JP7388051B2 - 転がり軸受の状態監視方法及び転がり軸受の状態監視システム - Google Patents

転がり軸受の状態監視方法及び転がり軸受の状態監視システム Download PDF

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本発明は、転がり軸受の状態監視方法及び状態監視システムに関する。
各種機械装置の回転支持部には、玉軸受やころ軸受などの転がり軸受が組み込まれている。転がり軸受は、互いに同軸に配置された1対の軌道輪である外輪及び内輪と、複数の転動体とを備えている。外輪は、内周面に外輪軌道を有しており、内輪は、外周面に内輪軌道を有している。複数の転動体は、外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に配置されている。転がり軸受の内部には、潤滑油やグリースといった潤滑剤を充填し、転がり接触部や滑り接触部などに、異常摩耗や異常発熱などが発生することを防止している。
転がり軸受は、運転開始時の状態では、外輪軌道及び内輪軌道の軌道面及び転動体の転動面に十分な厚さの油膜が形成されて、潤滑条件が良好に保たれているが、高速回転、過大荷重、高温といった、比較的厳しい環境下で使用を継続すると、軌道面や転動面に形成される油膜の厚さが減少して、潤滑条件が厳しくなる。そして、そのまま使用を継続すると、軸受温度が上昇して、軌道面や転動面などに変色や軟化、溶着などが発生し、最終的に焼付きに至る可能性がある。
実開昭62-85721号公報
このような事情に鑑みて、実開昭62-85721号公報(特許文献1)には、転がり軸受を構成する外輪の温度を測定することで、焼付きが発生するのを未然に防止する技術が記載されている。このような従来技術によれば、焼付きが発生し、転がり軸受が回転不能になる以前に、転がり軸受の交換を促すなどの措置を取ることが可能になる。ただし、外輪の温度が上昇してから実際に焼付きが発生するまでの時間が短いため、転がり軸受の交換作業を早急に実施しなければならないなどの問題がある。一方、焼付き発生の前兆をより早期に検知することができれば、焼付きが発生するのを未然に防止できるだけでなく、設備を稼働していない時間にメンテナンス作業を行うことなども可能になる。このような事情から、焼付きなどの損傷の前兆を早期に検知することが求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、焼付きなどの損傷の前兆を早期に検知することができる、転がり軸受の状態監視方法及び状態監視システムを提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記従来技術の課題を解決する手段について鋭意検討した結果、転がり軸受の運転に伴って潤滑剤が劣化すると、潤滑剤の粘度が上昇し、転動体の公転速度を低下させるという知見を得た。また、潤滑剤の粘度が上昇した状態で、転がり軸受の運転を継続すると、転がり接触面や滑り接触面に十分な厚さの油膜が形成されず、これらの接触面に金属接触が生じて、最終的に焼付きに至るとの知見を得た。さらに、転動体の公転速度の低下は、潤滑剤の劣化だけでなく、軌道面や転動面にはく離が生じた場合や、摩耗粉の噛み込みなどが発生した場合にも生じる。そこで、転動体の公転速度の低下を知ることができれば、焼付きだけでなく、圧痕や割れなどの損傷も未然に防止できるとの考えに至った。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。具体的には、本発明の転がり軸受の状態監視方法及び状態監視システムは、以下の手段を採用している。
本発明の一態様にかかる転がり軸受の状態監視方法は、回転輪と静止輪との間に複数個の転動体を配置してなる転がり軸受の状態を監視する方法であり、測定工程と、判定工程とを備える。
前記測定工程は、前記回転輪を回転させるとともに前記転動体を公転させながら、前記回転輪の回転速度である第1の速度を測定するとともに、前記転動体の公転速度である第2の速度を測定する工程である。
前記判定工程は、前記第1の速度と前記第2の速度との比と、所定の閾値とを比較することにより、前記転がり軸受の状態を判定する工程である。
なお、本発明の技術的範囲からは外れるが、前記第2の速度として、前記転動体を保持した保持器の回転速度を測定することもできる。
本発明の一態様では、前記測定工程を、次の検出工程と、周波数解析工程と、比算出工程とから構成する。
前記検出工程は、前記転動体に対し、前記転がり軸受の外部から前記転がり軸受の軸方向に検出部を対向させた1つの渦電流センサを用いて、前記回転輪と前記転動体とに対して電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、磁界の変化を検出し、前記回転輪の回転速度に応じた周期で変化する長周期の信号と前記転動体の公転速度に相関のある周期で変化する短周期の信号とが合成された前記渦電流センサの出力信号を得る工程である。
前記周波数解析工程は、前記渦電流センサの前記出力信号(出力波形)をFFT解析することにより、前記第1の速度に相当する前記回転輪の回転周波数を求めるとともに、前記第2の速度に相当する前記転動体の公転周波数(移動周波数)を求める工程である。
前記比算出工程は、前記第1の速度に相当する前記回転輪の回転周波数と、前記第2の速度に相当する前記転動体の公転周波数との比を算出する工程である。
本発明の技術的範囲からは外れるが、前記検出工程で、前記保持器に対して電磁誘導による渦電流を発生させ、前記長周期の信号と前記保持器の回転速度に相関のある短周期の信号とが合成された前記渦電流センサの出力信号を得て、前記周波数解析工程で、前記第2の速度に相当する前記保持器の回転周波数を求め、前記比算出工程で、前記第1の速度に相当する前記回転輪の回転周波数と、前記第2の速度に相当する前記保持器の回転周波数との比を算出することもできる。
本発明の一態様では、前記回転輪の回転周波数と前記転動体の公転周波数との比を、前記転動体の公転周波数を前記回転輪の回転周波数で除して得られる、公転周期比(=転動体の公転周波数/回転輪の回転周波数)とすることができる。
本発明の技術的範囲からは外れるが、前記回転輪の回転周波数と前記保持器の回転周波数との比を、前記保持器の回転周波数を前記回転輪の回転周波数で除して得られる、回転周期比(=保持器の回転周波数/回転輪の回転周波数)とすることができる。
本発明の一態様では、前記回転輪として、円周方向の一部に着磁処理を施して当該部分を予め磁化したものを使用するか、又は、円周方向の一部に磁石を取り付けたものを使用することができる。
本発明の技術的範囲からは外れるが、前記保持器として、円周方向の一部に着磁処理を施して当該部分を磁化したものを使用するか、又は、円周方向の一部に磁石を取り付けたものを使用することができる。
本発明の一態様では、前記渦電流センサを、前記静止輪に固定されたシールリングに取り付けることができる。
本発明の一態様では、前記渦電流センサを、前記静止輪に取り付けることができる。
本発明の一態様では、前記渦電流センサを、前記静止輪を固定したハウジングに取り付けることができる。
本発明の一態様にかかる転がり軸受の状態監視システムは、回転輪と静止輪との間に複数個の転動体を配置してなる転がり軸受の状態を監視するためのシステムであって、1つの渦電流センサと、周波数解析部と、比算出部と、判定部とを備える。
前記渦電流センサは、前記転動体に対し、前記転がり軸受の外部から前記転がり軸受の軸方向に検出部を対向させて、前記回転輪と前記転動体とに対して電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、磁界の変化を検出し、前記回転輪の回転速度に応じた周期で変化する長周期の信号と前記転動体の公転速度に相関のある周期で変化する短周期の信号とが合成された出力信号を得る。
前記周波数解析部は、前記渦電流センサの前記出力信号をFFT解析する。
前記比算出部は、前記周波数解析部でそれぞれ解析された、前記回転輪の回転周波数と前記転動体の公転周波数との比を算出する。
前記判定部は、前記比算出部で算出された前記比と所定の閾値とを比較することで、前記転がり軸受の状態を判定する。
本発明の技術的範囲からは外れるが、前記渦電流センサにより、前記転動体を保持した保持器に対して電磁誘導による渦電流を発生させ、前記長周期の信号と前記保持器の回転速度に相関のある短周期の信号とが合成された出力信号を得ることができ、前記比算出部により、前記回転輪の回転周波数と前記保持器の回転周波数との比を算出し、前記判定部で、前記比算出部で算出された前記比と所定の閾値とを比較することで、前記転がり軸受の状態を判定することもできる。
本発明の転がり軸受の状態監視方法及び状態監視システムによれば、焼付きなどの損傷の前兆を早期に検知することができる。
図1は、実施の形態の第1例にかかる転がり軸受の状態監視システムを示すブロック図である。 図2は、実施の形態の第1例にかかる状態監視方法の対象となる、対象軸受の1例を示す半部断面図である。 図3は、本例の転がり軸受の状態監視方法の原理を説明するために示すグラフであり、(A)は軸受温度の時間変化を示すグラフであり、(B)は油膜厚さの時間変化を示すグラフであり、(C)は転動体の公転速度の時間変化を示すグラフであり、(D)は公転周期比の時間変化を示すグラフである。 図4は、渦電流センサにより、対象軸受を構成する回転輪及び転動体の速度を測定する測定工程を示す模式図であり、(A)は断面図であり、(B)は(A)の右側から見た側面図である。 図5は、渦電流センサにより得られる出力信号の1例である。 図6は、渦電流センサの出力信号にFFT解析を施すことにより得られる周波数スペクトルの1例である。 図7は、実施の形態の第1例にかかる状態監視方法を示すフローチャートである。 図8は、参考例の第1例を示す、図4の(A)に相当する図である。 図9は、実施の形態の第2例を示す、図4の(A)に相当する図である。 図10は、参考例の第2例を示す、図4の(A)に相当する半部断面図である。 図11は、実施の形態の第例を示す、図4の(A)に相当する図である。 図12は、参考例の第3例を示す、図4の(A)に相当する半部断面図である。
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1~図7を用いて説明する。
[転がり軸受の状態監視システムの全体構成]
本例の転がり軸受の状態監視システム1は、監視対象となる対象軸受2に、焼付きなどの損傷の前兆(兆候)が発生したか否かを監視するもので、渦電流センサ3と、監視装置4とを備える。
以下、監視対象となる対象軸受2についての説明を行った後、本例の転がり軸受の状態監視システム1について説明を行う。
〈対象軸受〉
対象軸受2は、たとえば深溝型、アンギュラ型などの玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、ニードル軸受、自動調心ころ軸受などの転がり軸受であり、その種類(単列や複列などの軸受形式)や大きさは問わない。対象軸受2としては、風力発電装置に組み込まれる軸受など、損傷の発生を未然に防止する必要性の高い軸受を、好ましく採用することができる。
対象軸受2は、図2に示すように、外輪5と、内輪6と、複数個の転動体7と、保持器8と、1対のシールリング9とを備えている。
外輪5は、円環状に構成されており、内周面に外輪軌道10を有している。内輪6は、円環状に構成されており、外周面のうちで外輪軌道10と対向する部分に、内輪軌道11を有している。外輪5と内輪6とは、互いに同軸に配置されている。
複数の転動体7は、外輪軌道10と内輪軌道11との間に転動自在に配置されている。転動体7は、回転輪である内輪6(又は外輪5)が回転した際に、それぞれの中心軸回りに自転するとともに、外輪5及び内輪6の中心軸を中心として公転する。なお、図示の例では、転動体7として、玉を使用している。
外輪5、内輪6及び転動体7は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)に代表される軸受鋼、中炭素鋼、浸炭鋼などの鉄系合金製(導体製)で、ズブ焼き入れ、浸炭焼き入れ処理、浸炭窒化焼き入れ処理などの熱処理が施されており、磁性を有している。なお、測定対象となる内輪6及び転動体7は、軸受鋼のような強磁性体であることが望ましい。
保持器8は、円周方向に関して等間隔にポケット12を有しており、それぞれのポケット12に転動体7を転動自在に保持している。保持器8は、転動体7の公転速度と同じ速度で回転する。保持器8は、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂製で、射出成形により一体に造られている。なお、本例では、渦電流センサ3を利用して、転動体7の公転速度(公転周波数)を測定し、保持器8の回転速度は測定しないため、保持器8を合成樹脂製としている。ただし、本発明の技術的範囲からは外れるが、後述する参考例のように、保持器の回転速度を測定する場合には、保持器は金属製(導体製)とするか、又は、円周方向の一部に磁石を取り付ける。
1対のシールリング9は、外輪5の内周面と内輪6の外周面との間に存在する、転動体7が設置された空間13の軸方向両側の開口を塞いでいる。シールリング9は、静止輪(図示の例では外輪5)に固定されており、芯金14と、該芯金14を覆ったシール材15とを備えている。このため、シールリング9は、回転せずに、静止輪とともに静止している。芯金14は、ステンレス鋼板などの金属板製である。シール材15は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのゴム製である。シール材15の一部は、回転輪の周面(図示の例では内輪6の外周面)に当接又は近接対向している。転動体7が設置された空間13には、グリースなどの潤滑剤を充填している。
対象軸受2は、たとえば、外輪5をハウジングに対して内嵌し、内輪6を回転軸に対して外嵌することで、ハウジングの内側に回転軸を回転自在に支持する、内輪回転式の使用態様で使用することができる。あるいは、対象軸受2は、外輪5を回転体に対して内嵌し、内輪6を固定軸に対して外嵌することで、固定軸の周囲に回転体を回転自在に支持する、外輪回転式の使用態様で使用することもできる。以下の説明は、対象軸受2を、内輪回転式の使用態様で使用する場合について行う。
本例では、次のような原理に基づき、損傷の前兆を早期に捉え、対象軸受2に損傷が発生するのを未然に防止する。
対象軸受2の内部に充填した潤滑剤(グリース)は、対象軸受2の使用に伴って劣化が進行すると、粘度が上昇する。潤滑剤は、粘度が上昇すると、粘ちょう状になり、転動体7(及び保持器8)の移動を妨げる。つまり、粘ちょう状の潤滑剤が抵抗になり、転動体7の公転速度(保持器8の回転速度)を低下させる。また、潤滑剤の粘度が上昇すると、転動体7に公転滑りが発生しやすくなり、軸受温度を上昇させる原因になる。
一方、潤滑剤は、粘度が正常であれば、転動体7によって軌道面から押し退けられても、次の(円周方向に関して隣の)転動体7が通過する前に、十分な厚さの油膜を軌道面に再形成することができる。ただし、潤滑剤は、粘度が上昇して粘ちょう状になると、次の転動体7が通過する前に、十分な厚さの油膜を軌道面に再形成することができなくなる。このため、このような状態で使用を継続すると、軌道面と転動面とが金属接触し、最終的に焼付きに至る可能性がある。
上述のように、潤滑剤の粘度の上昇は、対象軸受2の温度上昇と、油膜厚さの変化と、転動体7の公転速度の低下とをそれぞれ引き起こすが、これら3つの特性に変化が生じるタイミングは、次のようになる。すなわち、図3の(A)(B)(C)に示したように、軸受温度に顕著な変化(上昇)が現れるよりも前に、油膜厚さに顕著な変化(押し退けられた潤滑剤が戻らずに、厚さが上昇する現象)が現れ、それと同時に、転動体7の公転速度に顕著な変化(低下)が現れる。このため、転動体7の公転速度の変化を捉えることができれば、適切なメンテナンス作業を行うなどして、焼付きの発生を未然に防止することが可能になる。つまり、本例では、軸受温度よりも前に顕著な変化が現れる、転動体7の公転速度の変化を、焼付きなどの損傷の前兆として利用する。本例では、このような原理に基づき、損傷の前兆を早期に捉え、対象軸受2に損傷が発生するのを未然に防止する。
本例の転がり軸受の状態監視システム1は、回転輪である内輪6の回転速度及び転動体7の公転速度を測定するのに利用する渦電流センサ3と、渦電流センサ3の出力信号に基づき、対象軸受2に損傷の前兆が発生したか否かを判定する監視装置4とを備えている。
〈渦電流センサ〉
渦電流センサ3は、測定対象物(内輪6及び転動体7)との間に生じる磁界の変化を検出可能な計測器であり、接続ケーブル16を介して、監視装置4に接続されている。なお、渦電流センサ3と監視装置4とは、有線の接続ケーブル16で接続せずに、無線により接続する構成を採用しても良い。本例では、渦電流センサ3を1つだけ使用する。
渦電流センサ3は、検出部と、回路(発振回路、共振回路、検波回路、増幅回路などを含む)とを備えている。検出部は、渦電流センサ3の先端部(ヘッド)に設けられており、その内部にセンサコイルを備えている。センサコイルは、発振回路から高周波電流が流されると、高周波磁界を発生させる。そして、高周波磁界内に測定対象物が存在すると、電磁誘導現象により、測定対象物の表面に渦電流を発生させる。このようにして発生する渦電流は、センサコイルによる磁界を妨げるような磁界を生み出す。また、測定対象物が回転すると、渦電流の発生態様が変化し、センサコイルの周囲の磁界も変化する。磁界の変化は、センサコイルのインピーダンスを変化させるので、測定対象物の回転に応じて、出力信号の周期及び振幅(電圧値)を変化させる。つまり、渦電流センサ3は、測定対象物の回転を磁場の変化としてとらえる。なお、渦電流センサ3としては、検出部と回路とを一体に備えた構造としても良いし、検出部(プローブ)と回路などを備えたドライバとをケーブルにより接続した構造としても良い。
渦電流センサ3は、たとえば図4に示すように、シールリング9の軸方向外側面の円周方向1箇所に、貼着や接着などの固定手段により取り付ける。これにより、渦電流センサ3の検出部を、シールリング9を介して、転動体7(及び保持器8)に対向させる。なお、図4の(B)には、シールリング9を省略して示している。渦電流センサ3の検出部は、シールリング9の軸方向外側面に対して当接させても良いし、近接対向させても良い。また、シールリング9に対する渦電流センサ3の取付位置や取付角度などは、センサコイルから発生する高周波磁界内に、転動体7及び内輪6が含まれるように規制する。ただし、渦電流センサ3の取付位置は、シールリング9に限定されず、測定対象物の表面に渦電流を発生させることができれば、外輪5やハウジングなど、その他の静止部材に取り付けても良い。
本例では、内輪6を回転させるとともに転動体7を公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、測定対象物である内輪6及び転動体7のそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。この結果、センサコイルのインピーダンスが変化して、図5に示すような出力信号が得られる。このようにして得られる出力信号は、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する長周期の信号(サイン波)Sに、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する短周期の信号Sが合成されたものになる。以下、渦電流センサ3により、このような出力信号が得られる理由について説明する。
先ず、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号Sが得られる理由を説明する。
内輪6の磁気特性は、たとえば熱処理が円周方向に関して均一に施されていないことなどに起因して、円周方向に関して多少のばらつきを有している。このため、内輪6を回転させながら、電磁誘導により内輪6の表面に渦電流を発生させると、内輪6の磁気特性の変化に応じてセンサコイルの周囲の磁界が変化するため、渦電流センサ3からは、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号Sが得られる。
次に、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する信号Sが得られる理由を説明する。
渦電流センサ3の検出部を転動体7に対向させて、転動体7を公転させると、渦電流センサ3の検出部は、転動体7に対向する状態と対向しない状態とを、転動体7の公転速度に相関のある周期で交互に繰り返す。このため、転動体7を公転させながら、電磁誘導により転動体7の表面に渦電流を発生させると、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する信号Sが得られる。
したがって、渦電流センサ3により、回転する内輪6及び公転する転動体7のそれぞれに対し電磁誘導により渦電流を発生させれば、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号Sに、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する信号Sが合成された出力信号が得られる。
〈監視装置〉
監視装置4は、対象軸受2に損傷の前兆が発生したか否かを判定する機能を有している。監視装置4は、データを入力するための入力部17と、データを記憶するための記憶部18と、FFT解析を行うための周波数解析部19と、周期比を算出するための比算出部20と、損傷の前兆の有無を判定するための判定部21と、判定結果を出力するための出力部22とを備えている。
監視装置4の入力部17には、渦電流センサ3の出力信号が接続ケーブル16を介して入力される。具体的には、入力部17には、図5に示すような出力信号が入力され、記憶部18に記憶される。また、監視装置4の入力部17には、予め求めておいた所定の閾値を入力し、記憶部18に記憶しておく。
周波数解析部19は、渦電流センサ3の出力信号(出力波形)に対して、FFT(高速フーリエ変換)解析を行う。これにより、渦電流センサ3の出力信号から、第1の速度である内輪6の回転速度を表す周波数成分(f)と、第2の速度である転動体7の公転速度を表す周波数成分(f)とを分離して取り出す。具体的には、渦電流センサ3の出力信号にFFT解析を行うと、図6に示すような周波数スペクトル(FFT波形)が得られる。このため、周波数スペクトル上のピーク周波数から、内輪6の回転速度を表す周波数成分(f)と、転動体7の公転速度を表す周波数成分(f)とを求める。具体的には、周波数スペクトル上には複数(1次成分だけでなく高次成分)のピーク周波数が現れるが、次のようにして、内輪6の回転速度を表す周波数成分(f)と、転動体7の公転速度を表す周波数成分(f)とを判別することができる。すなわち、内輪6の周波数成分(f)は、内輪6の回転速度(rpm)/時間(60min)で求めることができ、内輪6の周波数成分(f)の整数倍の周波数成分は、内輪6の回転速度(rpm)/時間(60min)×n(n=2、3・・)で求めることができる。このため、周波数スペクトル上に現れた複数のピーク周波数のうち、一定間隔で出現したピーク周波数は、内輪6に関するピーク周波数であると判別できる。また、内輪6に関する複数のピーク周波数のうち、図6に黒丸記号を付した最も周波数の低いピーク周波数が、内輪6の周波数成分(f)であり、残りの白丸記号を付したピーク周波数が、内輪6の周波数成分(f)の整数倍に対応するものであると判別できる。一方、転動体7の周波数成分(f)は、転動体の個数×転動体の公転速度で求めることができ、転動体の個数を考慮した値になるため、内輪6の周波数成分(f)よりもピーク周波数が高くなる。このため、図6に三角記号を付したピーク周波数が、転動体7の周波数成分(f)であると判別できる。
比算出部20は、内輪6の回転周波数(f)と転動体7の公転周波数(f)との比を算出する。この理由は、損傷の前兆として利用する転動体7の公転速度は、潤滑剤の粘度だけでなく、回転輪である内輪6の回転速度の影響も受けるためである。すなわち、内輪6の回転速度が上昇すると、転動体7の公転速度は上昇し、内輪6の回転速度が低下すると、転動体7の公転速度も低下する。そこで、内輪6の回転速度と転動体7の公転速度との比を求めることで、内輪6の回転速度の影響を排除する。特に本例では、転動体7の公転周波数(f)を内輪6の回転周波数(f)で除して、公転周期比(R=f/f)を算出する。そして、求めた公転周期比(R)は、記憶部18に記憶しておく。
判定部21は、比算出部20が算出した公転周期比(R)と、記憶部18に予め記憶しておいた所定の閾値(T)とを比較して、転動体7の公転速度の状態を判定する。たとえば図3の(D)に示したように、閾値(T)として、対象軸受2に異常が発生していない状態での公転周期比(R)よりも少しだけ小さい値(T<R)を採用すると、公転周期比(R)が閾値(T)よりも大きい場合には、損傷の前兆はないと判定し、公転周期比(R)が閾値(T)よりも小さい場合には、損傷の前兆があると判定することができる。また、必要に応じて、公転周期比(R)と閾値(T)との差(T-R)を求め、この差に基づいて、損傷の進行度(進行具合)を判定することもできる。また、閾値を複数設定することで、損傷の進行度を判定することもできる。
出力部22は、判定部21が判定した結果を、たとえばディスプレイに数値で視覚的に表示したり、又は、スピーカなどにより聴覚的に出力する。また、損傷の進行度を求めた場合には、その結果を併せて表示(出力)することもできる。
監視装置4は、たとえばパーソナルコンピュータにより構成することができ、プログラムを実行することで、上述した各機能を実行する。
[転がり軸受の状態監視方法]
次に、上述した本例の転がり軸受の状態監視システム1を用いて、対象軸受2の状態を監視する方法を説明する。対象軸受2の監視は、対象軸受2が組み込まれた設備を備えた工場などの現場で行う。たとえば、対象軸受2が風力発電装置用の軸受である場合には、渦電流センサ3を風力発電装置のナセル内に配置し、監視装置4を監視施設などに配置して遠隔で監視を行うことができる。また、対象軸受2の監視は、対象軸受2を設備に組み込んだ初期の状態から連続して行うこともできるし、所定の時間を空けて断続的に行うこともできる。本例の状態監視方法は、図7に示すように、測定工程(S1)と、判定工程(S2)とを行う。
〈測定工程〉
測定工程(S1)を行う際には、たとえば図4に示したように、渦電流センサ3を、シールリング9の軸方向側面の円周方向1箇所に事前に取り付けておく。そして、対象軸受2が組み込まれた設備を稼働することにより、内輪6を回転させるとともに転動体7を公転させながら、内輪6の回転速度である第1の速度を測定するとともに、転動体7の公転速度である第2の速度を測定する。本例では、測定工程(S1)は、検出工程(S1)と、周波数解析工程(S1)と、比算出工程(S1)とに分けられる。
《検出工程》
検出工程(S1)では、渦電流センサ3により、内輪6の回転周波数と転動体7の公転周波数とを測定する。具体的には、内輪6を回転させるとともに転動体7を公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、内輪6及び転動体7のそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。そして、センサコイルの周囲の磁界を変化させて、センサコイルのインピーダンスを変化させる。ここで、内輪6の磁気特性は、円周方向に関して多少のばらつきを有しているため、内輪6の磁気特性の変化に応じてセンサコイルの周囲の磁界が変化し、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号Sが得られる。また、渦電流センサ3の検出部は、転動体7の公転に基づいて転動体7に対向する状態と対向しない状態とを、転動体7の公転速度に相関のある周期で交互に繰り返すため、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する信号Sが得られる。つまり、図5に示したような、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号Sと、転動体7の公転速度に相関のある周期で変化する信号Sとが合成された出力信号が得られる。渦電流センサ3の出力信号は、接続ケーブル16又は無線により、監視装置4の入力部17に入力する。
《周波数解析工程》
周波数解析工程(S1)では、監視装置4の周波数解析部19により、渦電流センサ3の出力信号(出力波形)に対してFFT解析を行い、内輪6の回転速度を表す周波数成分(f)と、転動体7の公転速度を表す周波数成分(f)とを分離して取り出す。
《比算出工程》
比算出工程(S1)では、監視装置4の比算出部20により、内輪6の回転周波数(f)と転動体7の公転周波数(f)との比である、公転周期比(R)を算出する。
〈判定工程〉
判定工程(S2)では、監視装置4の判定部21により、公転周期比(R)と記憶部18に予め記憶しておいた所定の閾値(T)とを比較して、転動体7の公転速度の状態を判定する。具体的には、転動体7の公転速度が、焼付きなどの損傷の前兆であるといえるほど低下したか否かを判定する。そして、損傷の前兆はないと判定した場合には、たとえば所定時間経過後に、測定工程(S1)に戻り、再び監視を開始する。これに対し、損傷の前兆があると判定した場合には、監視装置4の出力部22により、判定結果を、たとえばディスプレイに視覚的に表示したり、又は、スピーカなどにより聴覚的に出力する。また、必要に応じて損傷の進行度を併せて表示する。
以上のような本例の転がり軸受の状態監視システム1及び状態監視方法によれば、焼付きなどの損傷の前兆を早期に検知することができる。
すなわち、本例では、軸受温度よりも前に顕著な変化が現れる転動体7の公転速度の変化を、焼付きなどの損傷の前兆として利用する。このため、実開昭62-85721号公報(特許文献1)に記載された従来技術のように温度変化を利用する場合に比べて、焼付き発生の前兆をより早期に検知することができる。このため、焼付きが発生するのを未然に防止できるだけでなく、設備を稼働していない時間に、たとえば潤滑剤の補給や交換などのメンテナンス作業を行うことも可能になる。また、外輪の温度を測定する場合には、外部の温度変化に基づき温度が変化しているのか、損傷の前兆として温度が変化しているのか判別することが困難であり、損傷の前兆を正確にとらえることが難しいが、本例では、外部の温度変化の影響を受けない転動体7の公転速度の変化を利用するため、損傷の前兆を正確にとらえることが可能になる。また、潤滑剤の劣化は、軸受内部の温度上昇も原因になるため、高温環境下で使用される対象軸受2を監視するのに特に有効である。さらに、高速回転用の軸受と低速回転用の軸受とのいずれの場合にも、損傷の前兆として転動体7の公転速度の低下が生じるため、本例によれば、どのような回転速度で使用される軸受も監視対象とすることができる。
さらに、渦電流センサ3は、シールリング9に取り付けるだけで、内輪6の回転速度(回転周波数f)及び転動体7の公転速度(公転周波数f)を非接触で測定することができるため、渦電流センサ3を取り付けるために、対象軸受2に特別な加工を施さなくて済む。また、1つの渦電流センサ3により、内輪6の回転速度と転動体7の公転速度とを同時に測定できるため、システムの小型化及び低コスト化を図ることができる。また、内輪6の回転速度及び転動体7の公転速度を測定するのに、回転センサを利用する場合には、内輪6及び転動体7にそれぞれエンコーダを取り付ける必要があるが、本例では、このようなエンコーダが不要になる。このため、対象軸受2の選択の自由度を高めることもできる。
[参考例の第1例
本発明に関する参考例の第1例について、図8を参照して説明する。
本参考例では、転動体7を保持した保持器8aの回転速度が、転動体7の公転速度と同じになるという性質を利用する。すなわち、転がり軸受の状態監視システム1により、転動体7の公転速度ではなく、保持器8aの回転速度(回転周波数)を測定し、対象軸受2aの状態を監視する。
このために本参考例では、保持器8aを金属製(導体製)としている。具体的には、保持器8aがプレス保持器(波形保持器)である場合には、たとえば冷間圧延鋼板や熱間圧延鋼板などを材料として使用することができ、保持器8aがもみ抜き保持器である場合には、たとえば機械構造用炭素鋼(S25C~S45C)などを材料として使用することができる。
そして、実施の形態の第1例と同様に、シールリング9の軸方向外側面などに取り付けた渦電流センサ3により、内輪6を回転させるとともに転動体7を公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、内輪6及び保持器8aのそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。そして、センサコイルの周囲の磁界を変化させて、センサコイルのインピーダンスを変化させる。ここで、保持器8aが、たとえば図8に示したようなプレス保持器である場合には、保持器8aの側面が、渦電流センサ3の検出部に対して、保持器8aの回転速度に相関のある周期で近づいたり遠ざかったりするため、保持器8aの回転速度に相関のある周期で変化する信号が得られる。
本参考例では、転動体7の公転速度と同じ速度で回転する保持器8aの回転速度の変化を、焼付きなどの損傷の前兆として利用するため、損傷の前兆を早期に検知することができる。また、渦電流センサ3によっては転動体の公転速度を測定できない、セラミック製の転動体を使用した軸受を、監視対象とすることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図9を参照して説明する。
本例では、回転輪である内輪6の回転速度(回転周波数)をより精度良く測定するために、内輪6の側面又は外周面の円周方向1箇所に、貼着や接着などの固定手段により、磁石23を取り付けている。なお、磁石23の形状や大きさ及びその取付位置は、内輪6の回転を阻害しない(回転バランスを大きく崩さない)限り、特に限定されない。
そして、実施の形態の第1例の場合と同様に、対象軸受2bを構成するシールリング9の軸方向外側面などに取り付けた渦電流センサ3により、内輪6を回転させるとともに転動体7を公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、内輪6及び転動体7のそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。そして、センサコイルの周囲の磁界を変化させて、センサコイルのインピーダンスを変化させる。この際、磁石23は、渦電流に起因した磁界とは別に磁界を発生させるため、内輪6の回転速度に応じた周期で変化する信号が得られる。
以上のような本例では、内輪6の回転速度(回転周波数)を、より精度良く測定することができる。また、渦電流センサ3によっては内輪の回転速度を測定できない、セラミック製の内輪を使用した軸受を、監視対象とすることもできる。なお、本例の構造に代えて、内輪の円周方向の一部に着磁処理を施して、当該部分を磁化する構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合には、内輪の回転バランスを崩さずに、磁石を取り付けた場合とほぼ同じ効果を奏することができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
参考例の第2例
参考例の第2例について、図10を参照して説明する。
参考例では、複列の転がり軸受を対象軸受2cとし、渦電流センサ3の取付位置を、実施の形態の第1例の構造から変更している。
対象軸受2cは、外輪5aと、内輪6aと、複列に配置された転動体7aと、保持器8bとを備えている。本参考例の対象軸受2cは、転動体7aが設置された空間13aの軸方向両側の開口部をシールリングによって塞がない、開放型の軸受である。また、図示の例では、転動体7aとして、ころを使用している。
外輪5aは、内周面に複列の外輪軌道10a、10bを有している。また、外輪5aには、複列の外輪軌道10a、10b同士の間に位置する軸方向中間部に、外輪5aを直径方向に貫通する油穴24が、円周方向複数箇所に設けられている。内輪6aは、外周面に複列の内輪軌道11a、11bを有している。保持器8bにより転動自在に保持された転動体7aは、複列の外輪軌道10a、10bと複列の内輪軌道11a、11bとの間に配置されている。転動体7aが設置された空間13aには、渦電流センサ3の挿入されていない油穴24を通じて潤滑油(オイル)が供給される。
参考例では、複数の油穴24の中の1つの油穴24を利用して、渦電流センサ3を外輪5aに取り付けている。具体的には、渦電流センサ3を、その検出部を内輪6aの外周面に対向させるようにして、油穴24に径方向外方から挿入している。また、このように渦電流センサ3を外輪5aに取り付けた状態で、センサコイルから発生する高周波磁界内に、内輪6a及び少なくとも一方の列の転動体7aが含まれるようにしている。
参考例の場合にも、内輪6aを回転させるとともに転動体7aを公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、内輪6a及び転動体7aのそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。そして、センサコイルの周囲の磁界を変化させて、センサコイルのインピーダンスを変化させる。これにより、内輪6aの回転速度に応じた周期で変化する信号と、転動体7aの公転速度に相関のある周期で変化する信号とが合成された出力信号を得る。
以上のような本参考例では、シールリングを備えない軸受を監視対象とすることができる。また、既存の油穴24を利用して、渦電流センサ3を外輪5aに取り付けることができるため、外輪5aを含む対象軸受2cに特別な加工を施さなくて済む。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
[実施の形態の第例]
実施の形態の第例について、図11を参照して説明する。
本例では、実施の形態の第1例の構造から、対象軸受2の構造は変更せずに、渦電流センサ3の取付位置のみを変更している。すなわち、本例では、渦電流センサ3を、外輪5の軸方向側面に取り付けている。外輪5に対する渦電流センサ3の固定手段は、特に問わないが、たとえば貼着や接着、ボルト固定などを採用することができる。
以上のような本例では、渦電流センサ3をシールリングに取り付ける構造に比べて、渦電流センサ3の姿勢を安定させることができる。このため、測定精度の向上を図ることができる。また、たとえばシーリングを回転輪に固定する構造などの軸受を監視対象にすることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
参考例の第3例
参考例の第3例について、図12を参照して説明する。
参考例では、車輪支持用のハブユニット軸受を対象軸受2dとしている。対象軸受2dは、使用状態で回転しない外輪5bと、使用状態で車輪及びディスク、ドラムなどの制動用回転体とともに回転する、内輪に相当するハブ25と、複列に配置された転動体7b、7cと、1対の保持器8c、8dと、1対の密封部材26a、26bとを備えている。
なお、対象軸受2dに関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図12の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図12の右側である。また、軸方向、径方向、及び、周方向とは、特に断らない限り、ハブ25の各方向を言う。
外輪5bは、S53Cなどの中炭素鋼製で、略円筒形状を有している。外輪5bの外周面の軸方向中間部には、懸架装置のナックルに結合される静止フランジ27を有している。外輪5bの内周面には、複列の外輪軌道10c、10dを有している。外輪5bは、軸方向中間部で複列の外輪軌道10c、10dの間部分に、外輪5bを直径方向に貫通したセンサ取付孔28を有している。センサ取付孔28は、外輪5bを懸架装置に固定した状態で、たとえば外輪5bのうちで鉛直方向上側に位置する部分に形成されている。
ハブ25は、外輪5bの内径側に外輪5bと同軸に配置されており、S53Cなどの中炭素鋼製のハブ輪29と、SUJ2などの高炭素クロム鋼製の内輪素子30とを組み合わせて構成されている。ハブ25の外周面には、複列の外輪軌道10c、10dと対向する部分に、複列の内輪軌道11c、11dが設けられている。
ハブ輪29は、内輪素子30を外嵌保持する軸部材であり、外周面の軸方向外側部に、径方向外側に向けて延びた回転フランジ31を有している。回転フランジ31には、スタッドなどの固定部材32を利用して、車輪を構成するホイール及び制動用回転体が固定される。本参考例の対象軸受2dは、従動輪用であるため、ハブ輪29は中実状に構成されている。ただし、駆動輪用のハブユニット軸受に適用することも可能である。駆動輪用のハブユニット軸受に適用する場合には、ハブ輪として、駆動軸部材を構成するスプライン軸をスプライン係合させるためのスプライン孔を、径方向中心部に有するものを使用することができる。
保持器8cにより転動自在に保持された転動体7bは、軸方向外側列の外輪軌道10cと内輪軌道11cとの間に配置されており、保持器8dにより転動自在に保持された転動体7cは、軸方向内側列の外輪軌道10dと内輪軌道11dとの間に配置されている。また、外輪5bの内周面とハブ25の外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体7bが設置された環状の空間13bには、図示しないグリースを封入している。そして、空間13bに封入したグリースが外部に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が空間13bに侵入することを防止するために、空間13bの軸方向外側開口を密封部材26aにより塞ぎ、かつ、空間13bの軸方向内側開口を密封部材26bにより塞いでいる。なお、密封部材26a、26bは、シールリング単体、又は、シールリングとスリンガとを組み合わせてなる組み合わせシールリングである。
参考例では、渦電流センサ3を、その検出部をハブ輪29の外周面に対向させるようにして、センサ取付孔28に径方向外方から挿入している。また、このように渦電流センサ3を外輪5bに取り付けた状態で、センサコイルから発生する高周波磁界内に、ハブ輪29及びいずれか一方の列の転動体7b(又は7c)が含まれるようにしている。また、本参考例では、監視装置4(図1参照)を、車体に搭載されたエンジンコントロールユニット(ECU)内に組み込むことができる。
参考例の場合にも、内輪に相当するハブ25を回転させるとともに転動体7b、7cを公転させながら、渦電流センサ3のセンサコイルから高周波磁界を発生させる。これにより、ハブ輪29及び転動体7b(又は7c)のそれぞれの表面に、電磁誘導による渦電流を発生させる。そして、センサコイルの周囲の磁界を変化させて、センサコイルのインピーダンスを変化させる。これにより、ハブ輪29の回転速度に応じた周期で変化する信号と、いずれか一方の列の転動体7b(又は7c)の公転速度に相関のある周期で変化する信号とが合成された出力信号を得る。
以上のような本参考例では、車輪支持用のハブユニット軸受を監視対象とすることができる。このような本参考例では、対象軸受2dに損傷の前兆が発生したことを、運転席の周囲に配置した警告灯を点灯させるなどして、運転者などに知らせることもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
上述した実施の形態の各例及び参考例の各例の構造及び方法は、矛盾が生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。
本発明の転がり軸受の状態監視方法は、対象軸受として、単列の転がり軸受に限らず、複列の転がり軸受を対象にすることができる。また、内輪回転型の転がり軸受に限らず、外輪回転側の転がり軸受を対象にすることができる。この場合には、回転輪である外輪の回転速度と、転動体の公転速度を測定する。また、ラジアル軸受に限らず、スラスト軸受を対象にすることもできる。また、転がり軸受の内部に充填する潤滑剤としては、グリースに限らず、潤滑油(オイル)を使用することもできる。
1 転がり軸受の疲労診断システム
2、2a、2b、2c、2d 対象軸受
3 渦電流センサ
4 監視装置
5、5a、5b 外輪
6、6a 内輪
7、7a、7b、7c 転動体
8、8a、8b、8c、8d 保持器
9 シールリング
10、10a、10b、10c、10d 外輪軌道
11、11a、11b、11c、11d 内輪軌道
12 ポケット
13、13a、13b 空間
14 芯金
15 シール材
16 接続ケーブル
17 入力部
18 記憶部
19 周波数解析部
20 比算出部
21 判定部
22 出力部
23 磁石
24 油穴
25 ハブ
26a、26b 密封部材
27 静止フランジ
28 センサ取付孔
29 ハブ輪
30 内輪素子
31 回転フランジ
32 固定部材

Claims (3)

  1. 回転輪と静止輪との間に複数個の転動体を配置してなる転がり軸受の状態を監視するための転がり軸受の状態監視方法であって、
    前記回転輪を回転させるとともに前記転動体を公転させながら、前記回転輪の回転速度である第1の速度を測定するとともに、前記転動体の公転速度である第2の速度を測定する、測定工程と、
    前記第1の速度と前記第2の速度との比と、所定の閾値とを比較することにより、前記転がり軸受の状態を判定する、判定工程と、を備え、
    前記測定工程は、検出工程と、周波数解析工程と、比算出工程とからなり、
    前記検出工程では、前記転動体に対し、前記転がり軸受の外部から前記転がり軸受の軸方向に検出部を対向させた1つの渦電流センサを用いて、前記回転輪と前記転動体とに対して電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、磁界の変化を検出し、前記回転輪の回転速度に応じた周期で変化する長周期の信号と前記転動体の公転速度に相関のある周期で変化する短周期の信号とが合成された前記渦電流センサの出力信号を取得し、
    前記周波数解析工程では、前記渦電流センサの前記出力信号をFFT解析することにより、前記第1の速度に相当する前記回転輪の回転周波数を求めるとともに、前記第2の速度に相当する前記転動体の公転周波数を求め、
    前記比算出工程では、前記第1の速度に相当する前記回転輪の回転周波数と、前記第2の速度に相当する前記転動体の公転周波数との比を算出する、
    転がり軸受の状態監視方法。
  2. 前記回転輪は、円周方向の一部が予め磁化されたものであるか、又は、円周方向の一部に磁石が取り付けられている、請求項1に記載した転がり軸受の状態監視方法。
  3. 回転輪と静止輪との間に複数個の転動体を配置してなる転がり軸受の状態を監視するための転がり軸受の状態監視システムであって、
    前記転動体に対し、前記転がり軸受の外部から前記転がり軸受の軸方向に検出部を対向させて、前記回転輪と前記転動体とに対して電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、磁界の変化を検出し、前記回転輪の回転速度に応じた周期で変化する長周期の信号と前記転動体の公転速度に相関のある周期で変化する短周期の信号とが合成された出力信号を得る、1つの渦電流センサと、
    前記渦電流センサの前記出力信号をFFT解析する、周波数解析部と、
    前記周波数解析部でそれぞれ解析された、前記回転輪の回転周波数と前記転動体の公転周波数との比を算出する、比算出部と、
    前記比算出部で算出された前記比と所定の閾値とを比較することで、前記転がり軸受の状態を判定する、判定部と、
    を備える転がり軸受の状態監視システム。
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