JP7376348B2 - 正極、リチウムイオン二次電池、正極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

正極、リチウムイオン二次電池、正極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、正極、リチウムイオン二次電池、正極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度及び電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウムイオン二次電池が常用化され、広く使用されている。現在、このようなリチウムイオン二次電池の高容量化及び高エネルギー密度化を試みる研究が精力的に進められている。
しかしながら、このようなリチウムイオン二次電池の高容量化にあたり、正極活物質スラリーのスラリー安定性が低下する場合や十分な寿命特性が得られない場合があり、これらの特性の改善が望まれている。
特開2000-034134号公報
特開2017-010923号公報
本発明が解決しようとする課題は、優れたスラリー安定性と優れたサイクル特性とを両立させることのできるリチウムイオン二次電池用の正極活物質、正極、及びリチウムイオン二次電池を提供することである。
本発明の一態様によると、リチウム遷移金属酸化物を含有する正極活物質と、添加剤として酸化物固体電解質及びホスホン酸化合物と、を含む正極活物質層が正極集電体上に形成された、正極が提供される。本明細書において、「リチウム遷移金属酸化物」とは、リチウム及び遷移金属を含み、遷移金属-酸素結合を有する化合物を意味し、アルミニウムなどの典型金属元素や酸素以外の非金属元素を含有するものも含む。また、「酸化物固体電解質」とは、固体中をイオンが移動することで電気が流れる化合物であって酸素を含むものを意味する。また、「ホスホン酸化合物」とは、示性式H-P(=O)(OH)で表される無機ホスホン酸(以下、単に「ホスホン酸」という)及び示性式R-P(=O)(OH)(R:任意の有機基)で表される有機ホスホン酸、並びにこれらの塩、エステルその他の誘導体の総称である。
上記態様に係る正極において、リチウム遷移金属酸化物は、遷移金属の総量を基準として50モル%以上のニッケルを含み得る。
上記態様に係る正極において、リチウム遷移金属酸化物は、遷移金属の総量を基準として80モル%以上のニッケルを含み得る。
上記態様に係る正極において、酸化物固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有し得る。
上記態様に係る正極において、正極活物質層中の酸化物固体電解質の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり得る。
上記態様に係る正極において、ホスホン酸化合物は、リチウム遷移金属酸化物の粒子の表面上で被覆を形成し得る。
ホスホン酸化合物の添加量は、正極活物質層の重量を基準として0.01重量%以上5重量%以下であり得る。
ホスホン酸化合物は、ホスホン酸又は有機ホスホン酸であり得る。
本発明の別の態様によると、上記態様に係る正極と、珪素又は珪素化合物を含有する負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体上に形成された負極と、を備える、リチウムイオン二次電池が提供される。
上記態様に係るリチウムイオン二次電池は、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートのうち少なくとも一つを含む電解液をさらに備え得る。
本発明の別の態様によると、リチウムイオン二次電池用の正極の製造方法であって、
リチウム遷移金属酸化物と、酸化物固体電解質と、ホスホン酸化合物と、溶媒と、を混合することにより正極活物質スラリーを得るステップと、
正極活物質スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層を正極集電体上に形成することにより正極を得るステップと、
を含む、正極の製造方法が提供される。
本発明の別の態様によると、リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
上記態様に係る正極の製造方法により正極を得るステップと、
珪素又は珪素化合物を含有する負極活物質を含む負極活物質層を負極集電体上に形成することにより負極を得るステップと、
正極と負極との間にセパレータ及び電解液を介在させるステップと、
を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布における積算値50%での粒径、すなわちメジアン径(D50)を意味する。
リチウムイオン二次電池の高容量化に伴って生じ得るスラリー安定性及び高温での寿命特性の問題について、一例としてニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物を正極材料として用いるリチウムイオン二次電池を取り上げて説明する。
リチウムイオン二次電池の正極材料として、LiNiCoMnのようなリチウムニッケルコバルトマンガン三元系正極活物質において、組成中のニッケル量を増加させることで高容量化を図ることができることが知られている。しかしながら、リチウムニッケルコバルトマンガン三元系正極活物質では、ニッケル量の増加に伴ってアルカリ性が高くなる。このようなアルカリ性の正極活物質を用いた場合、バインダーとして一般に用いられるポリフッ化ビニリデン(PVdF)や大気中の水分との反応によって正極活物質スラリーのゲル化や粘度上昇などが起こり、スラリー安定性が低下して、電極集電体への塗工に困難を伴う場合がある。
一方、負極材料については、珪素(Si)や酸化珪素(SiO)などの珪素系材料が、現在主流である黒鉛などの炭素系材料よりも高い理論容量密度を有しているため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させる負極活物質として期待されている。しかしながら、現在負極材料として広く用いられている炭素系材料では、初回充電時に電極-電解液界面にSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜が形成され、充放電を繰り返してもこのSEI被膜が維持されるので、電解液との副反応が抑制されるのに対し、珪素系材料では、充電時の膨張及び放電時の収縮が大きいため、この膨張収縮により粒子表面や粒子内部に亀裂が生じたりSEI被膜の破損や脱落が生じたりして、電池のサイクル特性(すなわち寿命特性)に悪影響を及ぼす場合がある。このため、負極材料として珪素系材料を用いる場合には、SEI形成剤であるフルオロエチレンカーボネート(FEC)やジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を電解液に添加し、充放電ごとに良好な被膜形成を行うことが有効である。しかしながら、上記のようにアルカリ性の高い正極材料を用いた場合には、電解液中のFECやDFECが正極活物質のアルカリ成分と反応し、特に45℃以上の高温で炭酸ガスや一酸化炭素などのガスが発生し得る。これらのガスが電極とセパレータとの間などに溜まることにより、電池の寿命特性が劣化するおそれがある。
本発明者は、リチウムイオン二次電池において、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を用いる際に、酸化物固体電解質及びホスホン酸化合物を添加することにより、正極活物質スラリーのスラリー安定性及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性が改善され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者は、特にリチウム遷移金属酸化物のニッケルの含有率が高い場合など正極活物質がアルカリ性の場合には、正極活物質スラリーのスラリー安定性や高温での寿命特性の問題が顕著に見られることがあるため、本発明が特に有効であり得ることを見出した。
[リチウムイオン二次電池]
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ、及び非水電解質を含む。また、リチウムイオン二次電池は、正極、負極、及びセパレータから構成される電極組立体を収容する電池ケース、並びに電池ケースを密封する密封部材を選択的に含み得る。
[正極]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、正極は、正極集電体及び当該正極集電体の一面上又は両面上に形成された正極活物質層を含む。正極活物質層は、正極集電体の面全体に形成されてもよく、一部のみに形成されてもよい。例えば、実施形態に係る正極は、電解液を含むリチウムイオン二次電池用の正極である。
(正極集電体)
正極に使用される正極集電体は、電気化学的に安定に使用でき、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、正極集電体として、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;又はこれらの合金であってもよく、これらの組み合わせからなる1種又は2種以上の混合物であってもよい。また、焼成炭素や、アルミニウム又はステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであってもよい。
正極集電体は、3μm以上500μm以下の厚さを有し得る。正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質との接着力を高めることもできる。正極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を有し得る。
(正極活物質層)
正極活物質層は、正極活物質、正極添加剤、導電剤、及びバインダーの混合物が溶媒中に溶解及び分散した正極活物質スラリーを正極集電体に塗布した後、乾燥及び圧延することで形成することができる。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出することができるリチウム遷移金属酸化物を用いることができる。正極活物質は、例えば、ニッケルを含有するリチウム遷移金属酸化物を含み、好ましくは、ニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物を含み得る。ここで、「ニッケルの含有率が高い」とは、遷移金属の総量を基準として50モル%以上のニッケルを含むことを意味する。
正極活物質の含有量は、正極活物質層の総重量に対して80重量%以上99.5重量%以下であり得る。正極活物質の含有量は、好ましくは85重量%以上98.5重量%以下であり得る。正極活物質の含有量が上記範囲内であれば、優れた容量特性を実現することが可能である。これに対し、正極活物質の含有量が上記範囲未満である場合には、正極の塗布量が増え、厚みが増加し、十分な体積エネルギー密度が達成できない可能性があり、上記範囲を上回る場合には、バインダー及び導電材が不足し、その結果、電極の導電性及び接着力が不足して電池の性能が低下する可能性がある。
(リチウム遷移金属酸化物)
リチウム金属複合酸化物の例としては、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnO、LiMn、LiMnなど);リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど);リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど);リチウム-銅系酸化物(例えば、LiCuOなど);リチウム-バナジウム系酸化物(例えば、LiVなど);リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-zMn(0<z<1)、LiMn2-zNi(0<z<2)など);リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-yCo(0<y<1)など);リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-zMn(0<z<1)、LiMn2-yCo(0<y<2)など);リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)、Li(NiCoMn)O(0<x<2、0<y<2、0<z<2、x+y+z=2)など);リチウム-ニッケル-コバルト-金属(M)酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、及びMoからなる群より選択され、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1、x+y+z+w=1)など);Li
過剰固溶体正極(例えば、pLiMnO-(1-p)Li(NiCoMn)O(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、0<p<1);これらの化合物中の遷移金属元素が部分的に他の1種又は2種以上の金属元素で置換された化合物などが挙げられる。正極活物質層は、これらのうちいずれか1つ又は2つ以上の化合物を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
特に、電池の高容量化に有効なニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物の例として、LiNiO(0.5≦a≦1.5);Li(NiCoMn)O(0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<z<0.5、x+y+z=1);LiNi1-yCo(0.5≦a≦1.5、0<y≦0.5);LiNi1-zMn(0.5≦a≦1.5、0<z≦0.5);Li(NiCoMn)O(0.5≦a≦1.5、1≦x<2、0<y<1、0<z<1、x+y+z=2);Li(NiCo)O(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<w<0.5、x+y+w=1);Li(NiCoMn)O(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<z<0.5、0<w<0.5、x+y+z+w=1);これらの化合物中の遷移金属原子が少なくとも部分的に他の1種又は2種以上の金属元素(例えば、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInのうち1種又は2種以上)で置換された化合物;これらの化合物中の酸素原子が部分的に他の1種又は2種以上の非金属元素(例えば、P、F、S、及びNのうち1種又は2種以上)で置換された化合物などが挙げられる。正極活物質は、これらのうち1つ又は2つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。また、同じ粒子内でも、内部と表層とで置換された濃度に分布があってもよい。また、粒子の表面に被覆されたものでもよい。例えば、金属酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ポリマーなどで被覆された表面などがあげられるが、これに限定されるものではない。
特に、電池の容量特性及び安定性の向上の面で、LiNiO、Li(Ni0.5MnCo)O(y+z=0.5)、Li(Ni0.6MnCo)O(y+z=0.4)、Li(Ni0.7MnCo)O(y+z=0.3)、Li(Ni0.8MnCo)O(y+z=0.2)、Li(Ni0.8CoMnAl)O(y+z+w=0.2)、Li(Ni0.85CoMn)O(y+z=0.15)、Li(Ni0.85CoMnAl)O(y+z+w=0.15)、Li(Ni0.9CoMn)O(y+z=0.1)、Li(Ni0.9CoMnAl)O(y+z+w=0.1)、Li(Ni0.9CoMn)O(y+z=0.1)、Li(Ni0.95CoMnAl)O(y+z+w=0.05)などが好ましい。ここで、aの値はいずれも、例えば0.5≦a≦1.5であり、好ましくは1.0≦a≦1.5であり得る。
より具体的には、LiNiO、Li(Ni0.5Mn0.3Co0。2)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.05Al0.05)O、Li(Ni0.85Co0.10Mn0.05)O、Li(Ni0.85Co0.10Mn0.03Al0.02)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)O2、Li(Ni0.9Co0.05Al0.05)O、Li(Ni0.95Co0.03Mn0.02)O、Li(Ni0.95Co0.03Al0.02)Oなどが好ましい。
リチウム遷移金属酸化物の粒子の平均粒径は、例えば、1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下であり得る。
(正極添加剤)
正極添加剤は、1種以上の酸化物固体電解質と1種以上のホスホン酸化合物とを含む添加剤を用いることができる。また、上記以外に、導電材の分散を向上するための分散材や充填剤、その他の添加剤を含有してもよい。
正極添加剤の量は、例えば、正極活物質層の総重量を基準として、0.01重量%以上5重量%以下であり、好ましくは1重量%以上3重量%以下であり得る。正極添加剤の添加量が当該範囲内であれば、優れた容量特性を実現することが可能である。
(酸化物固体電解質)
酸化物固体電解質は、イオン伝導性を有する固体酸化物であれば特に制限されず、結晶性固体電解質、非結晶性固体電解質、ガラスセラミック固体電解質などであり得る。伝導イオンも特に制限されず、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属イオン、プロトン、アンモニウムイオン、酸素イオンなどがあり得る。
特に、リチウムイオン伝導性を有する酸化物固体電解質を用いると、充放電時の正極活物質におけるリチウムイオンの出入りが容易になると考えられるので好ましい。リチウムイオン伝導性を有する酸化物固体電解質の例としては、LLTO系化合物((La,Li)TiO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(A:アルカリ土類金属)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物(Li1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1))、LiO-Al-TiO-PのようなLATP系化合物(Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1))、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、Li1+yAl2-x(PO(Mは、Ti、Ge、Sr、Sn、Zr、及びCaからなる群から選択される1種又は2種以上の元素であり、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LISICON(Li4-2xZnGeO(0≦x≦1))、LIPON系化合物(Li3+yPO4-x(0≦x≦1、0≦y≦1))、NASICON系化合物(LiTi(POなど)、ガーネット系化合物(LiLaZr12、Li7-xLaZr1-xNb12(0≦x≦1)など)などが挙げられる。
リチウムイオン以外のイオン伝導性を有する酸化物固体電解質の例としては、タングステンブロンズ(NaWO)、β-アルミナ、安定化ジルコニアなどが挙げられる。
正極添加剤、ひいては正極活物質層は、上記の酸化物固体電解質のうち1つ又は2つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
酸化物固体電解質は、サイクル中に発生するガス発生を抑制することで、電極反応の不均一反応を抑制し、50サイクル以下の容量維持率を改善すると推測される。特に、酸化物固体電解質は、正極活物質の粒子の表面上よりむしろ正極活物質層に点在した状態で、容量維持率を改善する効果を奏し得る。このため、正極活物質の粒子の表面を被覆して、電解液と正極活物質の表面との反応を抑制しているわけではなく、ガスを吸収することにより、又は電解液に作用してガス反応を抑制することにより、電池のサイクル劣化を抑制し得るものと推測される。ただし、これは単に本願の理解を補助するための例示的な推測であり、何ら本発明を限定するものではない。
酸化物固体電解質の含有量は、例えば、正極活物質層の総重量を基準として、0.01重量%以上5重量%以下であり、好ましくは0.1重量%以上4重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下であり得る。酸化物固体電解質の含有量が上記範囲内であれば、正極の劣化を抑制することができ、良好な容量維持率が実現され得る。一方、酸化物固体電解質の含有量が上記範囲未満の場合には、電池の劣化を十分に抑制し得ない場合があり、酸化物固体電解質の含有量が上記範囲を上回る場合には、十分なエネルギー密度が得られない場合がある。
酸化物固体電解質の粒子の平均粒径は、例えば、0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.2μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上2μm以下であり得る。例えば、酸化物固体電解質の粒子の平均粒径は、リチウム遷移金属酸化物の粒子の平均粒径よりも小さい。
(ホスホン酸化合物)
正極添加剤として使用するホスホン酸化合物の例としては、ホスホン酸、有機ホスホン酸、ホスホン酸塩、有機ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、有機ホスホン酸エステルなどが挙げられる。有機ホスホン酸の例としては、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などが挙げられ、置換基を有してもよい。ただし、これらに限定されるものではない。酸化物固体電解質とともにホスホン酸化合物を添加することにより、正極活物質層は、添加されたホスホン酸化合物に由来する化合物を含み得る。なお、本明細書においては、例えば正極活物質層においてリチウム遷移金属酸化物とホスホン酸化合物由来の化合物とが化学結合している場合も、「正極活物質層は、ホスホン酸化合物由来の化合物を含む」のように表現する。
例えば、正極添加剤として添加されるホスホン酸化合物は、ホスホン酸又は有機ホスホン酸である。また、正極添加材は、上記のホスホン酸化合物のうち1つ又は2つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
ホスホン酸化合物は、以下のようなメカニズムにより、電池のサイクル劣化やスラリー安定性の低下を抑制し得るものと推測される。ただし、これは単に本願の理解を補助するための例示的な推測であり、何ら本発明を限定するものではない。
リチウム遷移金属酸化物が粒子表面のヒドロキシル基などによりアルカリ性を示す場合や当該リチウム遷移金属酸化物の粒子表面に水酸化リチウムや炭酸リチウムなどが存在している場合などには、リチウム遷移金属酸化物とホスホン酸化合物とが混合されると、ホスホン酸化合物がこれらのアルカリ成分と反応して、詳細は不明であるが、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面とホスホン酸化合物との結合が生じ、化合物を形成し得ると考えられる。このように生成した化合物は、リチウム遷移金属酸化物の粒子の表面上で被覆を形成し得ると考えられる。この被覆が正極材料と電解液との化学反応を抑制することにより、電池のサイクル劣化やガスの発生が抑えられ得ると推測される。特許文献2にも記載されるように、ホスホン酸化合物は、このような被覆を形成し得るものと考えられている。また、ホスホン酸化合物とアルカリ成分との中和反応により、正極活物質スラリーのゲル化が抑制されてスラリー安定性が向上し得ると推測される。
(バインダー)
バインダーは、活物質と導電剤との結合や集電体との結合などを促進する成分として添加される。バインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、これらの種々の共重合体などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
バインダーの含有量は、正極活物質層の総重量を基準として0.1重量%以上30重量%以下であり得る。バインダーの含有量は、好ましくは0.5重量%以上15重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以上5重量%以下であり得る。バインダー高分子の含量が上記の範囲を満足するとき、電池の容量特性低下を防止しながら、電極内の十分な接着力を付与することができる。
(導電剤)
導電剤は、化学変化を誘発しない電気伝導性材料であれば、特に制限されない。導電剤の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などの炭素系材料;アルミニウム、スズ、ビスマス、シリコン、アンチモン、ニッケル、銅、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、モリブデン、タングステン、銀、金、ランタン、ルテニウム、白金、イリジウムなどの金属粉末や金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
導電剤の含有量は、正極活物質層の総重量を基準として0.1重量%以上30重量%以下であり得る。導電剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上15重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以上5重量%以下であり得る。導電剤の含量が上記の範囲を満足するとき、十分な導電性を付与することができ、正極活物質の量を減少させないため電池容量を確保できる点で有利である。
(溶媒)
正極活物質スラリーにおいて使用される溶媒は、一般に正極の製造に使用されるものであれば特に制限されない。溶媒の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセト酸メチルなどのエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さや製造収率を考慮して、正極活物質、導電材、及びバインダーを溶解又は分散させるとともに、正極集電体への塗布時に優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有する程度であれば十分である。
[正極の製造方法]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の正極の製造方法は、(1)正極活物質から正極活物質スラリーを得るステップ;及び(2)正極活物質スラリーから正極を得るステップを含み得る。
(1)正極活物質スラリーを得るステップ
正極活物質である少なくとも1種類以上のリチウム遷移金属酸化物に、正極添加剤である酸化物固体電解質及びホスホン酸化合物や、溶媒、導電剤、バインダーなどを添加する。このとき、必要に応じて、分散材などの他の添加剤を添加してもよい。その後、これらを溶媒に分散させることにより、正極活物質スラリーが得られる。なお、酸化物固体電解質は粉体で添加してもよく、分散液の状態で添加してもよい。ホスホン酸化合物の形態は特に制限されるものではなく、粉末の状態で添加してもよく、分散液の状態で添加してもよく、溶液の状態で添加してもよいが、溶液の状態で添加するのが好ましい。また、添加するタイミングはいずれの添加剤も、正極活物質と先に混ぜてもよく、一括で混ぜても良い。
リチウム遷移金属酸化物の添加量は、正極活物質層の総重量を100重量部とした場合、例えば、85重量部以上99.5重量部以下であり、好ましくは90重量部以上99重量部以下であり得る。また、酸化物固体電解質の添加量は、例えば、0.01重量部以上5重量部以下であり、好ましくは0.1重量部以上4重量部以下であり、より好ましくは0.1重量部以上3重量部以下であり得る。また、ホスホン酸化合物の添加量は、例えば、0.01重量部以上5重量部以下であり、好ましくは0.1重量部以上4重量部以下であり、より好ましくは0.1重量部以上3重量部以下であり得る。
なお、(1)の混合時に、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面のヒドロキシル基や水酸化リチウムなどのアルカリ成分とホスホン酸化合物との反応が起こり得る。これにより、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面にホスホン酸化合物由来の被覆が形成され得ると考えられる。
ここで、本発明において、ホスホン酸化合物と酸化物固体電解質とを併用することにより優れた効果が得られる理由は、以下のように推測される。ホスホン酸化合物は、正極活物質の粒子表面にあり、粒子表面のアルカリ成分と反応して、表面のガス発生面積を減らすため、サイクル特性の改善などの効果があると推測される。ただし、ホスホン酸化合物の添加量が増えるほど被覆による効果が少なくなると考えられる。これに対し、酸化物固体電解質は、活物質表面に必ずしもなく、正極活物質層内にまばらに分布し得る。また、酸化物固体電解質は、主な効果がガス吸収に起因する効果と推測されるため、添加重量当たりの効果は、少量添加時にはホスホン酸化合物に比べて劣るが、添加量に対して効果が落ちにくいと考えられる。添加量を最適に保つことにより、ホスホン酸化合物又は酸化物固体電解質を単独で添加する場合と比較して、より高いガス抑制効果が得られると考えられる。上記のようにガス抑制の相乗効果に加え、酸化物固体電解質を使用することで、さらに、インピーダンスが減少する効果もあると推測される。
(2)正極活物質スラリーから正極を得るステップ
正極活物質スラリーを正極集電体に塗布した後、乾燥及び圧延することにより、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極が製造され得る。
他の方法として、例えば、上記の正極活物質スラリーを別の支持体上にキャストした後、その支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで正極が製造されてもよい。また、その他の任意の方法を用いて正極活物質層が正極集電体上に形成されてもよい。
[負極]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、負極は、負極集電体及び当該負極集電体の一面上又は両面上に形成された負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極集電体の面全体に形成されてもよく、一部のみに形成されてもよい。
(負極集電体)
負極に使用される負極集電体は、電気化学的に安定に使用でき、かつ、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、負極集電体として、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅又はステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの;アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。
負極集電体は、3μm以上500μm以下の厚さを有し得る。負極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して負極活物質との接着力を高めることもできる。負極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を有し得る。
(負極活物質層)
負極活物質層は、例えば、負極活物質、バインダー、及び導電剤の混合物が溶媒中に溶解又は分散した負極活物質スラリーを負極集電体に塗布した後、乾燥及び圧延することにより形成され得る。上記混合物は、必要に応じて、さらに分散剤や充填材その他の任意の添加剤を含み得る。
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(インターカレーション)及び脱離(デインターカレーション)が可能な化合物が使用できる。負極活物質の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;珪素粉末、アモルファス珪素、珪素ナノファイバー、珪素ナノワイヤーなどの珪素質材料;珪素合金、珪素酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(リチウムやマグネシウムなど)がドープされた珪素酸化物などの珪素化合物;Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Sn合金、Al合金など、リチウムと合金化可能な金属質材料;SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物など、リチウムのドープ及び脱ドープが可能な金属酸化物;珪素質材料と炭素質材料との複合体やSn-C複合体などの複合物などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。なお、炭素質材料は、低結晶性炭素や高結晶性炭素などのいずれが用いられてもよい。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン及びハードカーボンが代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状、又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ、石油・石炭系コークスなどの高温焼成炭素が代表的である。
特に、負極活物質が珪素又は珪素化合物(珪素合金や酸化珪素など)を含む場合、負極の充放電容量を増加させるのに有効である。
珪素合金は、珪素が主成分の合金である。珪素合金は、例えば、珪素Siと、Sn、In、Al、及びTiのうち1種又は2種以上の金属元素との合金であり得る。珪素合金中の珪素の含有率は、例えば、50mol%以上であり、好ましくは70mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり得る。
酸化珪素は、例えば、SiO(0<x<2)で表される化合物である。SiOは、例えば、アモルファスの酸化珪素のマトリックス中にSi微粒子が微結晶又はアモルファスの形態で分散した構造を有し得る。珪素に対する酸素の比率xは、0<x<2であり、好ましくは0.5≦x≦1.6であり、より好ましくは0.8≦x≦1.5であり得る。例えば、酸化珪素はSiO(x=1)であり得る。
負極活物質は、好ましくは、珪素質材料と炭素質材料とを含み得る。例えば、負極活物質は、上記のSiO(0<x<2)と上記の炭素質材料(天然黒鉛など)とを含み得る。負極活物質中の珪素質材料と炭素質材料との重量比は、例えば、1:99~30:70であり、好ましくは5:95~20:80であり、より好ましくは8:92~15:85であり得る。なお、珪素質材料の表面に混合する炭素質材料とは別に、予め炭素質材料を表面に被覆してもよい。
珪素質材料の粒子の平均粒径は、例えば、1μm以上15μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下であり得る。また、炭素質材料の粒子の平均粒径は、例えば、1μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上20μm以下であり得る。
負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80重量%以上99重量%以下で含まれ得る。
(バインダー及び導電剤)
負極活物質スラリーに使用されるバインダー及び導電剤の種類及び含有量は、正極について説明したものと同様であり得る。
(増粘剤)
負極活物質スラリーは、増粘剤をさらに含むことができる。具体的に、増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース系化合物であり得る。増粘剤は、負極活物質層の総重量を基準として、例えば0.5質量%以上10質量%以下の量で含まれ得る。
(溶媒)
負極活物質スラリーにおいて使用される溶媒は、一般に負極の製造に使用されるものであれば特に制限されない。溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、アセトン、水などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
[負極の製造方法]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法は、負極活物質を、必要に応じてバインダー、導電剤、増粘剤などとともに溶媒に溶解又は分散させることにより負極活物質スラリーを得るステップと、正極の製造方法と同様に負極活物質スラリーを負極集電体上に塗布するなどして負極活物質層を負極集電体上に形成することにより負極を得るステップと、を含み得る。
[セパレータ]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、セパレータは、負極と正極とを分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウムイオン二次電池でセパレータとして使用されるものであれば特に制限なく使用可能である。特に、電解質のイオン移動に対する抵抗が小さく、電解質の含湿能に優れたものが好ましい。例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子から製造された多孔性高分子フィルム、又はこれらの2層以上の積層構造体がセパレータとして使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などから製造された不織布も使用され得る。また、耐熱性又は機械的強度確保のためにセラミック成分又は高分子物質がコーティングされたセパレータが用いられてもよい。
[非水電解質]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、非水電解質は、リチウムイオン二次電池の製造に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
非水電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができ、さらに必要に応じて電解質添加剤を含むことができる。以下、液体電解質を「電解液」ともいう。
有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用可能である。有機溶媒の例としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2からC20の直鎖状、分岐状又は環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)などのニトリル系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン系溶媒;スルホラン系溶媒などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。特に、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充電/放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合して用いると、優れた電解質性能を示し得る。
リチウム塩は、リチウムイオン二次電池で使用されるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用可能である。リチウム塩の例としては、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiIまたはLiB(Cなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。当該リチウム塩は、例えば電解質に0.1mol/L以上2mol/L以下の濃度で含まれ得る。リチウム塩の濃度が当該範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
電解質添加剤は、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制及び電池放電容量の向上などを目的として、必要に応じて使用可能である。電解質添加剤の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)やジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)などのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。当該電解質添加剤は、例えば、電解質の総重量に対して0.1重量%以上15重量%以下で含まれ得る。
特に、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートは、電極と電解質との界面に被膜を形成する被膜形成剤として働き得る。例えば、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートのうち少なくとも一方を含む場合、珪素系材料を含む負極活物質を使用した負極で珪素系材料とリチウムとが合金化する過程において、良好なSEI被膜が形成されることにより安定した充放電が行われ得る。一方、正極に対しては、高温時に正極活物質と反応し、ガス発生の原因ともなり得る。このため、珪素系材料を含有する負極に対しては、電解液は被膜形成剤を含んでもよいが、正極に対しては、少量であることが好ましく、被膜形成剤の含有量は、例えば、電解液の総重量を基準として、0.1重量%以上15重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以上10重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以上7重量%以下であり得る。当該被膜形成剤は、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートのうち少なくとも一方を含み得る。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上記のように製造した正極と上記のように製造した負極との間にセパレータ(例えば分離膜)及び電解液を介在させることにより製造することができる。より具体的には、正極と負極との間にセパレータを配置して電極組立体を形成し、当該電極組立体を円筒形電池ケースや角形電池ケースなどの電池ケースに入れた後、電解質を注入して製造することができる。あるいは、上記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて密封して製造することもできる。
上記の電池ケースは、当分野で通常用いられるものが採択され得る。電池ケースの形状は、例えば、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形などであり得る。
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、小型デバイスの電源として用いられ得るだけでなく、多数の電池セルなどを含む中大型電池モジュールの単位電池としても用いられ得る。このような中大型デバイスの好ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下に記載されるメカニズムは、単に本願の理解を補助するための例示的な推測であり、何ら本発明を限定するものではない。
[実施例1]
(正極の製造)
92重量部のLiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末に対して、正極添加剤として2重量部のLiO-Al-SiO-P-TiO-GeOリチウムイオン伝導性ガラスセラミック固体電解質(オハラ社製LICGC(登録商標)PW-01);以下、単に「LICGC」ともいう)及び2重量部のホスホン酸と、導電剤として2重量部のカーボンブラックと、バインダーとして2重量部のポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とともに添加してミキサー(Thinky社製 あわとり練太郎)で混合し、正極活物質スラリーを得た。ここで、使用したLiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の平均粒径は約5μmであった。中和滴定により測定したLiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末におけるアルカリ成分(炭酸リチウム、水酸化リチウムと仮定した場合の合計)は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末全体の0.45重量%に相当した。
次いで、得られた正極活物質スラリーをアルミニウム箔に塗布して、120℃で真空乾燥し、所定の密度になるようにロールプレスでプレスして、正極を得た。
(負極の製造)
平均粒径6μmのSiO粉末と平均粒径15μmの天然黒鉛とを重量比で1:9となるように混合し、負極活物質粉末を得た。次いで、96重量部の負極活物質粉末に対して、導電剤として1重量部のカーボンブラック、バインダーとして1.5重量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤として1.5重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC;増粘剤)を添加し、溶媒として純水を加えて正極材料と同様にミキサーで混合し、負極活物質スラリーを得た。この負極活物質スラリーを銅箔に塗布し、110℃で真空乾燥し、所定の密度になるようにプレスして、負極を得た。
(電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7となるように混合し、電解液の総重量を基準として5重量%となるようにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加した。ここにLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させて、電解液を得た。
(電池の製造)
上記のように製造した正極及び負極を、対向面積が12cmとなるように互いに対向させた。ここで、正極活物質及び負極活物質の塗布量は、正極と負極との充電容量比が片面(各対向面)の容量で1:1.05となるような量とした。正極と負極との間にはセパレータとしてポリオレフィンフィルムを挟み、正極、セパレータ、及び負極をアルミラミネートに封入した。その後、300μLの上記電解液の真空注液を行い、アルミラミネートの電解液注液口を封止して、単電池を製造した。
[実施例2]
LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を94重量部とし、ホスホン酸の量を1重量部とし、LICGCの量を1重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[比較例1]
ホスホン酸を添加せず、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を91重量部とし、LICGCの量を5重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[比較例2]
LICGCを添加せず、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を91重量部とし、ホスホン酸の量を5重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[比較例3]
ホスホン酸を添加せず、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を94重量部とし、LICGCの量を2重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[比較例4]
LICGCを添加せず、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を94重量部とし、ホスホン酸の量を2重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[比較例5]
ホスホン酸及びLICGCを添加せず、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の量を96重量部としたことを除き、実施例1と同様に正極及び当該正極を用いた単電池を製造した。
[評価例1:正極活物質スラリーの流動性]
各実施例及び各比較例における正極活物質スラリーの流動性を調べた。流動性が低かった正極活物質スラリーにはゲル化が見られ、アルミニウム箔への塗工に困難を伴った。
[評価例2:高温での容量維持率]
各実施例及び各比較例により製造された単電池に対し、25℃で1回充放電を行った後、一度電池内部のガス抜き処理をして再度封止した。次いで、充電上限電圧を4.25V、放電下限電圧を2.50Vとして、45℃において充放電を50回繰り返した。この50回の繰り返し充放電における容量維持率を次式で定義する。
Figure 0007376348000001
[評価例3:インピーダンス測定]
各実施例及び各比較例により製造された単電池を完全に充電した状態で、インピーダンスアナライザを使用して、周波数1kHzにおける当該単電池全体のインピーダンスを測定した。
[評価例4:電池の体積変化]
各実施例及び各比較例により製造された単電池を完全に充電した状態でアルキメデス法で体積を測定し、45℃の1サイクルと比較し、50サイクル時点でどのくらい体積が増えているかを下表に記載した。
各実施例及び各比較例における正極活物質スラリーの流動性、容量維持率、及び単電池のインピーダンスは、以下のとおりであった。なお、下記表にはホスホン酸及びLICGCの添加量(重量部表記)も併記した。
Figure 0007376348000002
ホスホン酸を添加した実施例1、実施例2、比較例2、及び比較例4では、LICGCの有無にかかわらず、正極活物質スラリーは良好な流動性を呈した。一方、ホスホン酸を添加しなかった比較例1、比較例3、及び比較例5では、正極活物質スラリーのゲル化が見られ、流動性が低かった。これは、ホスホン酸存在下ではLiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の粒子表面のアルカリ性官能基や当該粒子表面に残留している水酸化リチウムなどのアルカリ成分が中和されたり、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の粒子表面にホスホン酸由来の化合物の被膜が形成されてゲル化反応が抑制されたりしてゲル化が抑えられるのに対し、ホスホン酸を添加しない場合には中和反応や被覆が起こらずにスラリーのゲル化が促進されるためであると推測される。
45℃での50回繰り返し充放電における容量維持率を比較すると、実施例1、実施例2、及び比較例1~比較例3では、90%以上の優れた容量維持率が得られた。一方、2重量部のホスホン酸のみを添加した比較例4及びホスホン酸及びLICGCのいずれも添加しなかった比較例5では、容量維持率は90%を下回っていた。すなわち、LICGCを添加しない場合、少量のホスホン酸を添加するだけでは十分な容量維持率が得られなかった。
周波数1kHzにおけるインピーダンスを比較すると、比較例2及び比較例5による単電池が、他の例と比べて高いインピーダンスを示した。比較例2のようにホスホン酸の添加量が多い場合には、LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末の表面にホスホン酸由来の被覆が過度に生じてしまい、これによりインピーダンスが増加するものと思われる。インピーダンスが高いと、十分な出力特性が得られず、実際に使用できるエネルギーが低下するという問題がある。
このように、ホスホン酸及び酸化物固体電解質(LICGC)の両方を添加した実施例1及び実施例2においてのみ、優れたスラリー流動性、高い容量維持率、及び良好なインピーダンス特性をすべて実現することができた。
また、ホスホン酸とLICGCとが混在することによる相乗効果も見られた。LICGCのみを2重量部添加した場合(比較例3:体積変化0.16cc)、ホスホン酸及びLICGCのいずれも未添加の場合(比較例5:体積変化0.31cc)と比較して、ガスによると推測される体積変化は0.15cc減少したのに対し、ホスホン酸のみを2重量部添加した場合(比較例4:体積変化0.12cc)、未添加の場合(比較例5:体積変化0.31cc)と比較した体積変化は0.19cc減少した。すなわち、体積変化を抑制する効果は、LICGC添加時よりもホスホン酸添加時の方が高かった。これに対し、実施例2(体積変化0.06cc)でLICGCを1重量部、ホスホン酸を1重量部添加した場合(正極添加剤の総量が上記の比較例3及び比較例4と同様にトータルで2重量部である)、未添加の場合(比較例5:体積変化0.31cc)と比較した体積変化は-0.25ccであった。このように、正極添加剤を2種類添加した場合、正極添加剤を1種類のみ添加した場合(比較例3及び比較例4)に比べ、相乗効果により、ガス発生が原因と考えられる体積変化が相当抑えられている。なお、1種類の正極添加剤を5重量部添加した場合に結果が異なるのは、ホスホン酸を5重量部添加した場合には、量が過剰であり、実際に正極活物質の粒子表面の残留アルカリと反応している割合が少ないためと考えられる。推定されるメカニズムを以下に示す。ホスホン酸は、正極活物質の粒子表面にあり、粒子表面のアルカリ成分と反応して、表面のガス発生面積を減らすためサイクル特性の改善などの効果があると推測される。ただしホスホン酸の添加量が増えるほど被覆による効果が少なくなると考えられる。これに対し、LICGCは、主な効果がガス吸収に起因する効果と推測されるため、添加重量当たりの効果は、少量添加時にはホスホン酸に比べて劣るが、添加量に対して効果が落ちにくいと考えられる。添加量を最適に保つことにより、ホスホン酸又は酸化物固体電解質を単独で添加する場合と比較して、より高いガス抑制効果が得られると考えられる。また、導電性固体電解質であるLICGCを使用することで、被覆しない効果の他に、さらに、インピーダンスが減少する効果も得られ、これがインピーダンス測定の結果に寄与していると推測される。
以上のように、ホスホン酸化合物(ここではホスホン酸)の添加により、正極活物質スラリーのスラリー安定性が改善されるとともに容量維持率に一定の向上が見られた。しかしながら、ホスホン酸化合物を単独で添加した場合には、添加量が多すぎると電池のインピーダンスが増加してしまい、十分な容量維持率を得るには至らなかった。一方、酸化物固体電解質の添加によっても容量維持率に一定の向上が見られ、ホスホン酸化合物及び酸化物固体電解質の両方を添加することにより、インピーダンスの増加を抑えつつ十分な容量維持率を達成することができた。さらに、ホスホン酸化合物及び酸化物固体電解質の両方を添加することにより、ガス抑制効果に予想以上の向上が見られた。また、少ない添加物量で改善できるため、エネルギー密度も改善でき得る。
特に、電池の高容量化を目指して正極材料にニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物を使用するとともに負極材料に珪素系材料を使用する場合には、リチウム遷移金属酸化物のアルカリ成分や、珪素質材料の劣化を防ぐために電解液中に加えられるフルオロエチレンカーボネートやジフルオロエチレンカーボネートの影響により、スラリー安定性及びサイクル特性が大きな問題になる傾向がある。このため、上記のようなホスホン酸化合物及び酸化物固体電解質の両方を添加した正極活物質が特に有効である。

Claims (10)

  1. リチウム遷移金属酸化物を含有する正極活物質と、添加剤として酸化物固体電解質及びホスホン酸化合物と、を含む正極活物質層が正極集電体上に形成された、正極であって、
    前記正極活物質層中の前記酸化物固体電解質の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり、
    前記ホスホン酸化合物の添加量が、前記正極活物質層の重量を基準として0.01重量%以上5重量%以下である、正極
  2. 前記リチウム遷移金属酸化物は、遷移金属の総量を基準として50モル%以上のニッケルを含む、請求項1に記載の正極。
  3. 前記リチウム遷移金属酸化物は、遷移金属の総量を基準として80モル%以上のニッケルを含む、請求項2に記載の正極。
  4. 前記酸化物固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の正極。
  5. 前記ホスホン酸化合物は、前記リチウム遷移金属酸化物の粒子の表面上で被覆を形成している、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の正極。
  6. 前記ホスホン酸化合物は、ホスホン酸又は有機ホスホン酸である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の正極。
  7. 請求項1~請求項のいずれか一項に記載の正極と、
    珪素又は珪素化合物を含有する負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体上に形成された負極と、
    を備える、リチウムイオン二次電池。
  8. フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートのうち少なくとも一つを含む電解液をさらに備える、請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. リチウムイオン二次電池用の正極の製造方法であって、
    リチウム遷移金属酸化物と、酸化物固体電解質と、ホスホン酸化合物と、溶媒と、を混合することにより正極活物質スラリーを得るステップと、
    前記正極活物質スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層を正極集電体上に形成することにより正極を得るステップと、
    を含み、
    前記酸化物固体電解質の添加量が、前記正極活物質層の重量を基準として0.01重量%以上5重量%以下であり、
    前記ホスホン酸化合物の添加量が、前記正極活物質層の重量を基準として0.01重量%以上5重量%以下である、正極の製造方法。
  10. リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    請求項に記載の方法により正極を得るステップと、
    珪素又は珪素化合物を含有する負極活物質を含む負極活物質層を負極集電体上に形成することにより負極を得るステップと、
    前記正極と前記負極との間にセパレータ及び電解液を介在させるステップと、
    を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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