この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
図1は、この発明の実施の形態における工作機械を示す斜視図である。図2は、図1中の工作機械の工作エリアを示す上面図である。
図1および図2を参照して、工作機械100は、ワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうマシニングセンタであり、より特定的には、工具の回転中心軸101が水平方向に延びる横形マシニングセンタである。工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerical Control)工作機械である。
図中には、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸101に平行なZ軸と、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸101に直交するX軸と、上下方向に平行なY軸とが示されている。
工作機械100は、工具主軸21を有する。工具主軸21は、モータ駆動により、Z軸に平行な回転中心軸101を中心に回転可能である。工具主軸21には、工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構が内蔵されている。工具主軸21は、ドリル、リーマーまたはフライス等の工具を、回転中心軸101を中心に回転させる。工具主軸21は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、X軸方向およびY軸方向に移動可能である。
工作機械100は、テーブル41をさらに有する。テーブル41は、ワークを固定するための装置である。テーブル41には、パレット42が着脱可能に装着されている。テーブル41は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能である。
工作機械100は、自動パレット交換装置(APC:Automatic Pallet Changer)50をさらに有する。自動パレット交換装置50は、工作エリア110および段取りステーション120の間においてパレット42を交換する。工作エリア110は、ワークの加工が行なわれる空間である。工具主軸21およびテーブル41は、工作エリア110に配置されている。段取りステーション120は、パレット42に対してワークの取り付けが行なわれる空間である。段取りステーション120には、パレット42が載置されるパレット載置台(不図示)が設置されている。
自動パレット交換装置50は、APCアーム52と、旋回カバー51とを有する。APCアーム52は、Y軸方向(上下方向)にスライド可能であり、かつ、旋回中心軸102を中心に180°旋回可能である。旋回中心軸102は、Y軸方向に延びている。APCアーム52は、Y軸方向に沿って上昇することによって、テーブル41およびパレット載置台の各々からパレット42を持ち上げる。APCアーム52は、旋回中心軸102を中心に180°旋回することによって、工作エリア110および段取りステーション120の間でパレット42を入れ替える。APCアーム52は、Y軸方向に沿って下降することによって、テーブル41およびパレット載置台の各々にパレット42を載置する。
旋回カバー51は、工作エリア110および段取りステーション120の境界をなしている。旋回カバー51は、APCアーム52とともに、旋回中心軸102を中心に180°旋回する。
工作機械100は、自動工具交換装置61をさらに有する。自動工具交換装置61は、工具主軸21に装着される工具を交換する。
工作機械100は、操作盤81をさらに有する。操作盤81は、汎用のコンピュータである。操作盤81は、上パネル82と、下パネル83とを有する。上パネル82は、マニュアルまたは各種のアプリケーション画面などを表示したり、アプリケーションを用いる場合に操作されたりするタッチスクリーンを含む。下パネル83は、工作機械100の動作状態またはワークの加工状況を表示したり、工作機械100を動作させる場合に操作されるタッチスクリーンと、工作機械100を動作させる場合に操作されるボタンまたはスイッチなどの操作部とを含む。
工作機械100は、カバー体31をさらに有する。カバー体31は、工作エリア110を区画形成するとともに、工作機械100の外観をなしている。工作エリア110は、ワーク加工に伴う切屑およびクーラント等の異物が工作エリア110から漏出しないように、カバー体31により密閉されている。
カバー体31は、第1カバー32と、第2カバー33と、テレスコカバー34と、扉35と、第1オイルパン36と、第2オイルパン37と、ATCシャッター38と、天井カバー39とを有する。
第1カバー32、第2カバー33、テレスコカバー34および旋回カバー51は、四方から工作エリア110を取り囲むように立設されている。第1カバー32および第2カバー33は、X軸方向において、互いに対向して配置されている。テレスコカバー34および旋回カバー51は、Z軸方向において、互いに対向して配置されている。天井カバー39は、工作エリア110の天井に配置されている。
扉35は、第1カバー32に設けられた開口部に配置されている。扉35は、第1カバー32に設けられた開口部が開閉するようにスライド動作が可能である。ATCシャッター38は、第2カバー33に設けられた開口部に配置されている。ATCシャッター38は、第2カバー33に設けられた開口部が開閉するようにスライド動作が可能である。自動工具交換装置61は、ATCシャッター38を挟んで工作エリア110の反対側に配置されている。
テレスコカバー34は、X軸方向およびY軸方向における工具主軸21の移動に伴って変形可能なように構成されている。工具主軸21は、テレスコカバー34からZ軸方向に突出している。
第1オイルパン36および第2オイルパン37は、工作エリア110の床に配置されている。第1オイルパン36および第2オイルパン37は、X軸方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1オイルパン36は、第1カバー32の下端部から第2オイルパン37に向けて斜め下方向に延びている。第2オイルパン37は、第2カバー33の下端部から第1オイルパン36に向けて斜め下方向に延びている。
工作機械100は、コンベア46をさらに有する。コンベア46は、X軸方向における第1オイルパン36および第2オイルパン37の間に設けられている。コンベア46は、Z軸方向に延びている。コンベア46は、ワーク加工に伴って生じた切屑を工作エリア110から搬出する。
工作機械100は、複数のカメラ210をさらに有する。カメラ210は、CCD(Charge Coupled Device)カメラであってもよいし、その他の種類のカメラであってもよい。
カメラ210は、工作エリア110を撮影可能に設けられている。カメラ210は、工作エリア110に設けられている。カメラ210は、天井カバー39に取り付けられている。複数のカメラ210は、X軸方向において、互いに離れた位置に設けられている。カメラ210は、天井カバー39に限られず、たとえば、第1カバー32または第2カバー33に取り付けられてもよい。カメラの数は、3以上の複数であってもよいし、1つであってもよい。
工作機械100は、ノズル220(220A,220B)をさらに有する。ノズル220は、工作エリア110にクーラントを放出可能である。ノズル220は、天井カバー39に取り付けられている。後で詳細に説明するが、ノズル220は、自動洗浄用であり、カメラ210により撮影された画像に基づき切屑が堆積する堆積領域であると認識された領域に、自動的にクーラントを放出する。
ノズル220Aおよびノズル220Bは、互いに離れた位置に設けられている。ノズル220Aおよびノズル220Bは、X軸-Z軸平面内において、互いに離れた位置に設けられている。ノズル220Aは、X軸方向において、第1カバー32よりも第2カバー33寄りの位置に設けられている。ノズル220Aは、Z軸方向において、旋回カバー51よりもテレスコカバー34寄りの位置に設けられている。ノズル220Aは、第2オイルパン37の直上に設けられている。ノズル220Bは、X軸方向において、第2カバー33よりも第1カバー32寄りの位置に設けられている。ノズル220Bは、Z軸方向において、テレスコカバー34よりも旋回カバー51寄りの位置に設けられている。ノズル220Bは、第1オイルパン36の直上に設けられている。
なお、ノズル220が設けられる位置は、特に限定されるものではない。ノズル220は、たとえば、第1カバー32または第2カバー33に取り付けられてもよい。ノズル220の数は、3以上の複数であってもよいし、1つであってもよい。
工作機械100は、ノズル215をさらに有する。ノズル215は、工作エリア110にクーラントを放出可能である。ノズル215は、天井カバー39に取り付けられている。後で詳細に説明するが、ノズル215は、死角洗浄用であり、ノズル220からのクーラントが届かない死角となる工作エリア110の領域にクーラントを放出する。
ノズル215は、X軸-Z軸平面内において、ノズル220Aおよびノズル220Bから離れた位置に設けられている。一例として、ノズル215は、図2に示す上面視において、第2カバー33と旋回カバー51とが交わる隅部に設けられている。
ノズル220およびノズル215からクーラントが放出されることによって、工作エリア110に堆積する切屑が、コンベア46に向けて洗い流される。
工作機械100は、クーラントタンク71と、ポンプ72と、バルブ76(76A,76B)と、バルブ78とをさらに有する。
クーラントタンク71は、クーラントを貯留可能な箱体からなる。クーラントタンク71は、工作機械100が設置される工場などの床面に載置されている。クーラントタンク71には、クーラントが貯留されている。ポンプ72は、クーラントタンク71に設置されている。ポンプ72は、その駆動に伴って、クーラントタンク71に貯留されたクーラントをノズル220(220A,220B)およびノズル215に向けて送出する。
バルブ76は、ポンプ72およびノズル220を繋ぐ配管の経路上に設けられている。バルブ76は、ノズル220に向かうクーラント流れを制御する。バルブ76が開動作することによって、ノズル220からクーラントが放出され、バルブ76が閉動作することによって、ノズル220からのクーラント放出が停止する。バルブ76Aは、ポンプ72およびノズル220Aを繋ぐ配管の経路上に設けられている。バルブ76Bは、ポンプ72およびノズル220Bを繋ぐ配管の経路上に設けられている。
バルブ78は、ポンプ72およびノズル215を繋ぐ配管の経路上に設けられている。バルブ78は、ノズル215に向かうクーラント流れを制御する。バルブ78が開動作することによって、ノズル215からクーラントが放出され、バルブ78が閉動作することによって、ノズル215からのクーラント放出が停止する。
なお、ノズル220A、ノズル220Bおよびノズル215に向かうクーラント流れの制御には、各ノズルに向けてクーラントを供給するためのポンプのオンオフ制御が用いられてもよい。
図3は、図2中の自動洗浄用のノズルと、ノズルを動作させるためのアクチュエータとを示す上面図である。図4は、図2中の自動洗浄用のノズルと、ノズルを動作させるためのアクチュエータとを示す側面図である。図5は、図2中の工作機械における自動洗浄サイクルを示す上面図である。
図3から図5を参照して、工作機械100は、アクチュエータ230をさらに有する。アクチュエータ230は、ノズル220を動作させる。アクチュエータ230は、ノズル220からクーラントが放出される放出領域Uが移動するように、ノズル220を動作させる。
より具体的には、アクチュエータ230は、モータ231(231J,231K)と、ベルト241,246と、ピン部材226とを有する。
ベルト241,246は、ノズル220の表面に沿って円弧状に延びている。ベルト241およびベルト246は、図3に示す上面視おいて、互いに交差するように設けられている。ベルト241には、その長手方向に沿って延びる長孔242が設けられている。246には、その長手方向に沿って延びる長孔247が設けられている。ピン部材226は、長孔242および長孔247に挿通され、ノズル220に接続されている。
モータ231は、ステッピングモータからなる。ベルト241の一方端部には、モータ231Jの出力軸232が接続されている。モータ231Jの出力軸232は、X軸方向に延びている。モータ231Jは、出力軸232を通じて、X軸を中心とする正回転または逆回転の回転運動をベルト241に出力する。ピン部材226が長孔247を移動しながら、ノズル220は、X軸を中心とする周方向に回転駆動する。
ベルト246の一方端部には、モータ231Kの出力軸232が接続されている。モータ231Kの出力軸232は、Z軸方向に延びている。モータ231Kは、出力軸232を通じて、Z軸を中心とする正回転または逆回転の回転運動をベルト246に出力する。ピン部材226が長孔242を移動しながら、ノズル220は、Z軸を中心とする周方向に回転駆動する。
ノズル220には、放出口222が設けられている。放出口222は、工作エリア110で開口している。ノズル220は、放出口222から工作エリア110にクーラントを放出する。ノズル220の回転駆動に伴って、放出口222が開口する向き、すなわち、ノズル220からのクーラントの放出方向が変化することによって、放出領域Uが移動する。
なお、本発明において、ノズルを動作させるためのアクチュエータの構造は、特に限定されるものではない。たとえば、ノズルの動作は、スライド動作であってもよいし、回転動作と、スライド動作との組み合わせであってもよい。これらの場合に、ノズルを直線方向に案内するレールと、ノズルをレールに沿って送り駆動させるモータとが用いられてもよい。モータ231は、ステッピングモータに限られず、たとえば、サーボモータであってもよい。
死角洗浄用のノズル215に対しては、上記のアクチュエータ230が設けられていない。死角洗浄用のノズル215からのクーラントの放出方向は、固定されている。
図5に示されるように、工作機械100においては、工作エリア110に、複数の領域Sが設定されている。複数の領域Sは、第1領域Saと、第2領域Sbと、第3領域Scと、第4領域Sdと、第5領域Seと、第6領域Sfと、第7領域Sgと、第8領域Shとを含む。
第1領域Saは、主に、テーブル41(パレット42)の移動領域に対応しており、Z軸方向に帯状に延びている。第2領域Sbは、主に、第2オイルパン37に対応している。第3領域Scは、主に、第2カバー33およびATCシャッター38に対応している。第4領域Sdは、主に、第1オイルパン36に対応している。第5領域Seは、主に、扉35に対応している。第6領域Sfは、主に、テレスコカバー34および工具主軸21に対応している。第7領域Sgは、主に、APCアーム52、および、APCアーム52周りの第1オイルパン36および第2オイルパン37に対応している。第8領域Shは、主に、第2カバー33と旋回カバー51とが交わる隅部の第2オイルパン37に対応している。
第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Sc、第4領域Sd、第5領域Se、第6領域Sfおよび第7領域Sgは、自動洗浄用のノズル220からのクーラントによって洗浄される。一例として、ノズル220Aは、第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Scおよび第6領域Sfに対する自動洗浄を分担し、ノズル220Bは、第4領域Sd、第5領域Seおよび第7領域Sgに対する自動洗浄を分担する。
第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Sc、第4領域Sd、第5領域Se、第6領域Sfおよび第7領域Sgの各領域には、洗浄経路Rが設定されている。図5中には、代表的に、第1領域Saに設定される洗浄経路Raと、第4領域Sdに設定される洗浄経路Rdとが示されている。ノズル220がアクチュエータ230により回転駆動されることによって、ノズル220からクーラントが放出される放出領域Uが洗浄経路Rに沿って移動する。洗浄経路Rは、後出の始点Psおよび終点Pgの間で延びる経路であって、ノズル220からのクーラントの放出が、始点Psで開始され、終点Pgで終了する。
第8領域Shは、ノズル220からのクーラントの放出領域から死角になっている領域であり、死角洗浄用のノズル215からのクーラントによって洗浄される。
なお、工作エリア110に規定される領域Sの数または位置は、工作エリア110におけるカバー体31の形状、または、特定のワーク加工に伴って切屑が堆積する範囲の傾向などを考慮して、任意に決定され得る。
図6は、図1中の工作機械における駆動機構の制御系を模式的に示す図である。図6を参照して、工作機械100は、制御装置251と、モータドライバ310(310A,310B)と、サーボドライバ320,330,340とをさらに有する。
制御装置251は、工作機械100を制御する装置である。制御装置251の装置構成は、任意であり、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。
図6中では、一例として、制御装置251が、PLC(Programmable Logic Controller)としてのCPUユニット271と、CNCユニット272とから構成されている。CPUユニット271およびCNCユニット272は、通信経路273(たとえば、フィールドバスまたはLANケーブルなど)を介して互いに通信を行なう。
CPUユニット271は、予め設計されているPLCプログラムに従って、制御装置251を構成する各種ユニットを制御する。PLCプログラムは、たとえば、ラダープログラムで記述されている。CPUユニット271は、そのPLCプログラムに従ってモータドライバ310を制御し、ノズル220(220A,220B)の回転駆動を制御する。
CNCユニット272は、予め設計されている加工プログラムを実行する。加工プログラムは、たとえば、NC(Numerical Control)プログラムで記述されている。CNCユニット272、その加工プログラムに従ってサーボドライバ320,330,340を制御し、テーブル41に固定されているワークWを加工する。
図6中では、モータドライバ310Aは、2軸一体型のドライバとして示されている。モータドライバ310Aは、モータ231Jの目標回転速度および目標回転角度量の入力と、モータ231Kの目標回転速度および目標回転角度量の入力とのそれぞれをCPUユニット271から受ける。モータドライバ310Aは、入力された目標回転速度および目標回転角度量に対応するパルス信号をモータ231J,231Kに出力する。
モータ231Jは、モータドライバ310Aからパルス信号が印加されることにより回転運動を出力し、ノズル220AをX軸を中心とする周方向に回転駆動させる。モータ231Kは、モータドライバ310Aからパルス信号が印加されることにより回転運動を出力し、ノズル220AをZ軸を中心とする周方向に回転駆動させる。このように、モータドライバ310Aが、X軸を中心とする周方向のノズル220Aの回転駆動と、Z軸を中心とする周方向のノズル220Aの回転駆動とを個別に制御することによって、ノズル220Aから工作エリア110に向けたクーラントの放出方向を任意に変える。
同様に、モータドライバ310Bが、X軸を中心とする周方向のノズル220Bの回転駆動と、Z軸を中心とする周方向のノズル220Bの回転駆動とを個別に制御することによって、ノズル220Bから工作エリア110に向けたクーラントの放出方向を任意に変える。
サーボドライバ320は、CNCユニット272から目標位置の入力を逐次的に受け、サーボモータ321を制御する。サーボモータ321は、工具主軸21が取り付けられているクロススライド22をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、工具主軸21をY軸方向の任意の位置に移動させる。
サーボドライバ330は、CNCユニット272から目標位置の入力を逐次的に受け、サーボモータ331を制御する。サーボモータ331は、クロススライド22が取り付けられているコラム23をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、工具主軸21をX軸方向の任意の位置に移動させる。
サーボドライバ340は、CNCユニット272から目標位置の入力を逐次的に受け、サーボモータ341を制御する。サーボモータ341は、テーブル41をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、テーブル41をZ軸方向の任意の位置に移動させる。
図7は、図1中の工作機械の制御系の機能構成を示す図である。図7を参照して、工作機械100は、主要なハードウェア構成として、記憶装置291と、制御装置251とを有する。
記憶装置291は、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置291は、学習済みモデル記憶部294と、経路記憶部293とを含む。学習済みモデル記憶部294は、後出の学習済みモデルMを記憶している。経路記憶部293は、経路テーブルTを記憶している。経路テーブルTは、第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Sc、第4領域Sd、第5領域Se、第6領域Sfおよび第7領域Sgの各領域Sに設定された、ノズル220からのクーラントの放出領域Uが移動する洗浄経路R(Ra~Rg)を示している。
記憶装置291には、後述する工作機械100の制御プログラムがさらに記憶されている。
制御装置251は、機能構成として、画像取得部282と、切屑認識部283と、クーラント制御部281とを有する。上記の機能構成は、上述のCPUユニット271に実装されてもよいし、上述のCNCユニット272に実装されてもよい。
また、上記の機能構成は、CPUユニット271およびCNCユニット272とは別に準備された情報処理装置に実装されてもよい。情報処理装置は、汎用のコンピュータである。一例として、情報処理装置は、デスクトップ型のコンピュータであってもよいし、ノート型のコンピュータであってもよいし、タブレット端末であってもよい。情報処理装置は、無線LAN、有線LANまたはフィールドネットワークなどの通信手段を用いて、CPUユニット271および/またはCNCユニット272と通信を行なってもよい。
画像取得部282は、カメラ210により撮影された工作エリア110の画像を取得する。画像取得部282は、取得した画像を切屑認識部283に出力する。
切屑認識部283は、画像取得部282により入力された工作エリア110の画像に基づいて、工作エリア110に切屑が堆積する堆積領域を認識する。
切屑認識部283は、学習済みモデル記憶部294から学習済みモデルMを読み出す。切屑の堆積領域は、学習済みモデルMを用いて認識される。学習済みモデルMは、学習用データセットを用いた学習処理により予め生成されている。学習用データセットは、切屑が写っている複数の学習用画像を含む。各学習用画像には、切屑が写っているか否かを示すラベルが関連付けられる。学習済みモデルMの内部パラメータは、このような学習用データセットを用いた学習処理により予め最適化されている。
学習済みモデルMを生成するための学習手法には、種々の機械学習アルゴリズムが採用され得る。一例として、当該機械学習アルゴリズムとして、ディープラーニング、コンボリューションニューラルネットワーク(CNN)、全層畳み込みニューラルネットワーク(FCN)、サポートベクターマシンなどが採用される。
学習済みモデルMは、カメラ210から得られた画像の入力を受けて、画像内に写る切屑の位置を出力する。
より具体的には、切屑認識部283は、画像を複数のメッシュ領域に区分し、各区分の部分画像を学習済みモデルMに入力する。その結果、学習済みモデルMは、入力された部分画像に切屑が含まれている確率を出力する。切屑認識部283は、当該確率が所定値を超えた部分画像の位置を切屑の位置として特定する。
切屑認識部283は、特定した切屑の位置が、図5中の第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Sc、第4領域Sd、第5領域Se、第6領域Sfおよび第7領域Sgのいずれの領域Sに含まれるかを判定する。切屑認識部283は、特定した切屑の位置を含む領域Sを、工作エリア110に切屑が堆積する堆積領域として認識する。切屑認識部283は、第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Sc、第4領域Sd、第5領域Se、第6領域Sfおよび第7領域Sgのうちで、切屑の堆積領域として認識した領域Sをクーラント制御部281に出力する。
クーラント制御部281は、ノズル220からのクーラント放出による自動洗浄の実行を制御する。クーラント制御部281は、ノズル215からのクーラント放出による死角洗浄の実行をさらに制御する。
クーラント制御部281は、バルブ制御部284を含む。バルブ制御部284は、バルブ76(76A,76B)およびバルブ78の開閉動作を制御する。
より具体的には、クーラント制御部281が、切屑認識部283から、切屑の堆積領域として、第1領域Sa、第2領域Sb、第3領域Scおよび第6領域Sfのいずれかの領域Sの入力を受けた場合、バルブ制御部284は、バルブ76Aを開動作させる。クーラント制御部281が、切屑認識部283から、切屑の堆積領域として、第4領域Sd、第5領域Seおよび第7領域Sgのいずれかの領域の入力を受けた場合、バルブ制御部284は、バルブ76Bを開動作させる。バルブ制御部284は、自動洗浄が完了した場合に、バルブ76(76A,76B)を閉動作させる。
バルブ制御部284は、自動洗浄が完了した後に、バルブ78を開動作させる。バルブ制御部284は、死角洗浄が完了した場合に、バルブ78を閉動作させる。
アクチュエータ制御部285は、経路記憶部293から経路テーブルTを読み出し、自動洗浄の対象となる領域Sに設定された洗浄経路Rを特定する。アクチュエータ制御部285は、自動洗浄が実行される間、放出領域Uが特定された洗浄経路Rに沿って移動するように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する。
図8は、図1中の工作機械における自動洗浄サイクルの流れを示すフローチャートである。
図7および図8を参照して、制御装置251は、工作エリア110の自動洗浄サイクルを開始する(S110)。自動洗浄サイクルは、定期的に開始されてもよいし、作業者が操作盤81を通じて指示を与えることで開始されてもよい。典型的には、自動洗浄サイクルは、ワークの加工中に一定間隔で開始される。
S110のステップにおける自動洗浄サイクルの開始を受けて、カメラ210が工作エリア110を撮影する(S120)。画像取得部282は、カメラ210により撮影された工作エリア110の画像を取得するとともに、その画像を切屑認識部283に出力する。
次に、切屑認識部283は、入力された工作エリア110の画像に基づいて、工作エリア110の切屑を推論する(S130)。図8中では、切屑認識部283が、第1領域Sa、第2領域Sbおよび第4領域Sdを切屑の堆積領域として認識した場合が想定されている。切屑認識部283は、切屑の堆積領域として認識した第1領域Sa、第2領域Sbおよび第4領域Sdをクーラント制御部281に出力する。
S130のステップにおいて、仮にいずれの領域Sも切屑の堆積領域として認識されなかった場合、自動洗浄および死角洗浄が実行されることなく、自動洗浄サイクルが終了する(S160)。
次に、クーラント制御部281は、入力された第1領域Sa、第2領域Sbおよび第4領域Sdに対する自動洗浄を実行する(S140)。
より具体的には、バルブ制御部284は、バルブ76Aおよびバルブ76Bを開動作させる。アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aからのクーラントが放出される放出領域Uが、第1領域Saに設定された洗浄経路Raに沿って移動するように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する(S141)。S141のステップに続いて、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aからのクーラントが放出される放出領域Uが、第2領域Sbに設定された洗浄経路Rbに沿って移動するように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する(S142)。バルブ制御部284は、S141およびS142のステップが完了したあと、バルブ76Aを閉動作させる。
S141およびS142のステップと並行して、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Bからのクーラントが放出される放出領域Uが、第4領域Sdに設定された洗浄経路Rdに沿って移動するように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する(S143)。バルブ制御部284は、S143のステップが完了したあと、バルブ76Bを閉動作させる。
次に、クーラント制御部281は、第8領域Shに対する死角洗浄を実行する(S150)。より具体的には、バルブ制御部284は、バルブ78を開動作させる。バルブ制御部284は、死角洗浄が所定時間、実行されたあと、バルブ78を閉動作させる。以上のステップにより、自動洗浄サイクルが終了する(S160)。
図9は、自動洗浄の中断および再開サイクルの流れを示す図である。図7から図9を参照して、クーラント制御部281は、加工プログラムに基づくクーラント放出の中断/再開指令が入力された場合に、ノズル220からのクーラント放出の中断/再開を実行する。
一例として、CNCユニット272により実行される加工プログラムは、自動工具交換装置61による工具交換を指令するためのM06指令を含む。M06指令の実行が開始される時に、クーラント制御部281に対してクーラント放出の中断指令が入力され、M06指令の実行が完了する時に、クーラント制御部281に対してクーラント放出の再開指令が入力される。
自動工具交換装置61による工具交換(ATC)の間、ATCシャッター38が開状態とされる。ノズル220からのクーラント放出が一時中断されることによって、工作エリア110から自動工具交換装置61が設置された空間へのクーラントの流出を防ぐ。
図9に示される例では、時間t1に、第1領域Saに対する自動洗浄(S141)と、第4領域Sdに対する自動洗浄(S143)とが開始される。時間t2に、ATCが開始されると、第1領域Saに対する自動洗浄と、第4領域Sdに対する自動洗浄とが中断される。時間t3に、ATCが完了すると、第1領域Saに対する自動洗浄と、第4領域Sdに対する自動洗浄とが再開される。時間t4に、第4領域Sdに対する自動洗浄が完了し、時間t5に、第1領域Saに対する自動洗浄が完了する。
図10は、第1領域に設定される洗浄経路を示す図である。図10を参照して、洗浄経路Raは、始点Ps、方向転換点P1~P7、および、終点Pgを順に通って延びている。始点Psは、洗浄経路Raが始まる位置である。終点Pgは、洗浄経路Raが終わる位置である。洗浄経路Raは、方向転換点P1~P7の各位置で方向転換しながら、始点Psおよび終点Pgの間でジグザグ状に延びている。
図11から図13は、図10中の洗浄経路において、自動洗浄の中断および再開時の放出領域の移動を示す図である。
図11から図13を参照して、アクチュエータ制御部285は、ノズル220(220A)からのクーラント放出が洗浄経路Ra上の第1位置Pmで中断された場合に、ノズル220(220A)からのクーラント放出が洗浄経路Ra上の第2位置Pnから再開されるように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する。第2位置Pnは、(i)始点Ps、または、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置する点である。(ii)における始点Psと第1位置Pmとの間には、始点Psおよび第1位置Pmが含まれない。
図11に示されるように、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aの放出口222が洗浄経路Ra上の始点Psと対向するように、ノズル220Aを回転駆動させる。バルブ制御部284は、バルブ76Aを開動作させる。アクチュエータ制御部285は、放出口222が洗浄経路Ra上の始点Ps、方向転換点P1および方向転換点P2と順に対向するように、ノズル220Aを回転駆動させる。これにより、ノズル220Aからクーラントが放出された状態で、ノズル220Aからのクーラントの放出領域Uが、洗浄経路Ra上の始点Ps、方向転換点P1および方向転換点P2を順に通ってジグザグ状に移動する。
ノズル220Aからのクーラントの放出領域Uが方向転換点P3の手前の第1位置Pmに位置するタイミングで、ATCが開始される。ATC開始によるクーラント放出の中断指令が、クーラント制御部281に入力される。バルブ制御部284は、ATC開始によるクーラント放出の中断指令を受けて、バルブ76Aを閉動作させる。
図12に示されるように、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aの放出口222が洗浄経路Ra上の第1位置Pm、方向転換点P3および方向転換点P2と順に対向するように、ノズル220Aを回転駆動させる。方向転換点P2は、(i)始点Ps、および、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間のうちの、(ii)に位置する点である洗浄経路Ra上の第2位置Pnに対応している。方向転換点P2(第2位置Pn)は、始点Psではないが、第1位置Pmよりも始点Ps側に位置している。この間、ノズル220Aからクーラントは放出されていない。
上記クーラント放出の中断命令を挟んだ前後のアクチュエータ制御部285における処理について、具体的に説明する。
アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aからのクーラントの放出領域Uを方向転換点P2から方向転換点P3まで移動させるための目標回転速度および目標回転角度量を、モータドライバ310Aに対して出力する。モータドライバ310Aは、入力された目標回転速度および目標回転角度量に対応するパルス信号をモータ231(231J,231K)に印加する。アクチュエータ制御部285は、クーラント制御部281にクーラント放出の中断指令が入力されたタイミングが、モータドライバ310Aからモータ231に対する上記パルス信号の印加途中であった場合に、方向転換点P2および方向転換点P3の間の第1位置Pmにおけるクーラント放出の中断を検知する。アクチュエータ制御部285は、クーラント放出の中断に拘わらず、上記パルス信号の印加を完遂する。これにより、ノズル220Aの放出口222が、洗浄経路Ra上の方向転換点P2と対向する位置から方向転換点P3と対向する位置まで回転駆動する。
アクチュエータ制御部285は、方向転換点P2および方向転換点P3の間の第1位置Pmにおけるクーラント放出の中断を検知した場合に、ノズル220Aからのクーラントの放出領域Uを方向転換点P3から方向転換点P2(第2位置Pn)まで反転移動させるための目標回転速度および目標回転角度量を、モータドライバ310Aに対して出力する。モータドライバ310Aは、入力された目標回転速度および目標回転角度量に対応するパルス信号をモータ231に印加する。これにより、ノズル220Aの放出口222が、洗浄経路Ra上の方向転換点P3と対向する位置から方向転換点P2(第2位置Pn)と対向する位置まで回転駆動する。
図13に示されるように、バルブ制御部284は、ATC完了によるクーラント放出の再開指令を受けて、バルブ76Aを開動作させる。アクチュエータ制御部285は、ノズル220Aの放出口222が洗浄経路Ra上の方向転換点P2(第2位置Pn)、方向転換点P3、方向転換点P4、方向転換点P5、方向転換点P6、方向転換点P7および終点Pgと順に対向するように、ノズル220Aを回転駆動させる。これにより、ノズル220Aからクーラントが吐出された状態で、ノズル220Aからのクーラントの放出領域Uが、洗浄経路Ra上の方向転換点P2(第2位置Pn)、方向転換点P3、方向転換点P4、方向転換点P5、方向転換点P6、方向転換点P7および終点Pgを順に通ってジグザグ状に移動する。バルブ制御部284は、放出領域Uが終点Pgに達したら、バルブ76Aを閉動作させる。
図14および図15は、図10中の洗浄経路において、自動洗浄の中断および再開時の放出領域の移動の変形例を示す図である。
図14および図15を参照して、本変形例では、ノズル220からのクーラント放出が再開される第2位置Pnが、洗浄経路Ra上において、第2位置Pnは、始点Psおよび第1位置Pmの間であって、かつ、方向転換点P2および第1位置Pmの間に位置している。
なお、ノズル220からのクーラント放出が再開される第2位置Pnは、(i)始点Ps、または、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置する点であれば特に限定されず、たとえば、始点Psであってもよいし、方向転換点P1であってよい。
図16は、第4領域に設定される洗浄経路を示す図である。図16を参照して、第4領域Sdには、洗浄経路Rdが設定されている。洗浄経路Rdは、始点Ps、方向転換点P1および終点Pgを順に通って延びている。始点Psは、洗浄経路Rdが始まる位置である。終点Pgは、洗浄経路Rdが終わる位置である。洗浄経路Rdは、始点Psから方向転換点P1に向けて直線状に延び、方向転換点P1で方向転換し、方向転換点P1から終点Pgに向けて直線状に延びている。
図17から図19は、図16中の洗浄経路において、自動洗浄の中断および再開時の放出領域の移動を示す図である。
図17から図19を参照して、アクチュエータ制御部285は、ノズル220(220B)からのクーラント放出が、方向転換点P1および終点Pgの間の直線区間で中断された場合に、ノズル220(220B)からのクーラント放出が、方向転換点P1から再開されるように、アクチュエータ230(モータ231)を制御する。
図17に示されるように、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Bの放出口222が洗浄経路Rd上の始点Psと対向するように、ノズル220Bを回転駆動させる。バルブ制御部284は、バルブ76Bを開動作させる。アクチュエータ制御部285は、ノズル220Bの放出口222が洗浄経路Rd上の始点Psおよび方向転換点P1と順に対向するように、ノズル220Bを回転駆動させる。これにより、ノズル220Bからクーラントが吐出された状態で、ノズル220Bからのクーラントの放出領域Uが、洗浄経路Rd上の始点Psおよび方向転換点P1を順に通って移動する。
ノズル220Bからのクーラントの放出領域Uが方向転換点P1および終点Pgの間の直線区間の第1位置Pmに位置するタイミングで、ATCが開始される。バルブ制御部284は、ATC開始によるクーラント放出の中断指令を受けて、バルブ76Bを閉動作させる。
図18に示されるように、アクチュエータ制御部285は、ノズル220Bの放出口222が洗浄経路Rd上の第1位置Pm、終点Pgおよび方向転換点P1と順に対向するように、ノズル220Bを回転駆動させる。方向転換点P1は、(i)始点Ps、および、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間のうちの、(ii)に位置する点である洗浄経路Ra上の第2位置Pnに対応している。方向転換点P1(第2位置Pn)は、始点Psではないが、第1位置Pmよりも始点Ps側に位置している。この間、ノズル220Bからクーラントは放出されていない。
図19に示されるように、バルブ制御部284は、ATC完了によるクーラント放出の再開指令を受けて、バルブ76Bを開動作させる。アクチュエータ制御部285は、ノズル220Bの放出口222が洗浄経路Rd上の方向転換点P1(第2位置Pn)および終点Pgと順に対向するように、ノズル220Bを回転駆動させる。これにより、ノズル220Bからクーラントが吐出された状態で、ノズル220Bからのクーラントの放出領域Uが、洗浄経路Rd上の方向転換点P1(第2位置Pn)から終点Pgまで移動する。
なお、死角洗浄の間にATCが実行される場合にも、ノズル215からのクーラント放出の中断および再開が実行される。死角洗浄の再開時に、洗浄の実行時間はリセットされてもよい。
図1および図7を参照して、クーラント制御部281は、作業者の操作による中断/再開指令が入力された場合に、ノズル220,215からのクーラント放出の中断/再開を実行する。
たとえば、作業者は、操作盤81を通じて、ノズル220,215からのクーラント放出の中断/再開のための操作を行なう。操作には、下パネル83のタッチスクリーンに表示される工作機械100の操作画面内のボタンが用いられてもよいし、上パネル82のタッチスクリーンに表示される自動洗浄用のアプリケーション画面内のボタンが用いられてもよい。作業者がクーラント放出の中断のためのボタンを操作すると、クーラント制御部281に対してクーラント放出の中断指令が入力され、作業者がクーラント放出の再開のためのボタンを操作すると、クーラント制御部281に対してクーラント放出の再開指令が入力される。作業者の操作によるノズル220,215からのクーラント放出の中断時、工具主軸21に備わる主軸クーラントは、継続して実行されてもよい。
クーラントは、ノズル220,215から勢いよく放出されるため、クーラントおよびカバー体31の衝突によって、大きい音が発生したり、工作エリア110でクーラントが霧状になる場合がある。作業者は、ワーク加工に伴って発生する切削音を確認したり、工作エリア110におけるワーク加工の状況を目視により確認したりする場合に、操作盤81の操作によって、ノズル220,215からのクーラント放出を中断することができる。
作業者による操作によってノズル220からのクーラント放出が中断/再開された場合にも、図10から図19を参照して説明した、アクチュエータ制御部285によるアクチュエータ230の制御が実行される。
以上に説明した、この発明の実施の形態における工作機械100の構成をまとめると、本実施の形態における工作機械100は、工作エリア110にクーラントを放出するノズル220と、ノズル220を動作させるアクチュエータ230と、ノズル220からクーラントが放出される放出領域Uが、始点Psと、終点Pgとを含み、始点Psおよび終点Pgの間で延びる所定経路としての洗浄経路Rに沿って移動するように、アクチュエータ230を制御するアクチュエータ制御部285とを備える。アクチュエータ制御部285は、ノズル220からのクーラント放出が洗浄経路R上の第1位置Pmで中断された場合に、ノズル220からのクーラント放出が、(i)始点Ps、または、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置する点である洗浄経路R上の第2位置Pnから再開されるように、アクチュエータ230を制御する。
本実施の形態における情報処理装置は、工作エリア110にクーラントを放出するノズル220と、ノズル220を動作させるアクチュエータ230とを備える工作機械100を制御するための情報処理装置である。情報処理装置は、上記のアクチュエータ制御部285を備える。
本実施の形態における制御プログラムは、工作エリア110にクーラントを放出するノズル220と、ノズル220を動作させるアクチュエータ230とを備える工作機械100の制御プログラムである。制御プログラムは、工作機械100に、ノズル220からクーラントが放出される放出領域Uが、始点Psと、終点Pgとを含み、始点Psおよび終点Pgの間で延びる洗浄経路Rに沿って移動するように、アクチュエータ230を制御するステップを実行させる。アクチュエータ230を制御するステップは、ノズル220からのクーラント放出が洗浄経路R上の第1位置Pmで中断された場合に、ノズル220からのクーラント放出が、(i)始点Ps、または、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置する点である洗浄経路R上の第2位置Pnから再開されるように、アクチュエータ230を制御するステップを含む。
このような構成によれば、ノズル220からのクーラント放出が(i)始点Ps、または、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置する点である洗浄経路R上の第2位置Pnから再開されるため、クーラント放出の中断前および再開後の間で、クーラント放出される洗浄経路R上の区間が重なり合う。このため、クーラント放出の中断に拘わらず、洗浄経路Rに沿った全区間で十分な洗浄効果を得ることができる。さらに、第2位置Pnが、(ii)始点Psと第1位置Pmとの間に位置している場合、クーラントによる工作エリア110の洗浄工程を効率的に行なうことができる。
工作機械100は、工作エリア110を撮影するためのカメラ210と、カメラ210により撮影された画像に基づいて、切屑が堆積する堆積領域を認識する切屑認識部283とをさらに備える。アクチュエータ制御部285は、切屑認識部283により認識された堆積領域に設定された洗浄経路Rに沿って放出領域Uが移動するように、アクチュエータ230を制御する。
このような構成において、カメラ210による撮影工程、および、切屑認識部283による切屑の堆積領域の認識工程が再度行なわれることなく、ノズル220からのクーラント放出が再開されるため、クーラントによる工作エリア110の洗浄工程をさらに効率的に行なうことができる。
工作機械100は、複数組のノズル220およびアクチュエータ230を備える。アクチュエータ制御部285は、複数組のノズル220およびアクチュエータ230の各組毎に、アクチュエータ230を制御可能である。
このような構成によれば、ノズル220Aによる洗浄工程と、ノズル220Bによる洗浄工程との各々で、上記のノズル220からのクーラント放出の中断/再開工程が実行される。このため、クーラントによる工作エリア110の洗浄工程が、十分な洗浄効果が得られるように実行されるという効果が、ノズル220Aによる洗浄工程と、ノズル220Bによる洗浄工程との各々で奏される。
なお、本実施の形態においては、複数の直線経路が組み合わされた洗浄経路Raおよび洗浄経路Rdについて説明したが、本発明における所定経路に対応する洗浄経路Rの構成は、特に限定されるものではない。洗浄経路Rは、単一の直線経路であってもよいし、単一の曲線経路であってもよいし、曲率が互いに異なる複数の曲線経路の組み合わせであってもよい。洗浄経路Rは、任意の数の直線経路と、任意の数の曲線経路との組み合わせであってもよい。
洗浄経路Rが単一の直線経路からなる場合、直線経路の一方端が、始点Psに対応し、直線経路の他方端が、終点Pgに対応する。洗浄経路Rが単一の曲線経路からなる場合、曲線経路の一方端が、始点に対応し、曲線経路の他方端が、終点に対応する。これらの場合に、第2位置Pnは、始点Psであってもよいし、始点Psではないが、第1位置Pmよりも始点Ps寄りの位置であってもよいし、始点Psおよび第1位置Pmの中間位置であってもよいし、その中間位置よりもさらに始点Ps側の位置であってもよい。
放出領域Uの移動方向に沿って第1経路および第2経路が順に並ぶ洗浄経路Rを想定する。本発明とは別に、第1経路の途中に位置する第1位置Pmでクーラント放出が中断された場合に、第2経路の先頭に位置する第2位置Pnからクーラント放出を再開する発明を構築してもよい。
なお、本発明における工作機械は、横形マシニングセンタに限られず、たとえば、立形マシニングセンタ、旋盤、旋削機能と、ミーリング機能とを有する複合加工機、または、ワークの付加加工(AM(Additive Manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive Manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機にも適用可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。