JP7375650B2 - 成形材料および成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、射出成形に適した炭素繊維を含む成形材料であり、曲げ弾性率が高いうえに、複雑形状の部材を成形可能な成形材料に関する。
炭素繊維複合材料、特に炭素繊維強化プラスチックは優れた力学特性を示すために、従来はアルミニウムなどの軽金属が適用されていた部材を代替する軽量材料として近年幅広く使用されている。しかしながら、炭素繊維強化プラスチックは優れた力学特性を発現させるために連続繊維または不連続繊維でも数mm以上の長さの繊維の状態で使用されることが多く、その場合では複雑形状に賦形することが困難である問題があった。一方で、複雑形状への賦形性に優れる射出成形を、炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂に対して適用すると一般に成形品の曲げ弾性率が低く、軽金属の代替としては満足できる力学特性ではなかった。
炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂の射出成形品の曲げ弾性率を高めるためには、主に炭素繊維の含有率を高める方法、炭素繊維の繊維長を長く残すような成形を行う方法、炭素繊維の引張弾性率を高める方法が一般的である。これらの方法はほぼ独立の効果を発現するためにそれぞれ検討が進んでいる。
炭素繊維の引張弾性率を高める方法では、市販の炭素繊維の中から単に引張弾性率の高い品種を選択している例が見受けられる。例えば、引張弾性率が295~390GPaの炭素繊維と特定の芳香族アミドを組み合わせることで炭素繊維の含有率40質量%のときに成形品の曲げ弾性率で39GPaに向上させている(特許文献1)。また、特定のポリアミド樹脂との組み合わせにおいて炭素繊維の引張弾性率を汎用の240GPa付近から290GPaまで高める方法が提案されている(特許文献2)。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂と引張弾性率が390~450GPaの炭素繊維を用いることで、炭素繊維の含有率が31質量%のときに成形品の曲げ弾性率で37GPaまで向上させている(特許文献3)。また、引張弾性率が860GPaのピッチ系炭素繊維をポリアクリロニトリル系炭素繊維に組み合わせて使用する技術が提案されている(特許文献4)。
特開2006-1965号公報 特開2018-145292号公報 特開2017-190426号公報 特開2019-26808号公報
しかしながら、背景技術には次のような課題がある。
特許文献1では成形品の曲げ弾性率を向上させる効果は見られるものの、汎用の炭素繊維である引張弾性率240GPaのものでは成形品の曲げ弾性率32GPaと、炭素繊維の引張弾性率が1.6倍になっても成形品の曲げ弾性率は1.2倍しか向上しない結果であり、効果が極めて小さいものであった。また、引張弾性率375GPaの炭素繊維を用いた場合にはRaman分光法による結晶化パラメーターが小さな(炭素化温度が高い)ものであって単繊維直径が小さいためか、成形品の曲げ弾性率は39GPaであり、効果の小さいものであった。特許文献2では炭素繊維の引張弾性率が低く、炭素繊維の含有率が45質量%のときに成形品の曲げ弾性率が33GPaから35GPaまでしか向上しないものであった。特許文献3ではRaman分光法による結晶化パラメーターが小さな(炭素化温度が高い)ものであって単繊維直径が小さいためか、炭素繊維の含有率31質量%のときだけでなく、56質量%まで高めたとしてもその使用量に対して成形品の曲げ弾性率は満足できる結果ではなかった。特許文献4では引張弾性率の高いピッチ系炭素繊維のみを用いたとしても成形品の曲げ弾性率は最大でも29GPaと満足できる結果ではなかった。
上述したように、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料において、従来技術では汎用の引張弾性率の高い炭素繊維を用いる着想はあったものの、射出成形に適した炭素繊維について何ら示唆はなかった。
上記の課題を解決するため、本発明の成形材料は、繊維長が0.3mm以下である炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料であって、炭素繊維の単繊維直径が6.5~8.5μm、Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.25~0,55であることを特徴とする。
さらに、本発明の成形品は、上記成形材料を成形してなる。
本発明の成形材料は、射出成形により複雑形状の部材に対する成形性が高いことに加えて、得られる成形品は曲げ弾性率に優れる。
本発明の成形材料には炭素繊維と熱可塑性樹脂が含まれる。
まず、本発明に用いられる炭素繊維について説明する。
本発明に用いられる炭素繊維は単繊維直径が6.5~8.5μmであり、好ましくは6.8~8.0μmであり、より好ましくは6.9~7.5μmである。単繊維直径が大きいほど、射出成形時に繊維が長く残りやすく、曲げ弾性率が高まりやすく、単繊維直径が6.5μm以上であると射出成形品の曲げ弾性率が高まりやすい。単繊維直径は大きすぎると炭素繊維の引張弾性率が低くなることがあるため、8.5μm以下であるとよい。単繊維直径の評価方法は後述するが、炭素繊維の密度・目付・フィラメント数から計算してもよいし、成形材料や成形品を断面研磨して光学顕微鏡や走査電子顕微鏡の観察により評価してもよい。用いる評価装置が正しく校正されていれば、いずれの方法で評価しても同等の結果が得られる。光学顕微鏡や走査電子顕微鏡の観察により評価する際に、単繊維の断面形状が真円でない場合、円相当直径で代用する。円相当直径は単繊維の実測の断面積と等しい断面積を有する真円の直径のことを指す。炭素繊維の単繊維直径は、炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度で調整できる。
本発明に用いられる炭素繊維は単繊維直径の変動係数が好ましくは3~7%であり、より好ましくは4~6%である。単繊維直径の変動係数は、成形材料に含まれる単繊維直径の標準偏差/平均値で定義され、射出成形時に炭素繊維の折れやすさ分布に相当する。単繊維直径の変動係数が3%以上であると射出成形品の曲げ弾性率が高まりやすく、7%以下であると射出成形品の曲げ弾性率が低下しにくい。
本発明に用いられる炭素繊維において、Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.25~0.55であり、好ましくは0.30~0.50であり、より好ましくは0.30~0.45であり、さらに好ましくは0.35~0.45である。炭素繊維の単繊維断面から得たRamanスペクトルは、1580cm-1付近にGバンド、1360cm-1付近にDバンド、1480cm-1付近にそれらのバンド間の谷ができる。Gバンドのピーク強度をIg、1480cm-1付近の最もスペクトル強度が弱まった部分をIvとして、その比が炭素繊維内部構造の結晶化の進行度を示す指標となる。市販されている炭素繊維であれば、引張弾性率380GPa付近のものはIv/Igが0.2未満であり、引張弾性率が230~290GPaのものはIv/Igが0.60~0.90である。かかるIv/Igが0.55以下だと十分に結晶化が進んでおり、炭素繊維の引張弾性率が高まっている。Iv/Igが0.25以上であれば炭素繊維内部の結晶化が進みすぎておらず、射出成形時に炭素繊維が折れにくく、成形品の物性が高まりやすい。結晶化パラメーターIv/Igは、Raman分光法により評価する。詳しい評価手法は後述する。かかるパラメーターは炭素繊維製造時の炭素化最高温度により調整できる。
本発明に用いられる炭素繊維は、繊維軸に垂直な断面において、中心と円周との間の中点を境に内側を中心部、外側を円周部としたとき、中心部の結晶化パラメーターIv/Igと円周部の結晶化パラメーターIv/Igの比が好ましくは0.80~1.00であり、より好ましくは0.85~1.00であり、さらに好ましくは0.90~1.00である。中心部と円周部のIv/Igに差がないほど、炭素繊維内部構造の結晶化の進行度に差がないと言え、炭素繊維の単繊維直径が大きいときも成形品の曲げ弾性率を高まる傾向がある。中心部と円周部のIv/Igが0.80以上あれば、炭素繊維の内部の結晶構造の差が小さいため折れにくく、成形品の曲げ弾性率は向上しやすい。結晶化パラメーターIv/Igは、上記と同様にRaman分光法により評価する。詳しい評価手法は後述する。かかるパラメーターは炭素繊維製造時の炭素化最高温度および炭素化時の延伸比により調整できる。
本発明に用いられる炭素繊維は引張弾性率Eが好ましくは350~500GPaであり、より好ましくは370~480GPaであり、さらに好ましくは380~450GPaである。炭素繊維の引張弾性率が高いほど、射出成形品の曲げ弾性率が高い傾向になる。引張弾性率が350GPa以上であれば、射出成形品の曲げ弾性率を大幅に高めることができるため、工業的な価値が大きい。射出成形品の曲げ弾性率を高める観点では、炭素繊維の引張弾性率は高いことは好ましいが、高すぎる場合には射出成形品の曲げ弾性率を向上させる効果が弱まるため、引張弾性率が500GPa以下であると良い。炭素繊維の引張弾性率はJIS R7608:2004に記載の、樹脂含浸ストランドの引張試験に従って評価することができる。ストランド弾性率の評価法の詳細は後述する。
本発明に用いられる炭素繊維は、結晶化パラメーターIv/Igと引張弾性率E(GPa)が式(1)の関係を満たす炭素繊維であることが好ましい。
E≧-100×Iv/Ig+400 ・・・式(1)。
式(1)における定数項はより好ましくは410であり、さらに好ましくは420である。式(1)とは炭素繊維の結晶化が進んでいないにも関わらず、引張弾性率が高いことを示す関係式であり、射出成形時に炭素繊維の折れにくさと引張弾性率を両立できていることを示す。本発明においては、炭素繊維の引張弾性率を高めても結晶化パラメーターIv/Igの大きな、上記式(1)の関係を満たす特定の炭素繊維を用いることで、射出成形品の曲げ弾性率を効果的に高めることができる。定数項が400以上であれば、炭素繊維の結晶化パラメーターに対して十分な引張弾性率が発現しており、射出成型時に炭素繊維の折れにくさと引張弾性率を両立しやすい。かかる関係式は炭素繊維製造時の炭素化最高温度および炭素化時の延伸比により調整できる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトンからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましく、得られる成形品の曲げ弾性率の観点からはポリアミドおよびポリアリーレンスルフィドがより好ましく、特に、ポリアリーレンスルフィドがさらに好ましい。本発明に用いられる炭素繊維と組み合わせることで、熱可塑性樹脂種類の制約なく得られる成形品の曲げ弾性率等の力学特性を高めることができるので熱可塑性樹脂は幅広く選択できるが、成形品の力学特性を高めやすい熱可塑性樹脂、具体的には引張降伏応力が高く発現する熱可塑性樹脂を選択することで本発明の効果を得やすい。
ポリオレフィンとしては、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα-オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合物が挙げられる。
ポリアミドとしては、アミド基の繰り返しによって主鎖を構成するポリマーが挙げられ、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612のような脂肪族ポリアミド、あるいはポリアミド6Tのような芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。これらの混合物や複数の種類のポリアミド共重合体であってもよい。
ポリアリーレンスルフィドとしては、その構成単位として、p-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位よりなるものを挙げることができ、特にポリp-フェニレンスルフィドが好ましい。
本発明における成形材料は本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を加えることができる。添加剤としては、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤が具体的に挙げられる。
本発明の成形材料の製造方法の好ましい様態は、上記各成分を同時にまたは任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造するものであり、より好ましくは二軸押出機による溶融混練である。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また、押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレートなどを挙げることができる。
このとき炭素繊維を連続的に供給することが好ましく、熱可塑性樹脂を溶融混練した後に炭素繊維を供給することがより好ましい。
炭素繊維が熱可塑性樹脂と一体化された後は、ペレタイザーやストランドカッターなどの装置で例えば1~50mmの一定長に切断して用いることもある。この切断工程が熱可塑性樹脂の配置工程の後に連続的に設置されていてもよい。成形材料が扁平であったりシート状であったりする場合には、スリットして細長くしてから切断してもよい。スリットと切断を同時におこなうシートペレタイザーのようなものを使用してもよい。
本発明の成形材料は、曲げ弾性率FMが好ましくは35~55GPaであり、より好ましくは39~55GPaである。曲げ弾性率はISO 178により測定されるものであり、部材のたわみにくさを示す剛性の主要因子である。曲げ弾性率が大きいほど使用する成形材料を減らしても部材のたわみにくさを維持でき、部材軽量化に繋がる。曲げ弾性率が35GPa以上であれば、軽量金属の代表であるマグネシウム合金に匹敵する特性であり、満足できる結果である。曲げ弾性率は高いことに越したことはないが、55GPa以下であれば、マグネシウム合金の代替には十分な特性である。曲げ弾性率を上記の範囲に制御するためには上述の炭素繊維を用いることがポイントである。
本発明の成形材料は、炭素繊維を好ましくは15~55質量%含み、より好ましくは25~50質量%含む。成形材料中の炭素繊維の質量含有率Wfは、用途や狙いの物性によって調整することができ、成形材料の曲げ弾性率のみを考えるのであれば質量含有率を高めることが好ましい。炭素繊維の質量含有率は15質量%以上であれば成形材料の曲げ弾性率が高く、55質量%以下であれば射出時の成形性を維持することができる。炭素繊維の質量含有率は投入した炭素繊維と熱可塑性樹脂およびその他添加成分との比率から計算することができる。
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む本発明の成形材料は、成形材料の曲げ弾性率FM(GPa)、樹脂組成物中の炭素繊維の質量含有率Wf(%)、および結晶化パラメーターIv/Igが式(2)の関係を満たすことが好ましい。
FM/Wf0.5≧-0.5×Iv/Ig+6.5 ・・・式(2)。
曲げ弾性率は、炭素繊維の質量含有率Wfに依存するがWfには比例しないので経験的にWfの0.5乗の関係で規格化して用いている。Iv/Igが高い割にFM/Wf0.5が大きいということは、炭素繊維の結晶化が進んでいないにも関わらず、炭素繊維の質量含有率に対して炭素繊維が成形材料の曲げ弾性率への向上効果が大きいことを示している。また、FM/Wf0.5とIv/Igを本発明の範囲となるように制御することが成形品中の繊維長を長く残せていることを意味しているが、従来は炭素繊維では、上述の特許文献1~3の実施例に記載された例のように式(2)を満たさないことを本発明者らは確認している。式(2)を満たすよう制御するためには、本発明で用いられる炭素繊維を選択する必要がある。
本発明の成形材料に含まれる炭素繊維の数平均繊維長は0.3mm以下であり、好ましくは0.05~0.25mmである。かかる範囲とすることで、成形品における成形材料を炭素繊維が補強する効果を高め、成形品の力学特性を十分高めることができる。ここで、成形品中の数平均繊維長の測定方法について説明する。成形品に含有される炭素繊維の数平均繊維長の測定方法としては、例えば、溶解法、あるいは焼き飛ばし法により、成形品に含まれる樹脂成分を除去し、残った炭素繊維を濾別した後、顕微鏡観察により測定する方法がある。測定は炭素繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長の合計を本数で除することで数平均繊維長を算出する。数平均繊維長を上記範囲に制御するためには、上述の射出成形時に折れにくい炭素繊維を用いることで達成できる。
<炭素繊維の引張弾性率>
炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7608:2004の樹脂含浸ストランド試験法に従い、次の手順に従い求める。ただし、炭素繊維の繊維束が撚りを有する場合、撚り数と同数の逆回転の撚りを付与することにより解撚してから評価する。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いる。炭素繊維のストランド10本を測定し、その平均値をストランド強度およびストランド弾性率とする。なお、ストランド弾性率を算出する際の歪み範囲は0.1~0.6%とする。
<炭素繊維の平均単繊維直径とそのCV値>
成形材料を包埋研磨し、露出した炭素繊維の単繊維断面を光学顕微鏡の100倍の対物レンズを用いて合計1000倍で観察する。研磨面の断面顕微鏡画像を取得し、任意の単繊維断面について画像ソフトウェアImageJを用いて単繊維の長径と短径を測定する。ここで、単繊維の長径は断面の外周上の任意の2点を通る直線であって、最も長いものとする。短径についても同様に、最も短いものとする。円形断面の場合、平均単繊維直径は単繊維断面の短径の平均と定義する。非円形断面の場合、単繊維断面が垂直のもののみを選択し、断面積が同等となる円相当径を単繊維直径とする。単繊維直径の算出のN数は50とし、その平均値を採用する。
炭素繊維の平均単繊維直径のCV値は平均単繊維直径の標準偏差を平均値で除した後、100を乗じて算出する。
なお、本発明の実施例では、光学顕微鏡としてLeica Microsistems社製の光学顕微鏡“Leica DM2700M”を用いた。
<Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igとその中心部と円周部の比>
成形材料を包埋研磨し、露出した炭素繊維単繊維の断面の中心を無作為に3点選択し、Raman分光法で評価する。測定は励起波長532nmとし、レーザー強度を1mW、測定範囲を900~2000cm-1、レーザー光を2μm径に絞り、測定時間を60秒×3回積算で行う。得られたスペクトルのベースラインをオフセットし、Gバンド近辺と1480cm-1付近の谷近辺をそれぞれ2次関数の最小自乗近似によりIgとIvのスペクトル強度を計測して求める。Iv/Igは3点の平均値を用いる。
炭素繊維の繊維軸に垂直な断面において、中心と円周との間の中点を境に中心部、外側を円周部とし、上記と同様の手法にてそれぞれのRamanスペクトルを取得し、Iv/Igを求める。中心部のIv/Igを円周部のIv/Igで除して、炭素繊維内外の結晶化パラメーター差の比率を算出する。同一単繊維で比を求め、異なる単繊維3点の平均値を用いる。
<成形品の曲げ試験>
ISO型ダンベル試験片について、ISO 178(2010)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定する。試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供する。n=6個の成形品について測定し、平均値で曲げ強度を求める。
なお、後述の実施例および比較例においては、試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。
<成形品のシャルピー衝撃強度>
ISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1-4-01型試験機を用い、ISO 179(2010)に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/m)を算出する。
<成形品中に含まれる炭素繊維の数平均繊維長>
成形品の一部を切り出したサンプルを、電気炉を用いて空気中において、500℃の温度で30分間加熱して熱可塑性樹脂(A)と化合物(B)を十分に焼却除去して炭素繊維を分離する。分離した炭素繊維を、無作為に少なくとも400本以上抽出し、光学顕微鏡にてその長さを1μm単位まで測定して、次式により数平均繊維長(Ln)を求める。
数平均繊維長(Ln)=(ΣLi)/Nf
・Li:測定した繊維長さ(i=1、2、3、・・・、n)
・Nf:繊維長さを測定した総本数
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、熱可塑性樹脂の種類を限定するものではない。
[実施例1、2]
アクリロニトリルおよびイタコン酸からなるポリアクリロニトリル共重合体を含む紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を、紡糸口金から一旦空気中に吐出し、ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条を得た。また、その凝固糸条を水洗した後、90℃の温水中で3倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにシリコーン油剤を付与し、160℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥を行い、4倍の延伸倍率で加圧水蒸気延伸を行い、単繊維繊度1.1dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た。次に、得られた前駆体繊維束を合糸し、単繊維本数24000本とし、空気雰囲気230~280℃のオーブン中で延伸比を1として熱処理し、耐炎化繊維束に転換した。得られた耐炎化繊維束に加撚処理を行い、25ターン/mの撚りを付与し、温度300~800℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.0として予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維束を得た。次いで、かかる予備炭素化繊維束に、延伸比1.02、炭素化温度1900℃の条件で炭素化処理を施した後、30c/gとなるよう硫酸水溶液中で電解処理を行い、サイジング剤は付与せず、炭素繊維を得た。
二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX-30α、L/D=31.5)を使用し、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂をメインフィード、実施例1と同様の炭素繊維をサイドフィードして各成分の溶融混練を行った。溶融混練はシリンダー温度290℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量10kg/時で行い、吐出物を引き取りながら水冷バスで冷却することでストランドとし、前記ガットを5mmの長さに切断することでペレットとした。該ペレット中に含まれる炭素繊維の数平均繊維長は0.16mmであった。
射出成形機((株)日本製鋼所製J150EII-P)を使用し、前記ペレットの射出成形を行うことで各種評価用の試験片を作製した。射出成形は、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で行った。得られた試験片は、150℃で2時間アニール処理した後に、空冷して各試験に供した。
[実施例3]
マトリックス樹脂にナイロン66(PA66)樹脂を用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、試験に供した。
[実施例4,5]
120c/gとなるよう電解処理を行い、マトリックス樹脂にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、試験に供した。
[実施例6、7]
炭素繊維の質量含有率を変更し、実施例7については120c/gとなるよう電解処理を行ったこと以外は実施例1と同様に処理を行い、試験に供した。
[比較例1]
東レ株式会社製“トレカ(登録商標)”T700SC-24000-50Eを用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、試験に供した。
[比較例2]
東レ株式会社製炭素繊維強化熱可塑性樹脂“トレカ(登録商標)”3101T-30Vを試験に供した。
[比較例3]
東レ株式会社製“トレカ(登録商標)”M40JB-12000-50Aを用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、試験に供した。
[比較例4]
東レ株式会社製“トレカ(登録商標)”T700SC-24000-50Eを用いた以外は実施例3と同様に処理を行い、試験に供した。
実施例と比較例で示したように、熱可塑性樹脂の種類に依存せず、特定の炭素繊維を用いることで得られた成形材料は優れた成形品の力学特性を示した。
[参考例1]
特開2006-1965号公報の実施例2の値を参照して、比較した。
[参考例2]
特開2017-190426号公報の実施例2の値を参照して、比較した。
[参考例3]
Mitsubishi Chemical Advanced Materials社製の“KyronMAX(登録商標)”を試験に供した。成形材料に含まれる炭素繊維の数平均繊維長は0.14mmであり、単繊維直径のCV値は9.0であった。
Figure 0007375650000001
Figure 0007375650000002

Claims (6)

  1. 繊維長が0.3mm以下である炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料であって、炭素繊維の単繊維直径が6.5~8.5μm、Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.25~0,55である成形材料。
  2. 前記炭素繊維の繊維軸に垂直な断面における中心部と円周部の結晶化パラメーターIv/Igの比が0.8~1.0である、請求項1に記載の成形材料。
  3. 前記結晶化パラメーターIv/Igと炭素繊維の引張弾性率E(GPa)が式(1)の関係を満たす、請求項1または2に記載の成形材料。
    E≧-100×Iv/Ig+400 ・・・式(1)
  4. 炭素繊維の単繊維直径の変動係数が3~7%である、請求項1~3のいずれかに記載の成形材料。
  5. 成形材料の曲げ弾性率FM(GPa)、成形材料中の炭素繊維の質量含有率Wf(%)、および前記結晶化パラメーターIv/Igが式(2)の関係を満たす、請求項1~4のいずれかに記載の成形材料。
    FM/Wf0.5≧-0.5×Iv/Ig+6.5 ・・・式(2)
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の成形材料を成形してなる成形品。
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