本開示の実施例を具体的に説明する前に、本実施例の概要を説明する。実施例は、住宅等の施設の開口部に設置されるシャッターシステムに関する。シャッターシステムは電動シャッターであり、電動シャッターはシャッター動作を自動化する。電動シャッターは、一般的に、シャッターカーテンが開状態でユーザが「閉」ボタンを一度押すと、シャッターカーテンのスラットが最下部に到達するまで閉動作を続ける。電動シャッターは数十秒かけて自動的に閉動作を実行するので、ユーザは電動シャッターの閉動作を見ていないことが想定される。その際、電動シャッターが障害物を挟み込んでもユーザは気づかない。したがって、電動シャッターには「障害物を挟み込んだ場合にそのことを検出する」機能が望まれる。電動シャッターのようなモータ駆動製品では、モータ電流が増加した場合に障害物の挟み込みが検出される。具体的に説明すると、障害物が挟み込まれるとモータ負荷が増大することによって、モータ電流が増加する。このモータ電流の増加がしきい値を超えた場合に、挟み込みが発生したと判定される。挟み込みが発生したと判定されると、モータへのモータ電流の供給を停止して、モータの回転が停止される。
電動シャッターに使用されるモータの1つが埋込磁石式モータである。埋込磁石式モータでは、固定のステータの内部に回転可能なロータが配置される。ステータにはコイルが設けられ、ロータには磁石が埋め込まれる。埋込磁石式モータへのモータ電流の供給が挟み込みの発生によって停止されても、ステータのコイルとロータの磁石との間にコギングトルクが発生すると、埋込磁石式モータの回転が目標の停止位置より余分に進んでしまう。その結果、シャッターカーテンの行き過ぎが発生して、シャッターカーテンに挟み込まれたときの荷重が増加する。そのため、コギングトルクの影響を受けても、シャッターカーテンの行き過ぎを抑制することが望まれる。本実施例に係るシャッターシステムでは、挟み込みの発生を判定しても埋込磁石式モータへのモータ電流の供給を停止せずに、埋込磁石式モータの回転を反転させてからモータ電流の供給を停止する。
図1(a)-(b)は、シャッターシステム1000の構造を示す。図1(a)は、施設を屋外から見た場合の構成を示し、図1(b)は、施設を屋内から見た場合の構成を示す。シャッターシステム1000は、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40、通信線200、コントローラ300を含み、シャッターカーテン30は、スラット32を含む。ここで、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40はシャッターに含まれる。
図1(a)に示されるように、開閉体であるシャッターは、住宅やビル等の施設において内外を仕切る外壁に形成された開口部10に設置される。開口部10は、施設において内外を連通する空間である。2つのガイドレール20は、上下方向に延びる形状を有するとともに、開口部10の左右方向の両側に互いに離間して、開口部10に設置されたサッシ等の枠材と外壁とに固定される。各ガイドレール20は、横断面略コ字状の内部構造を有する中空状の部材であり、2つのガイドレール20は、コ字状の開口が対向するように固定される。
シャッターカーテン30は、ガイドレール20の長手方向に沿って上下に移動し、開口部10を開閉する。具体的には、シャッターカーテン30の左右方向両端部がガイドレール20に挿入されることによって、シャッターカーテン30の左右方向両端部は、ガイドレール20によって上下方向に移動可能である。シャッターカーテン30は、複数のスラット32の組合せによって構成される。各スラット32は、開口部10の左右方向に沿って延在する板状の部材であって、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等により形成される。各スラット32の上端部と下端部にカール部(図示せず)が設けられており、隣接する2つのスラット32のうち、上側のスラット32の下端部のカール部と、下側のスラット32の上端部のカール部とは、回転自在に連結される。
シャッターケース40は、開口部10およびガイドレール20の上方に設けられる縦断面略矩形状の収容体である。シャッターケース40は内部に収納空間を有するとともに、シャッターケース40の下面に設けられた貫通孔を介して収納空間は外部につながる。収納空間には、貫通孔を介してシャッターカーテン30を巻き取ったり、あるいは繰り出したりするための巻き取り機構が設けられる。ここで、「巻き取り」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って上昇し、開口部10が開放されることであり、「繰り出し」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って降下し、開口部10が閉鎖されることである。
図1(b)に示されるように、開口部10を囲むようにサッシ12が取り付けられる。図1(a)のシャッターケース40に接続された通信線200は、サッシ12の内部に埋没されて屋内まで延びる。屋内の壁面にはコントローラ300が設置され、コントローラ300に通信線200が接続される。このように通信線200は、屋外に設置された電動化ユニット100と、屋内に設置されたコントローラ300とを接続する。
図2は、シャッターシステム1000の内部構造を示す。シャッターシステム1000は、シャッターカーテン30、シャッターケース40、巻き取り軸60を含む。シャッターカーテン30は、スラット32、ねじ34を含み、シャッターケース40は、ブラケット42と総称される第1ブラケット42a、第2ブラケット42b、支持軸44と総称される第1支持軸44a、第2支持軸44bを含む。巻き取り軸60は、回転枠62と総称される第1回転枠62a、第2回転枠62b、従動輪64、巻き取りばね66、固定部72、電動化ユニット80を含み、電動化ユニット80は、本体82、駆動輪84を含み、本体82は、埋込磁石式モータ86、制御部88、減速機90、通信線200を含む。
ここでは、シャッターケース40の内部構造を示すためにシャッターケース40が透明にして示される。シャッターケース40には、図1(a)のガイドレール20の左右の方向に延びる筒状の支柱である巻き取り軸60が配置される。巻き取り軸60には複数の固定部72が設けられており、複数のねじ34を使用して複数の固定部72にシャッターカーテン30が固定される。そのため、巻き取り軸60は、シャッターカーテン30を巻き取り可能な軸であるといえる。
シャッターケース40の収納空間の左側端部と右側端部には、巻き取り軸60を左右から挟むように、ブラケット42と総称される第1ブラケット42aと第2ブラケット42bが設けられる。具体的には、巻き取り軸60の左側には第1ブラケット42aが配置され、巻き取り軸60の右側には第2ブラケット42bが配置される。第1ブラケット42aは、巻き取り軸60の左側端部を回転可能に支持する支持部であり、第2ブラケット42bは、巻き取り軸60の右側端部を回転可能に支持する支持部である。巻き取り軸60の左側端部を「第1端部」と呼ぶ場合、巻き取り軸60の右側端部は「第2端部」と呼ばれる。
第1ブラケット42aの右側面には、右側に向かって突出する第1支持軸44aが設けられる。第1支持軸44aは筒形状を有し、第1支持軸44aの側面には第1回転枠62aが嵌合される。第1回転枠62aは、巻き取り軸60の左側端部に配置されるとともに、第1支持軸44aの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第1ブラケット42aに固定された第1支持軸44aを中心にして、第1回転枠62aが回転する。第2ブラケット42bの左側面には、左側に向かって突出する第2支持軸44bが設けられる。第2支持軸44bは筒形状を有し、第2支持軸44bの側面には第2回転枠62bが嵌合される。第2回転枠62bは、巻き取り軸60の右側端部に配置されるとともに、第2支持軸44bの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第2ブラケット42bに固定された第2支持軸44bを中心にして、第2回転枠62bが回転する。さらに、第1回転枠62aと第2回転枠62bの回転によって巻き取り軸60も回転する。
巻き取り軸60の内部の右側領域には、保持部(図示せず)が配置され、保持部に電動化ユニット80が取り付けられる。電動化ユニット80は、巻き取り軸60に回転動力を出力する電動装置(電動部)である。電動化ユニット80は、筒形状を有する本体82と、本体82の左側に配置される駆動輪84を含む。このような駆動輪84は、電動化ユニット80において巻き取り軸60の中央側を向いているともいえる。本体82の内部には埋込磁石式モータ86、制御部88、減速機90が搭載されており、埋込磁石式モータ86の回転によって減速機90と駆動輪84も回転する。制御部88は埋込磁石式モータ86の回転を制御する。特に、制御部88は、電動化ユニット80の埋込磁石式モータ86を回転させるための電流の値を制御する。
巻き取り軸60の内部において、保持部の左側の領域、つまり電動化ユニット80に対して巻き取り軸60の中央側の領域には、従動輪64が設けられる。従動輪64は、駆動輪84の左側に配置されており、駆動輪84と組み合わされた場合に駆動輪84の回転によって回転する。また、従動輪64の回転によって巻き取り軸60も回転する。その結果、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力により回転するといえる。一方、駆動輪84と従動輪64とが組み合わされていない場合、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力ではなく、手動の回転動力により回転する。手動による巻き取り軸60の回転については説明を省略する。
ここで、保持部は、本体82の側面の一部分、例えば、本体82の側面のうち、下側を含む部分を保持する。また、保持部の右側端部は第2支持軸44bに接続される。この接続により保持部は第2ブラケット42bに固定されるので、巻き取り軸60が回転する場合であっても、保持部に保持される本体82は回転しない。
さらに詳細に説明すると、電動化ユニット80の本体82では、制御部88による制御によって埋込磁石式モータ86が回転する。減速機90は、埋込磁石式モータ86の回転動力のトルクを増幅させる。減速機90には公知の技術が使用されればよいが、例えば、太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造を有する。減速機90の回転により駆動輪84が回転すると、駆動輪84と組み合わされた従動輪64も回転し、巻き取り軸60が回転する。
図1(a)のようにシャッターカーテン30が開口部10を閉鎖した全閉状態から、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転すると、シャッターカーテン30は、巻き取り軸60の外周面に沿って巻き取られながら開口部10を開放する。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は、1周目の回転において巻き取られたシャッターカーテン30上に積層されながら巻き取られ、開口部10の全域を開放する。また、シャッターカーテン30が開口部10を開放した全開状態から、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転すると、巻き取り軸60の外周面に積層されたシャッターカーテン30が順次繰り出される。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は開口部10の全域を閉鎖する。
図3は、シャッターシステム1000の構成を示すブロック図である。シャッターシステム1000は、電動化ユニット80、通信線200、コントローラ300を含む。電動化ユニット80は、埋込磁石式モータ86、制御部88を含み、制御部88は、第1接続部410、第1有線通信部412、位置制御部414、第1検出部416、速度制御部418、微分部420、電流制御部422、第2検出部424、第3検出部428を含む。コントローラ300は、操作部310、操作制御部312、第2有線通信部314、第2接続部316を含む。
コントローラ300の操作部310は、複数のボタンを有するユーザインターフェイスであり、ユーザの操作を受けつける。コントローラ300の表面には、開ボタン、停止ボタン、閉ボタンが設けられる。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンは例えば平面スイッチで構成される。開ボタンは、開口部10を開放するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「開放指示」という)を受けつけるボタンである。停止ボタンは、移動しているシャッターカーテン30を停止させるための指示(以下、「停止指示」という)を受けつけるボタンである。閉ボタンは、開口部10を閉鎖するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「閉鎖指示」という)を受けつけるボタンである。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンのうちの1つが押し下げられることによって、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じた操作信号が操作部310から操作制御部312に出力される。
操作制御部312は、操作部310から操作信号を受けつける。操作制御部312は、操作信号において示された開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つが含まれた指示信号を生成する。第2有線通信部314は、操作制御部312から指示信号を受けつけ、第2接続部316、通信線200を介して指示信号を電動化ユニット80に送信する。
第2接続部316は、コントローラ300に通信線200を接続するためのインターフェイスである。また、電動化ユニット80の第1接続部410も通信線200を接続するためのインターフェイスである。第2接続部316に通信線200が接続されるとともに、第1接続部410に通信線200が接続されることによって、通信線200は、コントローラ300と電動化ユニット80とを接続する。このような接続によって、コントローラ300から電動化ユニット80に向かって、通信線200は、指示信号を伝送する。コントローラ300は屋内に設置され、電動化ユニット80は屋外に設置されるので、屋内から屋外に指示信号が送信される。
第1有線通信部412は、第2接続部316、通信線200、第1接続部410を介して、第2有線通信部314からの指示信号を受信する。第1有線通信部412は、指示信号に含まれた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを位置制御部414に出力する。位置制御部414は、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを第1有線通信部412から受けつける。
位置制御部414は、受けつけた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じて、シャッターカーテン30の位置(下端の位置)の目標値を更新する。例えば、位置制御部414は、開放指示を受けつけている場合に、これまでの目標値を高くするように更新する。また、位置制御部414は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつける。第1検出部416における位置の帰還値の検出方法については後述する。ここで、シャッターカーテン30の位置は埋込磁石式モータ86の回転の角度として示されてもよいが、以下では説明を明瞭にするために角度も位置に含める。位置制御部414は、目標値と帰還値の少なくとも1つが上限位置あるいは下限位置に達するまで、あるいは停止指示があるまでは非ゼロの一定速度で動作させるための速度の目標値を出力する。
微分部420は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつけ、位置の帰還値を微分することによって、速度の帰還値を導出する。微分部420は速度の帰還値を速度制御部418に出力する。速度制御部418は、位置制御部414から速度の目標値を受けつけ、微分部420から速度の帰還値を受けつける。速度制御部418は、速度の目標値から速度の帰還値を減じることによって速度偏差を導出してから、比例・積分制御等の速度ループ処理を行ってトルク(電流)の目標値を導出する。
電流制御部422は、速度制御部418からトルク(電流)の目標値を受けつける。また、電流制御部422から埋込磁石式モータ86に出力される電流の大きさ、つまり電動化ユニット80の埋込磁石式モータ86に供給される総電流の値は第2検出部424において検出され、電流制御部422は、検出された電流の帰還値を受けつける。第2検出部424は例えばシャント抵抗により構成される。電流制御部422は、電流の帰還値がトルク(電流)の目標値に近づくように、埋込磁石式モータ86に出力すべき電流の大きさを決定する。これは、埋込磁石式モータ86を回転させるための電流を制御することに相当し、この決定には公知の技術が使用されればよい。つまり、速度制御部418と電流制御部422は、第1検出部416において検出した位置の変化、つまり速度に応じて、埋込磁石式モータ86を回転させるための電流の値を決定する。
電流制御部422から出力される電流の値に応じた速度で埋込磁石式モータ86が回転する。埋込磁石式モータ86は、巻き取り軸60に回転動力を出力する。埋込磁石式モータ86が3相ブラシレスモータである場合、電流制御部422からは3相の直流電流が出力される。
このような構成により、制御部88は、制御信号が開放指示に相当する場合、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転するように埋込磁石式モータ86を回転させ、制御信号が閉鎖指示に相当する場合、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転するように埋込磁石式モータ86を回転させる。これらにおいて埋込磁石式モータ86の回転方向は逆方向である。一方、制御部88は、制御信号が停止指示に相当する場合、埋込磁石式モータ86の回転を停止させる。埋込磁石式モータ86は制御部88に応じて回転し、開口部10を開閉するシャッターカーテン30、巻き取り軸60等に動力を供給する。
埋込磁石式モータ86の回転方向に応じてシャッターカーテン30が開閉される場合に、シャッターカーテン30の位置は第1検出部416で検出される。第1検出部416は、例えば、埋込磁石式モータ86の側部に設けられ、埋込磁石式モータ86の回転数を機械的にカウントして開閉位置あるいは上下限位置を検出するカウンタ式リミットスイッチにより構成される。また、第1検出部416は、埋込磁石式モータ86に設けられたエンコーダによりパルスをカウントすることによって、シャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。また、第1検出部416は、埋込磁石式モータ86の電流検出回路で構成され、埋込磁石式モータ86に加わる負荷変動に対応した電流値変化から開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。さらに、第1検出部416は、ガイドレール20の上下に設けられてシャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を直接検出する機械的あるいは電気的なリミットスイッチであってもよい。第1検出部416において検出された位置は、位置制御部414、微分部420に出力される。
以下では、コントローラ300の閉ボタンが押し下げられて、シャッターカーテン30が繰り出されている状況において、シャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生する状況を説明する。図4(a)-(b)は、電動化ユニット80の動作概要を示す。図4(a)は、埋込磁石式モータ86に出力される電流の大きさ、つまり第2検出部424において検出される電流の大きさの時間変化を示す。時間0からT1まで、シャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生していない。そのため、埋込磁石式モータ86の負荷がほぼ一定であるので、電流の大きさもほぼ一定である。このような状態においてシャッターカーテン30が繰り出される。
時間T1においてシャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生すると、埋込磁石式モータ86の負荷が増加する。例えば、埋込磁石式モータ86の負荷は時間T1から時間T2に向かって増加する。これは、障害物の挟み込みの発生によって、シャッターカーテン30が繰り出されない状況であるといえる。時間T1においてシャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生すると、電流が増加する。これは、埋込磁石式モータ86の負荷が増加している状況において、シャッターカーテン30を繰り出すための制御がなされるので、埋込磁石式モータ86に出力する電流が増加するからである。
このような障害物を検出するために、図3の第3検出部428は次の処理を実行する。第3検出部428は、第2検出部424から電流値を受けつける。また、第3検出部428は、図4(a)に示されるしきい値を設定する。第3検出部428は、電流値がしきい値を超えた場合、障害物の挟み込み、つまりシャッターカーテン30の負荷変動を検出する。しきい値は、実験あるいはシミュレーションにより決定されてもよいし、シャッターシステム1000を設置してから設定されてもよい。つまり、第3検出部428は、電流制御部422が埋込磁石式モータ86に電流を供給している状況において、シャッターカーテン30の負荷変動を検出する。
シャッターシステム1000を長期間にわたって使用すると、ガイドレール20が変形することもありえる。ガイドレール20が変形することによって、障害物が挟み込まれていない通常時においても、第2検出部424において検出される電流値が大きくなる。そのような状況において、図4(a)に示されるしきい値では、負荷変動の検出精度が悪化する。図4(b)は、ガイドレール20の変形等が生じた場合の埋込磁石式モータ86に出力される電流の大きさ、つまり第2検出部424において検出される電流の大きさの時間変化を示す。図4(b)では、図4(a)と同様に、時間0からT1まで、シャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生せず、時間T1においてシャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生している。電流値の時間変化は図4(a)と同様であるが、通常時、つまり時間0からT1までの電流値は図4(a)と比較して大きくなる。
このような状況における負荷変動の検出精度の悪化を抑制するために、第3検出部428は、第2検出部424において検出した電流値の移動平均を計算する。図4(b)において移動平均の結果は平均値として示される。また、第3検出部428は、図4(a)に示したしきい値に平均値を加算することによって、新たなしきい値を導出する。新たなしきい値は図4(b)においてしきい値と示される。つまり、第3検出部428は、第2検出部424において検出した電流値をもとにしきい値を更新する。しきい値の更新は、例えば定期的になされる。第3検出部428は、更新したしきい値を使用して、負荷変動を検出する。
第3検出部428において負荷変動が検出された場合、シャッターカーテン30の繰り出しは停止されるべきである。シャッターカーテン30の繰り出しを停止するために、埋込磁石式モータ86における回転は停止される。以下では、埋込磁石式モータ86における回転を停止させる場合に生じうる課題と、それを解決するための本実施例の構成を順に説明する。
図5(a)-(b)は、比較対象の埋込磁石式モータ186における課題を示す。図5(a)は埋込磁石式モータ186の構造を示す。埋込磁石式モータ186は、ステータ600、ロータ610を含む。ステータ600は固定される部材であり、ステータ600の内部には空洞部が設けられる。ステータ600の空洞部には、コイル602と総称される第1コイル602aから第6コイル602fが設けられる。ロータ610は、ステータ600の空洞部に、回転可能に配置される。ロータ610の内部には、磁石612と総称される第1磁石612aから第4磁石612dが矩形配置で埋め込まれる。このような構造により埋込磁石式モータ186は、磁石トルクとリラクタンス・トルクにより回転する。磁石トルクは、コイル602と磁石612の吸着力および反発力によって発生するトルクであり、リラクタンス・トルクは、磁気抵抗の大きな表層の磁石612が磁路を妨げたり、磁石612が奥まっているときには磁路をさえぎらなかったりするインダクタンスの変化によって発生するトルクである。また、図5(a)においてロータ610が右回りに回転する場合に、シャッターカーテン30の繰り出しがなされ、ロータ610が左回りに回転する場合に、シャッターカーテン30の巻き取りがなされる。
シャッターカーテン30を繰り出すために、ロータ610が右回りに回転する場合において、第3検出部428が負荷変動を検出したとき、つまり障害物の挟み込みを検出したとき、ロータ610の回転を停止させる必要がある。ここでは、ロータ610の回転を停止させるための目標の位置を目標位置650として示す。第3検出部428が目標位置650において埋込磁石式モータ186への電流の供給を停止する。目標位置650において、図5(a)のように第1コイル602aと第1磁石612aとが配置される場合、第1コイル602aと第1磁石612aとの間に、矢印で示されるようなコギングトルクが発生する。コギングトルクとは、コイル602とロータ610との磁気的吸引力が回転角度に依存して細かく脈動する現象におけるトルクである。コギングトルクにより、第1磁石612aが第1コイル602aに近づくようにロータ610は、目標位置650を超えてさらに回転する。
図5(b)は、図5(a)に続く状態であり、ロータ610の回転が実際位置652において停止した状態を示す。つまり、障害物の挟みこみが検出された場合に、ロータ610は目標位置650で停止せずに、実際位置652まで行き過ぎでしまう。これは、障害物の挟みこみを検出した状態においてもさらに繰り出される現象に相当する。
埋込磁石式モータ186のロータ610が行き過ぎてしまうことを抑制するために、本実施例に係るシャッターシステム1000は埋込磁石式モータ86に対して次の処理を実行する。図3の第3検出部428は負荷変動を検出した場合、負荷変動の検出を電流制御部422に通知する。電流制御部422は、負荷変動の検出の通知を第3検出部428から受けつけた場合、第3検出部428を介して第1検出部416から、シャッターカーテン30の位置の情報を受けつける。ここで、図1(a)に示されるようにシャッターカーテン30の位置に対して、第1領域500と第2領域502が規定される。第2領域502は、第1領域500の下側に配置される領域、例えば、地面から上に10cmの領域である。
電流制御部422は、シャッターカーテン30の位置が第1領域500に含まれていれば、埋込磁石式モータ86の反転動作の要否を判定せずに埋込磁石式モータ86を反転動作させる。つまり、電流制御部422は、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転するように埋込磁石式モータ86を回転させていた場合に、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転するように埋込磁石式モータ86を回転させてから停止させる。一方、電流制御部422は、シャッターカーテン30の位置が第2領域502に含まれていれば、埋込磁石式モータ86に電流を供給したまま埋込磁石式モータ86の反転動作の要否を判定する。
反転動作の要否を判定するための処理を説明するために、ここでは、図6も使用する。図6は、埋込磁石式モータ86と第1検出部416の構成を示す。埋込磁石式モータ86は、ステータ700、ロータ710を含む。ステータ700は、コイル702と総称される第1コイル702aから第6コイル702fを含み、ロータ710は、磁石712と総称される第1磁石712aから第4磁石712dを含む。ステータ700、コイル702、ロータ710、磁石712は、前述のステータ600、コイル602、ロータ610、磁石612と同一でよいので、ここでは説明を省略する。
第1検出部416は、磁界を検出可能なホール素子を含み、埋込磁石式モータ86の近傍に配置される。埋込磁石式モータ86の近傍とは、ロータ710内部に埋め込まれた磁石712による磁界を検出可能な位置である。第1検出部416は、磁界による磁力と磁石712の位置の対応関係を予め記憶し、検出した磁界による磁界をもとに、磁石712の位置を特定する。これは、検出した磁界をもとに磁石712の位置を推定することに相当する。図6に示されるように、第1検出部416は、第2磁石712bからの磁界による磁力をもとに、第1検出部416と第2磁石712bとの相対位置760を特定する。また、第1検出部416は、相対位置760とともに回転の方向を特定してもよい。第1検出部416は、相対位置760のような磁石712の位置の情報と、回転の方向の情報を逐次第3検出部428経由で電流制御部422に出力する。
電流制御部422は、磁石712の位置とコギングトルクの値との対応関係を予め記憶する。コギングトルクは、前述のごとく、磁石712の位置と磁石712の位置との関係に応じて変動しており、対応関係は、実験あるいはシミュレーションにより予め取得される。電流制御部422は、第1検出部416から受けつけた磁石712の位置の情報をもとに対応関係を参照することによって、コギングトルクの値を特定する。また、電流制御部422は、コギングトルクの値が予め定めた範囲よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定する。予め定めた範囲とは、コギングトルクが存在しても、図5(b)に示した目標位置650と実際位置652との差が一定値よりも小さくなる範囲であり、一定値は任意に定められればよい。電流制御部422は、反転動作が必要であると判定した場合、コギングトルクの値が予め定めた範囲内になる位置まで、埋込磁石式モータ86を反転動作させてから停止させる。一方、電流制御部422は、コギングトルクの値が予め定めた範囲に含まれる場合に、反転動作が不要であると判定し、埋込磁石式モータ86を直ちに停止させる。
図7(a)-(b)は、埋込磁石式モータ86による動作概要を示す。図7(a)は、図5(a)と同様であり、ロータ710の回転を停止させるための目標の位置が目標位置750として示される。ロータ710の位置が目標位置750であるときに第3検出部428が障害物の挟みこみを検知し、かつシャッターカーテン30が第2領域502に含まれ、かつ第1検出部416において推定した磁石712の位置によるコギングトルクの値が予め定めた範囲よりも大きい場合に、電流制御部422は、図7(b)のように実際位置752まで戻るようにロータ710を反転動作させる。電流制御部422は、ロータ710の位置が実際位置752に到達すると、ロータ710の回転を停止させる。実際位置752は、コギングトルクの値が予め定めた範囲内になる位置に相当する。
以上の実施例において、第1検出部416が「位置検出部」、「磁気検出部」と呼ばれ、第2検出部424が「電流検出部」と呼ばれ、第3検出部428が「負荷変動検出部」と呼ばれ、電流制御部422が「制御部」と呼ばれてもよい。
これまで説明したシャッターシステム1000における処理は、次のようになされてもよい。第1変形例では、反転動作の要否を判定するために、ホール素子が使用されなくてもよい。電流制御部422は、第2検出部424において検出した電流値を受けつける。電流制御部422は、受けつけた電流値の移動平均を計算する。移動平均の期間は、図4(a)に示された電流の短期変動の周期よりも長くされる。そのため、移動平均によって電流の短期変動の影響が低減される。電流制御部422は、受けつけた電流値から電流値の移動平均を減算する。減算結果は、電流の短期変動を示しており、ロータ710の回転角度に応じて変動する。ロータ710の回転角度に応じてコギングトルクも変動するので、減算結果はコギングトルクを示す。図8は、電流制御部422による処理概要を示し、ロータ710の回転角度に対するコギングトルクの変化を示す。回転角度に対するコギングトルクの値は、磁石712の数に応じた数の最大値(最小値)を有する周期関数となる。
減算結果とロータ710の回転角度とコギングトルクの値は互いに対応しているので、電流制御部422は、減算結果とコギングトルクとの間の対応関係を予め記憶する。対応関係は、実験あるいはシミュレーションにより予め取得される。電流制御部422は、算出した減算結果をもとに対応関係を参照することによって、コギングトルクの値を特定する。また、電流制御部422は、コギングトルクの値に対して範囲800を規定する。範囲800は、コギングトルクが存在しても、図5(b)に示した目標位置650と実際位置652との差が一定値よりも小さくなる範囲であり、一定値は任意に定められればよい。電流制御部422は、コギングトルクの値が範囲800よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定する。これは、第2検出部424において検出した電流の値に応じた埋込磁石式モータ86のコギングトルクが範囲800よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定することに相当する。一方、電流制御部422は、コギングトルクの値が範囲800に含まれる場合に、反転動作が不要であると判定する。
第2変形例では、第2検出部424において検出される電流値が、トルク成分であってもよい。埋込磁石式モータ86が3相ブラシレスモータである場合、3相ブラシレスモータに出力される3相の直流電流は、u相、v相、w相と示される。また、各相の電流ベクトルの合成ベクトルが周期的に角度を変化することによって、3相ブラシレスモータは回転する。
第2検出部424は、u相、v相、w相の電流ベクトルを受けつけ、これらに対してq軸、d軸への2軸変換を実行する。このような変換には公知の行列演算が実行されればよいので、ここでは説明を省略する。ここで、d軸は励磁成分を示しq軸はトルク成分を示す。合成ベクトルは、2軸変換により、d軸方向の励磁ベクトルとq軸方向のトルクベクトルの組合せに変換される。これは、3相ブラシレスモータにおける3相の電流を、励磁成分とトルク成分との組合せに変換することに相当する。励磁成分とトルク成分のうち、トルク成分は外力による負荷に比例する特性がある。つまり、トルク成分には、合計荷重のトルクの変化が反映される。
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
以上の構成によるシャッターシステム1000の動作を説明する。図9は、電動化ユニット80による検出手順を示すフローチャートである。第3検出部428が埋込磁石式モータ86の負荷変動を検出した場合(S10のY)、シャッターカーテン30の位置が第1領域500であれば(S12のY)、電流制御部422は埋込磁石式モータ86に反転動作を実行させる(S16)。シャッターカーテン30の位置が第1領域500でない場合(S12のN)、電流制御部422は、反転動作が必要である判定すれば(S14のY)、埋込磁石式モータ86に反転動作を実行させる(S16)。第3検出部428が埋込磁石式モータ86の負荷変動を検出しない場合(S10のN)、あるいは電流制御部422が、反転動作が必要であると判定しなければ(S14のN)、処理は終了される。
本実施例によれば、負荷変動を検出した場合、埋込磁石式モータ86に電流を供給したまま埋込磁石式モータ86の反転動作の要否を判定するので、シャッターカーテン30の行き過ぎの発生を抑制できる。また、シャッターカーテン30の行き過ぎの発生が抑制されるので、安全な停止動作を実現できる。また、シャッターカーテン30の行き過ぎの発生が抑制されるので、シャッターカーテン30が停止指示後に余分に動作することを防止できる。また、反転動作が必要であると判定した場合、埋込磁石式モータ86を反転動作させてから停止させるので、シャッターカーテン30に障害物が挟み込まれた場合に、障害物に加わる荷重を緩和した状態でシャッターカーテン30を停止できる。
また、シャッターカーテン30の位置が第1領域500に含まれば、埋込磁石式モータ86の反転動作の要否を判定せずに埋込磁石式モータ86を反転動作させるので、シャッターカーテン30を安全にかつ迅速に停止できる。また、シャッターカーテン30の位置が第2領域502に含まれば、埋込磁石式モータ86の反転動作の要否を判定するので、コギングトルクの大きさに応じた制御を実行できる。また、ホール素子を使用して推定した磁石712の位置とコイル702の位置とによるコギングトルクが予め定めた範囲よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定するので、判定精度を向上できる。また、電流値をもとにコギングトルクを推定するので、ホール素子を不要にできる。また、電流の値がトルク成分であるので、電流値を正確に検出できる。また、電流値が正確に検出されるので、負荷変動の検出精度を向上できる。また、電流値をもとにしきい値を更新するので、負荷変動の検出精度を向上できる。
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の電動開閉体(1000)は、シャッターカーテン(30)を巻き取り可能な巻き取り軸(60)に回転動力を出力する埋込磁石式モータ(86)と、埋込磁石式モータ(86)を回転させるための電流を制御する制御部(422)と、制御部(422)が埋込磁石式モータ(86)に電流を供給している状況において、シャッターカーテン(30)の負荷変動を検出する負荷変動検出部(428)とを備える。制御部(422)は、負荷変動検出部(428)が負荷変動を検出した場合、埋込磁石式モータ(86)に電流を供給したまま埋込磁石式モータ(86)の反転動作の要否を判定する。
制御部(422)は、反転動作が必要であると判定した場合、埋込磁石式モータ(86)を反転動作させてから停止させてもよい。
シャッターカーテン(30)の位置を検出する位置検出部(416)をさらに備えてもよい。制御部(422)は、負荷変動検出部(428)が負荷変動を検出した場合、位置検出部(416)において検出した位置が第1領域(500)に含まれていれば、埋込磁石式モータ(86)の反転動作の要否を判定せずに埋込磁石式モータ(86)を反転動作させ、位置検出部(416)において検出した位置が第1領域(500)の下側の第2領域(502)に含まれていれば、埋込磁石式モータ(86)に電流を供給したまま埋込磁石式モータ(86)の反転動作の要否を判定してもよい。
埋込磁石式モータ(86)のロータ内部に埋め込まれた磁石による磁界を検出する磁気検出部(416)をさらに備えてもよい。制御部(422)は、磁気検出部(416)において検出した磁界をもとに推定される磁石の位置と埋込磁石式モータ(86)のステータのコイルの位置とによるコギングトルクが予め定めた範囲よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定してもよい。
制御部(422)が埋込磁石式モータ(86)に供給する電流の値を検出する電流検出部(424)をさらに備えてもよい。制御部(422)は、電流検出部(424)において検出した電流の値に応じた埋込磁石式モータ(86)のコギングトルクが予め定めた範囲よりも大きい場合に、反転動作が必要であると判定してもよい。
埋込磁石式モータ(86)は、3相ブラシレスモータを構成し、負荷変動検出部(428)は、3相ブラシレスモータにおける3相の電流を、励磁成分とトルク成分との組合せに変換した場合のトルク成分がしきい値よりも大きい場合に、シャッターカーテン(30)の負荷変動を検出してもよい。
負荷変動検出部(428)は、電流検出部(424)において検出した電流の値がしきい値よりも大きい場合に、シャッターカーテン(30)の負荷変動を検出し、負荷変動検出部(428)は、電流検出部(424)において検出した電流の値をもとにしきい値を更新してもよい。
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。