JP7371857B2 - 素子の金属元素の分離回収方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 刊行物名:日本セラミックス協会 2019年年会 予稿集 発行日:平成31年3月1日
本発明は、使用済みの素子から、金属元素を分離して回収する方法に関する。
素子の一つである熱電素子は、希少金属であるビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)を高い割合で含有し、冷却素子などとして大量に使用されている。これら金属(Bi,Sb,Te)を高い割合で含有する熱電素子は、役目を終えた後、破棄されるのではなく、リサイクルされることが望ましい。
熱電素子に含まれる金属元素を分離・回収する方法として、本出願人は、下記特許文献1において、以下の第一の工程から第六の工程を含む熱電素子の金属元素の分離回収方法を提案している。
(1) 熱電素子を、硝酸水熱処理によって溶解させる第一の工程。
(2) 前記第一の工程により得られた硝酸水溶液から、アンチモン(Sb)を主成分とする不溶物を回収する第二の工程。
(3) 前記第二の工程後の硝酸水溶液を、中和処理し液性を塩基性とする第三の工程。
(4) 前記第三の工程により得られた塩基性水溶液から、ビスマス(Bi)を主成分とする不溶物を回収する第四の工程。
(5) 前記第四の工程後の塩基性水溶液を、還元剤によって化学的に還元する第五の工程。
(6) 前記第五の工程により得られた水溶液から、テルル(Te)を主成分とする不溶物を回収する第六の工程。
特開2019-26909号公報
使用済みの素子から、金属元素を分離回収して、リサイクルする方法は、コスト的観点から、簡便な方法であることが必要とされる。
しかしながら、上記の金属元素を分離・回収する方法は、硝酸水熱処理(例えば、140℃で20時間の加熱処理)を行なうことが要件であり、加熱に大量のエネルギーを要するものであるため、簡便に行うことができないという課題があった。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、素子から金属元素を分離して回収する簡便な方法を提供することを目的とする。
本発明に係る素子の金属元素の分離回収方法は、テルル(Te)を含有する素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程と、該浸漬工程により得られた希硫酸溶液から、テルルを主成分とする不溶物を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の素子の金属元素の分離回収方法によれば、テルルを含有する素子が、希硫酸によって溶解される。このとき、テルルを含有する素子を構成する成分のうち、テルルが希硫酸に対して不溶であるため、テルルを含有する不溶物が生じる。このため、不溶物を回収することにより、テルルを効率よく回収することができる。
ここで、前記分離回収方法において、前記浸漬工程がメカノケミカル処理を伴うことができる。
これによれば、メカノケミカル処理により、テルルを含有する素子が粉砕される。これにより、テルルを含有する素子の表面積が増し、希硫酸に可溶な成分の溶解を促進することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の濃度が0.5mol/L~16.5mol/Lとすることができる。これによれば、希硫酸に可溶な成分の溶解が促進され、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の濃度が2.0mol/L~5.0mol/Lとすることができる。これによれば、テルルをより効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の温度が0℃~50℃とすることができる。これによれば、処理費用を抑えつつ、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸と前記素子の混合比が、
希硫酸(mL):素子(g)=5~200(mL):1(g)(=50(mL):0.25~10(g))
であるものとすることができる。これによれば、希硫酸に可溶な成分の溶解が促進され、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記メカノケミカル処理がボールミル処理であり、該ボールミル処理で使用される粉砕ボールがジルコニアボールであるものとすることができる。これによれば、素子を好適に粉砕することができ、テルルをより効率よく回収することができる。
本発明の素子の金属元素の分離回収方法によれば、テルルを効率よく回収することができる。
湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理における希硫酸濃度に対するビスマスの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理における希硫酸濃度に対するアンチモンの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理における希硫酸濃度に対するテルルの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理における希硫酸濃度に対する不溶物のテルルの含有率を示す図である。 湿式メカノケミカル処理における不溶物の固相分析(XRD)を示す図である。 図5の回折角を限定した図である。 湿式メカノケミカル処理における希硫酸容量と熱電素子質量の混合比に対するビスマスの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理における希硫酸容量と熱電素子質量の混合比に対するアンチモンの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理における希硫酸容量と熱電素子質量の混合比に対するテルルの溶出量を示す図である。 湿式メカノケミカル処理における希硫酸容量と熱電素子質量の混合比に対する不溶物中のテルル含有率を示す図である。
本発明の実施形態の素子の金属元素の分離回収方法は、テルル(Te)を含有する素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程と、浸漬工程により得られた希硫酸溶液から、テルルを主成分とする不溶物を回収する回収工程と、を含むものである。浸漬工程はメカノケミカル処理を伴うことが好ましい。
素子の一つである熱電素子とは、電気エネルギーを吸熱又は発熱エネルギーに変換するペルチェ効果を発揮する素子のことである。ペルチェ効果を発揮する素子は、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)を高い割合で含有するものが多い。また、この3つの元素を全て含むものを、ビスマス-アンチモン-テルル系ペルチェ素子という。なお、ビスマス-アンチモン-テルル系ペルチェ素子に限らず、テルルを高い割合で含有する素子であれば、実施形態の素子の金属元素の分離回収方法の素子として供することができる。
熱電素子は、浸漬工程の前に、裁断・粉砕されることが好ましい。熱電素子の表面積を大きくし、浸漬工程により熱電素子が溶解されやすくするためである。裁断・粉砕後の熱電素子の粒子径は、最大粒子径が5mm以下であることが好ましい。後述するメカノケミカル処理を容易に行うことができるためである。より好ましくは、最大粒子径は3mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1mm以下であることが好ましい。なお、最大粒子径の下限値は、表面積が大きくなるため、小さい方が好ましいが、裁断・粉砕する労力を考慮して、0.01mm以上であることが好ましい。なお、裁断・粉砕後の熱電素子の粒子径は、最大の粒子径となる熱電素子が分離回収方法において阻害要因となるため、最大粒子径で規定するものであり、最大粒子径の範囲を故意に外すためだけに用意された粒子径の熱電素子は、当然、最大粒子径の範囲の規定から除外されるべきものである。
熱電素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程は、熱電素子からビスマスとアンチモンを希硫酸に溶解させる工程である。本願発明者らは、熱電素子を希硫酸に浸漬させることによって、ビスマスとアンチモンが希硫酸に溶解し、テルルが希硫酸に溶解し難いことを見出し、テルルの回収が可能であることを見出したものである。
浸漬工程に使用する希硫酸の濃度は、0.5mol/L~16.5mol/Lであることが好ましい。これによれば、希硫酸に可溶な成分であるビスマスとアンチモンの溶解が促進され、不溶物となったテルルを効率よく回収することができるためである。浸漬工程に使用する希硫酸の濃度が0.5mol/L未満だと、図1及び図2に示すように、ビスマスとアンチモンが十分に希硫酸に溶解しないおそれがある。一方、浸漬工程に使用する希硫酸の濃度が16.5mol/Lをこえると、理由は不明であるが、図1及び図2に示すように、ビスマスとアンチモンが十分に希硫酸に溶解しないおそれがある。より好ましくは、浸漬工程に使用する希硫酸の濃度は、1.0mol/L~8.0mol/Lであり、さらに好ましくは、2.0mol/L~5.0mol/Lであり、最も好ましくは、4.0mol/L~5.0mol/Lである。
浸漬工程に使用する希硫酸の温度は、0℃~50℃であることが好ましい。これによれば、ビスマスとアンチモンを効率良く希硫酸に溶解させることができるためである。浸漬工程に使用する希硫酸の温度が0℃未満だと、ビスマスとアンチモンの溶解性が劣り、テルルを高い純度で回収することができないおそれがある。一方、50℃を超えると、実施は可能であるが、反応系(希硫酸と熱電素子粉砕物)の加温が必要となり、不経済となるおそれがある。より好ましくは、浸漬工程に使用する希硫酸の温度は、10℃~40℃である。
熱電素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程の時間は、12時間~48時間であることが好ましい。これによれば、ビスマスとアンチモンを効率良く希硫酸に溶解させることができるためである。熱電素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程の時間が12時間未満だと、ビスマスとアンチモンを十分に溶解させることができないおそれがある。一方、48時間を超えると、実施は可能であるが、過剰な浸漬時間となり、不合理となるおそれがある。より好ましくは、浸漬工程の時間は、18時間~36時間である。
希硫酸溶液(濃度:4mol/L)と熱電素子粉砕物との混合比は、
希硫酸(mL):熱電素子(g)=5~200(mL):1(g)(=50(mL):0.25~10(g))
であることが好ましい。これによれば、希硫酸に可溶な成分であるビスマスとアンチモンの溶解が促進され、テルルを効率よく回収することができる。熱電素子粉砕物に対する希硫酸溶液の混合比(量)が、希硫酸(mL):熱電素子(g)=5(mL):1(g)(=50(mL):10(g))未満の場合には、図7及び図8に示すように、ビスマスとアンチモンの溶解が不十分となり、図10に示すように、不溶物として回収されるテルルの純度が劣るおそれがある。一方、熱電素子粉砕物に対する希硫酸溶液の混合比(量)が、希硫酸(mL):熱電素子(g)=200(mL):1(g)(=50(mL):0.25(g))を超える場合には、実施は可能であるが、希硫酸溶液が過剰な量となり、不経済となるおそれがある。より好ましくは、希硫酸溶液と熱電素子粉砕物との混合比は、
希硫酸(mL):熱電素子(g)=10~100(mL):1(g)(=50(mL):0.5~5(g)) であり、さらに好ましくは、
希硫酸(mL):熱電素子(g)=20~60(mL):1(g)(=50(mL):0.8~2.5(g)) であり、最も好ましくは、
希硫酸(mL):熱電素子(g)=25~50(mL):1(g)(=50(mL):1~2(g)) である。
浸漬工程は、メカノケミカル処理を伴うことが好ましい。メカノケミカル処理とは、固体物質の粉砕過程での摩擦や圧縮などの機械エネルギーにより、局部的に生じる高いエネルギーを利用して、固溶反応、結晶化反応、相転移反応を促進する処理であり、ボールミル、ビーズミル又は遊星ミルを使用することにより行うことができる。実施形態のメカノケミカル処理は、ボールミルを使用して、固溶反応を促進させるものである。なお、本明細書及び図面において、希硫酸に浸漬させるだけの浸漬工程を単純浸漬処理と称することがあり、メカノケミカル処理を伴う浸漬工程を湿式メカノケミカル処理と称することがある。
ボールミルによる湿式メカノケミカル処理は、密閉可能な円筒形状の容器に、希硫酸、熱電素子及び粉砕ボールを収容し、収容の後に、容器を密閉し、密閉された円筒形状の容器を周方向に回転させることにより、希硫酸による浸漬工程に、摩擦や圧縮などの機械エネルギーを加えるものである。
ボールミルのボールの素材には、高強度の、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(Si34)、炭化ケイ素(SiC)などを使用することができるが、実施形態のメカノケミカル処理では、これらの中で比重が最も大きいため粉砕力に優れるジルコニアを使用した。
ボールミルの回転数(円筒形状の容器の回転数)は、60rpm~240rpmであることが好ましい。好適に熱電素子を粉砕することができるためである。ボールミルの回転数が60rpm未満の場合には、メカノケミカル処理による効果が得られ難く、ビスマス又はアンチモンの溶解量が不十分となるおそれがある。一方、回転数が240rpmを超えると、過度な回転数となり、メカノケミカル処理による効果が頭打ちとなるおそれがある。より好ましくは、ボールミルの回転数は、120rpm~180rpmである。
ボールミルによる処理時間は、12h~48hであることが好ましい。好適に熱電素子を粉砕することができるためである。ボールミルによる処理時間が12h未満の場合には、粉砕が不十分となり、メカノケミカル処理による効果が得られ難く、ビスマス又はアンチモンの溶解量が不十分となるおそれがある。一方、ボールミルによる処理時間が48hを超えると、過度な処理時間となり、メカノケミカル処理による効果が頭打ちとなるおそれがある。より好ましくは、ボールミルによる処理時間は、18h~30hである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。熱電素子は、下記の組成のペルチェ素子を最大粒子径が0.1mmになるまで瑪瑙乳鉢で粉砕したもの(ペルチェ粉末)を使用した。
ビスマス(Bi) 24.7質量%
アンチモン(Sb) 18.1質量%
テルル(Te) 56.3質量%
セレン(Se) 0.4質量%
マグネシウム(Mg) 0.3質量%
なお、セレンとマグネシウムは、微量成分である。
湿式メカノケミカル処理は、密閉可能な500mLの円柱形状のポリプロピレン容器に、ペルチェ粉末0.5g~5.0gと、条件により濃度を変更した希硫酸50mLと、直径5mmのジルコニアボール350gと、を封入し、メカノケミカル処理を施した。湿式メカノケミカル処理は、ボールミル装置に、ヤマト科学株式会社製Universal Ball Mill UB32を使用し、2.8rps(168rpm)の回転数で24時間処理を行った。単純浸漬処理は、密閉可能な500mLの円柱形状のポリプロピレン容器に、ペルチェ粉末0.5g~5.0gと、条件により濃度を変更した希硫酸50mLと、を封入し、24時間静置した。メカノケミカル処理及び単純浸漬処理後に、試料(ペルチェ粉末と希硫酸)を減圧ろ過法によって固液を分離し、以下の測定を行った。
液相の金属元素の含有率の測定には、Perkin-Elmer社の誘導プラズマ発光分析装置「OPTIMA-2000DV」(以下、ICP-AESと略すことがある。)を使用した。固相の金属元素の含有率の測定には、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置「ZSX100e」(以下、XRFと略すことがある。)を使用した。固相の金属元素の同定には、株式会社リガク製のX線回析装置「MiniFlexII」(以下、XRDと略すことがある。)を使用した。
(実施例1)
実施例1は、希硫酸とペルチェ粉末の混合比を、希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=50(mL):1.25(g)に固定し、希硫酸の濃度を、0mol/L~9mol/Lに変更して、湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理を施したものである。その結果を、図1~図6に記載する。なお、湿式メカノケミカル処理後の希硫酸の温度は35℃であり、単純浸漬処理後の希硫酸の温度は30℃であった。
図1より、ビスマスは、単純浸漬処理に比して湿式メカノケミカル処理の方が溶解することが分かる。ビスマスは、希硫酸の濃度が1mol/L~9mol/Lの範囲で溶解し、2mol/L~5mol/Lの範囲にて高濃度で溶解していることが分かる。なお、図1には記載していないが、ビスマスは、0.5mol/L~16.5mol/Lの希硫酸に溶解する。
図2より、アンチモンは、単純浸漬処理に比して湿式メカノケミカル処理の方が溶解することが分かる。アンチモンは、希硫酸の濃度が1mol/L~9mol/Lの範囲で溶解し、2mol/L~6mol/Lの範囲にて高濃度で溶解していることが分かる。なお、図2には記載していないが、アンチモンは、0.5mol/L~16.5mol/Lの希硫酸に溶解する。
図3より、テルルは、単純浸漬処理又は湿式メカノケミカル処理であっても希硫酸に溶解しないことが分かる。なお、図3は、1mol/L及び3mol/Lの希硫酸にテルルが溶解する結果になっているが、何らかの測定ミスによるものと推測する。
図4より、湿式メカノケミカル処理後の不溶物にテルルが高い割合で含有していることが分かる。なお、図4は、単純浸漬処理後の不溶物並びに6mol/L及び9mol/Lの湿式メカノケミカル処理後の不溶物のテルルが濃縮されていない結果になっているが、何らかの測定ミスによるものと推測する。図5及び図6から、希硫酸の濃度が1mol/L~9mol/Lの範囲でテルルが濃縮されていることが確認できる。
(実施例2)
実施例2は、希硫酸の濃度を、4mol/Lに固定し、希硫酸とペルチェ粉末の混合比を、希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=10~100(mL):1(g)(=50(mL):0.5~5(g))に変更して、湿式メカノケミカル処理及び単純浸漬処理を施したものである。その結果を、図7~図10に記載する。なお、湿式メカノケミカル処理後の希硫酸の温度は35℃であり、単純浸漬処理後の希硫酸の温度は30℃であった。
図7から、希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=10~100(mL):1(g)(=50(mL):0.5~5(g))の範囲では、ビスマスは、希硫酸に溶解し、ペルチェ粉末(g)に対して希硫酸(mL)の量が多い方(希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=100(mL):1(g)(=50(mL):0.5(g)))が溶解し易いようである。
図8から、希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=10~100(mL):1(g)(=50(mL):0.5~5(g))の範囲では、アンチモンは、希硫酸に溶解し、ペルチェ粉末(g)に対して希硫酸(mL)の量が多い方(希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=100(mL):1(g)(=50(mL):0.5(g)))が溶解し易いようである。
図9から、テルルは、希硫酸に溶解しないことが確認できる。なお、希硫酸(mL):ペルチェ粉末(g)=100(mL):1(g)(=50(mL):0.5(g))にて、テルルが希硫酸に溶解する結果になっているが、何らかの測定ミスによるものと推測する。
図10から、湿式メカノケミカル処理後の不溶物にテルルが高い割合で含有していることが分かる。
以上のように構成された実施形態の素子の金属元素の分離回収方法から把握される技術的思想について、以下に記載する。
本発明に係る素子の金属元素の分離回収方法は、テルル(Te)を含有する素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程と、該浸漬工程により得られた希硫酸溶液から、テルルを主成分とする不溶物を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の素子の金属元素の分離回収方法によれば、テルルを含有する素子が、希硫酸によって溶解される。このとき、テルルを含有する素子を構成する成分のうち、テルルが希硫酸に対して不溶であるため、テルルを含有する不溶物が生じる。このため、不溶物を回収することにより、テルルを効率よく回収することができる。
ここで、前記分離回収方法において、前記浸漬工程がメカノケミカル処理を伴うことができる。
これによれば、メカノケミカル処理により、テルルを含有する素子が粉砕される。これにより、テルルを含有する素子の表面積が増し、希硫酸に可溶な成分の溶解を促進することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の濃度が0.5mol/L~16.5mol/Lとすることができる。これによれば、希硫酸に可溶な成分の溶解が促進され、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の濃度が2.0mol/L~5.0mol/Lとすることができる。これによれば、テルルをより効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸の温度が0℃~50℃とすることができる。これによれば、処理費用を抑えつつ、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記希硫酸と前記素子の混合比が、
希硫酸(mL):素子(g)=5~200(mL):1(g)(=50(mL):0.25~10(g))
であるものとすることができる。これによれば、希硫酸に可溶な成分の溶解が促進され、テルルを効率よく回収することができる。
また、前記分離回収方法において、前記メカノケミカル処理がボールミル処理であり、該ボールミル処理で使用される粉砕ボールがジルコニアボールであるものとすることができる。これによれば、素子を好適に粉砕することができ、テルルをより効率よく回収することができる。
また、実施形態の素子の金属元素の分離回収方法は、その構成を以下のような形態に変更しても実施することができる。
実施形態の金属元素の分離回収方法は、素子としてテルルを含有する熱電素子からテルルを分離回収したが、素子は熱電素子に限らず、Bi-Sb-Te合金(素子)であれば、テルルを分離回収することができる。Bi-Sb-Te合金として、ナノワイヤ用途の合金、ナノディスク用途の合金などがある。また、実施形態の金属元素の分離回収方法は、DVD-RAMなどの相変化材料に使用されているGe-Sb-Te合金でも、テルルの分離回収が期待されるものである。

Claims (6)

  1. テルル(Te)を含有する素子を希硫酸に浸漬させる浸漬工程と、該浸漬工程により得られた希硫酸溶液から、テルルを主成分とする不溶物を回収する回収工程と、を含み、
    該希硫酸の濃度が0.5mol/L~16.5mol/Lであることを特徴とする素子の金属元素の分離回収方法。
  2. 前記希硫酸の濃度が2.0mol/L~5.0mol/Lであることを特徴とする請求項1に記載の素子の金属元素の分離回収方法。
  3. 前記浸漬工程がメカノケミカル処理を伴うことを特徴とする請求項1又は2に記載の素子の金属元素の分離回収方法。
  4. 前記希硫酸の温度が0℃~50℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の素子の金属元素の分離回収方法。
  5. 前記希硫酸と前記素子の混合比が、
    希硫酸(mL):素子(g)=5~200(mL):1(g)(=50(mL):0.25~10(g))
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の素子の金属元素の分離回収方法。
  6. 前記メカノケミカル処理がボールミル処理であり、該ボールミルで使用される粉砕ボールがジルコニアボールであることを特徴とする請求項に記載の素子の金属元素の分離回収方法。
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