JP7381075B2 - 義歯作製用治具 - Google Patents

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Description

本発明は、義歯作製用治具に関するものである。
近年の急速な高齢化に伴い、義歯の需要が高まっている。通常、義歯は、患者の口腔形状に合わせて1つずつ手作業で細かく調整を行いながら作製される。
上述の手作業の労力を低減して義歯を作製する技術として、基準義歯を用いる技術が知られている(特許文献1~3参照)。このような技術に関し、特許文献1には、「予め調製された基準義歯床、該義歯床の口腔面との接触面に付与する重合性樹脂組成物、歯頂部(咬合面)に重合性樹脂組成物を充填すべき凹部を設けた人工歯、および該人工歯の凹部に充填する重合性樹脂組成物を組み合わせてなる義歯作製セット」が記載されている。そして、特許文献1の実施例には、「市販の人工歯の咬合面をドリルを用いて1~3mm円筒状に削除し、咬合面側に重合性レジンを継ぎ足すための凹部を有する人工歯を作製した。教育実習用無歯顎全顎模型より通法に従い蝋義歯を作製し、その粘膜に接触する部分を一層(上顎の場合口蓋床部は全部)削除し、人工歯を抜去したものを基準義歯床のオリジナル型から作製した金型を用いてメチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートの共重合樹脂(75:25)を圧縮成形することにより義歯床の歯茎部を作製し、その前歯部および上顎臼歯部には市販の人工歯を、下顎臼歯部には本発明の凹部を有する人工歯を排列し基準義歯床とした。また、口蓋部用の部品として、0.5mm厚みの上記共重合体の板を加熱軟化させた物を口蓋部の形状の金型に押し付けて形態を定めたものを用意した。」と記載されている。
また、特許文献2には、有歯顎者及び無歯顎者の口腔形状を基に定めた特定の平面形状を有する基準義歯床が開示されている。具体的には、特許文献2には、床後縁の左側翼突上顎切痕および左側臼後隆起に相当する第一基準点と右側翼突上顎切痕及び右側臼後隆起に相当する第二基準点とを結ぶ線分の長さを基準長とし、唇側床縁の正中にあたる上(下)唇小帯に相当する第三基準点と、第一基準点及び第二基準点をそれぞれ結ぶ2つの基準線分上の所定の位置に定めた複数のポイントから床縁までの長さを、夫々前記基準長に対する比が所定の範囲となるようにした形状を有する基準義歯床が開示されている。さらに、特許文献2には、上記基準義歯床に人工歯を配列して基準義歯とし、前記基準義歯床に裏装材を築盛してから個別患者の口腔内に試適し、咬合調整を行うことにより、個別患者の口腔形状に合致した義歯が得られる旨が記載されている。
さらに、特許文献3には、基準義歯の位置合わせを行う治具が開示されている。この治具は、基準義歯を患者の口腔内等の適切な位置に配置するためのものであり、基準義歯を保持する基準義歯保持部を有していて、その基準義歯保持部に基準義歯を保持した状態で、口腔内か、または上下無歯顎模型が固定された咬合器に基準義歯を誘導して、前記基準義歯の位置合わせを行うことができる。また、特許文献3には、基準義歯の内面側に裏装材を築盛し、その次に、基準義歯に築盛された裏装材に形状を印記することを特徴とする義歯作製方法についても開示されている。
特許第3449733号公報 特許第6294706号公報 国際公開第2018/207867号公報
前記したように特許文献1及び2には、総義歯タイプの既成の義歯床からなる基準義歯床の粘膜面(基底面)上に裏装材を盛り、患者口腔内粘膜に押し当て、適合化を図るというコンセプトに基づく技術が開示されている。また、特許文献2には、基準義歯(床)を用いることのメリット、具体的には、基準義歯(床)に裏装材を築盛するだけで容易に患者の口腔形状に適合させることができるので、義歯の作製時間を短縮することができる旨が記載されている。そして、特許文献2によれば、基準義歯(床)を前記した特定の平面形状とすることにより多くの患者に対する適合率を例えば90%という高い値にすることもでき、患者の口腔サイズに適合するサイズのものを選択するだけで、多くのケースにおいて上記したような基準義歯(床)を用いるメリットを得ることができるとされている。
しかしながら、以下に示すように、基準義歯床又は基準義歯を用いて個別患者にフィットした義歯を効率的に作製するための方法が確立されているとまでは言えない。すなわち、特許文献1に開示されている基準義歯床は、教育実習用無歯顎全顎模型を用いて作製したもののみであり、その具体的な形状に関する記載はない。また、特許文献1には、上記基準義歯床を用いた義歯の作製方法の詳細な手順等は示されていない。
さらに、特許文献2においては、基準義歯床又は基準義歯に裏装材を築盛する前の作製手順に関しては、単に患者の口腔サイズに適合するものを選択する旨が記載されているだけで、その詳細は不明である。基準義歯(又は基準義歯床)とは、義歯(又は義歯床)を製造するための材料部材であって、作製すべき義歯(又は義歯床)よりも、義歯床相当部が若干小さい(薄い又は面積的に狭い)所定の形状を有する既製の義歯状(義歯床状)部材を意味する。このような基準義歯(又は基準義歯床)においては、標準的な患者の口腔サイズに適用できるように、幾つかのサイズ(たとえば、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズなど)を準備することは可能であるが、そのサイズ数は然程多くはない。したがって、サイズ的には使用可能と判断される場合でも、実際に試着して適合性を確認する必要がある。
具体的には、上顎用の基準義歯(上顎用基準義歯)及び/又は下顎用の基準義歯(下顎用基準義歯)を、患者の口腔内に適切な咬合状態が保たれるように挿入して、長期間装着した場合に痛みを発生させたりするような粘膜等への不適切な当たり方(接触の仕方。以下、「不適切接触」ともいう。)をする部分の存在の有無を確認するといった簡単な事前チェックを行うことが一般的である。そして、この事前チェックの段階で、研削による調整が必要であると判明される場合があり、そのようなケースでは、ハンディ研削機等を用いた研削により、事前調整を行う必要がある。このような事前調整は、ハンディ研削機等の機器が必要になるばかりか、研削量が多い場合には、発生する粉塵対策が必要となり、更に作業者の研削技術によっては義歯作製時間の大幅な増加につながってしまうのであるが、特許文献2では、このような事前チェック及び研削による調整については特に考慮されていない。
そこで、上記事情に鑑みて本発明者らは、下記(1)~(3)項に示す新規な義歯技術を開発した(当該技術の詳細については後述する)。
(1)個別患者にフィットした義歯を効率的に製造できるとされている、基準義歯からなる材料部材を構成部材として含む義歯において、個別患者フィット性を低下させることなく、事前チェック及び研削による調整も含めたトータルな効率性をより高くして作製することができる義歯
(2)義歯の材料部材として使用できる基準義歯として、事前チェックにより研削による調整が必要とされるケースの発生割合を有意に低減することができる基準義歯
(3)上記(1)項に示す義歯を、効率的に作製することが可能な義歯の作製方法
上記新技術を用いて義歯を作製する場合、従来のオーダーメードによる義歯の作製と比べて、作業効率・品質が大幅に向上する。しかし、本発明者らが上記新技術についてさらに検討したところ、上記(3)項に示す新規な義歯の作製方法を利用して義歯を作製しようとした際に、義歯の作製を行う作業者(歯科医師、歯科技工士)が経験の浅い作業者でる場合、作業に熟達した作業者との比較で、作業効率・品質が低下し易いことがわかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、新規な義歯の作製方法により義歯を作製する際に、作業者に関係無く作業効率・品質の低下を抑制できる義歯作製用治具を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明の義歯作製用治具は、総義歯タイプの基準義歯を用いて総義歯を作製する際に用いる義歯作製用治具であって、
(a)基準義歯は、人工歯と、人工歯を固定する基準義歯床部材とを有し、
(b)総義歯は、基準義歯床部材と、硬化性義歯床用材料の硬化体とを有し、
(c)総義歯を患者の口腔内に装着した状態において、総義歯のうち唇側および頬側となる方向を「前方」とし、喉側となる方向を「後方」とし、患者口腔内の顎堤粘膜と対向する側を「粘膜側」とし、
(d)基準義歯床部材における、粘膜側の面を「粘膜面」とし、その反対側の面を「研磨面」とし、粘膜面と研磨面との境界を「床縁」とし、
(e)基準義歯床部材の表面のうち、患者口腔内における顎堤頂部領域の粘膜に対向する領域を「ベース中央領域」とし、顎堤頂部領域よりも前方の患者口腔内粘膜に対向する領域を「ベース前方領域」とし、顎堤頂部領域よりも後方の患者口腔内粘膜に対向する領域を「ベース後方領域」とし、
(f)基準義歯を、人工歯側を下向きにして咬合平面として想定される平面上に配置したときに、当該平面に対して垂直で、且つ人工歯を構成する人工犬歯の尖頭を通る、ベース前方領域の研磨面に対する法線方向に沿った面で切断した縦断面において、基準義歯床部材のベース前方領域の床縁側先端から2mm下側におけるベース前方領域の幅が0.5mm以上3mm以下であり、
(g)基準義歯を用いた総義歯の作製方法は、ベース前方領域、ベース後方領域およびベース中央領域に、未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛する工程を少なくとも含むとしたときに、
基準義歯床部材の唇側床縁近傍および頬側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な前方溝部、および、基準義歯床部材の喉側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な後方溝部、からなる群より選択される少なくともいずれか一方の溝部を有することを特徴とする。
本発明の義歯作製用治具の一実施形態は、少なくとも溝部の縁部を構成する材料のJIS K7215に準拠して測定されたショアD硬さが80以下であることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、基準義歯を保持する位置合わせ治具を固定するための固定部を有することが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h1)基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、溝部が、少なくとも前方溝部を有し、前方溝部の底面のうち、唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h1)基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、溝部が、少なくとも前方溝部を有し、上顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前方溝部内に配置した際に、前方溝部の唇側および頬側の縁部には、人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h1)基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、前方溝部の喉側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、前方溝部の溝深さが4mm以上14mm以下であり、前方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h1)基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、後方溝部の唇側および頬側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、後方溝部の溝深さが1mm以上5mm以下であり、後方溝部の溝幅が15mm以上30mm以下であることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h1)基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、溝部が、前方溝部のみを有することが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h2)基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、溝部が、少なくとも前方溝部を有し、下顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前方溝部内に配置した際に、前方溝部の唇側および頬側の縁部ならびに喉側の縁部から選択される少なくとも一方の縁部には、人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h2)基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、溝部が、前方溝部および後方溝部を有することが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、前方溝部および後方溝部の底面のうち、後方溝部の唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h2)基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、前方溝部の喉側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、前方溝部の溝深さが1mm以上11mm以下であり、前方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることが好ましい。
本発明の義歯作製用治具の他の実施形態は、(h2)基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、後方溝部の唇側および頬側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、後方溝部の溝深さが1mm以上11mm以下であり、後方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることが好ましい。
本発明によれば、新規な義歯の作製方法により義歯を作製する際に、作業者に関係無く作業効率・品質の低下を抑制できる義歯作製用治具を提供することができる。
新規な義歯技術の一実施の形態に係る義歯の断面図である。なお、上段の図1(a)及び下段の図1(b)は、犬歯含有形態である全部床義歯(総義歯)タイプの上顎用義歯及び下顎用義歯の「人工犬歯垂直断面」を、夫々表している。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る上顎用義歯と、下顎用義歯とを、患者に装着したイメージを示す図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る上顎用基準義歯を示す斜視図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る下顎用基準義歯を示す斜視図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る義歯作製方法で使用する咬合器に患者口腔内模型が取り付けられた状態を示す側面図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る義歯作製方法において、咬合器または患者口腔内に上顎用基準義歯および下顎用基準義歯をセットする際に用いられる位置合わせ冶具を示す図であり、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は背面図を示している。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る上顎用基準義歯と下顎用基準義歯とをそれぞれ咬合させた状態を示す図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係り、犬歯・第1大臼歯含有形態である全部床義歯(総義歯)タイプの上顎用義歯における好適な立体形状を説明するための概略図であり、「人工犬歯垂直断面」となるXA-XA´断面の位置及び「人工第1大臼歯垂直断面」となるYA-YA´断面の位置を説明するための図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係り、犬歯・第1大臼歯含有形態である全部床義歯(総義歯)タイプの下顎用義歯における好適な立体形状を説明するための概略図であり、「人工犬歯垂直断面」となるXB-XB´断面の位置及び「人工第1大臼歯垂直断面」となるYB-YB´断面の位置を説明するための図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係り、犬歯・第1大臼歯含有形態である全部床義歯(総義歯)タイプの上顎用義歯における好適な立体形状を説明するための概略図であり、左側の図(a)は、「人工犬歯垂直断面」における、ベース前方領域の床縁側先端と上顎犬歯尖頭との高低差、およびベース口蓋床部の最高点と上顎犬歯尖頭との高低差を説明するための図であり、右側の図(b)は、「人工第1大臼歯垂直断面」における、ベース前方領域の床縁側先端と上顎第1大臼歯近心頬側咬頭頂との高低差、およびベース口蓋床部の最高点と第一大臼歯近心頬側咬頭頂との高低差を説明するための図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る、犬歯・第1大臼歯含有形態である全部床義歯(総義歯)タイプの下顎用義歯における好適な立体形状を説明するための概略図であり、左側の図(a)は、「人工犬歯垂直断面」における、ベース前方領域の床縁側先端と下顎犬歯尖頭との高低差、およびベース舌側床翼部の床縁側先端と下顎犬歯尖頭との高低差を説明するための図であり、右側の図(b)は、「人工第1大臼歯垂直断面」における、ベース前方領域の床縁側先端と上顎第1大臼歯近心頬側咬頭頂との高低差、およびベース舌側床翼部の床縁側先端と第1大臼歯近心頬側咬頭頂との高低差を説明するための図である。 新規な義歯技術の一実施の形態に係る上顎用基準義歯を平面視した形状を示す図であり、線分PQの長さを基準として、好適な平面形状を有する規定する各部の長さを説明するための図である 新規な義歯技術の一実施の形態に係る下顎用基準義歯を平面視した形状を示す図であり、線分pqの長さを基準として好適な平面形状を有する規定する各部の長さを説明するための図である。 本発明の義歯作製用治具の一実施形態(上顎用義歯作製用治具)を示す平面図である。 図14に示す上顎用義歯作製用治具の前方溝部の断面形状の一例を示す断面図である。 図14に示す上顎用義歯作製用治具の前方溝部の底面の凹凸具合の変化の一例を示すグラフである。 本発明の義歯作製用治具の他の実施形態(上顎用義歯作製用治具)を示す平面図である。 図17に示す上顎用義歯作製用治具と組み合わせて用いる位置合わせ治具の一例を示す図であり、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は背面図を示している。 本発明の義歯作製用治具の他の実施形態(下顎用義歯作製用治具)を示す平面図である。
本実施形態の義歯作製用治具は、上述したように新規な義歯技術(以下、単に「新技術」と称す場合がある)に用いられるものである。このため、新規な義歯技術の詳細について説明した後、本実施形態の義歯作製用治具の詳細について説明する。
<<新規な義歯技術>>
新技術の義歯は、新技術の基準義歯を材料部材として用いた新技術の義歯の作製方法により好適に作製される義歯であり、これまで知られていない新規な構造を有するものであるが、当該構造は、このような新技術の義歯の作製方法を採用することにより必然的に得られるものでもある。また、新技術の義歯の作製方法により作製できるという点を1つの効果としている。そして、新技術の義歯の作製方法の効果には、主に、カスタマイズ法に比べて有利な方法として、特許文献2に開示されている方法では考慮されていなかった“事前チェックにより研削による調整が必要とされるケースが発生する頻度”を大幅に低減した点、及び作製者の熟練度によらず、誰でも再現性良く高精度の義歯を製造できる点がある。
そこで、先ず、上記効果の比較対象となるカスタマイズ法及び特許文献2に開示された方法について説明した上で、新技術の概要について説明することとする。また、新技術の具体的な説明を行うに際しては、理解を助けるために先ず、一般的な義歯や基準義歯の特徴について説明し、その上で、新技術の義歯、基準義歯及び作製方法について順次説明することとする。
[1.現状の義歯の作製方法(カスタマイズ法)]
現状の義歯の作製方法(カスタマイズ法)は、おおまかには、下記ステップ1~8を含んでいる。
〔現状の義歯作製方法(カスタマイズ法)手順:ステップ〕
1:印象材を用いて患者の口腔内の印象を採得する。
2:該印象を用いて石膏模型を作製する。
3:咬合床を患者に装着させて咬合を採得する。
4:咬合床に人工歯を配列し、蝋義歯を作製する。
5:蝋義歯を患者に試適させ、咬合を調整する。
6:蝋義歯を石膏中に埋没して鋳型を作製する。
7:鋳型に樹脂を注入、硬化させて義歯を作製する。
8:作製された義歯を微調整する。
なお、上記ステップ8は下記3工程を含むのが一般的である。
8-1:形態修正
8-2:咬合調整、及び
8-3:必要に応じた内面調整
上記ステップ1、2、3、5は、通常、歯科医院にて行われ、ステップ4、6、7は、通常、技工所にて行われる。ステップ8は、歯科医院および技工所の双方で多く行われている。上記のようなステップ1~8に関する操作は煩雑で専門的な(熟練した)手技を要する。加えて、作業者や作業場所も異なるため作製期間が長くなるのが普通である。
[2.特許文献2の義歯の作製方法]
ここで、上述のような各ステップを経て得られる義歯の作製時間を低減するために、義歯床の規格化が容易な総義歯タイプの義歯床を用いた義歯に関して、上述した特許文献2及び3に開示の技術内容がある。
本発明者らが、前記特許文献2に記載された基準義歯を用い、前記特許文献3に記載される冶具を用いた方法により義歯の作製を試みたところ、従来認識されていなかった利点があることに気付くと同時に、これら特許文献では認識されていない課題(要改善点)が存在することが明らかとなった。先ず上記利点について説明すると、前記カスタマイズ法のステップ7では、硬化の際に床材となる樹脂の収縮により配置した人工歯の位置がずれることがあるためステップ8-2の咬合調製に比較的時間を要することが多かったのに対し、基準義歯を用いた新技術の方法ではこのような人工歯の位置ズレは起こらないため、咬合調整に要する時間も大幅に短縮することができる。
一方、要改善点について説明すると、上述したように、基準義歯を使用して義歯を作製する場合には、上顎用基準義歯及び/又は下顎用基準義歯を、患者の口腔内に挿入して、粘膜等への当たり具合を確認するといった簡単な事前チェックを行うのが一般的である。前記特許文献2に開示された技術では、咬合状態を特に意識せず、上顎用基準義歯又は下顎用基準義歯の何れか一方を単独で使用してチェックを行っているが、良好な咬合状態を維持するようにして事前チェックを行った場合には、研削による調整が必要であると判明される場合が比較的多いことが判明した。このような研削を要する場合には、ハンディ研削機等を用いた研削により、事前調整を行う必要があるが、そのような事前調整は、義歯作製時間の増加につながってしまう。したがって、第一の要改善点として、このようなケースの発生率を低減する必要がある。
第二の要改善点は、裏装材の築盛及び粘膜面の転写を一度に行った場合には、精度の高い転写を行うことが難しく、また、作業者のスキルの違い等により転写の状態にバラツキが生じてしまうという点であり、この点についても改善の余地がある。
[3.新技術の概要]
以上のような背景のもと、新技術では、第一に、新技術の義歯として、このような問題の発生を回避しながら作製することが可能な義歯を提供している。
また、新技術の基準義歯、具体的には新技術の上顎用基準義歯及び/又は新技術の下顎用基準義歯は、上記新技術の義歯の一部を構成する材料部材ともなるものであり、患者の口腔内又はカスタマイズ法のステップ2で得られた患者口腔内模型を装着した咬合器に基準義歯を挿入した事前チェックにおいて、研削による調整が必要となるケースの発生割合を有意に低減可能としている。
また、新技術の義歯の作製方法は、基準義歯床部材の粘膜面を患者の口腔粘膜と適合化させるために行う、築盛・転写工程を、それぞれ複数段階に分けて行うことにより、個別患者にフィットした義歯を効率的に作製することを可能としている。すなわち、新技術の義歯の作製方法によれば、(1)基準義歯床の中央部分(ベース中央領域)の粘膜面の適合化と、(2)前方部(ベース前方領域)及び後方部(ベース後方領域)の粘膜面の適合化並びに辺縁(床縁)の形成及び適合化と、を分けて行っているので、精度の高い転写を行うことが容易で、更に、作業者のスキルの違い等による転写の状態にバラツキを抑制することができる。
より詳細に新技術の作製方法の特長を説明すると、新技術の作製方法では、新技術の基準義歯を使用することによって、前記事前チェックにおける研削調整を不要とするか、又は研削が必要な場合でも研削量の大幅な低減を図ることが可能である。
本発明者らの検討により、上顎用及び下顎用義歯の前方床翼(その位置によって唇側床翼又は頬側床翼と呼ばれることもある。)の床縁近傍並びに上顎用義歯の口蓋部床縁近傍の形状は患者による個人差が大きいことが明らかとなった。新技術の作製方法では、これら領域における調整代を大きくした新技術の基準義歯を使用することにより、適用可能な患者数を増やすことに成功している。
基準義歯の形状及び大きさを上記のように小さくすると、調整代が大きくなるため、調整部材を用いた位置調整(具体的には、装着時に理想的な咬合状態が実現できるようにするための位置調整)を一段階で行った場合には、スキルの差によるバラツキが大きくなることが避けられない。
これに対し、新技術の作製方法では、最初にベース中央領域の粘膜面の適合化を行うことにより大まかな位置決めを行う。次に、変動幅が少ない状況で前方部(ベース前方領域)及び後方部(ベース後方領域)の粘膜面の適合化並びに辺縁(床縁)の形成及び適合化を行う。それにより、誰でも高精度の位置決めができるようにしている。このとき、基準義歯床の前方床翼部の高さや、基準義歯床の後方部の長さを裏装材等の硬化性義歯床用材料で補いながら(延長しながら)辺縁形成することにより、患者粘膜との境界が自然な状態とすることもできる。
このような理由から、新技術の作製方法を採用することにより、高度な訓練を要することなく、(医師は勿論、医師以外の者についても)誰でも再現性良く、効率的に個別患者にフィットする義歯を効率よく作製することが可能となる。
以下、義歯及びその主要構成部材となる基準義歯の一般的特徴について簡単に説明した後で、新技術の義歯について説明する。なお、これらの一般的特徴、特に基本的な形状、部分の名称、素材、使用方法などは新技術の義歯及び基準義歯についてもあてはまるものである。
[4.義歯の一般的特徴]
義歯(有床義歯)とは、天然歯牙並びに歯肉及び歯槽骨などの周囲組織を喪失した場合に、咀嚼等の口腔機能を回復すると共に顔面の形態変化および歯牙の欠損や周囲組織の喪失によって生じる障害を予防する、着脱自在な補綴装置を意味する。義歯において欠損(天然)歯牙を補う部材が人工歯であり、喪失周囲組織を補う部材が義歯床である。この義歯床において、顎堤粘膜と密着する面(義歯作製において適合性の観点から研磨をしない面)は、一般に、「粘膜面」(或いは基底面)と呼ばれ、その反対側の頬粘膜や舌と接することがある面(義歯作製において研磨をする面)は、一般に、「研磨面」と呼ばれ、両者の境界となる部分は「床縁」と呼ばれている。また、義歯床の歯茎相当部と人工歯の境界部は、「歯頸部」と呼ばれ、当該歯頸部を基端とし、前記床縁を先端とする翼状の形態をなす部分は、「床翼」と呼ばれている。また、義歯床の人工歯が固定される部分は「歯槽部」と呼ばれている。
新技術では、このような呼び方に倣い、義歯(有床義歯)の面を、顎堤粘膜と密着する側の面と、その反対側の面との2つに分けて、前者を「粘膜面」と呼び、後者を「研磨面」と呼ぶこととする(本明細書では、患者口腔内の顎堤粘膜と対向する側を粘膜側とする)。同様に、義歯における「粘膜面」および「研磨面」は、後述する基準義歯を構成する基準義歯床(部材)における粘膜側の面およびその反対側の面に対応する面であることから、基準義歯床(部材)における粘膜側の面およびその反対側の面についても便宜上それぞれ「粘膜面」および「研磨面」と呼ぶこととする。
義歯は、上顎用の上顎義歯と下顎用の下顎義歯とに分類され、夫々について全ての歯牙が欠損した場合に用いられる全部床義歯と一部の歯牙が欠損した場合に用いられる部分床義歯が存在する。上顎義歯と下顎義歯とを比較すると、両者の義歯床は、患者口腔内の唇側及び頬側(本明細書では、唇側及び頬側に向いた方向を前方とする。)の顎堤粘膜を被覆する部分である「唇側床翼部」及び「頬側床翼部」と呼ばれる部分を有するという点では共通しているが、上顎及び下顎の機能と形状の違いに起因して、患者口腔内の喉側(本明細書では、喉側に向いた方向を後方とする。)の粘膜を被覆する部分の形状が大きく異なっている。すなわち、上顎用義歯床の後方部分は、上顎口蓋粘膜を被覆する「口蓋床部」と呼ばれる部分であるのに対し、下顎用義歯床の後方部分は、下顎の舌側の顎堤粘膜を覆う「舌側床翼部」と呼ばれる部分であり、この舌側床翼部と唇側床翼部及び頬側床翼部との間で、顎堤を挟み込むようになっている。
なお、前方の床翼部について付言すると、その対向する領域に応じて、左頬側床翼部、唇側床翼部及び右頬側床翼部の3つの領域に分けられる。その境界は必ずしも厳密には決められていないが、唇側床翼部は、中切歯、側切歯、及び犬歯における歯頸部から床縁に向かう領域を意味し、左頬側(右頬側)頬側床翼は、左側(右側)の第1小臼歯、第2小臼歯と、第1大臼歯及び第2大臼歯における歯頸部から床縁に向かう領域を意味するとされている。但し、犬歯領域については頬側に含めることも有る。
また、前方の床翼部は、上顎用義歯床及び下顎用義歯床に共通する部分であり、基本的な形状は変わらないものの、上顎及び下顎の機能と形状の違いに起因して、若干形状が異なっている。例えば、「歯科技工士教本 有床義歯技工学 全部床義歯技工学」(権田悦通 ほか著;1994年3月発行(医歯薬出版))の第51頁には、咬合堤の標準的な高さが記載されているが、それによると上顎用の咬合堤の高さは22mmであり、下顎用の咬合堤の高さは18mmであるとされており、下顎用の方が若干低くなっている。
このように、義歯においては、上顎用及び下顎用とも、前方の部分と、後方の部分の2つの領域に分けて、部分名称(このような部分名称を「2分割名称」ともいう。)を付すことが一般的である。しかしながら、新技術の義歯及び基準義歯においては、義歯床が被覆する患者口腔内の粘膜の領域に着目して3つの領域に分け、独自の部分名称(このような名称を「3分割名称」ともいう)を付している。すなわち、(1)患者口腔内における顎堤頂部領域の粘膜を被覆する粘膜面を有する領域(部分)を「中央領域」とし、(2)前記顎堤頂部領域よりも前方の患者口腔内粘膜を被覆する粘膜面を有する領域(部分)を「前方領域」とし、(3)前記顎堤頂部領域よりも後方の患者口腔内粘膜を被覆する粘膜面を有する領域(部分)を「後方領域」としている。
上記の「中央領域」は、2分割名称における「唇側床翼部」及び「頬側床翼部」の後方の(顎堤頂部領域に含まれる)一部領域と、「口蓋床部」又は「舌側床翼部」の前方の(顎堤頂部領域に含まれる)一部領域と、からなる領域に相当する。また、「前方領域」は、「唇側床翼部」及び「頬側床翼部」の「中央領域」となる部分を除く、主要部に相当する。また、「後方領域」は、「口蓋床部」又は「舌側床翼部」の「中央領域」となる部分を除く、主要部に相当する。このため(完全に一致するものではないが大部分が重複するため)、3分割名称における上顎用義歯及び下顎用義歯における「後方領域」に関しては、2分割名称と同様に、それぞれ「口蓋床部」及び「舌側床翼部」と称することにしている。
上記義歯床の材料としては、一般に、次のような樹脂が使用されている。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートの単独重合体もしくはこれらの共重合体から少なくとも一つ選ばれるポリ(メタ)アクリレート系樹脂;ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン);ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン66(登録商標));ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカーボネート);ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリアセタール、ポリサルフォン);ポリニトリル系樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル);ポリビニル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル);セルロース系樹脂(例えば、酢酸セルロース);フッ素系樹脂(例えば、ポリクロルフルオロエチレン);イミド系樹脂(例えば、芳香族ポリイミド)等が使用されている。これら樹脂材料は、樹脂材料のみで使用されることが多いが、有機フィラー、無機フィラー、有機-無機複合フィラー等のフィラーを添加して用いることもある。また、義歯床の一部に金属材料を使用することも有る。
上記義歯床に配列固定される人工歯は、目的とする義歯に応じて、配列される人工歯の種類及び数が適宜決定される。その数は1であっても良いが、通常は複数の人工歯が固定される。かかる人工歯としては、樹脂製やセラミック製の公知の人工歯を用いることができる。樹脂製の人工歯としては、上述のポリ(メタ)アクリレート系樹脂、並びにポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、シリコン系樹脂等を材質とする人工歯が例示される。人工歯の固定方法としては、嵌合、接着等従来公知の方法が何等制限なく使用できる。
[5.基準義歯の一般的特徴]
基準義歯とは、義歯の作製を容易化するための材料部材として使用される、既成の義歯状の部材、より具体的には、形状や大きさが所定に規格化され、所定の仕様を満足する部材用製品として工場や技工所などで量産可能な義歯状の部材を意味する。なお、ここでいう既成とは、部材製品として入手可能な状態となっていることを意味する。
基準義歯は、基準義歯床(基準義歯床部材)とそれに固定保持される人工歯とからなり、これを部材として用いて義歯を作製した場合、基準義歯の人工歯部分は義歯の人工歯部分となり、基準義歯の義歯床(基準義歯床)は義歯の義歯床の主要部を構成するものとなる。すなわち、基準義歯床は、義歯のベースとなるもので、上記義歯の義歯床の最終的な形態(形状)と比較すると、基準義歯床の粘膜面と(装着者である)個別患者の口腔内粘膜との間に形成される空間又は空隙(当該空間又は空隙を、以下、「基準義歯非適合空間」ともいう。)を裏装材などの硬化性義歯床用材料が埋めて、両者がフィットするようになっている。そして、「調整代(ちょうせいしろ)」とも言える前記基準義歯非適合空間の分だけ、小さいものの、その基本的な構造や形状は、義歯と同様である。したがって、新技術では、基準義歯を義歯に見立てて、粘膜面、研磨面及び床縁を定義し、また、基準義歯各領域(部分)を、対応する義歯の領域(部分)の3分割名称である、「中央領域」、「前方領域」及び「後方領域」に準じて、それぞれ「ベース中央領域」、「ベース前方領域」及び「ベース後方領域」と呼ぶこととする。この場合、「ベース中央領域」、「ベース前方領域」及び「ベース後方領域」は、各々、基準義歯床の表面のうち患者口腔内における顎堤頂部領域の粘膜に対向する領域、顎堤頂部領域よりも前方側の患者口腔内粘膜に対向する領域、及び、顎堤頂部領域よりも後方側の患者口腔内粘膜に対向する領域である。そして、基準義歯床の床縁のうち、「ベース前方領域」には唇側床縁および頬側床縁が含まれ、「ベース後方領域」には、喉側床縁が含まれる。なお、上顎用基準義歯における「ベース後方領域」については「ベース口蓋床部」と称し、下顎用基準義歯における「ベース後方領域」については「ベース舌側床翼部」と称することもある。
すなわち、基準義歯は、基準義歯床と、人工歯と、を含み、基準義歯床は、「ベース中央領域」、「ベース前方領域」及び「ベース後方領域」を有し、前記人工歯は「ベース中央領域」から「ベース前方領域」にかけた領域の研磨面側に固定されている。なお、基準義歯における基準義歯床及び人工歯については、基準義歯床の形状が、上記したようになっている以外は、義歯における義歯床及び人工歯と特に変わる点は無い。
基準義歯床は、たとえば、射出成形、圧縮成形、切削加工、三次元プリンタを用いた光造形等、種々の手法を用いて作製することができる。また、基準義歯床と人工歯(列)とを一体的に作製しても良く、基準義歯床と人工歯(列)とを別個に作製した後に、基準義歯床の歯槽部に人工歯(列)を取り付ける構成としても良い。前者には、大量生産による量産化が容易であり、生産コストを大幅に低減することができると言うメリットがあり、後者には、個別の患者にフィットする人工歯(列)を形成することができると言うメリットがある。
また、基準義歯では、既製のものとして、歯牙の配列等について多くのバリエーションを必要とせず、相対的大きさ(サイズ)のみが異なるものを準備することが多い。また、全歯列が固定された全部床義歯(総義歯)用の基準義歯が使用されることが多い。
基準義歯は、一般に、その使用目的から、多くの臨床データや、多くの有歯顎者及び無歯顎者の口腔形状に関するデータに基づいて、基準義歯床の平面形状が、多くの患者に適合するような(いわば最大公約数的な共通部となるような)形状に設計されることが多い(特許文献2参照)。しかし、裏装材等の硬化性義歯床用材料の使用量や、事前チェックにおいて研削による調整を行う必要が生じる頻度、更には基準義歯の強度を考慮して、その立体形状を最適化したり規定したりした例は、本発明者等らの知る限りでは存在しない。
[6.新技術の一実施の形態に係る義歯]
以下、図1及び図2を参照して、全部床義歯(総義歯)タイプの新技術の一実施の形態に係る義歯1について説明する。図1および図2に示すように、義歯1(1A,1B)は、一般的な義歯と同様に、義歯床2(2A,2B)に人工歯31(31A,31B)又は人工歯列30(30A,30B)が固定された基本構造を有する。
また、基準義歯を用いて作製される一般的な義歯と同様に、基準義歯床部材4(4A,4B)に人工歯31(31A,31B)が固定された基準義歯部材5(5A,5B)と、硬化性義歯床用材料の硬化体からなる調整部材6と、を有する。そして、前記義歯床2(2A,2B)は、前記基準義歯床部材4(4A,4B)と、前記基準義歯床部材4(4A,4B)に接合された調整部材6とを有する。なお、前記基準義歯床部材4(4A,4B)は、前記義歯床2(2A,2B)の主要部を構成するベースとなるものであり、図1および図2に示す構成では、調整部材6が義歯床2の残部を構成する。
さらにまた、新技術の実施形態の義歯床2(2A,2B)は、従来の一般的な義歯と同様に、3分割名称における「中央領域」2A1,2B1、「前方領域」2A2,2B2及び「後方領域」2A3,2B3を有する。そして、前記基準義歯床部材4(4A,4B)は、上記各領域に対応して、従来の一般的な基準義歯床と同様に、それぞれ、前記「ベース中央領域」20A1,20B1、前記「ベース前方領域」20A2,20B2及び前記「ベース後方領域」20A3,20B3を有する。なお、上記基準義歯床部材4(4A,4B)の各部分の番号(符号)については、当該基準義歯床部材4を基準義歯床として有し、前記基準義歯部材5として使用される新技術の実施形態の基準義歯10(図3及び図4参照)と同じ番号(符号)を用いている。
新技術の実施形態の義歯1は、これら全ての領域で基準義歯床部材4(4A,4B)が義歯床2(2A,2B)の主要部を構成し、前記調整部材6と特定の様式で接合している点に大きな特徴を有する。
すなわち、前記調整部材6は、前記中央領域2A1,2B1のうち基準義歯床部材4(4A,4B)を除いた残部を構成し、前記ベース中央領域20A1,20B1の粘膜面25A,25Bと接合する中央調整部材6A1,6B1を有する。また、前記調整部材6は、前記前方領域2A2,2B2のうち基準義歯床部材4(4A,4B)を除いた残部を構成し、前記ベース前方領域20A2,20B2の粘膜面25A,25Bと接合する前方調整部材6A2,6B2を有する。また、前記調整部材6は、前記後方領域2A3,2B3のうち前記基準義歯床部材4(4A,4B)を除いた残部を構成し、前記ベース後方領域20A3,20B3の粘膜面25A,25Bと接合する後方調整部材6A3,6B3を有する。また、前記前方領域2A2,2B2及び前記後方領域2A3,2B3における床縁1A6,1B6側先端領域の少なくとも一部は、それぞれ前記前方調整部材6A2,6B2及び前記後方調整部材6A3,6B3で構成され、前記中央領域2A1,2B1、前記前方領域2A2,2B2及び前記後方領域2A3,2B3における各粘膜面1A4,1B4の少なくとも一部は、それぞれ前記中央調整部材6A1,6B1、前記前方調整部材6A2,6B2及び前記後方調整部材6A3,6B3で構成される、点に特徴を有する。このとき、前記前方領域における床縁の80%以上、特に90%以上の床縁側先端領域が前記前方調整部材で構成され、前記後方領域における床縁の80%以上、特に90%以上の床縁側先端領域が前記後方調整部材で構成される、ことが好ましい。
なお、中央調整部材6A1(6B1)、前方調整部材6A2(6B2)及び後方調整部材6A3(6B3)は、必ずしも独立して存在している必要はなく、相互に連結して基準義歯床部材4A(4B)の粘膜面の全面を覆うように形成されていても良い。
通常、新技術の実施形態の義歯1(1A,1B)においては、前記基準義歯床部材4(4A,4B)は、規格化された所定の形状(量産される所定の形状)又は当該形状と実質的に同一な形状を有する。ここで「実質的に同一な形状」とは簡単な研削による微調整などで所定の形状から極僅かに変化した形状を意味する。また、前記調整部材6は、装着者となる個別の患者の口腔内に前記義歯を装着した状態において、上顎及び下顎の歯(ここで、歯とは、前記義歯に固定された人工歯、及び前記患者が天然歯を有する場合における当該天然歯を意味する。)が、緊密に相接する面である「咬合面」から決定される「咬合平面」が、患者の口腔内で医学的に存在すべき位置に配置されるように、前記患者の口腔内形状に応じて調整された形状を有する。
新技術の実施形態の義歯1(1A,1B)は、前記したような構造を有することにより、カスタマイズ法で得られる義歯と比べて遜色のないフィット性を有し、新技術の実施形態の作製方法を採用することにより短期間で容易に作製できるようになる。
新技術の実施形態の義歯1(1A,1B)における前記調整部材6を構成する硬化体の材料となる硬化性義歯床用材料とは、重合硬化性の材料であって、硬化することにより前述の樹脂製義歯床用材料となる材料を意味する。当該硬化性義歯床用材料は、前記樹脂材料の原料となるモノマー(重合性単量体)、重合開始剤、及び必要に応じて充填材を含むものであり、硬化前はペースト状或いは餅状の塑性変形可能で、応力がかからない状態ではその形態を保持できるような材料である。硬化性義歯床用材料の重合タイプは、使用する重合開始剤の種類により、光重合、熱重合、化学重合、マイクロ波重合タイプ等があるが、操作性の観点からは光重合タイプであることが好ましい。
新技術の実施形態の義歯は、その効果の大きさから、前記人工歯が、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び犬歯からなる群より選ばれる少なくとも1つの歯の人工歯を必須の人工歯として含む複数の人工歯である義歯、特に、人工犬歯31A3,31B3(図7、図10及び図11参照)を含む3以上の人工歯31(31A,31B)が個別及び/又は連結された状態で固定された形態(以下、「犬歯含有形態」ともいう。)であることが好ましく、更に人工犬歯及び人工第1大臼歯31A6,31B6を含む3以上の人工歯31(31A,31B)が固定された形態(以下、「犬歯・第1大臼歯含有形態」ともいう。)の義歯であることが更に好ましく、全部床義歯(総義歯)であることが特に好ましい。
そして、前記義歯床における前方の研磨面における人工歯との境界部を「歯頸部」とし、当該歯頸部から床縁にいたるまでの翼状の形態をなす部分を「床翼」とし、当該床翼の前方側であって、前記必須の人工歯の歯頸部を基端とし、その延長上の床縁を先端とする部分を「必須人工歯前方床翼部」としたときに、前記必須の人工歯が1つであるときはその人工歯における前記必須人工歯前方床翼部の床縁部が、前記必須の人工歯が複数あるときはその中の少なくとも1つの人工歯における前記必須人工歯前方床翼部の床縁部が、前記前方調整部材で構成され、且つその必須人工歯前方床翼部の研磨面の5%以上65%以下(以下、「x以上、y以下」を、「x~y」と略記することもある。)が前記前方調整部材で構成されている、ことが好ましい。
また、前記犬歯含有形態においては、前方の研磨面1A5,1B5における人工犬歯が存在する部分の歯頸部1A7,1B7を基端とし、その延長上の床縁1A6,1B6を先端とする部分を、「犬歯前方床翼部」としたときに当該犬歯前方床翼部の床縁の少なくとも一部が前記前方調整部材6A2,6B2で構成され、更に「犬歯前方床翼部」の研磨面の5%以上65%以下が前記前方調整部材6A2,6B2で構成されていることが好ましい。また、前記犬歯・臼歯含有形態においては、前方の研磨面1A5,1B5における人工第1大臼歯31A6,31B6の歯頸部1A7,1B7を基端とし、その延長上の床縁1A6,1B6を先端とする部分を、「第1大臼歯前方床翼部」としたときに、前記犬歯含有形態における好適な条件を満足することに加えて、当該最後方臼歯前方床翼部の床縁が前記前方調整部材6A2,6B2で構成され、更に「第1大臼歯前方床翼部」の研磨面の5%以上65%以下が前記前方調整部材6A2,6B2で構成されていることが好ましい。
以上、新技術の実施形態における、上顎用及び下顎用の義歯1(1A,1B)に共通する特徴点を説明したが、前記したように上顎用義歯と下顎用義歯とでは異なる点も有り、この違いは新技術の実施形態の義歯においても反映される。すなわち、上顎用である新技術の実施形態の義歯1Aでは、前記義歯床2は、前記後方領域として、患者の上顎口蓋粘膜を被覆する口蓋床部2A3である上顎用義歯床2Aである。また、前記基準義歯部材5は、前記ベース後方領域として、前記口蓋床部2A3の要部を構成するベース口蓋床部20A3である上顎用基準義歯床4Aに前記人工歯31Aが固定された上顎用基準義歯部材5Aである。さらに、口蓋床部2A3は、前記後方調整部材により構成される口蓋床調整部6A3を有する。
また、犬歯含有形態である上顎用である新技術の実施形態の義歯1Aでは、「犬歯前方床翼部」の床縁の少なくとも一部が前記前方調整部材6A2で構成され、且つ当該犬歯前方床翼部の研磨面の10%~65%、特に10%~60%以下が前記前方調整部材6A2で構成されていることが好ましい。
一方、下顎用である新技術の実施形態の義歯1Bでは、前記義歯床2は、前記後方領域として、患者の舌側顎堤粘膜面を被覆する舌側床翼部2B3である下顎用義歯床2Bである。また、前記基準義歯部材5は、前記ベース後方領域として、前記舌側床翼部2B3の要部を構成するベース舌側床翼部20B3である下顎用基準義歯床4Bに前記人工歯31Bが固定された下顎用基準義歯部材5Bである。また、舌側床翼部2B3は、前記後方調整部材で構成される舌側床翼調整部6B3を有する。
また、犬歯含有形態である下顎用である新技術の実施形態の義歯1Bでは、「犬歯前方床翼部」の床縁の少なくとも一部が前記前方調整部材6B2で構成され、且つ当該犬歯前方床翼部の5%~60%、特に10%~60%以下が前記前方調整部材6B2で構成されていることが好ましい。
ここで、図1(a)に示すように、上顎用基準義歯床4A(上顎用基準義歯部材5A)の粘膜面のうち、中央調整部材6A1が配置されている粘膜面の曲率半径は、前方調整部材6A2及び口蓋床調整部6A3が配置されている粘膜面の曲率半径よりも小さくなっている。このような中央調整部材6A1が配置される部位の曲率半径が小さいことにより、前方調整部材6A2及び口蓋床調整部6A3を形成する際の位置決めが行い易くなっている。その反面、曲率半径が小さいことに起因して、前記基準義歯非適合空間を硬化性義歯床用材料で埋めて患者口腔粘膜面のとの適合化を図る際に、この適合化を一回の操作で行おうとする場合には、僅かな力を加えただけで、この部分を支点にして前後が上下にブレ易く、高精度の適合化を行うためには高度な手技が要求される。しかし、新技術の作製方法を採用すれば、上記した位置決めの容易さと言うメリットを受けつつ、このようなブレの発生を抑制することができる。
また、図1(b)に示すように、下顎用基準義歯床4B(下顎用基準義歯部材5B)の粘膜面のうち、中央調整部材6B1が配置されている粘膜面の曲率半径は、前方調整部材6B2及び舌側床翼調整部6B3が配置されている粘膜面の曲率半径よりも小さくなっている。そして、このような中央調整部材6B1が配置される部位の曲率半径が小さいことにより、前方調整部材6B2及び舌側床翼調整部6B3を形成する際の位置決めが行い易くなっている点、及び新技術の作製方法を採用することによりブレの発生を抑えることができる点は、上記上顎用基準義歯床4Aと同様である。
なお、上顎用基準義歯床4A(上顎用基準義歯部材5A)のうち、中央領域2A1は、人工歯31の近傍に位置する。このため、後述する上顎用基準義歯10Aの平面形状(図12参照)から明らかなように、中央領域2A1は、弓型形状(U字形状)を呈している。そして、その弓型形状の中央領域2A1の湾曲部分の中央部分と、それ以外の部位(両端付近を含む)の少なくとも3箇所に、通常は全領域に亘って、中央調整部材6A1の少なくとも一部となる硬化性義歯床用材料を配置することで、まだ前方調整部材6A2及び口蓋床調整部6A3の少なくとも一部となる硬化性義歯床用材料が配置されていない段階でも、患者の口腔内形状に対する位置決めがなされる。
[7.新技術の一実施の形態に係る基準義歯]
新技術の一実施の形態に係る基準義歯は、新技術の一実施の形態に係る義歯における前記基準義歯部材として使用される、基準義歯である。
図3及び図4を参照して、新技術の実施形態の義歯1の基準義歯部材5として好適に使用できる新技術の実施形態の基準義歯10(10A,10B)について説明すると、当該基準義歯10(10A,10B)は、従来の一般的な基準義歯と同様に基準義歯床20に人工歯31又は人工歯列30が固定された基本構造を有する。そして、前記基準義歯床20は、義歯1の義歯床2における「中央領域」2A1,2B1、「前方領域」2A2,2B2及び「後方領域」2A3,2B3に夫々対応する「ベース中央領域」20A1,20B1、「ベース前方領域」20A2,20B2及び「ベース後方領域」20A3,20B3を有する。なお、基準義歯10においても、床縁22A,22B(唇側床縁22A1,22B1、頬側床縁22A2,22B2及び喉側床縁22A3、22B3)、粘膜面23A,23B、研磨面24A,24B、歯頸部などの部分名称は、従来の義歯及び従来の基準義歯と同様の意味を有する。
新技術の実施形態の基準義歯を含めて、基準義歯の平面形状に関しては、従来の基準義歯においても、多くの臨床データや、多くの有歯顎者及び無歯顎者の口腔形状に関するデータに基づいて、多くの患者に適合するように最適化することが行われている(特許文献2参照)。そして、患者の口腔内の大きさに応じて、当該患者用の義歯の材料部材として適切なサイズを有する基準義歯を選択して使用することも行われている。
ここで、基準義歯の立体形状に関しては、従来の基準義歯では、硬化性義歯床用材料による調整代である前記「基準義歯非適合空間」を確保すると言う基本的な設計思想はある。しかしながら、当該「基準義歯非適合空間」を確保するための具体的な方法としては、基準義歯床の厚さを一様に薄くするのが一般的であり(特許文献1参照)、所期の意図にしたがって最適化されることは無かった。
これに対し、新技術の実施形態の基準義歯では、基準義歯の適合範囲の広さ(別言すれば、事前チェックにおいて研削による調整を行う必要が生じる頻度の低さ)、硬化性義歯床用材料を用いた粘膜面の調整のし易さ、そのときの硬化性義歯床用材料の使用量、基準義歯の強度等を考慮して、基準義歯の立体形状を規定している。すなわち、前記義歯床2の形状を基本形状とした場合に、ベース中央領域、ベース前方領域及びベース後方領域においてこれら各領域の少なくとも一部の厚さを中央領域、前方領域及び後方領域の厚さよりも有意に薄くするだけでなくベース前方領域の床縁の高さを従来の基準義歯に比べて有意に低くし、中央調整部材6A1,6B1、前方調整部材6A2,6B2及び後方調整部材6A3,6B3が接合できる空間を確保している。
以下に、新技術の基準義歯の平面形状及び立体形状について、更に詳しく説明する。
(7-1.好適な平面形状について)
新技術の基準義歯の平面形状としては特許文献2に記載されているような平面形状であることが好ましい。以下、図12及び図13を参照して、このような平面形状について説明する。好適な平面形状とは、上顎用基準義歯に関しては床後縁の左側翼突上顎切痕に相当する点を、下顎用基準義歯に関しては床後縁の左側臼後隆起に相当する点を、夫々上顎用の(下顎用の)第一基準点:P(p)とする。また、同様に、上顎用基準義歯の右側翼突上顎切痕に相当する点及び下顎用基準義歯の右側臼後隆起に相当する点を、夫々上顎用の(下顎用の)第二基準点:Q(q)とする。更に、唇側床縁の正中にあたる上(下)唇小帯に相当する点を、夫々上顎用の(下顎用の)第三基準点:O(o)とする。そして、P(p)とQ(q)を結ぶ線分:PQ(pq)の長さを基準長とし、第三基準点と、第一基準点及び第二基準点をそれぞれ結ぶ2つの基準線分OP(op)及びOQ(oq)上の所定の位置に定めた複数のポイントから床縁までの長さ並びに線分PQ(pq)の中点をM(m)としたときの線分OM(om)の長さを、夫々前記基準長に対する比が所定の範囲となるようにした形状を意味する。なお、上記基準点及び複数のポイントは、必ずしも同一平面上に存在する訳ではないが、形状を規定する各線分の長さに対する高低差は僅かであるので、本明細書では平面形状として扱っている。
以下、上顎用基準義歯と下顎用基準義歯とに分けて、上記複数のポイント及び各ポイントから床縁までの長さ(基準長さで規格化した、相対長さ)について説明する。
(1)上顎用基準義歯について
上顎用基準義歯の各ポイントは、線分OP上に存在し、それら各ポイントは、当該線分を4等分に分割する3点(前方から後方に向かって、P1、P2及びP3)、線分OQ上に存在し、当該線分を4等分に分割する3点(前方から後方に向かって、点Q1、Q2及びQ3)を意味する。そして、各ポイントが存在する前記線分OP又は線分OQに対する垂線を引いたときに前方の床縁と交わる点(P1、P2及びP3に対応する点としてD1、D2及びD3並びにQ1、Q2及びQ3に対応する点としてE1、E2及びE3)を決定する。そして、各ポイントから床縁までの長さとは、対応する両点を結ぶ線分、すなわち線分P1D1、線分P2D2及び線分P3D3並びに線分Q1E1,線分Q2E2及び線分Q3E3の線分PQに対する相対長さを意味する。
上顎用義歯床の好適な平面形状は、線分OMの長さが0.76~0.98であり、P1D1および線分Q1E1の長さがそれぞれ0.11~0.36であり、線分P2D2および線分Q2E2の長さがそれぞれ0.19~0.45であり、線分P3D3および線分Q3E3の長さがそれぞれ0.16~0.45である、形状である。
(2)下顎用基準義歯について
下顎用基準義歯の各ポイントは、上顎用の各ポイントとなる各点P1、P2、P3、Q1、Q2、Q3、及びMに夫々対応する点p1、p2、p3、q1、q2、q3及びmである。また、各ポイントから床縁までの長さは、前方の床縁までの長さだけでなく、それに後方の床縁までの長さも加えた長さが含まれることになる。前方の床縁までの長さは、上顎用義歯床と対応する、線分p1d1、線分p2d2及び線分p3d3、線分q1e1、線分q2e2及び線分q3e3、及び線分omとなる。また、後方床縁までの長さは、各ポイントが存在する前記線分op又は線分oqに対する垂線を引いたときに後方の床縁と交わる点(p1、p2及びp3に対応する点として、b1、b2及びb3並びにq1、q2及びq3に対応する点としてc1、c2及びc3)を決定し、各ポイントを挟んでその両側の床縁の交点どうしを結ぶ線分、すなわち、線分d1b1、線分d2b2、線分d3b3、線分e1c1、線分e2c2及び線分e3c3の線分pqに対する相対長さとなる。
下顎用義歯床の好適な平面形状は、線分omの長さが0.74~0.94であり、線分p1d1および線分q1e1の長さがそれぞれ0.11~0.32であり、線分p2d2および線分q2e2の長さがそれぞれ0.13~0.34であり、線分p3d3および線分q3e3の長さがそれぞれ0.14~0.33であり、線分d1b1および線分e1c1の長さがそれぞれ0.14~0.40であり、線分d2b2および線分e2c2の長さがそれぞれ0.19~0.41であり、線分d3b3および線分e3c3の長さがそれぞれ0.21~0.42である、形状である。なおこのとき、各点の位置関係から、p1b1>p1d1、e1c1>q1e1、p2b2>p2d2、e2c2>q2e2、p3b3>p3d3、e3c3>q3e3である。
(7-2.好適な立体形状について)
新技術の基準義歯では、“前記事前チェックにおいて、患者粘膜等への不適切な当たり方をする頻度の高い部分は、ベース前方領域の床縁周辺と、ベース後方領域の床縁周辺であり、後者は平面形状の最適化で対応することが可能であるが、前者は平面形状の最適化だけでは対応できない”という本発明者等によって見出された新たな知見に基づき、不適切接触部が可及的に発生しないレベルで、ベース前方領域の高さを低くすると共にその厚みを薄くしている。
新技術では、このようなベース前方領域の高さ及び幅(厚み)の好適な範囲を、以下に説明する所定の断面を用いて規定している。
(7-3.好適な立体形状を規定するための基準となる断面について)
新技術の基準義歯においては、1つの人工歯に着目して、これを基準人工歯と定める。この基準人工歯上の特定の点を基準点と定め、基準義歯をその人工歯側を下向きにして咬合平面として想定される平面上に配置したときに、当該平面に対して垂直で、且つ前記基準人工歯の基準点を通る、前記ベース前方領域の研磨面に対する法線方向に沿った面で切断した縦断面(以下、「基準人工歯垂直断面」ともいう。)の形状に基づき前記高さ及び幅(厚み)を規定している。たとえば、詳細は後述するが、基準人工歯が人工犬歯である場合の上顎用基準義歯における「人工犬歯垂直断面」(XA-XA´断面に相当する)と前記ベース前方領域の研磨面との位置関係は図8に示す様になっており、下顎用基準義歯における「人工犬歯垂直断面」(XB-XB´断面に相当する)と前記ベース前方領域の研磨面との位置関係は図9に示す様になっている。
上記「基準人工歯垂直断面」の好適な形状を説明する前に、「咬合平面」について説明する。先ず、咬合について説明すると、咬合とは、上下の歯を噛み合わせた状態を意味し、上下の歯が緊密に相接する面は「咬合面」と呼ばれている。一般的に天然歯は、顎の形状を反映して、下に凸に湾曲(この湾曲は、スピーの湾曲とも呼ばれる。)して並んでいるため上記咬合面もその配列状態を反映して、横から見ると比較的大きな円弧を描く曲面となる。咬合面となる上記曲面の曲率半径は比較的大きいため、平面で近似することが可能である。そして、このようにして近似された平面が「咬合平面」である。
上記「咬合平面」は、医学的には、鼻翼下縁と両側の耳珠上縁を結ぶ仮想平面である「カンペル平面」と呼ばれる平面に平行となる位置であって、カンペル平面に垂直な方向に鼻下点から約20mm(通常18mm~22mm)下方の位置に存在するのが理想的であるとされている。義歯においても、患者の口腔内に装着され、且つ上顎及び下顎の歯(ここで、歯とは、前記義歯に固定された人工歯、及び前記患者が天然歯を有する場合における当該天然歯を意味する。)が可及的に緊密に相接した状態で、上記「咬合平面」が、上記位置からの平面の傾きの範囲が仰角で+4°~-7.64°の範囲内となるような位置(以下、このような位置を「理想的な位置」又は「医学的に理想的な位置」ともいう。)に配置されるように形状が調整されるのが一般的である。
上半身直立の状態で義歯を装着したときにおける(理想的な位置に配置された)「咬合平面」は、水平面から一定の角度(個人差あり)に傾いた平面である。図7、図10及び図11を用いて患者の口腔内で医学的に存在すべき位置に配置された「咬合平面」と想定される「仮想咬合平面」PAについて説明すると、理想的な咬合状態を表す図7において、下記A1、A2及びA3の3点で規定される平面が「仮想咬合平面」PAとなる。ここで、点:A1は、下顎用基準義歯10Bの左側と右側の中切歯31B1の近心隅角の中点を表し、点:A2は、下顎用基準義歯10Bの左側第2大臼歯31B7の遠心頬側咬頭頂を表し、点:A3は、下顎用基準義歯10Bの右側第2大臼歯31B7の遠心頬側咬頭頂を表す。
「咬合平面」及びそれが配置されるべき位置(「理想的な位置」)を厳密に定義すれば、上記のとおりであるが、新技術の基準義歯は必ずしも全部床義歯(総義歯)である必要は無く、また、上顎用基準義歯と下顎用基準義歯とがセットである必要もない。また、前記基準人工歯垂直断面を決定するにあたり、「咬合平面」は「理想的な位置」に配置されている必要はなく、相対的関係を保ったままであれば、咬合平面を任意に傾けて決定することもできる。例えば、咬合平面を水平になるまで傾けると、前記基準人工歯垂直断面は、前記基準点を通る前方領域の研磨面に対する法線方向に沿った垂直面となる。そこで、全ての人工歯は「咬合面」と緊密に接し、且つ平面(「咬合平面」)で近似できること、及び平面は最低限3点で規定し得ることから、新技術では、3以上の人工歯が固定された基準義歯床については、その人工歯を下に向けて水平面上に置いたときにおける、前記基準点を通る、前方研磨面に対する法線方向に沿った垂直面を前記基準人工歯垂直断面とすることとした。また、3未満の人工歯を有する基準義歯床については、正常に装着した状態を推定し、その時の「咬合平面」との相対的位置関係を変えずに水平面上に保持したときの前記基準点を通る、前方研磨面に対する法線方向に沿った垂直面を前記基準人工歯垂直断面とすることとした。なお、歯は、先端に凹凸を有し、また、上下の歯が僅かにずれて咬合すること、或いは部分義歯の場合には、その位置によって「咬合平面」からの僅かなズレが変化することから、人工歯を下に向けて水平面上に置いたときにおける当該平面を基準とする基準人工歯垂直断面は、咬合平面を基準とする基準人工歯垂直断面と多少ズレたりすることもあり得るが、そのズレは後述の好適な立体形状を規定するにあたり殆ど影響を与えず、無視し得るものである。
(7-4.新技術の基準義歯の好適な立体形状について)
このようにして決定される前記基準人工歯垂直断面を用いて好適な立体形状について、図8及び図10(a)並びに図9及び図11(a)を参照して説明する。前記犬歯含有形態である新技術の義歯の前記基準義歯部材として使用される新技術の基準義歯においては、人工犬歯31A3を基準人工歯とし、その尖頭31A3pを基準点としたときの「人工犬歯垂直断面」によって好適な立体形状が規定される。上記「人工犬歯垂直断面」は、図8のXA-XA´断面及び図9のXB-XB´断面に相当し、その断面形状が夫々図10(a)及び図11(a)に示されるものであるが、当該「人工犬歯垂直断面」における、前記ベース前方領域の床縁側先端から2mm下側における前記ベース前方領域の幅(厚み)が0.5mm~3mm、特に0.5mm~2mmであることが好ましい。また、これに加えて、前記人工犬歯垂直断面における、前記ベース前方領域の床縁側先端から4mm下側における前記ベース前方領域の幅(厚み)も0.5mm以上3mm以下、特に0.5mm~2mmであることが更に好ましい。上記幅(厚み)をこのような範囲とすることにより、実用的な強度が確保できると共に、事前チェックにおいて床翼を研削する手間をより削減することが可能となる。
さらに、新技術の基準義歯においては、上顎用基準義歯であるか、下顎用基準義歯であるかに応じて、人工犬歯垂直断面が夫々、次のような条件を満足することが好ましい。
(7-5.新技術の上顎用基準義歯の好適な立体形状について)
すなわち、図8及び図10(a)に示されるように、新技術の基準義歯が上顎用基準義歯である場合には、第一に、前記人工犬歯垂直断面(図8のXA-XA´断面に相当する。)における、前記ベース前方領域の床縁側先端と、前記基準点(人工犬歯31A3の尖頭31A3p)と、の高低差(「LA1」と略記することもある。)は、13mm~20mmであることが好ましく、15mm~17mmであることが更に好ましい。なお、上記高低差は、咬合平面PAを基準とし、当該咬合平面PAに対して垂直な方向を高さ方向とする高低差であり、この点は、好適な立体形状を規定する他の高低差についても同様である。
第二に、ベース口蓋床部の比較的前方部分における調整代が大きくなり、不適切接触をより起こり難くすることができると言う観点から、前記人工犬歯垂直断面において、ベース口蓋床部の最高点HAと前記基準点(人工犬歯31A3の尖頭31A3p)との高低差(「LA2」と略記することもある。)は、10mm~16mmであることが好ましく、13mm~15mmであることが更に好ましい。
第三に、前記ベース口蓋床部の最小厚さは、0.5mm~3mmであることが好ましく、0.5mm~2mmであることが更に好ましい。
また、図8及び図10(b)に示されるように、前記犬歯・第1大臼歯含有形態並びに全部床義歯(総義歯)である新技術の義歯の前記基準義歯部材として使用される新技術の基準義歯においては、前記人工犬歯垂直断面における条件を満足することに加えて、人工第1大臼歯31A6を基準人工歯とし、その近心頬側咬頭頂31A6pを基準点したときの「人工第1大臼歯垂直断面」(図8におけるYA-YA´断面に相当する。)が次のような条件を満足することが好ましい。
すなわち、第四に、前記人工第1大臼歯垂直断面における、前記ベース前方領域の床縁側先端と、前記基準点(人工第1大臼歯31A6の近心頬側咬頭頂31A6p)と、の高低差(「LA3」と略記することもある。)は、11mm~16mmであることが好ましく、12mm~14mmであることが更に好ましい。
第五に、ベース口蓋床部の比較的後方部分における調整代が大きくなり、不適切接触をより起こり難くすることができると言う観点から、前記人工第1大臼歯垂直断面において、ベース口蓋床部の最高点HA´と前記基準点(人工第1大臼歯31A6の近心頬側咬頭頂31A6p)との高低差(「LA4」と略記することもある。)は、11mm~18mmであることが好ましく、15mm~17mmであることが更に好ましい。
(7-6.新技術の下顎用基準義歯の好適な立体形状について)
新技術の基準義歯が下顎用基準義歯である場合には、図9及び図11(a)に示されるように、前記人工犬歯垂直断面(図9のXB-XB´断面に相当する。)における、前記ベース前方領域の床縁側先端と、前記基準点(人工犬歯31B3の尖頭31B3p)と、の高低差(「LB1」と略記することもある。)は、13mm~18mmであることが好ましく、15mm~17mmであることが更に好ましい。
第二に、ベース舌側床翼部の比較的前方部分における調整代が大きくなり、不適切接触をより起こり難くすることができると言う観点から、前記人工犬歯垂直断面において、前記ベース舌側床翼部の床縁側先端HBと、前記基準点との高低差(「LB2」と略記することもある。)は、9mm~13mmであることが好ましく、10mm~12mmであることが更に好ましい。
第三に、図9及び図11(b)に示されるように、前記人工第1大臼歯垂直断面(図9のYB-YB´断面に相当する。)における、前記ベース前方領域の床縁側先端と、前記基準点(人工第1大臼歯31B6の近心頬側咬頭頂31B6p)と、の高低差(「LB3」と略記することもある。)は、11mm~15mmであることが好ましく、12mm~14mmであることが更に好ましい。
第四に、ベース舌側床翼部の比較的後方部分における調整代が大きくなり、不適切接触をより起こり難くすることができると言う観点から、前記人工第1大臼歯垂直断面において、前記ベース舌側床翼部の床縁側先端HB´と、前記基準点との高低差(「LB4」と略記することもある。)は、11mm~17mmであることが好ましく、14mm~16mmであることが更に好ましい。
(7-7.好適な平面形状を有するときの好適な立体形状について)
前記したように新技術の基準義歯は、その平面形状が特許文献2に記載されているような形状であることが好ましい。そして、この場合には、前記LA1~LA4及び、LB1~LB4については、特許文献2に記載される前記基準長である線分:PQ(pq)の長さを1とし、下顎用基準義歯について上記線分pqの長さを1として、前記LA1~LA4及び、LB1~LB4の好適な長さを、新技術の基準義歯における好ましい範囲;より好ましい範囲の順で記載すると、次のようになる。
・LA1:0.28~0.50;0.32~0.43
・LA2:0.21~0.40;0.28~0.38
・LA3:0.23~0.40;0.26~0.35
・LA4:0.23~0.45;0.32~0.43
・LB1:0.21~0.35;0.25~0.33
・LB2:0.15~0.25;0.16~0.24
・LB3:0.18~0.29;0.20~0.27
・LB4:0.18~0.33;0.23~0.31
[8.新技術の作製方法]
新技術の作製方法では、新技術の義歯、特に、前記基準義歯床部材は、規格化された所定の形状(量産される所定の形状)又は当該形状と実質的に同一な形状を有し、前記調整部材は、装着者となる個別の患者の口腔内に前記義歯を装着した状態において、上顎及び下顎の歯(ここで、歯とは、前記義歯に固定された人工歯、及び前記患者が天然歯を有する場合における当該天然歯を意味する。)が緊密に相接する面である「咬合面」から決定される「咬合平面」が、患者の口腔内で医学的に存在すべき位置に配置されるように、前記患者の口腔内形状に応じて調整された形状を有する義歯、を作製する。
新技術の作製方法は、基本的な工程として、下記(A)基準義歯準備工程、(B)基準義歯決定工程、(C)築盛・転写工程、(D)硬化工程を含むことを第一の特徴とする。
(A)前記基準義歯部材となる、規格化された形状(量産される形状)を有する基準義歯を準備する基準義歯準備工程。
(B)前記基準義歯を、患者の口腔内で医学的に存在すべき位置に配置された咬合平面と想定される仮想咬合平面上の適切な位置に配置させるようにして、(1)患者口腔内に基準義歯を挿入して患者口腔内の粘膜と前記基準義歯との接触状態を確認するか、又は(2)患者口腔内模型を取り付けた咬合器内に基準義歯を挿入して、前記患者口腔内模型と前記基準義歯との接触状態を確認するか、により、使用上不適切な接触をする場合には、当該不適切な接触を起こさない別の形状を有する基準義歯を選択するか、又は接触しないように前記基準義歯における前記基準義歯床部材の形状を微調整することにより、使用する基準義歯の形状を決定する基準義歯決定工程。
(C)前記基準義歯決定工程で使用が決定された前記基準義歯における前記基準義歯床部材の粘膜面上に、前記調整部材を形成するための未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛し、次いで、前記硬化性義歯床用材料が築盛された前記基準義歯を、前記患者口腔内または前記咬合器内の前記仮想咬合平面上の適切な位置に配置して、前記患者口腔内の粘膜形状または前記患者口腔内模型の形状を前記硬化性義歯床用材料に転写すると共に辺縁形成を行って余剰の前記硬化性義歯床用材料を除去する、築盛・転写工程。
(D)築盛・転写工程を経た前記硬化性義歯床用材料を硬化させる硬化工程。
また、新技術の作製方法は、前記(C)築盛・転写工程、(D)硬化工程が、それぞれ複数の工程、具体的には、以下に示す各工程(C1)、(C2)及び(C3)、(D1)、(D2)及び(D3)を含むことを第二の特徴とする。
〔前記(C)築盛・転写工程に含まれる工程(C1)、(C2)及び(C3)〕
(C1)前記基準義歯床部材のベース中央領域に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛して、前記患者口腔内または前記患者口腔内模型の形状を転写する中央築盛・転写工程。
(C2)前記基準義歯床部材の前記ベース前方領域に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛して、前記患者口腔内または前記患者口腔内模型の形状を転写すると共に、床縁より延長させて辺縁形成を行う前方築盛・転写工程。
(C3)前記基準義歯床部材の前記ベース後方領域に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛して、前記患者口腔内または前記患者口腔内模型の形状を転写すると共に、床縁より延長させて辺縁形成を行う後方築盛・転写工程。
〔(D)硬化工程に含まれる工程(D1)、(D2)及び(D3)〕
(D1)中央築盛・転写工程を経た前記硬化性義歯床用材料を硬化させる工程。
(D2)前方築盛・転写工程を経た前記硬化性義歯床用材料を硬化させる工程。
(D3)後方築盛・転写工程を経た前記硬化性義歯床用材料を硬化させる工程。
新技術の作製方法は、前記(C)築盛・転写工程に含まれる前記複数の工程を特定の順番で多段階に分けて行うことを第三の特徴とする。すなわち、前記工程(C1)を行ってから前記工程(C2)及び前記工程(C3)を行う。(C2)の前方築盛・転写工程と、(C3)の後方築盛・転写工程硬化工程は、同時に行っても良く、個別に行っても良い。
(C1)から(C3)の各工程において、患者口腔内の粘膜形状または患者口腔内模型の形状を転写する際には、未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛された基準義歯を咬合平面と想定される平面上の適切な位置に配置する必要がある。最初に行う(C1)工程においては、ベース中央領域の粘膜面は、曲率半径が小さいことに起因して、位置決めし易いというメリットを有する反面、僅かな力を加えただけでこの部分を支点にして前後が上下にブレ易い。このため、このようなブレの発生を抑制して精度良く、前記適切な位置に配置するためには、前記したような図6に示すような位置合わせ冶具200A(200)を用いることが好ましい。
なお、上顎用義歯と下顎用義歯をセットで作製する場合には、上顎用又は下顎用のどちらか一方のベース中央領域の粘膜面に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛し、硬化性義歯床用材料を築盛した基準義歯を位置合わせ冶具200Aに保持してから前記患者口腔内または前記咬合器内に挿入して、前記適正な位置に保持して工程(C1)の転写を行うことが好ましい。上下の顎間の関係を再現するという観点からすると、先に上顎用義歯を作製する場合は上顎用基準義歯のみを位置合わせ冶具200Aに保持して転写を行い、次に行う下顎用基準義歯の転写においては上顎用基準義歯及び下顎用基準義歯を同時に(セットで)位置合わせ治具200Aに保持して転写を行うことがより好ましい。なお、上顎用義歯と下顎用基準義歯はどちらを先に作製しても構わない。
なお、工程(C1)終了後の工程(C2)及び/又は工程(C3)における位置合わせ(適切な位置での保持)は、ブレが少なく容易化されるので、熟練者であれば位置合わせ冶具を用いることなく上顎用、下顎用別々に行うこともできる。また、熟練者でなくとも、前記位置合わせ冶具200Aを用いることにより、容易に高精度の転写を行うことができる。このとき、上顎用又は下顎用の何れか一方の基準義歯を保持して工程(C2)及び/又は工程(C3)を行っても良いが、より確実に高精度の転写を行うためには、両方の基準義歯を位置合わせ冶具200Aに保持して行うことが好ましい。
(D)硬化工程は、それぞれの前記築盛・転写工程終了後に、それら築盛・転写工程に対応したそれぞれの前記硬化工程(D1)乃至(D3)を個別に行っても良いし、又は、終了した前記築盛・転写工程に対応する全ての築盛・転写工程終了後に同時に行っても良い。例えば、工程(C1)及び工程(D1)終了後に工程(C2)及び(C3)を行う場合、(D2)の硬化工程と、(D3)の硬化工程は、両築盛・転写工程終了後に同時に行っても良く、また各築盛・転写工程終了後に個別に行っても良い。また、工程(C1)終了後に工程(D1)を行うことなく工程(C2)及び(C3)を行い、その後、1回でまとめて(D1)、(D2)及び(D3)を同時に行っても良い。
上記新技術の作製方法では、前記硬化性義歯床用材料の形状を前記調整部材の形状とするに際し、第1回目として前記工程(C1)を行えばよく、その後に前記築盛・転写工程(C1)から(C3)を複数回繰り返して行ってもよい。
また、前記前方築盛・転写工程及び前記後方築盛・転写工程終了後に、前記基準義歯床の粘膜面側の表面上に未硬化状態の前記硬化性義歯床用材料を追加して当該粘膜面側表面の形状を修正するウォッシュ工程を更に含んでも良い。
上記ウォッシュ工程は、例えば、前記前方築盛・転写工程及び前記後方築盛・転写工程終了後であって、最終的な硬化工程を行う前、または硬化工程(D1)、(D2)及び(D3)終了後に、前記基準義歯床の粘膜面側の表面上に未硬化状態の前記硬化性義歯床用材料を微量追加して、より良い適合性が得られるように形状を微修正してから硬化させることによって行うことができる。
新技術の作製方法では、前記(B)基準義歯決定工程において基準義歯部材を咬合平面と想定される平面上の適切な位置に配置させるようにして、患者口腔内又は患者口腔内模型を取り付けた咬合器内に挿入し、また、(D)築盛・転写工程において、基準義歯床部材の所定の個所に所定の調整部材用の硬化性義歯床用材料が築盛された基準義歯部材を、患者口腔内または前記咬合器内の咬合平面と想定される平面上の適切な位置に配置する。
このとき、製造に手間や時間を要する患者口腔内模型を製造する必要が無いという観点からすると、患者口腔内に挿入することが好ましいが、技工所などで多数の患者の義歯を製造する場合には、患者口腔内模型製造の手間や時間はかかるものの、一度に並行して多数の義歯を製造できるので、患者口腔内模型を装着した咬合器を使用することが好ましい。
この場合、咬合器としては、模型上で顎運動や咬合のさまざまな位置を再現する装置であれば特に限定されない。たとえば、顎運動時の下顎頭が示す運動経路を再現する顆路型咬合器、顆路型咬合器の中でも非調節性咬合器(平均値咬合器)や調節性咬合器(全調節性咬合器、半調節性咬合器)、下顎頭に相当する顆頭球の位置が異なり、顆頭球が下弓に連結するアルコン型や、顆頭球が上弓に連結するコンダイラ―型、下顎頭が示す運動経路は再現しないが上下開閉可能な非顆路型咬合器、等が咬合器として使用できる。また、患者口腔内模型は、カスタマイズ法のステップ1及び2に準じて作製することができる。
前記(B)基準義歯決定工程は前記した事前チェックに該当するものであり、新技術の方法においては本歯発明の基準義歯を基準義歯部材として用いた場合には、当該工程で研削による調整が必要とされるケースの発生頻度が低く(後述の「非挙上率」参照。)、殆どのケースで本歯発明の基準義歯を基準義歯部材としてそのまま使用できる。仮に研削による調整が必要となる場合であっても、研削量が極めて少なくて済む。このため、作製効率が大幅に向上する。
また、新技術の作製方法は、前記第三の特徴として示したように、最初にベース中央領域の粘膜面の適合化を行うことにより大まかな位置決めを行う。次に、変動幅が少ない状況で前方部(ベース前方領域)及び後方部(ベース後方領域)の粘膜面の適合化並びに辺縁(床縁)の形成及び適合化を行うことにより、熟練した手技を有さない者でも容易に高精度の位置決めができるようになっている。しかも基準義歯床の前方床翼部の高さや、基準義歯床の後方部の長さを裏装材等の硬化性義歯床用材料で補いながら(延長しながら)患者粘膜との境界が自然な状態となるように境界の適合化を図るこができる。
前記新技術の義歯の作製方法が、上顎用義歯である新技術の義歯を作製する方法である場合には、前記(A)基準義歯準備工程において、基準義歯部材となる既製の基準義歯として前記上顎用基準義歯を準備すればよく、下顎用義歯である新技術の義歯を作製する方法である場合には、前記(A)基準義歯準備工程において、基準義歯部材となる既製の基準義歯として前記下顎用基準義歯を準備すればよい。
前記新技術の義歯の作製方法における前記工程(A)は、単に部材となる基準義歯を準備する工程である。そこで、以下、それぞれ全部床義歯(総義歯)に対応する上顎用基準義歯及び下顎用基準義歯をセットで用いて上顎用義歯及び下顎用義歯をセットで作製する例に、工程(B)、(C)及び(D)について、図を参照して詳しく説明する。なお、新技術の作製方法は、このような例に限定されるものではない。
(B:基準義歯決定工程)
上述した上顎用基準義歯10Aおよび/または下顎用基準義歯10Bを患者の口腔内で医学的に存在すべき位置に配置された咬合平面と想定される仮想咬合平面PA(図7参照)上の適切な位置に配置させるようにして、図5に示すような咬合器100を用いて、患者口腔内模型150と上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bとの接触状態を確認する(以下、このような咬合器を用いた接触状態の確認を「挙上確認」ともいう。)。
図5には、咬合器100に患者口腔内模型150、具体的には上顎模型151と下顎模型152とから構成される患者口腔内模型150が取り付けられた状態が示されている。図5に示す患者口腔内模型150を取り付けた状態の咬合器100内に、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを挿入して、患者口腔内模型150と上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bとの接触状態を確認する(挙上確認をする)場合には、図6に示すような位置合わせ冶具200Aが用いることが好ましい。
この位置合わせ冶具200Aには、基準義歯保持部201と、当該基準義歯保持部201に連結されている柄部202とが設けられている。基準義歯保持部201には、上顎用基準義歯10Aを保持する上顎義歯保持凹部201Aと、下顎用基準義歯10Bを保持する下顎義歯保持凹部201Bとが設けられている。また、柄部202は、歯科技工士や歯科医等が咬合器100の外、または患者の口腔外から上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bをセットする際に容易に操作できるように、ある程度の長さを有している。このため、技工士等の作業者は、柄部202を用いて、容易に上顎用基準義歯10Aおよび/または下顎用基準義歯10Bを仮想咬合平面PA(図7参照)上の適切な位置に配置させることができる。なお、患者の口腔内に挿入して接触状態の確認する場合にも、同様の理由から、位置合わせ冶具200Aを使用することが好ましい。
上記挙上確認では、上顎用基準義歯10Aと下顎用基準義歯10Bを仮想咬合平面PA(図5参照)で噛み合うようにして、これら上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを静止させたときの、咬合器100の指導ピン101の浮き上がり量(「挙上値」ともいう。)で接触状態を評価することができる。具体的には、上記の浮き上がり量(挙上値)が0mm以下であれば、不適切な接触が無いと評価され研削調整が不要であり、研削のための作業時間を削減できる。一方、挙上値が0mmを越える場合には不適切な接触が存在し、その値が大きいほど研削による研削調整量が大きいと評価される。このことから、指導ピン101の浮き上がり量(挙上値)が0mm以下のものを合格とし、次工程に進む。なお、上記量(挙上値)が0mm未満であるとは、指導ピン101の位置が下がるわけではなく、基準義歯と模型との間に隙間が存在する場合を意味する。このときの隙間は後の工程で調整部材によって埋められることになる。
ここで、前記したような寸法的要件を満たす、新技術の上顎用基準義歯10Aおよび新技術の下顎用基準義歯10Bを用いて、挙上確認を行った場合には、上述した指導ピン101の浮き上がり量は、0mm未満であるか、または若干の研削で済む状態となる。
なお、上述の説明では、咬合器100を用いて挙上確認を行っている。しかしながら、咬合器100を用いて挙上確認を行わずに、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを直接的に患者口腔内に挿入し、仮想咬合平面PA(図7参照)上の適切な位置に配置させ、その状態で、患者口腔内の粘膜と上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bの接触状態を確認するようにしても良い。この接触状態の確認も、(B)基準義歯決定工程に対応する。
また、(B)基準義歯決定工程では、図6に示すような位置合わせ冶具200Aに上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを保持させている。しかしながら、上記のような位置合わせ冶具200Aを用いずに、咬合器100に上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bをセットしたり、患者口腔内に上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bをセットしたりしても良い。
また、この(B)基準義歯決定工程では、上述したような接触状態の確認において、実際の咬合面が適切な位置からずれる場合には、基準義歯(上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10B)を研削する調整を行うことで適切な位置に配置するようにしてもよく、また、上記位置ずれを起こさない別の基準義歯を選択してもよい。
(C:築盛・転写工程)
本工程では、前記(B)基準義歯決定工程で使用が決定された基準義歯における前記基準義歯床部材、たとえば上顎用基準義歯10Aの上顎用基準義歯床20Aの粘膜側表面上に、前記調整部材を形成するための未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛する。
上記硬化性義歯床用材料の築盛は、通常、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを前記位置合わせ冶具200Aから取り外して行われるが、位置合わせ治具200Aにセットしたままで行っても良い。
なお、本工程は、前記したように(C1)、(C2)及び(C3)を含み、その内容及び実行順序は既に説明したとおりである。
また、築盛・転写工程では、築盛された前記硬化性義歯床用材料を、前記調整部材の形状とする。たとえば、硬化性義歯床用材料を築盛した上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを前記位置合わせ冶具200Aに再びセットし、これを咬合器100内の適切な位置に配置する。その後に、義歯床用材料を上顎模型151および下顎模型152に押し当てて、上顎模型151および下顎模型152を噛み合わせた状態で、これらの形状を、硬化性義歯床用材料に転写する。かかる転写後に、位置合わせ冶具200に上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bをセットしたままの状態で、咬合器100内から一度、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを外に出す。その後に、余剰の硬化性義歯床用材料を、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bから除去する。
このとき、咬合器100を用いずに、硬化性義歯床用材料が築盛された上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを、位置合わせ冶具200Aを用いて、直接的に患者の口腔内に押し当てて、患者の口腔内の形状の転写を行うようにしても良い。また、これら操作は、位置合わせ冶具200Aを用いずに行うことも可能である。
(D:硬化工程)
本工程では、前記(C)築盛・転写工程で前記調整部材の形状とされた前記硬化性義歯床用材料を硬化させて前記調整部材を形成すると共に当該調整部材を前記基準義歯床部材と一体化させる。
重合硬化は、硬化性義歯床用材料に含まれる重合開始剤の種類に応じて適宜決定される。たとえば光重合開始剤を用いた光重合タイプの場合、開始剤を活性化する紫外線等の光を照射することで、義歯床用材料を硬化させることができる。また、熱重合開始剤を用いた熱重合タイプの場合には加熱することによって、義歯床用材料を硬化させることができる。また、化学重合開始剤を用いた化学重合タイプの場合には所定の時間おくことで、義歯床用材料を硬化させることができる。
以上のような各工程を経ることで、上顎用基準義歯10Aおよび下顎用基準義歯10Bを用いた義歯を作製することができる。
[9.新技術の実験的評価]
以下に、新技術を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、新技術はこれらにより何等制限されるものではない。
〔9-1.新技術の義歯及び新技術の基準義歯について〕
実施例1~12及び比較例1~2
(1)基準義歯の作製
ロストワックス法で作製した石膏型を用いて、ポリメチルメタクリレート樹脂を射出成形することにより、表1に示す表面形状および表2に示す部分断面形状を有する基準義歯床を作製した。次に、作製された基準義歯床に対して、人工歯をそれぞれ配列して、総義歯タイプの上顎用基準義歯と下顎用基準義歯を作製した。
なお、表2におけるOM、P1D1等の記号は、(7-1.好適な平面形状について)で説明した各線分を意味し、各記号欄の数値は、当該記号の線分の相対長さ(線分PQ又は線分pqの長さを1としたときの長さ)を意味する。また、表3におけるLA1~LA4及びLB1~LB4は、(7-5及び7-6の.新技術の上顎用基準義歯及び下顎用基準義歯の好適な立体形状について)における定義にしたが合うものである。また、厚さは、上顎用基準義歯のベース口蓋床部20A3の最小厚さを意味する。
Figure 0007381075000001
Figure 0007381075000002
なお、後述するように、比較例1~2の基準義歯を用いて作製された義歯は、新技術の義歯に該当しない。
(2)義歯の製造
(2-1)患者口腔内模型の準備
表3に示す互いに形状の異なる20種(20組)の“無歯顎の上顎模型および下顎模型のセットで構成される患者口腔内模型”を準備した。
Figure 0007381075000003
なお、上記20種(組)の患者口腔内模型について、上顎用患者口腔内模型及び下顎用患者口腔内模型夫々についての形状のバラツキの状態を表3に示す。なお、上記形状のバラツキの状態は、各患者口腔内模型について「前部歯槽頂高」及び「臼歯部歯槽頂高」、並びに「7-1.好適な平面形状について」で説明した線分PQ(上顎模型の場合)又は線分pq(下顎模型の場合)を計測し、その最小値:min(mm)、最大値:max(mm)及び標準偏差として示している。ここで、「歯槽頂高」とは歯槽頂から咬合平面までの垂直的距離を意味する。そして、上顎模型においては、「切歯乳頭の最前方部」から「左側翼突上顎切痕と右側翼突上顎切痕を結ぶ線と正中口蓋縫線との交点」までの距離を三等分した箇所の、前方3分の1における歯槽頂高を「前歯部歯槽頂高」とし、後方3分の1における歯槽頂高を「臼歯部歯槽頂高」としている。また、下顎模型においては、「歯槽頂の正中部」から「左側臼後隆起の前縁と右側臼後隆起の前縁を結ぶ線と正中線との交点」までの距離を三等分した箇所の、前方3分の1における歯槽頂高を「前歯部歯槽頂高」とし、後方3分の1における歯槽頂高を「臼歯部歯槽頂高」としている。
(2-2)義歯の作製
上記の表1及び表2で挙げられている各実施例及び各比較例の基準義歯を用いて、各例において、それぞれ前記20組の患者口腔内模型に適合する義歯を計20組作製した。具体的には、咬合器として図5に示す咬合器を、位置合わせ冶具として図6に示す位置合わせ冶具を、また、上記患者口腔内模型として、表3に示す互いに形状の異なる20種(20組)の“無歯顎の上顎模型および下顎模型のセットで構成される患者口腔内模型”を準備した。次いで、前記20組の内の1組の患者口腔内模型を前記咬合器にセットし、この患者口腔内模型適合する義歯を次のようにして作製した。
すなわち、既に使用する基準義歯は準備されているので、先ず前記位置合わせ冶具に上顎用基準義歯を保持して不適切接触の有無を確認し、不適切接触が認められたとき(不適と判断された場合)には、それがなくなるまで(適となるまで)ハンディ研削機を用いた研削調整を行った(B基準義歯決定工程)。その後、下顎についても同様にして工程(B)基準義歯決定工程を行った。次に、上顎用基準義歯のベース中央領域の粘膜面に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛し、当該築盛後に得られた上顎用基準義歯のみを前記位置合わせ冶具に保持してから前記咬合器内に挿入して、前記適切な位置に保持して工程(C1)の転写を行った。その後、下顎用基準義歯についてもベース中央領域の粘膜面に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛し、当該築盛後に得られた下顎用基準義歯と既に転写済の上顎用基準義歯を同時に(セットで)前記位置合わせ冶具に保持してから前記咬合器内に挿入して、前記適切な位置に保持して工程(C1)の転写を行った。このようにして工程(C1)の転写を行った後、工程(D1)を行うことなく、(C2)及び(C3)を行った。このとき、(C2)及び(C3)では、位置合わせ冶具を用いて上顎用、下顎用別々に咬合器内に挿入して、前記適切な位置に保持して転写と辺縁形成を行った。そして、ウォッシュ工程を行ってから、最後に(D)工程として、全ての硬化性義歯床用材料(光硬化性裏装材:トクソーライトリベース、トクヤマデンタル社製)を一度に硬化させて、上顎・下顎一組の義歯を作製した。さらに他の患者口腔内模型についてもこのような作業を繰り返し、最終的に20組の全ての患者口腔内模型に適合する上顎・下顎用20組の義歯を、新技術の作製方法により作製した。
実施例1~12では、前記前方領域における床縁の全領域の床縁側先端領域が前記前方調整部材で構成され、前記後方領域における床縁の全領域の床縁側先端領域が前記後方調整部材で構成される新技術の義歯が作製されている。これに対し、比較例1~2では、新技術の作製方法で義歯を製造したものの、(B)基準義歯決定工程において、ベース前方領域の床縁近傍で「不適切接触」が確認されたため、研削調整を行って義歯を作製したところ、作製された義歯の前方領域の床縁は、基準義歯で構成され、前方床翼部の研磨面には前方調整部材が露出していなかった。このため、比較例1~2で作製された義歯は、新技術の義歯に該当しないものとなり、従って比較例1~2の基準義歯は、新技術の基準義歯に該当しないものとなっている。
(3)基準義歯及び義歯の評価
上記義歯の作製工程において、使用した基準義歯の前記患者口腔内模型に対する適合性(非挙上率及び適合率)、作製時間及び調整時間を評価すると共に、得られた義歯の「犬歯前方床翼部」の研磨面に占める前方調整部材の割合(以下、単に「高さ調整代率」ともいう。)(%)を評価した。
以下、各評価項目について説明する。
<非挙上率の評価について>
非挙上率とは、前記新技術の義歯の作製方法の(B)基準義歯決定工程において、患者に痛みを発生させるような粘膜等への不適切な当たり方をする部分が存在するために研削による調整が必要であると判明されるケースの“発生頻度の低さ”を表す指標である。本実施例(実施例1~12)及び比較例(比較例1,2)では、現実的試験方法として(多くの患者の協力を要しない方法として)、患者の多様性を反映し得ると考えられる、互いに形状の異なる前記20種(20組)の“無歯顎の上顎模型および下顎模型のセットで構成される患者口腔内模型”について、咬合器を用いた(B)基準義歯決定工程(挙上値測定による評価)を行ったときに、合格となるケースの発生割合を非挙上率としている。
上記非挙上率は、評価対象となる一組の上顎用基準義歯と下顎用基準義歯とのセット(組み合わせ)について、それがどのくらい多様な患者に適用できるかを示す指標(別言すれば、さまざまな患者への適合可能範囲の広さを評価する指標)となるユニバーサル度を反映した評価指標であるともいえる。非挙上率の値が高いほどユニバーサル度は高く(さまざまな患者への適合可能範囲は広く)なり、80%以上であれば高いと判断されるが、90%以上であることが一層好ましく、100%であることが最も好ましい。
上記挙上値測定による評価は次のようにして行った。すなわち、先ず、互いに形状の異なる20種(20組)の中から任意に選んだ1組の無歯顎の上顎模型151および下顎模型152から構成される患者口腔内模型150を、それぞれ図5に示すような咬合器100に装着する。その後に、図6に示すような位置合わせ冶具200Aに、上顎用基準義歯及び下顎用基準義歯を適切な噛み合わせ状態となるように保持した。次いで、これを噛み合わせ状態を維持したまま咬合器100内に挿入し、咬合平面PAで噛み合うように配置したときの指導ピン101の浮き上がり量(挙上値)を測定し、合否を評価する。このようにして1組の患者口腔内模型150の評価終了後、位置合わせ冶具200Aに保持する患者口腔内模型150を残りの19組の中から選んだ任意の1組に付け替え、同様にして合否評価を行い、更にこのような評価を繰り返して、最終的に全ての組(20組)について合否評価を行い、その結果に基づいて非挙上率を求めた。
<適合率の評価について>
適合率は、前記新技術の義歯の作製方法の(C)築盛・転写工程によって前記硬化性義歯床用材料が築盛された基準義歯を患者口腔内模型150がセットされた咬合器100内の適切な位置に配置できるか否かで適否をするときに、「適」と判断されるケースの発生頻度の高さを表す指標である。
本実施例(実施例1~12)では、非拳上率測定と同様に、互いに形状の異なる20種(20組)の患者口腔内模型150を使用し、適切な位置(咬合平面PA上)に配置できるかどうか、を調べた。ただし、立体形状の影響を少なくし、平面形状の影響を見るために、上顎用基準義歯と下顎用基準義歯とは噛み合わせた状態ではなく、それぞれ単独で評価を行った。具体的には、無歯顎の上顎模型151および下顎模型152から構成される患者口腔内模型150がセットされた咬合器100に、図6に示すような位置合わせ冶具200Aを用いて、咬合器100に取り付けられた上顎模型151(又は下顎模型152)に硬化性義歯床用材料を築盛した上顎用基準義歯(又は下顎用基準義歯)を、それぞれ単独で挿入し、適切な位置に配置できるか否かを判断した。このような操作を20種の患者口腔内模型150について行い、配置できた模型数の割合を適合率とした。
<作製時間:tPの評価について>
作製時間は、次のようにして求めた。すなわち、先ず、参考例として、上述した互いに形状の異なる20種(20組)の前記患者口腔内模型150に適合する義歯を、カスタマイズ法により作製し、各義歯を作製するのに要した時間(分)を計測した。この計測値に基づいて1つの義歯を作製するのに要した平均時間(分)を求めて、これをtP-Custとした。次に、各実施例及び各比較例における上顎用基準義歯および下顎用基準義歯を用いて、互いに形状の異なる20種(20組)の前記患者口腔内模型150に適合する義歯を製作し、同様にして、各実施例及び比較例について1つの義歯を作製するのに要した時間の平均(分)を求めて、これをtP-Expとした。そして、tP-ExpをtP-Custで規格化した百分率:(tP-Exp/tP-Cust)×100(%)を求め、この値で作製時間を評価した。この値が低いほど、カスタマイズ法に対して義歯作製時間が短縮されたことになる。
なお、実施例における新技術の作製方法では、工程(B)及び(C)を患者口腔内模型に挿入して行っている。このため、患者口腔内模型の作製に要する時間(カスタマイズ法のステップ1「印象材を用いて患者の口腔内の印象を採得する」及びステップ2「該印象を用いて石膏模型を作製する」に要する時間に対応する。)は、夫々上記tP-Cust及びtP-Expから除いている。新技術の作製方法で、前記工程(B)及び(C)を患者口腔内に直接挿入した場合には、患者口腔内模型の作製に要する時間は不要になるので、その分だけtP-Expを短くすることができ、その場合には新技術の効果がより顕著となる。
作製時間は、基準義歯の平面形状の違いによる影響を排除して、立体形状の違いによる効果を確認するためには、同一の平面形状を有する基準義歯間(例えば、実施例1~10、及び比較例2)で比較する必要がある。
<調整時間:tAの評価について>
調整時間は、次のようにして求めた。すなわち、上顎用基準義歯および下顎用基準義歯を用いて、互いに形状の異なる前記20種(20組)の患者口腔内模型150に適合する義歯を作製したときにおいて、前記(B)基準義歯決定工程で適と判断されるまで(不適となった場合は研削調整を行い、再び基準義歯決定工程を行い、適となるまでこれを繰り返す。)に要した平均時間を調整時間とした。
調整時間の評価は、比較例1における調整時間(分)を基準時間tA-Sとし、各実施例及び比較例2における調整時間(分)をtA-Expとした。そして、tA-Expを前記基準時間tA-Sで規格化した百分率:(tA-Exp/tA-S)×100(%)で評価した。この調整時間の値が低いほど、比較例1に比べて義歯作製時間が短縮されたことになる。
なお、調整時間についても基準義歯の平面形状の違いによる影響を排除して、立体形状の違いによる効果を確認するためには、同一の平面形状を有する基準義歯間(例えば、実施例1~10、及び比較例2)で比較する必要がある。さらに、同じ平面形状を有する基準義歯であっても、調整時間は、その立体形状の違いによる影響を受け、さらに、この調整時間への影響は、前記作製時間にも反映される。
<高さ調整代率の評価について>
高さ調整代率とは、上顎用基準義歯および下顎用基準義歯を用いて、互いに形状の異なる前記20種(20組)の患者口腔内模型150に適合する義歯を作製したときにおいて、患者に痛みを発生させるような粘膜等への不適切な当たり方をする部分が存在せず、調整部材を追加する調整代が存在するかを表す指標である。本実施例及び比較例では、基準義歯の犬歯前方床翼部の高さに対する調整部材の高さの割合を高さ調整代率としている。
高さ調整代率の評価は、義歯の歯頚部から床縁までの高さ(mm)を基準高さhSとし、基準義歯の床縁から義歯の床縁までの高低差(mm)を調整部材の高さhAdjとした。そして、調整部材の高さhAdjを前記基準高さhSで規格化した百分率:(hAdj/hS)×100(%)で評価した。この高さ調整代率が小さいほど調整代が少なく、0%の場合は基準義歯を削って高さを調整したことになる。
得られた評価結果を表4に示す。
Figure 0007381075000004
表4に示されるように、実施例1~12は、表1及び表2に記載する形状の基準義歯を作製し、適合率、非挙上率、作製時間、調整時間、高さ調整率を評価した。評価結果は表4に示すように、良好な結果となった。
一方、前記20組の内、無作為に選択した1組の患者口腔内模型に適合するようカスタマイズ法で作製した義歯を基準義歯として用いて、20人の義歯を作製した比較例1では、実施例と異なり調整代が設けられていないため、19組の患者口腔内模型では不適切接触が避けられず、高さと厚さの大きい基準義歯を削って口腔内に合わせていく必要があり、高さ調整代率は0%となり、調整時間、作製時間ともにかなり長くなっている。
また、平面形状は実施例1と同様であるが、高さと厚さの大きい基準義歯を用いて義歯を作製した比較例2では、調整代がほとんど設けられておらず、患者口腔内模型と接触する。このため、高さと厚さの大きい基準義歯を削って口腔内に合わせていく必要があり、高さ調整代率は0%となり、実施例1と比較して調整時間、作製時間ともにかなり長くなっている。
なお、参考例は、前記2020組の患者口腔内模型の中から無作為に選択した1組の患者口腔内模型に適合するようカスタマイズ法で義歯を作成したときの作成時間を示している。
〔9-2.新技術の作製方法について〕
実施例1~12
前記したように実施例1~12は、新技術の作製方法により義歯を作製した例であり、(C)築盛・転写工程を多段に分けて、工程(C1)の転写を行った後、工程(D1)を行うことなく、(C2)及び(C3)を行っている。(C2)及び(C3)では、位置合わせ冶具を用いて、それぞれ未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛された上顎用、下顎用別々に咬合器内に挿入して、前記適切な位置に保持して転写と辺縁形成を行った。このとき、失敗することなく一度で適切な位置で転写及び辺縁形成を行うことができた。
比較例3
本比較例は、(C)築盛・転写工程を1段階で行い、その時の様子を確認した例である。具体的には、実施例1と同様の基準義歯を用いて、上顎用基準義歯のベース中央領域、ベース前方領域及びベース後方領域の粘膜面上に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛した。これら全ての硬化性義歯床用材料が築盛された上顎用基準義歯を位置合わせ冶具に保持した後、これを咬合器内に挿入して、その粘膜面を上顎用患者口腔内模型の粘膜面に押しつける以外は同様にして、転写を行った。このとき、位置が定まっていない状態で辺縁形成を行った。このため、適切な位置からズレやすく、挿入時にベース後方領域に盛った硬化性義歯床用材料が模型と接触して変形したり、僅かに傾いて押し付けた際に押出された硬化性義歯床用材料が内側に移動して余剰の硬化性義歯床用材料が基準義歯床の辺縁から上手くはみ出さなくなってしまったりしたことなどにより、一度では満足のゆく転写を行うことができなかった。最終的に満足のゆく転写及び辺縁形成ができるまでには、辺縁形成を行うまでに、1回目の転写後に咬合器内から取り出し、余剰の硬化性義歯床用材料を少量取り除いたり、部分的に硬化性義歯床用材料を追加したりしてから再度挿入して次の転写を行う言う操作を数回繰り返す必要があった。そのため、実施例1と比較して作製時間がかなり長くなってしまった。
<<義歯作製用治具>>
上述した新技術の基準義歯として総義歯タイプの基準義歯を用いて総義歯を作製する場合、基準義歯を、人工歯側を下向きにして咬合平面として想定される平面上に配置したときに、当該平面に対して垂直で、且つ人工歯を構成する人工犬歯の尖頭を通る、ベース前方領域の研磨面に対する法線方向に沿った面で切断した縦断面(以下、単に「縦断面」と略す場合がある)において、基準義歯床部材のベース前方領域の床縁側先端から2mm下側におけるベース前方領域の幅(以下、単に、「ベース前方領域の幅」と略す場合がある)を0.5mm以上3mm以下とすることが特に好ましい。ベース前方領域の幅を上記範囲に設定することにより、実用的な強度が確保できると共に、事前チェックにおいて床翼を研削する手間をより削減することが可能となるためである。
一方、ベース前方領域の幅を上記範囲に設定した場合、基準義歯全体の寸法形状のバランスを取るため、ベース前方領域の幅以外のその他の部位における幅・厚みなどもベース前方領域の幅に概ね合わせる形で設定されることになる。
しかし、ベース前方領域の幅を上記範囲に設定した総義歯タイプの基準義歯を用いて総義歯を作製しようとした場合、作業者によって作業効率・品質がばらつくことがわかった。このばらつきについて本発明者らがさらに調査したところ、(C)築盛・転写工程のうち、(C2)前方築盛・転写工程および(C3)後方築盛・転写工程において、経験豊富な作業者に比べて、相対的に、経験の浅い作業者の作業効率・品質が大きく低下する傾向にあり、その原因は、経験の浅い作業者では、未硬化状態の硬化性義歯床用材料の築盛量のばらつきが大きいことにあることが分かった。なお、ベース前方領域の幅を上記範囲に設定した総義歯タイプの基準義歯では、調整部材による調整代をより大きくすべく基準義歯全体の寸法形状はより小さくなっているため、(C)築盛・転写工程における築盛量は増大することとなる。このような状況において、経験の浅い作業者の場合では、(C2)前方築盛・転写工程、および、(C3)後方築盛・転写工程において適正な築盛量を見積もることが困難になるものと推測される。
一方、新技術の(C2)前方築盛・転写工程および(C3)後方築盛・転写工程では、様々に形状が異なる個々の患者の口腔形状に対して、未硬化の硬化性義歯床用材料が築盛された基準義歯を適合させるべく繊細な作業を可能とするために、作業者の手作業によりベース前方領域およびベース後方領域に未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛される。そして、これら工程では、まず最初に、(C2)前方築盛・転写工程においては、ベース前方領域の主に唇側床縁および頬側床縁に沿って未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛され、(C3)後方築盛・転写工程においては、ベース後方領域の主に喉側床縁に沿って未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛される。
本発明者らは、上述した事情を踏まえて、床縁に沿って未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛する際に、適正な築盛量を見積もることが困難な経験の浅い作業者でも、適正な築盛量を安定して再現できることが重要であると考え、以下に説明する本実施形態の義歯作製用治具を見出した。
すなわち、本実施形態の義歯作製用治具は、総義歯タイプの基準義歯を用いて総義歯を作製する際に用いる義歯作製用治具であって、基準義歯床部材の唇側床縁近傍および頬側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な前方溝部、および、基準義歯床部材の喉側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な後方溝部、からなる群より選択される少なくともいずれか一方の溝部を有することを特徴とする。
本実施形態の義歯作製用治具は、床縁に対応した前方溝部および/または後方溝部を有する。ここで、義歯作製用治具が前方溝部を有する場合、(C2)前方築盛・転写工程を実施する際に、まず、前方溝部に未硬化状態の硬化性義歯床用材料を充填する。次に、基準義歯の唇側床縁および頬側床縁が、前方溝部に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料中に貫入するように、基準義歯を義歯作製用治具に押し付ける。続いて、基準義歯を義歯作製用治具から取り外す。この際、前方溝部に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料は、基準義歯側に転写される。この点は、義歯作製用治具が後方溝部を有する場合において、(C3)後方築盛・転写工程を実施する場合も同様である。
したがって、本実施形態の義歯作製用治具を用いて(C2)前方築盛・転写工程および/または(C3)後方築盛・転写工程を実施する場合、溝部の幅および深さに対応した所定の築盛量の未硬化状態の硬化性義歯床用材料が、床縁に沿って築盛されることになる。このため、床縁に沿って未硬化状態の硬化性義歯床用材料を築盛する際に、適正な築盛量を見積もることが困難な経験の浅い作業者でも、本実施形態の義歯作製用治具を用いれば適正な築盛量を安定して再現できる。それゆえ、本実施形態の義歯作製用治具では、作業者の経験度に関係無く作業効率・品質の低下を抑制できる
また、本実施形態の義歯作製用治具を用いて(C2)前方築盛・転写工程および/または(C3)後方築盛・転写工程を実施する場合、義歯作製用治具から、(唇側床縁および頬側床縁、ならびに/または、喉側の)床縁に沿って未硬化状態の硬化性義歯床用材料が転写された基準義歯を取り外す際に、容易に取り外せることも重要である。このような観点からは、少なくとも溝部の縁部を構成する材料のJIS K7215(1986)に準拠して測定されたショアD硬さが80以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。溝部の縁部を構成する材料のショアD硬さを80以下とすることにより、縁部が柔軟性に優れた弾性変形し易い部材で構成されるため、義歯作製用治具から、基準義歯を取り外す際に、溝部の縁部に未硬化状態の硬化性義歯床用材料が引っ掛かって、取り外し難くなるのをより確実に防ぐことが容易になる。なお、ショアD硬さが80以下の材質としては、たとえば、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、テフロン樹脂などを挙げることができる。また、硬さの下限値は特に限定されるものではないが、材料入手の容易性などの実用上の観点からは、ショアA硬さが20以上であることが好ましい。なお、参考までに述べれば、JIS K7215(1986)では、ショアD硬さが20未満の値を示す場合は、ショアA硬さで表記されることとなっているため、上述したように硬さの下限値は、ショアA硬さで表記している。
さらに、取り外しに際して、未硬化状態の硬化性義歯床用材料と溝部の壁面との離形性が高いことも重要である。離形性が低い場合は、取り外しに際して、溝部に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料の一部が、溝部壁面に付着してしまうため、適正な築盛量をより正確かつ安定的に再現することが困難となり易いためである。このような観点から、溝部壁面の接触角は10°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、さらに撥液性がより高くなるため180°に近ければ近いほどよい。また、接触角の実用上の上限は180°未満である。ここで、接触角の測定には、(C2)前方築盛・転写工程および/または(C3)後方築盛・転写工程において使用する未硬化状態の硬化性義歯床用材料に含まれる重合性単量体を用いる。なお、溝部壁面の接触角を10°以上とするためには、溝部壁面を構成する材料として、たとえば、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、テフロン樹脂などを用いたり、あるいは、溝部壁面に対して撥水撥油処理する方法が挙げられる。
なお、本実施形態の義歯作製用治具を用いて(C2)前方築盛・転写工程および/または(C3)後方築盛・転写工程を実施する場合、基準義歯の床縁と、溝部とが位置ずれなく正確に対応した状態で、未硬化状態の硬化性義歯床用材料が充填された溝部に、基準義歯の床縁を押し付けることも重要である。基準義歯の床縁と、溝部とが位置ずれした状態で、基準義歯に適正量の未硬化状態の硬化性義歯床用材料が築盛されたとしても、その後に患者口腔内または患者口腔内模型の形状を転写する際に、時間を要したり、転写時の転写精度が低下し易くなるためである。このような問題をより確実に抑制するためには、基準義歯を位置合わせ治具に保持した状態で義歯作製用治具に対して押し付けることが好ましい。但し、この場合、位置合わせ治具と義歯作製用治具との位置関係がずれることにより、結果的に基準義歯の床縁と溝部とが位置ずれしてしまうのを防ぐべく、義歯作製用治具には、位置合わせ治具を固定するための固定部が設けられていることが好ましい。固定部の形状・構造等については、義歯作製用治具に対して、位置合わせ治具を安定して固定できるのであれば特に限定されない。また、位置合わせ治具にも、義歯作製用治具に設けられた固定部に係合する部分が必要に応じて設けられていてもよい。
次に、本実施形態の義歯作製用治具を、上顎用の基準義歯および下顎用の基準義歯と組み合わせて用いる場合のより好適な形態について説明する。
[1.上顎用義歯作製用治具]
総義歯の作製に用いる基準義歯が上顎用の基準義歯である場合、上顎用の基準義歯と組み合わせて用いる本実施形態の義歯作製用治具(上顎用義歯作製用治具)の好適な実施形態は以下のとおりである。
すなわち、本実施形態の上顎用義歯作製用治具において、溝部が、少なくとも前方溝部を有する場合において、前方溝部の底面のうち、唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることが好ましい。この前方溝部の底面の局所的な盛り上がりは、口腔内の上唇小帯(口唇と歯肉との間の正中線上に存在する可動性の粘膜ヒダ)に対応させたものである。前方溝部の底面にこのような局所的に盛り上がった部分を設けることで、築盛後に患者口腔内または患者口腔内模型の形状を転写する際の作業効率をより向上させることができる。
なお、口腔内の上顎側には、上唇小帯以外にも、前頬小帯および後頬小帯(これら小帯は、頬側に存在する粘膜ヒダである)も存在する。しかしながら、本実施形態の上顎用義歯作製用治具では、上唇小帯のみに対応させて、前方溝部の底面のうち、唇側中央に対応する位置の底面のみに局所的な盛り上がりが形成されていることが好ましく、前頬小帯および後頬小帯に対応させた前方溝部の底面の局所的な盛り上がりは形成しないことが好ましい。この理由は、上唇小帯が、個々の患者の口腔形状に依らず、ほぼ同じ位置に存在するのに対して、前頬小帯および後頬小帯は、個々の患者の口腔形状によって存在位置が異なる傾向にあるためこれら頬小帯の一義的な位置を特定できないことや、患者によっては片側の頬にひとつしか頬小帯がみられない場合もあるためである。それゆえ、これらの頬小帯に対応させて前方溝部の底面に局所的な盛り上がりを形成した上顎用義歯作製用治具を用いて総義歯を作製しようとした場合、患者によっては転写作業の効率が却って悪化してしまうことになる。
また、本実施形態の上顎用義歯作製用治具は、溝部が、少なくとも前方溝部を有し、上顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前方溝部内に配置した際に、前方溝部の唇側および頬側の縁部には、(a)人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、(b)人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることが好ましい。この場合、上顎用義歯作製用治具に付された目印(a)に対して、上顎用基準義歯の人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置を合わせると共に、目印(b)に対して上顎用基準義歯の人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置を合わせた状態で、溝部内に未硬化状態の硬化性義歯床用材料が充填された上顎用義歯作製用治具に対して上顎用基準義歯を押し付ければ、位置ずれなく押し付けを行うことができる。
目印は、目視で視認できる形態のものであれば特に限定されないが、たとえば、塗料や着色剤などにより前方溝部の唇側および頬側の縁部に描かれた目印や、唇側および頬側の縁部に凹部や凸部などを設けた目印などを挙げることができる。
本実施形態の上顎用義歯作製用治具は、溝部として、通常、少なくとも前方溝部を有していることが好ましく、前方溝部および後方溝部の両方を有していてもよいが、前方溝部のみを有するものであってもよい。(C3)後方築盛・転写工程において、転写を行う場合、他の築盛・転写工程と比べて、患者によっては嘔吐反射を引き起こしやすい。このため、(C3)後方築盛・転写工程では、後方溝部を少なくとも有する上顎用義歯作製用治具を用いてどのような患者に対しても画一的に作業を行うよりも、従来通り、全て手作業で(C3)後方築盛・転写工程を実施した方が望ましい場合も多いためである。
また、より適正な築盛量の実現を容易にするためには、前方溝部の溝深さは4mm以上14mm以下であることが好ましく、6mm以上12mm以下であることがより好ましく、また、前方溝部の溝幅は3mm以上11mm以下であることが好ましく、5mm以上9mm以下がより好ましい。一方、後方溝部の溝深さは1mm以上5mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがより好ましく、後方溝部の溝幅は15mm以上30mm以下であることが好ましく、17mm以上20mm以下であることがより好ましい。
ここで、上顎用義歯作製用治具および後述する下顎用義歯作製用治具において、前方溝部の溝深さおよび溝幅は、前方溝部の喉側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合の値であり、後方溝部の溝深さおよび溝幅は、後方溝部の唇側および頬側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合の値である。
なお、本実施形態の上顎用義歯作製用治具と組み合わせて用いる上顎用の基準義歯は、下記(1)および(2)に示す寸法形状を満たすことがより好ましい。
(1)縦断面においてベース前方領域の床縁側先端と、人工犬歯の尖頭と、の高低差が13mm以上20mm以下
(2)ベース後方領域の最小厚さが、0.5mm以上3mm以下
[2.下顎用義歯作製用治具]
総義歯の作製に用いる基準義歯が下顎用の基準義歯である場合、下顎用の基準義歯と組み合わせて用いる本実施形態の義歯作製用治具(下顎用義歯作製用治具)の好適な実施形態は以下のとおりである。
すなわち、本実施形態の下顎用義歯作製用治具において、溝部が、少なくとも前方溝部を有し、下顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前方溝部内に配置した際に、前方溝部の唇側および頬側の縁部ならびに喉側の縁部から選択される少なくとも一方の縁部には、(a)人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、(b)人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることが好ましい。
この場合、下顎用義歯作製用治具に付された目印(a)に対して、下顎用基準義歯の人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置を合わせると共に、目印(b)に対して下顎用基準義歯の人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置を合わせた状態で、溝部内に未硬化状態の硬化性義歯床用材料が充填された下顎用義歯作製用治具に対して下顎用基準義歯を押し付ければ、位置ずれなく押し付けを行うことができる。
目印は、目視で視認できる形態のものであれば特に限定されず、その具体例は、上顎用義歯作製治具について説明した場合と同様である。
なお、本実施形態の下顎用義歯作製用治具は、溝部として、前方溝部および後方溝部の少なくとも一方を有していればよいが、通常は、前方溝部および後方溝部の双方を有していることが好ましい。後者の場合、1つの下顎用義歯作製用治具を用いて、(C2)前方築盛・転写工程および(C3)後方築盛・転写工程の双方を実施できるため、より利便性が高くなる。
また、本実施形態の下顎用義歯作製用治具が、溝部として前方溝部および後方溝部を有する場合、後方溝部の唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることが好ましい。この後方溝部の底面の局所的な盛り上がりは、口腔内の舌小帯(舌の裏側に正中線に沿って縦に伸びる可動性の粘膜ヒダ)に対応させたものである。後方溝部の底面にこのような局所的に盛り上がった部分を設けることで、築盛後に患者口腔内または患者口腔内模型の形状を転写する際の作業効率をより向上させることができる。
なお、口腔内の下顎側には、下唇小帯(上顎側の上唇小帯に対応する小帯)や、前頬小帯および後頬小帯も存在する。しかしながら、本実施形態の下顎用義歯作製用治具では、舌小帯のみに対応させて、後方溝部の底面のうち、唇側中央に対応する位置の底面のみに局所的な盛り上がりが形成されていることが好ましく、下唇小帯、前頬小帯および後頬小帯に各々対応させた前方溝部の底面の局所的な盛り上がりは形成しないことが好ましい。この理由は、上顎側の前頬小帯および後頬小帯と同様に、下顎側の下唇小帯、前頬小帯および後頬小帯の位置・形状等についても患者毎に個人差が大きく、これらの小帯に対応させて前方溝部の底面に局所的な盛り上がりを形成しても、患者によっては転写作業の効率が却って悪化してしまうことになるためである。
また、より適正な築盛量の実現を容易にするためには、前方溝部の溝深さは1mm以上11mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましく、また、前方溝部の溝幅は3mm以上11mm以下であることが好ましく、5mm以上9mm以下がより好ましい。一方、後方溝部の溝深さは1mm以上11mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましく、後方溝部の溝幅は3mm以上11mm以下であることが好ましく、5mm以上9mm以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態の下顎用義歯作製用治具と組み合わせて用いる下顎用の基準義歯は、縦断面においてベース前方領域の床縁側先端と、人工犬歯の尖頭と、の高低差が13mm以上18mm以下であることが好ましい。
[3.義歯作製用治具の具体例]
次に、本実施形態の義歯作製用治具の具体例を図面により説明する。図14は、本実施形態の上顎用義歯作製用治具の一例を示す平面図である。なお、図中に示す唇側、頬側および喉側を示す矢印は、各々、上顎用義歯作製用治具の溝部に対して上顎用基準義歯の床縁を正確に位置合わせした状態で上顎用基準義歯を押し付けた際の上顎用基準義歯における唇側、頬側および喉側の方向を意味する。これらの点は、後述する図17、19についても同様である。
図14に示す上顎用義歯作製用治具300A(300)は、溝部310として、略U字状(図中ではU字を逆さにした形状)の前方溝部320と、一端が前方溝部320の一端と連通すると共に、他端が前方溝部320の他端と連通し、前方溝部320の内周側に若干湾曲した形状を有する後方溝部330とを有する。前方溝部320は、図3に示す上顎用基準義歯10Aの唇側床縁22A1および頬側床縁22A2に対応するように設けられており、後方溝部330は、図3に示す上顎用基準義歯10Aの喉側床縁22A3に対応するように設けられている。また、図中、符号B-Bで示す一点鎖線は、前方溝部320と後方溝部330との境界線である。なお、上顎用義歯作製用治具300Aでは、後方溝部330を省略してもよく、あるいは、後方溝部330を用いて(C3)後方築盛・転写工程を実施することを省略してもよい。
また、前方溝部320および後方溝部330の外周側には、それぞれ外周側縁部(唇側および頬側の縁部)320Aおよび外周側縁部(喉側の縁部)330Aが設けられると共に、前方溝部320および後方溝部330の内周側には、それぞれ内周側縁部(喉側の縁部)320Bおよび内周側縁部(唇側および頬側の縁部)330Bが設けられている。そして、外周側縁部320Aの唇側中央と、外周側縁部320Aの頬側のうち喉側寄りの位置とには、それぞれ三角形の目印340Tと、三角形の目印340L、340Rとが設けられている。ここで、目印340Tは、図3に示す上顎用基準義歯10Aの左右2本の人工中切歯31A1の中間の位置と位置合わせするためのものであり、目印340L、340Rは、図3に示す上顎用基準義歯10Aの左右2本の人工第二大臼歯31A7の喉側の位置と位置合わせするためのものである。
図15は、図14に示す上顎用義歯作製用治具300Aの前方溝部320の断面形状の一例を示す断面図であり、具体的には、図14中の二点鎖線で示す符号X-X間の断面について示す図である。ここで、前方溝部320の溝幅Wおよび溝深さDは、前方溝部320の内周側縁部320Bの頂面溝側の部分(基準点RP)を基準として決定される。具体的には、溝幅Wは、基準点RPから、前方溝部320の外周側側壁面320W1までの最短距離として測定され、溝深さDは、溝幅Wと直交する方向において、基準点RPから前方溝部320の底面310W2までの最大距離として測定される値である。なお、基準点RPに対応する位置に外周側側壁面320W1が存在しない場合、言い換えれば、内周側縁部320Bの頂面よりも外周側縁部320Aの頂面が低い位置に存在する場合、溝幅Wは、外周側側壁面320W1を仮想的に延長した仮想側壁面を想定した上で、基準点RPから外周側側壁面320W1を延長した仮想側壁面までの最短距離として測定される。以上に説明した考え方は、後方溝部330における溝幅Wおよび溝深さDについても同様であり、さらには、下顎用の義歯作製用治具の溝部における溝幅Wおよび溝深さDについても同様である。
図16は、図14に示す上顎用義歯作製用治具300Aの前方溝部320の底面320W2の凹凸具合の変化の一例を示すグラフであり、具体的には、前方溝部320の底面320W2を、前方溝部320の一方側の端部近傍(図14中の目印340Lに対応する位置)から唇側中央(図14中の目印340Tに対応する位置)を通って前方溝部320の一方側の端部近傍(図14中の目印340Rに対応する位置)へと向かう場合の底面320W2の凹凸変化を示すグラフである。ここで、図14中、縦軸は、前方溝部320の溝深さDと平行を成す方向(以下、「縦方向」と略す)であり、横軸は、前方溝部320の長手方向(以下、「横方向」と略す)であり、横軸に沿って示す3つの▲印は、図14中に示す3つの▲印の目印340L、340T、340Rに各々対応する位置である。また、図14においては、上顎用義歯作製用治具300Aの底面はその全面が縦方向と直交する平坦面からなるとした場合において、上顎用義歯作製用治具300Aの底面の位置を縦軸の基準位置(0)とし、前方溝部320の底面320W2の位置と共に、内周側縁部320Bの頂面溝側の部分(基準点RP)の位置についても併記してある。
図16に示すように、底面320W2は、横方向全体において、唇側中央(目印340T)に対応する位置のみが局所的に盛り上がると共に、この位置において、溝深さDも極小値(Dmin)となっている。なお、図16に示す上顎用義歯作製用治具300Aの前方溝部320の底面320W2の凹凸具合の変化は、下顎用義歯作製用治具の溝部が前方溝部および後方溝部を有する場合において、これら溝部の底面のうち、前記後方溝部の唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっている場合においても同様である。
図17は、本実施形態の上顎用義歯作製用治具の他の例を示す平面図であり、具体的には、図14に示す上顎用義歯作製用治具300Aの変形例について示す図である。図17に示す上顎用義歯作製用治具300B(300)は、図14に示す上顎用義歯作製用治具300Aから3つの目印340T、340L、340Rを省略すると共に、上顎用義歯作製用治具300Aの唇側の部分に、上顎用基準義歯10Aを保持する位置合わせ治具を固定するための固定部350を新たに設けた以外は、図14に示す上顎用義歯作製用治具300Aと同様の形状・構造を有する治具である。固定部350は、上顎用義歯作製用治具300Aに相当する治具本体部分の唇側に設けられた平面形状が方形の部材であり、固定部350の唇側には、コの字状の凹み部(係合部352)が設けられている。
固定部350を備えた上顎用義歯作製用治具300Bに対しては、たとえば、図18に示す位置合わせ治具200B(200)を組み合わせて用いることができる。図18に示す位置合わせ治具200Bは、図6に示す位置合わせ治具200Aの変形例であり、位置合わせ治具200Aに対して、板状の凸部(係合部204)が新たに設けられている以外は、位置合わせ治具200Aと同様の形状・構造を有する治具である。係合部204は、柄部202の基準義歯保持部201寄りの位置に、柄部202の上顎義歯保持凹部201A側の面から突出する凸部204Aおよび柄部202の下顎義歯保持凹部201B側の面から突出する凸部204Bとして設けられた部材であり、その平面形状は、義歯作製用治具側係合部352とほぼ隙間なく係合できるような方形状を成している。
なお、図17および図18に示す例では、上顎用義歯作製用治具300Bの固定部350の唇側に設けられた係合部352はコの字状の凹み部となっており、位置合わせ治具200Bの係合部204は板状の凸部となっている。しかし、係合部352と係合部204とは、互いに隙間なく係合できるのであれば、これらの形状は特に限定されない。たとえば、係合部352を略半円状の凹み部とし、係合部204を、丸棒状の凸部としてもよい。
固定部350を備えた上顎用義歯作製用治具300Bを用いて、上顎用基準義歯10Aの唇側床縁22A1および頬側床縁22A2に対して未硬化状態の硬化性義歯床用材料の築盛を行う場合、まず、位置合わせ治具200Bの上顎義歯保持凹部201Aに上顎用基準義歯10Aをセットする。次に、前方溝部320内に未硬化状態の硬化性義歯床用材料が充填された上顎用義歯作製用治具300Bの係合部352と、位置合わせ治具200Bの係合部204のうち凸部204Aとを係合させる。そして、この状態で、位置合わせ治具200Bに保持された上顎用基準義歯10Aの唇側床縁22A1および頬側床縁22A2を前方溝部320内に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料中に貫入させ、その後、上顎用義歯作製用治具300Bから上顎用基準義歯10Aを離間する。このような築盛作業では、上顎用義歯作製用治具300Bの係合部352と、位置合わせ治具200Bの係合部204のうち凸部204Aとが係合することで、上顎用義歯作製用治具300Bの前方溝部320と、上顎用基準義歯10Aの唇側床縁22A1および頬側床縁22A2との平面方向における位置決めが正確に行える。
また、上顎用基準義歯10Aの唇側床縁22A1および頬側床縁22A2を前方溝部320内に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料中に貫入させる際には、固定部350の頂面と、柄部202の上顎義歯保持凹部201A側の面とを接触させてもよい。この場合、唇側床縁22A1および頬側床縁22A2を前方溝部320内に充填された未硬化状態の硬化性義歯床用材料中に適切な深さで貫入できるように、固定部350の頂面の高さを設定すれば、高さ方向における位置決めもより正確に行える。
なお、下顎用義歯作製用治具にも固定部350を設けた場合は、位置合わせ治具200Bの係合部204のうち凸部204Bを利用して固定部350の係合部352と係合させればよい。これにより、上述した場合と同様にしてより正確な位置決めを容易に行うことができる。
図19は、本実施形態の下顎用義歯作製用治具の一例を示す平面図である。図18に示す上顎用義歯作製用治具400は、溝部410として、略U字状(図中ではU字を逆さにした形状)の前方溝部420と、一端が前方溝部420の一端と連通すると共に、他端が前方溝部420の他端と連通し、前方溝部420の内周側に大きく湾曲した略V字状(図中ではV字を逆さにした形状)の後方溝部430とを有する。前方溝部420は、図4に示す下顎用基準義歯10Bの唇側床縁22B1および頬側床縁22B2に対応するように設けられており、後方溝部430は、図4に示す下顎用基準義歯10Bの喉側床縁22B3に対応するように設けられている。なお、図中、符号B-Bで示す一点鎖線は、前方溝部420と後方溝部430との境界線である。
また、前方溝部420および後方溝部430の外周側には、それぞれ外周側縁部(唇側および頬側の縁部)420Aおよび外周側縁部(喉側の縁部)430Aが設けられると共に、前方溝部420および後方溝部430の内周側には、それぞれ内周側縁部(喉側の縁部)420Bおよび内周側縁部(唇側および頬側の縁部)430Bが設けられている。そして、外周側縁部420Aの唇側中央と、前方溝部420が最も頬側に張り出している部分近傍の外周側縁部420Aとには、それぞれ三角形の目印440Tと、三角形の目印440L、440Rとが設けられている。ここで、目印440Tは、図4に示す下顎用基準義歯10Bの左右2本の人工中切歯31B1の中間の位置と位置合わせするためのものであり、目印440L、440Rは、図4に示す下顎用基準義歯10Bの左右2本の人工第二大臼歯31B7の喉側の位置と位置合わせするためのものである。
なお、図19に示す例では、3つの目印440T、440L、440Rは、外周側縁部420A、430Aに設けられているが、内周側縁部420B、430Bに設けられていてもよく、外周側縁部420A、430Aおよび内周側縁部420B、430Bの両方に設けられていてもよい。
1…義歯
1A…上顎用義歯
1B…下顎用義歯
1A4,1B4…粘膜面
1A5,1B5…研磨面
1A6,1B6…床縁
1A7,1B7…歯頸部
1A8,1B8…床翼
2…義歯床
2A…上顎用義歯床
2B…上顎用義歯床
2A1,2B1…中央領域
2A2,2B2…前方領域(前方床翼部)
2A3…後方領域(口蓋床部)
2B3…後方領域(舌側床翼部)
4…基準義歯床部材
4A…上顎用基準義歯床部材
4B…下顎用基準義歯部材
5基準義歯部材
5A…上顎用基準義歯部材
5B…下顎用基準義歯部材
6…調整部材
6A1,6B1…中央調整部材
6A2,6B2…前方調整部材
6A3…後方調整部材(口蓋床調整部)
6B3…後方調整部材(舌側床翼調整部)
10…(新技術の)基準義歯(基準義歯部材に対応)
10A…(新技術の)上顎用基準義歯(上顎用基準義歯部材に対応)
10B…(新技術の)下顎用基準義歯(下顎用基準義歯部材に対応)
20…基準義歯床(基準義歯床部材に対応)
20A…上顎用基準義歯床(上顎用基準義歯床部材に対応)
20B…下顎用基準義歯床(下顎用基準義歯床部材に対応)
20A1,20B1…ベース中央領域
20A2,20B2…ベース前方領域(ベース前方床翼部)
20A3…ベース後方領域(ベース口蓋床部)
20A3a…ベース口蓋床部の粘膜面
20B3…ベース後方領域(ベース舌側床翼部)
20B3a…ベース舌側床翼部の粘膜面
21A,21B…床翼
21B2…舌側床翼
22A,22B…床縁
22A1,22B1…唇側床縁
22A2,22B2…頬側床縁
22A3,22B3…喉側床縁
23A,23B…粘膜面
24A,24B…研磨面
30,30A,30B…人工歯列
31,31A,31B…人工歯
31A1,31B1…人工中切歯
31A3,31B3…人工犬歯(犬歯の人工歯)
31A3p,31B3p…人工犬歯の尖頭
31A6,31B6…人工第1大臼歯
31A6p,31B6p…人工第1大臼歯の近心頬側咬頭頂
31A7,31B7…人工第2大臼歯
PA…仮想咬合平面
A1…下顎用基準義歯の左右中切歯の近心隅角の中心
A2…下顎用基準義歯の左側第2大臼歯の遠心頬側咬頭頂
A3…下顎用基準義歯の右側第2大臼歯の遠心頬側咬頭頂
HA…ベース口蓋床部の最高点高さ
HB…ベース舌側床翼部の床縁側先端高さ
LA1,LB1…人工犬歯垂直断面におけるベース前方領域の床縁側先端と、人工犬歯と、の尖頭との高低差
LA2…人工犬歯垂直断面におけるベース口蓋床部の最高点と、人工犬歯と、の尖頭との高低差
LB2…人工犬歯垂直断面におけるベース舌側床翼部の床縁側先端と、人工犬歯の尖頭と、の高低差
LA3,LB3…人工第1大臼歯垂直断面におけるベース前方領域の床縁側先端と、人工第1大臼歯の近心頬側咬頭頂と、の高低差
LA4…人工第1大臼歯垂直断面におけるベース口蓋床部の最高点と、人工第1大臼歯の近心頬側咬頭頂と、の高低差
LB4…人工第1大臼歯垂直断面におけるベース舌側床翼部の床縁側先端と、人工第1大臼歯の近心頬側咬頭頂と、の高低差
100…咬合器
101…指導ピン
150…患者口腔内模型
151…上顎模型
152…下顎模型
200、200A、200B…位置合わせ治具
201…基準義歯保持部
201A…上顎義歯保持凹部
201B…下顎義歯保持凹部
202…柄部
204…係合部
204A、204B…凸部
300、300A、300B…上顎用義歯作製用治具
310…溝部
320…前方溝部
320A…外周側縁部(唇側および頬側の縁部)
320B…内周側縁部(喉側の縁部)
330…後方溝部
330A…外周側縁部(喉側の縁部)
330B…内周側縁部(唇側および頬側の縁部)
340T、340L、340R…目印
320W1…外周側側壁面
320W2…底面
350…固定部
352…係合部
D…溝深さ
W…溝幅
RP…基準点
400…下顎用義歯作製用治具
410…溝部
420…前方溝部
420A…外周側縁部(唇側および頬側の縁部)
420B…内周側縁部(喉側の縁部)
430…後方溝部
430A…外周側縁部(喉側の縁部)
430B…内周側縁部(唇側および頬側の縁部)
440T、440L、440R…目印

Claims (13)

  1. 総義歯タイプの基準義歯を用いて総義歯を作製する際に用いる義歯作製用治具であって、
    (a)前記基準義歯は、前記人工歯と、前記人工歯を固定する基準義歯床部材とを有し、
    (b)前記総義歯は、前記基準義歯床部材と、硬化性義歯床用材料の硬化体とを有し、
    (c)前記総義歯を患者の口腔内に装着した状態において、前記総義歯のうち唇側および頬側となる方向を「前方」とし、喉側となる方向を「後方」とし、患者口腔内の顎堤粘膜と対向する側を「粘膜側」とし、
    (d)前記基準義歯床部材における、粘膜側の面を「粘膜面」とし、その反対側の面を「研磨面」とし、前記粘膜面と前記研磨面との境界を「床縁」とし、
    (e)前記基準義歯床部材の表面のうち、患者口腔内における顎堤頂部領域の粘膜に対向する領域を「ベース中央領域」とし、前記顎堤頂部領域よりも前方の患者口腔内粘膜に対向する領域を「ベース前方領域」とし、前記顎堤頂部領域よりも後方の患者口腔内粘膜に対向する領域を「ベース後方領域」とし、
    (f)前記基準義歯を、前記人工歯側を下向きにして咬合平面として想定される平面上に配置したときに、当該平面に対して垂直で、且つ前記人工歯を構成する人工犬歯の尖頭を通る、前記ベース前方領域の研磨面に対する法線方向に沿った面で切断した縦断面において、前記基準義歯床部材の前記ベース前方領域の床縁側先端から2mm下側における前記ベース前方領域の幅が0.5mm以上3mm以下であり、
    (g)前記基準義歯を用いた前記総義歯の作製方法は、前記ベース前方領域、前記ベース後方領域および前記ベース中央領域に、未硬化状態の前記硬化性義歯床用材料を築盛する工程を少なくとも含むとしたときに、
    前記基準義歯床部材の唇側床縁近傍および頬側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な前方溝部、および、前記基準義歯床部材の喉側床縁近傍の領域を囲うように収容可能な後方溝部、からなる群より選択される少なくともいずれか一方の溝部を有することを特徴とする義歯作製用治具。
  2. 少なくとも前記溝部の縁部を構成する材料のJIS K7215に準拠して測定されたショアD硬さが80以下であることを特徴とする請求項1に記載の義歯作製用治具。
  3. 前記基準義歯を保持する位置合わせ治具を固定するための固定部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の義歯作製用治具。
  4. (h1)前記基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記溝部が、少なくとも前記前方溝部を有し、
    前記前方溝部の底面のうち、唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  5. (h1)前記基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記溝部が、少なくとも前記前方溝部を有し、
    前記上顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前記前方溝部内に配置した際に、前記前方溝部の唇側および頬側の縁部には、前記人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、前記人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  6. (h1)前記基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記前方溝部の喉側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、
    前記前方溝部の溝深さが4mm以上14mm以下であり、前記前方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  7. (h1)前記基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記後方溝部の唇側および頬側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、
    前記後方溝部の溝深さが1mm以上5mm以下であり、前記後方溝部の溝幅が15mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  8. (h1)前記基準義歯が、上顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記溝部が、前記前方溝部のみを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  9. (h2)前記基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記溝部が、少なくとも前記前方溝部を有し、
    前記下顎用の基準義歯の唇側床縁近傍および頬側床縁を、前記前方溝部内に配置した際に、前記前方溝部の唇側および頬側の縁部ならびに喉側の縁部から選択される少なくとも一方の縁部には、前記人工歯を構成する左右2本の人工中切歯の中間の位置、および、前記人工歯を構成する左右2本の人工第二大臼歯の喉側の位置に対応する目印が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  10. (h2)前記基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記溝部が、前記前方溝部および前記後方溝部を有することを特徴とする請求項1~3、9のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  11. 前記前方溝部および前記後方溝部の底面のうち、前記後方溝部の唇側中央に対応する位置の底面のみが局所的に盛り上がっていることを特徴とする請求項10に記載の義歯作製用治具。
  12. (h2)前記基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記前方溝部の喉側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、
    前記前方溝部の溝深さが1mm以上11mm以下であり、前記前方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることを特徴とする請求項1~3、9~11のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
  13. (h2)前記基準義歯が、下顎用の基準義歯であるとしたときに、
    前記後方溝部の唇側および頬側の縁部の頂面溝側の部分を、溝深さおよび溝幅の基準位置とした場合において、
    前記後方溝部の溝深さが1mm以上11mm以下であり、前記後方溝部の溝幅が3mm以上11mm以下であることを特徴とする請求項1~3、9~12のいずれか1つに記載の義歯作製用治具。
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