ここで、上述した移送ユニットは、主に弾性部材を利用してテザーを巻き取るための回転トルクを発生させているが、巻き取り時にテザーが移送ユニット等に衝突する衝撃を低減するために、テザーの巻き取り速度を減速させるダンパ機構を組み込むことが考えられる。しかしながら、このようなダンパ機構を組み込んだ場合、例えばテザーの引き出し長さを所定長さに維持するような制御方法では、テザーの微量な繰り出しと巻き取りとが繰り返し行われることになるため、ダンパ機構の動作頻度が増大し、ダンパ機構へ過度な負担がかかることが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、テザーの巻き取り速度を減速させるダンパ機構の負担を軽減することにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)外力によって引き出されるテザーが所定の引き出し長さを維持するように前記テザーに追従して走行する運搬車の内部に、前記テザーを収容するための巻き取りユニットであって、前記テザーが巻き付けられるテザードラムと、前記テザーが巻き取られる巻き取り回転方向に前記テザードラムを付勢するための回転付勢手段と、前記巻き取り回転方向への回転時に前記テザードラムの回転速度を減速させるように配置されたダンパ機構と、を含み、該ダンパ機構は、少なくとも1つのロータリダンパと、前記テザードラムから受ける前記巻き取り回転方向の回転トルクを伝達するワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチから前記少なくとも1つのロータリダンパに対して、所定回転角度のあそびを介して前記巻き取り回転方向の回転トルクを伝達する回転伝達部と、を含むテザー巻き取りユニット。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、外力によって引き出されるテザーが所定の引き出し長さを維持するようにテザーに追従して走行する運搬車の内部に、テザーを収容するためのものであって、テザードラム、回転付勢手段及びダンパ機構を含んでいる。テザードラムは、実際にテザーが巻き付けられる部位であって、回転付勢手段は、そのテザードラムに対して、テザーが巻き取られる巻き取り回転方向への付勢力を付与するものである。すなわち、運搬車の利用者によってテザーが引き出されることで、テザードラムからテザーが繰り出され、回転付勢手段から受ける付勢力によって、テザードラムにテザーが巻き取られるものである。
ダンパ機構は、テザードラムがテザーの巻き取り回転方向へ回転する際に、テザードラムの回転速度を減速させるように配置されるものであり、詳しくは、少なくとも1つのロータリダンパ、ワンウェイクラッチ及び回転伝達部を含んでいる。ロータリダンパは、実際に回転速度を減速させるための減速力を発生するものであり、ワンウェイクラッチは、テザードラムから巻き取り回転方向の回転トルクを受けるように設置される。すなわち、ワンウェイクラッチは、テザードラムが巻き取り回転方向に回転するときには、その回転トルクを受けてテザードラムと共に回転し、回転伝達部へ回転トルクを伝達する。又、ワンウェイクラッチは、テザードラムが巻き取り回転方向と反対の繰り出し回転方向に回転するときには、ワンウェイクラッチの回転を妨げるもの(回転負荷となるもの)がある状態で空回りし、ワンウェイクラッチの回転を妨げるものがない状態でテザードラムと共回りするものである。
回転伝達部は、ワンウェイクラッチから受ける巻き取り回転方向の回転トルクを、少なくとも1つのロータリダンパに対して伝達するものであり、この際、回転トルクをすぐに伝達するのではなく、所定回転角度のあそびを介して伝達する。すなわち、回転伝達部は、ワンウェイクラッチがテザードラムから巻き取り回転方向の回転トルクを受けて回転し始め、そこから所定回転角度回転した後に、その回転トルクをロータリダンパへ伝達するものである。これにより、例えば小刻みにテザーの出し入れが繰り返されても、テザー引き出し量の微量な変化は所定回転角度のあそびにより吸収されるため、少なくとも1つのロータリダンパに回転トルクが伝わることはない。更に、ワンウェイクラッチは、テザーの巻き取り方向及び繰り出し方向の何れの回転方向であっても、所定回転角度のあそびの間は、テザードラムと共回りするのみであるため、直接的に回転負荷がかかることはない。従って、本項に記載のテザー巻き取りユニットは、ダンパ機構への負担が軽減されることとなる。
(2)上記(1)項において、前記回転伝達部は、前記ワンウェイクラッチの回転に伴って旋回するように前記ワンウェイクラッチに設けられ、前記巻き取り回転方向へ向いた第1主面及びその反対側の第2主面を備えた第1突出板と、前記少なくとも1つのロータリダンパ及び前記ワンウェイクラッチと同軸上において、前記少なくとも1つのロータリダンパの制動力を受けるように該ロータリダンパに接続された筒状部と、第1受面及びその反対側の第2受面を備え、前記第1突出板が前記巻き取り回転方向へ旋回したときに前記第1受面が前記第1主面と当接し、前記第1突出板が前記巻き取り回転方向と反対方向へ旋回したときに前記第2受面が前記第2主面と当接するように、前記筒状部に設けられた第2突出板と、を含むテザー巻き取りユニット。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、ダンパ機構の回転伝達部が、第1突出板、筒状部及び第2突出板を含むものであり、第1突出板は、ワンウェイクラッチの回転に伴って旋回するようにワンウェイクラッチに設けられ、巻き取り回転方向へ面した第1主面と、その反対側の第2主面とを備えている。筒状部は、ダンパ機構の少なくとも1つのロータリダンパ及びワンウェイクラッチと同軸上において、少なくとも1つのロータリダンパの制動力を受けるようにロータリダンパに接続される。すなわち、筒状部は、互いに対しての回転速度が減速される2つの部位で構成されるロータリダンパの、一方の部位に対して固定される。第2突出板は、筒状部に設けられるものであり、第1突出板が巻き取り回転方向へ旋回したときに第1主面と当接する第1受面と、第1突出板が繰り出し回転方向へ旋回したときに第2主面と当接する第2受面とを備えている。
上記のような構成により、まず、第1突出板の第2主面と第2突出板の第2受面とが当接した状態において、第1突出板が設けられたワンウェイクラッチが、テザードラムから回転トルクを受けて巻き取り回転方向へ回転すると、第1突出板が巻き取り回転方向へ旋回し始める。そして、第1突出板が、360°から第1突出板及び第2突出板の厚み分の角度を除いた角度旋回すると、第1突出板の第1主面が第2突出板の第1受面と当接し、ワンウェイクラッチの巻き取り回転方向の回転トルクが、第1突出板及び第2突出板を介して筒状部へ伝達される。すると、筒状部は、ロータリダンパの制動力を受けながら巻き取り回転方向へ回転し始め、その制動力がワンウェイクラッチを介してテザードラムへ伝わり、テザードラムが減速される。
その後、テザードラムが巻き取り回転方向と反対の繰り出し回転方向へ回転すると、ワンウェイクラッチがテザードラムと共に回転し、第1突出板の第1主面と第2突出板の第1受面とが当接した状態から、第1突出板が繰り出し回転方向へ旋回し始める。そして、第1突出板が、360°から第1突出板及び第2突出板の厚み分の角度を除いた角度旋回すると、第1突出板の第2主面が第2突出板の第2受面と当接し、第2突出板及び筒状部を介して、ロータリダンパの負荷が第1突出板にかかる。すると、第1突出板が設けられたワンウェイクラッチは、テザードラムに対して空回りするため、テザードラムへロータリダンパの制動力は伝わらない。従って、本項に記載のテザー巻き取りユニットは、360°から第1突出板及び第2突出板の厚み分の角度を除いた回転角度のあそびを有する回転伝達部により、ダンパ機構への負担の軽減を実現するものとなる。
(3)上記(1)(2)項において、前記ダンパ機構は、前記少なくとも1つのロータリダンパとして、互いに対しての回転速度が減速される2つの部位を有するロータリダンパを2つ含み、該2つのロータリダンパは、双方のロータリダンパの一方の部位同士が共に回転するように接続されると共に、一方のロータリダンパの他方の部位が回転不可に設置され、他方のロータリダンパの他方の部位が前記回転伝達部に接続されるテザー巻き取りユニット(請求項1、3)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、ダンパ機構が2つのロータリダンパを含んでおり、これらのロータリダンパの各々が、互いに対しての回転速度が減速される2つの部位を有している。そして、2つのロータリダンパは、双方のロータリダンパの一方の部位同士が共に回転するように、それら一方の部位間が接続される。更に、一方のロータリダンパの他方の部位が、例えば巻き取りユニットのハウジング等に対して回転不可に設置され、他方のロータリダンパの他方の部位が、ワンウェイクラッチから回転トルクを受ける回転伝達部に接続されるものである。このような構成により、一方のロータリダンパの2つの部位間と、他方のロータリダンパの2つの部位間との2箇所が、回転可動部として機能するようになるため、それらと同性能のロータリダンパを1つだけ用いた場合と比較して、制動力を受けるテザードラムの回転速度が2倍になる。従って、例えば市販品のロータリダンパのような、減速力の調整ができないロータリダンパを用いる場合であっても、ギヤ比等を利用した複雑な構成を導入することなく、テザードラムの回転速度が速められるものとなる。
(4)上記(1)から(3)項において、前記所定回転角度のあそびの間に前記テザーが巻き取られる巻き取り速度に基づいて、前記テザーの異常を検出する異常検出部を含むテザー巻き取りユニット(請求項2、3、4)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、例えば運搬車の利用者により引き出されていたテザーの引張力が突然なくなる場合のような、テザーの異常を検出する異常検出部を含むものであり、この異常検出部は、ダンパ機構の回転伝達部が有する所定回転角度のあそびの間に、テザーが巻き取られる巻き取り速度に基づいて、テザーの異常を検出する。すなわち、テザーを引き出していた引張力が突然なくなると、回転伝達部が有する所定回転角度のあそびの間は、ロータリダンパの制動力を受けることなく、回転付勢手段からの付勢力のままに、テザードラムが巻き取り回転方向に回転し、その回転速度でテザーが巻き取られることになる。これに対し、通常時は、例えば運搬車の利用者が歩行中に突然立ち止まったとしても、回転伝達部が有する所定回転角度のあそびの間は、テザーの引き出し長さを所定長に維持するように利用者の歩行速度に合わせて走行していた運搬車の走行速度によって、テザーが巻き取られることになる。
従って、通常時とテザーの異常時とで、所定回転角度のあそびの間にテザーが巻き取られる速度が異なることになるため、その速度差を利用して、異常検出部がテザーの異常を検出するものである。これにより、ロータリダンパを利用してテザーの巻き取り速度を減速させる構造でありながらも、その減速が異常検出の弊害になることなく、テザーの異常が検出されるものとなる。なお、テザーの引張力が突然なくなるような異常は、例えば、利用者により把持されるテザーハンドルがテザーの残りの部位から分離する分離構造を備えた上で、運搬車とテザーハンドルとの間を異物が横切ったりテザーの引っ張り過ぎ等に起因して、テザーハンドルがテザーの残りの部位から分離した場合や、そのような分離構造を備えずとも引き出されたテザーが利用者の手から離れてしまった場合等に、起こり得るものである。
(5)上記(1)から(4)項において、前記テザーの引き込み位置を定める引き込み部と、前記テザーが前記引き込み部から前記テザードラムへと至るまでの間に、前記テザードラムの軸方向視で、前記引き込み部を通って前記テザードラムの巻き付け部の外周に接する仮想直線と等しいルート、或いは、前記仮想直線よりも前記テザードラムの回転軸に近付くルートで前記テザーが配線されるように、前記テザーを付勢してテンションをかけるテンション付加部材と、を含むテザー巻き取りユニット(請求項5)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、ユニットの内部に引き込まれるテザーの引き込み位置を定める引き込み部と、テザーがその引き込み部からテザードラムへと至るまでの間に、テザーを付勢してテンションをかけるテンション付加部材とを更に含むものである。具体的に、テンション付加部材は、テザードラムの軸方向視で、引き込み部を通ると共にテザードラムの巻き付け部の外周に接する仮想直線と等しいルートか、或いは、そのような仮想直線よりもテザードラムの回転軸に近付くルートでテザーが配線されるように、テザーにテンションをかける。これにより、テザーの巻き取り時に、ダンパ機構による回転速度の減速の影響で、テザーが緩むような力が作用したとしても、テンション付加部材によりテザードラムの回転軸に近付くようにテザーが付勢されていることで、テザーの膨らみが抑制され、テザーがテザードラムから外れることが防止されるものである。
(6)上記(1)から(5)項のいずれか1項に記載のテザー巻き取りユニットと、前記テザーを前記所定の引き出し長さに維持しながら前記テザーに追従して走行するように、進行方向及び進行速度を制御する走行制御部と、を含む運搬車(請求項6)。
本項に記載に運搬車は、上記(1)から(5)項のいずれか1項に記載のテザー巻き取りユニットを備えるものであり、更に、走行制御部を含んでいる。走行制御部は、運搬車の内部から引き出されたテザーを所定の引き出し長さに維持しながら、テザーに追従して走行するように、運搬車の進行方向及び進行速度を制御するものである。このような構成により、上記(1)から(5)項のテザー巻き取りユニットと同等の作用を奏しながらも、テザーを介した容易な操作方法で、人力に依らない荷物の運搬を実現し、荷物の運搬作業の負担を軽減するものである。
本発明は上記のような構成であるため、テザーの巻き取り速度を減速させるダンパ機構の負担を軽減することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1及び図2は、テザー71に追従して走行する運搬車70(図9及び図10参照)の内部にテザー71を収容するための、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10の外部構造及び内部構造の夫々を示している。まず、図1を確認すると、テザー巻き取りユニット10は、複数の構成要素を収容するハウジング11を含み、このハウジング11は、図1における左右方向と直交する方向の断面が略L字状を成す仕切り部材12に対し、図1(b)における上下方向から第1カバー13及び第2カバー14が装着された構成を有している。
換言すれば、ハウジング11の内部は、第1カバー13で覆われる第1空間16と、第2カバー14で覆われる第2空間17とに、仕切り部材12によって分割されている。又、図1(b)で確認できるように、第1カバー13には、第1空間16に設置されるテザー71の引き込み部47に対応する位置に、図1(b)の左右方向に延在する第1スリット15が設けられている。更に、第1カバー13には、図1(c)に示すように、第1空間16からハウジング11の外側へとケーブル21を通すための、第2スリット22が設けられている。
図2を参照すると、仕切り部材12から第1カバー13及び第2カバー14が取り外された状態が示されており、ハウジング11の内部に配置される構成要素の多くが、仕切り部材12に取り付けられている。具体的に、第1カバー13により覆われる第1空間16には、テザー71をテザー巻き取りユニット10の内部に引き込むための引き込み部47と、テザー71が巻き付けられるテザードラム24と、テザー71にテンションを付加するテンション付加部材48とが、仕切り部材12に取り付けられて設置されている。又、テザードラム24を覆うドラムカバー19と、引き込み部47の近傍に設置された補強材20とが、第1空間16において仕切り部材12に取り付けられている。なお、図2では、図示の便宜上、仕切り部材12の一部とドラムカバー19とを、二点鎖線で透過させたイメージで示している。
一方、第2カバー14により覆われる第2空間17には、回転付勢手段26、回転トルク伝達機構28、基板18及びギヤ構造体61が、仕切り部材12に取り付けられて設置されている。回転付勢手段26は、テザードラム24に対して、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向(図2(c)における左回り方向)の回転付勢力を付与するためのものであり、回転トルク伝達機構28は、回転付勢手段26により発生される巻き取り回転方向の回転トルクを、テザードラム24へ伝達するものである。回転トルク伝達機構28の内部には、ダンパ機構34が設けられている。基板18は、テザー巻き取りユニット10の制御を行う電子回路が搭載されたものであって、本実施形態では、テザー71の異常を検出する異常検出部46と、テザー71の引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段52とが、基板18に組み込まれている。
ギヤ構造体61は、本実施形態において、引き出し長さ検出手段52により、テザー71の引き出し長さを検出する際に用いられる回転体53として用いられるものである。なお、基板18にはケーブル21が接続されており、このケーブル21は、運搬車70に搭載される他の機器と信号のやり取りを行うためのものである。ケーブル21は、基板18が設置された第2空間17から、仕切り部材12に設けられた挿通穴12aを通って第1空間16へと至り、第1空間16を経由して、図1(c)に示した第2スリット22を通って外部まで延びている。又、ケーブル21と同じルートを通って、テザー巻き取りユニット10で使用する電力を取り込むための電力ケーブルが配線されてもよい。
次に、図3には、図2に示したテザー巻き取りユニット10の構成要素のうち、第2空間17に設置される略筒状の回転トルク伝達機構28と、第1空間16に設置されるテザードラム24とを図示している。図2(b)及び図3で確認できるように、回転トルク伝達機構28とテザードラム24とは、共に回転するように、仕切り部材12を貫通する同じ軸に接続されている。テザードラム24は、図3での図示は省略するテザー71が巻き付けられる巻き付け部25を有している。回転トルク伝達機構28には、図2に示した回転付勢手段26から延びるワイヤ27が巻き付け収容可能に接続されており、ワイヤ27が回転付勢手段26により引っ張られることで、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向D1の付勢力が、回転トルク伝達機構28を経由してテザードラム24へ付与されるようになっている。なお、回転トルク伝達機構28及びテザードラム24の、テザードラム24からテザー71が繰り出される繰り出し回転方向D2への回転は、主に、運搬車70の利用者Uによってテザー71が引き出される際に行われる。又、回転トルク伝達機構28の外周の一部には、複数のギヤ歯を有する大径ギヤ30が設けられており、回転トルク伝達機構28の内部には、上述したように、回転トルク伝達機構28の巻き取り回転方向D1への回転速度を減速させるためのダンパ機構34が設けられている。
より詳しくは、ダンパ機構34は、図4に示すように、本実施形態では2つのロータリダンパ35と、ワンウェイクラッチ39と、回転伝達部40とを備えており、これらは何れも同軸上に配置されている。ロータリダンパ35の各々は、双方向ロータリダンパであり、図5(a)に示すように、ギヤ型の第1部位36と、2つの突出部37aを有する第2部位37とを備え、第1部位36と第2部位37とは、互いに対しての何れの回転方向への回転速度も減速されるようになっている。そして、このような2つのロータリダンパ35は、図5(b)に示すように、本実施形態では、第2部位37の突出部37a同士が接続部材38により接続されている。このため、2つのロータリダンパ35の第2部位37が共に回転し、図5(b)における下方のロータリダンパ35の第1部位36及び第2部位37の間と、図5(b)における上方のロータリダンパ35の第2部位37及び第1部位36の間との2箇所が、回転負荷がかかる回転可動部として機能する。
図4に戻り、図中上方のロータリダンパ35の第1部位36は、図1に示した第2カバー14等に対して回転不可に設置され、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36は、共に回転するように回転伝達部40と接続されている。これにより、図中上方のロータリダンパ35の第1部位36に対して、2つのロータリダンパ35の第2部位37が共に回転し、2つのロータリダンパ35の第2部位37に対して、回転伝達部40が回転するようになる。ワンウェイクラッチ39は、軸部材29から受ける巻き取り回転方向D1の回転トルクのみを回転伝達部40へ伝達するように、回転トルク伝達機構28の軸部材29と回転伝達部40との間に設置されている。ワンウェイクラッチ39には、巻き取り回転方向D1へ向いた第1主面41aと、繰り出し回転方向D2へ向いた第2主面41bとを備える第1突出板41が形成されている。この第1突出板41は、回転伝達部40の一部を構成するものであって、本実施形態では、ワンウェイクラッチ39の外周方向と、図中上方との双方へ突出している。
回転伝達部40は、上述した第1突出板41と、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36に接続された筒状部42と、この筒状部42に形成され、第1受面43a及び第2受面43bを有する第2突出板43とを含んでいる。本実施形態において、筒状部42は、ワンウェイクラッチ39と略同じ外径の大径部42aと、大径部42aよりも外径が小さい小径部42bとを有する2段構造を成している。そして、図中下方に小径部42bが位置することで、大径部42aとワンウェイクラッチ39との間であって小径部42bの外周側に、リング状の空転空間44が形成されている。又、本実施形態において、第2突出板43は、筒状部42の大径部42a及び小径部42bの双方から外周方向へ突出しており、第1受面43aが繰り出し回転方向D2へ向き、第2受面43bが巻き取り回転方向D1へ向いている。更に、第2突出板43の一部と第1突出板41の一部との双方が、空転空間44に位置している。
上記のような構成のため、回転トルク伝達機構28の軸部材29が巻き取り回転方向D1へ回転すると、この回転トルクを受けたワンウェイクラッチ39が巻き取り回転方向D1へ回転し、やがて図4に示すように、ワンウェイクラッチ39に設けられた第1突出板41の第1主面41aの一部が、筒状部42に設けられた第2突出板43の第1受面43aの一部と当接する。更に、そのままワンウェイクラッチ39が巻き取り回転方向D1へ回転すると、第1突出板41及び第2突出板43を介して筒状部42が巻き取り回転方向D1へ回転する。このとき、筒状部42は、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36に接続されているため、直列に接続された2つのロータリダンパ35の制動力を受けながら、巻き取り回転方向D1へ回転する。
一方、回転トルク伝達機構28の軸部材29が、巻き取り回転方向D1と反対の、テザー71が繰り出される繰り出し回転方向D2へ回転すると、ワンウェイクラッチ39は、第1突出板41の第2主面41bが、第2突出板43の第2受面43bに当接するまで、軸部材29と共に繰り出し回転方向D2へ回転する。そして、ワンウェイクラッチ39は、第1突出板41の第2主面41bの一部が第2突出板43の第2受面43bの一部に当接すると、第1突出板41と第2突出板43と筒状部42とを介して、2つのロータリダンパ35の回転負荷を受け、軸部材29との共回りを停止する。更に、そのまま軸部材29が繰り出し回転方向D2へ回転すると、ワンウェイクラッチ39に対して軸部材29が空回りする状態になる。
すなわち、ダンパ機構34では、軸部材29の回転方向が繰り出し回転方向D2から巻き取り回転方向D1へ切り替わる際に、ワンウェイクラッチ39に設けられた第1突出板41の第1主面41aが、筒状部42に設けられた第2突出板43の第1受面43aに当接するまでの間は、軸部材29の回転トルクがロータリダンパ35へ伝わらない、所謂「あそび」の期間となる。この回転伝達部40の「あそび」は、最大で、第1突出板41の第2主面41bと第2突出板43の第2受面43bとが当接した状態から、図4に示すような、第1突出板41の第1主面41aと第2突出板43の第1受面43aとが当接するまでの期間となる。より具体的に、「あそび」の最大の大きさは、リング状の空転空間44における第1突出板41の最大旋回角度で定められ、それは、360°から第1突出板41及び第2突出板43の厚み分の角度を除いた旋回角度(同大きさのワンウェイクラッチ39の回転角度)である。
続いて、図6には、図2(c)に示した第1空間16に設置されるテザードラム24、引き込み部47及びテンション付加部材48の周辺を示している。図示のように、テザー71は、図2にも示した引き込み部47により引き込み位置が定められて第1空間16内に引き込まれ、仕切り部材12に立設された2本のスタッド49の間を通り、更にテンション付加部材48に接するようなルートを通った後、テザードラム24の巻き付け部25(図3も参照)に巻き付けられている。本実施形態において、テンション付加部材48は、仕切り部材12に立設されたスタッド48aと、スタッド48aの頭部近傍に取り付けられたカラー48bとで構成されており、カラー48bと仕切り部材12との間において、スタッド48aの軸部に接するように、テザー71が配線されている。
又、本実施形態のテンション付加部材48は、図6に示されているようなテザードラム24の軸方向視で、テザー71が引き込み部47からテザードラム24へと至るまでの間に、引き込み部47を通ってテザードラム24の巻き付け部25の外周に接する仮想直線VLと等しいルートで配線されるように、テザー71に対してテンションをかけるような位置に設置されている。或いは、テンション付加部材48は、図6に二点鎖線で示されているような、仮想直線VLよりもテザードラム24の回転軸S24に近付くルートでテザー71が配線されるように、テザー71を付勢してテンションをかける位置に設置されていてもよい。更に、テンション付加部材48は、図6に示されている位置から白抜き矢印で示している方向に、例えばスタッド48aがスライド移動される長穴が設けられることで、位置調整が可能なものであってもよい。
次に、図7は、図2に示したテザー巻き取りユニット10の構成要素のうち、第2空間17に設置される回転付勢手段26、回転トルク伝達機構28及びギヤ構造体61を図示している。上述したように、回転トルク伝達機構28には、回転付勢手段26から延びるワイヤ27が接続されており、回転付勢手段26によってワイヤ27が引っ張られることで、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)に対して巻き取り回転方向D1の付勢力が付与されている。そして、この付勢力よりも強い力でテザー71が引き出されると、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)が繰り出し回転方向D2へ回転する。
回転トルク伝達機構28の外周に設けられた大径ギヤ30は、ギヤ構造体61の外周に設けられた小径ギヤ62と噛み合っており、ギヤ構造体61は、回転トルク伝達機構28に隣接して回転可能に設置されている。このため、ギヤ構造体61は、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)の回転に伴って回転する回転体53として機能する。回転トルク伝達機構28が巻き取り回転方向D1に回転すると、ギヤ構造体61は巻き取り回転方向D1´に回転し、回転トルク伝達機構28が繰り出し回転方向D2に回転すると、ギヤ構造体61は繰り出し回転方向D2´に回転する。又、ギヤ構造体61に設けられた小径ギヤ62の外径は、大径ギヤ30の外径よりも小さくなっており、このようなギヤ比によって、ギヤ構造体61の回転数は、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)の回転数よりも多くなる。
更に、ギヤ構造体61(回転体53)は、図8に示すように、板金59を保持するための保持構造54を備えており、この保持構造54は、台座55、複数の爪部56及び複数の棒状部57を含んでいる。台座55は、板金59が載置される部位であり、本実施形態では平面視略円形で、ギヤ構造体61の上面61aに設けられている。複数の爪部56は、本実施形態では2本設けられており、台座55上に載置された板金59を、板金59の外周側から台座55の上面55aとの間に挟み込むように、台座55の外周の対向する位置に設置されている。複数の棒状部57は、本実施形態では4本設けられており、ギヤ構造体61(回転体53)の回転軸S53を囲う位置において、互いに略等間隔で、台座55の上面55aに立設されている。
一方、保持構造54により保持されている板金59は、本実施形態では円板状を成しており、又、保持構造54の4本の棒状部57の配置に対応する配置で、4つの貫通孔60が形成されている。このため、板金59は、4つの貫通孔60に4本の棒状部57が挿通されると共に、2本の爪部56と台座55の上面55aとの間に挟み込まれた状態で、台座55上に載置されている。そして、このように保持構造54により保持された板金59に対して、板金59の貫通孔60から突出した4本の棒状部57に囲まれる位置において、磁石58が磁力により吸着している。すなわち、磁石58は、回転体53の回転軸S53を通る位置に配置されている。
ここで、図2に示した基板18に組み込まれている、異常検出部46及び引き出し長さ検出手段52について説明する。本実施形態において、基板18は、ギヤ構造体61(回転体53)の回転数及び回転速度を検出するようになっており、具体的には、図8に示したようにギヤ構造体61に取り付けられた磁石58を、基板18に搭載された磁気センサにより計測することで、ギヤ構造体61の回転数及び回転速度を検出する。そして、引き出し長さ検出手段52は、磁気センサにより計測されたギヤ構造体61の回転数、及び、ギヤ構造体61に設けられた小径ギヤ62と回転トルク伝達機構28に設けられた大径ギヤ30とのギヤ比に基づいて、回転トルク伝達機構28と同軸に接続されたテザードラム24の回転数を算出する。更に、引き出し長さ検出手段52は、算出したテザードラム24の回転数、テザードラム24の巻き付け部25の大きさ等を利用して、テザー71の引き出し長さを算出する。引き出し長さ検出手段52により検出されたテザー71の引き出し長さは、例えばケーブル21を介して運搬車70の走行制御部73(図10参照)へ送信される。
異常検出部46は、図3及び図4に示したダンパ機構34の回転伝達部40の「あそび」の期間に、テザー71が巻き取られる巻き取り速度に基づいて、テザー71の異常を検出する。ここでのテザー71の異常とは、テザー巻き取りユニット10を搭載した運搬車70が、例えば図9に示すように利用者Uによって使用されているときに、何かしらの要因でテザー71を引っ張っている力がなくなり、テザー71が解放された状態になることを示している。図9の実施形態では、テザー71の先端に磁石を介して着脱可能にテザーハンドル72が取り付けられており、利用者Uは、テザーハンドル72を把持してテザー71を引いている。このため、テザーハンドル72と運搬車70との間を異物が横切る等して、テザーハンドル72とテザー71とが切り離されると、テザー71が解放されて上記の異常状態となる。
本実施形態での異常検出部46は、テザー71が巻き取られる巻き取り速度を、テザードラム24の回転速度から取得するのではなく、テザードラム24の回転に伴って回転する回転体53としてのギヤ構造体61の回転速度から取得する。このため、異常検出部46は、基板18の磁気センサにより計測されたギヤ構造体61の回転速度を取得し、この回転速度からテザー71の巻き取り速度を算出する。そして、異常検出部46は、ギヤ構造体61が図7に示したような巻き取り回転方向D1´に回転したときの回転速度を監視し、例えば回転速度が所定速度を超えた場合に、テザー71に異常が発生したと判定する。すなわち、上述したようなテザー71の異常が発生すると、テザー71を引っ張っていた力がなくなるため、回転付勢手段26の付勢力により、テザードラム24及び回転トルク伝達機構28が巻き取り回転方向D1に回転し始める。
このとき、図4に示すように、ダンパ機構34の回転伝達部40の「あそび」の間は、回転トルク伝達機構28の軸部材29、すなわち、回転トルク伝達機構28及びテザードラム24が、ロータリダンパ35の制動力を受けることなく回転する。このため、この際の回転速度は、運搬車70がテザー71に追従して走行しているとき等の通常時の「あそび」の間の回転角度よりも速くなる。このような回転速度の差は、テザードラム24の回転に伴って回転するギヤ構造体61の回転速度にも表れるため、その回転速度の差を判定可能な所定速度を比較対象として設定しておくことで、異常検出部46がテザー71の異常を検出するものである。なお、異常検出部46によるテザー71の異常判定結果は、例えばケーブル21を介して運搬車70の他の機器に送信してもよい。
続いて、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10を備えた、本発明の実施の形態に係る運搬車70の構成の一例について説明する。運搬車70は、テザー巻き取りユニット10により内部に巻き取り収容されているテザー71が利用者Uにより引き出され、テザー71に追従する方式で自走するものであり、図9に示すように、荷物載置面74に荷物Bを載せた状態で、利用者Uによってテザー71が引っ張られて使用される。上述したように、テザー71の先端には、利用者Uにより把持されるテザーハンドル72が、磁石を介して着脱可能に取り付けられており、本実施形態のテザーハンドル72は、丸みを帯びた三角環状を成している。そして、テザー71が運搬車70の内部に巻き取り収容された状態では、図10(a)に示すように、必要に応じてテザーハンドル72を介してテザー71を引き出すことができるように、その先端が把持可能な位置にテザーハンドル72が収容されている。なお、図10(a)が運搬車70の進行方向前方側を示し、図10(b)が運搬車70の進行方向後方側を示している。
又、運搬車70は、荷物Bが載置される荷物載置面74の外周を囲うように、着脱可能に取り付けられる囲い部材75を備えている。更に、進行方向前方側に、運搬車70を立設した状態で収容するための、図示しないスタンド構造の取り付け用の2つの穴78が設けられると共に、進行方向後方側に、運搬車70を立設させる際に利用者Uにより把持される把持部79が設けられている。又、運搬車70は、荷物載置面74と反対側に、走行のための2つの駆動用タイヤ76と2つのキャスタ77とを有している。2つの駆動用タイヤ76は、本実施形態では進行方向前方側に設けられ、図示しないモータを介して回転駆動されるものであり、駆動用タイヤ76毎にモータを有し、別々に駆動可能になっている。このため、運搬車70の進行は、2つの駆動用タイヤ76が同じ速度で回転することで実現され、運搬車70の方向転換は、2つの駆動用タイヤ76が異なる速度で回転することで実現される。2つのキャニスタは、本実施形態では進行方向後方側に設けられ、駆動用タイヤ76の動きに従って回転及び方向転換するようになっている。更に、運搬車70の内部には、運搬車70がテザー71に追従して走行するように、運搬車70の進行方向及び進行速度を制御する走行制御部73が備えられている。走行制御部73は、例えば、テザー71の引き出し方向や引き出し長さを常に把握し、テザー71の引き出し方向に向かって、予め設定されたテザー71の引き出し長さが維持された状態で進行するように、各モータの回転速度を調整して進行方向及び進行速度を制御する。
加えて、運搬車70は、進行方向前方側に緊急停止ボタン80及び充電残量表示部81を、進行方向後方側に可動ランプ82及び連結マグネット格納部83を、一方の側面部に電源スイッチ/充電コネクタ格納部84を備えている。緊急停止ボタン80は、緊急時に利用者Uにより押下されることで、運搬車70の全ての電源を切断するものであり、充電残量表示部81は、運搬車70に内蔵されている図示しないバッテリの充電残量を表示するためのものである。又、可動ランプ82は、運搬車70の電源が投入されていることを示すためのものであり、連結マグネット格納部83は、運搬車70の連結用の磁石を格納するものである。すなわち、運搬車70は、テザーハンドル72が取り外された状態のテザー71の先端に、異なる運搬車70の連結マグネット格納部83に格納されている磁石が接続されることで、異なる運搬車70と連結することが可能になっており、3台以上の運搬車70の連結にも対応する。又、電源スイッチ/充電コネクタ格納部84には、運搬車70の電源スイッチと、上述したバッテリのための充電コネクタとが格納されている。
ここで、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10及びこれを備える運搬車70は、図1~図10に示した構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。例えば、図1及び図2等に図示した仕切り部材12は、ハウジング11の内部を第1空間16と第2空間17とに仕切るものであれば、断面がL字状を成していなくてもよく、単なる板状であってもよい。又、図4及び図5に示したダンパ機構34の2つのロータリダンパ35は、一方の部位同士が接続されていれば接続位置は任意であり、例えば、一方のロータリダンパ35の第2部位37と、他方のロータリダンパ35の第1部位36とが接続されていてもよい。更に、適切な制動力を付与するものであれば、ダンパ機構34のロータリダンパ35が1つであってもよく、回転伝達部40の構成や各構成要素の形状が、図4の例と異なっていてもよい。又、図6に示したテンション付加部材48は、テザー71を付勢してテンションをかけるものであれば、スタッド48a及びカラー48b以外の構成でもよい。加えて、テザードラム24の回転に伴って回転する回転体53が、図7及び図8に示したギヤ構造体61以外の構成要素、例えば回転トルク伝達機構28であってもよく、この場合は、回転トルク伝達機構28に磁石58が取り付けられる。更に、回転体53に設けられる保持構造54は、図8に示した例と構成や各構成要素の形状が異なっていてもよく、それに合わせて板金59の形状が異なっていてもよい。
他方、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10が適用される運搬車70は、テザー71に追従する方式と併せて、リモコンにより走行が制御されるものであってもよい。更に、図10に示した各構成要素の一部が置換、改造、削除されたものであってもよく、別の構成要素が追加されたものであってもよい。なお、運搬車70は、工場での部品や製品等の運搬を目的とした利用に止まらず、一般家庭での利用や、商業施設におけるショピングカートとしての利用等にも対応するものである。このため、運搬車70は、図10に示した台車サイズのものだけでなく、利用形態に応じて、様々な形状や大きさを取り得るものである。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、例えば図9に示すように、外力によって引き出されるテザー71が所定の引き出し長さを維持するように、テザー71に追従して走行する運搬車70の内部に、テザー71を収容するためのものであって、図2に示すように、テザードラム24、回転付勢手段26及びダンパ機構34を含んでいる。テザードラム24は、図6に示すように、実際にテザー71が巻き付けられる部位であって、回転付勢手段26は、図7に示すように、本実施形態では回転トルク伝達機構28を介してテザードラム24に対し、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向D1への付勢力を付与するものである。すなわち、運搬車70の利用者Uによってテザー71が引き出されることで、テザードラム24からテザー71が繰り出され、回転付勢手段26から受ける付勢力によって、テザードラム24にテザー71が巻き取られるものである。
ダンパ機構34は、図3に示すように、テザードラム24がテザー71の巻き取り回転方向D1へ回転する際に、テザードラム24の回転速度を減速させるように配置されるものであり、詳しくは、図4に示すように、少なくとも1つ(図示の実施形態では2つ)のロータリダンパ35、ワンウェイクラッチ39及び回転伝達部40を含んでいる。ロータリダンパ35は、実際に回転速度を減速させるための減速力を発生するものであり、ワンウェイクラッチ39は、テザードラム24から巻き取り回転方向D1の回転トルクを受けるように、図示の実施形態では回転トルク伝達機構28の軸部材29に設置される。すなわち、ワンウェイクラッチ39は、テザードラム24が巻き取り回転方向D1に回転するときには、その回転トルクを受けてテザードラム24と共に回転し、回転伝達部40へ回転トルクを伝達する。又、ワンウェイクラッチ39は、テザードラム24が巻き取り回転方向D1と反対の繰り出し回転方向D2に回転するときには、ワンウェイクラッチ39の回転を妨げるもの(回転負荷となるもの)がある状態で空回りし、ワンウェイクラッチ39の回転を妨げるものがない状態でテザードラム24と共回りするものである。
回転伝達部40は、ワンウェイクラッチ39から受ける巻き取り回転方向D1の回転トルクを、ロータリダンパ35に対して伝達するものであり、この際、回転トルクをすぐに伝達するのではなく、所定回転角度のあそびを介して伝達する。すなわち、回転伝達部40は、ワンウェイクラッチ39がテザードラム24から巻き取り回転方向D1の回転トルクを受けて回転し始め、そこから所定回転角度回転した後に、その回転トルクをロータリダンパ35へ伝達するものである。これにより、例えば小刻みにテザー71の出し入れが繰り返されても、テザー71の引き出し量の微量な変化は所定回転角度のあそびにより吸収されるため、ロータリダンパ35に回転トルクが伝わることはない。更に、ワンウェイクラッチ39は、テザー71の巻き取り方向D1及び繰り出し方向D2の何れの回転方向であっても、所定回転角度のあそびの間は、テザードラム24と共回りするのみであるため、直接的に回転負荷がかかることはない。従って、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、ダンパ機構34への負担を軽減することができる。
又、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、ダンパ機構34の回転伝達部40が、第1突出板41、筒状部42及び第2突出板43を含むものであり、第1突出板41は、ワンウェイクラッチ39の回転に伴って旋回するようにワンウェイクラッチ39に設けられ、巻き取り回転方向D1へ面した第1主面41aと、その反対側の第2主面41bとを備えている。筒状部42は、ダンパ機構34のロータリダンパ35及びワンウェイクラッチ39と同軸上において、ロータリダンパ35の制動力を受けるようにロータリダンパ35に接続される。すなわち、筒状部42は、互いに対しての回転速度が減速される2つの部位36、37で構成されるロータリダンパ35の、何れか一方の部位に対して固定される。第2突出板43は、筒状部42に設けられるものであり、第1突出板41が巻き取り回転方向D1へ旋回したときに第1主面41aと当接する第1受面43aと、第1突出板41が繰り出し回転方向D2へ旋回したときに第2主面41bと当接する第2受面43bとを備えている。
上記のような構成により、まず、第1突出板41の第2主面41bと第2突出板43の第2受面43bとが当接した状態において、第1突出板41が設けられたワンウェイクラッチ39が、テザードラム24から回転トルクを受けて巻き取り回転方向D1へ回転すると、第1突出板41が巻き取り回転方向D1へ旋回し始める。そして、第1突出板41が、360°から第1突出板41及び第2突出板43の厚み分の角度を除いた角度旋回すると、図4に示す状態のように、第1突出板41の第1主面41aが第2突出板43の第1受面43aと当接し、ワンウェイクラッチ39の巻き取り回転方向D1の回転トルクが、第1突出板41及び第2突出板43を介して筒状部42へ伝達される。すると、筒状部42は、ロータリダンパ35の制動力を受けながら巻き取り回転方向D1へ回転し始め、その制動力がワンウェイクラッチ39を介してテザードラム24へ伝わり、テザードラム24が減速される。
その後、テザードラム24が巻き取り回転方向D1と反対の繰り出し回転方向D2へ回転すると、ワンウェイクラッチ39がテザードラム24と共に回転し、第1突出板41の第1主面41aと第2突出板43の第1受面43aとが当接した状態から、第1突出板41が繰り出し回転方向D2へ旋回し始める。そして、第1突出板41が、360°から第1突出板41及び第2突出板43の厚み分の角度を除いた角度旋回すると、第1突出板41の第2主面41bが第2突出板43の第2受面43bと当接し、第2突出板43及び筒状部42を介して、ロータリダンパ35の負荷が第1突出板41にかかる。すると、第1突出板41が設けられたワンウェイクラッチ39は、テザードラム24に対して空回りするため、テザードラム24へロータリダンパ35の制動力は伝わらない。従って、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、360°から第1突出板41及び第2突出板43の厚み分の角度を除いた回転角度のあそびを有する回転伝達部40により、ダンパ機構34への負担の軽減を実現することができる。
更に、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、ダンパ機構34が2つのロータリダンパ35を含んでおり、これらのロータリダンパ35の各々が、互いに対しての回転速度が減速される2つの部位36、37を有している。そして、2つのロータリダンパ35は、図4の実施形態では、双方のロータリダンパ35の第2部位37同士が共に回転するように、それら第2部位37間が接続部材38により接続される。更に、図中上方のロータリダンパ35の第1部位36が、例えば巻き取りユニット10のハウジング11等に対して回転不可に設置され、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36が、ワンウェイクラッチ39から回転トルクを受ける回転伝達部40に接続されるものである。このような構成により、一方のロータリダンパ35の第1部位36及び第2部位37間と、他方のロータリダンパ35の第1部位36及び第2部位37間との2箇所が、回転可動部として機能するようになるため、それらと同性能のロータリダンパ35を1つだけ用いた場合と比較して、制動力を受けるテザードラム24の回転速度が2倍になる。従って、例えば市販品のロータリダンパ35のような、減速力の調整ができないロータリダンパ35を用いる場合であっても、ギヤ比等を利用した複雑な構成を導入することなく、テザードラム24の回転速度を速めることができる。
又、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、図2に示すように、例えば運搬車70の利用者Uにより引き出されていたテザー71の引張力が突然なくなる場合のような、テザー71の異常を検出する異常検出部46を含むものである。この異常検出部46は、図4に示したようなダンパ機構34の回転伝達部40が有する所定回転角度のあそびの間に、テザー71が巻き取られる巻き取り速度に基づいて、テザー71の異常を検出する。すなわち、テザー71を引き出していた引張力が突然なくなると、回転伝達部40が有する所定回転角度のあそびの間は、ロータリダンパ35の制動力を受けることなく、回転付勢手段26からの付勢力のままに、テザードラム24が巻き取り回転方向D1に回転し、その回転速度でテザー71が巻き取られることになる。
これに対し、通常時は、例えば運搬車70の利用者Uが歩行中に突然立ち止まったとしても、回転伝達部40が有する所定回転角度のあそびの間は、テザー71の引き出し長さを所定長に維持するように利用者Uの歩行速度に合わせて走行していた運搬車70の走行速度によって、テザー71が巻き取られることになる。従って、通常時とテザー71の異常時とで、所定回転角度のあそびの間にテザー71が巻き取られる速度が異なることになるため、その速度差を利用して、異常検出部46がテザー71の異常を検出するものである。これにより、ロータリダンパ35を利用してテザー71の巻き取り速度を減速させる構造でありながらも、その減速が異常検出の弊害になることなく、テザー71の異常を検出することができる。
加えて、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、図6に示すように、ユニット10の内部に引き込まれるテザー71の引き込み位置を定める引き込み部47と、テザー71がその引き込み部47からテザードラム24へと至るまでの間に、テザー71を付勢してテンションをかけるテンション付加部材48とを更に含むものである。具体的に、テンション付加部材48は、図6のようなテザードラム24の軸方向視で、引き込み部47を通ると共にテザードラム24の巻き付け部25の外周に接する仮想直線VLと等しいルートか、或いは、そのような仮想直線VLよりもテザードラム24の回転軸S24に近付くルートでテザー71が配線されるように、テザー71にテンションをかける。これにより、テザー71の巻き取り時に、ダンパ機構34による回転速度の減速の影響で、テザー71が緩むような力が作用したとしても、テンション付加部材48によりテザードラム24の回転軸S24に近付くようにテザー71を付勢していることで、テザー71の膨らみを抑制することができ、テザー71がテザードラム24から外れることを防止することが可能となる。
一方、本発明の実施の形態に係る運搬車70は、図9及び10に示すように、上述したようなテザー巻き取りユニット10を備えるものであり、更に、走行制御部73を含んでいる。走行制御部73は、運搬車70の内部から引き出されたテザー71を所定の引き出し長さに維持しながら、テザー71に追従して走行するように、運搬車70の進行方向及び進行速度を制御するものである。このような構成により、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10と同等の作用効果を奏しながらも、テザー71を介した容易な操作方法で、人力に依らない荷物Bの運搬を実現することができ、荷物Bの運搬作業の負担を軽減することが可能となる。