JP7377945B2 - 生体適合性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、生体適合性材料に関する。
がん患者においては、がん治療が口の粘膜に影響して口内炎が起こりやすい。例えば、抗がん剤治療では、口内炎を起こしやすい薬剤の投与を受けたとき、頭頸部がん(頭から首の範囲のがん)の放射線治療では、口の粘膜に放射線が直接当たったときに口内炎が必発である。口内炎の痛みは強く、食事を口から摂ることもできないほどである。
口内炎の対症療法としては、患部に直接貼り付ける貼付剤(例えば、アフタシール(R)25μg,大正富山医薬品社製;有効成分 トリアムシノロンアセトニド)、患部に塗り付ける軟膏剤(例えば、デキサルチン口腔用軟膏,日本化薬社製;有効成分 デキサメタゾン)、および、患部に吹き付ける噴霧剤(例えば、サルコート(R)カプセル外用50μg,帝人ファーマ社製;有効成分 ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)等がある。
しかし、これらの治療剤は免疫抑制剤であるステロイドを有効成分とするため、がん患者にとって望ましいものとはいえない。
また、食事を口から摂る際に、患部に貼り付けた貼付剤が剥がれたり、患部に塗布した軟膏剤または噴霧剤が失われたりして、口内炎の痛みを抑制することができない。
このような口内炎の痛みを抑制できる生体適合性材料が望まれている。
例えば、特許文献1には、「モノ脂肪酸ポリエチレングリコールおよびトリ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンのうち炭素数が18である脂肪酸を分子内に有する化合物からなる群から選ばれる一種以上とグリチルレチン酸およびその誘導体からなる群より選ばれる一種以上を含有することを特徴とする外用組成物。」が記載されている(請求項1)。
また、特許文献2には、「カルボキシビニルポリマー並びにトラガントガム、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする口腔内付着フィルム製剤。」が記載されている(請求項1)。
特開2012-144490号公報 特開2016-011293号公報
しかし、特許文献1に記載された外用組成物は、口腔粘膜に適用して含水させた際の引っ掻き耐性(摩擦を加えた際の粘膜への残存性)、保持性(湿潤環境における粘膜に対する付着性)が十分ではなかった。
また、特許文献2に記載された口腔内付着フィルム製剤は、口腔粘膜に適用して含水させた際の引っ掻き耐性(摩擦を加えた際の粘膜への残存性)は水準に達しているものの、粘膜の伸縮に対する追随性が低く、保持性(湿潤環境における粘膜に対する付着性)が十分ではなかった。
また、生体適合性材料としては、使用感に優れることも望まれている。より具体的には、口腔内に生体適合性材料を塗布した際に、ざらつき感がないことが望まれている。
そこで、本発明は、引っ掻き耐性および保持性に優れたゲルを形成でき、かつ、使用感に優れた生体適合性材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、以下の構成の本発明を完成させた。
(1) 多糖類と、アルミニウム化合物と、カルボキシビニルポリマーと、油性基材とを含み、水を実質的に含まず、
多糖類が、脱アシル化ジェランガム、脱アシル化ジェランガムの塩、カラギーナン、カラギーナンの塩、ペクチン、ペクチンの塩、キサンタンガム、キサンタンガムの塩、アラビアガム、アラビアガムの塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、カルメロース、カルメロースの塩、ヒプロメロース、ヒプロメロースの塩、および、アルギン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、生体適合性材料。
(2) アルミニウム化合物が乳酸アルミニウムである、(1)に記載の生体適合性材料。
(3) アルミニウム化合物の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、0.1質量%~5.0質量%である、(1)または(2)に記載の生体適合性材料。
(4) アルミニウム化合物の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、1.0質量%~4.5質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(5) カルボキシビニルポリマーの0.5質量%濃度水溶液のpH7.5での粘度が20000cP以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(6) 多糖類またはその塩の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、5.0質量%~35.0質量%である、(1)~(5)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(7) 多糖類またはその塩の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、10.0質量%以上24.0質量%未満である、(1)~(6)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(8) カルボキシビニルポリマーの含有量に対する多糖類またはその塩の含有量の質量比の値が0.5~5.5である、(1)~(7)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(9) 油性基材がゲル化炭化水素を含む、(1)~(8)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(10) 油性基材の含有量に対する多糖類またはその塩の含有量の質量比の値が0.20以上0.40未満である、(1)~(9)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(11) 糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、(1)~(10)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(12) 糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種が、キシリトール、グルコース、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、スクロース、トレハロース、および、ラクトースからなる群より選択される少なくとも1種である、(11)に記載の生体適合性材料。
(13) 生体保護用である、(1)~(12)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(14) 粘膜保護剤である、(1)~(13)のいずれかに記載の生体適合性材料。
(15) 口腔粘膜保護剤である、(14)に記載の生体適合性材料。
本発明によれば、引っ掻き耐性および保持性に優れたゲルを形成でき、かつ、使用感に優れた生体適合性材料を提供できる。
本明細書において、「~」を用いて表される範囲には「~」の両端を含むものとする。例えば、「A~B」で表される範囲にはAおよびBを含む。
[生体適合性材料]
本発明の生体適合性材料は、所定の多糖類と、アルミニウム化合物と、カルボキシビニルポリマーと、油性基材とを含み、水を実質的に含まない。
生体適合性材料とは、生体表面(例えば、皮膚、粘膜(例えば、口腔内の粘膜)、目、歯、舌、爪、および、毛髪等)に良好に付着する材を意味する。また、後述するように、本発明の生体適合性材料が水を吸収することにより架橋構造が形成されるため、本発明の生体適合性材料より形成されるゲルは生体表面に対してより強固に付着し得る。本発明の生体適合性材料は、生体に対して悪影響を与えず、生体によく馴染む。
生体表面は、健常な状態であっても、創傷または潰瘍を有していてもよい。
後述するように、本発明の生体適合性材料は、水と接触することで架橋構造を形成し得る。水は、生体表面(例えば、口腔内表面)に存在するものを利用してもよく、付着性を促進する目的で添加してもよい。本発明の生体適合性材料が水と接触して架橋構造を有するゲルを形成した際には、形成されたゲルの生体表面に対する付着性は、架橋構造を形成する前の生体適合性材料の生体表面に対する付着性よりもより強固となる。
更に、本発明の生体適合性材料より形成されるゲルは、被付着面である生体表面を、外部刺激から保護する機能を有することが好ましい。この目的を達するため、本発明の生体適合性材料より形成されるゲルは一定以上の物理的強度を有することが好ましい。また、本発明の生体適合性材料より形成されるゲルは、非接着面表面に潤滑性を有してもよい。
なお、生体とは、ヒトまたはヒト以外の動物(例えば、哺乳類)が挙げられる。ヒト以外の動物としては、例えば、霊長類、齧歯類(マウスおよびラット等)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、および、ウマが挙げられる。
また、本発明の生体適合性材料は、所定の多糖類を用いることで、上記の効果に加えて、使用感にも優れる。
引っ掻き耐性、保持性、および、使用感のうちの少なくとも1つが優れることを、以下、本発明の効果がより優れるともいう。
〈多糖類〉
本発明の生体適合性材料は、脱アシル化ジェランガム、脱アシル化ジェランガムの塩、カラギーナン、カラギーナンの塩、ペクチン、ペクチンの塩、キサンタンガム、キサンタンガムの塩、アラビアガム、アラビアガムの塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、カルメロース、カルメロースの塩、ヒプロメロース、ヒプロメロースの塩、および、アルギン酸からなる群より選択される少なくとも1種である多糖類(以下、単に「多糖類」ともいう。)を含む。
上記多糖類は、水に溶解しやすく、その結果、使用感が向上していると考えられる。
カラギーナンとしては、例えば、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、および、ラムダカラギーナンが挙げられる。
ペクチンとしては、例えば、ハイメトキシルペクチン、および、ローメトキシルペクチンが挙げられる。
《塩の種類》
脱アシル化ジェランガムの塩、カラギーナンの塩、ペクチンの塩、キサンタンガムの塩、アラビアガムの塩、ヒアルロン酸の塩、カルメロースの塩、および、ヒプロメロースの塩の種類は特に限定されないが、1価金属塩、または、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、および、アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。上記のような塩としては、例えば、ヒアルロン酸のナトリウム塩、および、カルメロースのナトリウム塩が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、脱アシル化ジェランガム、カラギーナン、カルメロースのナトリウム塩、または、アルギン酸が好ましい。
上記塩を構成する1価カチオンの定量・定性分析は、イオンクロマトグラフ法によって行うことができる。
(測定条件)
カラム: イオン交換樹脂(内径4.0mm、長さ25cm)
移動相: メタンスルホン酸溶液(20mmol/L)
流量: 1.0mL/min
試料注入量: 25μL
カラム温度: 40℃
サプレッサ: 電気透析形
検出器: 電気伝導度検出器(30℃)
《多糖類の含有量》
多糖類の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、生体適合性材料の全質量に対して、5.0質量%~35.0質量%が好ましく、10.0質量%以上24.0質量%未満がより好ましい。多糖類の含有量が、本発明の生体適合性材料の全質量に対して10.0質量%以上24.0質量%未満であると、生体適合性材料をゲル化させた際の引っ掻き耐性がより優れたものとなる。
多糖類は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
〈アルミニウム化合物〉
《アルミニウム化合物の種類》
本発明の生体適合性材料は、アルミニウム化合物を含む。
アルミニウム化合物はアルミニウムを含む化合物であれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる点で、水溶性のアルミニウム化合物が好ましく、アルミニウムのカルボン酸塩がより好ましく、アルミニウムのヒドロキシカルボン酸塩が更に好ましく、乳酸アルミニウムが特に好ましい。アルミニウム化合物が乳酸アルミニウムであると、生体適合性材料をゲル化させた際の保持性がより優れたものとなる。
水溶性のアルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、硝酸アルミニウム(Al(NO)、アンモニウムミョウバン(AlNH(SO・12HO)、カリウムミョウバン(AlK(SO・12HO)、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム(ヒドロキシ酢酸アルミニウム)、乳酸アルミニウム、リンゴ酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、および、イソクエン酸アルミニウムが挙げられる。
アルミニウムのカルボン酸塩としては、例えば、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム(ヒドロキシ酢酸アルミニウム)、乳酸アルミニウム、リンゴ酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、および、イソクエン酸アルミニウムが挙げられる。
アルミニウムのヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸アルミニウム(ヒドロキシ酢酸アルミニウム)、乳酸アルミニウム、リンゴ酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、および、イソクエン酸アルミニウムが挙げられる。
《アルミニウム化合物の含有量》
アルミニウム化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、生体適合性材料の全質量に対して、0.1質量%~5.0質量%が好ましく、1.0質量%~4.5質量%がより好ましい。アルミニウム化合物の含有量が、本発明の生体適合性材料の全質量に対して1.0質量%~4.5質量%であると、生体適合性材料をゲル化させた際の保持性がより優れたものとなる。
アルミニウム化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
〈カルボキシビニルポリマー〉
本発明の生体適合性材料は、カルボキシビニルポリマーを含む。
カルボキシビニルポリマーは、カルボキシ基を有する水溶性のビニルポリマーであり、具体的には、アクリル酸および/またはメタクリル酸を主鎖として、架橋構造を有するポリマーである。架橋構造としては、例えば、アリルショ糖、または、ペンタエリスリトールのアリルエーテル等による架橋構造が挙げられる。
本発明の生体適合性材料は、水と接触させることによりゲル化するが、多糖類がアルミニウムイオンにより架橋して形成される多糖類ゲルのネットワークと、カルボキシビニルポリマーのネットワークとによって、引っ掻き耐性および保持性が優れる。
カルボキシビニルポリマーの粘度は、本発明の効果がより優れる点で、pH7.5に調整した0.5質量%水溶液(25℃)において、20000cP以下が好ましく、2000cP~20000cPがより好ましい。カルボキシビニルポリマーの0.5質量%水溶液(25℃)のpH7.5での粘度が20000cP以下であると、生体適合性材料をゲル化させた際の引っ掻き耐性および保持性がより優れたものとなる。
カルボキシビニルポリマーの粘度は、カルボキシビニルポリマーの0.5質量%濃度で、pH7.5に調整した水溶液を、レオメータ(MCR301,アントンパール社製)において、shere rate 1(1/s)、GAP 0.05mm、温度25℃で測定した値である。
本発明の生体適合性材料において、カルボキシビニルポリマーは、市販品を使用することができる。カルボキシビニルポリマーの市販品としては、具体的には、Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール971」、「カーボポール974」、「カーボポール980」、および、「カーボポール981」;住友精化社製の「AQUPEC HV805」、「AQUPEC HV-501E」、および、「AQUPEC HV-505E」;富士フイルム和光純薬社製の「ハイビスワコー103」、「ハイビスワコー104」、および、「ハイビスワコー105」;東亞合成社製の「ジュンロンPW-120」、「ジュンロンPW-121」、および、「ジュンロンPW-312S」;3Vシグマ社製の「シンタレンK」、および、「シンタレンL」が挙げられる。
《カルボキシビニルポリマーの含有量》
カルボキシビニルポリマーの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、生体適合性材料の全質量に対して、1.0質量%~30.0質量%が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%未満がより好ましい。
カルボキシビニルポリマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
《多糖類とカルボキシビニルポリマーの含有量比》
カルボキシビニルポリマーの含有量に対する多糖類の含有量の質量比の値[多糖類の含有量/カルボキシビニルポリマーの含有量]は、本発明の効果がより優れる点で、0.5~5.5が好ましい。
〈油性基材〉
本発明の生体適合性材料は、油性基材を含む。
油性基材とは、水と交じり合わない成分を意味する。
油性基材の粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、100~1000000cPが好ましく、1000~100000cPがより好ましい。粘度の測定は、粘弾性測定装置(MCR302)を使用して、温度25℃にて、せん断速度1(1/s)で測定する。
油性基材としては、通常の油性軟膏に用いる原料が挙げられる。油性基材としては、例えば、炭化水素類(好ましくは、ゲル化炭化水素)、ワックス類、植物油、動物油、中性脂質、合成油脂、ステロール誘導体、モノアルコールカルボン酸エステル類、オキシ酸エステル類、多価アルコール脂肪酸エステル類、シリコーン類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、および、フッ素系油剤類が挙げられる。
油性基材は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 2種以上の油性基材を用いる場合、炭化水素類(好ましくは、ゲル化炭化水素)と流動パラフィンとの組み合わせが好ましい。
なお、ゲル化炭化水素としては、医薬品添加物規格の「ゲル化炭化水素」に適合するものを使用でき、より具体的には、流動パラフィンをポリエチレンでゲル化したゲル化炭化水素を好適に使用できる。
なお、ゲル化炭化水素としては、プラスチベース(大正富山医薬品社製)、または、ハイコールジェル(カネダ社製)が好ましい。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン(ミネラルオイル)、重質流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、スクワラン、オリーブ由来スクワラン、スクワレン、ワセリン、および、固形パラフィンが挙げられる。
なお、ワセリンとしては、日本薬局方もしくはそれに準ずる規格の「ワセリン」、「白色ワセリン」、または、「黄色ワセリン」に適合するものが好ましい。
ワックス類としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、みつろう、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、および、エチレン・プロピレンコポリマーが挙げられる。
植物油としては、例えば、大豆油、ゴマ油、オリーブ油、やし油、パーム油、こめ油、綿実油、ひまわり油、コメヌカ油、カカオ脂、コーン油、べに花油、および、なたね油が挙げられる。
動物油としては、例えば、ミンク油、タートル油、魚油、牛油、馬油、豚油、および、鮫スクワランが挙げられる。
中性脂質としては、例えば、トリオレイン、トリリノレイン、トリミリスチン、トリステアリン、および、トリアラキドニンが挙げられる。
合成油脂としては、例えば、リン脂質、および、アゾンが挙げられる。
ステロール誘導体としては、例えば、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、フィトステロール、コール酸、および、コレステリルリノレートが挙げられる。
モノアルコールカルボン酸エステル類としては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、および、パルミチン酸セチルが挙げられる。
オキシ酸エステル類としては、例えば、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、および、モノイソステアリン酸水添ヒマシ油が挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、例えば、トリオクタン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、および、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが挙げられる。
シリコーン類としては、例えば、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、高重合ジメチコン(高重合ジメチルポリシロキサン)、シクロメチコン(環状ジメチルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)、および、フェニルトリメチコンが挙げられる。
高級アルコール類としては、例えば、セタノール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、および、ステアリルアルコールが挙げられる。
高級脂肪酸類としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、および、パルミトレイン酸が挙げられる。
フッ素系油剤類としては、例えば、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、および、パーフルオロポリエーテルが挙げられる。
《油性基材の含有量》
油性基材の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、生体適合性材料の全質量に対して、40質量%~80質量%が好ましく、50質量%~70質量%がより好ましい。油性基材の含有量がこの範囲内であると、本発明の効果がより優れる。
油性基材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
《多糖類と油性基材の含有量比》
油性基材の含有量に対する多糖類の含有量の質量比の値[多糖類の含有量/油性基材の含有量]は、本発明の効果がより優れる点で、0.10~0.70が好ましく、0.20以上0.40未満がより好ましい。
本発明の生体適合性材料は、実質的に水を含まない。実質的に水を含まないとは、本発明の効果に影響を及ぼさない程度の少量の水(例えば、原料中に含まれる微量の水分)を含むことは許容範囲にあるという意味である。具体的には、「実質的に水を含まない」とは、生体適合性材料中の水の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、5質量%以下であることを意味する。なかでも、3質量%以下が好ましい。下限は特に制限されないが、0質量%が好ましい。
本発明の生体適合性材料が水を実質的に含まない場合、本発明の生体適合性材料を生体に適用した際に、形成されるゲルの付着性がより向上し、保護性能も向上する。
生体適合性材料中における水の含有量の測定方法としては、例えば、JIS K0068:2001に準拠したカールフィッシャー水分測定法(電量法)が挙げられる。
生体適合性材料は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。
〈糖アルコールおよび糖〉
本発明の生体適合性材料は、糖アルコール、および、糖からなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。生体適合性材料が糖アルコール、および、糖からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、生体適合性材料をゲル化させた際の引っ掻き耐性がより優れる。
《糖アルコールの種類》
糖アルコールは、アルドース、または、ケトースのカルボニル基が還元された構造を有する有機化合物である。糖アルコールとしては、具体的には、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、および、ソルビトールが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、糖アルコールは、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、および、ソルビトールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、キシリトールがより好ましい。
《糖の種類》
糖は、例えば、単糖類または二糖類である。糖としては、具体的には、グルコース、ガラクトース、スクロース、トレハロース、および、ラクトースが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、糖は、グルコース、および、ガラクトースからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、グルコースがより好ましい。
糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種は、キシリトール、グルコース、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、スクロース、トレハロース、および、ラクトースからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、キシリトール、または、グルコースがより好ましい。
《糖アルコールおよび糖の含有量》
本発明の生体適合性材料が、糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、糖アルコールおよび糖の合計含有量は、本発明の効果がより優れる点で、生体適合性材料の全質量に対して、0.5質量%~20.0質量%が好ましく、5.0質量%~15.0質量%がより好ましい。糖アルコールおよび糖の合計含有量が上記範囲内である場合、本発明の効果がより優れる。
糖アルコールおよび糖は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生体適合性材料は、清涼化剤、甘味料、または、香料を更に含んでもよい。具体的には、本発明の生体適合性材料は、嗜好性を高める目的で、1-メントール、カンフル、果実由来香料(レモン香料、ライム香料、ストロベリー香料等)、および、サッカリンナトリウムからなる群より選択される1種以上の成分を含んでいてもよい。
本発明の生体適合性材料は、賦形剤を更に含んでいてもよい。
具体的には、本発明の生体適合性材料は、引っ掻き耐性を強化する目的で、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および、ケイ酸処理結晶セルロースからなる群より選択される1種以上の成分を含んでいてもよい。
本発明の生体適合性材料は、抗炎症剤(抗炎症作用を有する成分)を更に含んでいてもよい。
具体的には、本発明の生体適合性材料は、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、トラネキサム酸、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、パンテノール、シコンエキス、酢酸ブレドニゾロン、ブレドニゾロン、デキサメタゾン、および、トリアムシノロンアセトニドからなる群より選択される1種以上の成分を含んでいてもよい。
なかでも、本発明の生体適合性材料は、アズレンスルホン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、トラネキサム酸、アラントイン、および、グリチルレチン酸からなる群より選択される1種以上の成分を含むことが好ましい。
本発明の生体適合性材料は、抗菌剤(抗菌作用を有する成分)を更に含んでいてもよい。
具体的には、本発明の生体適合性材料は、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ素、ヨウ化カリウム、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、および、イソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される1種以上の成分を含むことが好ましい。
本発明の生体適合性材料は、防腐剤(防腐作用を有する成分)を更に含んでいてもよい。
具体的には、本発明の生体適合性材料は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、および、安息香酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上の成分を含むことが好ましい。
〈生体適合性材料の製造方法〉
本発明の生体適合性材料は、多糖類と、アルミニウム化合物と、カルボキシビニルポリマーと、油性基材と、を混合することにより製造できる。必要に応じて、脱水処理を実施してもよい。
混合の方法は特に限定されず、粉末成分を混合する際に用いられる、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、生体適合性材料を構成する成分のうち、一部の成分を事前に混合して、その後、残りの成分と混合するような、段階的な混合方法を実施してもよい。なかでも、糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種を使用する場合は、多糖類と、アルミニウム化合物と、カルボキシビニルポリマーと、糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種とを混合して混合物を得た後、得られた混合物と油性基材とを混合することが好ましい。上記手順によれば、成分がより均一に分散された生体適合性材料を得ることができる。
上記混合物と油性基材とを混合する際には、混合物と油性基材とを一括で混合してもよいし、混合物を複数回に分けて油性基材に添加して混合してもよい。
なお、各成分を混合した後、得られた生体適合性材料に対して脱気処理を施して、生体適合性材料から水を除去することが好ましい。
〈生体適合性材料の機能〉
本発明の生体適合性材料を水と接触させることにより、架橋構造を有するゲルが形成される。より具体的には、本発明の生体適合性材料を水と接触させると、多糖類とアルミニウムイオンとが架橋して形成される架橋構造を含むゲルが形成される。また、本発明の生体適合性材料が糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、多糖類とアルミニウムイオンとが架橋して形成される第1架橋構造と、カルボキシビニルポリマーと糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種とが架橋して形成される第2架橋構造との2種の架橋構造を含むゲルが形成される。つまり、本発明の生体適合性材料が水を吸収することにより、架橋構造が自発的に形成される。
本発明の生体適合性材料は、生体表面上に適用され、ゲルを形成し得る。ゲルを形成する方法としては、本発明の生体適合性材料を生体表面上に配置して、生体表面上に配置された生体適合性材料と水とを接触させることにより、生体表面上にゲルを形成する方法が挙げられる。
本発明の生体適合性材料を配置する生体表面としては、口腔内の粘膜表面が好適に挙げられる。
本発明の生体適合性材料の粘度は特に制限されないが、100000~600000cPの場合が多く、200000~500000cPが好ましい。粘度の測定は、粘弾性測定装置(MCR302)を使用して、温度25℃にて、せん断速度1(1/s)で測定する。
本発明の生体適合性材料の形態(性状)は、例えば、軟膏状、クリーム状、および、半固体状が挙げられる。
〈生体適合性材料の用途および使用方法〉
本発明の生体適合性材料の用途としては、例えば、生体保護用途が挙げられる。
具体的には、本発明の生体適合性材料は、例えば、粘膜保護剤として、より詳細には、口腔粘膜保護剤として利用され得る。
また、本発明の生体適合性材料は、創傷被覆材、薬剤徐放基材、口腔内湿潤材、および、止血材等の用途もある。
本発明の生体適合性材料を粘膜に対して使用する場合、本発明の生体適合性材料を粘膜上に配置し、水または水を含む溶液を添加すれば、ゲル化して、形成されるゲルが粘膜により強固に付着する。つまり、本発明の生体適合性材料の使用方法(または、ゲルの製造方法)として、本発明の生体適合性材料を粘膜上に配置して、粘膜上に配置された生体適合性材料と水とを接触させることにより、粘膜上にゲルを形成する方法が挙げられる。
特に、口腔粘膜に対して本発明の生体適合性材料を適用する場合、本発明の生体適合性材料を口腔粘膜に付着させれば、唾液中の水分によって、本発明の生体適合性材料がゲル化するため、取扱いが簡便である。また、仮に、唾液量が少ない場合には、本発明の生体適合性材料を口腔粘膜に付着させた後、水、または、人工唾液をスプレーする等して、水分を供給すればよい。
本発明の生体適合性材料を口腔粘膜に付着させると、唾液中の水分により上記架橋構造の形成が開始すると同時に、口腔粘膜表面のムチンと上記多糖類とが水素結合により接着する。このようなメカニズムにより、本発明の生体適合性材料により形成されるゲルは、優れた引っ掻き耐性、および、優れた保持性を発揮するものと考えられるが、これのみに限定されるわけではない。
また、本発明の生体適合性材料においては、多糖類を含むことで、口腔内で生体適合性材料を使用した際の使用感が優れると考えられる。
本発明の生体適合性材料が薬剤徐放基材として用いられる場合、徐放される薬剤の種類は特に制限されず、公知の薬剤が挙げられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1~22および比較例1~7]
〈生体適合性材料の調製〉
表1-1~表1-2に示す各成分を表1-1~表1-2に示す含有量で混合して、実施例1~22および比較例1~7の生体適合性材料を調製した。
実施例1~22および比較例1~7にて調製された生体適合性材料中における水の含有量は、いずれの場合も、生体適合性材料全質量に対して、3質量%以下であった。つまり、実施例のいずれの生体適合性材料も実質的に水を含まなかった。
なお、以下、代表的に実施例1の生体適合性材料の製造手順を記載する。実施例2~22および比較例1~7においては、各成分の使用量を調整して実施例1と同様の手順で製造を行った。
〈実施例1〉
脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル,DSP五協フード&ケミカル社製)324g、乳酸アルミニウム(株式会社武蔵野化学研究所製)36g、キシリトール(三菱商事フードテック社製,キシリットP)180g、および、カルボキシビニルポリマー(Lubrizol製、CARBOPOL 971PNF)180gを均一に粉体混合し、三等分した。
流動パラフィン(カネダ社製,ハイコールM-352)2333g、および、軟膏基剤プラスチベース(大正製薬社製)4667gを均一に混合し、ナイロンメッシュ(株式会社NBCメッシュテック製,N-NO.230T)にてろ過した。
得られた混合物1080gを、ハイビスディスパーミックス3D-5型(株式会社プライミクス製)に仕込み、20℃でプラネタリーミクサー5rpmの設定(ホモディスパー不使用)にて撹拌しつつ(以降同撹拌条件にて撹拌を継続)、三等分した粉体を逐次添加した。それぞれの粉体の添加には1分間かけ、添加後は1分間撹拌した。
最後の添加終了後の1分間経過した後、系内を真空脱気し、更に20分間撹拌を継続し、実施例1の生体適合性材料1800gを得た。得られた生体適合性材料は、2本のアルミニウムチューブ(関西チューブ製)に7gずつ充填し、それぞれのチューブを室温条件(温度25℃、相対湿度60%)にて使用まで保管した。
〈性能評価〉
《擬似生体膜の作製》
TDAB(テトラドデシルアンモニウムブロミド,富士フイルム和光純薬社製)50mg、ポリ塩化ビニル(富士フイルム和光純薬社製)800mg、および、DOPP(ジ-n-オクチルホスホナート,富士フイルム和光純薬社製)0.6mLをTHF(テトラヒドロフラン,富士フイルム和光純薬社製)10mLに溶解したものをシャーレで室温乾燥し、脂質膜(膜厚200μm)を得た。
次に、寒天(カリコリカン(登録商標),伊那食品工業社製)0.5g、および、ジェランガム(ケルコゲル(登録商標),CPケルコ社製)0.1gを蒸留水49.4gからなるハイドロゲルに、作製した脂質膜を貼り合わせた。
続いて、脂質膜表面をMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー(LIPIDURE(登録商標)-CM5206,日油社製)でコートして、擬似生体膜を得た。
《引っ掻き耐性の評価》
作製した擬似生体膜上に、調製した生体適合性材料を塗布し(1cmΦ,膜厚500μm)、人工唾液(サリベート(登録商標),帝人ファーマ社製)を噴霧した後、1分間指で均してサンプルをゲル化させ、評価用サンプルを作製した。
作製した評価用サンプルを摩耗試験機(表面性測定機 トライボギア TYPE:14 FW、新東科学社製)で繰り返し摩耗し、サンプルが擬似生体膜から剥離または溶解するまでの回数(往復)を計測し、以下の基準により引っ掻き耐性を評価した。なお、摩耗試験機のヘッドには三角消しゴムの芯(Ain CLIC,ぺんてる社製)をセットし、荷重30g、振幅30mm、速度6000mm/minの条件で試験を行った。
(引っ掻き耐性の評価基準)
500回以上耐えた・・・S
300回以上500回未満で剥離した・・・A
100回以上300回未満で剥離した・・・B
100回未満で剥離した・・・C
評価結果を表1-1および表1-2の「評価」欄に示す。
《保持性の評価》
作製した擬似生体膜上に、調製した生体適合性材料を塗布し(1cmΦ,膜厚500μm)、人工唾液(サリベート(登録商標),帝人ファーマ社製)を噴霧した後、1分間静置してサンプルをゲル化させ、評価用サンプルを作製した。
作製した評価用サンプルをシャーレに入れ、評価用サンプルが浸かるまで人工唾液(サリベート(登録商標),帝人ファーマ社製)で満たした。このシャーレを恒温振とう器(アズワン 小型振盪恒温器 1-6142-01)(37℃)の中に入れ、中速(目盛6)で振とうさせた。この試験で擬似生体膜から評価用サンプルが剥離または溶解により消失するまでの時間を計測し、以下の基準により保持性を評価した。
(保持性の評価基準)
3時間以上保持した・・・S
2時間以上3時間未満で消失した・・・A
1時間以上2時間未満で消失した・・・B
1時間未満で消失した・・・C
評価結果を表1-1および表1-2の「評価」欄に示す。
《使用感の評価》
調製した生体適合性材料を口腔内に塗布して、以下の基準により使用感を評価した。
(使用感の評価基準)
ざらつき感がない・・・A
ざらつき感がある・・・B
評価結果を表1-1および表1-2の「評価」欄に示す。
Figure 0007377945000001
表1-1~表1-2中の成分I~成分Vは以下に記載するものである。なお、各成分の含有量は質量部で表す。
〈成分I〉
・脱アシル化ジェランガム(ケルコゲル,DSP五協フード&ケミカル社製)
・カラギーナン(GENUVISCO PJ-JRE,三晶社製)
・ペクチン(LM Pectin,三晶社製)
・キサンタンガム(エコーガムLAX-T/ケルトロールLAX-T,DSP五協フード&ケミカル社製)
・アラビアガム(富士フイルム和光純薬社製)
・ヒアルロン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)
・寒天(カリコリカン,伊那食品工業社製)
・サクシノグリカン(DSP五協フード&ケミカル社製)
・カルメロースNa(CMC1190 ダイセル株式会社製)
・ヒプロメロース(METROSE 90SH-100SR 信越化学工業株式会社製)
・アルギン酸(膨潤性)(富士フイルム和光純薬社製)
〈成分II〉
・アルミニウム化合物(1)
乳酸アルミニウム
・アルミニウム化合物(2)
AlK(NH)(SO・12H
・カルシウム化合物
乳酸カルシウム
・鉄(II)化合物
乳酸鉄(II)・4水和物
〈成分III〉
・カルボキシビニルポリマー(1)
Carbopol(登録商標) 971PNF(Lubrizol Advanced Materials社製)
0.5質量%水溶液のpH7.5、25℃における粘度 15700cP
・カルボキシビニルポリマー(2)
AQUPEC(登録商標) HV805(住友精化社製)
0.5質量%水溶液のpH7.5、25℃における粘度 56400cP
・ポリアクリル酸Na
ポリアクリル酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)
〈成分IV〉
・キシリトール(キシリットP,三菱商事フードテック社製)
・グルコース(富士フイルム和光純薬社製)
〈成分V〉
・プラスチベース(大正製薬社製)
・流動パラフィン(ハイコールM-352,カネダ社製)
[結果の説明]
実施例1~22の生体適合性材料は、所望の効果が得られることが確認された。
実施例1~2と、実施例3~6との比較から、多糖類が脱アシル化ジェランガム、または、カラギーナンである場合、より効果が優れることが確認された。
実施例7~8、10~12と、実施例9との比較から、多糖類が脱アシル化ジェランガム、カラギーナン、カルメロースNa、および、アルギン酸である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1と、実施例13との比較から、アルミニウム化合物が乳酸アルミニウムである場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1および18と、実施例17との比較から、アルミニウム化合物の含有量が生体適合性材料の全質量に対して1.0質量%~4.5質量%の範囲内である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1と、実施例16との比較から、カルボキシビニルポリマーの0.5質量%濃度水溶液のpH7.5での粘度が20000cP以下である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1および20~21と、実施例19および22との比較から、カルボキシビニルポリマーの含有量に対する多糖類の含有量の質量比の値が0.5~5.5である場合、より効果が優れることが確認された。
また、同様の比較から、油性基材の含有量に対する多糖類の含有量の質量比の値が、0.20以上0.40未満である場合、より効果が優れることが確認された。

Claims (12)

  1. 口腔粘膜用の生体適合性材料であって、
    多糖類と、アルミニウム化合物と、カルボキシビニルポリマーと、油性基材とを含み、水を実質的に含まず、
    前記多糖類が、脱アシル化ジェランガム、脱アシル化ジェランガムの塩、カラギーナン、カラギーナンの塩、ペクチン、ペクチンの塩、キサンタンガム、キサンタンガムの塩、アラビアガム、アラビアガムの塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、カルメロース、カルメロースの塩、ヒプロメロース、ヒプロメロースの塩、および、アルギン酸からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記カルボキシビニルポリマーの含有量に対する前記多糖類の含有量の質量比の値が0.5~5.5である、生体適合性材料。
  2. 前記アルミニウム化合物が乳酸アルミニウムである、請求項1に記載の生体適合性材料。
  3. 前記アルミニウム化合物の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、0.1質量%~5.0質量%である、請求項1または2に記載の生体適合性材料。
  4. 前記アルミニウム化合物の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、1.0質量%~4.5質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  5. 前記カルボキシビニルポリマーの0.5質量%濃度水溶液のpH7.5での粘度が20000cP以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  6. 前記多糖類の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、5.0質量%~35.0質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  7. 前記多糖類の含有量が、生体適合性材料の全質量に対して、10.0質量%以上24.0質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  8. 前記油性基材がゲル化炭化水素を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  9. 前記油性基材の含有量に対する前記多糖類の含有量の質量比の値が0.20以上0.40未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  10. 糖アルコールおよび糖からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1~のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
  11. 前記糖アルコールおよび前記糖からなる群より選択される少なくとも1種が、キシリトール、グルコース、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、スクロース、トレハロース、および、ラクトースからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の生体適合性材料。
  12. 口腔粘膜保護剤である、請求項1~11のいずれか1項に記載の生体適合性材料。
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