以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るガス検知器およびオゾンガス除去フィルタを説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明のガス検知器およびオゾンガス除去フィルタは以下の例に限定されることはない。
<ガス検知器>
本実施形態のガス検知器Dは、図1に示されるように、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するためのガスセンサ1と、ガスセンサ1の上流に配置され、測定対象ガスに含まれるオゾンガスを除去するためのオゾンガス除去フィルタOとを備える。ガス検知器Dは、以下で詳しく述べるように、測定対象ガスに含まれるオゾンガスの少なくとも一部をオゾンガス除去フィルタOにより除去し、少なくとも一部のオゾンガスが除去された測定対象ガスに含まれる検知対象ガスをガスセンサ1により検知する。ガス検知器Dは、ガスセンサ1の上流にオゾンガス除去フィルタOを備えることで、オゾンガスによる干渉を抑制し、検知対象ガスの選択性を高めることができる。なお、ガスセンサ1は、以下に示す実施形態では、電気化学式ガスセンサであるが、電気化学式ガスセンサに限定されることはなく、超高純度水素センサやニオイセンサなど、大気中のオゾンガス濃度と同レベルの濃度の検知対象ガスを検知するガスセンサを採用することができる。また、検知対象ガスとは、ガス検知器Dが検知の対象とするガスのことであり、測定対象ガスとは、検知対象ガスが含まれる可能性のある、測定対象とする環境中のガスのことである。
ガス検知器Dは、本実施形態では、図1に示されるように、電気化学式ガスセンサ1と流体接続し、電気化学式ガスセンサ1に測定対象ガスを供給するガス流路Fを備える。ガス流路Fは、測定対象ガスが流入するガス流入口F1と、測定対象ガスが流出するガス排出口F2との間に延び、ガス流入口F1から流入した測定対象ガスがガス排出口F2に向かって流れるように構成される。ガス流路Fは、電気化学式ガスセンサ1の上流に配置される上流側ガス流路F3と、電気化学式ガスセンサ1の下流に配置される下流側ガス流路F4と、上流側ガス流路F3と下流側ガス流路F4との間に配置され、電気化学式ガスセンサ1と流体接続される中間ガス流路F5とを備えている。本実施形態では、上流側ガス流路F3は、ガス吸引管P1の内部空間として、下流側ガス流路F4は、ガス排出管P2の内部空間として、中間ガス流路F5は、ガス流路Fを電気化学式ガスセンサ1に流体接続する流路接続部材P3と電気化学式ガスセンサ1との間に形成される空間として具現化されている(図2参照)。なお、ガス検知器Dは、本実施形態ではガス流路Fを備えているが、ガス流路Fを備えることなく、測定環境中に設置されてもよい。
ガス検知器Dは、本実施形態では、図1に示されるように、測定対象ガスを吸引するガス吸引装置Pを備える。ガス吸引装置Pは、測定対象ガスを吸引し、測定対象ガスを電気化学式ガスセンサ1に供給する。ガス検知器Dは、ガス吸引装置Pを備えることにより、電気化学式ガスセンサ1が配置された場所から離れた環境における測定対象ガスを電気化学式ガスセンサ1に導くことができ、また、ガス吸引装置Pを備えない場合と比べて、電気化学式ガスセンサ1に測定対象ガスを高速で供給することができ、検知対象ガスの検知時間を短縮することができる。
ガス吸引装置Pは、本実施形態では、図1に示されるように、ガス流路Fに設けられ、ガス流路Fに測定対象ガスを(たとえば所定の流速で)流すことができるように構成される。より具体的には、ガス吸引装置Pは、ガス排出管P2(図2参照)に接続されることで下流側ガス流路F4に設けられ、ガス吸引装置Pよりも上流側にある上流側ガス流路F3、中間ガス流路F5および下流側ガス流路F4を介してガス流入口F1から測定対象ガスを吸引し、ガス吸引装置Pよりも下流側にある下流側ガス流路F4を介してガス排出口F2から測定対象ガスを排出する。なお、ガス検知器Dは、本実施形態ではガス吸引装置Pを備えているが、ガス吸引装置Pを備えることなく、測定環境中に設置されて、測定環境中の自然対流によって測定対象ガスが電気化学式ガスセンサ1に導かれるように構成されていてもよい。
ガス検知器Dは、上述した構成以外にも、公知のガス検知器が備える構成を備えていてもよい。たとえば、ガス検知器Dは、図示しない演算装置を備え、電気化学式ガスセンサ1の検知信号に基づいて、検知対象ガスの有無および/または量を判定するように構成されていてもよい。また、ガス検知器Dは、図示しない通知装置を備え、検知対象ガスが検知されたことをユーザに対して通知するように構成されていてもよい。通知装置は、視覚式、聴覚式、触覚式などで、検知結果に関する情報をユーザに通知するように構成されていてもよい。
<電気化学式ガスセンサ>
電気化学式ガスセンサ1は、検知対象ガスに起因した電気化学反応を利用して、検知対象ガスを検知する。電気化学式ガスセンサ1は、電気化学反応を利用して検知対象ガスを検知することができればよく、特に限定されることはないが、たとえば以下で詳しく述べるように、定電位電解式ガスセンサとすることができる。本実施形態における電気化学式ガスセンサ1が検知対象とする検知対象ガスとしては、モノシラン、ジシラン、アルシン、ホスフィン、ジボラン、モノゲルマンまたはセレン化水素を含む特殊高圧ガスが例示される。しかし、電気化学式ガスセンサ1は、特殊高圧ガスに限定されることはなく、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、一酸化窒素、ホスゲン、シアン化水素、四フッ化ケイ素、三フッ化ケイ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、臭素、オキシ塩化リン、アルシン、ジボラン、一酸化炭素、アンモニア、塩素、フッ素、ゲルマン、フッ化水素、セレン化水素、ジクロルシラン、臭化水素、塩化水素、ホスフィン、六フッ化タングステン、四塩化水素、シラン、三フッ化塩素、ジシラン、四フッ化硫黄、三フッ化リン、五フッ化リン、三フッ化窒素など、特殊高圧ガス以外のガスも検知対象とすることができる。なお、測定対象ガスは、上述したように検知対象ガスが含まれる可能性のある環境における環境雰囲気ガスであり、たとえば大気雰囲気ガスなどが例示される。
電気化学式ガスセンサ1は、本実施形態では、図1に示されるように、ガス流路Fに流体接続されて、ガス流路Fを流れる測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知する。電気化学式ガスセンサ1は、たとえば、ガス流路F内を流れる測定対象ガスの流速よりも小さな流速で電気化学式ガスセンサ1内に測定対象ガスが流入するように、ガス流路Fに流体接続される。電気化学式ガスセンサ1は、図2に示されるように、ガス吸引管P1およびガス排出管P2に接続された流路接続部材P3に接続されるが、上記目的のために、流路接続部材P3内に形成される中間ガス流路F5に対して交差する方向(図示された例では直交する方向)から、中間ガス流路F5を流れる測定対象ガスが電気化学式ガスセンサ1の内部に流入するように、流路接続部材P3に接続される。このように、電気化学式ガスセンサ1内に流入する測定対象ガスの速度を、ガス流路F内の測定対象ガスの速度よりも小さくすることで、電気化学式ガスセンサ1の近傍まで測定対象ガスを速く導きながら、電気化学式ガスセンサ1内での測定対象ガスによる撹乱を抑制し、電気化学式ガスセンサ1の検知信号を安定させることができる。ただし、電気化学式ガスセンサ1は、ガス流路Fに流体接続されることなく、測定対象ガスが含まれる測定環境中に設置されてもよい。また、測定対象ガスは、電気化学式ガスセンサ1内に流入すればよく、必ずしもガス流路F内を流れる測定対象ガスの流速よりも小さな流速で電気化学式ガスセンサ1内に流入しなくてもよく、ガス流路F内を流れる測定対象ガスの流速よりも大きなまたは同等の流速で電気化学式ガスセンサ1内に流入してもよい。
電気化学式ガスセンサ1は、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知することができればよく、その構成は特に限定されることはない。電気化学式ガスセンサ1は、本実施形態では、図2に示されるように、検知対象ガスを検知するための電極2と、電極2に接触する電解液3と、電極2および電解液3を収容する容器4とを備える。
電極2は、電解液3に接触するように配置され、電解液3中に流入した測定対象ガス中の検知対象ガスを検知するように構成されている。電極2は、図2に示されるように、検知対象ガスを電気化学反応させる反応極21と、反応極21に対する対極22と、反応極21の電位の基準となる参照極23とを備えている。反応極21、対極22および参照極23は、電解液3に接触するように容器4内に配置され、たとえば、図示しない公知のポテンショスタットなどの制御手段にリード線を介して接続される。
反応極21は、参照極23の電位を基準として一定の電圧が印加されて、検知対象ガスに電気化学反応を生じさせる電極である。反応極21は、図2に示されるように、電解液3に接触するように、後述する隔膜5上に形成される。反応極21は、たとえば、公知の電極材料により作製されたペーストを隔膜5上に塗布・焼成して、形成することができる。反応極21を構成する電極材料は、たとえばカーボン系触媒など、検知対象となるガスの種類や使用する電解液などに応じて適宜選択することができる。
対極22は、反応極21での検知対象ガスの電気化学反応に対応して、別の電気化学反応を生じさせる電極である。対極22は、図2に示されるように、電解液3に接触するように、後述する隔膜6上に形成され、電解液3を介して反応極21に対向して配置される。対極22は、たとえば、公知の電極材料により作製されたペーストを隔膜6上に塗布・焼成して、形成することができる。対極22を構成する電極材料は、たとえばカーボン系触媒など、検知対象となるガスの種類や使用する電解液などに応じて適宜選択することができる。
参照極23は、反応極21の電位の基準となる電極である。参照極23は、図2に示されるように、電解液3に接触するように、隔膜6上に形成され、対極22とともに、電解液3を介して反応極21に対向して配置される。参照極23は、たとえば、隔膜6上に固定された銀線として構成することができる。ただし、参照極23を構成する電極材料は、特に限定されることはなく、検知対象となるガスの種類や使用する電解液などに応じて適宜選択することができる。
本実施形態の電気化学式ガスセンサ1では、反応極21に、参照極23の電位を基準として一定の電圧が印加され、参照極23との間に一定の電位差が付加される。参照極23との間に一定の電位差が付加された反応極21は、反応極21に接触する電解液3中に流入した検知対象ガスに電気化学反応を生じさせる。検知対象ガスの電気化学反応が生じると、その電気化学反応に対応して、対極22側においても別の対応する電気化学反応が生じる。反応極21および対極22において生じる電気化学反応の結果として、反応極21と対極22との間に電解電圧が生じ、電解電流が流れる。その電解電圧および/または電解電流を検知することで、検知対象ガスを検知することができ、電解電圧および/または電解電流の大きさに応じて検知対象ガスの濃度を求めることができる。
電解液3は、電気伝導性を有する溶液である。電解液3は、電極2に接触するように容器4内に収容される。電解液3としては、検知しようとする検知対象ガスの種類や、検知のために使用する電極2の種類などに応じて適宜選択することができ、たとえば硫酸やリン酸などの酸性水溶液や、臭化リチウムや塩化カルシウムなどの中性塩水溶液などを用いることができる。
容器4は、電極2および電解液3を収容する部材である。容器4は、図2に示されるように、検知対象ガスを含む測定対象ガスが容器4内に流入するための流入口41と、流入口41と連通し、電解液3を収容する電解液収容部42と、電解液収容部42と連通し、電解液収容部42内のガスが容器4外に流出するための流出口43とを備えている。容器4は、流入口41の延びる方向Xがガス流路F(中間ガス流路F5)に対して交差(図示された例では直交)するように、流路接続部材P3に接続される。これにより、測定対象ガスは、ガス流路F内よりも小さな流速で、流入口41を介して容器4内に流入する。
流入口41は、図2に示されるように、容器4の外部と接続する一方側の端部41aの開口と、容器4内の電解液収容部42と接続する他方側の端部41bの開口との間で延び、一方側の端部41aの開口から他方側の端部41bの開口に向かって測定対象ガスが流れるように配置されている。流入口41の一部は、後述する隔膜5を容器4に固定するための流入側蓋部材44の内部に形成された内腔により構成される。
流出口43は、図2に示されるように、容器4内の電解液収容部42と接続する一方側の端部43aの開口と、容器4の外部と接続する他方側の端部43bの開口との間で延び、一方側の端部43aの開口から他方側の端部43bの開口に向かってガスが流れるように配置されている。流出口43の一部は、後述する隔膜6を容器4に固定するための流出側蓋部材46の内部に形成された内腔により構成される。
電解液収容部42は、図2に示されるように、流入口41の他方側の端部41bの開口と接続されて、流入口41を介して容器4外の測定対象ガスが内部に流入し、流出口43の一方側の端部43aの開口と接続されて、電解液収容部42内のガスが容器4外に流出するように構成されている。流入口41における容器4の内部側(他方の端部41b側)には、電解液3が流入口41から容器4外に流出するのを防止する隔膜5が設けられている。また、流出口43における容器4の内部側(一方の端部43a側)には、電解液3が流出口43から容器4外に流出するのを防止する隔膜6が設けられている。隔膜5、6はそれぞれ、電解液収容部42内の電解液3が流入口41/流出口43を介して容器4の外部に流出するのを防止する一方で、測定対象ガスが容器4の外部から電解液収容部42内に流入する/電解液収容部42内のガスが容器4の外部に流出するのを許容する。したがって、電解液収容部42は、電解液収容部42に接続する流入口41および流出口43が隔膜5、6により液密に閉鎖されることで、内部に電解液3を収容可能であり、隔膜5、6がガスの通過を許容することで、内部にガスが流入可能であり、内部からガスが流出可能である。
隔膜5は、図2に示されるように、反応極21が積層されて、反応極21が電解液収容部42側に面し、隔膜5が流入口41の一方の端部41a側に面するように配置されて、Oリング45などの公知の密封手段を介して、流入側蓋部材44によって固定される。また、隔膜6は、対極22および参照極23が積層されて、対極22および参照極23が電解液収容部42側に面し、隔膜6が流出口43の他方の端部43b側に面するように配置されて、Oリング47などの公知の密封手段を介して、流出側蓋部材46によって固定される。
隔膜5、6は、電解液3の通過を防止し、ガスの通過を許容することができればよく、その構成は特に限定されない。隔膜5、6としては、たとえば、撥水性およびガス透過性を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムを用いることができる。なお、隔膜5、6は、電解液収容部42に対する流入口41および流出口43の配置に応じて、適宜省略することが可能である。その場合、反応極21、対極22および参照極23は、隔膜5、6に設けられることなく、独立して容器4に収容される。
容器4は、電極2および電解液3を収容して保持する強度を有していればよく、たとえばポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの公知の樹脂材料を用いて形成することができる。
電気化学式ガスセンサ1は、図2に示されるように、流入口41に設けられるオゾンガス除去手段7を備えている。オゾンガス除去手段7は、検知対象ガスの通過を許容し、測定対象ガスに含まれるオゾンガスを除去する。オゾンガス除去手段7は、流入口41に設けられて、測定対象ガスに含まれるオゾンガスを除去することにより、電解液収容部42に収容される電解液3内へのオゾンガスの流入を抑制することができる。したがって、電気化学式ガスセンサ1は、オゾンガスによる干渉を抑制し、検知対象ガスの選択性を高めることができる。
オゾンガス除去手段7は、流入口41に設けられ、検知対象ガスの少なくとも一部の通過を許容し、測定対象ガスに含まれるオゾンガスの少なくとも一部を除去することができれば、流入口41内の設けられる位置は特に限定されない。オゾンガス除去手段7は、たとえば、図2に示されるように、隔膜5より流入口41における容器4の外部側、すなわち流入口41における隔膜5の上流側に設けられてもよい。オゾンガス除去手段7が隔膜5の上流側に設けられることで、流入口41に流入した測定対象ガスが隔膜5に到達する前に測定対象ガスに含まれるオゾンガスを除去することができ、それによって電解液収容部42に収容される電解液3内へのオゾンガスの流入をより確実に抑制することができる。
オゾンガス除去手段7は、少なくとも検知対象ガスの通過する割合がオゾンガスの通過する割合よりも大きくなるように、検知対象ガスの少なくとも一部の通過を許容し、測定対象ガスに含まれるオゾンガスの少なくとも一部を除去することができればよく、その構成は特に限定されることはない。オゾンガス除去手段7は、たとえば、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりも測定対象ガス(特に検知対象ガス)の吸着能が低く、オゾンガスの分解を促進するフィルタであってもよい。ここで、オゾンガスは、分解しやすい性質を有しているために、フィルタなどの対象物に衝突して反応することで容易に分解する。したがって、オゾンガス除去手段7として、測定対象ガスの吸着能が低いフィルタを用いることで、オゾンガス以外のガス(特に検知対象ガス)の吸着を抑制しながら、オゾンガスの衝突・反応による分解を促進することができる。
オゾンガス除去手段7は、測定対象ガスの吸着能をより低く抑える目的で、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトを含まないことが好ましい。オゾンガス除去手段7は、活性炭およびシリカゲルを含まないことにより、測定対象ガスの吸着をより抑え、ひいては検知対象ガスの吸着をより抑えることができるので、検知対象ガスの検知感度が低下するのをより抑制しながら、オゾンガスの干渉をより抑制することができる。したがって、オゾンガス除去手段7として、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトを含まず、測定対象ガスの吸着能の低いオゾンガス除去手段7のみが流入口41に設けられることが好ましい。
オゾンガス除去手段7は、たとえば、図2に示されるように、フッ素樹脂製フィルタ71および/または金属製フィルタ72を含んでいてもよい。フッ素樹脂製フィルタ71および金属製フィルタ72はいずれも、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりも測定対象ガス(特に検知対象ガス)の吸着能が低く、オゾンガスの分解を促進することが可能である。オゾンガス除去手段7は、フッ素樹脂製フィルタ71および金属製フィルタ72のいずれかを含んでいてもよいが、フッ素樹脂製フィルタ71および金属製フィルタ72の両方を含んでいてもよい。オゾンガス除去手段7がフッ素樹脂製フィルタ71および金属製フィルタ72の両方を含む場合は、たとえば、図2に示されるように、フッ素樹脂製フィルタ71および金属製フィルタ72が、流入口41の上流側から下流側に向けて順に配置されることが好ましい。フッ素樹脂製フィルタ71を上流側に、金属製フィルタ72を下流側に設けることで、測定対象ガスに含まれるオゾンガスの除去をより効率的に行なうことができる。これは、フッ素樹脂製フィルタ71の有するガス拡散機能と、金属製フィルタ72の有するオゾンガス反応分解機能とがバランスよく機能するからではないかと考えられる。つまり、フッ素樹脂製フィルタ71が上流側に配置されることで、フッ素樹脂製フィルタ71により測定対象ガスが拡散され、測定対象ガスがランダムな方向を向いて金属製フィルタ72に向かって流れるので、測定対象ガスに含まれるオゾンガスが金属製フィルタ72に衝突する確率が高くなって、より多くのオゾンガスを分解・除去することができるものと考えられる。
フッ素樹脂製フィルタ71は、フッ素樹脂により形成される、ガスが通過可能な多孔質部材である。フッ素樹脂製フィルタ71は、フッ素樹脂により形成されることで、測定対象ガス(特に検知対象ガス)の吸着が抑えられている。したがって、フッ素樹脂製フィルタ71は、測定対象ガス(特に検知対象ガス)の吸着を抑えながら、オゾンガスの衝突による分解を促進することができる。フッ素樹脂製フィルタ71としては、ガスが通過可能な複数の貫通孔を有していればよく、たとえば繊維状の多孔質フィルムを用いることができる。フッ素樹脂製フィルタ71に使用されるフッ素樹脂としては、測定対象ガスの吸着が抑制されるものであればよく、特に限定されることはないが、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などを用いることができる。
金属製フィルタ72は、金属により形成される、ガスが通過可能な多孔質部材である。金属製フィルタ72は、金属により形成されることで、衝突するオゾンガスの分解反応を促進する。金属製フィルタ72としては、ガスが通過可能な複数の貫通孔を有していればよく、たとえば金属製のメッシュやパンチングメタルなどを用いることができる。また、金属製フィルタ72を構成する金属としては、測定対象ガスの吸着を抑制することができ、オゾンガスの分解反応を促進することができるものであればよく、特に限定されることはないが、たとえばステンレス、アルミ、銅などを用いることができ、ガスの吸着がより抑制される緻密な酸化膜が表面に形成されるステンレスを好適に用いることができる。
金属製フィルタ72は、オゾンガス反応分解能力を維持しながら、検知対象ガスの分解反応を抑制するために、測定対象ガスとの適度な接触時間が確保できるような厚さに設定することができる。たとえば、検知対象ガスの分解反応を抑制するという観点では、金属製フィルタ72は、測定対象ガス、特に検知対象ガスとの接触時間ができるだけ短くなるように薄く形成することが好ましい。その場合、短い接触時間でオゾンガスの分解効率を上げるために、上述したように、金属製フィルタ72の上流側に、オゾンガスや検知対象ガスの分解能力が相対的に小さいフッ素樹脂製フィルタ71を設けることで、測定対象ガス、特にオゾンガスを拡散(分散)させて、オゾンガスとの接触確率を高めてもよい。また、金属製フィルタ72と測定対象ガスとの間の適度な接触時間を確保するために、上流側にフッ素樹脂製フィルタ71を設けることにより、測定対象ガスの拡散速度を制御して、接触時間を調整することもできる。
オゾンガス除去手段は、測定対象ガスの吸着能が低く、オゾンガスの分解を促進するフィルタとして、フッ素樹脂製フィルタや金属製フィルタ以外にも、ガス吸着能の低いガラス繊維製のフィルタなどを用いることもできる。また、オゾンガス除去手段は、検知対象ガスの検知信号強度の低下を抑制しながら、オゾンガスを除去することができれば、本実施形態に限定されることはなく、紫外線照射など他の公知のオゾンガス除去手段を用いることもできる。
電気化学式ガスセンサ1は、図2に示されるように、流入口41の上流側(一方の端部41a側)に設けられ、測定対象ガスの容器4内への流入速度を低下させる減速手段8を備えていてもよい。この場合、流入口41の上流側に減速手段8が設けられ、流入口41の下流側にオゾンガス除去手段7が設けられる。電気化学式ガスセンサ1は、以下でも詳しく述べるように、流入口41の上流側に減速手段8を設け、流入口41の下流側にオゾンガス除去手段7を設けることで、測定対象ガス中のオゾンガスをより効率的に除去することができる。なお、図2に示された電気化学式ガスセンサ1では、オゾンガス除去手段が設けられる例を示したが、たとえば図3に示された変形例の電気化学式ガスセンサ1のように、オゾンガス除去手段は設けられなくてもよい。ただし、オゾン除去量を調整する観点からは、複数箇所にオゾンガスを除去できる手段が設けられることが好ましいので、電気化学式ガスセンサ1にオゾンガス除去手段が設けられるほうが好ましい。
減速手段8は、上述したように、測定対象ガスの容器4内への流入速度を低下させるように構成されている。たとえば、ガス検知器Dがガス吸引装置Pを備える場合には、ガス吸引装置Pによって測定対象ガスが流入口41に所定の流速で供給される。減速手段8は、容器4外から流入口41内に供給される測定対象ガスのガス分子を流入口41内で拡散(または、散乱、分散など)させることで、ガス分子の進行方向を、流入口41の一方の端部41aから他方の端部41bに向かう方向Xから変化させて、流入口41の一方の端部41aから他方の端部41bに向かう方向Xの速度成分を低下させる。このように、減速手段8により、容器4外から流入口41内に供給される測定対象ガスの容器4内への流入速度を低下させることにより、測定対象ガスが、減速手段8よりも下流側に配置されるオゾンガス除去手段7を通過する時間が長くなり、測定対象ガス中のオゾンガスを効率的に除去することができる。また、減速手段8により、測定対象ガスのガス分子の進行方向を、流入口41の一方の端部41aから他方の端部41bに向かう方向Xから変化させることで、ガス分子がオゾンガス除去手段7と衝突する確率が高くなり、測定対象ガス中のオゾンガスを効率的に除去することができる。
減速手段8としては、たとえば、多孔質フィルタを用いることができる。多孔質フィルタとしては、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などのフッ素樹脂により形成された多孔質フィルムを用いることができる。ただし、減速手段8は、測定対象ガスの容器4内への流入速度を低下させることができれば、特に限定されることはなく、たとえば、ピンホールなどによって構成することもできる。また、たとえばガス吸引装置Pを用いない場合のように、流入口41への測定対象ガスの流入速度が大きくない場合には、図3に示された変形例の電気化学式ガスセンサ1のように、減速手段8を省略することもできる。
<オゾンガス除去フィルタ>
つぎに、図1、図3および図4を参照して、オゾンガス除去フィルタOの詳細を説明する。オゾンガス除去フィルタOは、図1に示されるように、電気化学式ガスセンサ1の上流に設けられ、電気化学式ガスセンサ1に測定対象ガスが流入する前に、測定対象ガスに含まれるオゾンガスの少なくとも一部を除去する。オゾンガス除去フィルタOは、本実施形態では、電気化学式ガスセンサ1の上流にあるガス流路F(上流側ガス流路F3)に設けられ、ガス流路Fの一部を形成する。オゾンガス除去フィルタOは、ガス流路Fに設けられることで、電気化学式ガスセンサ1に供給される測定対象ガス中のオゾンガスを効率的に除去することができる。特に、オゾンガス除去フィルタOは、本実施形態のように上流側ガス流路F3を形成するガス吸引管P1(図2参照)に設けることができるように構成することで、すでに設置されたガス検知器に対しても大きな改造を必要とすることなく容易に組み込むことができる。ただし、オゾンガス除去フィルタOは、電気化学式ガスセンサ1の上流に設けられていれば、配置される位置は特に限定されることはなく、ガス流路F以外の測定対象ガスが流れている場所に設けられていてもよいし、たとえば電気化学式ガスセンサ1に一体として設けられ、電気化学式ガスセンサ1とともにガスセンサユニットを構成してもよい。
オゾンガス除去フィルタOは、測定対象ガスが通過する際に、測定対象ガスに含まれる少なくとも一部のオゾンガスを除去するとともに、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスの吸着を抑制するように構成される。その目的のために、オゾンガス除去フィルタOは、図3に示されるように、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料を表面に含むフィルタ部材O1を備える。フィルタ部材O1は、オゾンガス除去フィルタO内において、フィルタ部材O1の表面に測定対象ガスが衝突するように配置される。オゾンガスを構成するオゾン分子は、分解しやすい性質を有しているために、フィルタ部材O1の表面を構成する材料の種類によらず、フィルタ部材O1に衝突して反応することで容易に分解する。その一方で、フィルタ部材O1の表面にガス吸着性の低い材料を含むことで、フィルタ部材O1へのガス(特に検知対象ガス)の吸着が抑制される。したがって、オゾンガス除去フィルタOは、ガス吸着性の低い材料を表面に含むフィルタ部材O1を用いることで、ガス(特に検知対象ガス)の吸着を抑制しながら、オゾン分子の衝突・反応による分解を促進することができる。ガス検知器Dは、オゾンガス除去フィルタOによりオゾンガスを優先的に除去することで、オゾンガスによる干渉を抑制し、検知対象ガスの選択性を高めることができる。
フィルタ部材O1は、ガス(特に検知対象ガス)の吸着をさらに抑制する目的で、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料が、その表面の全体に含まれることが好ましい。フィルタ部材O1の表面の全体に、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料を含むことにより、ガス(特に検知対象ガス)が吸着する確率をより低下させることができる。また、フィルタ部材O1は、ガス(特に検知対象ガス)の吸着をさらに抑制する目的で、その表面に活性炭、シリカゲルまたはゼオライトを含まないことが好ましい。ただし、フィルタ部材O1は、その表面の少なくとも一部に、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料を含んでいればよく、その表面の一部に他の材料を含んでいても構わない。また、フィルタ部材O1は、その全体に、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料が含まれていてもよいし、その内部が別の材料により形成されて、表面にのみ、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料が含まれていてもよい。
フィルタ部材O1の表面に含まれる材料は、少なくとも検知対象ガスの吸着性が活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりも低い材料であればよく、特に限定されることはないが、検知対象ガスの吸着をさらに抑制し、検知対象ガスの選択性をさらに高めるという観点から、フッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂としては、特に限定されることはなく、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などを用いることができる。
フィルタ部材O1は、本実施形態では、図3および図4に示されるように、軸Z方向に延びる略筒状(たとえば略円筒状)に形成されている。フィルタ部材O1が略筒状に形成されることで、測定対象ガスが衝突する可能性のある表面が筒の外面および内面の両方となるため、測定対象ガスがフィルタ部材O1に衝突する確率が高くなる。それによって、より多くのオゾンガスを除去することができ、オゾンガスの干渉をより低く抑えることができる。ただし、フィルタ部材O1は、少なくとも活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性の低い材料を表面に含んでいればよく、本実施形態におけるような略筒状の部材に限定されることはなく、中実のペレット状など他の形状を有する部材であっても構わない。フィルタ部材O1の大きさおよび量は、特に限定されることはないが、たとえば、検知対象ガスの通過量の低下を抑制するという観点から、後述するフィルタ部材収容部O2内の体積の略半分以下の充填率で充填される大きさおよび量を選択することができる。
オゾンガス除去フィルタOは、測定対象ガスからオゾンガスをさらに除去し、オゾンガスによる干渉をさらに抑制するという観点から、図4に示されるように、測定対象ガスがフィルタ部材O1の表面に衝突して散乱するように、測定対象ガスのガス流路Fを形成していることが好ましい。ここで、散乱とは、衝突によって測定対象ガスの流れる方向が変化することを意味する。つまり、この場合、オゾンガス除去フィルタOは、測定対象ガスがフィルタ部材O1の表面に衝突して、元のガス流路Fに対して傾斜する方向に散乱するように構成される。測定対象ガスがフィルタ部材O1に衝突して散乱することで、さらに別のフィルタ部材O1や別の部材に衝突する確率が高くなり、オゾンガス、つまりオゾン分子の分解がより促進される。そのような観点から、オゾンガス除去フィルタOは、測定対象ガスがフィルタ部材O1の表面に複数回衝突して散乱するように、測定対象ガスのガス流路Fを形成していることが好ましい。
オゾンガス除去フィルタOは、本実施形態では、図3および図4に示されるように、入口O221および出口O231を備えるフィルタ部材収容部O2を備えている。フィルタ部材収容部O2は、入口O221および出口O231がガス流路F(上流側ガス流路F3)上に位置付けられるようにガス流路Fに沿って配置される。フィルタ部材O1は、入口O221と出口O231とを結ぶフィルタ部材収容部O2の軸Yに対してフィルタ部材O1の表面が傾斜するように、フィルタ部材収容部O2内に収容されている。フィルタ部材O1の表面が軸Yに対して傾斜していることで、フィルタ部材収容部O2の軸Yに沿って流れる測定対象ガスは、フィルタ部材O1の表面に衝突して散乱する際に、フィルタ部材収容部O2の軸Yに対して傾斜した方向に散乱する。これにより、測定対象ガスは、フィルタ部材O1の表面から散乱された後に、別のフィルタ部材O1や別の部材(たとえばフィルタ部材収容部O2の内壁)に衝突する確率が高くなり、それによってフィルタ部材O1などに衝突するオゾンガス(オゾン分子)の割合が高くなって、オゾンガス(オゾン分子)の分解がより促進される。そのような観点から、フィルタ部材収容部O2の軸Yに対して表面が傾斜するフィルタ部材O1が、フィルタ部材収容部O2内に複数収容されていることが好ましい。
本実施形態では、略筒状に形成されるフィルタ部材O1は、図3および図4に示されるように、フィルタ部材収容部O2の軸Yに対してフィルタ部材O1の軸Zが傾斜するようにガス流路Fに配置される。そのように配置されるフィルタ部材O1の表面は、フィルタ部材収容部O2の軸Yに対して傾斜する。それによって、上述したように、フィルタ部材収容部O2の軸Yに沿って流れる測定対象ガスは、フィルタ部材収容部O2の軸Yに対して傾斜した方向に散乱し、別のフィルタ部材O1や別の部材(たとえばフィルタ部材収容部O2の内壁)に衝突する確率が高くなり、それによってフィルタ部材O1などに衝突するオゾンガス(オゾン分子)の割合が高くなって、オゾンガス(オゾン分子)の分解がより促進される。そのような観点から、オゾンガス除去フィルタOは、図示されるように、軸Zが互いに異なる方向を向くように配置される複数のフィルタ部材O1を含むことが好ましい。つまり、オゾンガス除去フィルタOは、測定対象ガスが流れる方向に対して、それぞれの軸Zがランダムな方向を向いた複数のフィルタ部材O1を備えることが好ましい。それによって、測定対象ガスは、様々な方向に散乱し、別のフィルタ部材O1や別の部材(たとえばフィルタ部材収容部O2の内壁)に衝突する確率がさらに高くなる。
フィルタ部材収容部O2は、本実施形態では、図3および図4に示されるように、両端に入口O221および出口O231を備え、入口O221と出口O231とを結ぶ軸Yに沿ってガス流路Fが内部に形成されるように、略筒状(たとえば略円筒状)に形成されている。フィルタ部材収容部O2は、入口O221と出口O231とを結ぶ軸Yに沿ってフィルタ部材O1が配置されるように、1つまたは複数のフィルタ部材O1を内部に収容する。フィルタ部材収容部O2は、図示されるように、軸Yに沿って延びるように略筒状(たとえば略円筒状)に形成された収容部本体部材O21と、収容部本体部材O21の軸Y方向の一方側(入口O221側)の端部に取り付けられる入口側蓋部材O22と、収容部本体部材O21の軸Y方向の他方側(出口O231側)の端部に取り付けられる出口側蓋部材O23とを備えている。入口側蓋部材O22および出口側蓋部材O23は、それぞれ、入口O221および出口O231を備え、収容部本体部材O21の両端に嵌入することで、収容部本体部材O21の端部を部分的に閉鎖する。ただし、フィルタ部材収容部O2は、1つまたは複数のフィルタ部材O1を収容することができればよく、その形状は図示された例に限定されることはない。
フィルタ部材収容部O2は、1つまたは複数のフィルタ部材O1を収容することができればよく、その材料は特に限定されることはないが、たとえば、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス(特に検知対象ガス)の吸着性が低い材料を内壁の表面に含んでいてもよい。フィルタ部材収容部O2の内壁の表面に、活性炭、シリカゲルまたはゼオライトよりもガス吸着性が低い材料を含むことにより、測定対象ガスがフィルタ部材O1に衝突・散乱してフィルタ部材収容部O2の内壁に衝突したとしても、検知対象ガスの内壁への吸着を抑制しながら、オゾンガスの分解を促進することができる。フィルタ部材収容部O2の内壁の表面に含まれる材料としては、たとえばフッ素樹脂が例示され、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などが例示される。
フィルタ部材収容部O2は、図3および図4に示されるように、入口O221および/または出口O231を閉鎖するための、撥水性およびガス透過性を有するシートO24、O25を備えていてもよい。シートO24、O25は、液体が通過するのを抑制し、ガスが通過するのを許容するように構成される。フィルタ部材収容部O2の入口O221および出口O231をシートO24、O25で閉鎖することにより、フィルタ部材O1がフィルタ部材収容部O2の入口O221および出口O231から外に出ることが抑制される。また、フィルタ部材O1の少なくとも上流に(フィルタ部材収容部O2の入口O221側に)シートO24を備えることにより、測定対象ガスとともに液体がフィルタ部材収容部O2の内部に侵入して、フィルタ部材O1が液体に曝されることが抑制されて、フィルタ部材O1の性能が劣化するのを抑制することができる。また、ガス検知器Dが、電気化学式ガスセンサ1の上流にいずれかのシートO24、O25を備えることで、測定環境中に含まれる液体が電気化学式ガスセンサ1の内部に侵入するのが抑制されて、電気化学式ガスセンサ1の性能の劣化を抑制することができる。
シートO24、O25は、液体が通過するのを抑制し、ガスが通過するのを許容するように構成されていればよく、特に限定されることはないが、たとえば、撥水性およびガス透過性を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムを用いることができる。
オゾンガス除去フィルタOは、図3に示されるように、フィルタ部材収容部O2を収容するための収容容器O3を備えていてもよい。収容容器O3は、フィルタ部材収容部O2を収容した状態でガス流路F(上流側ガス流路F3)上に配置されることで、収容するフィルタ部材収容部O2をガス流路F上に位置付ける。収容容器O3は、図示されるように、ガス流路Fに沿って延びるように略筒状(たとえば略円筒状)に形成される収容容器本体O31と、収容容器本体O31の上流側の端部に取り付けられる上流側流路接続部材O32と、収容容器本体O31の下流側の端部に取り付けられる下流側流路接続部材O33とを備えている。上流側流路接続部材O32および下流側流路接続部材O33は、それぞれ、測定対象ガスが通過する上流側内部流路O321および下流側内部流路O331を備え、ぞれぞれの内部流路O321、O331が上流側ガス流路F3に連通するように、上流側ガス流路F3を構成するガス吸引管P1(図2参照)と接続される。
上流側流路接続部材O32および下流側流路接続部材O33は、それぞれ、収容容器本体O31の端部に螺合接続されるように構成されている。上流側流路接続部材O32および下流側流路接続部材O33は、収容容器本体O31のそれぞれの端部に螺合されることで互いに接近し、フィルタ部材収容部O2をその両端から挟持するように構成されている。上流側流路接続部材O32および下流側流路接続部材O33が、フィルタ部材収容部O2の入口O221側の端部および出口O231側の端部に密接するように、フィルタ部材収容部O2を挟持することで、ガス流路F上にフィルタ部材収容部O2をより正確に配置することができ、また、上流側流路接続部材O32および下流側流路接続部材O33と、フィルタ部材収容部O2のそれぞれの端部との間から測定対象ガスが漏出するのが抑制されて、フィルタ部材収容部O2内に測定対象ガスをより確実に導くことができる。
以下において、実施例をもとに本実施形態のガス検知器およびオゾンガス除去フィルタの優れた効果を説明する。ただし、本発明のガス検知器およびオゾンガス除去フィルタは、以下の実施例に限定されるものではない。
(測定対象ガスの測定)
図1に例示されたガス検知器を用いて、検知対象ガスであるジボランガス(160ppb)を含む大気雰囲気ガス、および干渉ガスであるオゾンガス(300ppb、600ppb)を含む大気雰囲気ガスのそれぞれの測定対象ガスの測定を行なった。測定対象ガスの吸引速度は、0.5L/分とした。図1に例示されたガス検知器において、オゾンガス除去フィルタを設けたものを実施例とし、オゾンガス除去フィルタを設けないものを比較例とした。
(電気化学式ガスセンサ)
電気化学式ガスセンサとして、図2に例示された定電位電解式ガスセンサを作製した。反応極および対極にカーボン触媒、参照極に銀線を用い、電解液に8mol/L臭化リチウム水溶液を用いた。流入口側および流出口側の隔膜はいずれも、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質フィルム(空孔率:約75%、厚さ:約0.1mm)を用いた。減速手段は、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質フィルム(空孔率:約75%、厚さ:約0.1mm)を用いた。オゾンガス除去手段として、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質フィルム(空孔率:約75%、厚さ:約0.1mm)を2枚重ねて構成したフッ素樹脂製フィルタを上流側に、ステンレス製パンチングメタル(開孔率:13%、厚さ:0.15mm)で構成した金属製フィルタを下流側に配置した。
(オゾンガス除去フィルタ)
オゾンガス除去フィルタとして、図3に例示されたオゾンガス除去フィルタを作製した。フィルタ部材収容部の収容部本体部材には、内径15mm、長さ60mmの円筒状のポリカーボネート製パイプを用いた。フィルタ部材収容部の両端には、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質フィルム(空孔率:約75%、厚さ:約0.1mm)を取り付けた。フィルタ部材は、フィルタ部材の大きさに応じて、収容できるだけの数をフィルタ部材収容部内に収容した。フィルタ部材収容部内に収容したフィルタ部材の種類を以下の表1に示す。
(ジボランガス指示値低下率およびオゾンガス除去率の測定)
実施例および比較例のガス検知器を用いて、オゾンガス除去フィルタを通過した後の測定対象ガスについてのジボランガス指示値低下率およびオゾンガス除去率を測定した。ジボランガスの指示値低下率およびオゾンガスの除去率は、大気中のジボランガス160ppbに対するセンサ出力値、大気中のオゾンガス300ppb、600ppbそれぞれに対するセンサ出力値を測定し、それぞれのガスについて、比較例から得られたセンサ出力値から、実施例から得られたセンサ出力値が低下した割合を算出することにより求めた。その結果を表1に示す。
表1を参照すると、いずれの実施例においても、オゾンガス除去フィルタを設けることで、ジボランガスの指示値がわずかに低下しているものの、その割合に比べて、除去されたオゾンガスの割合が大きくなっている。この結果から、ガス検知器において、上述したオゾンガス除去フィルタを用いることで、ジボランガスの感度の低下を抑制しつつ、オゾンガスの感度を低下させることができることが分かる。そして、ガス検知器は、上述したオゾンガス除去フィルタを用いることにより、オゾンガスによる干渉を抑制し、検知対象ガスの選択性を高めることができることが分かる。
また、円筒状のフィルタ部材を用いた実施例1~6と、ペレット状のフィルタ部材を用いた実施例7~8とを比較すると、実施例1~6の方が、実施例7~8よりも、ジボランガス指示値低下率の絶対値が小さく、オゾンガス除去率の絶対値が大きい。この結果から、円筒状のフィルタ部材を用いることにより、ジボランガスの感度の低下をより抑制しつつ、オゾンガスの感度をより低下させることができることが分かる。そして、ガス検知器は、円筒状のフィルタ部材を用いることにより、オゾンガスによる干渉をより抑制し、検知対象ガスの選択性をより高めることができることが分かる。
また、円筒状のフィルタ部材を用いた実施例1~6において、フィルタ部材の大きさの違いに着目すると、フィルタ部材の大きさが小さくなるにしたがって(実施例5、6→実施例3、4→実施例1、2)、ジボランガス指示値低下率の絶対値がわずかに大きくなっているものの、オゾンガス除去率の絶対値がそれよりも大きな変化率で大きくなる傾向が見られる。この結果から、より小さい円筒状のフィルタ部材を用いることで、オゾンガスの感度をより低下させて、オゾンガスによる干渉をより抑制し、検知対象ガスの選択性をより高めることができることが分かる。
また、円筒状のフィルタ部材を用いた実施例1~6において、フィルタ部材の材料の違いに着目すると、フィルタ部材がPFAにより形成されている場合よりもPTFEで形成されている場合の方が(実施例1、3、5→実施例2、4、6)、ジボランガス指示値低下率の絶対値がわずかに変化しているものの、オゾンガス除去率の絶対値がそれよりも大きな変化率で大きくなっている。この結果から、PTFEで形成された円筒状のフィルタ部材を用いることで、オゾンガスの感度をより低下させて、オゾンガスによる干渉をより抑制し、検知対象ガスの選択性をより高めることができることが分かる。