐熱エージング性のみならず、熱エージング処理後の表面光沢性にも優れたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、平均繊維径が10μm以下であるセルロース繊維(B)、銅化合物(C)、ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)、および多価アルコール(E)から構成される。ポリアミド樹脂組成物は通常、ペレットの形態を有する。
本発明に用いるポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する重合体のことである。
アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸が挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸が挙げられる。
本発明で用いるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))が挙げられ、これらの共重合体や混合物であってもよい。中でも、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、およびこれらの共重合体や混合物が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66またはこれらの混合物がより好ましく、ポリアミド6がさらに好ましい。
ポリアミド樹脂の分子量は特に限定されず、例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物の相対粘度が後述の範囲内になるような分子量であってもよい。
上記ポリアミド樹脂は、後述する重合法で、または、さらに固相重合法を併用して製造される。
本発明に用いるセルロース繊維としては、例えば、木材、稲、綿、麻、ケナフ等に由来するものの他にバクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース等の生物由来のものも含まれる。また、再生セルロース、セルロース誘導体も含まれる。
本発明において、セルロース繊維の平均繊維径はできる限り小さい方が望ましい。セルロース繊維の平均繊維径が小さいほど、マトリクス樹脂中にセルロース繊維が強固にネットワーク構造を形成し、機械特性が向上する。また、セルロース繊維の平均繊維径が小さいほど、熱エージング処理後の樹脂組成物表面のセルロース繊維の露出をより低減させることができるため、熱エージング処理後の表面光沢性もさらに向上する。
樹脂組成物中に含有されるセルロース繊維は、平均繊維径が10μm以下であることが必要であり、中でも平均繊維径は、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。平均繊維径が10μmを超えるセルロース繊維では、上述した理由により、樹脂組成物の機械的特性や表面光沢性が大きく損なわれてしまう。平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、セルロース繊維の生産性を考慮すると3nm以上、特に10nm以上とすることが好ましい。
樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径を10μm以下とするためには、ポリアミド樹脂に配合するセルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが好ましい。このような平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維としては、セルロース繊維を引き裂くことによってミクロフィブリル化したものが好ましい。ミクロフィブリル化する手段としては、ボールミル、石臼粉砕機、高圧ホモジナイザー、高圧粉砕装置、ミキサー等の各種粉砕装置を用いることができる。セルロース繊維としては、市販されているものとして、例えば、ダイセルファインケム社製の「セリッシュ」を用いることができる。
平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、セルロース繊維を用いた繊維製品の製造工程において、屑糸として出されたセルロース繊維の集合体を用いることもできる。繊維製品の製造工程とは紡績時、織布時、不織布製造時、その他、繊維製品の加工時等が挙げられる。これらのセルロース繊維の集合体は、セルロース繊維がこれらの工程を経た後に屑糸となったものであるため、セルロース繊維が微細化したものとなっている。
また、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、バクテリアが産出するバクテリアセルロース繊維を用いることもでき、例えば、アセトバクター族の酢酸菌を生産菌として産出されたものを用いることができる。植物のセルロース繊維は、セルロースの分子鎖が収束したもので、非常に細いミクロフィブリルが束になって形成されているものであるのに対し、酢酸菌より産出されたセルロース繊維はもともと幅20~50nmのリボン状であり、植物のセルロース繊維と比較すると極めて細い網目状を形成している。
セルロース繊維は、セルロース由来の水酸基がいかなる置換基によっても変性されていない未変性のセルロース繊維であってもよいし、またはセルロース由来の水酸基(特にその一部)が変性(または置換)された変性セルロース繊維であってもよい。セルロース由来の水酸基に導入される置換基としては特に限定されず、例えば、親水性の置換基、疎水性の置換基が挙げられる。変性セルロース繊維において、置換基により変性(または置換)される水酸基は、セルロース由来の水酸基のうちの一部であり、その置換度としては、例えば、0.05~2.0が好ましく、0.1~1.0がより好ましく、0.1~0.8がさらに好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を表す。すなわち、「導入された置換基のモル数を、グルコピラノース環の総モル数で割った値」として定義される。純粋なセルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、本発明のセルロース繊維の置換度の理論最大値は3、理論最小値は0である。親水性の置換基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシメチル基、リン酸エステル基等が挙げられる。疎水性の置換基としては、例えば、シリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基等が挙げられる。
セルロース繊維(B)は、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、未変性のセルロース繊維であるか、または、セルロース由来の水酸基(特にその一部)が親水性または疎水性の置換基で変性された変性セルロース繊維であることが好ましく、より好ましくは当該未変性のセルロース繊維である。
セルロース由来の水酸基が親水性の置換基で変性された、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、例えば、N-オキシル化合物の存在下にセルロース繊維を酸化させた後に、水洗、物理的解繊工程を経ることにより得られる、微細化されたセルロース繊維を用いてもよい。N-オキシル化合物としては各種あるが、例えば、Cellulose(1998)5,153-164に記載されているような2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(2,2,6,6-Tetramethylpiperidine-1-oxyl radical)(以下、「TEMPO」と略称する。)等が好ましい。TEMPOにより、水酸基がカルボキシル基に置換される。
セルロース由来の水酸基が疎水性の置換基で変性されたセルロース繊維として、例えば、溶媒中、セルロース繊維にシリルエーテル化剤を35~50℃で反応させることにより得られる、セルロース繊維を用いてもよい。シリルエーテル化剤としては各種あるが、例えば、ヘキサメチルジシラザン等が好ましい。ヘキサメチルジシラザンにより、水酸基がシリルエーテル基に置換される。
本発明に用いる樹脂組成物中のセルロース繊維は、平均繊維径と平均繊維長との比であるアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が10以上であることにより、得られる樹脂組成物の機械特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性が向上しやすくなる。
本発明に用いる樹脂組成物を構成するセルロース繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.1~50質量部であることが必要であり、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、1~40)質量部であることが好ましく、4~30質量部であることがより好ましく、8~25であることがさらに好ましく、10~20質量部であることが最も好ましい。セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して0.1質量部未満である場合は、十分な機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性を得ることができない。一方、セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、セルロース繊維を樹脂組成物中に含有させることが困難となり、また溶融樹脂の流動性が悪化するため樹脂組成物の成形性が低下したり、樹脂表面にセルロース繊維が浮き出てしまい表面外観が悪化したりする場合がある。この場合、熱エージング処理後の表面光沢性が低下する。
セルロース繊維は水との親和性が非常に高く、平均繊維径が小さいほど水に対して良好な分散状態を保つことができる。また、水を失うと水素結合により強固にセルロース繊維同士が凝集し、一旦凝集すると凝集前と同様の分散状態をとることが困難となる。特にセルロース繊維の平均繊維径が小さくなるほどこの傾向は顕著となる。したがって、セルロース繊維は水を含んだ状態でポリアミド樹脂に配合することが好ましい。そこで、本発明においては、水を含んだ状態のセルロース繊維の存在下に、ポリアミド樹脂を構成するモノマーの重合反応をおこなうことにより、セルロース繊維を含有するポリアミド樹脂を得る方法を採ることが好ましい。このような製造法により、ポリアミド樹脂中にセルロース繊維を凝集させずに均一に分散させることが可能となる。すなわち、重合時にセルロース繊維を添加して得られたポリアミド樹脂を用いることにより、セルロース繊維をより小さな平均繊維径で含有する本発明の樹脂組成物を得ることができる。セルロース繊維を、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂およびその他の成分とともに、溶融および混練しても、セルロース繊維の平均繊維径はより大きくなるため、本発明の樹脂組成物は得られない。セルロース繊維の存在下に重合させるモノマーは、プレポリマーであってもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーがポリマー化する途中の中間生成物のことである。
本発明の樹脂組成物において、ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し重合反応をおこなうことにより、セルロース繊維を含有するポリアミド樹脂として製造することができる。なお、重合反応時に、後述する樹脂組成物中に添加することができる添加剤を加えてもよい。
セルロース繊維の水分散液は、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を水に分散させたものであり、水分散液中におけるセルロース繊維の含有量は水100質量部に対して0.01~100質量部とすることが好ましい。セルロース繊維の水分散液は、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で撹拌することにより得ることができる。そして、セルロース繊維の水分散液とポリアミド樹脂を構成するモノマーとを混合しミキサー等で撹拌することにより、均一な分散液とする。その後、分散液を加熱し、150~270℃まで昇温させて撹拌することにより重合反応させる。このとき、分散液を加熱する際に徐々に水蒸気を排出することにより、セルロース繊維の水分散液中の水分を排出することができる。なお、上記ポリアミド樹脂の重合時においては、必要に応じてリン酸や亜リン酸等の触媒を添加してもよい。そして、重合反応終了後は、得られたポリアミド樹脂を払い出した後、切断してペレットとすることが好ましい。
セルロース繊維としてバクテリアセルロースを用いる場合においては、セルロース繊維の水分散液として、バクテリアセルロースを精製水に浸して溶媒置換したものを用いてもよい。バクテリアセルロースの溶媒置換したものを用いる際には、溶媒置換後、所定の濃度に調整したものを、ポリアミド樹脂を構成するモノマーに混合し、上記と同様に重合反応を進行させることが好ましい。
上記方法においては、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を水分散液のまま重合反応に供することになるため、セルロース繊維を分散性が良好な状態で重合反応に供することができる。さらに、重合反応に供されたセルロース繊維は、重合反応中のモノマーや水との相互作用により、また上記のような温度条件で撹拌することにより、分散性が向上し、繊維同士が凝集することがなく、平均繊維径が小さいセルロース繊維が良好に分散したポリアミド樹脂を得ることが可能となる。なお、上記方法によれば、重合反応前に添加したセルロース繊維よりも、重合反応終了後にポリアミド樹脂中に含有されているセルロース繊維の方が、平均繊維径が小さくなることがある。
さらに上記方法においては、セルロース繊維を乾燥させる工程が不要となり、微細なセルロース繊維の飛散が生じる工程を経ずに製造が可能であるため、操業性よくポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。またモノマーとセルロース繊維を均一に分散させる目的として水を有機溶媒に置換する必要がないため、ハンドリングに優れるとともに製造工程中において化学物質の排出を抑制することが可能となる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、銅化合物(C)を含有する。
本発明に用いる銅化合物(C)としては、例えば、塩化銅(例えば、塩化第一銅、塩化第二銅)、臭化銅(例えば、臭化第一銅、臭化第二銅)、ヨウ化銅(例えば、ヨウ化第一銅)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、硫酸銅、リン酸銅、ホウ酸銅、硝酸銅、ステアリン酸銅、キレート剤に配位した銅錯塩が挙げられる。中でも、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、塩化銅(例えば、塩化第一銅、塩化第二銅)、臭化銅(例えば、臭化第一銅、臭化第二銅)、ヨウ化銅(例えば、ヨウ化第一銅)等のハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化銅(特にヨウ化第一銅)、臭化銅(特に臭化第一銅)がより好ましく、ヨウ化銅(特にヨウ化第一銅)がさらに好ましい。銅化合物(C)は、単独で用いてもよいし、複数種併用してもよい。
銅化合物(C)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.005~5質量部であることが必要であり、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、0.02~5質量部であることが好ましく、0.02~0.2質量部であることがより好ましく、0.05~0.2質量部であることがさらに好ましい。銅化合物(B)の含有量が0.005質量部未満の場合、樹脂組成物は、長期耐熱エージング性の向上効果が見られない。一方、銅化合物(C)の含有量が5質量部を超える場合、効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、得られる成形体は、着色して外観を損なうことがある。この場合、機械的特性(例えば熱エージング処理前の引張強度)が低下したり、かつ/または熱エージング処理後の表面光沢性が低下したりする。銅化合物(C)を複数種併用する場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ハロゲン化アルカリ金属塩(D)を含有する。
本発明に用いるハロゲン化アルカリ金属化合物(D)としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウムが挙げられる。中でも、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、ヨウ化カリウム、臭化カリウムが好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)は、単独で用いてもよいし、複数種併用してもよい。
ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部であることが必要であり、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、0.01~8質量部であることが好ましく、0.01~3質量部であることがより好ましく、0.02~2質量部であることがさらに好ましい。ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量が0.01質量部未満の場合、樹脂組成物は、長期耐熱エージング性の向上効果が見られない。一方、ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量が20質量部を超える場合、効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、樹脂組成物が脆くなることがある。この場合、機械的特性(例えば熱エージング処理前の引張強度)が低下したり、かつ/または熱エージング処理後の表面光沢性が低下したりする。ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)を複数種併用する場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
本発明において、銅化合物(C)とハロゲン化アルカリ金属化合物(D)との質量比(C/D)は、機械的特性および長期耐熱エージング性のさらなる向上の観点から、1/0.2~1/120であることが好ましく、1/0.2~1/80であることがより好ましく、1/0.3~1/20であることがさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(E)を含有する。
本発明に用いる多価アルコール(E)とは、1分子中、2個以上の水酸基を含有する化合物である。多価アルコール(E)としては、飽和脂肪族多価アルコール化合物、不飽和脂肪族多価アルコール化合物、脂環式多価アルコール化合物、芳香族多価アルコール化合物、および糖類が挙げられる。多価アルコールは、1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素および/または硫黄を含有してもよい。多価アルコール(E)は、水酸基以外の置換基、例えば、エーテル基、カルボキシル基、アミド基またはエステル基をさらに含有してもよい。また、多価アルコールは低分子量化合物であっても、一定のモノマー単位が繰り返されるポリマー型の高分子量化合物であってもよい。多価アルコール(E)は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(E)を含有することにより、長期耐熱エージング性が向上されたものとなる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(E)を含有することにより、流動性が向上されたものとなるので、溶融加工時の加工温度を下げることも可能となり、溶融加工時の熱劣化を抑制することができる。
飽和脂肪族多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3プロパンジオール、グリセリンモノメタクリレート等の2価の低分子量アルコール;グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス-(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2′-ヒドロキシエトキシ)-プロパン-1,2-ジオール、3-(2′-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2′-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2′-ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2′-ヒドロキシエトキシ)-メチル]-エタン、1,1,1-トリス-[(2′-ヒドロキシプロポキシ)-メチル]-プロパン、ジ-トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート等の3価の低分子量アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の4価以上の低分子量アルコール;ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリビニルブチラール(例えば、クラレ社製Mowital)、両末端水酸基水素化ポリブタジエン(例えば、日本曹達社製のGIシリーズ)、両末端水酸基ポリブタジエン(例えば、日本曹達社製のGシリーズ)、樹枝状ポリアルコール(例えば、パーストープ社製Boltorn)、ポリカプロラクトンポリオール(例えば、ダイセル社製プラクセル200シリーズ、300シリーズ、400シリーズ)等の高分子量多価アルコールが挙げられる。
不飽和脂肪族多価アルコール化合物としては、例えば、リシノレイルアルコールが挙げられる。
脂環式多価アルコール化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、2,3-ジ-(2′-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オールが挙げられる。
芳香族多価アルコール化合物としては、例えば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、ヒドロベンゾイン、1,1,2,2-テトラフェニルエタン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-(4′-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,3-トリス-(ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、ビスフェノキシエタノールフルオレンが挙げられる。
糖類としては、例えば、シクロデキストリン、D-マンノース、グルコース、ガラクトース、ショ糖、フルクトース、キシロース、アラビノース、D-マンニトール、D-ソルビトール、D-またはL-アラビトール、キシリトール、イジトール、ガラクチトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、ギルトール、エリスリトール、トレイトール、リビトール、D-グロン酸-γ-ラクトンが挙げられる。
上記した多価アルコールのうち、3価以上の多価アルコールは、2個以上の水酸基を残して脂肪酸または二塩基酸とエステル結合しているエステル基含有多価アルコールの形態を有していてもよい。詳しくは、当該エステル基含有多価アルコールにおいては、原料としての3価以上の多価アルコールが有する3個以上の水酸基のうち、2個以上の水酸基を残して、1個以上の水酸基が脂肪酸または二塩基酸とエステル結合している。エステル基含有多価アルコールは、より詳しくは、1分子中、2個以上の水酸基および1個以上のエステル基を有している。原料としての3価以上の多価アルコールが有する3個以上の水酸基のうち、2個以上の水酸基を残して、1個以上の水酸基が二塩基酸とエステル結合しているエステル基含有多価アルコールは、2個以上の水酸基および1個以上のエステル基だけでなく、二塩基酸由来の1個以上のカルボキシル基も有する。脂肪酸は飽和脂肪族モノカルボン酸であり、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸等が挙げられる。二塩基酸は飽和脂肪族ジカルボン酸であり、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。このようなエステル基含有多価アルコールの中でも、3価以上の多価アルコール(原料)として、特に、3価以上の飽和脂肪族多価アルコールを用いた多価アルコールを、エステル基含有飽和脂肪族多価アルコールという。
エステル基含有多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールと脂肪酸からなるエステル(例えば、日油社製ユニスターHシリーズ)、ジペンタエリスリトールと二塩基酸からなるエステル(例えば、味の素ファインテクノ社製プレンライザーシリーズ)などが挙げられる。これらの市販品は特に、エステル基含有飽和脂肪族多価アルコールに属する。
多価アルコール(E)は、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族多価アルコールおよびエステル基含有飽和脂肪族多価アルコールからなる群から選択される1種以上の多価アルコールであることが好ましい。
多価アルコール(E)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.05~20質量部であることが必要であり、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、0.5~8質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることがさらに好ましい。多価アルコール(E)の含有量が0.05質量部未満の場合、樹脂組成物は、熱老化の抑制効果が見られない。すなわち、長期耐熱エージング性が低下する。一方、多価アルコール(E)の質量量が20質量部を超えると、熱老化の抑制効果が飽和し、それ以上の効果発現が見込めないだけでなく、樹脂組成物は、溶融加工時に多価アルコールが気化してガスが大量に発生したり、滞留安定性が不良になったり、また、成形体は、表面に多価アルコールがブリードアウトして外観が損なわれたり、機械的特性が不十分となることがある。この場合、熱エージング処理後の表面光沢性が低下する。多価アルコール(E)を複数種併用する場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
本発明においては、樹脂組成物において、さらにセルロース繊維以外の他の強化材(F)を含有してもよい。前記強化材(F)としては、繊維状強化材および非繊維状強化材が挙げられる。
繊維状強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維が挙げられる。中でも、機械的特性の向上効果の高く、ポリアミド樹脂との溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性を有し、入手しやすいことから、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が好ましい。
ガラス繊維、炭素繊維を用いる場合、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系が挙げられる。中でも、ポリアミド樹脂との密着効果が高いことから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
繊維状強化材の繊維長は、0.1~7mmであることが好ましく、0.5~6mmであることがより好ましい。前記強化材の繊維長が0.1mm未満であると、補強効果に劣る場合があり、一方、7mmを超えると、成形性に悪影響を及ぼす場合がある。また、前記強化材の繊維径は、3~20μmであることが好ましく、5~13μmであることがより好ましい。繊維径が3μm未満であると、溶融混練時に折損しやすく、一方、20μmを超えると、補強効果に劣る場合がある。前記強化材の断面形状は、円形断面、長方形、楕円、その他の異形断面いずれであってもよいが、中でも、円形断面が好ましい。
非繊維状強化材としては、例えば、タルク、マイカ、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、ケイ酸カルシウム、黒鉛、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。非繊維状強化材の「非繊維状」は粒状、楕円状、層状、板状、麟片状、中空状、フレーク状、不定形状等であってもよい。非繊維状強化材の平均粒径は通常、0.1~20μm、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~5μmである。平均粒径は最大長の平均値のことである。
セルロース繊維以外の他の強化材は、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、タルクからなる群から選択される1種以上の強化材であることが好ましい。
樹脂組成物において、セルロース繊維以外の他の強化材の含有量は、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性のさらなる向上の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対して50質量部以下(すなわち0~50質量部)とすることが好ましく、30質量部以下(すなわち0~30質量部)とすることがより好ましく、5質量部以下(すなわち0~5質量部)とすることがより好ましく、0質量部とすることが最も好ましい。セルロース繊維以外の他の強化材を用いる場合、その含有量の下限値は、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.1質量部、特に1質量部であってもよい。
本発明に用いる樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、添加剤を配合してもよい。添加剤は、ポリアミド樹脂の重合時に配合してもよいし、重合後のポリアミド樹脂に溶融混練等で配合してもよい。添加剤としては、例えば、ポリアミド樹脂とは異なる他の重合体、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、難燃剤、相溶化剤、結晶核剤が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の相対粘度は、特に限定されず、機械的特性のさらなる向上および樹脂組成物の成形性の向上の観点から、溶媒として96%硫酸を用いて、温度25℃、濃度1g/100mLで測定した場合において、1.5~5.0であることが好ましく、1.7~4.0であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、重合時にセルロース繊維を添加して得られたセルロース繊維含有ポリアミド樹脂、銅化合物(C)、ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)および多価アルコール(E)を、溶融および混練することにより得ることができる。通常は、溶融および混練後、ストランド状に払い出し、切断および冷却することにより、ペレット形態のポリアミド樹脂組成物を得ることができる。溶融および混練の方法は、ポリアミド樹脂を溶融することができる方法であれば特に限定されず、例えば、二軸押出機等の押出機を用いる方法が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて、機械的特性、長期耐熱エージング性および熱エージング処理後の表面光沢性に優れた成形体を製造することができる。
詳しくは、例えば、機械的特性について、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて製造された成形体(以下、「成形体X」ということがある)は、ポリアミド樹脂(A)を単独で用いること以外、当該成形体Xと同様の方法で製造された成形体(以下、「成形体Y」ということがある)に対して、110%以上、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上の引張強度比を有する。引張強度比は、成形体Xの引張強度の、成形体Yの引張強度に対する割合である。
引張強度比を測定するための成形体Xは、以下の方法により製造されたダンベル試験片である:
本発明のポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒の条件で射出成形し、ISO規格3167に記載のダンベル試験片(試験部80mm×10mm×4mm)を作製する。
引張強度比を算出するための引張強度はISO規格527に準拠して測定される。
また例えば、長期耐熱エージング性について、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて製造された成形体は、150℃で1000時間の熱エージング処理後において、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上の引張強度保持率を有する。引張強度保持率は、実施例で詳述するように、熱エージング処理後の引張強度の、熱エージング処理前の引張強度に対する割合である。
引張強度保持率を測定するための成形体は、引張強度比を測定するための成形体Xと同様の方法により製造されたダンベル試験片である。
引張強度保持率を算出するための引張強度はISO規格527に準拠して測定される。
また例えば、熱エージング処理後の表面光沢性について、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて製造された成形体は、150℃で1000時間の熱エージング処理後において、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは94%以上のグロス保持率を有する。グロス保持率は、実施例で詳述するように、熱エージング処理後のグロスの、熱エージング処理前のグロスに対する割合である。
グロス保持率を測定するための成形体は、以下の方法により製造されたカラープレートである:
本発明のポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒の条件で射出成形し、カラープレート(90mm×60mm×2mm)を作製する。
グロス保持率を算出するためのグロスは、JIS-K7105に準拠し、入射角を60度として、測定される。
本発明の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を公知の成形方法により成形することで得ることができる。公知の成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法が挙げられる。中でも、射出成形法を好ましく用いることができる。射出成形機としては、特に限定されないが、例えば、スクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物特にポリアミド樹脂の融点以上とすることが好ましく、「融点+100℃」未満とすることが好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、用いるポリアミド樹脂組成物は十分に乾燥されたものを用いることが好ましい。含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で樹脂が発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いる樹脂組成物の水分率は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体は、機械的特性に優れ、かつ、長期耐熱エージング性や熱エージング処理後の表面光沢性にも優れているため、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、家庭品用等の各種部品に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、樹脂組成物の評価は以下の方法によりおこなった。
I.評価方法
(1)ポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径
十分に乾燥した樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒の条件で射出成形し、ISO規格3167に記載のダンベル試験片(試験部80mm×10mm×4mm)を作製した。
凍結ウルトラミクロトームを用いて射出成形片から厚さ100nmの切片を採取し、切片染色を実施後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM-1230)を用いて観察をおこなった。電子顕微鏡画像からセルロース繊維(単繊維)の長手方向に対する垂直方向の長さを測定した。このとき、垂直方向の長さのうち最大のものを繊維径とした。同様にして10本のセルロース繊維(単繊維)の繊維径を測定し、10本の平均値を算出したものを平均繊維径とした。
なお、セルロース繊維の繊維径が10μmを超えるものについては、ミクロトームにて厚さ10μmの切片を切り出したものを実体顕微鏡(OLYMPUS社製 SZ-40)により観察し、得られた画像から上記と同様にして繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。
(2)相対粘度
樹脂組成物を、96%硫酸に、セルロースを除去後のポリアミドの濃度が1g/dLになるように溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、25℃で測定した。
(3)引張強度機械的特性(熱エージング処理前)
十分に乾燥した樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒の条件で射出成形し、ISO規格3167に記載のダンベル試験片(試験部80mm×10mm×4mm)を作製した。
得られたダンベル試験片を用いて、ISO規格527に準拠して引張強度を測定した。
熱エージング処理前の引張強度は、強化材や添加剤を含有しないニートのポリアミド樹脂と対比して、通常は110%以上であり(実用上問題なし)(△)、120%以上であることが好ましく(○)、130%以上であることがより好ましい(◎)。110%未満は×(実用上問題あり)とした。
(4)引張強度保持率(長期耐熱エージング性)
(3)で得られたダンベル試験片を、大気雰囲気下で150℃に設定された熱風乾燥機に入れ熱エージング処理をおこなった。1000時間経過後に取り出し、十分に冷却してから(3)に記載の方法により引張強度を測定し、下記式により引張強度保持率を算出した。
引張強度保持率(%)=(熱エージング処理後の引張強度/熱エージング処理前の引張強度)×100
1000時間熱エージング処理後の引張強度保持率は通常、80%以上であり(実用上問題なし)(△)、85%以上であることが好ましく(○)、88%以上であることがより好ましい(◎)。80%未満は×(実用上問題あり)とした。
(5)グロス(表面光沢性)
十分に乾燥した樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒の条件で射出成形し、カラープレート(90mm×60mm×2mm)を作製した。
得られたカラープレートを用いて、JIS-K7105に準拠し、入射角を60度として、グロスを測定した。グロスが高いほど、表面光沢性は高い。熱エージング処理前のグロスは、通常は70%以上であり(実用上問題なし)(△)、80%以上であることが好ましく(○)、90%以上であることがより好ましい(◎)。70%未満は×(実用上問題あり)とした。
(6)グロス保持率(熱エージング処理後の表面光沢性)
(5)で得られたカラープレートを、大気雰囲気下で150℃に設定された熱風乾燥機に入れ熱エージング処理をおこなった。1000時間経過後に取り出し、十分に冷却してから(5)に記載の方法によりグロスを測定し、下記式によりグロス保持率を算出した。
グロス保持率(%)=(熱エージング処理後のグロス/熱エージング処理前のグロス)×100
1000時間熱エージング処理後のグロス保持率は通常、80%以上であり(実用上問題なし)(△)、90%以上であることが好ましく(○)、94%以上であることがより好ましい(◎)。80%未満は×(実用上問題あり)とした。
(7)総合評価
熱エージング処理前の引張強度およびグロス、ならびに熱エージング処理後の引張強度保持率およびグロス保持率の評価結果に基づいて、総合的に評価した。
◎:全ての評価結果が◎であった。
○:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が○であった。
△:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が△であった。
×:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が×であった。
II.原料
(1)ポリアミド樹脂モノマー成分
・ε-カプロラクタム(宇部興産社製)
・ポリアミド66塩(ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の等モル塩、ポリアミドプレポリマー)
(2)セルロース繊維(B)
・B-1:KY100G(ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100G、平均繊維径が125nmの未変性のセルロース繊維が10質量%含有されたもの。)
・B-2:KY100S(ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100S、平均繊維径が140nmの未変性のセルロース繊維が25質量%含有されたもの。)
・B-3:バクテリアセルロース繊維(未変性のセルロース繊維):
0.5質量%グルコース、0.5質量%ポリペプトン、0.5質量%酵母エキス、0.1質量%硫酸マグネシウム7水和物からなる組成の培地50mLを、200mL容三角フラスコに分注し、オートクレーブで120℃、20分間蒸気滅菌した。これに試験管斜面寒天培地で生育させたGluconacetobacter xylinus(NBRC 16670)を1白金耳接種し、30℃で7日間静置培養した。7日後、培養液の上層に白色のゲル膜状のバクテリアセルロース繊維が生成した。
得られたバクテリアセルロース繊維をミキサーで破砕後、水で浸漬、洗浄を繰り返すことにより、水置換をおこない、平均繊維径が60nmのバクテリアセルロース繊維が4.1質量%含有された水分散液を調製した。
・B-4:屑糸(未変性のセルロース繊維):
不織布の製造工程において屑糸として出されたセルロース繊維の集合体に、精製水を加えてミキサーで撹拌し、平均繊維径が3240nmの未変性のセルロース繊維が6質量%含有された水分散液を調製した。
・B-5:TEMPO触媒酸化セルロース繊維(セルロース由来の水酸基の一部が親水性の置換基で変性されたセルロース繊維):
漂白後の針葉樹由来の未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)を、TEMPO 780mgおよび臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに添加し、パルプが均一に分散するまで撹拌した。そこに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように加えることで酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するため、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターにより濾過してパルプを分離し、十分に水洗することで酸化されたパルプを得た。上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、平均繊維径が10nmのTEMPO触媒酸化セルロース繊維が1.0質量%含有された水分散液を調製した。
なお、TEMPO触媒酸化セルロース繊維をH-NMR、13C-NMR、FT-IR、中和滴定で分析したところ、セルロース由来の水酸基の一部がカルボキシル基で置換されていることを確認した。
・B-6:エーテル変性セルロース繊維(セルロース由来の水酸基の一部が疎水性の置換基で変性されたセルロース繊維):
針葉樹漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、固形分25%)600gに水19.94kg添加し、固形分濃度が0.75質量%の水懸濁液を調製した。得られたスラリーの機械的解繊処理をビーズミル(アイメックス社製 NVM-2)を用いておこない、セルロース繊維を得た(ジルコニアビーズ直径1mm、ビーズ充填量70%、回転数2000rpm、処理回数2回)。遠心分離管一本あたりに、得られたセルロース繊維水分散液100gを入れ、遠心分離(7000rpm、20分)をおこない、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。遠心分離管一本あたりに、アセトン100gを加えて、よく撹拌し、アセトン中に分散させ、遠心分離をおこない、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。上記の操作をさらに二回繰り返し、固形分5質量%のセルロース繊維アセトンスラリーを得た。
撹拌羽根を備えた四つ口1Lフラスコに、得られたセルロース繊維アセトンスラリーをセルロース繊維の固形分が5gになるように投入した。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を500mL、トルエンを250mL加え、撹拌しながらセルロース繊維をNMP/トルエン中に分散させた。冷却器を取り付け、窒素雰囲気下、分散液を150℃に加熱し、分散液中に含まれるアセトン、水分をトルエンとともに留去した。その後分散液を40℃まで冷却し、ピリジン15mL、ヘキサメチルジシラザン(シリルエーテル化剤)25gを添加して窒素雰囲気下90分反応させ、エーテル変性セルロース繊維のNMP分散液を調製した。
得られたエーテル変性セルロース繊維のNMP分散液を遠心分離機によりセルロース繊維を沈殿させ水置換した。これを3回繰り返し、水で調製し、平均繊維径が100nmのエーテル変性セルロース繊維が1.0質量%含有された水分散液を調製した。
なお、エーテル変性セルロース繊維をH-NMR、13C-NMR、FT-IRで分析したところ、セルロース由来の水酸基の一部が疎水性のシリルエーテル基で置換されていることを確認した。
(3)銅化合物(C)
・C-1:ヨウ化第一銅(試薬特級)
・C-2:臭化第一銅(試薬特級)
(4)ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)
・D-1:ヨウ化カリウム(試薬特級)
・D-2:臭化カリウム(試薬特級)
(5)多価アルコール(E)
・E-1:ジペンタエリスリトール(パースト―プ社製、DiPenta90)
・E-2:ジペンタエリスリトールとアジピン酸からなるエステル(味の素ファインテクノ社製、プレンライザーST-210)
(6)セルロース繊維以外の強化材(F)
・F-1:ガラス繊維(日本電気硝子社製、T-262H、平均繊維径10.5μm、平均繊維長3mm、酸共重合物を含んだ被膜形成剤を使用)
・F-2:炭素繊維(東邦テナックス社製、HTA-C6-NR、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
・F-3:タルク(日本タルク社製、SG-2000、平均粒径1μm)
実施例1
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY100G(B-1)を用いて、これに精製水を加えてミキサーで撹拌し、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調製した。
このセルロース繊維の水分散液100質量部と、ε-カプロラクタム100質量部とを、均一な分散液となるまでさらにミキサーで撹拌、混合した。続いて、この混合分散液を重合装置に投入後、撹拌しながら240℃に加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0MPaから0.5MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間重合反応をおこなった。重合が終了した時点で樹脂をストランド状に払い出し、切断して、ペレットを得た。
得られたペレットを95℃の熱水で精練した後、乾燥して、乾燥されたセルロース繊維含有ポリアミド6樹脂のペレットを得た。
上記で得られたセルロース繊維含有ポリアミド6樹脂103質量部、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
実施例2~4
セルロース繊維(B-1)の含有量が表1に示す値になるように、セリッシュKY100Gの配合量を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
実施例5~19、比較例2、9、10および15~20
表1~表4に示すように、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)の量を変更する以外は、実施例2と同様の操作をおこない、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
実施例20
セルロース繊維の含有量が5質量%の水分散液100質量部と、ポリアミド66塩100質量部とを、均一な溶液となるまでミキサーで撹拌、混合した。続いて、この混合溶液を230℃で撹拌しながら、内圧が1.5MPaになるまで加熱した。その圧力に到達後、徐々に水蒸気を放出しつつ、加熱を続けてその圧力を保持した。280℃に達した時点で、常圧まで放圧し、さらに1時間重合をおこなった。重合が終了した時点で樹脂をストランド状に払い出し、切断して、ペレットを得た。
得られたペレットを95℃の熱水で精練した後、乾燥して、乾燥されたセルロース繊維含有ポリアミド66樹脂のペレットを得た。
上記で得られたセルロース繊維含有ポリアミド66樹脂105質量部、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし、二軸押出機の主ホッパーに供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
実施例21~25
セルロース繊維(B)の種類を表2に示すように変更する以外は実施例2と同様の操作を行い、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
実施例26~28
銅化合物(C)、ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)または多価アルコール(E)の種類を表2に示すように変更する以外は実施例2と同様の操作を行い、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
実施例29~31
実施例2で得られたセルロース繊維含有ポリアミド6樹脂105質量部、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし)、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給した。途中、サイドフィーダーよりセルロース繊維以外の強化材(F)10質量部を供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
比較例1
ε-カプロラクタムを重合装置に投入後、撹拌しながら240℃に加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0MPaから0.5MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間重合反応をおこなった。重合が終了した時点で樹脂をストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド6樹脂(PA6樹脂)のペレットを得た。
得られたペレットを95℃の熱水で精練した後、乾燥して、乾燥したPA6樹脂のペレットを得た。
比較例3、4
表3に示すように、セルロース繊維(B-1)、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)の量を変更する以外は、実施例2と同様の操作をおこない、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
比較例5
ポリアミド66塩を230℃で撹拌しながら、内圧が1.5MPaになるまで加熱した。その圧力に到達後、徐々に水蒸気を放出しつつ、加熱を続けてその圧力を保持した。280℃に達した時点で、常圧まで放圧し、さらに1時間重合をおこなった。重合が終了した時点で樹脂をストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド66樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを95℃の熱水で精練した後、乾燥して、乾燥したポリアミド66樹脂のペレットを得た。
比較例6
表3に示すように、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)の量を変更する以外は、実施例20と同様の操作をおこない、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。
比較例7
比較例1で得られた乾燥したPA6樹脂100質量部およびヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし、二軸押出機の主ホッパーに供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
比較例8
比較例5で得られた乾燥したPA66樹脂100質量部およびヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし、二軸押出機の主ホッパーに供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
比較例11~13
比較例1で得られた乾燥したPA6樹脂100質量部、ヨウ化銅(C-1)、ヨウ化カリウム(D-1)、ジペンタエリスリトール(E-1)をドライブレンドし、二軸押出機の主ホッパーに供給した。途中、サイドフィーダーよりセルロース繊維以外の強化材(F)10質量部を供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
比較例14
セルロース繊維の分散液を、棚式凍結乾燥機として東京理化器械FD550を使用して-45℃にて凍結乾燥し、粉砕機を用いて粉末状にした。
得られたセルロース繊維の粉末5質量部と比較例1で得られた乾燥したPA6樹脂100質量部をドライブレンドし、二軸押出機の主ホッパーに供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。
表1~表4で用いる樹脂組成物の樹脂組成および長期耐熱エージング性等の評価結果を示す。

Figure 0007398095000003
Figure 0007398095000004
実施例1~31の樹脂組成物は、成分(B)~(F)を本発明で規定する範囲で含有しているため、成分(B)~(F)を含有しないニートのポリアミド樹脂(A)単独(比較例1および5)と対比した引張強度比が110%以上と高く、また1000時間熱エージング処理後の引張強度保持率およびグロス保持率はそれぞれ80%と高かった。
比較例1、5の樹脂組成物は、成分(C)~(E)を含有しないため、1000時間熱エージング処理後の引張強度保持率は低く、(B)を含有しないため、引張強度比が110%未満と低かった。
比較例2~4、6、9、10、15および16の樹脂組成物は、成分(C)~(E)の全てを含有するわけではないため、1000時間熱エージング処理後の引張強度保持率は低かった。
比較例7、8の樹脂組成物は、成分(B)を含有しないため、引張強度比がそれぞれ99%、98%と低かった。
比較例11~13の樹脂組成物は、成分(B)の代わりに成分(F)を含有するため、1000時間熱エージング処理後のグロス保持率が低かった。
比較例14の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂に成分(B)を混練時に添加したため、引張強度比が107%と低かった。
比較例17の樹脂組成物は、(B)の配合量が本発明で規定する配合量よりも多かったため、1000時間熱エージング処理後のグロス保持率が低かった。
比較例18~20の樹脂組成物は、(C)~(E)のいずれかの配合量が本発明で規定する配合量よりも多かったため、引張強度比および1000時間熱エージング処理後のグロス保持率が低かった。
本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形体は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、家庭品用等の各種部品の製造に有用である。

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、
    平均繊維径が500nm以下のセルロース繊維(B)0.1~50質量部、
    銅化合物(C)0.02~5質量部、
    ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)0.01~8質量部、
    多価アルコール(E)0.5~8質量部、および
    セルロース繊維以外の強化材(F)5質量部以下を含有する、樹脂組成物であって、
    前記多価アルコール(E)は、飽和脂肪族多価アルコール化合物、およびエステル基含有多価アルコールからなる群から選択される1種以上の化合物であり、
    前記飽和脂肪族多価アルコール化合物は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールを含む4価以上の低分子量アルコールから選択され、
    前記エステル基含有多価アルコールは、前記飽和脂肪族多価アルコール化合物のうち、4価以上の多価アルコール化合物が、2個以上の水酸基を残して二塩基酸とエステル結合している化合物から選択され、
    前記二塩基酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸から選択される、樹脂組成物。
  2. 前記セルロース繊維(B)が、未変性のセルロース繊維であるか、またはセルロース由来の水酸基が親水性もしくは疎水性の置換基で変性された変性セルロース繊維である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 銅化合物(C)がハロゲン化銅である、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)が、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、および塩化ナトリウムからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記セルロース繊維(B)の含有量が1~40質量部である、請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂(A)がポリアミド6であり、
    前記セルロース繊維(B)が、未変性のセルロース繊維であり、
    前記セルロース繊維(B)の平均繊維径が100nm以下であり、
    前記セルロース繊維(B)の含有量が4~30質量部であり、
    前記銅化合物(C)がヨウ化銅であり、
    前記銅化合物(C)の含有量が0.02~0.2質量部であり、
    前記ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)がヨウ化カリウムであり、
    前記ハロゲン化アルカリ金属化合物(D)の含有量が0.01~3質量部であり、
    前記多価アルコール(E)の含有量が0.5~3質量部であり、
    前記セルロース繊維以外の強化材(F)を5質量部以下で含む、請求項1~5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. ポリアミド樹脂(A)単独と対比した引張強度比が110%以上であり、
    大気雰囲気下、150℃で1000時間の熱エージング処理後の引張強度保持率および成形体表面の60°入射角におけるグロス保持率がそれぞれ80%以上であること特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形体。
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