JP7397698B2 - 歯科用グラスアイオノマーセメント - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用グラスアイオノマーセメントに関する。
従来、う蝕を治療する際に、窩洞を形成した後、グラスアイオノマーセメントを窩洞に充填し、硬化させることにより、歯を修復する。
グラスアイオノマーセメントは、アイオノマーガラス粉末を含む第1剤と、ポリカルボン酸系重合体及び水を含む第2剤を有する。
アイオノマーガラス粉末としては、例えば、フルオロアルミノシリケートガラス粉末が知られている。
また、グラスアイオノマーセメントとして、ラジカル重合性単量体をさらに含む第1剤を有するレジン強化グラスアイオノマーセメントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012-72072号公報
しかしながら、グラスアイオノマーセメントの硬化体の歯質に対する接着性及び機械的強度をさらに向上させることが望まれている。
本発明の一態様は、硬化体の歯質に対する接着性及び機械的強度に優れる歯科用グラスアイオノマーセメントを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて、アイオノマーガラス粉末を含む第1剤と、ポリカルボン酸系重合体及び水を含む第2剤を有し、前記第1剤は、一般式(1)
Figure 0007397698000001
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Lは、アルキレン基である。)
で表される水溶性化合物と、一般式(2)
Figure 0007397698000002
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Lは、アルキレンオキシ基であり、Rは、n価の有機基であり、mは、1以上42以下の整数であり、nは、2以上6以下の整数である。)
で表される水溶性化合物をさらに含む。
本発明の一態様によれば、硬化体の歯質に対する接着性及び機械的強度に優れる歯科用グラスアイオノマーセメントを提供することができる。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
[歯科用グラスアイオノマーセメント]
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメントは、アイオノマーガラス粉末を含む第1剤と、ポリカルボン酸系重合体及び水を含む第2剤を有する。
(第1剤)
第1剤は、一般式(1)
Figure 0007397698000003
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Lは、アルキレン基である。)
で表される水溶性化合物と、一般式(2)
Figure 0007397698000004
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Lは、アルキレンオキシ基であり、Rは、n価の有機基であり、mは、1以上42以下の整数であり、nは、2以上6以下の整数である。)
で表される水溶性化合物をさらに含む。
本明細書及び特許請求の範囲において、水溶性化合物とは、20℃における水に対する溶解度が10g/100gHO以上である化合物を意味する。
一般式(1)で表される水溶性化合物は、水酸基を有する単官能のラジカル重合性単量体であるため、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体は、歯質に対する接着性に優れる。
一般式(1)のLにおけるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
一般式(1)で表される水溶性化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
一般式(2)で表される水溶性化合物は、水酸基を有さない多官能のラジカル重合性単量体であるため、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体は、吸水膨張しにくく、機械的強度に優れる。また、一般式(2)で表される水溶性化合物は、ポリカルボン酸系重合体との親和力が高いため、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体は、歯質に対する接着性に優れる。さらに、一般式(2)で表される水溶性化合物は、分子量が大きいため、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化時の収縮応力が小さくなり、その結果、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体は、歯質に対する接着性に優れる。
一般式(2)のLにおけるアルキレンオキシ基としては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(2)のRにおけるn価の有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよいし、ヘテロ原子を含んでいなくてもよい。
一般式(2)で表される水溶性化合物は、一般式(2-1)
Figure 0007397698000005
(式中、l、m及びnの和は、15以上45以下である。)
で表される化合物、及び/又は、一般式(2-2)
Figure 0007397698000006
(式中、m及びnの和は、20以上40以下である。)
で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)で表される水溶性化合物の分子量は、1000以上であることが好ましい。
一般式(1)で表される水溶性化合物及び一般式(2)で表される水溶性化合物は、それぞれ20℃における水に対する溶解度が10g/100gHO以上であることが好ましい。
第1剤は、一般式(3)
Figure 0007397698000007
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Rは、n価の有機基であり、nは、2以上6以下の整数である。)
で表される非水溶性化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体の機械的強度が向上する。
一般式(3)で表される非水溶性化合物は、水酸基及びアルキレンオキシ基を有さない多官能のラジカル重合性単量体であるため、本実施形態の歯科用アイオノマーセメントの硬化体は、さらに吸水膨張しにくくなり、機械的強度が向上する。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ジ-2-メタクリロイルオキシエチル-2,2,4-トリエチルヘキサメチレンジカルバメート、トリエチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、化学式(3-1)
Figure 0007397698000008
(式中、m及びnの和は、10である。)
で表される化合物等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
一般式(1)~(3)で表される化合物の総質量に対する一般式(1)で表される化合物の質量の比は、5~80%であることが好ましく、10~60%であることがさらに好ましい。一般式(1)~(3)で表される化合物の総質量に対する一般式(1)で表される化合物の質量の比が5%以上であると、本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体の歯質に対する接着性が向上し、80%以下であると、本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体の機械的強度が向上する。
一般式(1)~(3)で表される化合物の総質量に対する一般式(2)で表される化合物の質量の比は、2~30%であることが好ましく、5~20%であることがさらに好ましい。一般式(1)~(3)で表される化合物の総質量に対する一般式(2)で表される化合物の質量の比が2%以上であると、本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体の歯質に対する接着性が向上し、30%以下であると、本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体の機械的強度が向上する。
アイオノマーガラスとしては、ポリカルボン酸系重合体と反応して、硬化することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。
フルオロアルミノシリケートガラス中のアルミニウムの含有量は、酸化アルミニウム(Al)に換算した量で、20~40質量%であることが好ましく、20~35質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のケイ素の含有量は、酸化ケイ素(SiO)に換算した量で、20~50質量%であることが好ましく、20~45質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のフッ素(F)の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のリンの含有量は、酸化リン(V)(P)に換算した量で、0~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のカルシウム(Ca)の含有量は、酸化カルシウム(CaO)に換算した量で、0~40質量%であることが好ましく、0~30質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のストロンチウム(Sr)の含有量は、酸化ストロンチウム(SrO)に換算した量で、0~40質量%であることが好ましく、0~30質量%であることがさらに好ましい。
フルオロアルミノシリケートガラス中のカルシウム及びストロンチウムの総含有量は、それぞれ酸化カルシウム(CaO)及び酸化ストロンチウム(SrO)に換算した量で、15~40質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
アイオノマーガラス粉末は、重合性基を有するシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
第1剤は、重合禁止剤をさらに含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、6-tert―ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられる。
(第2剤)
ポリカルボン酸系重合体としては、特に限定されないが、α,β-不飽和カルボン酸の単独重合体又は共重合体を用いることができる。
α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸系重合体は、α,β-不飽和カルボン酸と、α,β-不飽和カルボン酸と共重合することが可能なモノマーとの共重合体であってもよい。
α,β-不飽和カルボン酸と共重合することが可能なモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸塩類、塩化ビニル、塩化アリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
この場合、ポリカルボン酸系重合体を構成するモノマーに対するα,β-不飽和カルボン酸の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
ポリカルボン酸系重合体は、アクリル酸又はイタコン酸の単独重合体又は共重合体であることが好ましい。
なお、ポリカルボン酸系重合体は、少なくとも一部が粉末であってもよい。
第2剤は、フィラーをさらに含むことが好ましい。
フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよいが、無機フィラーであることが好ましい。
無機フィラーを構成する材料としては、ポリカルボン酸系重合体と反応せず、硬化しない材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリカ、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、チタニア、硫酸バリウム等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
上記以外のフィラーとして、無機フィラーと、モノマーを含む組成物を重合した後、粉砕して得られる有機無機複合フィラーを使用することも可能である。
フィラーは、重合性基を有するシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
第1剤及び/又は第2剤は、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、L-システイン塩酸塩等が挙げられる。
第2剤は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。
pH調整剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
[フィラーの作製]
自動乳鉢を用いて、無水ケイ酸粉末100質量部、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの50質量%エタノール溶液2質量部を混合した後、130℃で2時間加熱処理し、フィラー(A)を得た。
[第2剤(A)の作製]
フィラー(A)20質量部、50質量%ポリアクリル酸水溶液70質量部、酒石酸8質量部、L-システイン塩酸塩2質量部を混合し、ペースト状の第2剤(A)を得た。
[第2剤(B)の作製]
L-システイン塩酸塩の代わりに、ベンゼンスルフィン酸ナトリウムを用いた以外は、第2剤(A)と同様にして、ペースト状の第2剤(B)を得た。
[アイオノマーガラス粉末(A)の作製]
酸化アルミニウム粉末21質量部、無水ケイ酸粉末44質量部、フッ化カルシウム粉末12質量部、リン酸カルシウム粉末14質量部、炭酸ストロンチウム粉末9質量部からなる原料組成物を充分混合し、1200℃の高温電気炉中で5時間保持して溶融させた後、冷却し、フルオロアルミノシリケートガラスを得た。次に、ボールミルを用いて、フルオロアルミノシリケートガラスを10時間粉砕した後、200メッシュ(ASTM)ふるいを通過させ、フルオロアルミノシリケートガラス粉末(A)を得た。
自動乳鉢を用いて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末(A)100質量部、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの50質量%エタノール溶液2質量部を混合した後、130℃で2時間加熱処理し、アイオノマーガラス粉末(A)を得た。
[アイオノマーガラス粉末(B)の作製]
酸化アルミニウム粉末22質量部、無水ケイ酸粉末43質量部、フッ化カルシウム粉末12質量部、リン酸カルシウム粉末15質量部、炭酸ストロンチウム粉末8質量部からなる原料組成物を用いた以外は、アイオノマーガラス粉末(A)と同様にして、アイオノマーガラス粉末(B)を得た。
[アイオノマーガラス粉末(C)の作製]
酸化アルミニウム粉末23質量部、無水ケイ酸粉末41質量部、フッ化カルシウム粉末10質量部、リン酸カルシウム粉末13質量部、炭酸ストロンチウム粉末13量部からなる原料組成物を用いた以外は、アイオノマーガラス粉末(A)と同様にして、アイオノマーガラス粉末(C)を得た。
[実施例1~6、比較例1~6]
表1に示す配合[質量%]で、アイオノマーガラス粉末、一般式(1)で表される水溶性化合物、一般式(2)で表される水溶性化合物、一般式(3)で表される非水溶性化合物、重合禁止剤を混合し、ペースト状の第1剤を得た。
得られた第1剤と、第2剤(表1参照)を組み合わせて、グラスアイオノマーセメントとした。
なお、表1の略称の定義は、以下の通りである。
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
BPE-1300N:EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(一般式(2-2)で表される化合物;m+n=30)(新中村化学工業製)
UA-7100:イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート(一般式(2-1)で表される化合物;l+m+n=27)(新中村化学工業製)
UDMA:ジ-2-メタクリロキシエチル-2,2,4-トリエチルヘキサメチレンジカルバメート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
GDMA:グリセリンジメタクリレート
BPE-500:EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(一般式(2-2)で表される化合物;m+n=10)(新中村化学工業製)
BPE-900:EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(一般式(2-2)で表される化合物;m+n=17)(新中村化学工業製)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
なお、一般式(1)~(3)で表される化合物の水溶性、非水溶性は、以下のようにして判定した。
[水溶性、非水溶性]
蒸留水4g、試料0.4gを20℃で十分攪拌し、30分間静置した後に、目視で観察した。このとき、白濁しておらず、二層に分離していない場合は、水溶性と判定し、白濁している場合又は二層に分離している場合は、非水溶性と判定した。
次に、グラスアイオノマーセメントの硬化体の歯質に対する接着性、曲げ強さを評価した。
[硬化体の歯質に対する接着性]
第1剤と、第2剤を、質量比1:1で練和することにより得られるグラスアイオノマーセメントの硬化体の練和物を、試料として用いて、硬化体の歯質に対する接着性を評価した。
具体的には、歯根を除去した牛歯の歯冠部の唇側面を耐水研磨紙#120で研磨して象牙質を露出させた。次に、直径3mmの穴を開けたフッ素樹脂製のシールを象牙質に貼付して試験面の被着面積を規定した後、試料を試験面に塗布した。次に、予め被着面をサンドブラスト処理した直径10mmのステンレス鋼製の丸棒を試験面に押し付けた後、10Nの負荷をかけて圧接し、試験片を得た。次に、37℃、95%RHの雰囲気下に、試験片を1時間保管した後、37℃の水中に試験片を浸漬して保管し、試験片を作製し始めてから24時間後に引っ張り接着試験を実施し、硬化体の歯質に対する接着性を評価した。即ち、オートグラフ(島津製作所製)に試験片をセットした後、試験面に対して垂直に引っ張り負荷を加え、破断するまでの最大荷重を記録した。最大荷重を被着面積で除して、試験片の引っ張り接着強さを算出した。
なお、硬化体の歯質に対する接着性を、以下の基準で判定した。
優:試験片の引っ張り接着強さが6MPa以上である場合
良:試験片の引っ張り接着強さが5MPa以上6MPa未満である場合
不可:試験片の引っ張り接着強さが5MPa未満である場合
[硬化体の曲げ強さ]
第1剤と、第2剤を、質量比1:1で練和することにより得られるグラスアイオノマーセメントの硬化体の練和物を、試料として用い、ISO 9917-2:2017 Annex Cに準じて、硬化体の曲げ強さを評価した。
具体的には、25mm×2mm×2mmのステンレス鋼製の金型に試料を充填した後、プラスチックフィルムを介して、ステンレス鋼板で挟んでクランプで固定した。次に、37℃、95%RHの雰囲気下に1時間保管して、試料を硬化させた。次に、クランプを外した後、プラスチックフィルムを除去して、金型から試験片を取り外した。次に、試験片を耐水研磨紙#320で研磨してバリを除去した後、37℃の水中に試験片を保管し、試験片を作製し始めてから24時間後に曲げ試験を実施した。即ち、オートグラフ(島津製作所製)に試験片を設置した後、クロスヘッドスピード1mm/minの条件で、曲げ試験を実施し、硬化体の曲げ強さを評価した。このとき、曲げ試験を実施する直前に、水中から試験片を取り出し、マイクロメータを用いて、試験片の寸法を測定した。
なお、硬化体の曲げ強さを、以下の基準で判定した。
優:試験片の曲げ強さが40MPa以上である場合
良:試験片の曲げ強さが35MPa以上40MPa未満である場合
不可:試験片の曲げ強さが35MPa未満である場合
表1に、グラスアイオノマーセメントの硬化体の歯質に対する接着性、曲げ強さの評価結果を示す。
Figure 0007397698000009
表1から、実施例1~6のグラスアイオノマーセメントは、硬化体の歯質に対する接着性及び曲げ強さが高いことがわかる。
これに対して、比較例1~3、5のグラスアイオノマーセメントは、第1剤が一般式(2)で表される水溶性化合物を含まないため、硬化体の歯質に対する接着性が低い。
比較例4のグラスアイオノマーセメントは、第1剤が一般式(1)で表される水溶性化合物を含まないため、硬化体の歯質に対する接着性が低い。
比較例6のグラスアイオノマーセメントは、第1剤が一般式(1)で表される水溶性化合物及び一般式(2)で表される水溶性化合物のいずれも含まないため、硬化体の歯質に対する接着性及び曲げ強さが低い。

Claims (2)

  1. アイオノマーガラス粉末を含む第1剤と、
    ポリカルボン酸系重合体及び水を含む第2剤と、を有する歯科用グラスアイオノマーセメントであって、
    前記第1剤は、一般式(1)で表される水溶性化合物と、
    Figure 0007397698000010

    一般(1)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、-O-又は-NH-であり、Lは、アルキレン基である。)
    一般式(2-1)で表される水溶性化合物、及び/又は一般式(2-2)で表される水溶性化合物と、を含むことを特徴とする歯科用グラスアイオノマーセメント。
    Figure 0007397698000011

    (一般式(2-1)中、l、m及びnの和は、15以上45以下である。)
    Figure 0007397698000012

    (一般式(2-2)中、m及びnの和は、20以上40以下である。)
  2. 前記一般式(1)で表される水溶性化合物前記一般式(2-1)で表される水溶性化合物、及び前記一般式(2-2)で表される水溶性化合物は、それぞれ20℃における水に対する溶解度が10g/100gHO以上である、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント。
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