JP7393191B2 - 積層構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、フィラーを含有するウレタン発泡層を有する積層構造体に関し、例えば、フィラーを含有するウレタン発泡層が建築物などにおいて断熱材として使用される積層構造体に関する。
従来、ウレタン発泡体は断熱材として広く用いられており、例えば工場でボード状に加工したウレタン発泡体を現場に取り付ける方法や、ポリオールを含む液剤とイソシアネートを含む液剤を現場で混合して、吹き付けなどによりウレタン発泡層を形成する現場発泡法などが知られている。
一方で、ウレタンは燃焼性が高いため、建築物の火災リスクを増加させることが知られている。そこで、近年、フィラーをウレタン発泡体に含有させることで難燃効果を付与することがある(例えば、特許文献1参照)。また、ウレタン発泡体には、例えば機械性能などの難燃性以外の性能を付与するためにフィラーを配合することも検討されている。
特開2018-62659号公報
しかしながら、フィラーを添加したウレタン発泡体には各種の機能が付与される一方で、フライアビリティ(破砕性)が悪化して、外力により破損が発生することがある。そのため、フィラー含有ウレタン発泡層の上に保護層を設けることが考えられるが、フィラー含有ウレタン発泡層は、他の有機層に対して接着性が不十分なことがあり、フィラー含有ウレタン発泡層上に形成した保護層は、自重等による脱落するおそれがある。
そこで、本発明は、フィラーを含有するウレタン発泡層を有しながらも、フライアビリティを良好にし、かつウレタン発泡層と保護層との接着性を高めて自重等による脱落も防止できる、積層構造体を提供することを課題とする。
本発明は、フィラーを含有するウレタン発泡層の上に保護層を形成し、かつ保護層が水酸基含有成分を含むことで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]フィラーを含有するウレタン発泡層と、前記ウレタン発泡層上に設けられる保護層とを備え、前記保護層が水酸基含有成分を含む積層構造体。
[2] 前記フィラーが、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含む上記[1]に記載の積層構造体。
[3]前記ウレタン発泡層におけるフィラーの含有量が、ウレタン樹脂100質量部に対して、4質量部以上である上記[1]又は[2]に記載の積層構造体。
[4]前記保護層に含まれる上記水酸基含有成分が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク、及びカオリナイトからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層構造体。
[5]保護層が水ガラス又はセメントのいずれかを含有するセラミック系組成物から形成される上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層構造体。
[6]前記保護層が、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、珪砂、及び珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種を含む上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層構造体。
[7]前記保護層がウレタン樹脂組成物から形成され、かつ、前記保護層が実質的にフィラーを含有しない、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層構造体。
[8]前記保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物が、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群から選択されるポリオール化合物を含み、
前記ポリオール化合物が、前記保護層に含有される水酸基含有成分の少なくとも一部を構成する上記[7]に記載の積層構造体。
[9]前記保護層の厚みが2mm以上である上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の積層構造体。
[10]前記ウレタン発泡層が、建築物を構成する部材に積層される上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の積層構造体。
本発明によれば、フィラーを含有するウレタン発泡層を有しながらも、フライアビリティを良好にし、かつウレタン発泡層と保護層との接着性を高めて自重等による脱落も防止できる、積層構造体を提供する。
<積層構造体>
本発明の積層構造体は、フィラーを含有するウレタン発泡層と、ウレタン発泡層上に設けられる保護層とを備え、保護層が水酸基含有成分を含むものである。
本発明の積層構造体は、ウレタン発泡層の上に保護層を設けることで、ウレタン発泡層に外力が作用されることを防止でき、ウレタン発泡層にフィラーを含有させながらも、フライアビリティを良好にできる。また、保護層が水酸基含有成分を含むことで、ウレタン発泡層と保護層の接着性が高められ、それにより、保護層が自重等による脱落したりすることも防止できる。なお、ウレタン発泡層と、保護層の接着性が高められる要因は定かではないが、ウレタン発泡層に残存するポリオール化合物由来の水酸基含有成分と、保護層に含有される水酸基含有成分同士の水素結合に基づくものと推定される。
[ウレタン発泡層]
ウレタン発泡層は、フィラーを含有するウレタン樹脂組成物を硬化させ、発泡させることで形成されるものである。ウレタン発泡層は、好ましくは硬質ウレタン発泡体である。ウレタン発泡層を構成するウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合させて反応させることで得られる反応生成物である。したがって、ウレタン樹脂組成物は、一般的にポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有する。
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタン発泡層に使用するポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDIなどが好ましい。
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物としては、例えば、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。また、ヒマシ油などのヒドロキシカルボン酸も使用できる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。また多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
またヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
ポリマーポリオールとしては、例えば、上記した芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
変性ポリオールに使用する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、 フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1-ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン、1-ヒドロキシピレン等のフェノールポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体、及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
前記多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、AOと略す)を付加させる方法が好適に用いられる。
AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EOおよび1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、POおよびEOがより好ましい。
AOを二種以上使用する場合(例えば、POおよびEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
ポリエーテルポリオールにおいて使用する活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
上記ポリオール化合物は、燃焼した際の総発熱量の低減効果が大きいことからポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を使用することが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましい。その中でも分子量200~800のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、分子量300~500のポリエステルポリオールを用いることがさらに好ましい。
なお、ウレタン樹脂組成物は、水酸基を1つのみ有するモノオール化合物を含有してもよい。モノオール化合物としては、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1-オールなどが挙げられる。
ウレタン樹脂組成物に含まれるポリオール化合物、モノオール化合物などの水酸基は、大部分がイソシアネート化合物と反応してウレタン結合を形成するが、一部の水酸基は、ウレタン発泡層においても残存する。そして、その残存した水酸基と、保護層に含有される水酸基含有成分とにより上記の通り接着性が高められると推定される。
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスは、120~1000の範囲であることが好ましく、200~800の範囲であればより好ましく、300~600の範囲であればさらに好ましい。イソシアネートインデックスが120以上となると、イソシアネート基が水酸基より過剰となり、三量化されやすくなり、不燃性を付与しやすくなる。また、1000以下となると、不燃性と製造コストとのバランスが良好になる。なお、イソシアネートインデックスは、従来公知の方法により計算できる。
(フィラー)
ウレタン発泡層に使用されるフィラーは、固形難燃剤であることが好ましい。本発明では、固形難燃剤を使用することで、ウレタン発泡層の難燃性を効果的に高めることができる。また、固形難燃剤は、通常、粉体成分としてポリオール液剤、ウレタン樹脂組成物などに分散した状態にある。なお、固形難燃剤は、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。
固形難燃剤の具体例としては、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、は特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから一種もしくは二種以上を使用することができる。
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
<ホウ素含有難燃剤>
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
<金属水酸化物>
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ、タルク等が挙げられる。これらのなかでは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルクが好ましい。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
<針状フィラー>
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、スラグ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、ステンレス繊維などが挙げられる。これらの中では、ウォラストナイトが好ましい。針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。
<無機充填材>
ウレタン発泡層に使用するフィラーとしては、上記した固形難燃剤以外の無機充填材を使用してもよい。無機充填材を使用することでウレタン発泡層の機械強度を向上させるなど、ウレタン発泡層に種々の機能を付与できる。
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ、等が挙げられる。
無機充填材は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。 また、無機充填材は、上記した固形難燃剤と併用してもよいが、必ずしも併用する必要もない。
<フィラーの含有量>
本発明では、ウレタン発泡層(又はウレタン樹脂組成物)におけるフィラーの含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、4質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、12質量部以上であることがさらに好ましい。フィラーの含有量をこれら下限値以上とすることで、難燃性、機械強度などのフィラーの種類に応じた各種性能をウレタン発泡層に付与しやすくなる。
また、フィラーの含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。フィラーの含有量をこれら上限値以上とすることで、ウレタン樹脂組成物の粘度が適切になり、吹き付けなどによりウレタン発泡層を形成しやすくなる。
なお、ウレタン樹脂は、一般的に、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とが反応することで形成され、したがって、ウレタン樹脂100質量部とは、ウレタン樹脂組成物におけるポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計量100質量部を意味する。ただし、後述するように、ウレタン樹脂組成物にポリオール成分とポリイソシアネート成分とを予め反応したプレポリマー、及び、モノオール成分の少なくとも1種が含まれる場合には、ウレタン樹脂100質量部とは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とプレポリマーとモノオール成分の合計量を100質量部とする。
また、ウレタン発泡層におけるフィラーは、上記のとおり、難燃性を付与する観点から、固形難燃剤が好ましく、固形難燃剤はフィラーとして単独で使用してもよいし、無機充填材などの他のフィラーと併用してもよい。難燃性を向上させる観点から、固形難燃剤は、フィラー全量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85~100質量%がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。
(液状難燃剤)
ウレタン発泡層(すなわち、ウレタン樹脂組成物)は、液状難燃剤をさらに含有することが好ましい。液状難燃剤を使用すると、ウレタン樹脂組成物の粘度をそれほど大きくすることなく、ウレタン発泡層の難燃性を向上できる。また、液状難燃剤は上記した固形難燃剤と併用することがより好ましい。なお、液状難燃剤は、常温、常圧にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、常温、常圧で液体のものであれば限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以を併用してもよい。これらの中でも、ウレタン樹脂組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びウレタン発泡層の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ウレタン発泡層(又はウレタン樹脂組成物)における液状難燃剤の含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1~40質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましく、4~20質量部がさらに好ましい。液状難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、液状難燃剤を含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、液状難燃剤によって、ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害さたりすることもない。
ウレタン発泡層は、上記したとおり、ウレタン樹脂組成物を硬化し発泡して形成される。ウレタン樹脂組成物は、上記したとおり、ポリオール化合物とイソシアネート化合物とフィラー含むが、一般的にはさらに、触媒、発泡剤などを含む。
(触媒)
本発明のウレタン樹脂組成物は、触媒として、例えば三量化触媒、樹脂化触媒、又はこの両方を含有するとよいが、両方を含有することが好ましい。
三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を使用することで、ウレタン発泡層の難燃性がより一層向上する。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。アンモニウム塩としては、2,2-ジメチルプロパン酸などカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的にはカルボン酸4級アンモニウム塩が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上が好ましく、これら両方を使用する態様も好ましい。
三量化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.6~10質量部の範囲であることが好ましく、0.8~8質量部の範囲であることがより好ましく、1.0~6質量部の範囲であることが更に好ましい。これら下限値以上とすると、イソシアネートの三量化が適切に進行し難燃性が付与しやすくなる。また、上限値以下とすると、適切な発泡速度を維持することができ、取扱いやすい。
樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換し3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などでもよい。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
また、樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる有機酸金属塩である。より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)、ジオクチル酸スズ、ジオクチル酸鉛などが挙げられ、中でも有機酸ビスマス塩がさらに好ましい。
樹脂化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.6~10質量部の範囲であることが好ましく、0.8~8質量部の範囲であることがより好ましく、1.0~6質量部の範囲であることが更に好ましい。樹脂化触媒の配合量がこれら下限値以上であるとウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、これら上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
(発泡剤)
ウレタン樹脂組成物に含有される発泡剤は、ウレタン樹脂を発泡させる。発泡剤の具体例としては、例えば、水、有機系物理発泡剤、無機系物理発泡剤等が挙げられる。
有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物などが挙げられる。
また、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィンも挙げられる。ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば炭素数1~4の化合物が挙げられ、CHF、CH、CHF等のフルオロアルカンでもよいし、塩素原子を有するハイドロクロロフルオロカーボン化合物でもよい。ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)などのジクロロモノフルオロエタン、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン)などのモノクロロジフルオロエタン、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケンなどを挙げることができる。ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケンなどであってもよい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234などのテトラフルオロプロペン、HFO-1225などのペンタフルオロプロペン、HFO-1233などのクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペンなどが挙げられる。更に具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エンなどが挙げられる。
また、無機系物理発泡剤としては、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
これらのなかでは、発泡性、取扱い性などの観点から、水、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィンが好ましく、環境負荷が小さく、かつ発泡性も良好である点から、ハイドロフルオロオレフィン、水がより好ましく、ハイドロフルオロオレフィンがさらに好ましい。また、水とハイドロフルオロカーボン、又は水とハイドロフルオロオレフィンを併用することも好ましい。
ウレタン樹脂組成物に使用する発泡剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲であることが好ましい。 また、発泡剤は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、1~15質量部の範囲であることが更に好ましい。発泡剤の含有量を0.1質量部以上とすると、発泡が促進され、得られるウレタン発泡層の密度を低減することができる。30質量部以下とすると、発泡体が破泡せず、発泡体が形成されないことなどを防ぐことができる。
(整泡剤)
ウレタン樹脂組成物は、さらに整泡剤を含有することが好ましい。ウレタン樹脂組成物に含有される整泡剤は、ウレタン樹脂組成物の発泡性を向上させる。整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。 ウレタン樹脂に対する整泡剤の配合量は、例えば、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲であれば好ましい。
樹脂化触媒、三量化触媒、発泡剤及び整泡剤はそれぞれ一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
さらにウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、沈降防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、粘着付与樹脂等の添加剤を含むことができる。
ウレタン発泡層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、上記したポリオール化合物及びモノオール化合物以外にも、水酸化物イオン(OH-)を有する化合物(例えば、金属水酸化物)などの水酸基を有する化合物を含有すると、後述する保護層に含有される水酸基含有成分との相互作用により、保護層に対する接着性が向上しやすくなる。
ウレタン発泡層の密度は、特に限定されないが、30~130kg/mの範囲であることが好ましい。密度を130kg/m以下とすることで、ウレタン発泡層が軽量となり、断熱性なども良好となる。また、30kg/m以上とすることで、所望の難燃性、機械強度などの各種性能を向上させやすくなる。これら観点から、ウレタン発泡層の密度は、35~100kg/mの範囲であることがより好ましい。なお、ウレタン発泡層の密度は、表層が他の部位と密度などの物性が異なることがあるので、表層を除く位置において、所定のサイズのサンプルを採取し、重量を測定することで求めることができる。
ウレタン樹脂組成物は、2液硬化型であることが好ましく、ウレタン発泡層形成前においては、1液と2液に分割しておくとよい。具体的には、ポリオール化合物を含むポリオール液剤(1液)と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液剤(2液)に分割しておくとよい。この際、ウレタン樹脂組成物に含有されるポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分は、適宜、ポリオール液剤又はイソシアネート液剤のいずれかに配合しておくとよいが、好ましくはポリオール液剤に配合する。ポリオール化合物は、反応性が低く、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分と混合させても、副反応が生じにくいためである。
ウレタン樹脂組成物は、1液と2液を混合するなどして、各成分を混合させることなどで反応が開始し、時間の経過と共に粘度が上昇し、硬化及び発泡が進行し、流動性を失い、ウレタン発泡層となる。ウレタン樹脂組成物は、通常、常温付近(例えば、10~40℃程度)に放置することで硬化及び発泡をさせるとよいが、必要に応じて、加熱等してもよい。
ウレタン発泡層の厚さは、特に限定されないが、2~150mmが好ましく、5~80mmがより好ましく、8~50mmがさらに好ましい。ウレタン発泡層は、これら下限値以上の厚さを有することで、断熱性などのウレタン発泡層の各種性能を良好にしやすくなる。また、これら上限値以下とすることで、ウレタン発泡層が必要以上に厚くなることを防止できる。
[保護層]
本発明の積層構造体は、上記のとおり、ウレタン発泡層の上に積層される保護層を備える。保護層が設けられることで、ウレタン発泡層が保護されて、ウレタン発泡層が破砕することを防止できる。また、本発明の保護層は、水酸基含有成分を含有し、それにより、上記のとおり、ウレタン発泡層に対する接着性が高まり、外力などにより落下することが防止される。なお、本明細書において、水酸基は、有機化合物の水酸基に限られずに、例えば、水酸化物イオン(OH)を有する塩であってよく、例えば、各種水酸化物の水酸化物イオン、水ガラスなどにおいてケイ酸塩と結合する水酸化物イオンなどでもよい。
保護層は、パテ、ウレタン樹脂組成物などの保護層用組成物により形成されることが好ましい。パテは、例えば建築物の施工現場で汎用されており、一般的にペースト状の形態を有する。パテは希釈溶剤や水が配合されてもよい。パテは、硬化型パテであってもよいし、非硬化型パテであってもよいが、好ましくは硬化型パテを使用する。硬化型パテは、保護層の上にパテを塗布して、必要に応じて乾燥し、かつ硬化することで保護層を形成できる。また、非硬化型パテは、保護層の上にパテを塗布して、必要に応じて乾燥することで保護層を形成できる。
保護層に含まれる水酸基含有成分は、上記のとおり、水酸基を有する有機化合物、水酸化物イオン(OH)を有する塩などであればよいが、後述するようにウレタン樹脂組成物から形成される場合には、ウレタン樹脂組成物に含有されるポリオール化合物などが水酸基含有成分を構成することが好ましい。また、金属水酸化物、水ガラスなども水酸基含有成分としても好適に使用される。保護層に含まれる水酸基含有成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
なお、保護層は、後述するように水酸基含有成分を含む保護層用組成物を硬化などにより形成するとよい。保護層用組成物が硬化する際、その硬化により水酸基含有成分が反応することがあるが、その場合でも、水酸基含有成分の少なくとも一部が残存し、保護層に存在するとよい。
保護層に水酸基含有成分が含有されるか否かは、例えば、近赤外分光測定により確認できる。本発明では、形成された保護層の表層を除いた中心部から5箇所ランダムに抽出し、上記測定を行った際に水酸基に由来するピークが得られれば保護層が水酸基含有成分を含有するとする。
保護層に使用される水酸基含有成分は、金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク、及びカオリナイトから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。金属水酸化物は、保護層において難燃成分となり、ウレタン発泡層がフィラーを含有することも相まって、積層構造体の難燃性、耐火性が向上する。
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク、カオリナイトなどの金属水酸化物を含む保護層は、非硬化型パテより形成しても良いが、水分の蒸発および硬化反応により硬化する硬化型パテよりなる保護層用組成物により形成されることが好ましい。
(セラミック系組成物)
硬化型パテの場合保護層用組成物は、金属水酸化物以外にも、水ガラスもしくはセメントを含むセラミック系組成物が好ましい。水ガラスもしくはセメントと金属水酸化物を含むセラミック系組成物を使用することで、機械強度、耐火性を付与しやすくなる。そのため、ウレタン発泡層がフィラーを含有することも相まって、積層構造体全体の耐火性、難燃性を付与しやすくなる。また、保護層は、セラミック系組成物から形成されることで、一定の機械強度が付与されて、フライアビリティが優れたものとなる。
セラミック系組成物に使用されるセメントとしては、特に限定されないが、例えば、CaO、Al3、SiO、Feなどを含むとよい。また、セメントの種類は限定されず、ポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントなどのいずれでもよい。セメントは、バインダーとしての機能を有し、セメントを使用することでウレタン発泡層に対する接着性が向上する。
セラミック系組成物に使用される水ガラスは、ケイ酸塩の水溶液であり、ケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられるで、これらのなかではケイ酸ナトリウムが好ましい。セラミック系組成物において水ガラスはバインダー成分であり、水ガラスを使用することで、ウレタン発泡層に対する接着力を高めることができる。水ガラスを使用する場合、セラミック系組成物は水ガラスを硬化させるための硬化剤を含有してもよい。
セラミック系組成物は、水ガラスもしくはセメント及び金属水酸化物以外にも、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、珪砂、珪藻土、パーライト、ひる石、ガラス繊維、水ガラス以外のケイ酸塩(ケイ酸塩粉末など)などの上記した金属水酸化物以外の無機充填材や、無機充填材以外の成分を含有してもよい。無機充填材以外の成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂成分、メチルセルロース、パルプなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中では、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、珪砂、及び珪藻土からなる選択される1種又は2種以上の無機充填材を含むことが好ましい。セラミック系組成物は、金属水酸化物以外の無機充填材を含有することで、保護層の機械強度などを向上しやすくなる。
セラミック系組成物は、セメントを含有する場合、必要に応じて添加された水、あるいは大気中の水分により、少なくともセメントが硬化することで保護層が形成される。なお、セラミック系組成物を使用する場合、保護層では、硬化時に反応しない金属水酸化物の全部又は一部が残り、金属水酸化物が存在することが好ましい。また、セラミック系組成物は、セメントを含有する場合、無機充填材として炭酸カルシウムを含むことがより好ましい。
セメントを含有する場合の好ましいセラミック系組成物としては、セメントと水酸化アルミニウムと炭酸化カルシウムを主成分として含むセラミック系組成物、又はセメントと水酸化アルミニウムを主成分として含むセラミック系組成物が挙げられる。なお、主成分として含むとは、上記した成分の合計量が、固形分基準で50質量%以上含むことを意味し、好ましくは70質量%以上含む。なお、固形分基準とは、水などの揮発成分を除いた組成物の合計量である。また、セメントを含有する好ましいセラミック系組成物の市販品としては、エスケー化研株式会社製の「セラタイカ2号」、「セラタイカ2号U」などが挙げられる。
また、セラミック系組成物は、水ガラスを含有する場合、水ガラスが例えば大気中の二酸化炭素により硬化されるとよい。水ガラスを含有する場合、セラミック系組成物は、上記のとおり、水ガラスに加えて、金属水酸化物、又は金属水酸化物以外の無機充填材のいずれかを含有するとよく、好ましくは金属水酸化物を含有し、より好ましくは金属水酸化物及び金属水酸化物以外の無機充填材を含有する。水ガラスを含有するセラミック組成物に使用する無機充填材としては、上記のとおり炭酸カルシウム、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、珪砂、珪藻土などが好ましい。これら無機充填材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水ガラスは、硬化時に少なくとも一部が反応せずに保護層において少なくとも一部が残り、水酸基含有成分を構成するとよい。また、水ガラスと金属水酸化物を併用する場合には、金属水酸化物も保護層において水酸基含有成分を構成する。
水ガラスを含有するセラミック系組成物は、水ガラスと金属水酸化物、又は水ガラスと金属水酸化物と金属水酸化物以外の無機充填材が主成分であることが好ましく、水ガラスと金属水酸化物と金属水酸化物以外の無機充填材の合計量が、セラミック系組成物の固形分全量に対して、例えば50質量%以上となるとよく、70質量%以上となることが好ましい。なお、水ガラスは、上記の通り、ケイ酸塩の水溶液であり、固形分とは、そのケイ酸塩を溶解する水及びその他の揮発成分を除く成分を意味する。
水ガラスを含有するセラミック組成物は、市販品により形成されてもよく、市販品としては、例えばエーアンドエーマテリアル社製の「ASボンド」などが挙げられる。
(ウレタン樹脂組成物)
保護層用組成物が、ウレタン樹脂組成物である場合、ウレタン樹脂組成物を硬化させることでウレタン層からなる保護層を形成する。ウレタン樹脂組成物は、例えば、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含有する。また、保護層用組成物が、ウレタン樹脂組成物である場合、保護層は発泡層であることが好ましく、したがって、ウレタン樹脂組成物はさらに発泡剤を含み、硬化かつ発泡されて保護層となるとよい。
保護層用組成物として使用されるウレタン樹脂組成物における、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び発泡剤は、上記したウレタン発泡層の形成に使用されるポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び発泡剤において列挙された化合物を適宜選択して使用すればよいが、ポリオール化合物としては、上記した中ではポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。また、ポリイソシアネート化合物としては、フェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDIなどの芳香族ポリイソシアネートが好ましい。
さらに、保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物には、モノオール化合物が含まれてもよい。モノオール化合物の詳細は、上記の通りである。
保護層が、ウレタン樹脂組成物から形成される場合、保護層には実質的にフィラーを含有しない。保護層が実質的にフィラーを含有しないことで、積層構造体のフライアビリティを良好にできる。ここで、保護層に実質的にフィラーを含有しないとは、保護層を構成するウレタン樹脂組成物にフィラーが意図的に配合されないことを意味し、保護層は、不純物などの不可避的に配合されるフィラーを含有していてもよい。具体的には、保護層におけるフィラーの含有量は、ウレタン樹脂100質量に対して、3質量部未満が好ましく、1質量部未満がより好ましく、0.5質量部未満がさらに好ましく、0質量部であることが最も好ましい。
保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、さらに液状難燃剤を含有してもよい。液状難燃剤を含有することで、上記のとおり、ウレタン発泡層が固形難燃剤などのフィラーを含有することも相まって、積層構造体の難燃性を高めることができる。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられ、リン酸エステルの具体例は上記のとおりであるが、ウレタン樹脂組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及び保護層の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
保護層(すなわち、ウレタン樹脂組成物)における液状難燃剤の含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、3~70質量部がより好ましく、5~50質量部がさらに好ましい。液状難燃剤をこれら下限値以上とすることで、保護層の難燃性を高めやすくなる。また、上限値以下とすることで、液状難燃剤によって、ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害さたりすることもない。
保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、触媒や整泡剤を含有してもよく、触媒及び整泡剤の具体例は上記のとおりである。また、ウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、沈降防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、粘着付与樹脂等の添加剤を含むことができる。
また、保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、1液硬化型でもよいし、2液硬化型でもよいが、1液硬化型が好ましい。1液硬化型のウレタン樹脂組成物から形成される保護層は、比較的柔軟性が高く、他の部材が接触しても破損しにくくフライアビリティが優れたものになる。
2液硬化型の場合には、ポリオール化合物を含むポリオール液剤(1液)と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液剤(2液)を用意して、これらを混合して使用するとよい。この場合には、上記のとおり、ウレタン樹脂組成物に含有されるポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分は、適宜、ポリオール液剤又はイソシアネート液剤のいずれかに配合しておくとよいが、好ましくはポリオール液剤に配合する。
1液硬化型の場合には、湿気硬化型であることが好ましく、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物はウレタン発泡層の上に積層された後に、大気中の湿気により硬化させるとよい。
湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、イソシアネート成分とポリオール成分とを含有するものでもよいが、プレポリマー成分を使用してもよい。プレポリマー成分は、ポリオール成分を予めイソシアネート成分と反応させた反応生成物である。プレポリマーは、末端に水酸基又はイソシアネート基のいずれかを有するとよいが、イソシアネート基を有することが好ましい。イソシアネート基を有することで、湿気硬化性を高めることができる。
プレポリマー成分を使用する場合、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、イソシアネート成分とプレポリマー成分とを含有することが好ましく、この場合、イソシアネート成分とプレポリマー成分とポリオール成分を含んでもよい。
また、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、モノオール成分を使用することも好ましく、例えば、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、イソシアネート成分とモノオール成分を含有するものが好ましく使用される。この場合、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、イソシアネート成分とモノオール成分以外にも上記したプレポリマー成分及びポリオール成分から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、密閉容器などに保存されるとよい。また、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物は、添加剤を適宜配合したり、イソシアネート成分とポリオール成分の量を適宜調整などしたりすることで、密閉容器から外部に排出する前においては、組成物中に含まれる、ポリイソシアネート成分、プレポリマー成分、ポリオール成分、モノオール成分などが互いに反応しないようにするとよい。
保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、保護層に水酸基含有成分を含有させるために、水酸基含有成分を含有し、具体的には、水酸基を有するプレポリマー、ポリオール化合物、及びモノオール化合物から選択される少なくとも1種を含む。これら化合物の水酸基は、保護層を形成する際に概ね反応するが、一部の水酸基は未反応のままであり、その未反応の水酸基を有する化合物が水酸基含有成分となる。
また、中でも、保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物が、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種のポリオール化合物を含み、これらポリオール化合物が、保護層に含有させる水酸基含有成分の少なくとも一部を構成することが好ましい。
保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物としては、市販品として株式会社エービーシー商会から販売されるインサルパックシリーズが挙げられる。より具体的には、1液硬化型として、例えば、「NEW-GS360」「NEW-GS360ロング」、「GFM600」、「GSXロング」、「NEW-GSスプレー」、「GSメタルプロ・ジャンボ」、「GSガンフォームNFPRO」、「GS難燃B1フォーム」、2液硬化型として、「HYPER(ハイパー)#30」、「♯120」、「♯180」、「IP600」、「#115」などが挙げられる。また、1液硬化型としては、三井化学産資株式会社製の「ハイプレンフォーム」、2液硬化型としては、三井化学産資株式会社製の「ハイプレンハンディフォーム」なども挙げられる。
保護層の厚さは、2mm以上であることが好ましい。保護層の厚さを2mm以上とすることで、ウレタン発泡層を保護層によって適切に保護できる。保護層の厚さは、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは8mm以上である。また、保護層の厚さは、150mm以下が好ましく、80mm以下がさらに好ましく、40mm以下がさらに好ましい。保護層の厚さを150mm以下とすることで、積層構造体を必要以上に厚くすることなく、ウレタン発泡層を適切に保護できる。
[積層構造体の用途及び施工方法]
本発明の積層構造体は、ウレタン発泡層が断熱性を有することから、断熱性が必要とされる用途にて、断熱材として好適に使用される。また、本発明の積層構造体は、より具体的には、例えば各種建築物に使用され、建築物の壁、天井、屋根、床等を構成する部材に積層されるとよい。また、建築物の構造材の間に生じる目地や穴を含め、建築物に生じる任意の開口部を埋める部材として好適に用いられる。建築物を構成する部材としては、鉄鋼などの金属、セメント板、コンクリート、石膏、木材など建築物に使用され、かつウレタン発泡層が接着可能な材質ならばいずれでもよい。
上記した建築物などに使用されるウレタン発泡層は、いわゆる現場発泡法により形成されることが好ましい。現場発泡法は、ウレタン樹脂組成物を、建築現場において建築物を構成する部材に吹き付け、塗布などにより積層して、反応かつ発泡させることでウレタン発泡層を形成する方法である。ウレタン樹脂組成物が2液硬化型の場合には、現場発泡法においては、使用直前に1液と2液を混合して、スプレー、コーキングガンなどにより建築物を構成する部材に吹き付けなどするとよい。すなわち、ウレタン発泡層は、建築物を構成する部材に積層されたものが好ましい。また、ウレタン発泡層は、建築物を構成する部材に接着されているとよい。
ただし、ウレタン発泡層は、現場発泡以外でもよく、例えば予めボード状に加工したものでもよい。
保護層は、パテにより形成される場合には、ウレタン保護層の上にパテを塗布して必要に応じて乾燥、硬化などすることで形成すればよい。乾燥及び硬化は、ウレタン保護層の上に塗布したパテを加熱して行ってもよいし、加熱しなくてもよい。
また、保護層がウレタン樹脂組成物により形成される場合には、ウレタン樹脂組成物をウレタン発泡層の上に積層して、硬化し、かつ必要に応じて発泡することで保護層を形成するとよい。ウレタン樹脂組成物は、通常、常温付近(例えば、10~40℃程度)に放置することで硬化又は硬化及び発泡をさせるとよいが、必要に応じて、加熱等してもよい。
保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物は、ウレタン発泡層の上に吹き付け、塗布などにより積層するとよい。1液硬化型の場合には、スプレー缶などの密閉容器に収納されたウレタン樹脂組成物を、スプレー噴射などにより吹き付け、塗布などによりウレタン発泡層の上に積層するとよい。また、2液硬化型の場合には、使用直前に1液と2液を混合して、スプレー、コーキングガンなどによりウレタン発泡層の表面に吹き付けなどにより積層するとよい。また、上記のとおり、ウレタン発泡層は、現場発泡法により形成することが好ましいので、保護層の形成も、建築現場にて行われることが好ましい。
本発明のウレタン発泡層は、上述したように、建築物を構成する部材の上に吹き付けなどにより積層されることが好ましい。したがって、本発明の積層構造体は、建築物を構成する部材の上にウレタン発泡層及び保護層をこの順に備えることが好ましい。
また、本発明の保護層は、他の層を介さずに、直接ウレタン発泡層の表面に形成されることが好ましい。すなわち、保護層は、ウレタン発泡層の表面に接着することが好ましい。保護層がウレタン発泡層の上に直接形成されることで、保護層及びウレタン発泡層に含有される水酸基含有成分によって、保護層のウレタン発泡層に対する接着性を高めやすくなる。
ただし、本発明の保護層とウレタン発泡層の間にプライマー層などの他の層が設けられてもよい。プライマー層は、公知の方法により、ウレタン発泡層の表面にプライマー液を塗布して乾燥することなどにより形成するとよい。ただし、プライマー層を設ける場合、プライマー層にも水酸基含有成分を含有させるとよい。したがって、プライマー層は、例えばウレタン樹脂などにより形成されてもよいし、金属水酸化物などを含有していてもよい。
また、保護層は、ウレタン発泡層の表面全体に積層されるとよいが、表面全体に積層されずにウレタン発泡層の表面の一部に積層されてもよい。例えば、他の部材に接触するなど外力が作用されやすい部分の表面のみに保護層を形成し、その他の部分の表面には保護層を形成しなくてもよい。
また、本発明の保護層は、補修用に使用してもよい。すなわち、まず、ウレタン発泡層を形成して、その後破損した箇所の表面上のみに、保護層を形成してもよい。この場合、破損は、施工直後に破損した箇所であってもよいし、施工後に長期間経過した後、劣化により破損した箇所でもよい。なお、施行直後の破損は、例えば、他の施工作業により外力が作用されることなどで発生する。破損した箇所に保護層を形成することで、破損したウレタン発泡層がさらに破損することを防止できる。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例における評価方法は、以下のとおりである。
[接着性評価]
合板上に形成したウレタン発泡層もしくは積層構造体を、下面(合板側の面)が一辺50mmになるようにカットしてサンプルを得た。得られたサンプルの上下両面を接着剤(商品名「ウルトラ他用途SUソフト」、コニシ株式会社製)で金属治具に接着させ、引張・圧縮試験機(テンシロン、エー・アンド・デイ製)を用い10mm/minの一定速度で、上下方向に引っ張った際に剥離する破壊荷重(F)を測定した。
さらに、上記測定値(破壊荷重(F))を用い接着強さSを下記の式で算出した。
S(kPa)=F(N)/A(mm)×10
上記式において、Aはサンプルの断面積であるため、本サンプルにおいては2500である。
なお、本測定においては、後述する実施例、比較例で示すとおり、合板を除いた厚みを30mmとし、ウレタン発泡層単層の場合は発泡層を30mm、保護層を施工する場合はウレタン発泡層と保護層をそれぞれ15mmとした。
評価基準は以下の通りである。
A:ウレタン発泡層と保護層との界面破壊より合板とウレタン発泡層の破断が先に発生する。
B:ウレタン発泡層と保護層との界面破壊の方が合板とウレタン発泡層との破断より先に発生し、接着強度が40kPa以上80未満kPaであった。
C:ウレタン発泡層と保護層との界面破壊の方が合板とウレタン発泡層との破断より先に発生し、接着強度が40未満kPaであった。
[落球試験]
合板上に形成したウレタン発泡層もしくは積層構造体をサンプルとして、ウレタン発泡層の表面又は積層構造体の表面の300mm上方から金属球(SUJ2、φ40mm、260g)を落下させ、表面状態を観察した。測定は5回実施し、以下の評価基準で評価した。
A:5回ともクラック発生なし。
B:5回中1回クラックが発生した。
C:5回中2回以上クラックが発生した。
[水酸基含有成分の有無]
保護層が水酸基含有成分を含有するか否かは、保護層の4辺をカットした後表層を除く位置において、1mm×100mm×100mmの直方体状にスライスし、ランダムに5箇所について近赤外分光法をもって測定した際、水酸基由来のピークがいずれかの測定で検出できた場合を、水酸基含有成分を含有すると判断した。また、保護層の切断方法としてはバンドソー等の鋸刃を用いて行うことが出来る。
[密度測定]
発泡層について、4辺をカットした後表層を除く位置において、10mm×100mm×100mmの直方体状にスライスし、上記サンプルの重量を元に密度を算出した。
なお、以上の各測定において1mm、10mmの厚みのサンプルが得られない場合には、サンプルの厚みは、できる限り大きな厚みとなるようにサンプリングする。
[実施例1]
表1に示した配合を有するポリオール液剤と、ポリイソシアネート化合物からなるイソシアネート液剤を表1の組成比となるように、300mm角の合板上にグラコ社製吹付装置H-25を用い、吹付施工し、反応かつ発泡させて、合板上に厚さ15mmのウレタン発泡層を形成した。
次に、ウレタン発泡層上に「セラタイカ2号」(製品名.水酸化アルミニウム含有、エスケー化研株式会社製)に水を1:1の質量比になるように加えて形成した硬化型パテを塗布した後、25℃環境下で3日間養生し、厚さ15mmの保護層を形成した。このとき、保護層の表面は、平滑となるようにした。
実施例、比較例で使用した成分は、以下のとおりであった。
[ポリイソシアネート化合物]
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(PM200、万華化学ジャパン社製)
[ポリオール化合物]
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(マキシモールRLK-087、川崎化成工業社製、水酸基価=200mgKOH/g)
[フィラー]
ウォラストナイト(SiO・CaO)(SH-1250、キンセイマテック社製)
[液状難燃剤]
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学社製)
[触媒]
・三量化触媒、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(DABCO TMR-7)、エアープロダクツ社製、エチレングリコールとの混合物(2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩45~55質量%、エチレングリコールが45~55質量%)
・樹脂化アミン系触媒、1,2-ジメチルイミダゾール(TOYOCAT-DM70)、東ソー社製、エチレングリコールとの混合物(1,2-ジメチルイミダゾールが65~75質量%、エチレングリコールが25~35質量%)
・樹脂化金属系触媒、ビスマストリオクテート(ネオスタンU-600、日東化成社製)、濃度55~58質量%
[発泡剤]
・ハイドロフルオロオレフィン(HFO、ソルティスLBA、ハネウェルジャパン社製)
・水
[整泡剤]
・シリコーン系整泡剤(SH-193、東レダウコーニング社製)
[実施例2]
セラタイカ2号の代わりに、セラタイカ2号U(製品名.水酸化アルミニウム含有、エスケー化研社株式会社製)を用い、セラタイカ2号Uと水を質量比1:1となるように混合して硬化型パテを形成した以外は実施例1と同様に実施した。
[実施例3]
セラタイカ2号の代わりに、ASボンド(製品名.エーアンドエーマテリアル社製)を用いて硬化型パテ(水ガラス、カオリナイト、珪藻土、及びクレー含有)を形成した以外は実施例1と同様に実施した。
[実施例4]
硬化型パテの代わりに、スプレー式による1液硬化型のウレタン樹脂組成物(商品名「GS難燃B1フォーム」、株式会社エービーシー商会)を使用して、スプレーからの吹き付けにより保護層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。保護層はフィラーを実質的に含有していなかった。
[実施例5]
硬化型パテの代わりに、スプレー式による1液硬化型のウレタン樹脂組成物(商品名「ハイプレンフォーム」、ポリエステルポリオール含有、三井化学産資株式会社製)を使用して、スプレーからの吹き付けにより保護層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。保護層はフィラーを実質的に含有していなかった。
[実施例6]
硬化型パテの代わりに、スプレー式による2液硬化型のウレタン樹脂組成物(商品名「ハイプレンハンディフォーム」、ポリエステルポリオール含有、三井化学産資株式会社製)を使用して、スプレーからの吹き付けにより保護層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。保護層はフィラーを実質的に含有していなかった。
[比較例1]
合板の上に厚さ30mmのウレタン発泡層を形成し、かつ保護層を積層しなかった点を除いて、実施例1と同様に実施した。このとき、ウレタン発泡層の表面は、平滑となるようにした。
[比較例2]
以下に示す表2に示した配合を有するポリオール液剤と、ポリイソシアネート化合物からなるイソシアネート液剤により、合板上に厚さ30mmのウレタン発泡層を形成し、かつ保護層を積層しなかった点を除いて、実施例1と同様に実施した。このとき、ウレタン発泡層の表面は、平滑となるようにした。
以上の表3に示すように、各実施例は、ウレタン発泡層の上に、水酸基含有成分を含む保護層を形成することで、ウレタン発泡層と保護層との接着性が良好となった。さらに落球試験の結果も良好となり、フライアビリティが優れていた。また、フィラーを含有することで、難燃性などの機能も向上させることができた。
それに対して、比較例1では、保護層を形成しなかったので、フライアビリティが不十分であった。比較例2では、ウレタン発泡層がフィラーを含有しないので、難燃性などの機能を向上させることが難しかった。

Claims (8)

  1. フィラーを含有するウレタン発泡層と、前記ウレタン発泡層上に設けられる保護層とを備え、前記保護層が水酸基含有成分を含み、
    前記フィラーが、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記ウレタン発泡層における前記フィラーの含有量が、ウレタン樹脂100質量部に対して、4質量部以上である、積層構造体。
  2. 前記保護層に含まれる上記水酸基含有成分が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク、及びカオリナイトからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の積層構造体。
  3. 保護層が水ガラス又はセメントのいずれかを含有するセラミック系組成物から形成される請求項1又は2に記載の積層構造体。
  4. 前記保護層が、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、珪砂、及び珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1~のいずれか1項に記載の積層構造体。
  5. 前記保護層がウレタン樹脂組成物から形成され、かつ、前記保護層が実質的にフィラーを含有しない、請求項1~のいずれか1項に記載の積層構造体。
  6. 前記保護層を形成するためのウレタン樹脂組成物が、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群から選択されるポリオール化合物を含み、
    前記ポリオール化合物が、前記保護層に含有される水酸基含有成分の少なくとも一部を構成する請求項に記載の積層構造体。
  7. 前記保護層の厚みが2mm以上である請求項1~のいずれか1項に記載の積層構造体。
  8. 前記ウレタン発泡層が、建築物を構成する部材に積層される請求項1~のいずれか1項に記載の積層構造体。
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