JP7390280B2 - 開口部形成方法および開口補強構造 - Google Patents
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Description
特許文献1には、鉄筋コンクリート構造壁に設けられた開口部の補強構造が示されている。この開口部補強構造は、鉄筋コンクリート構造壁内に埋設されて開口部を画成する円形鋼管と、この円形鋼管の周囲に設けられた補強鋼板と、を備える。補強鋼板には、継手筋が固着されており、この継手筋は、寸断された主鉄筋に溶接されている。
特許文献2には、梁に設けられた貫通孔の補強構造が示されている。この貫通孔の補強構造は、貫通孔を囲んで配置された環状補強部材と、貫通孔を囲んで配置されて梁主筋に係止する斜め補強部材と、を備える。
特許文献4には、コア抜き作業によって、コンクリートを上下に貫通するとともに隣り合って連続するように複数の貫通孔を形成し、これら複数の貫通孔で囲まれて縁切りされるコンクリートブロックを撤去して、コンクリートにこのコンクリートブロックが撤去された開口部を形成する方法が示されている。
第1の発明の開口部形成方法は、既存コンクリート部材(例えば、後述の鉄筋コンクリート壁1)にあと施工で開口部(例えば、後述の開口部2)を設ける開口部形成方法であって、前記既存コンクリート部材のうち前記開口部の周囲の部分を開口周縁部(例えば、後述の開口周縁部5)とし、前記開口周縁部となる部分の外周に沿って穿孔ドリルを移動しながら、前記穿孔ドリルで前記既存コンクリート部材に穿孔して貫通孔(例えば、後述の貫通孔20)を形成する作業を繰り返し、隣接する前記貫通孔同士を重ねて連続させる工程(例えば、後述のステップS1)と、前記既存コンクリート部材のうち前記貫通孔で囲まれた部分(例えば、後述の貫通孔で囲まれた部分P)を撤去する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記開口周縁部となる部分に開口補強材(例えば、後述のシース管10、鋼管10A、リブ付き鋼管10B、棒状部材10C)を配置してモルタル(例えば、後述の鋼繊維モルタル)またはコンクリートを打設することで、前記開口部および前記開口周縁部を形成する工程(例えば、後述のステップS3)と、を備えることを特徴とする。
また、鋼管の外周面に全周に亘って鋼板を設けたので、開口補強材に対して様々な方向から応力が作用しても、開口補強材が十分に抵抗できる。
この発明によれば、開口補強材を定着板付きの鉄筋材とした。よって、この棒状の開口補強材を、開口部を囲んで枠状に配置するだけで、開口部を容易に補強でき、主筋および開口補強材の配筋作業が容易となる。
また、開口補強材に定着板を設けたので、開口補強材を従来のような定着板のない鉄筋材とした場合に比べて、鉄筋コンクリート部材に対する定着性能が高くなる。よって、開口補強材の長さを従来よりも短くでき、施工性が向上するうえに、開口部の設計自由度が高くなる。
また、枠状に配置した開口補強材の角部付近には、2つの定着板が近接して配置されることになるので、この角部付近のコンクリートが拘束されて、開口部を確実に補強できる。
この発明によれば、開口部に紙製型枠を配置し、この開口部の周囲に鋼繊維を含む鋼繊維モルタルまたは鋼繊維コンクリートを打設して開口周縁部を形成した。よって、開口部を鋼管や鉄筋で補強しないから、作業効率の高い開口補強構造を構築できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る既存コンクリート部材としての鉄筋コンクリート壁1の正面図である。図2(a)は、鉄筋コンクリート壁1の破線Aで囲んだ部分の配筋状況を示す拡大正面図であり、図2(b)は、図2(a)の鉄筋コンクリート壁1のB-B断面図である。
この鉄筋コンクリート壁1では、縦横に延びる壁筋6がダブル配筋されている。開口周縁部5には、壁筋6が配筋されておらず、略中央に開口補強材としてのシース管10が配置されている。このシース管10の周囲に鋼繊維モルタルを充填することにより、開口部2および開口周縁部5が形成されて、開口部2は、シース管10で補強される。
また、鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との境界Rは、図3に示すように、穿孔ドリルの穿孔により形成された略半円形状が連続した凹凸形状となっている。例えば、穿孔ドリル(貫通孔)の外径Dは、100mm~150mmであり、略半円形状が連続した凹凸Tは、50mm~75mm程度である。
ステップS1では、図5(a)に示すように、鉄筋コンクリート壁1の開口周縁部5を設ける部分の外周に沿って穿孔ドリルを移動しながら、穿孔ドリルで鉄筋コンクリート壁1に穿孔して貫通孔20を形成する作業を繰り返し、これにより、隣接する貫通孔20同士を重ねて連続させる。これにより、鉄筋コンクリート壁1の内壁面(鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との境界Rに相当する)は、略半円形状が連続した形状となる。
ステップS2では、図5(b)に示すように、鉄筋コンクリート壁1の貫通孔20で囲まれた部分Pを撤去する。
ステップS3では、開口周縁部5となる部分の略中央にシース管10を配置して鋼繊維モルタルを打設することで、図2(a)および図2(b)に示すように、開口部2および後打ち躯体である開口周縁部5を形成する。
(1)開口周縁部5となる部分の周縁に沿って穿孔ドリルを移動しながら、この穿孔ドリルで鉄筋コンクリート壁1に穿孔して貫通孔20を形成する作業を繰り返し、隣接する貫通孔20同士を重ねて連続させる。そして、開口周縁部5となる部分の略中央にシース管10を配置して、鋼繊維モルタルを打設して、開口部2および開口周縁部5を形成する。これにより、鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との境界Rが略半円形状が連続した形状となり、シヤーキーにより応力が伝達されるので、後打ち躯体である開口周縁部5と鉄筋コンクリート壁1とを容易に一体化できる。
また、鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との接合面(境界R)が、穿孔ドリルで形成された略半円形状によって連続的に形成され、凹凸形状が設けられるので、既存の鉄筋コンクリート壁1とあと施工の開口周縁部5とが幾何学的に係止される。よって、鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との密着性を高めることができる。
また、鉄筋コンクリート壁1と開口周縁部5との接合面(境界R)では、従来のように、はつり作業により打継面に凹凸を形成する目粗し処理を行う必要がないから、施工効率を向上できる。
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る鉄筋コンクリート壁1Aの開口部2周囲の配筋状況を示す拡大正面図であり、図6(b)は、図6(a)のC-C断面図である。
本実施形態では、開口補強材としてシース管の代わりに鋼管10Aを設けた点が、第1実施形態と異なる。
本実施形態によれば、上述の(1)に加えて、以下のような効果がある。
(2)開口補強材として鋼管10Aを用いたので、従来のような開口部廻りに配置する開口補強鉄筋を省略したり簡素化したりできるため、開口補強方法の作業効率を向上できる。
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係る鉄筋コンクリート壁1Bの開口部2周囲の配筋状況を示す拡大正面図であり、図7(b)は、図7(a)のD-D断面図である。
本実施形態では、開口補強材としてリブ付き鋼管10Bを設けた点が、第1実施形態と異なる。すなわち、リブ付き鋼管10Bは、開口部2となる鋼管11と、この鋼管11の外周面上に全周に亘って設けられた円環状の鋼板としてのリブ12と、を備える。リブ12は、ダブル配筋された壁筋6同士の間に、三枚並んで立設されている。各リブ12には、鋼管11の外周面に沿って所定間隔おきに14個の貫通孔13が設けられている。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)に加えて、以下のような効果がある。
また、鋼管11の外周面に全周に亘ってリブ12を設けたので、リブ付き鋼管10Bに対して様々な方向から応力が作用しても、リブ付き鋼管10Bが十分に抵抗できる。
図8(a)は、本発明の第4実施形態に係る鉄筋コンクリート壁1Cの開口部2周囲の配筋状況を示す拡大正面図であり、図8(b)は、図8(a)のE-E断面図である。
本実施形態では、開口補強材としてシース管10および棒状部材10Cを設けた点が、第1実施形態と異なる。すなわち、あと施工で構築された開口周縁部5の略中央には、開口部2を形成する開口補強材としてのシース管10が配置されて、シース管10(開口部2)の周囲には、複数の開口補強材としての棒状部材10Cが枠状に配置されている。これらシース管10および棒状部材10Cにより、開口部2が補強されている。
棒状部材10Cは、シース管10(開口部2)の周囲に、互いに交差するように枠状に8本ずつ二重に配置される。具体的には、正面視では、棒状部材10Cは、シース管10を囲んで、互いに交差して口の字形状(つまり縦方向および横方向)に4本配置されるとともに、シース管10を囲んで互いに交差して菱形状(つまり斜め方向)に4本配置される。これにより、隣り合う棒状部材10Cの定着板15同士が近接して位置することになる。なお、隣り合う棒状部材10Cの端部同士は、図示しない鉄筋結束線で互いに結束される。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)に加えて、以下のような効果がある。
また、棒状部材10Cに定着板15を設けたので、開口補強材を従来のような定着板のない鉄筋材とした場合に比べて、鉄筋コンクリート壁1に対する定着性能が高くなる。よって、開口補強材の長さを従来よりも短くでき、施工性が向上するうえに、開口部2の設計自由度が高くなる。
また、枠状に配置した棒状部材10Cの角部付近には、2つの定着板15が近接して配置されることになるので、この角部付近のコンクリートが拘束されて、開口部2を確実に補強できる。
以下、試験体を製作して、この試験体に荷重を加える加力試験を行った。
試験体1は、従来の開口補強を施した鉄筋コンクリート体である。図9(a)は、この試験体1の配筋状況を示す側面図であり、図9(b)は、試験体1の配筋状況を示す正面図である。試験体1では、壁筋をD13(SD295)で縦横135mmピッチ、ダブル配筋とし、開口寸法を208mmとした。また、この試験体1の開口補強は、D13(SD295)で縦筋、横筋、および斜筋を4本ずつ配置した。
試験体2は、鉄筋コンクリート体に矩形状の貫通孔を形成しておき、この貫通孔に鋼管を配置して鋼繊維モルタルを充填したものである。図10(a)は、この試験体2の配筋状況を示す側面図であり、図10(b)は、試験体2の配筋状況を示す正面図である。試験体2では、壁筋をD13(SD295)で縦横135mmピッチ、ダブル配筋した。また、貫通孔のサイズは、390mm×390mmとし、鋼管は、厚さ8.2mm、外径216.3mm、長さ400mmとした。
例えば、上述の各実施形態では、鋼繊維モルタルを充填して開口周縁部5を形成したが、これに限らず、高強度モルタル、無収縮モルタル、あるいは鋼繊維コンクリートを充填してもよい。無収縮モルタルは、例えば、プレミックス材を使用して製造され、圧縮強度は72.8N/mm2である。このプレミックス材としては、太平洋マテリアル株式会社製の太平洋プレユーロックスUHS、太平洋プレユーロックスMS、太平洋プレユーロックスSが挙げられる。
また、上述の各実施形態では、シース管10、鋼管10A、リブ付き鋼管10Bを配置することで開口部2を形成したが、これに限らない。例えば、筒状または矩形状の紙製型枠(例えば、株式会社昭和丸筒製の紙製使い捨て型枠ソノモールド、直径5cmまたは10cm)を配置することで開口部2を形成し、その紙製型枠の周囲に開口補強材を配置することなく、鋼繊維を含む鋼繊維モルタルまたは鋼繊維コンクリートを充填して、開口周縁部5を形成してもよい。
2…開口部 3…柱 4…梁 5…開口周縁部 6…壁筋
10…シース管(開口補強材) 10A…鋼管(開口補強材)
10B…リブ付き鋼管(開口補強材) 10C…棒状部材(開口補強材)
11…鋼管 12…リブ(鋼板) 13…貫通孔
14…鉄筋材 15…定着板 20…穿孔ドリルによる貫通孔
R…鉄筋コンクリート壁と開口周縁部との境界
Claims (4)
- 既存コンクリート部材にあと施工で開口部を設ける開口部形成方法であって、
前記既存コンクリート部材のうち前記開口部の周囲の部分を開口周縁部とし、前記開口周縁部となる部分の外周に沿って穿孔ドリルを移動しながら、前記穿孔ドリルで前記既存コンクリート部材に穿孔して貫通孔を形成する作業を繰り返して、隣接する前記貫通孔同士を重ねて連続させる工程と、
前記既存コンクリート部材のうち前記貫通孔で囲まれた部分を撤去する工程と、
前記開口周縁部となる部分に開口補強材を配置してモルタルまたはコンクリートを打設することで、前記開口部および前記開口周縁部を形成する工程と、を備えることを特徴とする開口部形成方法。 - 既存コンクリート部材に形成された開口部を補強する構造であって、
前記既存コンクリート部材のうち前記開口部の周囲には、開口補強材が配置されてモルタルまたはコンクリートが打設された開口周縁部が設けられ、
前記既存コンクリート部材と前記開口周縁部との境界は、穿孔ドリルの穿孔により形成された略半円形状が連続した形状となっていることを特徴とする開口補強構造。 - 前記開口補強材は、前記開口部となる鋼管と、前記鋼管の外周面に全周に亘って立設された円環状または矩形状の鋼板と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の開口補強構造。
- 既存コンクリート部材に形成された開口部を補強する構造であって、
前記既存コンクリート部材のうち前記開口部には、紙製型枠が配置され、
前記紙製型枠の周囲には、鋼繊維モルタルまたは鋼繊維コンクリートが打設された開口周縁部が設けられ、
前記既存コンクリート部材と前記開口周縁部との境界は、穿孔ドリルの穿孔により形成された略半円形状が連続した形状となっていることを特徴とする開口補強構造。
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