JP7392381B2 - 光学フィルタおよび撮像装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可視波長領域の光を透過し、近赤外波長領域の光を遮断する光学フィルタおよび当該光学フィルタを備える撮像装置に関する。
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し近赤外域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。
当該光学フィルタとしては、近赤外吸収色素(NIR色素)を含む吸収層を備える光学フィルタが知られている。近赤外吸収色素としては、可視光の透過率が高く、近赤外光遮蔽能に優れることから、スクアリリウム色素が好ましい。特に近赤外光の多重反射によるゴーストやフレアを抑制する観点からは、800nm以上の長波長領域に最大吸収波長を有するスクアリリウム色素が好ましいとされる(特許文献1、2)。
国際公開第2016/158461号 特許第3094037号公報
しかしながら800nm以上の長波長領域に最大吸収波長を有するスクアリリウム色素は、構造中におけるπ共役系が大きくなってしまうため、吸収層形成時の有機溶剤や透明樹脂への溶解性に乏しい傾向にある。
実際に、特許文献1および2に記載のスクアリリウム色素は近赤外光の遮蔽性と可視域の透過率の面では非常に優れるが、有機溶剤や透明樹脂への溶解性に乏しく、有機溶剤や透明樹脂への溶解性を向上させることが必要である。
したがって、本発明は、近赤外光の遮光性、特に800nm以上の長波長領域の遮光性に優れ、かつ、有機溶剤や透明樹脂への溶解性に優れたスクアリリウム色素および当該色素を用いた光学フィルタの提供を目的とする。
本発明は下記光学フィルタおよび撮像装置に関する。
[1]
近赤外線吸収色素と透明樹脂とを含む吸収層を備える光学フィルタであって、前記近赤外線吸収色素は下記式(S1)または式(S2)に示すシリル基を有しかつ下記特性(i-1)を満たすスクアリリウム色素(A)を含む、光学フィルタ。
(i-1)前記スクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに830~1000nmに最大吸収波長を有する
Figure 0007392381000001
[上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
S1~RS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価複素環基、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基である。]
[2]
前記スクアリリウム色素(A)は、下記式(A1)に示す化合物である、前記[1]に記載の光学フィルタ。
Figure 0007392381000002
[上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
A2~RA7の少なくとも一つは前記式(S1)または式(S2)に示すシリル基であり、RA1は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基であり、
A2~RA7の残余は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、リン酸基、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルコキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、またはカルボニル構造を含む1価有機基である。]
[3]
前記式(A1)に示す化合物において、RA3およびRA6の少なくとも一方は前記式(S1)または式(S2)に示すシリル基である、前記[2]に記載の光学フィルタ。
[4]
前記スクアリリウム色素(A)は、最大吸収波長における透過率が10%となるように前記スクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-2)~(i-3)を満たす、前記[1]~[3]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
(i-2)400~500nmの波長領域の光の平均透過率が95%以上である
(i-3)400~500nmの波長領域の光の最小透過率が93%以上である
[5]
前記スクアリリウム色素(A)は、最大吸収波長における透過率が10%となるように前記スクアリリウム色素(A)を透明樹脂に溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-4)~(i-7)を満たす、前記[1]~[4]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
(i-4)830~1000nmに最大吸収波長を有する
(i-5)透明樹脂中での最大吸収波長λresinとジクロロメタン中での最大吸収波長λCH2Cl2との差の絶対値|λresin-λCH2Cl2|が15nm以下である
(i-6)400~500nmの波長領域の光の平均透過率が93%以上である
(i-7)透過率が20%となる最も短い波長λT20と透過率が60%となる最も長い波長λT60との差の絶対値|λT60-λT20|が80nm以下である
[6]
前記透明樹脂が、ガラス転移温度が100℃以上であり、かつ、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、およびアクリルのいずれかから選ばれる1種以上の樹脂を含む、前記[1]~[5]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
[7]
ガラス、吸収ガラスまたは樹脂製の透明基板をさらに備え、前記吸収層は前記透明基板の主面上に設けられる、前記[1]~[6]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
[8]
前記近赤外線吸収色素は、下記特性(ii-1)を満たすスクアリリウム色素(B)をさらに含む、前記[1]~[7]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
(ii-1)前記スクアリリウム色素(B)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに650~780nmに最大吸収波長を有する
[9]
さらに反射層を備え、前記反射層は、
600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をIR50とし、380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をUV50としたときに、下記特性(iii-1)~(iii-6)を満たす、前記[1]~[8]のいずれか1に記載の光学フィルタ。
(iii-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が650~800nmの範囲にある
(iii-2)入射角0度でのUV50(UV500deg)が385~425nmの範囲にある
(iii-3)435~500nmの波長領域の光の平均透過率が88%以上である
(iii-4)640~660nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である
(iii-5)750~1000nmの波長領域の光の平均透過率が10%以下である
(iii-6)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以上である
[10]
前記吸収層が、前記吸収層における830~900nmの波長領域の光の平均透過率が40%以下となる含有量で、前記スクアリリウム色素(A)を含み、
前記光学フィルタが、600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をIR50とし、600~800nmの波長領域における透過率が20%のときの波長をIR20とし、380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をUV50としたときに、下記特性(iv-1)~(iv-7)を満たす前記[9]に記載の光学フィルタ。
(iv-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が620~700nmの範囲にある
(iv-2)入射角0度でのIR20(IR200deg)が640~720nmの範囲にある
(iv-3)入射角0度でのUV50(UV500deg)が390~430nmの範囲にある
(iv-4)435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である
(iv-5)490~560nmの波長領域の光の平均透過率が80%以上である
(iv-6)590~630nmの波長領域の光の平均透過率が65%以上である
(iv-7)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以下である
[11]
前記[1]~[10]のいずれか1に記載の光学フィルタを備える撮像装置。
[12]
下記式(A1)に示す化合物。
Figure 0007392381000003
[上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
A2~RA7の少なくとも一つは下記式(S1)または式(S2)に示すシリル基であり、RA1は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基であり、
A2~RA7の残余は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、リン酸基、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルコキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、またはカルボニル構造を含む1価有機基である。]
Figure 0007392381000004
[上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
S1~RS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価複素環基、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基である。]
本発明によれば、有機溶剤や透明樹脂に対するスクアリリウム色素の溶解性が高いほど吸収層中の色素濃度を高めることができるため、吸収層における色素濃度の調整の幅が広がり、吸収層の厚みの自由度が向上する。また、色素濃度を高めることで吸収層を薄く塗工した場合でも所望の分光特性を得ることができ、塗工方法の選択肢が増える。さらに、スクアリリウム色素の透明樹脂への溶解性が向上することで、可視透明性や耐熱性、耐光性といった求める特性に応じて様々な樹脂を選択することができ、樹脂の選択性も広がる。
図1は本発明の光学フィルタの一実施形態を概略的に示す断面図である。 図2は本発明の光学フィルタの一実施形態を概略的に示す断面図である。 図3は本発明の光学フィルタの一実施形態を概略的に示す断面図である。 図4は、スクアリリウム化合物aのシクロオレフィン樹脂中における最大吸収波長における透過率が1%、10%、20%となるように規格化した分光透過率曲線である。 図5は、例5-2の光学フィルタの分光透過率曲線(入射角0度)である。 図6は、例5-2の光学フィルタの分光透過率曲線(入射角30度)である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と略記し、式(I)で示される化合物からなるNIR色素を「NIR色素(I)」と略記することもある。他の式についても同様である。
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その全波長領域において透過率が90%を下回らないことをいい、同様に透過率が例えば1%以下とは、その全波長領域において透過率が1%を超えないことをいう。特定の波長域における平均透過率は、該波長域の1nm毎の透過率の相加平均である。
本明細書において、内部透過率とは、{実測透過率/(100-反射率)}×100の式で示される、実測透過率から界面反射の影響を引いて得られる透過率である。本明細書において、樹脂基材の透過率、吸収層等の色素が透明樹脂に含有されて測定される層の透過率の分光は、「透過率」と記載されている場合も全て「内部透過率」である。一方、色素をジクロロメタン等の溶媒に溶解して測定される透過率、誘電体多層膜を有する光学フィルタの透過率は、実測透過率である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
本発明の光学フィルタは、近赤外線吸収色素と透明樹脂とを含む吸収層を備える。以下、図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。
図1は、透明基板12と透明基板12の一方の主面上に配置された吸収層11を有する光学フィルタ10Aの断面図である。なお、「透明基板12の一方の主面(上)に、吸収層11を備える」とは、透明基板12に接触して吸収層11が備わる場合に限らず、透明基板12と吸収層11との間に、別の機能層が備わる場合も含む。後述する、透明基板12の他方の主面(上)に、反射層13を備える構成も同様であり、以下の構成も同様である。
なお、吸収層自体が基板(透明基板)として機能する場合は透明基板12を省略することができる。
図2は、透明基板12と、透明基板12の一方の主面上に配置された吸収層11と、透明基板12の他方の主面上に設けられた反射層13を有する光学フィルタ10Bの断面図である。
図3は、吸収層11の主面上に反射防止層14を備えた光学フィルタ10Cの断面図である。吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。なお、反射防止層は、吸収層の最表面だけでなく、吸収層の側面全体も覆う構成でもよい。側面を覆うことで酸素バリア性が高まる結果、吸収層における色素の耐光性を高めることができる。
以下、吸収層、反射層、透明基板および反射防止層について説明する。
〔吸収層〕
<近赤外線吸収色素>
本発明の光学フィルタにおいて、近赤外線吸収色素はスクアリリウム色素(A)を含む。
スクアリリウム色素(A)は、下記式(S1)または式(S2)に示すシリル基を有しかつ下記各特性を満たすことが好ましい。
シリル基を有することで、色素の分光特性を維持しつつ、有機溶剤や透明樹脂への溶解性を高めることができる。そして、式(S1)および式(S2)に示すように、かさ高いシリル基を導入することで、色素同士の会合性が低下し、溶解性が向上すると考えられる。
Figure 0007392381000005
上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
S1~RS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価複素環基、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基である。
炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基の炭素数は、長鎖のアルキル基や立体的に構造が大きいアルキル基が望ましいが、長くなりすぎるとアルキル基同士の分子間相互作用によって凝集してしまう観点から、3~12が好ましく、脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、溶解性の向上に必要なかさ高さを有し、アルキル基間の分子間力による凝集の影響が小さいという観点から、イソプロピル基やブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、デシル基が特に好ましい。また脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよい。
炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基が好ましい。
炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基の炭素数は、環構造の安定性の観点から、5~14が好ましく、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基が好ましく、シクロヘキシル基、シクロペンチル基が特に好ましい。
炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。
炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基の炭素数は6~12が好ましく、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、電子的相互作用による凝集性の観点からフェニル基が特に好ましい。すなわち、π共役系が大きくなると電子的相互作用によって、凝集しやすくなるため、フェニル基のように、かさ高いがπ共役系の小さい構造が好ましい。
炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。
炭素数3~14の1価複素環基の炭素数は3~12が好ましく、複素環基としては、複素環基におけるヘテロ原子の数が多くなると、電子的相互作用によって溶解性が低下するため、ヘテロ原子を1つだけ有するフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基が好ましく、π共役系が大きすぎない方が相互作用による凝集性を生みにくいという観点から、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基が特に好ましい。
炭素数3~14の1価複素環基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。
炭素数1~12のアルコキシ基の炭素数としては、4~12が好ましく、6~12が特に好ましい。
炭素数1~12のアルコキシ基は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン原子、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
アミノ基は置換基を有してもよく、置換基としては炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~8の1価脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
スクアリリウム色素(A)は下記特性(i-1)を満たす。
(i-1)スクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに830~1000nmに最大吸収波長を有する。かかる範囲に最大吸収波長を有することで、近赤外線領域のなかでも長波長領域の光を吸収することができる。
さらに、スクアリリウム色素(A)は、最大吸収波長における透過率が10%となるようにスクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-2)~(i-3)を全て満たすことが好ましい。
(i-2)400~500nmの波長領域の光の平均透過率が95%以上である
(i-3)400~500nmの波長領域の光の最小透過率が93%以上である
400~500nmのいわゆる可視光領域の一部において、上記特性を満たすことで可視光を多く取り入れることができ、色再現性に優れた光学フィルタを得ることができる。
スクアリリウム色素(A)は、さらに、最大吸収波長における透過率が10%となるようにスクアリリウム色素(A)を透明樹脂に溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-4)~(i-7)を全て満たすことが好ましい。
特性(i-4)~(i-7)は、光学フィルタの吸収層にスクアリリウム色素(A)が実際に含有された場合の特性を規定したものである。したがって、スクアリリウム色素(A)を溶解する透明樹脂としては、吸収層に用いられる透明樹脂が好ましい。
また、透明樹脂中の分光特性は、色素と透明樹脂を含む溶液を基板に塗布して測定する。ここで空気界面と基板界面での反射の影響を回避するため、透明樹脂中の分光特性は、下記式から算出される内部透過率で評価する。
内部透過率={実測透過率/(100-実測反射率)}×100
(i-4)スクアリリウム色素(A)は830~1000nmに最大吸収波長を有する。かかる範囲に最大吸収波長を有することで、近赤外線領域のなかでも長波長領域の光を吸収することができる。
(i-5)スクアリリウム色素(A)は透明樹脂中での最大吸収波長λresinとジクロロメタン中での最大吸収波長λCH2Cl2との差の絶対値|λresin-λCH2Cl2|が15nm以下である。かかる最大吸収波長の差が小さいことは、樹脂中分光が溶液分光と比べて大きく変わらないことを意味する。その結果、可視光領域の透過率低下を抑制することができる。また所望の光学フィルタ特性を得るために、樹脂を変更する場合があるが、樹脂の違いによって大きく分光特性が変わらなければ設計変更をしやすいメリットがある。
(i-6)スクアリリウム色素(A)は400~500nmの波長領域の光の平均透過率が93%以上である。400~500nmのいわゆる可視光領域の一部において、上記特性を満たすことで可視光を多く取り入れることができ、色再現性に優れる光学フィルタとなる。
(i-7)スクアリリウム色素(A)は透過率が20%となる最も短い波長λT20と透過率が60%となる最も長い波長λT60との差の絶対値|λT60-λT20|が80nm以下である。かかる特性は、最大吸収波長付近の透過率の変化が急峻であることを意味し、かかる特性を満たすことで、最大吸収波長付近の波長領域のみを効率よく吸収できる。
スクアリリウム色素(A)としては、下記式(A1)に示す化合物が好ましい。
スクアリリウム色素(A1)はクロモン骨格を有する。
Figure 0007392381000006
上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
A1は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、フッ素原子が好ましい。
炭素数1~5のアルキル基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられる。
また、炭素数1~5のアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、メチル基がより好ましい。
A2~RA7の少なくとも一つは前記式(S1)または式(S2)に示すシリル基である。
A2~RA7の残余は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、リン酸基、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルコキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、またはカルボニル構造を含む1価有機基である。
ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、フッ素原子が好ましい。
炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基の炭素数は1~18が好ましく、炭素数1~15がより好ましい。また脂肪族炭化水素基は分岐状でも直鎖状でもよい。
炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基が好ましい。
炭素数1~15のアルコキシ基の炭素数は1~12が好ましく、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルコキシ基がより好ましい。
炭素数1~15のアルコキシ基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。
アミノ基は置換基を有してもよく、置換基としては炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基、-CORA8基、-COORA8基、-CONHRA8基、-SOA8基が好ましく、炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基、-CORA8基が特に好ましい。ここでRA8は炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基を表す。
カルボニル構造を含む1価有機基としては、-C(=O)RA9で表される基が好ましい。RA9としては、水素原子、水酸基、炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基、-NHRA91基、-N(RA91基、-ORA91基が好ましく、炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基、-N(RA91基が特に好ましい。ここでRA91は炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基を表す。
化合物(A1)において、RA3およびRA6の少なくとも一方は前記式(S1)または式(S2)に示すシリル基であることが好ましい。
かさ高いシリル基を導入することで色素のπ共役平面がねじれてしまうと吸収がブロードになったり、可視光域に余計な吸収が生じたりと、分光特性が悪化するおそれがある。シリル基の置換位置が上記であることで、色素のπ共役平面にひずみを生じさせることなく、有機溶剤や透明樹脂に対する溶解性を向上することができる。
さらに、化合物(A1)としては、RA6は前記式(S1)に示すシリル基であり、RA2、RA4、RA5、RA7が水素原子である、下記化合物(A1)-I、RA3は前記式(S1)に示すシリル基であり、RA2、RA4、RA5、RA7が水素原子である、下記化合物(A1)―II、RA6は前記式(S2)に示すシリル基であり、RA2、RA4、RA5、RA7が水素原子である、下記化合物(A1)―IIIが好ましい。
Figure 0007392381000007
化合物(A1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
Figure 0007392381000008
化合物(A1)の製造方法について、化合物(A1)-I、化合物(A1)-II、化合物(A1)-IIIの製造方法を例に説明する。
下記スキームにおいて、X~Xはハロゲン原子であり、Phはフェニル基であり、Yはアニオンである。
〔化合物(A1)-Iの製造方法〕
1,4-ジハロゲン化ベンゼン(1)と、ハロゲン化トリアルキルシラン(2)を反応させ、化合物(3)を得て、さらにチオ安息香酸とのカップリング反応により化合物(4)を得て、化合物(4)においてチオ安息香酸を脱保護することによりジスルフィド(5)とチオール(6-1)の混合物を得る。
Figure 0007392381000009
続いて、ジスルフィド(5)とチオール(6-1)の混合物について還元反応を行うことで、ジスルフィド(5)をすべてチオール(6-1)に変換し、下記化合物(7-1)を反応させたのちに、エステルの加水分解を行うことで化合物(8-1)を得て、さらに分子内Friedel-Crafts反応により化合物(9-1)を得て、さらにグリニャール試薬と反応させたのちに、酸で処理することにより化合物(10-1)を得て、スクアリン酸を反応させることにより、目的の化合物(A1)-Iを得る。
Figure 0007392381000010
〔化合物(A1)-IIの製造方法〕
化合物(A1)-Iの合成方法において、チオール(6-1)に替えてチオール(6-2)を用い、下記化合物(7-2)を反応させる以外は化合物(A1)-Iの合成方法と同様にすることで、シリル基(S1)がRA3の位置に置換した化合物(A1)―IIを得ることができる。
化合物(7-2)は、例えばOrg.Lett.,5,213(2003)を参考に製造することができる。
Figure 0007392381000011
〔化合物(A1)-IIIの製造方法〕
化合物(A1)-Iの合成方法において、化合物(2)に替えて化合物(11)を反応させる以外は化合物(A1)-Iの合成方法と同様にすることで、シリル基(S2)がRA6の位置に置換した化合物(A1)-IIIを得ることができる。
Figure 0007392381000012
Figure 0007392381000013
色素(A1)は、1種を用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
吸収層におけるNIR色素(A)の含有量は、光学フィルタの設計に応じて、例えば、後述の反射層との関係において(iii-1)~(iii-6)の特性や、後述の光学フィルタとしての(iv-1)~(iv-7)の特性を満足するように適宜選択される。好ましくは、可視光、特に青色光の透過率を確保しつつ、近赤外光を遮光し、樹脂全体のTgを下げすぎない観点から、樹脂100質量部に対して0.01~20質量部が好ましい。
吸収層は、NIR色素として上記スクアリリウム色素(A)とは異なるスクアリリウム色素(B)を含んでもよい。スクアリリウム色素(B)は下記特性(ii-1)を満たすことが好ましい。
(ii-1)スクアリリウム色素(B)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに650~780nmに最大吸収波長を有する。
スクアリリウム色素(B)としては、下記式(I)または式(II)で表されるスクアリリウム色素が好ましい。
Figure 0007392381000014
ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。
24およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基、-NR2728(R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29(R29は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)、-NHR30、または、-SO-R30(R30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R41、R42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
Figure 0007392381000015
21とR22、R22とR25、およびR21とR23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。
複素環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
複素環Bが形成される場合のR22とR25、および複素環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X-Y-および-X-Y-(窒素に結合する側がXおよびX)として、XおよびXがそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、YおよびYがそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。XおよびXが、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、YおよびYはそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
Figure 0007392381000016
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR3839(R38およびR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R31~R36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
27、R28、R29、R31~R37、複素環を形成していない場合のR21~R23、およびR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
複素環を形成していない場合の、R21、R22、R23およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基を示す。
なお、式(I)において、特に断りのない限り、炭化水素基はアルキル基、アリール基、またはアルアリール基である。特に断りのない限り、アルキル基および、アルコキシ基、アリール基またはアルアリール基におけるアルキル部分は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。以下の他の式におけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルアリール基においても、同様である。式(I)において、R29における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアシルオキシ基が挙げられる。R29を除いて「置換基を有してもよい」という場合の置換基としては、ハロゲン原子または炭素数1~15のアルコキシ基が例示できる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
Figure 0007392381000017
ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有する5員環または6員環であり、環Zが有する水素原子は置換されていてもよい。水素原子が置換される場合、置換基としては、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
とR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、その場合、ヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1が有する水素原子は置換されていてもよい。水素原子が置換される場合、置換基としては、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基が挙げられる。
ヘテロ環を形成していない場合のRおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。Rおよびヘテロ環を形成していない場合のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有してもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
式(II)において、炭化水素基の炭素数は1~15が挙げられる。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~10が挙げられる。式(II)において、「置換基を有してもよい」という場合の置換基としては、ハロゲン原子または炭素数1~10のアルコキシ基が例示できる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
化合物(I)および化合物(II)は、それぞれ公知の方法で、製造できる。化合物(I)については、例えば、米国特許第5,543,086号明細書、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号に記載された方法で製造可能である。
吸収層におけるNIR色素(B)の含有量は、光学フィルタの設計に応じて、例えば、後述の反射層との関係において(iii-1)~(iii-6)の特性や、後述の光学フィルタとしての(iv-1)~(iv-7)の特性を満足するように適宜選択される。好ましくは、可視光、特に青色光の透過率を確保しつつ、近赤外光を遮光し、樹脂全体のTgを下げすぎない観点から、樹脂100質量部に対して0.01~20質量部が好ましい。
<その他の色素>
吸収層はさらに、本発明の効果を損なわない範囲で、近赤外線吸収色素以外のその他の色素を含んでもよい。その他の色素としては、紫外線吸収色素が挙げられる。
紫外線吸収色素(UV色素)としては、ジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに350~450nmに最大吸収波長を有する化合物が好ましい。吸収層が紫外線吸収色素を含むことでUV側の斜入射特性を改善することができる。
UV色素は、具体例に、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、メロシアニン系の色素が好ましい。また、UV色素は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
吸収層におけるUV色素の含有量は、吸収層のTgを下げすぎない観点から0.01~20wt%が好ましい。
<透明樹脂>
吸収層に用いる透明樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは100℃以上であり、より好ましくは135℃以上である。透明樹脂のガラス転移温度がかかる範囲であることにより、高温時の樹脂中における色素の熱運動を抑制でき、色素の耐熱性を高く保つことができる。ガラス転移温度の上限は特にないが、成形加工性等の観点から、500℃以下が好ましい。
また、透明樹脂としては、波長400~900nmの光、すなわち可視光を透過することが好ましい。
透明樹脂の種類は特に制限されず、例えば、可視光域の透明性(T400~T700)、耐熱性、ガラス転移点を両立できる観点からシクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、およびアクリルのいずれかから選ばれる1種以上が好ましい。なかでも可視光域の透明性(T400~T700)、耐熱性を両立できる観点からシクロオレフィンポリマーとポリイミドが特に好ましい。
吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を有してもよい。
本発明の光学フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい。
吸収層は、例えば、NIR色素と、透明樹脂または透明樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに含まれる透明基板でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、光学フィルタが透明基板を含む場合、このフィルムを透明基板上に貼着してもよい。
吸収層は、光学フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。例として、一方の層を、NIR色素と透明樹脂を含む近赤外吸収層とし、もう一方の層を、UV色素と透明樹脂を含む近紫外吸収層としてもよい。
また、吸収層は、それ自体が基板(透明基板)として機能するものでもよい。
〔透明基板〕
透明基板は、400~700nmの可視光を透過すれば、構成する材料は特に制限されず、近赤外光や近紫外光を吸収する材料でもよい。例えば、ガラスや結晶等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料が挙げられる。吸収層の特性を損なわなければ、吸収層自体が基板として機能するものでもよいが、製造時の反りやはがれを抑制するという観点から、素子に対する樹脂の割合は低い方が好ましい。このような観点から、透明基板にはガラス、吸収ガラスを用い、吸収層はそれらの主面上に設けられることが好ましい。
透明基板に使用できるガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、目的に応じて吸収ガラスが好ましく、赤外光を吸収する観点ではリン酸系ガラス、沸リン酸系ガラスが好ましい。赤色光(600~700nm)を多く取り込みたい際は、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラスが好ましい。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiOで構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
透明基板として使用できる透明樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、透明基板に使用できる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の複屈折性結晶が挙げられる。透明基板の光学特性は、上記吸収層、反射層等と積層して得られる光学フィルタとして、前述した光学特性を有するとよい。結晶材料としてはサファイアが好ましい。
透明基板は、光学フィルタとしての光学特性、機械特性等の長期にわたる信頼性に係る形状安定性の観点、フィルタ製造時のハンドリング性等から、無機材料が好ましく、特にガラス、サファイアが好ましい。
透明基板の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、フィルム状でもよく、その厚さは、例えば、0.03~5mmが好ましく、薄型化の観点からは、0.03~0.5mmがより好ましい。加工性の観点から言えば、板状のガラスからなる板厚0.05~0.5mmの透明基板が好ましい。
〔反射層〕
本発明の光学フィルタはさらに、反射層を備えることが好ましい。
反射層は、誘電体多層膜からなり、特定の波長域の光を遮蔽する機能を有する。反射層としては、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するものが挙げられる。反射層は、近赤外光を反射する反射領域を有することが好ましい。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。反射層は、上記特性に限らず、所定の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa、TiO、Nbが挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiOが好ましい。
一方、低屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO、SiO等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiOが好ましい。
反射層は、以下の各特性(iii-1)~(iii-6)を全て満たすことが好ましい。
ここで、IR50、UV50の意味は下記のとおりである。
IR50:600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長
UV50:380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長
(iii-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が650~800nmの範囲にあることが好ましく、680~770nmの範囲にあることがより好ましい。反射層がかかる特性を有することで赤外光を効果的にカットし、赤色帯域の可視光を多く取り込むことができる。
(iii-2)入射角0度でのUV50(UV500deg)が385~430nmの範囲にあることが好ましく、395~420nmの範囲にあることがより好ましい。反射層がかかる特性を有することで紫外光を効果的にカットし、青色帯域の可視光を多く取り込むことができる。
(iii-3)435~500nmの波長領域の光の平均透過率が88%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。反射層がかかる特性を有することで可視光を多く取り込むことができ、色再現性の観点で好ましい。
(iii-4)640~660nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。反射層がかかる特性を有することで可視光、特に600~700nmの波長帯域の光を多く取り込むことができ、色再現性の観点で好ましい。
(iii-5)750~1000nmの波長領域の光の平均透過率が10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。反射層がかかる特性を有することで750~1100nmの波長帯の赤外光を遮光することができ、フレアやゴーストの抑制をすることができる。
(iii-6)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以上であることが好ましい。
さらに、反射層は、透過域と遮光域の境界波長領域で透過率が急峻に変化することが好ましい。この目的のためには、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数は、15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。また、誘電体多層膜の膜厚は、2~10μmが好ましい。
誘電体多層膜の合計積層数や膜厚が上記範囲内であれば、反射層は小型化の要件を満たし、高い生産性を維持しながら、透過域と遮光域の境界波長領域での透過率の急峻性を満足できる。また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数の反射層で構成される。
例として、2層の反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯および近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。また、例えば、本フィルタが透明基板を有する場合に、2層以上の反射層を設ける際には、全てを透明基板の一方の主面上に設けてもよく、各反射層を、透明基板を挟んでその両主面上に設けてもよい。
〔反射防止層〕
本発明の光学フィルタはさらに、反射防止層を備えてもよい。
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体膜を交互に積層して得られる。
〔他の構成要素〕
本発明の光学フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
〔光学フィルタ〕
本発明の光学フィルタは、特定の特性を満たすスクアリリウム色素(A)を近赤外光吸収色素として含む吸収層を備えることで、近赤外光のなかでも800nm以上の長波長領域の吸収性に優れる。
ここで、本発明の光学フィルタは、以下の(iv-1)~(iv-7)の各特性を全て満たすことが好ましい。なおスクアリリウム色素(A)は吸収層における830~900nmの波長領域の光の平均透過率が40%以下となる含有量で吸収層に含まれる。
ここで、IR50、IR20、UV50の意味は下記のとおりである。
IR50:600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長
IR20:600~800nmの波長領域における透過率が20%のときの波長
UV50:380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長
(iv-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が620~700nmの範囲にあることが好ましく、620~680nmの範囲にあることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで500~600nmの可視光をできるだけ多く取り込み、700nm以上の近赤外光をカットすることができる。
また、かかる特性を満たすためには、反射膜のIRカット端と色素の吸収を上記領域に合わせることが挙げられる。
(iv-2)入射角0度でのIR20(IR200deg)が640~720nmの範囲にあることが好ましく、640~700nmの範囲にあることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで500~600nmの可視光をできるだけ多く取り込み、700nm以上の近赤外光をカットすることができる。
また、かかる特性を満たすためには、反射膜のIRカット端と色素の吸収を上記領域に合わせることが挙げられる。
(iv-3)入射角0度でのUV50(UV500deg)が390~430nmの範囲にあることが好ましく、400~420nmの範囲にあることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することでUV側の斜入射特性を改善して可視光を多く取り入れることができ好ましい。
また、かかる特性を満たすためには、反射膜のUVカット端と色素の吸収を上記領域に合わせることが挙げられる。
(iv-4)435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上であることが好ましく、75以上であることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで435~480nmの青色帯域の光を多く取り入れることができる。
また、かかる特性を満たすためには、吸収層における色素の最大吸収波長の透過率を10%に合わせた時に、435~480nmの平均透過率が85%以上、より好ましくは87%以上、特に好ましくは90%以上の色素を用いることが挙げられる。
(iv-5)490~560nmの波長領域の光の平均透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで490~560nmの緑色帯域の光を多く取り入れることができる。
また、かかる特性を満たすためには、吸収層における色素の最大吸収波長の透過率を10%に合わせた時に、490~560nmの平均透過率が90%以上、より好ましくは91.5%以上、特に好ましくは93%以上の色素を用いることが挙げられる。
(iv-6)590~630nmの波長領域の光の平均透過率が65%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで590~630nmの赤色帯域の光を多く取り入れることができる。
また、かかる特性を満たすためには、吸収層における色素の最大吸収波長の透過率を10%に合わせた時に、590~630nmの平均透過率が96.5%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上の色素を用いることが挙げられる。
(iv-7)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以下であることが好ましく、5nm以下であることが好ましい。光学フィルタがかかる特性を有することで斜入射特性に優れる。
また、かかる特性を満たすためには、例えば多層膜のシフト帯域を色素の吸収に合わせることが挙げられる。
本発明の光学フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置に使用した場合に、色再現性に優れる撮像装置を提供できる。かかる撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本発明の光学フィルタとを備える。本発明の光学フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
以下に本発明の実施例を説明する。
分光特性は日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計UH4150を用いた。
<化合物aの合成>
下記に示す反応経路に従い、8工程にて合成した。
Figure 0007392381000018
<工程1>
1000mLの3つ口フラスコに1,4-ジヨードベンゼン(45g、136.4mmol)とジエチルエーテル410mLを入れ、窒素雰囲気下、-78℃に冷却した。そこへn-ブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液)90mLを滴下ロートを用いて滴下し、窒素雰囲気下、-78℃で5時間撹拌した。同温度のまま、さらにクロロトリヘキシルシラン(47.9g、150.1mmol)を滴下したのち、室温に戻し、15時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水を加えてエーテル層を洗浄し、抽出した。溶媒を除去したのち、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン100%)にて精製を行い、無色透明液体(53.5g、109.9mmol、収率80.6%)を得た。
<工程2、3>
工程1で得られた生成物(57.2g、117.6mmol)を1000mLのナスフラスコに入れ、そこへ無水1,10-フェナントロリン(4.2g、23.5mmol)、ヨウ化銅(2.3g、11.8mmol)、チオ安息香酸(19.5g、141mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(30.4g、235.1mmol)、トルエン240mLを加えた。フラスコ内を脱気したのちに窒素置換し、110℃で12時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温に戻し、ろ過することで固体成分を取り除いた。ろ液に水を加えたのちに有機層を抽出し、溶媒を除去した。得られた茶色液体63.4gをメタノール240mLに溶かし、炭酸カリウム(10.7g、72.9mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過することで固体成分を除いた。ろ液の溶媒を除去し、そこへジクロロメタンと希塩酸を加えて抽出し、溶媒を除去した。得られた茶色液体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製を行い、黄色透明液体(ジスルフィドとチオールの混合物、45.3g)を得た。
<工程4>
工程3で得られた黄色透明液体(ジスルフィドとチオールの混合物)45.3gを1000mLのナスフラスコに入れ、ジクロロメタン120mL、酢酸240mLを加えた。反応溶液を氷冷し、そこへ亜鉛粉末(50g、764.8mmol)を加え、窒素雰囲気下、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温に戻し、水を加えて有機層を抽出した。溶媒を除去したのち、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製を行い、無色透明液体(41.3g、105.2mmol、収率89.5%(3stepの合計収率))を得た。
<工程5>
ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液、7.4g、38.2mmol)の入った300mLのナスフラスコを氷冷し、工程4で得られた無色透明液体(15.0g,38.2mmol)を5.7mLのメタノールに溶かして添加した。反応溶液を室温に戻して窒素雰囲気下、10分環撹拌した。反応溶液を再度氷冷し、そこへ7.6mLのメタノールに溶かした4,4-ジメチル-2-ペンチン酸エチル(米国特許第5919950号を参考に合成、5.9g、38.2mmol)を加え、室温に戻したのち、窒素雰囲気下、1時間撹拌した。反応終了後、エタノール30mLと45%KOH水溶液10mLを加え、55℃で1時間加熱撹拌した。反応溶液を氷冷したのち、希塩酸を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。溶媒を除去したのち、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製を行い、黄色透明液体(14.8g、28.5mmol、収率74.7%)を得た。
<工程6>
1000mLのナスフラスコに工程5で得られた黄色透明液体(14.8g、28.5mmol)を入れ、氷冷下、塩化ホスホリル(26.1g、205.4mmol)を添加した。反応溶液を室温に戻し、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応系中に残っている塩化ホスホリルを減圧留去し、橙黄色液体を得た。そこへジクロロメタン50mLを加えて-78℃に冷却した。同温度にて塩化アルミニウム(4.3g、31.9mmol)を添加し、反応溶液を室温に戻して窒素雰囲気下で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。溶媒を留去したのちフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製を行い、橙黄色油状液体(10.4g、20.8mmol、収率73.0%)を得た。
<工程7>
工程6で得られた橙黄色油状液体(10.8g、21.6mmol)を1000mLナスフラスコに入れ、テトラヒドロフラン80mLを加えた。氷冷下、臭化メチルマグネシウム(1mol/Lテトラヒドロフラン溶液)100mLを添加し、窒素雰囲気下、70℃で2時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温に戻し、10%過塩素酸水溶液400mLに少しずつ加え、0℃で30分撹拌した。ジクロロメタンで抽出を行い、有機層を水で2回洗浄したのちに、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ溶媒を除去することで、茶色の油状液体(11.4g、19.0mmol、収率88.5%)を得た。
<工程8>
工程7で得られた茶色油状液体(11.4g、19.0mmol)を1000mLナスフラスコに入れ、スクアリン酸(1.1g、9.6mmol)、トルエン140mL、1-ブタノール100mLを加え、窒素雰囲気下で撹拌した。そこへピリジン(1.5g、19.0mmol)を添加したのち、130℃で1時間30分加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製を行い、得られた固体をメタノールで洗浄することで、目的の赤茶色粉末(5.8g、5.4mmol、収率53.3%)を単離した。
<化合物cの合成>
下記に示す反応経路に従い、6工程にて合成した。
Figure 0007392381000019
<工程1>
1000mLナスフラスコに1-フェニルオクタン(50g、262.7mmol)とクロロホルム420mL、クロロスルホン酸(254.1g、2180.5mmol)を入れ、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷水に注ぎ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクエンチした。前記溶液をジクロロメタンで抽出し、溶媒を除去した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製を行い、黄色透明液体(71.2g、246.5mmol、収率93.8%)を得た。
<工程2>
1000mLのナスフラスコに硫酸(150.8g、1537.2mmol)と水450mLを入れ、-15℃に冷却した。そこへ工程1で得られた黄色液体(60g、207.7mmol)を加え、次いで亜鉛粉末(75g、1142.5mmol)を添加し、0℃で2時間撹拌した。その後反応溶液を100℃に昇温し、同温度にて7時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過して固体成分を除き、ろ液をジクロロメタンで抽出した。溶媒を除去したのち、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製し、無色透明液体(39.5g、177.6mmol、収率85.4%)を得た。
工程3以降については、工程5において過塩素酸水溶液の代わりにテトラフルオロホウ酸水溶液を用いたこと以外は化合物aと同じ方法で合成した。
各例で用いた色素の構造と、合成方法または入手先を下記に示す。化合物a~hはNIR色素、化合物iはUV色素である。
化合物a:上記方法により合成した。
化合物b:国際公開第2006/158461号に基づき合成した。
化合物c:上記方法により合成した。
化合物d:Few Chemical社製 S0772
化合物e:Few Chemical社製 S2437
化合物f:山田化学社製 FDN-003(フタロシアニン色素、構造省略)
化合物g:山田化学社製 FDN-024(フタロシアニン色素、構造省略)
化合物h:国際公開第2016/133099号に基づき合成した。
化合物i:DE 10109243に基づき合成した。
Figure 0007392381000020
Figure 0007392381000021
<例1-1~例1-3>
化合物a~cの各スクアリリウム色素の各溶媒への溶解性を評価した。
ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、1-ブタノールの4種類の溶媒に1,3,5wt%と濃度を変えて溶かした際の溶解性について評価を行った。
評価方法としては、色素を添加した溶液を50℃、300rpm、30minの条件で撹拌し、その後室温にて一晩静置した際の色素の析出の有無から判断した。
判定基準:A評価以上が溶解性に優れる
A:5wt%以上で析出なし
B:3wt%以上、5wt%未満で析出なし
C:1wt%以上、3wt%未満で析出なし
D:1wt%以下で析出
結果を下記表に示す。
なお、例1-1は実施例、例1-2、例1-3は比較例である。
Figure 0007392381000022
上記結果より、シリル基を有するスクアリリウム化合物aは溶媒に対する溶解性に優れるており、幅広いSP値の溶媒に溶かすことができる。
シリル基を有さないスクアリリウム化合物b、cは溶媒に対する溶解性に乏しい。
<例2-1~2-3>
ポリイミド樹脂(三菱ガス化学社製C3G30-G,Tg=320℃)をシクロヘキサノン:γ-ブチロラクトン=1:1の溶媒に固形分濃度8.5wt%になるように溶かして調製したポリイミド樹脂溶液を準備した。そこへスクアリリウム化合物a~cが樹脂に対して3.5,5.0,7.5wt%の濃度になるように添加し,3種類の濃度の異なる樹脂溶液を作成した。これらの樹脂溶液を50℃,200rpm,2hの条件で撹拌し,その後室温にて一晩静置した際の色素の析出の有無から樹脂に対する色素の溶解性を評価した。
ポリイミド樹脂に加えて下記4種類の樹脂に対する溶解性についても同様に評価を行った。
シクロオレフィン樹脂:JSR社製 ARTON F4520、Tg=145℃
ポリカーボネート樹脂:帝人社製 SP3810、Tg=150℃
アクリル樹脂:三菱ケミカル社製 BR50、Tg=105℃
ポリエステル樹脂:大阪ガスケミカル社製 B-OKP2、Tg=150℃
結果を表3に示す。
なお、例2-1は実施例、例2-2、例2-3は比較例である。
判定基準:B評価以上が溶解性に優れる
A:7.5wt%以上で析出なし
B:5wt%以上、7.5wt%未満で析出なし
C:3wt%以上、5wt%未満で析出なし
D:3wt%以下で析出
Figure 0007392381000023
上記結果より、シリル基を有するスクアリリウム色素aは種々の樹脂に対して溶解性に優れることが分かる。シリル基を有さないスクアリリウム色素bは樹脂への溶解性に乏しく、アルキル鎖長を伸ばしたスクアリリウム色素cでも溶解性の向上には大きく寄与しないことが分かる。
<例3-1>
スクアリリウム化合物aを最大吸収波長の透過率が約10%になるように濃度を調整してジクロロメタンに溶かした。得られた溶液を光路長1cmのセルに入れ、分光光度計で波長350nm~1200nmの波長範囲で入射方向に対して0degの透過率を測定した。得られたデータを最大吸収波長における透過率が10%になるように規格化した。
<例3-2~例3-6>
スクアリリウム化合物aに替えて、表4に示す化合物を用いた以外は例3-1と同様に分光特性を測定した。
結果を下記表に示す。
なお、例3-1は実施例、例3-2~例3-6は比較例である。
Figure 0007392381000024
上記結果よりシアニン色素、フタロシアニン色素に比べて、スクアリリウム色素は分光特性の面で優れることが分かる。
さらにシリル基を有するスクアリリウム化合物aは、シリル基を有さないスクアリリウム化合物bと分光特性は同等であるが、分光特性を維持しつつ、先に示したように溶解性を大きく改善していることから、分光特性と溶解性の両面で優れていると言える。
<例4-1>
固形分濃度15wt%になるようにシクロオレフィン樹脂(JSR社製ARTON樹脂,品番F4520)をシクロヘキサノンに希釈し、スクアリリウム化合物aを樹脂に対して7.5wt%、シランカップリング剤としてKBM403を樹脂に対して10wt%、KBM9659を1wt%溶解させた。
得られた調合液をSCHOTT製D263ガラスにスピンコートしておよそ膜厚1.0μmになるようにスピン成膜した。
上記で得られた吸収層を分光光度計波長350nm~1200nmの波長範囲で入射方向に対して0degと30degでの透過率と反射率を測定した。
分光特性は、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
内部透過率={実測透過率/(100-実測反射率)}×100
得られたデータを色素の最大吸収波長における透過率が10%になるように規格化した。
<例4-2~例4-4>
スクアリリウム化合物aに替えて、表5に示す化合物を用いた以外は例4-1と同様に分光特性を測定した。
結果を下記表に示す。
なお、例4-1は実施例、例4-2~例4-4は比較例である。
Figure 0007392381000025
上記結果より、シリル基を有するスクアリリウム化合物aは透明樹脂中でも分光特性に優れることが分かる。透明樹脂中での分光特性と透明樹脂への溶解性を両立できるのはシリル基を有するスクアリリウム化合物であることが分かる。シアニン色素は、樹脂中で吸収がブロードになり、ジクロロメタン中との分光特性のかい離が大きくなってしまうため、分光特性に優れない。
<例5-1>
GBL:シクロヘキサノン=1:1の溶液にC3G30-G(三菱ガス化学社製)を溶かしたポリイミド樹脂溶液に、化合物h(スクアリリウム色素(B)。ポリイミド樹脂中の最大吸収波長:707nm)を9.62wt%、化合物i(UV色素)を2.67wt%添加した樹脂組成物を調製した。
上記樹脂組成物を厚さ80μmのポリカーボネート支持基材(帝人社製M5)の両面にそれぞれ膜厚0.6μmとなるようにダイコートで塗工し吸収層を得た。得られた吸収層付き支持基材の一方の面にSiO/TiOを交互に蒸着することにより6μmのUVIR層(反射層)を成膜し、他方の面にSiO/TiOを交互に蒸着することにより3μmの反射防止層(AR層)を成膜した。このようにして光学フィルタを製造した。
反射層の分光特性を下記表に示す。
Figure 0007392381000026
上記で得られた光学フィルタを分光光度計波長350nm~1200nmの波長範囲で入射方向に対して0degと30degでの透過率を測定した。
結果を下記表に示す。
Figure 0007392381000027
<例5-2>
上記例5-1で得られた光学フィルタの分光透過曲線に対して、例4-1で得られたスクアリリウム化合物aの最大吸収波長における透過率が1%、10%、20%となるように規格化した透過率データを350~1200nmの各波長で掛け合わせ、吸収層にスクアリリウム化合物aを添加した際の光学フィルタの分光特性を見積もった。
スクアリリウム化合物aのシクロオレフィン樹脂(JSR社製ARTON樹脂,品番F4520)中の分光特性を下記表および図4に示す。
Figure 0007392381000028
見積後の光学フィルタの特性結果を下記表、図5および図6に示す。
Figure 0007392381000029
上記結果より、反射層等の多層膜と、スクアリリウム色素(B)、UV色素、スクアリリウム色素(A)(スクアリリウム化合物a)を含む吸収層とを備える光学フィルタでは、830~900nmの透過率を下げるためにスクアリリウム化合物aの濃度が高くなるように配合しても可視光域の透過率が高く、分光シフトの小さい光学フィルタとすることができることが分かる。
本発明の光学フィルタは、可視光の透過性、特には赤色の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性、特に、長波長領域の遮蔽性に優れる。近年、高性能化が進む、例えば、輸送機用のカメラやセンサ等の情報取得装置の用途に有用である。
10A,10B,10C…光学フィルタ
11…吸収層
12…透明基板
13…反射層
14…反射防止層

Claims (10)

  1. 近赤外線吸収色素と透明樹脂とを含む吸収層を備える光学フィルタであって、
    前記近赤外線吸収色素は下記式(S1)に示すシリル基を有しかつ下記特性(i-1)を満たすスクアリリウム色素(A)を含み、
    前記スクアリリウム色素(A)は、下記式(A1)に示す化合物である、光学フィルタ。
    (i-1)前記スクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに830~1000nmに最大吸収波長を有する
    Figure 0007392381000030
    Figure 0007392381000031
    [上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
    S1~RS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価複素環基、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基である。
    A1 は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基であり、
    A3 は、-C(CH であり、
    A6 は、上記式(S1)に示すシリル基であり、
    A2 、R A4 、R A5 、R A7 は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、リン酸基、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルコキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、またはカルボニル構造を含む1価有機基である。
  2. 前記スクアリリウム色素(A)は、最大吸収波長における透過率が10%となるように前記スクアリリウム色素(A)をジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-2)~(i-3)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
    (i-2)400~500nmの波長領域の光の平均透過率が95%以上である
    (i-3)400~500nmの波長領域の光の最小透過率が93%以上である
  3. 前記スクアリリウム色素(A)は、最大吸収波長における透過率が10%となるように前記スクアリリウム色素(A)を透明樹脂に溶解して測定される分光透過率曲線において、下記特性(i-4)~(i-7)を満たす、請求項1または2に記載の光学フィルタ。
    (i-4)830~1000nmに最大吸収波長を有する
    (i-5)透明樹脂中での最大吸収波長λresinとジクロロメタン中での最大吸収波長λCH2Cl2との差の絶対値|λresin-λCH2Cl2|が15nm以下である
    (i-6)400~500nmの波長領域の光の平均透過率が93%以上である
    (i-7)透過率が20%となる最も短い波長λT20と透過率が60%となる最も長い波長λT60との差の絶対値|λT60-λT20|が80nm以下である
  4. 前記透明樹脂が、ガラス転移温度が100℃以上であり、かつ、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、およびアクリルのいずれかから選ばれる1種以上の樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  5. ガラス、吸収ガラスまたは樹脂製の透明基板をさらに備え、前記吸収層は前記透明基板の主面上に設けられる、請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  6. 前記近赤外線吸収色素は、下記特性(ii-1)を満たすスクアリリウム色素(B)をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
    (ii-1)前記スクアリリウム色素(B)をジクロロメタンに溶解して分光透過率を測定したときに650~780nmに最大吸収波長を有する
  7. さらに反射層を備え、前記反射層は、
    600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をIR50とし、380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をUV50としたときに、下記特性(iii-1)~(iii-6)を満たす、請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
    (iii-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が650~800nmの範囲にある
    (iii-2)入射角0度でのUV50(UV500deg)が385~425nmの範囲にある
    (iii-3)435~500nmの波長領域の光の平均透過率が88%以上である
    (iii-4)640~660nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である
    (iii-5)750~1000nmの波長領域の光の平均透過率が10%以下である
    (iii-6)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以上である
  8. 前記吸収層が、前記吸収層における830~900nmの波長領域の光の平均透過率が40%以下となる含有量で、前記スクアリリウム色素(A)を含み、
    前記光学フィルタが、600~800nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をIR50とし、600~800nmの波長領域における透過率が20%のときの波長をIR20とし、380~440nmの波長領域における透過率が50%のときの波長をUV50としたときに、下記特性(iv-1)~(iv-7)を満たす請求項に記載の光学フィルタ。
    (iv-1)入射角0度でのIR50(IR500deg)が620~700nmの範囲にある
    (iv-2)入射角0度でのIR20(IR200deg)が640~720nmの範囲にある
    (iv-3)入射角0度でのUV50(UV500deg)が390~430nmの範囲にある
    (iv-4)435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である
    (iv-5)490~560nmの波長領域の光の平均透過率が80%以上である
    (iv-6)590~630nmの波長領域の光の平均透過率が65%以上である
    (iv-7)入射角30度でのIR50(IR5030deg)と入射角0度でのIR50(IR500deg)の差の絶対値|IR5030deg-IR500deg|が11nm以下である
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルタを備える撮像装置。
  10. 下記式(A1)に示す化合物。
    Figure 0007392381000032
    [上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
    A1は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基であり、
    A3 は、-C(CH であり、
    A6 は、下記式(S1)に示すシリル基であり、
    A2 、R A4 、R A5 、R A7 は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、リン酸基、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルコキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、またはカルボニル構造を含む1価有機基である。]
    Figure 0007392381000033
    [上記式における置換基の意味は下記のとおりである。
    S1~RS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~14の1価芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~14の1価複素環基、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基である。]
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