JP7377478B2 - 魚介類養殖方法、プロバイオティクス細菌液、およびプロバイオティクス細菌含有飼料 - Google Patents

魚介類養殖方法、プロバイオティクス細菌液、およびプロバイオティクス細菌含有飼料 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 (1)平成30年9月29日に日本財団、株式会社リバネス、一般社団法人日本先端科学技術教育人材研究開発機構によって開催された「第2回マリンテックグランプリ」のプレゼンテーションにおいて発表 (2)平成30年10月9日に東海大学が公開したウェブサイト:https://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/sapporo/news/detail/post_1228.htmlにおいて発表 (3)平成31年3月7日に株式会社リバネスによって発行された刊行物「海への挑戦vol.2」において発表 (4)令和1年5月9日にAmerican Society for Microbiologyによってオンライン発行されたMicrobiology Resource Announcementsのウェブサイト:https://mra.asm.org/content/8/19/e00169-19.fullにおいて発表
本発明は、魚介類養殖方法、ならびにそれに使用されるプロバイオティクス細菌液およびプロバイオティクス細菌含有飼料に関する。
魚介類の養殖では、収益性の確保のために、養殖対象とする魚介類を出荷可能な大きさまでより早くかつ高歩留りで成長させることが要求される。例えば、寒冷地に生息するエゾアワビは、大~特大サイズとして出荷されるまでに6~7年間を要する。しかし、エゾアワビは、通年で15~20℃で飼育されることによって、成長速度が速くなり、また、冬季の低温による死亡率増大が防止されるので生残率が高くなる(非特許文献1,2)。また、飼育水に二酸化炭素が蓄積すると魚介類の成長が鈍化することから、酸素をナノレベルの気泡(ウルトラファインバブル)として飼育水に混合して酸素を溶存させる閉鎖循環式陸上養殖システムが提案されている(特許文献1)。
特許第6218339号公報
H. Takami et. al., "Overwinter mortality of young-of-the-year Ezo abalone in relation to seawater temperature on the North Pacific coast of Japan", Marine Ecology Progress Series, Volume 367, pp. 203-212, September 2008 平手康市、譜久里長徳、尾崎緑子、"海洋深層水を利用したアワビ類の陸上養殖に関する研究III 海洋深層水を用いたエゾアワビの陸上飼育による成長について"、沖縄県海洋深層水研究所研究業務報告、第4号、p.60-67、2005年
陸上養殖によって水温や水質等の管理が可能となるが、設備投資および維持費ならびに燃料費等のコストに見合うように、成長速度のさらなる向上や個体差のばらつきの低減が望まれている。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、魚介類を容易に短期間で大きく成長させることの可能な養殖方法、ならびにそれに使用されるプロバイオティクス細菌液およびプロバイオティクス細菌含有飼料を提供することを課題とする。
本願発明者らは、エゾアワビについて、北海道の噴火湾側に生息する個体が、陸地を挟んで西の日本海側に生息する個体と比較して成長が良好であることから、噴火湾側の個体の腸内細菌を調査して成長促進に有用なものを特定し、これを別の個体に移植することに想到した。
本発明に係る魚介類養殖方法は、アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類の養殖方法であって、前記成分に対して分解活性を有するプロバイオティクス細菌を、肥育対象とする個体の腸内に経口的に移植する移植工程を1回以上行い、前記プロバイオティクス細菌がアガリボランス(Agarivorans)属細菌を含むことを特徴とする。また、本発明に係る別の魚介類養殖方法は、肥育対象とする魚介類の個体の腸内に、前記個体よりも成長速度が速い個体の腸内細菌を経口的に移植する移植工程を1回以上行い、少なくとも1回の前記移植工程の前に、移植対象の個体の腸内細菌を減数する腸内細菌減数処理工程を行うことを特徴とする。
かかる手段により、魚介類養殖方法は、魚介類の摂食した食餌成分を腸内に移植されたプロバイオティクス細菌が分解することによって消化が促進されるので、魚介類の摂食量が増加する。
本発明に係るプロバイオティクス細菌液は、アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類の飼育水に、前記成分に対して分性を有するプロバイオティクス細菌を添加したものである。また、本発明に係るプロバイオティクス細菌含有飼料は、アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類を給餌対象とし、前記成分に対して分性を有するプロバイオティクス細菌を配合したものである。前記プロバイオティクス細菌はいずれも、アガリボランス(Agarivorans)属細菌を含むものである。
かかる構成により、プロバイオティクス細菌液は、魚介類を浸漬することにより、魚介類に負担をかけずにその腸内にプロバイオティクス細菌を移植させることができる。また、プロバイオティクス細菌含有飼料は、魚介類に給餌することにより、魚介類に負担をかけずにその腸内にプロバイオティクス細菌を移植させることができる。
本発明によれば、養殖において、魚介類を容易に短期間で大きく成長させることが可能となる。
本発明の実施形態に係る魚介類養殖方法を説明するフローチャートである。 本発明に係る魚介類養殖方法を実施するためのアワビの陸上養殖システムのモデルである。 野生のエゾアワビから採取した腸内細菌の単離した細菌株別の酵素によるアガーおよびアルギン酸に対する分解活性を示すグラフである。 野生のエゾアワビから採取した腸内細菌の単離した細菌株の酵素によるアガー分解活性の温度依存性を示すグラフである。 ウルトラファインバブル発生装置による海水の溶存酸素量の推移を示すグラフである。 高酸素ウルトラファインバブル海水での処理時間による細菌数の推移を示すグラフであり、(a)はエゾアワビの腸内容物の細菌数、(b)は海水の細菌数である。 高酸素ウルトラファインバブル海水での処理時間による細菌数の推移を示すグラフであり、(a)は海水メダカの腸内容物の細菌数、(b)は海水の細菌数である。 高酸素ウルトラファインバブル海水での処理時間によるクルマエビの腸内容物の細菌数の推移を示すグラフである。 本発明に係る魚介類養殖方法の実施例と比較例とによるエゾアワビの殻長および生残率の推移を示すグラフである。 本発明に係る魚介類養殖方法の実施例と比較例とによるエゾアワビの腸管組織の顕微鏡写真であり、(a)は実施例、(b)は比較例である。
本発明に係る魚介類養殖方法、プロバイオティクス細菌液、およびプロバイオティクス細菌含有飼料を実施するための形態について説明する。
本発明の実施形態に係る魚介類養殖方法は、肥育対象とする魚介類の個体の腸内に、高成長を示す個体の腸内細菌としてプロバイオティクス細菌を経口的に移植する移植工程を1回以上行う。移植工程は、移植対象の個体の飼育水にプロバイオティクス細菌を添加する細菌液処理工程S2によるか、プロバイオティクス細菌を添加した餌を、移植対象の個体に給餌する給餌工程S3によって行うことができ、細菌液処理工程S2と給餌工程S3とを併用することもできる。また、細菌液処理工程S2の直前または給餌工程S3の直前に、移植対象の個体の腸内細菌を減数する腸内細菌減数処理工程S1を行うことが好ましい。ここでは、図1に示すように、養殖の開始時に、腸内細菌減数処理工程S1および細菌液処理工程S2を連続して実行する。その後、個体を飼育しながら給餌工程S3を1回ないし複数回行う。この一連の工程S1,S2,S3を、所定の期間または個体が目標の大きさに成長するまで繰り返す。以下、各工程について詳細に説明する。
本発明に係る魚介類養殖方法を実施するための養殖システムの一例として、アワビの陸上養殖システムのモデルを図2に示す。本実施形態に係る魚介類養殖方法を実施する陸上養殖システム10は、肥育対象の個体(アワビ)Hを飼育する飼育槽2およびその中の海水(飼育水)SWを循環処理する装置(図示省略)からなる飼育システム1、腸内細菌減数処理工程S1を実行するための処理槽4、ウルトラファインバブル発生装置5および酸素ボンベ6、細菌液処理工程S2を実行するための処理槽7を備える。飼育システム1は、閉鎖循環式や半閉鎖循環式等の公知の陸上養殖システムを適用することができる。このような飼育システム1は、飼育槽2の他に、例えば、海水SWを循環させるポンプ、飼育槽2から排出された海水を浄化する物理・生物濾過器や紫外線殺菌装置等、飼育槽2に給水する直前の浄化した海水を適温に加熱または冷却する温調機、海水中で酸素を曝気する等して好適な溶存酸素量とする酸素溶解装置を備える。処理槽4および処理槽7は、後記するように、1回で処理する数の個体Hを浸漬することができる程度の容量の水槽である。ウルトラファインバブル発生装置5は、外気や接続したボンベ6内の気体をウルトラファインバブルとして処理槽4内の飼育水中に供給する。個体Hは、養殖期間中の多くにおいて飼育システム1の飼育槽2で飼育されて、プロバイオティクス細菌含有飼料(プロバイオティクス細菌を添加した餌)Fや海藻A等を給餌される。個体Hは、数日ないし数月に1回、飼育槽2から取り出されて、処理槽4、処理槽7に順次それぞれ30~120分間程度移される。
〔細菌液処理工程〕
細菌液処理工程S2は、移植対象の個体の飼育水にプロバイオティクス細菌を添加することによって、個体に飼育水を介してプロバイオティクス細菌を腸内に取り込ませる。細菌液処理工程S2は、肥育対象の個体を飼育している水槽等(以下、飼育槽)に、直接にプロバイオティクス細菌を投入することによって実行することができる。または、細菌液処理工程S2は、別の水槽(以下、処理槽)にプロバイオティクス細菌を添加した飼育水(プロバイオティクス細菌液)を準備して、その中に移植対象の個体を一時的に、例えば30~60分間浸漬してもよく、その後に飼育槽に戻す。あるいは、飼育槽から移植対象の個体を少量の飼育水と共に処理槽に移してから、処理槽にプロバイオティクス細菌を投入してもよい。処理槽で処理するこれらの方法であれば、プロバイオティクス細菌液への浸漬が一時的であるので、例えば移植対象の個体の全数が浸漬する程度の量のプロバイオティクス細菌液があればよい。したがって、細菌濃度の高いプロバイオティクス細菌液を得るために、プロバイオティクス細菌を多量に培養しなくてよい。そして、細菌濃度の高いプロバイオティクス細菌液によって、短時間で効率的にプロバイオティクス細菌を取り込ませることができる。プロバイオティクス細菌液の細菌濃度は、0.5~2重量%が好ましい。なお、処理槽で処理した個体を飼育槽に戻す際に、プロバイオティクス細菌液を共に飼育槽に投入して希釈させてもよい。ここで、プロバイオティクス細菌について説明する。
(プロバイオティクス細菌)
プロバイオティクス細菌とは、一般的に、宿主に有用な腸内細菌で、主に、経口摂取によって腸内への移植が可能なものが称される。本発明におけるプロバイオティクス細菌は、肥育対象とする魚介類の食餌成分に対して高分解性を示し、この魚介類の腸内に存在可能かつ経口的に腸内に移植可能な細菌である。例えば、アワビ(クロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ、トコブシ等を指す)は、海藻を食餌とする。本明細書において、「海藻」とは、海産種群の藻類の総称を指し、褐藻類、紅藻類、および緑藻類が包含され、例えば、褐藻類として、アラメ、ガゴメコンブ等が、紅藻類として、キリンサイ、クロバラノリ(スサビノリ)、トサカノリ、オゴノリ等が、緑藻類として、ヒトエグサ(アオサ)等が、それぞれ挙げられる。そして、分解される海藻の成分とは、アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランといった多糖類であり、プロバイオティクス細菌はこのうちの少なくとも1種、好ましくは2種以上を分解するものが適用される。なお、プロバイオティクス細菌は、異なる多糖類を分解するものを2種以上適用してもよいし、2種以上の多糖類を分解する1種を適用してもよい。
このような海藻成分に対して分解活性を有するプロバイオティクス細菌として、アガリボランス(Agarivorans)属細菌が挙げられる。アガリボランス属細菌は、海水や海底の泥、あるいは、エゾアワビやトコブシのようなアワビやサザエ、また、ウニやナマコといった海藻食生の魚介類から検出されている。ただし、アガリボランス属細菌は、菌株ごとに分解活性が異なる場合がある。そのため、肥育対象とする魚介類において成長の良好な個体を捕獲して、その腸内容物からプロバイオティクス細菌とするアガリボランス属細菌を得ることが好ましい。海藻成分に対して分解活性を有するアガリボランス属細菌は、培養の際に寒天培地を凹ませるので容易に選別することができ、また、培養も容易である。培養において、培地にアガー等の海藻成分を添加してもよい。
本願発明者らは、近隣の他の場所よりも成長が良好とされる北海道の噴火湾側の海岸(北海道虻田郡豊浦町)で捕獲した野生のエゾアワビ(Haliotis discus hannai)の腸内容物に含まれる細菌から、藻類を食餌とする魚介類のためのプロバイオティクス細菌に好適なアガリボランス属細菌の菌株を特定した。この菌株は、「Toyoura001株」と命名されて受託番号NITE BP-02802として寄託されている。Toyoura001株は、他のアガリボランス属細菌と比較して、アガーおよびアルギン酸の両方に対して高い分解活性を有する。本実施形態においては、プロバイオティクス細菌として、Toyoura001株またはその変異株を使用することが好ましい。Toyoura001株は、前記したように、成長の比較的良好なアワビを解剖し、腸内容物を採取して寒天培地に塗布して培養し、アガーおよびアルギン酸の両方に対する分解活性を有する株を単離することで得ることができる。
Toyoura001株の変異株とは、例えば、配列番号1に示される塩基配列と95%以上、好ましくは96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を示す16S rRNA遺伝子塩基配列を有する菌株を指す。このようなToyoura001の変異株は、例えば、Toyoura001から当業者に公知の変異処理により誘導され得る。該変異処理として、例えば、紫外線、γ線といった放射線等の照射、メチルニトロソウレア等の変異原性化学物質の接触、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)処理、エチルメタンスルホン酸(EMS)処理等が挙げられる。
〔給餌工程〕
給餌工程S3は、肥育対象とする個体に、プロバイオティクス細菌を添加した餌を給餌して摂食させることによって、個体に口からプロバイオティクス細菌を腸内に取り込ませる。プロバイオティクス細菌を添加される餌としては、肥育対象とする魚介類用の市販の配合飼料を使用することができる。例えばアワビ用であれば、コンブ等の海藻の粉末および魚粉を主原料として、一辺が数~30mm程度の板状または直径が数~20mm程度の円盤状に加圧成形した配合飼料が市販されている。この配合飼料に、プロバイオティクス細菌を水または海水に懸濁させた液体を噴霧する等して内部に含浸させて、プロバイオティクス細菌含有飼料とする。あるいは、プロバイオティクス細菌含有飼料は、配合飼料の成形前の材料にプロバイオティクス細菌を混合してから成形して製造することもできる。プロバイオティクス細菌含有飼料は、細菌含有割合2~5重量%が好ましく、また、含水量が多いと崩壊し易いので、水分10重量%以下が好ましい。また、含水量や配合飼料におけるプロバイオティクス細菌に分解される成分の含有量等にもよるが、プロバイオティクス細菌含有飼料は、プロバイオティクス細菌によって分解されて崩壊が進行するため、プロバイオティクス細菌を含浸させたら速やかに、例えば24時間以内に給餌することが好ましい。あるいは、プロバイオティクス細菌含有飼料は、プロバイオティクス細菌の分解活性が低い低温で保管されることが好ましい。
肥育対象とする個体には、プロバイオティクス細菌含有飼料だけでなく、市販の配合飼料や、例えばアワビであれば生の海藻等を給餌することができる。例えば、プロバイオティクス細菌含有飼料ではない通常の給餌の1回ないし複数回おきに1回の給餌工程S3を実行してもよい。このように、プロバイオティクス細菌含有飼料以外の食餌を組み合わせて、肥育対象とする個体に必要な栄養を投与することが容易となる。
細菌液処理工程S2および給餌工程S3は、どちらもプロバイオティクス細菌を魚介類の腸内に経口的に移植する移植工程であり、一方のみを実行してもよい。肥育対象とする個体の腸内にプロバイオティクス細菌が存在すると、腸内で、当該個体が摂食した餌における特定の成分をプロバイオティクス細菌が分解するので、餌の消化が促進される。その結果、宿主である個体の摂食量が増加し、成長を速くする。細菌液処理工程S2の方が効率的に多数のプロバイオティクス細菌を移植することができる。一方、給餌工程S3は、通常の給餌を置き換えた作業であるので、簡易である。また、細菌液処理工程S2および給餌工程S3は、肥育させる期間において繰り返し実行することが好ましい。プロバイオティクス細菌の多くは腸内に定着し難く時間が経つと排泄されてしまうので、定期的にまたは所定の時期に、次の細菌液処理工程S2または給餌工程S3を実行して、新たなプロバイオティクス細菌を移植することが好ましい。または、例えばサンプリングした個体の大きさを計測して、その大きさや成長速度に応じて、細菌液処理工程S2や給餌工程S3を実行してもよい。
〔腸内細菌減数処理工程〕
腸内細菌減数処理工程S1は、肥育対象とする個体の腸内に存在している細菌を減数する工程であり、その後の細菌液処理工程S2または給餌工程S3で経口的に移植されるプロバイオティクス細菌が腸内に留まり易くするために実行される。腸内細菌減数処理工程S1は、処理対象の個体の飼育水中に、酸素を含有する気体を、直径1μm以下の気泡すなわちウルトラファインバブル(UFB)として供給することによって行うことができる。液中にウルトラファインバブルを供給するUFB発生装置は、市販されているものを使用することができる。ウルトラファインバブルを供給された飼育水(UFB水)は、魚介類の生息、成長に不適な環境とならないように、溶存酸素量(DO値)を処理前以上とし、処理前よりも多くすることが好ましく、飽和(平衡)状態とすることがさらに好ましい。魚介類がこのようなUFB水を取り込むと、腸内細菌を排出し易くなって細菌数が減少する。そのために、ウルトラファインバブルとする気体は、酸素を空気相当以上に含有する気体が好ましい。なお、空気を供給することもできるが、窒素を多く含有するので、過飽和に溶存させると、魚介類の種類や処理時間によっては窒素ガス病を発症する場合がある。これらのことから、酸素や空気中の酸素を高濃度化した(例えば約90%以上)気体を供給することが好ましい。例えば、酸素をウルトラファインバブルとして飼育水に供給した場合、酸素を供給され続けて飼育水のDO値が平衡に到達すると、酸素がウルトラファインバブルのまま飼育水中に存在する。このような飼育水(高酸素UFB水)に処理対象の個体が30分間以上浸漬されることが好ましい。処理時間が長くなると、UFB発生装置の運転時間が長くなって効率が低下するので、120分間以下が好ましく、60分間以下がより好ましい。
腸内細菌減数処理工程S1は、飼育槽にUFB発生装置を投入、運転して、飼育水にウルトラファインバブルを供給することができる。例えば、飼育水のDO値を計測しながらUFB発生装置で酸素を供給し、DO値が平衡に到達して30分間経過したら、UFB発生装置の運転を停止する。または、処理対象の個体を少量の飼育水と共に移した処理槽にUFB発生装置を投入してもよく、DO値が平衡に到達した後、さらに30~120分間運転を継続する。または、飼育槽の飼育水にUFB発生装置で酸素を供給して、DO値が平衡に到達してから、その中に処理対象の個体を30~120分間浸漬してもよい。処理槽で処理するこれらの方法であれば、高酸素UFB水への浸漬が一時的であるので、例えば処理対象の個体の全数が浸漬する程度の量の飼育水に対してDO値を平衡に到達させればよく、UFB発生装置の運転時間を短縮することができる。
腸内細菌減数処理工程S1の完了後は、速やかに細菌液処理工程S2または給餌工程S3を実行して、腸内細菌を排出した個体が飼育水中の細菌を取り込む前にプロバイオティクス細菌を移植することが好ましい。なお、細菌液処理工程S2や給餌工程S3の1回毎にその直前に腸内細菌減数処理工程S1を実行しなくてもよい。すなわち、図1に示すように、細菌液処理工程S2のみについてその直前に腸内細菌減数処理工程S1を実行することが好ましい。腸内細菌減数処理工程S1および細菌液処理工程S2は、前記したように小容量の処理槽で実行することができるので、飼育槽内の養殖かご等に収容した個体を、プロバイオティクス細菌液および高酸素UFB水をそれぞれ入れた処理槽に順次浸漬させればよく、効率的に一連の工程を実行することができる。
本発明の実施形態に係る魚介類養殖方法は、前記の各工程S1,S2,S3を含めて、肥育対象とする魚介類の生息や成長に好適な水温で実行される。例えばエゾアワビであれば、5℃超20℃以下であり、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。さらに、プロバイオティクス細菌の分解活性が高くなる温度であることが好ましい。アガリボランス属細菌であれば約30℃以下において温度が高いほど活性が高くなるので、エゾアワビの成長に好適な水温である15~20℃の範囲で上限近傍に設定されることが特に好ましい。なお、腸内細菌減数処理工程S1のUFB水および細菌液処理工程S2のプロバイオティクス細菌液においては、水温が飼育槽と同じでなくてもよいが、肥育対象の個体の環境に急激な温度変化がないように水温が近いことが好ましく、同じであることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る魚介類養殖方法は、個体を飼育槽から取り出して移動させ易い陸上養殖が好適であり、さらに、閉鎖循環式であれば飼育水の温度調整が効率的であるが、掛け流し式等でもよい。あるいは、本発明の実施形態に係る魚介類養殖方法は、海面養殖に適用することもできる。プロバイオティクス細菌含有飼料を給餌する給餌工程S3だけを実行してもよいし、海中の養殖かごに収容した個体に対して、定期的に、例えば養殖かごの交換時に、処理槽内に移して腸内細菌減数処理工程S1および細菌液処理工程S2を実行することもできる。また、海水温の低い冬季はプロバイオティクス細菌の活性が低いので、春~秋季に給餌工程S3や細菌液処理工程S2を実行することで、作業が効率化される。また、アガリボランス属細菌をプロバイオティクス細菌とする本実施形態に係る魚介類養殖方法は、アワビに限らず、藻類を食餌とする魚介類に対して適用することができ、例えば、サザエ(サザエ、チョウセンサザエ、ヤコウガイ)等の他の巻貝や、ウニ(バフンウニ、エゾバフンウニ、ムラサキウニ、キタムラサキウニ等)やナマコ(マナマコ、キンコ、バイカナマコ等)の棘皮動物が挙げられる。
以上、本発明に係る魚介類養殖方法、プロバイオティクス細菌液、およびプロバイオティクス細菌含有飼料を実施するための実施形態につい説明したが、以下に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例および前記実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
〔プロバイオティクス細菌による藻類分解試験〕
エゾアワビが食餌とする海藻に対して高分解性を示すプロバイオティクス細菌を特定、採取した。
北海道の噴火湾側の海岸(北海道虻田郡豊浦町)と日本海側の海岸とのそれぞれで捕獲した野生のエゾアワビ(Haliotis discus hannai)を、翌日に解剖して腸内容物を採取した。腸内容物をフィルター滅菌した人工海水(Instant Ocean、Aquarium Systems社)に懸濁させ、懸濁液をMarine Broth(Difco社)の1.5%寒天培地に画線塗布し、15℃、好気条件下で10日間培養した。培養後、寒天培地に複数のコロニーが形成され、噴火湾側のエゾアワビの腸内容物については、寒天上に生えるコロニーだけでなく、寒天を凹ませながら生育するコロニーが観察された。
噴火湾側のエゾアワビから採取された腸内細菌のコロニーのうち、寒天を凹ませたもの4個(株名:203株、206株、219株、225株)、および凹ませないもの4個(株名:201株、204株、220株、222株)について、16S rRNA遺伝子の部分配列を解読して簡易同定した。その結果、寒天を凹ませたものはすべてアガリボランス属細菌であり、凹ませないものはAllivibrio、Shewanella、Vibrio属細菌の近縁種であると推定された。なお、222株および225株の2株とそれ以外の6株とは、それぞれ別個体のエゾアワビから単離されたものであった。
(アガー分解活性およびアルギン酸分解活性の測定)
これら8株について、アガー分解活性およびアルギン酸分解活性を測定した。
(1)酵素溶液の調製
単離した細菌をMarine Broth液体培地に懸濁して振とう培養(15℃、24h)し、遠心分離(2,800rpm、20分間、4℃)後の上澄み液をフィルター滅菌(DISMIC-25、0.45μm)して菌体外酵素を得た。
(2)アガー分解活性
基質溶液に、0.25%のアガー(試薬特級、富士フイルム和光純薬)を含有する10mMリン酸緩衝液(pH6.8)を使用した。酵素液とリン酸緩衝液(pH6.8)とを混合した後、基質溶液を添加混合して、30℃で30分間反応させた。遠心分離(7000rpm、4℃、5分間)後の反応液上清にジニトロサリチル酸試薬を加え、100℃で5分間加熱した。氷冷後、吸光度を545nmで測定した。アガロース分解の生成物であるガラクトースを用いて検量線を作成し、ガラクトース生成量を酵素活性とした。
(3)アルギン酸分解活性
酵素液と0.1M Tris-HCl緩衝液(pH7.5)とを混合した後、1%(w/v)アルギン酸ナトリウム含有0.1M Tris-HClを添加混合して、30℃で30分間反応させた。遠心分離(8,000rpm、4℃、5分間)後の反応液上清の吸光度を235nmで測定した。酵素活性は、吸光度を1分間あたり0.01増加させる酵素活性を1Uと定義した。アルギン酸分解酵素活性測定については、Inoue A.et. al., “Characterization of an Alginate Lyase, FlAlyA, from Flavobacterium sp. Strain UMI-01 and Its Expression in Escherichia coli”, Marine Drugs, Volume 12, pp.4693-4712, August 2014 を参考にした。
各株の分解活性を、206株を100として相対的にグラフで図3に示す。寒天を凹ませた4株は、アガー、アルギン酸の両方に対して分解活性を示した。特に206株は、アガーおよびアルギン酸の両方に高い分解活性を示した。また、206株について、アガー分解活性を、反応温度を変化させて測定した。図4に、30℃を100として相対的にグラフで示す。アガー分解活性は、30~35℃をピークとして最も高く、20℃では30℃の約70%、10℃では約40%であった。206株について、16S rRNA遺伝子の全長を解読してより詳細な系統分類を解析した。その結果、206株は、アガリボランス属細菌の既知記載種A.albus,A.aestuarii,A.gilvus,A.litoreusのどれとも相同性が低かった。この206株は、アガリボランス属細菌の新種であると考えられ、「Toyoura001株」(受託番号NITE BP-02802)と命名された。
(多糖類の資化性の評価)
Toyoura001株の、アガーおよびアルギン酸以外も含めた多糖類の分解活性について評価した。25℃で24時間、0.01%アガーおよび0.02%アルギン酸を含むMB培地で培養したToyoura001株を、アガー、アガロース、アルギン酸、フコイダン、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、ラミナラン、デンプン、ペクチン、キシラン、CMセルロース、イヌリン、プルラン、およびゲランガムをそれぞれ唯一の炭素源とする培地(L A Ensor, S K Stosz, R M Weiner, “Expression of multiple complex polysaccharide-degrading enzyme systems by marine bacterium strain 2-40”, Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology, Volume 23, Issue 2, pp. 123-126, August 1999に準拠)に接種して、25℃で48時間培養して濁度を比較した。なお、アガロースおよびκ-カラギーナンについては、培地がゲル化したため濁りを目視で確認した。結果を表1に示す。アガー、アガロース、アルギン酸、フコイダン、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、デンプン、ペクチン、キシラン、プルラン、ゲランガムにおいて菌の増殖が確認された。また、アガロースおよびκ-カラギーナンについては、ゲル化した培地の液状化も確認された。このことから、Toyoura001株がアガー、アルギン酸、フコイダン、カラギーナン、ペクチン、キシラン分解活性を有することが示された。
Figure 0007377478000001
このように、成長の良好な噴火湾側のエゾアワビは、日本海側のエゾアワビにはない、寒天を分解するアガリボランス属細菌を腸内に有する。詳しくは、アガリボランス属細菌は、海藻を原料とする寒天の成分を分解する酵素を有し、30℃以下において温度が高いほど分解活性が高い。アガリボランス属細菌は、腸内細菌として宿主が摂食した藻類を消化することを促進するため、アガリボランス属細菌を腸内に有し、藻類を食餌とする噴火湾側のエゾアワビは、摂食量が多く、成長が速い。
〔ウルトラファインバブルによる腸内細菌減数処理試験〕
エゾアワビ、海水で飼育したメダカ(海水メダカ)、およびクルマエビについて、UFB処理による腸内細菌数への影響を調査した。エゾアワビは殻長約32mmのものを12個体、クルマエビは体重27gのものを16個体、メダカは体長約30mmのものを12個体、それぞれ準備した。
容量200Lの水槽に入れた100Lの海水を水温20℃に調整し、酸素ボンベを接続したウルトラファインバブル発生装置(ナノフレッシャー(登録商標)NF-WP0.4、株式会社ナノクス製)を海水に投入して、海水の溶存酸素量(DO値)を計測しながら運転した。水槽は、ポリカーボネート製の円形のものを使用した。DO値が平衡に達した運転開始30分間経過後に、海水(高酸素ウルトラファインバブル海水)にエゾアワビを投入した。海水の溶存酸素量(DO値)の推移をグラフで図5に示す。
高酸素ウルトラファインバブル海水(高酸素UFB海水)への投入から経過時間(処理時間)が0(投入前)、30,60,120分間でそれぞれエゾアワビを3個体取り出して、腸内容物を採取した。また、同時に高酸素UFB海水を採取した。採取した腸内容物をMarine Broth寒天培地にプレーティングし、細菌数を測定した。同様に、高酸素UFB海水中の細菌数を測定した。エゾアワビの腸内容物および高酸素UFB海水の細菌数をグラフで図6の(a)、(b)に示す。同様の試験を、メダカおよびクルマエビについても実施した。メダカの腸内容物および高酸素UFB海水の細菌数をグラフで図7の(a)、(b)に示す。クルマエビの腸内容物の細菌数をグラフで図8に示す。
ウルトラファインバブル発生装置の運転において、エゾアワビの投入による高酸素UFB海水のDO値への影響は見られなかった。また、エゾアワビ、メダカ、およびクルマエビのいずれについても、ウルトラファインバブルによってDO値が平衡に達した海水中で、死亡する個体はなかった。エゾアワビおよびメダカについては、処理開始後30分間から腸内細菌数が減少したことが確認された。クルマエビについては、処理開始後60分間から腸内細菌数が減少したことが確認された。一方、エゾアワビを投入された高酸素UFB海水については、細菌数の有意な変化が確認されなかったが、メダカを投入された高酸素UFB海水については、処理開始後60分間まで細菌数の増加が確認された。これらのことから、高酸素UFB海水によって、宿主の腸内から細菌が排出されたと推測される。また、高酸素UFB海水への浸漬による腸内細菌減数処理は、30~60分間が好ましいと考えられる。
〔養殖試験〕
エゾアワビについて、本発明に係る魚介類養殖方法による成長速度への影響を、比較例と比較して調査した。
(供試体、飼料)
供試体として、公益社団法人北海道栽培漁業振興公社熊石事業所で約1年間飼育された殻長約32mmのエゾアワビを、約80個体ずつ実施例と比較例とに準備し、それぞれ100L水槽内の網かごで90日間飼育した。また、飼育水として、汲み上げた地下海水を使用し、水温20℃に調整した。飼料として、海藻由来材料を含有する9~12mmの板状の圧片に成形された市販のアワビ用配合飼料(あわび3号N、日本農産工業株式会社)を使用した。
(プロバイオティクス細菌含有飼料、プロバイオティクス細菌液)
プロバイオティクス細菌として、実施例1で野生のエゾアワビの腸内容物から採取、単離した206株(Toyoura001株)を使用した。プロバイオティクス細菌を、アガーおよびアルギン酸をそれぞれ添加したMarine Broth液体培地で培養した。得られた培養液を遠心分離して菌体を回収し、滅菌人工海水で洗浄した。調整した菌体を滅菌人工海水に懸濁し、スプレーボトルで市販のアワビ用配合飼料に噴霧し、細菌含有割合2重量%(アガー培地由来1重量%、アルギン酸培地由来1重量%)、水分10重量%のプロバイオティクス細菌含有飼料を得た。また、菌体を飼育海水に添加して、細菌濃度2重量%(アガー培地由来1重量%、アルギン酸培地由来1重量%)のプロバイオティクス細菌液を調整した。
得られたプロバイオティクス細菌含有飼料について、保形性を確認した。プロバイオティクス細菌含有飼料、および比較例として市販の配合飼料を2g(約14片)、海水10mLと共に容量15mLのメスシリンダに入れ、20℃で保持し、外観を目視で観察した。3.5日間経過後で、プロバイオティクス細菌含有飼料、配合飼料共に形状を保持していたが、プロバイオティクス細菌含有飼料の方は僅かに崩壊が確認された。これは、プロバイオティクス細菌が海藻由来材料を含有する配合飼料の海藻成分を分解したことによると推測される。ただし、プロバイオティクス細菌含有飼料は、海水中で3日間を超えて十分に形状を保持しているので、養殖用の飼料として海水に投入しても問題ないといえる。
(腸内細菌減数処理工程)
腸内細菌減数処理工程は、試験開始時およびその後の約1月毎に実施した。飼育用の水槽とは別の水槽に飼育水を入れ、実施例2と同様に、水温20℃に調整して、ウルトラファインバブル発生装置を運転し、運転開始30分間経過後に、実施例のエゾアワビを網かごごと投入し、30分間浸漬した。同様に、比較例のエゾアワビについても、別の水槽で実施した。また、2回目以降(試験開始1月後以降)は、浸漬時間60分間とした。
(細菌液処理工程)
実施例のエゾアワビについて、腸内細菌減数処理工程後に引き続いて、20℃のプロバイオティクス細菌液を入れた水槽に投入して、30分間浸漬した後、飼育用の水槽に戻した。比較例のエゾアワビについては、腸内細菌減数処理工程後は、そのまま飼育用の水槽に戻した。
(給餌工程)
試験期間中、2~5日間に1回、実施例のエゾアワビにプロバイオティクス細菌含有飼料を、比較例のエゾアワビに市販の配合飼料を、それぞれ給餌した。その際、残餌や斃死個体を除去した。
(測定)
試験期間中、約1月毎に、実施例、比較例のエゾアワビ全個体の殻長を計測し、表2に平均値を示す。図9に平均殻長および生残率の推移を示す。また、表2に平均成長速度を示す。
90日間の飼育完了後、運動能力の評価として、各10個体を水槽の底に裏返して載置し、裏返し状態から反転して匍匐運動し始めるまでの時間を計測した。表2に平均値および標準偏差を示す。また、各5個体を解剖して腸を摘出し、腸管組織をHE(Hematoxylin-Eosin)染色して、顕微鏡により40倍で観察した。図10に、腸管組織の顕微鏡写真を示す。
Figure 0007377478000002
腸内細菌減数処理工程および細菌液処理工程のいずれにおいても、浸漬中のエゾアワビは苦悶等することなく、活発に動く様子が観察され、死亡する個体もなかった。そして、実施例、比較例共に、一般的な加温養殖と同等以上の生残率であり、特に実施例では高かった。したがって、ウルトラファインバブルによる高酸素海水への浸漬、およびプロバイオティクス細菌液への浸漬のいずれも、エゾアワビへの悪影響がないことが確認された。また、プロバイオティクス細菌含有飼料は、市販の配合飼料と同等以上にエゾアワビに摂食されることが確認された。
また、表2および図9に示すように、実施例は、腸内細菌減数処理のみを施した比較例よりも大きく成長し、1日あたりの平均成長速度が1.66倍であった。また、90日間の飼育完了後の実施例は、殻長が比較例の1.05倍に過ぎないにもかかわらず、運動能力が比較例の1.77倍の速さであった。このことから、プロバイオティクス細菌液への浸漬およびプロバイオティクス細菌含有飼料の給餌によって、エゾアワビの成長が促進されたことが確認され、したがって、エゾアワビの腸内にプロバイオティクス細菌が取り込まれたことが推測される。また、図10(b)に示すように、腸内細菌減数処理のみを施した比較例は、腸管上皮の粘膜層に委縮が観察された(三角形を付して位置を示し、図10(a)にも対応する位置に三角形を付す)。
本発明に係る魚介類養殖方法は、各種魚介類の養殖に利用することができる。
S1 腸内細菌減数処理工程
S2 細菌液処理工程(移植工程)
S3 給餌工程(移植工程)

Claims (11)

  1. アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類の養殖方法であって、
    前記成分に対して分解活性を有するプロバイオティクス細菌を、肥育対象とする個体の腸内に経口的に移植する移植工程を1回以上行い、
    前記プロバイオティクス細菌が、アガリボランス(Agarivorans)属細菌を含むことを特徴とする魚介類養殖方法。
  2. 前記アガリボランス属細菌は、受託番号NITE BP-02802として寄託されたアガリボランス属細菌またはその変異株である請求項に記載の魚介類養殖方法。
  3. 前記プロバイオティクス細菌は、前記魚介類の肥育対象とする個体よりも成長速度が速い個体から採取したものを培養したものである請求項1または請求項に記載の魚介類養殖方法。
  4. 少なくとも1回の前記移植工程の前に、移植対象の個体の腸内細菌を減数する腸内細菌減数処理工程を行う請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の魚介類養殖方法。
  5. 藻類を食餌とする魚介類の養殖方法であって、
    アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランの少なくとも1種に対して分解活性を有するプロバイオティクス細菌を、肥育対象とする個体の腸内に経口的に移植する移植工程を1回以上行い、
    少なくとも1回の前記移植工程の前に、移植対象の個体の腸内細菌を減数する腸内細菌減数処理工程を行うことを特徴とする魚介類養殖方法
  6. 肥育対象とする魚介類の個体の腸内に、前記個体よりも成長速度が速い個体の腸内細菌を経口的に移植する移植工程を1回以上行い、
    少なくとも1回の前記移植工程の前に、移植対象の個体の腸内細菌を減数する腸内細菌減数処理工程を行うことを特徴とする魚介類養殖方法
  7. 前記腸内細菌減数処理工程は、移植対象の個体の飼育水中に、酸素を含有する気体をウルトラファインバブルとして供給する請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の魚介類養殖方法。
  8. 前記腸内細菌減数処理工程は、前記飼育水中に、酸素を含有する気体をウルトラファインバブルとして供給した後に、前記個体を浸漬する請求項に記載の魚介類養殖方法。
  9. 前記魚介類は、アワビおよびサザエを含む巻貝、ウニ、またはナマコである請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の魚介類養殖方法。
  10. アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類の飼育水に、前記成分に対して分性を有するプロバイオティクス細菌を添加したプロバイオティクス細菌液であって、
    前記プロバイオティクス細菌が、アガリボランス(Agarivorans)属細菌を含むプロバイオティクス細菌液
  11. アガー、アルギン酸、フコイダイン、カラギーナン、ペクチン、およびキシランから選択される1種以上の成分を食餌成分に含む魚介類、または藻類を食餌とする魚介類を給餌対象とし、前記成分に対して分性を有するプロバイオティクス細菌を配合したプロバイオティクス細菌含有飼料であって、
    前記プロバイオティクス細菌が、アガリボランス(Agarivorans)属細菌を含むプロバイオティクス細菌含有飼料
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