以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下で説明する図8、図9、図10、図11、図13、図14は、図を簡略化するため、一部の電線のみを図示し、他の電線の図示を省略している。また、図11、図15は、芯線導体の状態を分かり易く図示するため、ハウジング、電線ホルダ等の図示を省略している。また、以下の説明では、互いに交差する3つの方向をそれぞれ「第1方向X」、「第2方向Y」、「第3方向Z」という。第1方向Xと第2方向Yと第3方向Zとは、典型的には、相互に直交する。第1方向Xは、典型的には、コネクタの軸線方向、電線の延在方向、ハウジングに対する電線ホルダの嵌合方向、ハウジングに対する基板の挿入方向等に相当する。第2方向Yは、典型的には、一対の電線ホルダの対向方向、電線ホルダと基板保持空間部との隣接方向、芯線導体の屈曲方向等に相当する。第3方向Zは、典型的には、電線ホルダにおける電線の保持空間部の並び方向等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
[実施形態]
図1に示す本実施形態のコネクタ1は、例えば、自動車等の車両に搭載されたワイヤハーネスに組み込まれるものである。ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線2を束にして集合部品とし、当該複数の電線2を各機器に接続するようにしたものである。本実施形態のコネクタ1は、基板6を用いて、複数の電線2同士を相互に導通接続することで複数の回路系統をジョイントする基板ジョイントコネクタを構成する。以下、各図を参照してコネクタ1の構成について詳細に説明する。
具体的には、コネクタ1は、複数の電線2と、電線ホルダ3と、電線ホルダカバー4と、ハウジング5と、基板6と、バネ部材7とを備える。
複数の電線2は、図1に示すように、それぞれ端末に芯線導体21が露出した配索材である。電線2は、車両に配索され、各装置を電気的に接続する。電線2は、導電性を有する線状の芯線導体21と、絶縁性を有する絶縁被覆22とを含んで構成される。電線2は、絶縁被覆22によって芯線導体21を被覆した絶縁電線である。芯線導体21は、例えば、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆22は、芯線導体21の外周側を覆い、被覆する。絶縁被覆22は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。電線2は、第1方向Xに沿って線状に延在し、延在方向(第1方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線2は、芯線導体21の断面形状(第1方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆22の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線2は、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆22が剥ぎ取られており、芯線導体21が絶縁被覆部から露出している。
本実施形態の電線2は、ハウジング5や基板6等の各部が相互に組み付けられる前の初期状態においては、端末に露出した芯線導体21が第1方向Xに沿って直線状に延在する。そして、電線2は、端末に露出した芯線導体21が後述するように各種工程をへて最終的に複数箇所で屈曲された形状に形成され、基板6との間に電気的な接続部位を形成する接点部を構成する(図14等参照)。複数の電線2は、この芯線導体21が基板6を介して相互に導通接続され、要求される機能に応じた回路系統を構成する。なおここでは、複数の電線2は、外径が異なるものを含むものとして図示しているがこれに限らず、外径が同等のもので構成されてもよい。
電線ホルダ3は、図1、図2、図3に示すように、複数の電線2を、芯線導体21を露出させた状態で第1方向Xに沿って保持する部材である。本実施形態の電線ホルダ3は、第2方向Yに対向して一対で設けられる。一対の電線ホルダ3は、略同一形状に形成され、ハウジング5に嵌合された状態で第1方向X周りに相互に180°回転させた位置関係となるように対向配置される。
具体的には、電線ホルダ3は、本体部31、保持空間部32、隔壁部33、設置開口部34、先端押さえ部35、及び、係止爪部36を含んで構成され、これらが絶縁性を有する樹脂材料等によって一体で形成される。
本体部31は、電線ホルダ3を構成する主たる部分であり、ハウジング5に嵌合可能な形状に形成される。本体部31は、全体として、略矩形板状に形成され、板厚方向が第2方向Yに沿い、かつ、第1方向X、及び、第3方向Zに沿って延在する。ここでは、本体部31は、第1方向Xが長辺方向、第3方向Zが短辺方向となる。そして、本体部31は、保持空間部32、隔壁部33、設置開口部34、先端押さえ部35、係止爪部36等の各部に応じた様々な凹凸形状や壁部が設けられる。
保持空間部32は、電線2を第1方向Xに沿って収容、保持する空間部であり、キャビティとも呼ばれる。保持空間部32は、本体部31に第1方向Xに沿って形成される。保持空間部32は、電線2の外形形状に対応して、当該電線2を収容可能な形状に形成される。保持空間部32は、本体部31を第1方向Xに沿って貫通し、当該第1方向Xの両端部が開口し、それぞれ開口部32a、32bを構成する。開口部32aは、電線2を芯線導体21側の端末から保持空間部32の内部に挿入するための開口である。開口部32bは、保持空間部32の内部に収容、保持された電線2の芯線導体21側の端末を保持空間部32の外部に露出させるための開口である。保持空間部32は、開口部32aから電線2が挿入され、開口部32bから芯線導体21が露出する。ここでは、開口部32aは、略矩形状に形成され、開口部32bは、略円形状に形成される。保持空間部32は、複数の電線2に対応して複数設けられる。複数の保持空間部32は、第3方向Zに沿って並んで形成され、それぞれ1つずつ電線2を保持する。
隔壁部33は、保持空間部32から露出した各電線2の芯線導体21を保護する壁部であり、複数設けられる。各隔壁部33は、本体部31の開口部32b側の端部から第1方向Xに沿って突出するようにして形成される。各隔壁部33は、略矩形板状に形成され、板厚方向が第3方向Zに沿い、かつ、第1方向X、及び、第2方向Yに沿って延在する。複数の隔壁部33は、第3方向Zに沿って間隔をあけて並んで位置し、開口部32bから露出する各芯線導体21が位置する空間部を区画し各芯線導体21を保護する。複数の隔壁部33は、各芯線導体21をそれぞれ第3方向Zに沿って挟み込むようにして芯線導体21と隣接して位置し、各芯線導体21の第3方向Zの両側をそれぞれ保護する。この構成により、隔壁部33は、第3方向Zに沿って隣り合う芯線導体21同士の間に介在し、これらを相互に絶縁する絶縁壁部として機能する。また、本実施形態の電線ホルダ3は、複数の隔壁部33の間の空間部を介して、少なくとも芯線導体21を第1方向Xの一方側、及び、第2方向Yの一方側に対して露出させて各電線2を保持する。
ここで、この電線ホルダ3において、各隔壁部33によって開放される第1方向Xの一方側とは、後述するバネ部材7が位置する側に相当する。電線ホルダ3において、上記のように各隔壁部33によって第1方向Xの一方側に開放された部分は、当該バネ部材7の芯線導体21側への進出を許容するバネ進出開放部37として機能する。
一方、この電線ホルダ3において、各隔壁部33によって開放される第2方向Yの一方側とは、後述する基板保持空間部60(図8等も参照)や基板6が位置する側に相当する。電線ホルダ3において、上記のように各隔壁部33によって第2方向Yの一方側に開放された部分は、後述するように芯線導体21の内倒れを許容する内倒れ許容開放部38として機能する。なお、この電線ホルダ3は、芯線導体21を第2方向Yの他方側に対しても露出させて各電線2を保持している。
設置開口部34は、電線ホルダカバー4が設置される開口部である。設置開口部34は、本体部31に形成され、第2方向Yに沿って保持空間部32と連通する。言い換えれば、保持空間部32は、設置開口部34を介して第2方向Yに沿って開口している。設置開口部34は、一対の電線ホルダ3の本体部31において、相互に対向する面とは反対側の面に設けられる。設置開口部34は、各保持空間部32において、第1方向Xの開口部32a側の端部にそれぞれ形成されている。本実施形態の各電線ホルダ3は、第3方向Zに沿って並ぶ複数の設置開口部34に渡って1つの電線ホルダカバー4が組み付けられる。保持空間部32に保持された電線2は、設置開口部34に装着される電線ホルダカバー4によって保持空間部32の内壁面に押圧されることで、当該保持空間部32内の正規位置で保持される。ここで、保持空間部32内における電線2の正規位置とは、当該電線2の端末の芯線導体21が開口部32bを介して保持空間部32の外部に露出する位置である。
先端押さえ部35は、後述する工程において芯線導体21を屈曲させる際に、芯線導体21において先端部21Aと当接し、第2方向Yに対して当該先端部21Aを位置決めする部分である(図9、図10等参照)。先端押さえ部35は、隔壁部33の第1方向Xの一方側の端部、より具体的には、本体部31側とは反対側の先端部に設けられる。先端押さえ部35は、第3方向Zに沿って隣り合う一対の隔壁部33に挟まれた空間部であって開口部32bから露出する各芯線導体21が位置する空間部に位置する。より具体的には、先端押さえ部35は、各隔壁部33の先端部から第2方向Yに沿って基板保持空間部60や基板6が位置する側に突出して位置し、かつ、隣り合う隔壁部33に跨るようにして板状に形成される。先端押さえ部35は、開口部32bから露出した各芯線導体21に対応してそれぞれ1つずつ形成される。ここでは、先端押さえ部35は、第3方向Zに隣接する複数が連なって一体化され、第3方向Zに沿って連続体を構成する。複数の先端押さえ部35の連続体は、複数の隔壁部33に渡って第3方向Zに沿って延在して形成される。上述したバネ進出開放部37は、この先端押さえ部35と第2方向Yに沿って隣接して位置する。また、上述した内倒れ許容開放部38(及び、後述する基板保持空間部60)は、この先端押さえ部35と第1方向Xに沿って隣接して位置する。また、この先端押さえ部35は、第1方向Xの本体部31側とは反対側の端部に傾斜面35aが形成されている。傾斜面35aは、先端押さえ部35の当該端部において、バネ進出開放部37側の面に設けられる。この傾斜面35aは、当該端部が第1方向Xに沿って本体部31側とは反対側に向かって先細りとなるように傾斜して形成される。
係止爪部36は、電線ホルダ3がハウジング5に嵌合した状態でハウジング5に係止される部分である。係止爪部36は、本体部31において、第2方向Yの一方側の面、ここでは、設置開口部34が設けられる面(言い換えれば、一対の電線ホルダ3の本体部31において相互に対向する面とは反対側の面)に設けられる。係止爪部36は、本体部31において、第3方向Zの略中央部に設けられる。ここでは、係止爪部36は、本体部31から第2方向Yに沿って略三角形爪状に突出して形成され、ハウジング5に係止される係止面36aを含んで構成される。
電線ホルダカバー4は、図1、図2、図3に示すように、電線ホルダ3とは別体に形成され、電線ホルダ3の設置開口部34に装着される電線固定部材である。電線ホルダカバー4は、1つの電線ホルダ3に対して1つが組み付けられる。電線ホルダカバー4は、第3方向Zに沿って並ぶ複数の設置開口部34に渡って装着され、当該複数の設置開口部34を覆う。電線ホルダカバー4は、一対の係止アーム部41が電線ホルダ3の設置開口部34近傍に設けられた一対の係止爪部34aに係止されることで、電線ホルダ3に組み付けられ、上記の位置関係で複数の設置開口部34に装着される。電線ホルダカバー4は、電線ホルダ3の設置開口部34に装着された状態で、押圧突起部42が保持空間部32に保持された電線2を第2方向Yに沿って保持空間部32の内壁側に押圧する。この構成により、電線ホルダカバー4は、当該電線2を保持空間部32内の正規位置で保持し、固定する。
ハウジング5は、図1、図4、図5に示すように、内部に第1方向Xに沿って一方側から電線ホルダ3を嵌合可能な部材であり、コネクタハウジングを構成する。ハウジング5は、上述したように、一対の電線ホルダ3が第1方向X周りに相互に180°回転させた位置関係となるように第1方向Xに沿って嵌合される。一対の電線ホルダ3は、このハウジング5に嵌合した状態で、第3方向Zに対して、電線2の保持位置が相互に略一致している。
具体的には、ハウジング5は、筒状部51、背板部52、ホルダ組付部53、ホルダ係止部54、基板組付部55、基板係止部56、及び、潰しリブ部57を含んで構成され、これらが絶縁性を有する樹脂材料等によって一体で形成される。
筒状部51は、ハウジング5を構成する主たる部分であり、軸線方向が第1方向Xに沿う筒状に形成される。筒状部51は、種々の凹凸形状や切り欠き形状が付された筒状に形成される。筒状部51は、内部に一対の電線ホルダ3が嵌合可能な形状に形成される。ここでは、筒状部51は、略矩形筒状に形成される。
背板部52は、筒状部51の第1方向Xの一方側の端部において、当該一方側の端部を閉塞させる隔壁として形成される(図8等も参照)。背板部52は、種々の凹凸形状や切り欠き形状が付された板状に形成される。背板部52は、板厚方向が第1方向Xに沿い、かつ、筒状部51の形状にあわせて第2方向Y、及び、第3方向Zに沿って延在する。この構成により、筒状部51は、第1方向Xに沿って一方側に開口した筒形状となり、当該開口から一対の電線ホルダ3を嵌合可能に構成される。
ホルダ組付部53は、電線ホルダ3が組み付けられ当該電線ホルダ3を保持する部分である。ホルダ組付部53は、筒状部51の内面に凹部状に形成され、第1方向Xの一方側の開口から第1方向Xに沿って背板部52まで延在する。ホルダ組付部53は、第1方向Xに沿って直線レール状に形成される。ホルダ組付部53は、筒状部51の内部において第3方向Zの両側に一対で設けられる。一対のホルダ組付部53は、第3方向Zに沿って互いに対向して設けられる。一対のホルダ組付部53は、それぞれ電線ホルダ3の第3方向Zの端部が筒状部51の第1方向Xの一方側の開口から第1方向Xに沿って挿入されることで、当該電線ホルダ3が組み付けられる。一対のホルダ組付部53は、電線ホルダ3の第3方向Zの端部を第2方向Yに対して位置決めしこれを保持する。
一対のホルダ組付部53は、一対の電線ホルダ3に対応して、第2方向Yに沿って間隔をあけて2組設けられる。ここでは、2組の一対のホルダ組付部53は、筒状部51の内部において、第2方向Yの中央位置を挟んで略対称の位置に設けられる。2組の一対のホルダ組付部53は、第2方向Yに沿って間隔をあけて一対の電線ホルダ3を保持する。一対の電線ホルダ3は、筒状部51の内部において、係止爪部36が第2方向Yの端部側に位置する位置関係で筒状部51の内部に嵌合し、各ホルダ組付部53に保持される。このハウジング5は、各ホルダ組付部53に一対の電線ホルダ3が保持された状態で、筒状部51の内部において、一対の電線ホルダ3の間の空間部が基板保持空間部60(図8等も参照)として機能する。言い換えれば、電線ホルダ3は、筒状部51の内部において、第2方向Yに対して当該基板保持空間部60を挟んで両側に一対で設けられる。
ここで、基板保持空間部60は、ハウジング5の筒状部51の内部において、第2方向Yに対して電線ホルダ3と隣接して位置し第1方向Xに沿って一方側に開口した空間部であり、基板6が挿入され、保持される空間部である。基板保持空間部60の開口は、筒状部51において電線ホルダ3が嵌合される開口と同じ側に位置し、すなわち、基板6も第1方向Xに沿って電線ホルダ3と同じ側から筒状部51の内部に挿入されることとなる。この基板保持空間部60は、後述する屈曲工程において、電線2の芯線導体21の屈曲を許容する空間部としても機能する。
ホルダ係止部54は、電線ホルダ3の係止爪部36を係止する部分である。ホルダ係止部54は、一対の電線ホルダ3の係止爪部36に対応してそれぞれ1つずつ、合計2つ設けられる。ホルダ係止部54は、それぞれ第1方向Xに沿って係止爪部36と対向する位置に設けられる。ここでは、ホルダ係止部54は、筒状部51において、第2方向Yに沿って対向する両壁部にそれぞれ1つずつ設けられる。ホルダ係止部54は、当該壁部に形成されたスリット内に第1方向Xに沿ってアーム状に突出して形成される。ホルダ係止部54は、当該壁部から第1方向Xに沿って筒状部51の開口側に向けて延在する。ホルダ係止部54は、当該壁部に対して、第2方向Yに沿って弾性変形可能に片持ち状に支持される。そして、ホルダ係止部54は、第1方向Xの先端部に突起爪状をなす係止突起部54aが形成されている。ホルダ係止部54は、ホルダ組付部53に対する各電線ホルダ3の嵌合動作に伴って撓みつつ各電線ホルダ3が筒状部51内に完全に嵌合し各ホルダ組付部53に保持された状態で電線ホルダ3の係止爪部36の係止面36aが係止されることで、電線ホルダ3をハウジング5に係止する。
基板組付部55は、基板6が組み付けられ当該基板6を保持する部分である。基板組付部55は、ホルダ組付部53と同様に、筒状部51の内面に凹部状に形成され、第1方向Xの一方側の開口から第1方向Xに沿って背板部52まで延在する。基板組付部55は、ホルダ組付部53と同様に、第1方向Xに沿って直線レール状に形成される。基板組付部55は、筒状部51の内部において一対の電線ホルダ3の間の空間部を挟んで第3方向Zの両側に一対で設けられる。言い換えれば、基板組付部55は、基板保持空間部60(図8等も参照)を挟んで第3方向Zの両側に一対で設けられる。一対の基板組付部55は、第2方向Yに対して2組の一対のホルダ組付部53の間に位置し、第3方向Zに沿って互いに対向して設けられる。ここでは、一対の基板組付部55は、筒状部51の内部において、第2方向Yの略中央位置に設けられる。一対の基板組付部55は、それぞれ基板6の第3方向Zの端部が筒状部51の第1方向Xの一方側の開口から第1方向Xに沿って挿入されることで、当該基板6が組み付けられる。一対の基板組付部55は、基板6の第3方向Zの端部を第2方向Yに対して位置決めしこれを保持する。この結果、一対の基板組付部55は、筒状部51の内部において、各ホルダ組付部53に保持された一対の電線ホルダ3の間の基板保持空間部60に基板6を保持することができる。
基板係止部56は、基板6を係止する部分である。基板係止部56は、各基板組付部55の底面(第2方向Yに沿った内壁面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ設けられる。基板係止部56は、基板組付部55の底面に形成されたスリット内に第1方向Xに沿ってアーム状に突出して形成される。基板係止部56は、当該基板組付部55の底面から第1方向Xに沿って筒状部51の開口側に向けて延在する。基板係止部56は、基板組付部55の底面に対して、第3方向Zに沿って弾性変形可能に片持ち状に支持される。そして、基板係止部56は、第1方向Xの先端部に突起爪状をなす係止突起部56aが形成されている。基板係止部56は、ハウジング5の基板組付部55に対する基板6の挿入動作に伴って撓みつつ基板6が基板組付部55に完全に挿入された状態で係止突起部56aが基板6の端面に係止されることで、基板6をハウジング5に係止する。
潰しリブ部57は、基板組付部55に組み付けられ基板係止部56によって係止された基板6の第2方向Yに沿ったガタ止めを行う部分である。潰しリブ部57は、基板組付部55の側壁面(第3方向Zに沿った内壁面)に突出して形成される。潰しリブ部57は、基板組付部55の側壁面から第2方向Yに沿って略三角形リブ状に突出して形成される。潰しリブ部57は、基板組付部55の側壁面の第1方向Xの中腹部から第1方向Xに沿って背板部52側に延在する。潰しリブ部57は、各基板組付部55において、両側壁面にそれぞれ1つずつ一対で設けられ、当該一対の潰しリブ部57は、第2方向Yに沿って互いに対向して位置する。一対の潰しリブ部57は、それぞれハウジング5の基板組付部55に対する基板6の挿入動作に伴って潰れつつ当該基板6の端部を挟持することで、当該基板6の第2方向Yに沿ったガタツキを規制する。
基板6は、図1に示すように、ハウジング5の内部に保持され複数の電線2と電気的に接続される回路基板である。基板6は、複数の電線2を相互に電気的に接続する電子回路を構成する。基板6は、例えば、いわゆるプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)によって構成される。基板6は、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、紙エポキシ樹脂やセラミック等の絶縁性の材料からなる絶縁層に、銅等の導電性の材料によって配線パターン(プリントパターン)が印刷されることで当該配線パターンによって回路体が構成される。基板6の回路体(配線パターン)は、複数の電線2の芯線導体21を電気的に接続し、要求される機能に応じた回路系統を構成する。基板6の回路体は、例えば、電線2を1対1でジョイントする回路を構成してもよいし、当該電線2を1対複数でジョイントする回路を構成してもよい。これにより、コネクタ1は、当該基板6によって、複数の電線2同士を相互に導通接続することで複数の回路系統のジョイント機能を実現することができる。
本実施形態の基板6は、全体として、略矩形板状に形成され、板厚方向が第2方向Yに沿い、かつ、第1方向X、及び、第3方向Zに沿って延在する。ここでは、基板6は、第1方向Xが短辺方向、第3方向Zが長辺方向となる。そして、基板6は、ハウジング5の各基板組付部55に対して第1方向Xに沿って挿入され、基板保持空間部60の最奥(図14等も参照)まで押し込まれ基板係止部56に係止される。これにより、基板6は、ハウジング5の筒状部51の内部において、一対の電線ホルダ3の間の基板保持空間部60に対して第1方向Xに沿って保持される。このとき、本実施形態の基板6は、ハウジング5の基板組付部55に対する挿入動作に伴って、電線2の芯線導体21を、第2方向Yに沿ってバネ部材7側に押圧する芯線導体押圧具として機能する。
バネ部材7は、図1、図5に示すように、ハウジング5の内部に設けられ第2方向Yに沿って弾性変形可能であり、電線2の芯線導体21を当該第2方向Yに沿って基板6側に押圧する付勢部材である。この構成により、バネ部材7は、芯線導体21と基板6との接触部位において、適正な接圧(接触荷重)を確保するものである。また、このバネ部材7は、ハウジング5のホルダ組付部53に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴って、電線2の芯線導体21を第2方向Yの基板保持空間部60側に屈曲させる部分としても機能する。
バネ部材7は、背板部52から第1方向Xに沿って筒状部51の内部側(言い換えれば、電線ホルダ3側)に向けて突出するようにして設けられる。バネ部材7は、電線ホルダ3の開口部32bから露出した芯線導体21の先端と第1方向Xに沿って対向する位置にそれぞれ形成される(図8等も参照)。バネ部材7は、電線ホルダ3に保持可能な電線2の数に応じて複数設けられる。ここでは、バネ部材7は、第2方向Yに対して基板保持空間部60を挟んで両側において、それぞれ第3方向Zに沿って間隔をあけて3つずつ、合計6つが設けられる。
具体的には、バネ部材7は、基部7a、第1折り返し部7b、及び、第2折り返し部7cを含んで構成され、これらがステンレス等の金属材料等によって一体で形成される。バネ部材7は、例えば、板状の線材を所定の箇所で屈曲加工させることで基部7a、第1折り返し部7b、及び、第2折り返し部7cが形成され、全体として略Jの字形状に形成される。
基部7aは、背板部52から第1方向Xに沿って筒状部51の内部側に突出して延在する部分である。基部7aは、第1方向Xの背板部52側の基端部が当該背板部52に片持ち状に支持され、反対側の先端部が自由端となる。基部7aは、先端部側に第1折り返し部7bが連続して形成される。
第1折り返し部7bは、基部7aの先端部と連続し、第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に折り返され、かつ、基部7aの先端部から第1方向Xに沿って背板部52側に向かうようにして形成される部分である。第1折り返し部7bは、第1方向Xに対して基板保持空間部60側に向けて傾斜するようにして延在する。より詳細には、第1折り返し部7bは、第1方向Xに沿って背板部52側に接近するのにしたがって、第2方向Yに沿って徐々に基板保持空間部60側に接近する傾斜となるように形成される。第1折り返し部7bは、基部7a側とは反対側の端部に第2折り返し部7cが連続して形成される。
第2折り返し部7cは、第1折り返し部7bの基部7a側とは反対側の端部と連続し、第2方向Yに沿って基板保持空間部60側とは反対側に折り返され、かつ、第1折り返し部7bの当該端部から第1方向Xに沿って背板部52側に向かうようにして形成される部分である。第2折り返し部7cは、第1方向Xに対して基板保持空間部60側に向けて傾斜するようにして延在する。ここでは、第2折り返し部7cは、第1折り返し部7bとは反対側に傾斜するようにして形成される。より詳細には、第2折り返し部7cは、第1方向Xに沿って背板部52側に接近するのにしたがって、第2方向Yに沿って徐々に基板保持空間部60側から離間する傾斜となるように形成される。
上記ように構成されるバネ部材7は、全体として、第2方向Yに対して弾性変形可能に片持ち状に支持される。バネ部材7は、ハウジング5や基板6等の各部が相互に組み付けられる前の状態においては、第1折り返し部7b、第2折り返し部7cが第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に向けて突出して位置する。そして、バネ部材7は、後述するようにハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作やハウジング5に対する基板6の挿入動作に伴って第2方向Yに沿って弾性変形可能に構成される(図14等参照)。
そして、バネ部材7は、第1折り返し部7bに傾斜面7baを有する。傾斜面7baは、電線ホルダ3がハウジング5の内部に嵌合した状態で、第1折り返し部7bにおいて電線ホルダ3から露出した芯線導体21と当接可能な面である。ここでは、傾斜面7baは、第1折り返し部7bにおいて第1方向Xに沿って電線ホルダ3と対向する面によって構成される。すなわち、傾斜面7baは、第1折り返し部7bにおいて背板部52側とは反対側の面によって構成される。この傾斜面7baは、上述した第1折り返し部7bの形状に応じて第1方向Xに対して基板保持空間部60側に向けて傾斜する。より詳細には、傾斜面7baは、第1方向Xに沿って背板部52側に接近するのにしたがって、第2方向Yに沿って徐々に基板保持空間部60側に接近する傾斜となるように形成される。
上記のように構成される各傾斜面7baは、電線ホルダ3がハウジング5の内部に嵌合した状態で、当該電線ホルダ3の開口部32bから露出した芯線導体21の先端部21Aと当接する。より詳細には、各傾斜面7baは、電線ホルダ3をハウジング5の内部に嵌合する動作に伴って、芯線導体21の先端部21Aと当接し、この芯線導体21を第2方向Yの一方側、ここでは、基板保持空間部60側に押圧し屈曲させる電線屈曲押圧面として機能する。
次に、図6~図17を参照して、上記のように構成されるコネクタ1の製造方法(コネクタ製造方法)について説明する。以下の説明では、図6のフローチャートを基に説明しつつ、適宜他図を参照する。以下で説明するコネクタ1の製造方法は、作業員が種々の装置、機器、治具等を用いて手作業で行うものとして説明するが、これに限らず、例えば、種々の製造装置によって自動で実行するものであってもよい。
まず、作業員は、保持工程として、各電線ホルダ3に電線2を保持させる(ステップS1)。この場合、作業員は、それぞれ端末に芯線導体21が露出した複数の電線2を、当該芯線導体21を露出させた状態で第1方向Xに沿って電線ホルダ3に保持させる。より具体的には、作業員は、電線2の芯線導体21側の端末を第1方向Xに沿って開口部32aから保持空間部32内に挿入し、芯線導体21を開口部32bから露出させる。作業員は、芯線導体21が開口部32bから露出する正規位置まで当該電線2を押し込んだ後、設置開口部34に電線ホルダカバー4を組み付けることで、当該電線2を保持空間部32内の正規位置で保持し、固定する。
次に、作業員は、屈曲工程として、図7、図8、図9、図10、図11等に示すように、保持工程(ステップS1)の後に、電線ホルダ3を、ハウジング5の内部に第1方向Xに沿って一方側の開口から嵌合させることで、バネ部材7によって電線2の芯線導体21を第2方向Yに沿って屈曲させる(ステップS2)。
より詳細には、作業員は、図7に示すように、電線ホルダ3の第3方向Zの各端部を筒状部51の第1方向Xの一方側の開口から各ホルダ組付部53に挿入し、第1方向Xに沿って押し込むことで、電線ホルダ3をハウジング5に嵌合させる。これにより、ハウジング5に設けられたバネ部材7は、図8に示すように、ハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴って、バネ進出開放部37を介して電線ホルダ3側に進出する。そして、電線ホルダ3に保持された電線2は、このハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴って、芯線導体21の先端部21Aが当該バネ部材7の傾斜面7baに至り当該傾斜面7baと当接する。
そして、作業員は、ハウジング5に対する電線ホルダ3のさらなる嵌合動作に伴って、図9に示すように、電線ホルダ3から露出した芯線導体21を、当該傾斜面7baによって、第2方向Yの一方側、ここでは、基板保持空間部60側に屈曲させ、当該芯線導体21に第1屈曲部21Bを形成する。この場合、電線ホルダ3から露出した芯線導体21は、傾斜面7baによって内倒れ許容開放部38側に屈曲されることで当該第1屈曲部21Bが形成される。
この芯線導体21の第1屈曲部21Bは、上述のように屈曲工程(ステップS2)によって形成される部位であり、傾斜面7baに沿って第2方向Yの基板保持空間部60側に屈曲し延在する部位である(後述する図10も参照)。言い換えれば、屈曲工程(ステップS2)は、ハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴ってバネ部材7によって芯線導体21に当該第1屈曲部21Bを形成する工程である。
またこのとき、電線ホルダ3から露出した芯線導体21は、傾斜面7baによって内倒れ許容開放部38側に屈曲された状態で、先端部21Aが先端押さえ部35の傾斜面35aとバネ部材7の傾斜面7baとの間に挟み込まれるようにして位置する。つまり、屈曲工程(ステップS2)では、作業員は、先端押さえ部35によって、第2方向Yに対して芯線導体21の先端部21Aを位置決めした状態で傾斜面7baによって芯線導体21を屈曲させることとなる。これにより、この芯線導体21は、先端部21Aが第2方向Yに対して位置決めされ、例えば、意図しない方向に屈曲したり金属素線がばらけたりすることが規制される。
そして、作業員は、この状態から、ハウジング5に対する電線ホルダ3のさらなる嵌合動作に伴って、バネ部材7の第1折り返し部7bを第2方向Yに沿って基部7a側に撓ませつつ、図10に示すように、第2折り返し部7cが先端押さえ部35を乗り越える位置まで、バネ部材7を電線ホルダ3側に進出させる。バネ部材7は、第2折り返し部7cが先端押さえ部35を乗り越える位置まで電線ホルダ3側に進出すると、第1折り返し部7bが芯線導体21の中腹部分を第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に押圧しながら当該基板保持空間部60側に突出した位置に復帰する。
このとき、芯線導体21は、上述したように、先端部21Aが先端押さえ部35によって位置決めされた状態であるので、この第1折り返し部7bの基板保持空間部60側への復帰に伴って中腹部分に第2屈曲部21Cが形成される。
この芯線導体21の第2屈曲部21Cは、第1屈曲部21Bと同様に、上述のように屈曲工程(ステップS2)によって形成される部位であり、第1方向Xに対して第1屈曲部21Bより先端側において第2折り返し部7cに沿って第1屈曲部21Bとは反対側に屈曲し延在する部位である。言い換えれば、屈曲工程(ステップS2)は、ハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴ってバネ部材7によって芯線導体21に当該第2屈曲部21Cを形成する工程でもある。
電線2は、この屈曲工程(ステップS2)後の状態では、図10、図11に示すように、芯線導体21が第1屈曲部21Bで傾斜面7baに沿って第2方向Yの基板保持空間部60側に屈曲し、かつ、第2屈曲部21Cで第2折り返し部7cに沿って第2方向Yの基板保持空間部60側とは反対側に屈曲した形状となる。この結果、芯線導体21は、ハウジング5への各電線ホルダ3の嵌合後で、かつ、基板6の挿入前の状態において、バネ部材7によって中腹部分が第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に押圧され第1屈曲部21B、第2屈曲部21Cが形成されると共に、これらが基板保持空間部60側に向けて突出して位置する。
なお、この第2屈曲部21Cは、後述する基板挿入工程(ステップS3)後の状態では、基板6に沿って第1屈曲部21Bとは反対側に屈曲し当該基板6と当接して導通接続される部分となる。また、芯線導体において上述した先端部21Aは、第1方向Xに対してこの第2屈曲部21Cより先端側に位置する部分となる。
各電線ホルダ3は、筒状部51内に完全に嵌合し各ホルダ組付部53に保持された状態で係止爪部36の係止面36aがホルダ係止部54に止されることで、ハウジング5に係止される。
なお、以上で説明した図7、図8、図9、図10、図11は、便宜的に、一対の電線ホルダ3を同時にハウジング5に嵌合させるように図示しているがこれに限らず、電線ホルダ3を1つずつハウジング5に嵌合させるようにしてもよい。
次に、作業員は、基板挿入工程として、図12、図13、図14、図15等に示すように、屈曲工程(ステップS2)の後に、基板6を、ハウジング5の内部に第1方向Xに沿って一方側の開口から挿入させることで基板6によって電線2の芯線導体21を第2方向Yに沿って押し戻す(ステップS3)。
より詳細には、作業員は、図12に示すように、基板6の第3方向Zの各端部を筒状部51の第1方向Xの一方側の開口から各基板組付部55に挿入し、治具等を用いて当該基板6を第1方向Xに沿って押し込む。これにより、作業員は、筒状部51の内部において、一対の電線ホルダ3の間に形成された基板保持空間部60に対して基板6を挿入する。これにより、基板6は、図13に示すように、基板保持空間部60に対する当該基板6の挿入動作に伴って、第1方向Xの端部が芯線導体21に至り当該当該芯線導体21と当接する。ここでは、基板6の第1方向Xの端部は、芯線導体21において、第1屈曲部21Bより先端側に位置し、かつ、基板保持空間部60に突出している部位と当接する。
そして、作業員は、基板保持空間部60に対する基板6のさらなる挿入動作に伴って、図14に示すように、屈曲工程(ステップS2)によって第2方向Yの一方側(基板保持空間部60側)に屈曲されバネ部材7によって第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に押圧された芯線導体21を、当該基板6によって、バネ部材7と共に第2方向Yの他方側、すなわち、基板保持空間部60側とは反対側に押し戻し当該基板6と当接させて導通接続させる。本実施形態の基板挿入工程(ステップS3)では、作業員は、屈曲工程(ステップS2)によって第2方向Yの基板保持空間部60側に屈曲されバネ部材7によって第2方向Yに沿って基板保持空間部60側に押圧され、かつ、先端押さえ部35によって先端部21Aが第2方向Yに対して位置決された状態で、基板6によって、芯線導体21の中腹部分を、バネ部材7と共に第2方向Yの基板保持空間部60側とは反対側に押し戻す。この結果、第2屈曲部21Cは、図14、図15に示すように、第1方向Xに対して第1屈曲部21Bより先端側において基板6に沿って第1屈曲部21Bとは反対側に屈曲し当該基板6と当接して導通接続される部位を構成する。
電線2の芯線導体21は、この基板挿入工程(ステップS3)後の状態では、先端部21Aが先端押さえ部35で位置決めされた状態で、第1屈曲部21Bで傾斜面7baに沿って第2方向Yの基板6側に屈曲して延在し、かつ、第2屈曲部21Cで基板6に沿って第1屈曲部21Bとは反対側に屈曲して延在した形状となる。そして、電線2は、芯線導体21の第2屈曲部21Cを含む部分が基板6との接点部となり、当該第2屈曲部21Cを介して基板6の回路体と導通接続される。そして、電線2は、第2屈曲部21Cが基板6と当接して導通接続された状態で、第2方向Yに沿って弾性変形されたバネ部材7の付勢力によって第2屈曲部21Cが基板6に押圧されることで、芯線導体21と基板6との導通部位において、適正な接圧(接触荷重)を確保することができる。
なお、基板6は、図16に示すように、基板保持空間部60まで完全に押し込まれ先端押さえ部35の端面と当接した状態で基板係止部56に係止されることで、当該基板保持空間部60に保持される。そして、基板6は、基板係止部56によって係止され基板保持空間部60に保持された状態で、第3方向Zの端部が一対の潰しリブ部57によって挟持されることで、第2方向Yに沿ったガタツキが規制される。
図17は、上記の製法方法によって製造されたコネクタ1の完成品を表している。コネクタ1は、上記のように、電線ホルダ3に保持された複数の電線2の芯線導体21が基板6の回路体と導通接続されることで、基板6を介して複数の電線2を相互に導通接続し、複数の電線2同士を相互に導通接続することができる。
以上で説明したコネクタ1は、基板6を介して複数の電線2の芯線導体21を相互に導通接続し、複数の電線2同士を相互に導通接続することができる。このような構成にあって、コネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、屈曲工程(ステップS2)において、ハウジング5に対する電線ホルダ3の嵌合動作に伴ってバネ部材7の傾斜面7baによって電線2の芯線導体21に第1屈曲部21Bを形成することができる。そして、コネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、基板挿入工程(ステップS3)において、基板保持空間部60に対する基板6の挿入動作に伴って基板6によって芯線導体21をバネ部材7と共に第2方向Yに沿って押し戻し弾性変形させつつ当該基板6と当接させて導通接続させる。これにより、電線2の芯線導体21は、第1屈曲部21Bで傾斜面7baに沿って基板6側に屈曲し、かつ、第2屈曲部21Cで基板6に沿って屈曲した形状となると共に、第2方向Yに沿って弾性変形されたバネ部材7の付勢力によって第2屈曲部21Cが基板6に押圧される。この構成により、このコネクタ1は、電線2の芯線導体21と基板6との導通部位において、バネ部材7の付勢力によって適正な接圧(接触荷重)を確保することができる。
この結果、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法は、事前に芯線導体21を屈曲加工することなく、電線ホルダ3の嵌合動作、及び、基板6の挿入動作を利用して自動的に芯線導体21を屈曲させ電線2と基板6とを導通接続することができる。その上で、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、芯線導体21と基板6との導通部位においてバネ部材7の付勢力によって適正な接圧を確保し、芯線導体21と基板6との接続状態を安定化し、適正な接続信頼性を確保することができる。
またこのとき、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、基板挿入工程(ステップS3)において、ハウジング5に対して、基板6を電線ホルダ3の嵌合方向と同じ方向に沿って挿入する。つまり、基板保持空間部60の開口は、筒状部51において電線ホルダ3が嵌合される開口と同じ側に位置し、基板6も第1方向Xに沿って電線ホルダ3と同じ側から筒状部51の内部に挿入される。これにより、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、第1屈曲部21Bが形成された後、ハウジング5に対してさらに基板6を挿入する際に、基板6が芯線導体21の先端に引っ掛かってしまうことを抑制することができる。この結果、コネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、芯線導体21を基板6側とは異なる方向に折り曲げてしまったり、芯線導体21の先端を傷つけてしまったりすることを抑制することができるので、電線2と基板6とを適正に導通接続することができる。
以上のように、コネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法は、組み付け作業性を向上し、適正な組み付け性を確保することができ、例えば、加工費等を抑制し、製造コストを抑制することができる。
また、以上で説明したコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、芯線導体21の先端部21Aが先端押さえ部35によって位置決めされた状態で屈曲工程(ステップS2)が行われる。この結果、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、屈曲工程(ステップS2)において、例えば、芯線導体21が意図しない方向に屈曲したり金属素線がばらけたりすることを規制することができる。これにより、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、例えば、芯線導体21が絶縁壁部として機能する隔壁部33を乗り越えて隣の芯線導体21と接触、干渉することを抑制することができる。この結果、このコネクタ1、及び、当該コネクタ1の製造方法では、適正な組み付け性を確保した上で、適正な導通性能を確保することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るコネクタ、及び、コネクタ製造方法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、一対の電線ホルダ3は、このハウジング5に嵌合した状態で、第3方向Zに対して、電線2の保持位置が相互に略一致しているものとして説明したがこれに限らない。
図18に示す変形例に係るコネクタ201が備える一対の電線ホルダ3は、ハウジング5に嵌合した状態で、第3方向Zに対して、電線2の保持位置が相互にずれている。言い換えれば、一対の電線ホルダ3は、ハウジング5の内部において、第1方向X周りに相互に180°回転させた位置関係となるように対向配置された状態で、第3方向Zに対して、保持空間部32の位置が相互にずれている。ここでは、コネクタ201は、例えば、第3方向Zに対して保持空間部32の位置が相互にずれた位置関係となるように当該一対の電線ホルダ3がハウジング5に嵌合される。また、コネクタ201は、バネ部材7等の位置もこれに応じて適宜調整されている。
この構成により、コネクタ201、及び、当該コネクタ201の製造方法では、屈曲工程(ステップS2)において、バネ部材7の傾斜面7baによって芯線導体21を屈曲させる際に、隣り合う芯線導体21同士が干渉することを確実に抑制することができる。
以上の説明では、電線ホルダ3は、図1等において、全ての保持空間部32に電線2が設けられるものとして説明したがこれに限らない。電線ホルダ3は、要求される回路系統に応じて一部の保持空間部32に電線2を設けずブランクとされてもよい。なおこの場合、基板6は、第2方向Yの両面に接触する芯線導体21の数が異なることで当該基板6に作用する接圧がアンバランスになっても、第3方向Zの端部が一対の潰しリブ部57によって挟持されることで、第2方向Yに沿ったガタツキを規制することができる。
以上の説明では、電線ホルダ3は、先端押さえ部35を含んで構成されるものとして説明したがこれに限らず、先端押さえ部35を有さない構成であってもよい。
以上の説明では、電線ホルダ3は、第2方向Yに対向して一対で設けられるものとしてとしたがこれに限らない。電線ホルダ3は、1つであってもよい。
本実施形態に係るコネクタ、及び、コネクタ製造方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。