JP7380737B2 - 構造体の耐火被覆構造 - Google Patents
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Description
発泡する前の塗膜の熱抵抗は通常の塗料と変わらないが、薄膜のため空間を広く利用できる、素材の形状を生かすことができる、上塗により意匠、色彩、耐候性を選択できる、塗装のため、継ぎ目がなく、地震時等の剥離、脱落の危険がない、などの多くのメリットがある。
また、特許文献2に示すように、木質の薄板と発泡耐火材による積層構造も提案されている。
特許文献1によれば、塗膜の耐久性が向上しているが、硬いものがぶつかるなどして剥がれる危険は存在している。また、特許文献2によれば、表面は木質材であるため、塗膜は保護されているが、加熱時の発泡を阻害しないように、表面材の厚さの制約や、切込みを入れるなど対処が必要になっている。
また、発泡後、表面が高温のガス流に曝露され続けるため、発泡層が損耗して熱コンダクタンスが上昇することも知られている。
前記仕上げ材が加熱されて前記塗膜層が発泡して発泡層となった際に該発泡層が前記仕上げ材と前記網状体によって挟持され、発泡層と前記構造体との間に空気層が形成されるようにしたことを特徴とするものである。
本実施の形態に係る構造体の耐火被覆構造1は、図1に示すように、耐火被覆の対象となる鋼管柱3の周囲に、鋼管柱3に対向する面に発泡性の耐火塗料からなる塗膜層5が形成された板状体7からなる仕上げ材9を、鋼管柱3の表面から塗膜層5の発泡厚さ以下の空間Sを設けて配置して構成され、図3に示すように、仕上げ材9が加熱されて塗膜層5が発泡して発泡層13となった際に発泡層13が仕上げ材9と鋼管柱3の表面によって挟持されるようにしたことを特徴とするものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
鋼管柱3は、本発明の構造体に相当するものであり、外径寸法300ミリ、板厚9ミリの角形鋼管である。
なお、本発明の構造体は、鋼管柱3のような鉄骨造以外の木造でも適用可能であり、また柱の他に梁、床など建築物の種々の構造物が含まれる。
仕上げ材9は、鋼管柱3に対向する面に発泡性の耐火塗料からなる塗膜層5が形成された板状体7からなるものである。
本実施の形態の板状体7を構成する材料は、板厚1.6ミリの亜鉛アルミ合金めっき鋼板製であり、幅450ミリの原板を長辺400ミリ、短辺50ミリとして、図2に示すように、L型に加工したものである。
塗膜厚さは、耐火塗料の仕様および要求耐火時間によって任意に決定することができる。
塗膜層5は、図2(a)に示すように長辺側に形成されていればよいが、図2(b)に示すように、短辺側にも形成すれば隙間充てんがなされ、耐火構造上より好ましい。
構造体に耐火塗料を塗布した場合、発泡層13が形成される時点での構造材表面温度は構造体のサイズによって熱容量が異なるが200~300℃を超えている可能性が高い。しかし、耐火塗料を板状体7に塗布した場合、板状体7は、熱伝導率が大きく、熱容量も小さいため、火災時には直ちに温度上昇し、面内の熱分布も小さくなっている。そのため、構造体の温度が低い状態で発泡層13をほぼ均一な条件で形成することができ、耐火時間を長くする、すなわち、耐火性能を高めることができる。
板状体7を単層とする場合には、金属板の他、石膏ボード、けい酸カルシウム板、押出成形セメント板、コンクリートパネルなど、無機系の材料が好適である。
一般に、無機材料は、高温に加熱されると大きく収縮変形を生ずるため、目地が開く問題があり、裏面側にバックアップ材を配して、目地が開いても貫通しないようにするなど、種々対策が施されるが、本実施形態では、突き付け目地のまま対策を行わなくても、発泡層13により閉塞されるため対策は不要である。すなわち、耐火上の弱点となる目地部においては、単純な突き付け目地としても発泡層13が形成され隙間が充てんされるため、耐火目地処理が不要となり、施工の簡略化が期待できる。
なお、板状体7を複層とするときは、内面すなわち塗膜層5が形成される面を金属板にすると、面内温度分布を緩和する効果があるので望ましい。
また、仕上げ材9の形状は、略L型あるいはコ型の2分割としても、平板4枚で構成してもよい。必要に応じて、各角部および平板部の幅方向の中間部に、上下方向に延伸する下地材を配置してもよい。
仕上げ材9は、塗膜層5側を鋼管柱3に対向させ、その表面から塗膜層5の発泡厚さ以下の空間Sを設けて配置されている。本実施の形態では、仕上げ材9と鋼管柱3は50ミリの空間Sを保持して配置されている。空間Sは、発泡後の厚さ以下として、鋼管柱3と仕上げ材9とで挟持できるようにすれば任意に定めることができるが、使用する鋼材の高温時の強度低下を考慮して、要求耐火時間の加熱における鋼材温度の上限を設定し、設定した鋼材温度の上限を超えないように、断熱性能を確保できる寸法を設定する。仕上げ材9を鋼管柱3と離隔して配置するのに際し、下地材を対象となる構造体と独立させても、支持部材を介して連結させてもよい。
この段階では、耐火性はないが、耐火塗料が仕上げ材9の裏面(内面)に施工されているので、外部損傷のおそれはなく、上塗材も不要である。
炉内温度の上昇により、仕上げ材9が昇温され、250℃に到達した段階で塗膜層5が発泡し、発泡層13を形成する。ISO834標準加熱温度によれば、炉内温度は、加熱開始から1分後に350℃程度になるため、数分以内に発泡が始まり、発泡倍率は20倍のため、最終的には、図3に示すように、空間Sは完全に発泡層13で充てんされ、鋼管柱3と仕上げ材9とで挟持されて耐火構造体として機能する。
本実施の形態に係る構造体の耐火被覆構造15を、図4に基づいて説明する。図4において、図1~3と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。図4は、実施の形態1における図3と同様に、塗膜層5が発泡して発泡層13を形成した状態を示している。
本実施の形態の構造体の耐火被覆構造15は、実施の形態1に示したものに、仕上げ材9と鋼管柱3との間の空間Sに、鋼管柱3の外周を囲むように、メタルラスによる網状体17を配設したものである。
網状体17は、金網、ラスが好適だが、不燃性のメッシュ、ガラス繊維シート、あるいはフェノール樹脂のように炭化層を形成する耐熱樹脂板でも類似の効果が期待できる。網状体17に予め耐火塗料を施工しておくと、より効果が高まる。
本実施の形態に係る構造体の耐火被覆構造19を、図5、6に基づいて説明する。図5、6において、図1~4と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、仕上げ材9と鋼管柱3との空間Sを塗膜層5の発泡厚さ以下としていたが、本実施の形態の構造体の耐火被覆構造19においては、空間Sを塗膜層5との発泡厚さ超えとし、塗膜層5と鋼管柱3との間の空間Sに塗膜層5に非接触で、かつ塗膜層5の発泡厚さ以下の位置に、実施の形態2で示した網状体17を配設したものである。
図5、図6に示す例は、鋼管柱3と仕上げ材9との空間Sの寸法を70ミリとして、鋼管柱3から20ミリの位置に、メタルラスによる網状体17を配したものである。
ここで、鋼管柱3と網状体17の距離は、適宜設定することができるが、20ミリ以下であれば静止空気層として機能するため、断熱性が向上する。
上記の実施の形態1~3は、耐火被覆の対象となる構造体として、鋼管柱3を例に説明したが、本実施の形態では、構造体として梁を例に挙げて、図7、図8に基づいて説明する。
仕上げ材29は、図7に示すように、上端両側に外方に張り出す上フランジ部31を有し、断面形状がH形鋼に沿ってこれを囲むH形に成形されている。上フランジ部31は床スラブ25との固定部となるものであり、その幅は50ミリである。また、仕上げ材29の高さは450ミリ、下面の幅は300ミリである。
仕上げ材29は、床スラブ25とのみ固定され、梁27とは固定されていないので、発泡層の形成を阻害しない。
なお、図8に示すように、仕上げ材29を断面ハット形状にして、上下の梁フランジ27aの端部に亘るように網状体35を配設してもよい。これにより、発泡層が形成された際には、実施の形態3と同様に、発泡層を確実に保持し、耐火性能を維持することができる。
仮に、仕上げ材29との固定部を梁27に設けるとしても、仕上げ材29を平板の端部で接合して組み立てるよりも、上部をL型、下部をコ型として梁ウェブ部分で接合するのが好ましい。
また、仕上げ材29は、2部材から構成するのではなく、矩形を半割した形状のものを一体成形した1部材から構成してもよい。
3 鋼管柱
5 塗膜層
7 板状体
9 仕上げ材
13 発泡層
15 構造体の耐火被覆構造(実施の形態2)
17 網状体
19 構造体の耐火被覆構造(実施の形態3)
21 中空層
23 構造体の耐火被覆構造(実施の形態4)
25 床スラブ
27 梁
27a 梁フランジ
29 仕上げ材
31 上フランジ部
33 デッキプレート
35 網状体
37 壁
39 Z型部材
41 L型部材
S 空間
Claims (4)
- 耐火被覆の対象となる構造体である柱の周囲に、前記柱に対向する面に発泡性の耐火塗料からなる塗膜層が形成された板状体からなる仕上げ材を、前記柱の表面から前記塗膜層の発泡厚さ以下の空間を設けて配置し、前記仕上げ材が加熱されて前記塗膜層が発泡して発泡層となった際に該発泡層が前記仕上げ材と前記柱の表面によって挟持されることにより脱落しないようにしたことを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
- 耐火被覆の対象となる構造体である床スラブを支持する梁の周囲に、前記梁に対向する面に発泡性の耐火塗料からなる塗膜層が形成された板状体からなる仕上げ材を、前記梁の表面から前記塗膜層の発泡厚さ以下の空間を設けて配置し、かつ前記仕上げ材は前記床スラブに固定され、前記梁との固定部を有しておらず、前記仕上げ材が加熱されて前記塗膜層が発泡して発泡層となった際に該発泡層が前記仕上げ材と前記構造体の表面によって挟持されることにより脱落しないようにしたことを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
- 前記塗膜層と前記構造体表面との間の空間に網状体を配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の構造体の耐火被覆構造。
- 前記仕上げ材を鋼板、または鋼板と有機質材または無機質材との積層構造とし、前記塗膜層を鋼板に形成したことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の構造体の耐火被覆構造。
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