JP7384757B2 - 多孔質セラミック発熱体 - Google Patents

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抵抗体パターンと前記抵抗体パターンと重なる一対の電極パターンとを多孔質セラミック基板の一方の面上に固着した多孔質セラミック発熱体に関し、特に、多孔質セラミック基板に浸入した霧化液体の霧化のための使用に際して、多孔質セラミック基板の蒸発効率および耐久性能を向上させる技術に関する。
セラミック発熱体は、センサ、調湿のための霧化器、物質合成のための加熱装置など、様々な用途に用いられている。たとえば、特許文献1では、絶縁性セラミック基板内部に抵抗発熱体およびリード線を埋設したセラミックヒータにおいて、抵抗発熱体およびリード線の材料、および膜厚を適正化することで耐久性能を向上させることが提案されている。しかしながら、緻密なセラミック基板を用いたヒータでは、霧化液体を蒸発させることを目的とする場合において、霧化液体の連続供給が難しく、良好な蒸発効率が得られなかった。
特開2000-340349号公報 特許第5685152号公報
これに対して、良好な蒸発効率を得るために、基板若しくは発熱体として多孔体を用い、毛細管現象により霧化液体を加熱部へ直接的且つ連続的に供給し、多孔体に浸入させた霧化液体を素早く蒸発させるようにしたものが提案されている。たとえば、特許文献2に記載された多孔質発熱体がそれである。この多孔質発熱体によれば、多孔体自体が発熱する電気抵抗発熱体であって、アルミニウムを主原料とした多孔体から構成されているので、良好な機械的強度と通電発熱性とが備えられている。
しかしながら、上記多孔質発熱体によれば、多孔体自体が導電物質でなければならず、特に、液体を蒸発させる目的で使用する場合において、用途に応じて液体に対する耐化学性と機械的強度との両立を図ることが難しいという問題があった。
また、セラミックスなどの絶縁性多孔体の一面上に発熱体を形成することも考えられるが、この場合には、多孔体に複数種類のセラミックス材料を使用することができて基板の材料選択性は高くなるが、多孔質体の凹凸表面に形成した電気抵抗発熱体は厚みが均一でなく局所的に異なるため、耐熱衝撃性が低く、基板と電気抵抗発熱体との接着強度も低いという問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、液体を蒸発させる目的に使用するに際して、高い蒸発効率および耐久性能が得られる多孔質セラミック発熱体を提供することにある。
本発明者等は、以上の事情を背景として、液体の霧化用途の多孔質セラミック発熱体について種々検討を重ねた結果、多孔質セラミック基板の一面に、抵抗体パターンおよびその抵抗体パターンに重なる一対の電極パターンを、前記多孔質セラミック基板の一方の面のうちの少なくとも前記抵抗体パターンを含む一部の領域に形成されたガラス層を介して固着すると、基板選択性が広く、電気抵抗発熱体の耐熱衝撃性および接着強度が得られ、蒸発効率および耐久性能が得られる多孔質セラミック発熱体が得られるという事実を見いだした。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)抵抗体パターンと前記抵抗体パターンに重なる一対の電極パターンとが多孔質セラミック基板の一方の面上に固着され、前記一対の電極パターン間に電流が供給されることにより前記抵抗体パターンが発熱する多孔質セラミック発熱体であって、(b)前記多孔質セラミック基板の気孔率屈曲度係数比は21以上であり、(c)前記多孔質セラミック基板の一方の面のうち、少なくとも前記抵抗体パターンを含む一部の面にガラス層が固着されて、前記抵抗体パターンは前記ガラス層の上に固着され、(d)前記多孔質セラミック基板内に浸入した霧化液体を前記抵抗体パターンの加熱により前記多孔質セラミック基板の一方の面のうちの前記ガラス層に覆われていない面から霧化させることにある。
第1発明によれば、前記多孔質セラミック基板の気孔率屈曲度係数比は21以上であり、前記多孔質セラミック基板の一方の面に、その一方の面のうちの少なくとも前記抵抗体パターンを含む一部の領域に形成されたガラス層を介して、抵抗体パターンが固着されるので、電気抵抗発熱体の耐熱衝撃性および接着強度が得られ、高い耐久性能が得られる。また、多孔質セラミック基板に浸入した霧化液体が抵抗体パターンによる加熱によって霧化されるので高い蒸発効率が得られる。
ここで、好適には、前記多孔質セラミック基板の気孔率屈曲度係数比は、26以上である。これにより、多孔質セラミック発熱体において、気孔率が高く且つ屈曲の小さい気孔が備えられているので、高い霧化性能が得られる。気孔率屈曲度係数比は、26を下まわると、気孔率が低すぎるか或いは気孔の屈曲が多くて、霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、霧化性能が十分に得られ難くなる。
また、好適には、前記多孔質セラミック基板は、40~71容積%の平均気孔率を有する。これにより、多孔質セラミック基板に霧化液体の浸入が容易となるので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。気孔率が71容積%を超えると、ガラス層、抵抗体パターン、或いは電極パターンの剥離により多孔質セラミック発熱体の耐久性が十分に得られ難くなる。気孔率が40容積%を下まわると、霧化性能が十分に得られ難くなる。
また、好適には、前記多孔質セラミック基板の気孔の屈曲度係数は、2.0以下である。これにより、多孔質セラミック発熱体において屈曲の小さい気孔が備えられているので、高い霧化性能が得られる。屈曲度係数が2.0を超えると、霧化液体の浸入抵抗が増加して霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、霧化性能が十分に得られ難くなる。
前記多孔質セラミック基板は、0.15~72μmの平均細孔径を有する。これにより、毛管作用によって多孔質セラミック基板に霧化液体の浸入が容易となるので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。平均細孔径が0.15nmを下まわると、霧化液体の浸入抵抗が増加して霧化液体の浸入が不十分となり、平均細孔径が72μmを超えると、毛細管現象による毛管力が低下して霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、霧化性能が十分に得られ難くなる。
また、好適には、前記ガラス層は、3~90μmの厚みを有するものである。ガラス層の厚みが3μmを下まわると、抵抗体パターンの抵抗値がばらついて製造歩留りが低下し、90μmを超えると、抵抗体パターンから多孔質セラミック基板への熱伝導が低下して、霧化性能が十分に得られ難くなる。
また、好適には、前記ガラス層は、前記多孔質セラミック基板の一方の面上に固着された厚膜ガラスペーストの焼結体から構成され、前記抵抗体パターンは、前記ガラス層の上に固着された、厚膜抵抗体ペーストの焼結体から構成され、前記電極パターンは、前記ガラス層の上に固着された、厚膜導電ペーストの焼結体から構成される。これにより、前記多孔質セラミック基板の一方の面上に、ガラス層、およびそのガラス層の上の抵抗体パターンおよび電極パターンが厚膜により形成されているので、耐熱衝撃性および接着強度が得られるとともに、耐久性が得られる。
また、好適には、前記多孔質セラミック基板は、アルミナ、ジルコニア、ムライト、シリカ、チタニア、窒化珪素、炭化珪素、炭素のいずれかを主成分とするものであり、前記抵抗体パターンは、銀、パラジウム、酸化ルテニウムのうちのいずれかの金属粉とガラスとを含む厚膜焼結体であり、前記電極パターンは、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、白金、金のうちのいずれかの金属粉末とガラスとを含む厚膜焼結体であり、前記ガラス層は、Ba、B、Znのいずれかを含む厚膜焼結体である。このように、前記多孔質セラミック基板の一方の面上に、ガラス層、およびそのガラス層の上の抵抗体パターンおよび電極パターンが厚膜焼結体により形成されているので、耐熱衝撃性および接着強度が得られるとともに、耐久性が得られる。
また、好適には、前記多孔質セラミック基板の一方の面は、長手形状の面であり、前記一対の電極パターンは、前記長手形状の面の両端部に配置され、前記抵抗体パターンは、一対のU字状部の一端が相互に連結され且つ他端が前記一対の電極パターンのそれぞれに接続されている。このように、抵抗体パターンが一対のU字状部の一端が相互に連結され且つ他端から円弧状に延長された先端が前記一対の電極パターンのそれぞれに接続されている形状であることから、局所的に熱が集中せず、抵抗体パターンの全体が均一に発熱するので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。
本発明の一実施例である、多孔質セラミック発熱体の平面図である。 図1の多孔質セラミック発熱体の製造工程の要部を説明する工程図である。 気孔率、平均細孔径、ガラス層の厚み、抵抗体パターンの面積、抵抗体パターンの厚み、抵抗体パターンの抵抗値、電極パターンの面積のいずれか1つを変化させた試験品について、本発明者等が行なった霧化実験に用いた試験品の内容と実験結果とを示す図表である。 ガラス層の幅と抵抗体パターンに対する幅とを一致させた試験品について、本発明者等が行なった霧化実験に用いた試験品の内容と実験結果とを示す図表である。 図4に記載のデータから導き出された、気孔率と霧化量との関係を示すグラフである。 図4に記載のデータから導き出された、屈曲度係数と霧化量との関係を示すグラフである。 図4に記載のデータから導き出された、気孔率屈曲度係数比と霧化量との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例が適用された多孔質セラミック発熱体10を示す平面図である。多孔質セラミック発熱体10は、たとえば長辺が6.0mm、短辺が3.0mm、厚みが3.0mmの直方体状に形成された多孔質セラミック基板12と、その多孔質セラミック基板12の一方の面(上面)であって加熱面として機能する発熱面12aに焼結により固着されたガラス層16と、ガラス層16の上に焼結によりそれぞれ固着された抵抗体パターン18および電極パターン20とを備えている。上記多孔質セラミック基板12の発熱面12aは、長方形状であって、多孔質セラミック発熱体10に毛細管現象により浸入した所定の液体の蒸発面として機能する。
多孔質セラミック基板12は、アルミナ、ジルコニア、ムライト、シリカ、チタニア、窒化珪素、炭化珪素、炭素のいずれかを主成分とし、たとえば直径0.15~500μm、好適には1.5~72μmの平均細孔径を有する連通気孔を有する多孔質無機焼結体であって、たとえば21以上、好適には26以上の気孔率屈曲度係数比(気孔率/屈曲度係数)と、たとえば30~90容積%、好適には40~71容積%の平均気孔率とを有している。
ガラス層16は、Ba、B、Zn、Siを含むガラスたとえば硼珪酸ガラスからなり、多孔質セラミック基板12の焼成温度よりも低く、且つ抵抗体パターン18および電極パターン20の焼成温度以上の軟化点を有する。ガラス層16は、多孔質セラミック基板12の発熱面12aに、たとえば100μm以下、好適には3.0~90μm程度の厚みで焼結により固着された緻密なガラス膜である。ガラス層16は、後述の抵抗体パターン18および電極パターン20と同じパターンまたはそれよりもやや大きいパターンで形成されていて、抵抗体パターン18および電極パターン20と略同じ面積である。
抵抗体パターン18は、たとえば銀、パラジウム、酸化ルテニウム等の金属粉が後述の厚膜焼成温度以下の融点を有する厚膜ガラスによって結合されることで、8~21μmの厚みと、1~3Ω、好適には1.1~2.7Ω程度の値を有する発熱体であって、多孔質セラミック基板12の発熱面12aにおいて、ガラス層16の上にS字状パターンで焼結により固着された厚膜抵抗体である。抵抗体パターン18は、一対のU字状部の一端が相互に連結されてS字状を成している。抵抗体パターン18は、多孔質セラミック基板12の発熱面12aにおいて、発熱面12a全体に対して5~30%、好適には13~21%の大きさとなるように形成されている。
一対の電極パターン20は、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、白金、金等の金属粉が後述の厚膜焼成温度以下の融点を有する厚膜ガラスによって結合されることで導体と同等の導電性を有し、多孔質セラミック基板12の発熱面12aの両端部において、ガラス層16の上に矩形で焼結により固着された厚膜導電体である。一対の電極パターン20は、前記一対のU字状部の他端から電極パターン20側へ円弧状に延長された先端が重ねられることで、抵抗体パターン18に接続されている。一対の電極パターン20は、多孔質セラミック基板12の発熱面12aにおいて、発熱面12a全体に対して5~20%の大きさとなるように形成されている。
図2は、多孔質セラミック発熱体10の製造工程を示している。図2において、混練工程P1では、多孔質セラミック基板12の材料、たとえばアルミナ粉末、無機バインダ、造泡剤、有機バインダ、水、ワックス等が、たとえば30~90%のうちの所定の気孔率となるように所定の調合割合で調合され且つ混合された後、混練機を用いて混練され、粘土状の胚土とされる。上記造泡剤は、たとえば樹脂ビーズである。次に、押し出し成形工程P2では、真空押出成形機を用いて上記胚土が4mm程度の所定厚みの板状のグリーンシートに成形される。また、このグリーンシートには、直線状の刃が押しつけられることで、分割用の溝が形成される。
次いで、押し出し成形工程P2で得られた上記グリーンシートは、乾燥工程P3において乾燥された後、焼成工程P4において、たとえば1300℃から1500℃の焼成温度で焼成される。これにより、胚土中の造泡剤、有機バインダ、水、ワックス等が消失すると同時に、アルミナ粒子が無機バインダにより結合されることで、複数個の多孔質セラミック基板12が連結されたセラミック板が得られる。
次に、ガラスペースト印刷・焼成工程P5では、たとえば硼珪酸ガラス粉末、樹脂バインダ、有機溶剤等を含む厚膜ガラスペーストが、図1に示されるガラス層16のパターンで、焼成工程P4で得られた前記セラミック板上の複数箇所にスクリーン印刷された後、前記セラミック板の焼成温度よりも低い温度たとえば800℃~1000℃で焼成される。これにより、厚膜ガラスペースト中の樹脂バインダ、有機溶剤等が消失すると同時に硼珪酸ガラスが溶融し、ガラス層16が前記セラミック板上に焼結により固着される。
続く電極ペースト印刷・焼成工程P6では、たとえば銀(Ag)粉末、僅かな硼珪酸ガラス、樹脂バインダ、有機溶剤等を含む厚膜電極ペーストが、図1に示される電極パターン20のパターンで、焼成工程P4で得られた前記セラミック板上の複数箇所のガラス層16上にそれぞれスクリーン印刷された後、ガラス層16の焼成温度と同じかそれよりも低い焼成温度たとえば700℃~900℃の厚膜焼成温度で焼成される。これにより、電極ペーストすなわち導体ペースト中の樹脂バインダ、有機溶剤等が消失すると同時に硼珪酸ガラスが溶融し、銀粉末が溶融した硼珪酸ガラスにより結合されることで、電極パターン20が前記セラミック板上のガラス層16の上に焼結により固着される。
続いて、抵抗ペースト印刷・焼成工程P7では、たとえば銀-パラジウム(Ag-Pd)粉末、硼珪酸ガラス、樹脂バインダ、有機溶剤等を含み、たとえば100~200mΩ/□のシート抵抗を有する厚膜抵抗体ペーストが、図1に示される抵抗体パターン18のパターンで、焼成工程P4で得られた前記セラミック板上の複数箇所のガラス層16および電極パターン20上にそれぞれスクリーン印刷された後、ガラス層16の焼成温度よりも低い焼成温度たとえば700℃~900℃の厚膜焼成温度で焼成される。これにより、厚膜抵抗体ペースト中の樹脂バインダ、有機溶剤等が消失すると同時に硼珪酸ガラスが溶融し、銀-パラジウム粉末が溶融した硼珪酸ガラスにより結合されることで、抵抗体パターン18が前記セラミック板上のガラス層16および電極パターン20の上に焼結により固着される。なお、この抵抗体パターン18は、電極パターン20と同時焼成により形成されてもよい。
そして、分割工程P8では、ガラス層16、抵抗体パターン18および電極パターン20が複数箇所に固着された前記セラミック板が、前記分割用の溝に沿って破断されることで、複数個の多孔質セラミック発熱体10が得られる。
以下に、本発明者等が図2に示す工程と同様の工程で作製した試験試料である比較例品1、2、9、および実施例品1から9の内容と、それらについての実験結果とを、図3、図4、および図5を用いて説明する。
(比較例品1)
気孔率が0容積%であるアルミナ緻密体から成る導電性を有しないアルミナ基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様に形成し、図3に示すように1種類の比較例品1を用意した。
(比較例品2a、2b)
3.3μmの平均細孔径と65容積%の気孔率とを有した、導電性を有する多孔質セラミック基板、および、導電性を有しない多孔質セラミック基板の2種類の基板上に、ガラス層を用いないで、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面12aに対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様に形成し、図3に示すように2種類の比較例品2aおよび2bを用意した。
(実施例品1)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様に形成し、実施例品1を用意した。
(実施例品2a、2b、2c)
65容積%、60容積%、および、57容積%の気孔率と1.5μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない3種類の多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように3種類の実施例品2a、2b、および2cを用意した。
(実施例品3a、1、3b、3c、3d、3e)
1.5μm、3.3μm、4.2μm、5.1μm、72μmおよび、0.15μmの平均細孔径と65容積%の気孔率とを有した導電性を有しない6種類の多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層16を介して、10μmの厚みと2Ω又は1.3Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように6種類の実施例品3a、1、3b、3c、3d、3eを用意した。
(実施例品4a、1、4b、4c、4d、4e)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、22μm、20μm、19μm、17μm、90μm、および3μmの厚みを有する6種類のガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように6種類の実施例品4a、1、4b、4c、4d、および4eを用意した。
(実施例品5a、5b、5c)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、8μm、17μm、および、21μmの厚みと1.5Ωの抵抗値とを有し発熱面12aに対して15%の面積の3種類の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように3種類の実施例品5a、5b、および5cを作成した。
(実施例品6a、6b、6c)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、17μmの厚みと1.5Ω、2Ω、および、2.7Ωの抵抗値とを有する3種類の抵抗体パターンを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように3種類の実施例品6a、6b、および6cを用意した。
(実施例品7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みと抵抗体パターンの幅に対する割合が133%、167%、200%、233%、267%、300%、および100%の幅寸法を有する7種類のガラス層をそれぞれ介して、10μmの厚みと1.3Ωの抵抗値とを有する抵抗体パターンを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように7種類の実施例品7a、7b、7c、7d、7e、7f、および7gを用意した。
(実施例品8)
65容積%の気孔率と3.3μmの平均細孔径とを有した導電性を有する多孔質セラミック基板の上に、20μmの厚みを有するガラス層を介して、発熱面に対して13%の面積の電極パターンと、10μmの厚みと2Ωの抵抗値とを有し発熱面に対して15%の面積の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様にそれぞれ形成し、図3に示すように1種類の実施例品8を用意した。
(実施例品9a、9b、9c、9d、9e、および、比較例品9)
66容積%および26μm、40容積%および9.8μm、65容積%および4.0μm、66容積%および4.1μm、71容積%および13μm、38容積%および1.1μmである気孔率および平均細孔径を有し且つ導電性を有しない多孔質セラミック基板の上に、それぞれ20μmの厚みと電極パターンに対する133%の幅とを有するガラス層を介して、10μmの厚みと1.3Ω、1.1Ω、1.4Ω、1.4Ω、1.3Ω、1.4Ωの抵抗値とをそれぞれ有する6種類の抵抗体パターンとを、図1に示すものと同様に形成し、図4に示すように5種類の実施例品9a、9b、9c、9d、9e、および比較例品9を用意した。
(ガラス層の厚み測定)
レーザー顕微鏡を用いてガラス層16の幅方向の断面形状(プロファイル)を測定し、その断面形状において全幅寸法に対して中央部50%における多孔質セラミック基板12の表面との平均高低差を、ガラス層の厚みとして算出する。
(霧化特性の測定)
霧化液体:グリセリン45%、プロピレングリコール45%
蒸溜水 10%の混合液
測定方法:霧化液体を含浸させたコットンに各試験品の下面を接触させ、この状態で、一対の電極パターン間に3秒間で電圧を印加する期間と27秒の電圧印加の休止期間との1回の加熱サイクルで抵抗体パターンに21ジュールの電気エネルギを付与して発熱体の上面から霧化液体を蒸発させ、5回の加熱サイクルの霧化を行なったときのコットンの重量減少量を測定し、1加熱サイクル当たりの重量減少量、すなわち、霧化量を算出する。
(耐久性の評価方法)
上記霧化特性の測定で行なわれた加熱サイクルを100回繰り返した後に、多孔質セラミック基板上のガラス層、抵抗体パターン、電極パターンの剥離の有無を、80倍の実体顕微鏡を用いて検査し、剥離の有無を判定し、剥離の無いものは○印とし、剥離のあるものは×印として評価した。
(気孔率の測定)
セラミック基板の気孔率は、アルキメデス法により測定された。飽水重量をWaw、乾燥重量をWair、水中重量をWaqをそれぞれ測定した後、気孔率Pを表す次式(1)から、それらを代入することで、気孔率Pを算出する。
Figure 0007384757000001
(気孔の屈曲度係数の測定)
測定方法:各試験品(多孔質セラミック基板)の細孔容積V、全細孔容積VCO、細孔径r、かさ密度ρHgを、水銀ポロシメータを用いて測定し、BET比表面積Sを、吸着占有面積のわかったガス分子の吸着量に基づいて試験品の比表面積を算出するガス吸着法を用いて測定し、次式(2)にそれらに基づいて屈曲度係数τを算出する。
Figure 0007384757000002
図3および図4において、製品に求められた基準、たとえば霧化量が3mg以上であること、および、100加熱サイクルの剥離の無いことを共に満足する範囲は、多孔質セラミック基板の気孔率が40~71容積%、多孔質セラミック基板の平均細孔径が0.15~72μm、ガラス層の幅の抵抗体パターンの幅寸法に対する割合が100~300%、ガラス層の厚みが3.0~90μmであった。
また、図4に示されたデータから、図5および図6に示すように、霧化量と気孔率との関係、および霧化量と屈曲度係数との関係は、それぞれ相互に密接した相関が得られた。なお、図6によれば屈曲度係数が2.0以下である領域において、霧化量の基準2.5mgを超える3.0mg以上の高い霧化量が得られることが示された。また、霧化量と、気孔率屈曲度係数比(気孔率/屈曲度係数)との間においても、図7に示すように、相互に密接した相関が得られた。製品に求められた霧化量の基準が2.5mg以上である場合は、気孔率屈曲度係数比が19以上であれば、霧化量の基準を満足する。また、製品に求められた霧化量の基準が3mg以上である場合は、気孔率屈曲度係数比が21以上であれば、霧化量の基準を満足する。さらに、好ましくは、気孔率屈曲度係数比は26以上である。
上述のように、本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、抵抗体パターン18がガラス層16の上に固着され、ガラス層16と抵抗体パターン18に重なる一対の電極パターン20とが、多孔質セラミック基板12の発熱面12a上に固着され、一対の電極パターン20間に電流が供給されることにより抵抗体パターン18が発熱する多孔質セラミック発熱体10であって、多孔質セラミック基板12の気孔率屈曲度係数比は21以上であり、ガラス層16は、多孔質セラミック基板12の発熱面のうち、少なくとも抵抗体パターン18の下となる面に固着されており、多孔質セラミック基板12内に浸入した霧化液体を抵抗体パターン18の加熱により多孔質セラミック基板12の発熱面12aのうちのガラス層16に覆われていない面から霧化させる。このため、多孔質セラミック基板12に導電性が不要であるために材質の制限がなく、基板の材料選択性が高い。また、用途に応じた多孔質セラミック基板材料の選択により、霧化液体に対する耐化学性と機械的強度との両立を図ることができる。また、多孔質セラミック基板12の一方の面である発熱面12aに、その発熱面12aのうちの少なくとも抵抗体パターン18を含む一部の領域に形成されたガラス層16を介して、抵抗体パターン18が固着されるので、電気抵抗発熱体として機能する抵抗体パターン18の耐熱衝撃性および接着強度が得られ、高い蒸発効率および耐久性能が得られる。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12の気孔率屈曲度係数比は26以上である。これにより、多孔質セラミック基板12において、気孔率が高く且つ屈曲の小さい気孔が備えられているので、高い霧化性能が得られる。気孔率屈曲度係数比が26を下まわると、気孔率が低すぎるか或いは気孔の屈曲が多くて霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、霧化性能が十分に得られない場合がある。
また、本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12は、40容積%以上71容積%以下の平均気孔率を有する。これにより、多孔質セラミック基板12に霧化液体の浸入が容易となるので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。多孔質セラミック基板12の気孔率が70容積%を超えると、ガラス層16、抵抗体パターン18、或いは電極パターン20の剥離により多孔質セラミック発熱体10の耐久性が十分に得られない場合がある。気孔率が41.5容積%を下まわると、霧化性能が十分に得られない場合がある。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12の気孔の屈曲度係数は、2.0以下である。これにより、多孔質セラミック発熱体10において屈曲の小さい気孔が備えられているので、高い霧化性能が得られる。屈曲度係数が2.0を超えると、霧化液体の浸入抵抗が増加して霧化液体の浸入が不十分となり、霧化性能が十分に得られない場合がある。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12は、0.15以上72μm以下の平均細孔径を有する。これにより、毛管作用によって多孔質セラミック基板12に霧化液体の浸入が容易となるので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。平均細孔径が0.15μmを下まわると、霧化液体の浸入抵抗が増加して霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、平均細孔径が72μmを超えると、毛細管現象による毛管力が低下して霧化液体の浸入が不十分となる場合があり、霧化性能が十分に得られない場合がある。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、ガラス層16は、3~90μmの厚み、好適には17以上22μm以下の厚みを有するものである。ガラス層16の厚みが3μm、好適には17μmを下まわると、抵抗体パターンの抵抗値がばらついて製造歩留りが低下し、90μm、好適には22μmを超えると、抵抗体パターン18から多孔質セラミック基板12への熱伝導が低下して、霧化性能が十分に得られない場合がある。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、ガラス層16は、多孔質セラミック基板12の一方の面である発熱面12a上に固着された厚膜ガラスペーストの焼結体から成り、抵抗体パターン18は、ガラス層16の上に固着された、厚膜抵抗体ペーストの焼結体から成り、電極パターン20は、ガラス層16の上に固着された、厚膜導電ペーストの焼結体から成る。これにより、多孔質セラミック基板12の一方の面上に、ガラス層16、およびそのガラス層16の上の抵抗体パターン18および電極パターン20が厚膜により形成されているので、耐熱衝撃性および接着強度が得られるとともに、耐久性が得られる。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12は、アルミナ、ジルコニア、ムライト、シリカ、チタニア、窒化珪素、炭化珪素、炭素のいずれかを主成分とするものであり、抵抗体パターン18は、銀、パラジウム、酸化ルテニウムのうちのいずれかの金属粉とガラスとを含む厚膜焼結体であり、電極パターン20は、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、白金、金のうちのいずれかの金属粉末とガラスとを含む厚膜焼結体であり、ガラス層16は、Ba、B、Znのいずれかを含む厚膜焼結体である。このように、多孔質セラミック基板12の一方の面である発熱面12a上に、ガラス層16、およびそのガラス層16の上の抵抗体パターン18および電極パターン20が厚膜焼結体により形成されているので、耐熱衝撃性および接着強度が得られるとともに、耐久性が得られる。
本実施例の多孔質セラミック発熱体10によれば、多孔質セラミック基板12の一方の面はである発熱面12a、長手形状の面であり、一対の電極パターン20は、その長手形状の面の両端部に配置され、抵抗体パターン18は、一対のU字状部の一端が相互に連結され且つ他端から電極パターン20側へ円弧状に延長された先端が一対の電極パターン20のそれぞれに接続されている。このように、抵抗体パターン18が一対のU字状部の一端が相互に連結され且つ他端が一対の電極パターン20のそれぞれに接続されている形状であることから、局所的に熱が集中せず、抵抗体パターン18の全体が均一に発熱するので、霧化液体の蒸発効率すなわち霧化性能が高くなる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、霧化液体は、グリセリン、プロピレングリコール、蒸溜水が5:5:1の割合の混合液であったが、他の割合であってもよく、香料などの他の液体がさらに添加されたものであってもよい。
また、前述の実施例では、抵抗体パターン18は、1Ω以上3Ω以下程度の抵抗値を備えるものであったが、電源伝達などとの関係で他の抵抗値に変更されてもよい。
また、前述の実施例の抵抗体パターン18は、S字状パターンであったが、正弦波状パターン、矩形パターンなど、他の形状のパターンであってもよい。
また、前述の実施例において、ガラス層16は、抵抗体パターン18および電極パターン20と同じパターンまたはそれよりもやや大きいパターンで形成されていたが、必ずしも抵抗体パターン18および電極パターン20と同じパターンである必要はなく、霧化液体を霧化させる霧化性能を満足し、抵抗体パターン18を支持できる範囲で、抵抗体パターン18および電極パターン20よりも大きく且つ異なるパターンであってもよい。
また、一対の電極パターン20は、多孔質セラミック基板12の発熱面12aの両端部において、ガラス層16の上に形成されていたが、必ずしも両端部でなくともよい。また、電極パターン20は、必ずしもガラス層16の上に形成されていなくてもよい。
また、前述の実施例において、多孔質セラミック基板12の発熱面12aにおいて、ガラス層16、抵抗体パターン18、電極パターン20は、厚膜により構成されていたが、抵抗体パターン18および電極パターン20の少なくとも一方が、スパッタリングを用いた薄膜によって構成されてもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
10:多孔質セラミック発熱体
12:多孔質セラミック基板
12a:発熱面(多孔質セラミック基板の一方の面)
16:ガラス層
18:抵抗体パターン
20:電極パターン

Claims (9)

  1. 抵抗体パターンと前記抵抗体パターンに重なる一対の電極パターンとが多孔質セラミック基板の一方の面上に固着され、前記一対の電極パターン間に電流が供給されることにより前記抵抗体パターンが発熱する多孔質セラミック発熱体であって、
    前記多孔質セラミック基板の気孔率屈曲度係数比は21以上であり、
    前記多孔質セラミック基板の一方の面のうち、少なくとも前記抵抗体パターンを含む一部の面にガラス層が固着されて、前記抵抗体パターンは前記ガラス層の上に固着され、
    前記多孔質セラミック基板内に浸入した霧化液体を前記抵抗体パターンの加熱により前記多孔質セラミック基板の一方の面のうちの前記ガラス層に覆われていない面から霧化させる
    ことを特徴とする多孔質セラミック発熱体。
  2. 前記多孔質セラミック基板の気孔率屈曲度係数比は、26以上である
    ことを特徴とする請求項1の多孔質セラミック発熱体。
  3. 前記多孔質セラミック基板の平均気孔率は、40~71容積%である
    ことを特徴とする請求項1または2の多孔質セラミック発熱体。
  4. 前記多孔質セラミック基板の気孔の屈曲度係数は、2.0以下である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の多孔質セラミック発熱体。
  5. 前記多孔質セラミック基板は、0.15~72μmの平均細孔径を有する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1の多孔質セラミック発熱体。
  6. 前記ガラス層は、3~90μmの厚みを有する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1の多孔質セラミック発熱体。
  7. 前記ガラス層は、前記多孔質セラミック基板の一方の面上に固着された厚膜ガラスペーストの焼結体から構成され、
    前記抵抗体パターンは、前記ガラス層の上に固着された、厚膜抵抗体ペーストの焼結体から構成され、
    前記電極パターンは、前記ガラス層の上に固着された、厚膜導電ペーストの焼結体から構成される
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1の多孔質セラミック発熱体。
  8. 前記多孔質セラミック基板は、アルミナ、ジルコニア、ムライト、シリカ、チタニア、窒化珪素、炭化珪素、炭素のいずれかを主成分とし、
    前記抵抗体パターンは、銀、パラジウム、酸化ルテニウムのうちのいずれかの金属粉とガラスとを含む厚膜焼結体であり、
    前記電極パターンは、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、白金、金のうちのいずれかの金属粉末とガラスとを含む厚膜焼結体であり、
    前記ガラス層は、Ba、B、Znのいずれかを含む厚膜焼結体である
    ことを特徴とする請求項7の多孔質セラミック発熱体。
  9. 前記多孔質セラミック基板の一方の面は、長手形状の面であり、
    前記一対の電極パターンは、前記長手形状の面の両端部に配置され
    前記抵抗体パターンは、一対のU字状部の一端が相互に連結され且つ他端が前記一対の電極パターンのそれぞれ接続されている
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1の多孔質セラミック発熱体。
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