JP7384765B2 - 鉄道車両用のパンタグラフ - Google Patents

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本発明は、鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、この台枠に設けた主軸に揺動自在に連結される下枠とこの下枠に揺動自在に連結されて集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、枠組を上方の伸び側に付勢する主ばねと、を備える鉄道車両用のパンタグラフに関する。
この種の鉄道車両用のパンタグラフでは、枠組の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性を得るために、主ばねにカム部材を取り付け、その一端が主ばねに連結された索条をカム部材の周面に沿わせてこの索条の他端をカム部材の所定箇所に連結し、主ばねの付勢力によりカム部材を介して主軸に回転モーメントを作用させている。カム部材は、通常、主軸に固定配置される(例えば、特許文献1参照)。
ここで、枠組の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性を得るため必要な主軸回りの回転モーメントは、集電舟の重量によって変化する。このため、例えば、集電舟のすり板の材質変更のように重量変化を伴うパンタグラフの仕様変更により必要な回転モーメントが変化すると、カム部材を介した主ばねの付勢力で得られる実モーメント特性との乖離が大きくなる場合がある。このような場合、上記従来例の如く、カム部材が主軸に固定配置されていると、もはや実モーメント特性を補正できないため、枠組の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性を得ようとすると、結局、カム部材の交換でしか対処できないという問題がある。
特開平10-285704号公報
本発明は、以上の点に鑑み、カム部材を交換することなく、枠組の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性が得られるようにした鉄道車両用のパンタグラフを提供することをその目的とするものである。
上記課題を解決するために、鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、この台枠に設けた主軸に揺動自在に連結される下枠とこの下枠に揺動自在に連結されて集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、枠組を上方の伸び側に付勢する主ばねと、を備える本発明の鉄道車両用のパンタグラフは、主軸にカム部材が取り付けられ、一端が主ばねに連結された索条をカム部材の周面に沿わせて、この索条の他端をカム部材の所定箇所に連結し、主ばねの付勢力によりカム部材を介して主軸に回転モーメントが作用するようにし、カム部材が主軸に外挿され、カム部材の軸方向前後への移動と、主ばねの付勢力による回転方向へのカム部材の主軸に対する相対回転とを規制する規制手段を更に備え、規制手段に、主軸回りのカム部材の取付角度を調整する角度調整部が設けられることを特徴とする。
本発明においては、前記規制手段が、カム部材を軸方向両側から挟み込む一対の押え板を備え、前記角度調整部が、両押え板の間に設けられる雌ねじ部材に螺合すると共に、前記回転方向と逆方向からその先端がカム部材に当接する雄ねじ部材を有し、雄ねじ部材の回転に伴って進退する雄ねじ部材先端のカム部材への当接位置を変えて前記取付角度が調整される構成を採用することができる。
以上によれば、角度調整部の操作(雄ねじ部材の進退)により主軸に対するカム部材の取付角度を変えると、その周面形状に応じて、主軸の回転角度に対する主軸の回転中心から周面(即ち、索条の連結箇所)までの距離が変化して実モーメント特性が変化する(つまり、カム部材の有効範囲を主軸回りに変化させることができる)。このため、例えば、重量変化を伴うパンタグラフの仕様変更があったとしても、カム部材の取付角度の調整により実モーメント特性を必要な回転モーメントに略一致させる補正が可能になり、その結果、カム部材を変更することなく、枠組の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性が得られる。
本発明の実施形態の鉄道車両用のパンタグラフの正面図。 カム部材及び規制手段を説明する分解斜視図。 (a)及び(b)は、カム部材の取付角度の変化を説明する図。 本発明の効果を確認する実験結果のグラフ。
以下、図面を参照して、鉄道車両の屋根上に搭載されて架線から電力を集電する本発明の鉄道車両用のパンタグラフをシングルアーム式のものを例にその実施形態を説明する。以下において、上、下、左、右や時計回り、反時計回りといった方向を示す用語は、鉄道車両の屋根上へのパンタグラフの搭載姿勢で示す図1を基準とする。
図1を参照して、PGは、本実施形態のパンタグラフである。パンタグラフPGは、図外の鉄道車両の屋根上に碍子を介して配置される台枠1を備える。台枠1上に図示省略のブラケットが設けられ、ブラケットに車幅方向にのびるように主軸2が軸支されている。主軸2には下枠31が揺動自在に連結され、下枠31の上端にはヒンジ32を介して上枠33が揺動自在に連結され、これら下枠31と上枠33とで枠組3が構成される。そして、上枠33により集電舟4が支持されている。上枠33の下端と台枠1との間には釣合ロッド34が連結されている。また、台枠1上には、枠組3を折畳姿勢に保つ鉤部材51を有するロック機構5が設けられている。なお、枠組3、集電舟4やロック機構5としては、公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
台枠1上には、枠組3を上方の伸び側に付勢する主ばね6が設けられている。主軸2にはまた、カム部材7が取り付けられ、一端が主ばね6に連結された索条61をカム部材7の周面7aに沿わせて、索条61の他端をカム部材7の所定箇所に連結し、主ばね6の付勢力(圧縮力)によりカム部材7を介して主軸2に時計回りの回転モーメントが作用するようにしている。そして、常時(即ち、ロック機構5の鉤部材51の集電舟4の天井管41への係合が解除されているとき)は、主軸2が時計回りに回転されることで、枠組3が上昇し、図外の架線に集電舟4が摺接する展開姿勢となる(図1参照)。なお、特に図示して説明しないが、台枠1上には、エアシリンダ等の駆動手段が設けられ、主軸2に、主ばね6の圧縮力に抗して反時計回りの回転力を付与することで、展開姿勢にある枠組3が下降されて、集電舟4が図外の架線から離隔し、天井管41に鉤部材51が係合した折畳姿勢に保持できる。
ここで、索条61が沿うカム部材7の周面7aは、枠組3の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性が得られるように適宜形成されているが、枠組3の折畳姿勢から展開姿勢(最高作用高さ)まで一定の力で集電舟4を押し上げるために必要な主軸2の回転モーメントは、集電舟4の重量によって変化する。このため、例えば、集電舟4のすり板(図示せず)の材質変更のように重量変化を伴うパンタグラフPGの仕様変更により必要な回転モーメントが変化すると、カム部材7を介した主ばね6の付勢力で得られる実モーメント特性との乖離が大きくなる場合があるので、実モーメント特性を補正できるように構成しておく必要がある。本実施形態では、カム部材7を主軸2に外挿し、カム部材7の軸方向前後への移動と、主ばね6の付勢力による回転方向へのカム部材7の主軸2に対する相対回転とを規制する規制手段8を設けると共に、規制手段8に、主軸2回りのカム部材7の取付角度を調整する角度調整部81を設けることとした。
図2~図4も参照して、カム部材7は、主軸2に外挿される筒状のブラケット71と、ブラケット71に固定される、索条61が沿う周面7aを構成するカム本体72とで構成される。カム本体72は、主軸2の回転中心から周面7a、即ち、索条61の連結箇所までの距離が連続的に変化する形状であり、カム部材7の主軸2に対する取付角度(言い換えると、主軸2の回転角度に対する主軸2の回転中心から周面7a、即ち、索条61の連結箇所までの距離)に応じて実モーメント特性を変化させることができるようにしている。一方、規制手段8は、カム部材7を軸方向両側から挟み込む一対の押え板82a,82bを備え、一方の押え板82aが主軸2に固定配置されている。リテーナとしての他方の押え板82bには、一方の押え板82bに向けて突出させた2個のスペーサ82c,82dが設けられている。そして、主軸2にカム部材7を外挿して一方の押え板82aに当接させた後、他方の押え板82bをそのスペーサ82c,82d側から主軸2に挿入し、スペーサ82c,82dに形成した軸方向孔82eにボルト83を挿通し、他方の押え板82bから突出するボルト83の先端部にナット84を締結することで、カム部材7の軸方向前後への移動が規制される。
また、一方のスペーサ82cは、上下方向にのびる雌ねじ孔(図示せず)が設けられた雌ねじ部材で構成され、雌ねじ孔には、雄ねじ部材としてのボルト81が螺合し、ボルト81の先端が回転方向と逆方向からカム本体72の所定位置に当接するようになっている。そして、ボルト81の回転に伴って進退するボルト81先端のカム本体72への当接位置を変えると、主軸2の回転中心を中心としてカム本体72が回転し、上記取付角度を調整することができる(図3(a)及び図3(b)参照)。本実施形態では、ボルト81が角度調整部を構成する。
以上の実施形態によれば、角度調整部としてのボルト81を進退させると、主軸2に対するカム部材7(カム本体72)の主軸2に対する取付角度が変わる。これにより、主軸2の回転角度に対する主軸2の回転中心から周面7a(即ち、索条61の連結箇所)までの距離が変化して実モーメント特性が変化する。その結果、例えば、重量変化を伴うパンタグラフPGの仕様変更があったとしても、カム部材7の取付角度の調整により実モーメント特性を必要な回転モーメントに略一致させる補正が可能になり、その結果、カム部材7を変更することなく、枠組3の伸び量に依らない一定の押上力の水平特性が得られる。
以上の効果を確認するため、図1に示すパンタグラフPGを用い、次の実験を行った。即ち、カム部材7を時計回り、及び、反時計回りに所定の回転角だけ夫々回転させて、折畳姿勢から展開姿勢に枠組3を上昇させたときの各作用高さ位置での押上力特性を測定し、調整前、即ち、基準取付角度でカム部材7を主軸2に取り付けたときの押上力特性と比較し、その結果を図4に示す。なお、図4中は、-△-線は、基準取付角度の場合における押上力特性であり、-□-線は、基準取付角度から時計回りに所定の角度だけ回転させたときの押上力特性、-〇-線は、基準取付角度から反時計回りに所定の角度だけ回転させたときの押上力特性である。これによれば、カム部材7の取付角度の変更に伴い、押上力特性も変化することが確認できる。これから、仕様変更やパンタグラフ製作上のばらつき等により枠組3の昇降範囲における高さの低い範囲と高い範囲とで高低差が出るような押上力特性となったような場合でも、枠組3の昇降範囲において押上力の既定値に対する偏差が小さくなる調整が可能になることが判る。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。上記実施形態では、シングルアーム式のパンタグラフPGを例に説明したが、これに限定されるものではなく、所謂菱形や下枠交差形のものにも本発明を適用することができる。また、角度調整部としてボルト81を利用したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、カム部材7の時計方向への回転を規制しつつ、その取付角度を調整できるものであればその形態は問わない。
PG…パンタグラフ、1…台枠、2…主軸、3…枠組、31…下枠、33…上枠、4…集電舟、6…主ばね、61…索条、7…カム部材、8…規制手段、81…ボルト(角度調整部、雄ねじ部材)、82a,82b…押え板、82c,82d…スペーサ(雌ねじ部材)。

Claims (2)

  1. 鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、この台枠に設けた主軸に揺動自在に連結される下枠とこの下枠に揺動自在に連結されて集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、枠組を上方の伸び側に付勢する主ばねと、を備える鉄道車両用のパンタグラフであって、
    主軸にカム部材が取り付けられ、一端が主ばねに連結された索条をカム部材の周面に沿わせて、この索条の他端をカム部材の所定箇所に連結し、主ばねの付勢力によりカム部材を介して主軸に回転モーメントが作用するようにしたものにおいて、
    カム部材が主軸に外挿され、
    カム部材の軸方向前後への移動と、主ばねの付勢力による回転方向へのカム部材の主軸に対する相対回転とを規制する規制手段を更に備え、規制手段に、主軸回りのカム部材の取付角度を調整する角度調整部が設けられることを特徴とする鉄道車両用のパンタグラフ。
  2. 前記規制手段が、カム部材を軸方向両側から挟み込む一対の押え板を備え、
    前記角度調整部が、両押え板の間に設けられる雌ねじ部材に螺合すると共に、前記回転方向と逆方向からその先端がカム部材に当接する雄ねじ部材を有し、雄ねじ部材の回転に伴って進退する雄ねじ部材先端のカム部材への当接位置を変えて前記取付角度が調整されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用のパンタグラフ。

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