JP7389954B2 - イオンビーム照射装置の運転方法、イオンビーム照射装置 - Google Patents
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Description
装置が停止されている状態から運転を開始する場合、運転開始当初はイオンビームの引き出しが不安定な状態であることから、基板へのイオンビーム照射処理をただちに開始することなく、しばらくの間は慣らし運転を実施している。
例えば、特許文献1では、運転開始時にイオン源に投入する電力を通常運転時に投入する電力に比べて高くして、イオン源を構成するプラズマ生成容器の予備加熱を行い、イオンビームの引き出しが安定するまでの時間の短縮を図っている。
特許文献1では、イオンビーム照射処理(イオン注入処理)に使用されるドーパントガスと同じガスを用いて高い投入電力でイオン源の運転が行われている。イオンビーム照射処理に使用されるガスには腐食性が高いハロゲン成分を含むガスもあり、この種のガスを使用する場合には、イオン源を構成するプラズマ生成容器の内壁面やプラズマ生成容器からイオンビームの引き出しを行う複数枚の電極からなる引出電極系の表面とハロゲン成分とが反応して堆積物が生成される。
運転停止状態から運転開始時に実施されるイオンビーム照射装置の運転方法であって、
不活性ガスをイオン源のプラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内で前記不活性ガスによるプラズマを生成する工程と、
前記不活性ガスをイオンビーム照射処理に使用される第一のガスに切り替える工程と、を備えている。
イオン源の運転パラメータで、前記プラズマ生成容器内で生成されるプラズマの状態に関連したパラメータを監視する工程をさらに備え、
前記運転パラメータの監視結果にもとづいて、前記不活性ガスと前記第一のガスとの切り替えが行われる、ことが望ましい。
前記不活性ガスによるプラズマが生成されている間、前記プラズマ生成容器の下流に配置される引出電極系でのイオンビームの引き出しが行われない、ことが望ましい。
具体的には、
前記第一のガスとは異なる第二のガスを用いて基板処理を行う際のイオンビーム照射装置の運転方法であって、
前記第二のガスを前記プラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内でプラズマを生成する工程と、
前記プラズマ生成容器の下流に配置される引出電極系を用いて前記プラズマからイオンビームを引き出す工程と、
引き出されたイオンビームのマススペクトルを計測する工程と、
マススペクトルを計測した結果、前記第二のガス以外の成分に由来する残留物が所定値を上回る場合、前記第二のガスに基づくプラズマからイオンビームを引き出す追い出し工程を実施する。
運転停止状態から運転を開始するイオンビーム照射装置の運転方法を実行する制御装置を有するイオンビーム照射装置で、
前記制御装置は、
不活性ガスをイオン源のプラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内で前記不活性ガスによるプラズマを生成する工程と、
前記不活性ガスをイオンビーム照射処理に使用される第一のガスに切り替える工程と、を実行するものであればよい。
引出電極系21は、プラズマ生成容器11で生成されたプラズマからイオンビームIBの引き出しを行う。図1において、このイオンビームIBは、紙面奥手前方向に長いリボンビームあるいはシートビームと呼ばれるイオンビームである。イオンビームの引き出し方向に垂直な平面で引き出されたイオンビームを切断したとき、その切断面が略長方形状を成す形状をしている。
なお、本発明において、イオンビームの形状には制限はなく、リボンビーム以外のスポットビームが引き出される構成が採用されてもよい。
分析スリット3の下流(イオンビームIBの進行方向側)には、図示される矢印の方向でイオンビームIBの輸送経路に出し入れ可能なビーム電流計測器Pが設けられている。制御装置Cは、ビーム電流計測器Pの図示されない駆動機構を制御する装置である。他に、制御装置Cは、各部との間で破線矢印のように信号の送信、あるいは送受信を行って、後述する本発明の運転方法を実現する。
この基板5の往復搬送によって、基板全面にイオンビームIBが照射されて、イオンビームIBによる基板処理が実現される。
なお、図1の構成例では、ビーム電流計測器Pが出入りする場所と処理室4との間には何らビーム光学要素が配置されていないが、これらの部材間に加減速器や偏向器等の従来から知られているビーム光学要素が配置されてもよい。
処理S1を受けて、第一のボンベB1の希ガス(この例ではArガス)をプラズマ生成容器11に供給する。その後、アーク放電や高周波放電を用いてプラズマ生成容器11内でプラズマの生成が行われる。(処理S2)(プラズマ生成工程)
プラズマの状態が安定しているかどうかについての判断は、予め行われた実験結果を踏まえて、プラズマ生成処理の経過時間で判断してもよい。
ただし、イオン源1を構成する部材は経時的に消耗していることから、必ずしも所定時間経過後にプラズマが安定しているとは限らない。よって、プラズマの状態をリアルタイムに監視してプラズマの状態が安定しているかどうかを判断することが望まれる。
プラズマ生成容器11内で生成されたプラズマの濃度が濃くなれば、アーク電流値も増加する。イオン源への投入パワーと供給されるガス流量が決まっていれば、時間の経過とともにプラズマ濃度やアーク電流値は一定値に収束する。
そこで、アーク電流値が所定値となるか、アーク電流値の変動が所定範囲内となったことをもってプラズマの状態が安定したと判断する。
このイオン源ISではフィラメント電源Vfでフィラメント31が加熱されてフィラメント31から熱電子が放出される。フィラメント31から放出された熱電子はカソード32を加熱して、カソード32から放出された熱電子をアノード電極33、グランド電極34で所定エネルギーに加速して、プラズマ生成容器35に供給している。
具体的には、制御装置C2はアーク電流Iaの計測値と予め設定された設定値との差分を算出して、この差分が小さくなるようにカソード電源Vcの設定値(カソード電圧)を調整している。上記構成のイオン源ISでは、カソード電圧の変動が所定範囲内に収まる程度に小さくなったことをもって、プラズマの状態が安定したと判断している。
制御装置C2は、図1で説明した制御装置Cと同一のものであってもいいが、両制御装置を個別に設けておいてもよい。この場合、図1の制御装置Cでイオンビーム照射装置IMの全体を統括制御し、制御装置Cの下で制御装置C2がイオン源を制御する。
なお、図3のイオン源ISでは、アーク電流Iaが監視対象とする運転パラメータであると言えるが、当該運転パラメータをもとにカソード電圧を制御していることから間接的にはカソード電圧も監視対象であると言える。
対象となる運転パラメータはプラズマの状態が安定しているかどうかが把握できるパラメータであればよく、イオン源の構成や運転パラメータの制御方法に応じて上述したアーク電流Iaやカソード電圧とは異なる運転パラメータを監視対象にしてもよい。
具体的には、第一のボンベB1からのArガスの供給を停止し、第二のボンベB2あるいは第三のボンベB3からプラズマ生成容器11へ基板処理に必要なイオン種を生成するガス(BF3、PH3、AsH3等)の供給が行われる。その後、同ガスをもとにしたイオンビームの立ち上げ処理が開始される。(処理S5)
一方、本発明では、希ガスを用いてプラズマを生成しているため、ハロゲン等の腐食性ガスによるプラズマ生成容器や引出電極系の腐食がなく、異常放電の要因となる堆積物の生成を防ぐことが可能となり、特許文献1に比べてイオン源の長寿命化を図ることができる。
さらに、プラズマ生成容器へのヒータの埋め込みが不要となることから、特許文献2に比べて装置構成の簡素化を図ることができる。
イオンビームIBの引き出しを行わない場合、引出電極系21とプラズマ生成容器11との電位差をなくすよう、引出電極系21を構成する各電極への印可電圧を調整しておく。
一方、基板処理に使用するガスを2種類以上とし、これらのガスを切り替えて基板処理が実施されることもある。この場合に係る本発明の構成例を図4のフローチャートを用いて説明する。
その後、質量分析電磁石2の磁場を連続的に変化させてイオンビームIBのマススペクトルを取得する。(処理S13、マススペクトル計測工程)
マススペクトルの取得時には、ビーム電流計測器PをイオンビームIBの輸送経路に入れておき、分析スリット3の下流でビーム電流を計測する。
マススペクトルの計測後、計測結果をもとに、イオンビーム中に含まれる不要成分が予め設定された基準値を超えていないかどうかの確認が行われる。(処理S14、不要イオン成分の確認工程)
こうした処理不良を未然に防ぐために、本発明では後述する追い出し工程を実施する。
イオンビームのマススペクトルは、ガス種に応じてピークの位置が決まっている。そこで、まずは計測されたマススペクトルに所定ピーク以外のピークが存在しているかどうかの確認が行われる。
次に、所定ピーク以外のピークのなかで、基準値と比較してこれを超えているものがあるかどうかを確認する。なお、所定ピーク以外のピークが複数ある場合、全てのピークを基準値と比較しなくてもいい。例えば、複数ある所定ピーク以外のピークのうち、最大となるピークを基準値と比較するようにしてもよい。
処理S13では、処理S15の追い出し処理に比べて第二のガスの流量を基板処理時の流量に下げて、プラズマ生成容器で生成されたプラズマからイオンビームを引き出す。その後、引き出されたイオンビームを質量分析電磁石2と分析スリット3で質量分析したうえで、ビーム電流計測器Pでビーム電流を計測する。なお、ビーム電流計測器Pでの計測時、質量分析電磁石2の磁場は処理S14で基準値を超えると判断された不要成分に由来するマススペクトルのピークが計測できるように調整しておく。
一方、除去対象とする不要成分のピーク(ビーム電流値)が依然として基準値を超えているならば、再度、ガス流量を上げて、処理S15の追い出し処理を実施する。
例えば、1回目に処理S15を実施する際の実施時間を10分と設定していたのであれば、2回目に処理S15を実施する際には実施時間を15分に変更してもよい。
不要成分の除去が確認できた段階で、基板処理に適したイオンビームの立ち上げ処理が実施される。(処理S16)
例えば、準備した運転パラメータを制御装置Cの記憶領域に記憶させ、適宜、記憶領域から読みだしてイオン源1を運転するようにしておけば、処理S12乃至処理S15の一連の処理に要する時間を短縮することができる。
具体的には、先の基板処理で使用されたガスがPH3で、次の基板処理で使用されるガスがBF3の場合、P+イオンのピークとBF+イオンのピークはピーク位置が被り、不要成分の有無を確認することが困難となりうる。
このような場合には、互いのピーク位置が離れている二価のイオン(P++、BF++)のピークを参照して不要成分の有無を確認すればよい。
処理S1乃至処理S5、処理S11乃至処理S16についての各処理は、これまでに説明した処理と同一の処理である。
この立ち上げ条件の判定では、現在のイオンビーム照射装置の運転状態と次に行われるイオンビーム照射装置の運転内容に基づいて、コールドスタート時の運転方法かイオン種切り替え時の運転方法のいずれの運転方法を選択するのかが判定される。(処理S30)
また、イオンビーム照射装置の具体例としては、イオン注入装置の他に、イオンビームエッチング装置、質量分析計、集束イオンビーム装置等々の従来から知られている装置が挙げられる。
さらに、全体の処理のうち、一部の処理に係る実行処理を制御装置で行い、残りの処理に係る実行処理を手動で行う構成でもよい。
次に、図4の処理S13で得られた追い出し対象とする不要成分による堆積物の残留量と予め設定された基準値との関係を参照し、処理S21で得られた追い出し対象とする不要なイオン成分による堆積物の残留量を減らすときに用いる目標値の設定を行う。(処理S22)
これは処理S13と処理S21でイオン源を運転する際の運転パラメータが異なっていることから、マススペクトルとして得られる不要成分のピークの大きさ(ビーム電流値)に差異が生じているためである。
処理S23は、処理S24で不要成分の残留量が目標値以下となるまで継続して行われる。残留量が目標値以下となれば、図4と同じく、処理S16で基板処理を行うためのセットアップを実行する。
所定時間、ビームの引き出しが行われた後、イオン源の運転パラメータを切り替えて、基準ビーム条件でビームの引き出しを実施する。(処理S32)
この基準ビーム条件でのビームの引き出しは、図4の処理S12に相当する。この条件下で処理S13と同様にマススペクトルの計測を行い、先に処理S13で計測された不要成分の残留量が基準値以下になったかどうかの確認を行う。(処理S33)
一方、不要成分の残留量が基準値以下となれば、図4と同じく、処理S16で基板処理を行うためのセットアップを実行する。
このことから、イオン種の切り替えごとに必ず上述した本発明のイオン種切り替え時の処理を実施する必要はなく、基板処理を行うイオン種(ガス種)ごとに、本発明のイオン種切り換え時の処理を実施するかどうかを選択できるようにしておいてもいい。
そのような選択は、例えば、先に使用していたガス種と後で使用するガス種の組み合わせに応じて設定しておく。また、追い出し条件や追い出し処理の時間、不要成分の残留物で除去対象とするマススペクトルの値なども、前後の基板処理に使用されるガス種に応じて個別に設定できるようにしておいてもいい。
このことから、上述した実施形態で述べられるマススペクトルは、質量の異なる複数成分のビーム電流強度からなるスペクトルではなく、単一成分のビーム電流強度からなるものも対象にしている。
2 質量分析で磁石
3 分析スリット
11、35 プラズマ生成容器
21 引出電極系
P ビーム電流計測器
C、C2 制御装置
IM イオンビーム照射装置
Claims (5)
- 運転停止状態から運転開始時に実施されるイオンビーム照射装置の運転方法であって、
不活性ガスをイオン源のプラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内で前記不活性ガスによるプラズマを生成する工程と、
前記不活性ガスをイオンビーム照射処理に使用される第一のガスに切り替える工程と、を備えるイオンビーム照射装置の運転方法。 - イオン源の運転パラメータで、前記プラズマ生成容器内で生成されるプラズマの状態に関連したパラメータを監視する工程をさらに備え、
前記運転パラメータの監視結果にもとづいて、前記不活性ガスと前記第一のガスとの切り替えが行われる、請求項1記載のイオンビーム照射装置の運転方法。 - 前記不活性ガスによるプラズマが生成されている間、前記プラズマ生成容器の下流に配置される引出電極系でのイオンビームの引き出しが行われない請求項1または2に記載のイオンビーム照射装置の運転方法。
- 前記第一のガスとは異なる第二のガスを用いて基板処理を行う際のイオンビーム照射装置の運転方法であって、
前記第二のガスを前記プラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内でプラズマを生成する工程と、
前記プラズマ生成容器の下流に配置される引出電極系を用いて前記プラズマからイオンビームを引き出す工程と、
引き出されたイオンビームのマススペクトルを計測する工程と、
マススペクトルを計測した結果、前記第二のガス以外の成分に由来する残留物が所定値を上回る場合、前記第二のガスに基づくプラズマからイオンビームを引き出す追い出し工程を実施する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のイオンビーム照射装置の運転方法。 - 運転停止状態から運転開始時に実施されるイオンビーム照射装置の運転方法を実行する制御装置を有するイオンビーム照射装置であって、
前記制御装置は、
不活性ガスをイオン源のプラズマ生成容器に導入して、前記プラズマ生成容器内で前記不活性ガスによるプラズマを生成する工程と、
前記不活性ガスをイオンビーム照射処理に使用される第一のガスに切り替える工程と、を実行する、イオンビーム照射装置。
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