JP7369736B2 - 質量分析方法及び情報処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析方法及び情報処理装置に関する。
一般的に、GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)における化合物同定には、ハードイオン化法の一例である電子イオン化(EI)法によって得られるスペクトルを用いたライブラリーサーチが有用である。EI法によって得られるスペクトルは、化合物の組成と構造とを反映して固有のフラグメントパターンを安定的に示す。そのため、予めライブラリーに登録されている既知のスペクトルと、EI法によって得られたスペクトルと、の一致度に基づいて、化合物の同定を行うことができる。
しかし、ライブラリーを用いる方法では、EI法によって得られたスペクトルが、ライブラリーに登録されている既知の物質のスペクトルでないと、化合物を同定することができない。
一方で、化学イオン化(CI)法、電界イオン化(FI)法、光イオン化(PI)法又は電界脱離イオン化(FD)法等のソフトイオン化法では、化合物の分子量関連イオン(分子イオンやカチオン付加分子等の分子量情報を得ることができるイオン)が検出され易いので、ソフトイオン化法は、化合物同定に有用である。飛行時間質量分析装置等のように精密質量を取得することができる高分解能質量分析装置と組み合わせることで、分子量関連イオンの精密質量が得られ、化合物の分子組成を推定することができる。化合物の分子組成を推定する処理(以下、「組成推定処理」と呼ぶ)とは、予め設定された元素の種類と数の範囲内において、実測の精密質量に対して許容誤差内に含まれる理論質量を有する組成を算出する処理のことをいう。
組成推定処理では、未知の物質の同定を行う場合、ある程度広い範囲の条件を設定しておかないと、正しい組成が算出されない。しかし、ある程度広い範囲の条件を設定すると、複数の組成の候補が算出されてしまう。複数の組成の候補の中から正しい組成を特定するためには、複数の指標を総合的に考慮する必要がある。
1つの指標として、同位体ピークの分布を用いることが考えられる。組成の候補から理論的な同位体ピークの分布を算出し、実測の同位体ピークの分布と理論的な同位体ピークの分布との一致度を算出し、その一致度を用いて、組成を特定することが考えられる。
別の指標として、電子総数を用いることが考えられる。分子量関連イオンが、分子イオンであるのかカチオン付加分子(又は脱離イオン)であるのかが予め分かっている場合に、電子総数を用いて組成を特定することができる。分子量関連イオンが分子イオンであると分かっている場合には、電子総数が奇数であるので、組成の候補から電子総数が奇数の候補のみを絞ることができる。分子量関連イオンがカチオン付加分子であることが分かっている場合には、電子総数が偶数であるので、組成の候補から電子総数が偶数の候補のみを絞ることができる。
なお、EI法は、化合物の中性分子に電子を衝突させてイオン化する方法であり、電子の衝突によって分子内の電子が放出され、更に、分子間の結合に開裂が生じる。EI法では、分子イオンやフラグメントイオンが生成される。化合物によっては、分子イオンが全く検出されず、フラグメントイオンのみが検出される場合がある。イオン化の原理上、カチオン付加分子は生成されない。
一方、ソフトイオン化法は、化合物の分子になるべく負荷を与えずにイオン化する方法である。分子イオンやカチオン付加分子が生成され易く、フラグメントイオンの生成量が少ない。
なお、特許文献1には、実測の同位体パターンと同位体存在比によるパターンとを表示する方法が記載されている。
特許文献2には、同位体ピークの包絡線と理論同位体分布の包絡線とを比較し、モノアイソトピックイオンピークを求める方法が記載されている。
特許文献3には、ピーク情報に基づいて、予測される同位体パターンを作成し、その同位体パターンとスペクトルデータのピークとの一致度に基づいて、ピーク干渉の有無を判断する方法が記載されている。
特公平4-34256号公報 特許第6020315号 特開2008-96353号公報
ところで、未知の成分のマススペクトルからは、分子イオンとプロトン付加分子(又は脱離イオン)が同時に検出されたのか否かを判定することができない。分子イオンとプロトン付加イオン(脱離イオン)が同時に検出された場合、分子イオンの同位体分布が理論値からずれるため、得られた組成が正しい組成であるのか否かを評価することができず、同定の確度が低下する。
また、分子量関連イオンのピークが、分子イオンのピークであるのか、プロトン付加分子(又は離脱イオン)のピークであるのかを判定することができないことで、分子量関連イオンから得られる組成の候補に、分子イオンとプロトン付加分子(又は離脱イオン)の組成が混在する。そのため、化合物の同定が困難となる。
本発明の目的は、試料に対する質量分析を行うことで測定されたマススペクトルから、当該試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定することができる仕組みを提供することにある。
本発明の1つの態様は、試料に対する質量分析を行うことで測定されたマススペクトルから組成推定対象ピークと、前記組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークとを選択し、前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の候補を推定し、前記組成の候補に対応する理論同位体ピークの分布を算出し、前記実測同位体ピークの分布における同位体間の第1質量差と、前記理論同位体ピークの分布における同位体間の第2質量差と、に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定する、ことを特徴とする質量分析方法である。
上記の質量分析方法において、更に、前記第1質量差と前記第2質量差との差に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの存在比が算出されてもよい。
上記の質量分析方法において、更に、前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、補正実測同位体ピークの強度が算出されてもよい。
上記の質量分析方法において、更に、前記補正実測同位体ピークの分布の強度と前記理論同位体ピークの分布の強度との一致度が算出されてもよい。
上記の質量分析方法において、前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の複数の候補が推定され、組成の候補毎に、前記理論同位体ピークの分布が算出され、組成の候補毎に、前記存在比が算出され、組成の候補毎に、前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、前記補正実測同位体ピークの強度が算出され、組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度と前記理論同位体ピークの強度との一致度が算出され、組成の候補毎に、前記一致度が表示されてもよい。
本発明の1つの態様は、試料に対する質量分析を行うことでマススペクトルを生成する質量分析部と、前記マススペクトルから組成推定対象ピークと、前記組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークとを選択する選択部と、前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の候補を推定する推定部と、前記組成の候補に対応する理論同位体ピークの分布を算出する第1算出部、前記実測同位体ピークの分布における同位体間の第1質量差と、前記理論同位体ピークの分布における同位体間の第2質量差と、に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定する判定部と、を含むことを特徴とする情報処理装置である。
上記の情報処理装置は、更に、前記第1質量差と前記第2質量差との差に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの存在比を算出する第2算出部を含んでもよい。
上記の情報処理装置は、更に、前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、補正実測同位体ピークの強度を算出する第3算出部を含んでもよい。
上記の情報処理装置は、更に、前記補正実測同位体ピークの分布の強度と前記理論同位体ピークの分布の強度との一致度を算出する第4算出部を含んでもよい。
上記の情報処理装置は、情報を表示部に表示させる表示制御部を更に含み、前記推定部は、前記組成推定ピークに基づいて、前記試料の組成の複数の候補を推定し、前記第1算出部は、組成の候補毎に、前記理論同位体ピークの分布を算出し、前記第2算出部は、組成の候補毎に、前記存在比を算出し、前記第3算出部は、組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度を算出し、前記第4算出部は、組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度と前記理論同位体ピークの強度との一致度を算出し、前記表示制御部は、組成の候補毎に、前記一致度を前記表示部に表示させてもよい。
本発明によれば、試料に対する質量分析を行うことで測定されたマススペクトルから、当該試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定することができる。
実施形態に係る質量分析システムの構成を示すブロック図である。 実施例1に係る処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1の処理結果を示す図である。 実施例2に係る処理の流れを示すフローチャートである。 マススペクトルを示す図である。 マススペクトルを示す図である。 推定された組成の候補を示す図である。 理論同位体ピークの分布と実測同位体ピークの分布を示す図である。 付加イオンの存在比等を示す図である。 実施例2の解析結果を示す図である。 補正前の同位体ピーク分布の比較結果を示す図である。 補正後の同位体ピーク分布の比較結果を示す図である。 実施例4に係る処理の流れを示すフローチャートである。 実施例4の解析結果を示す図である。 実施例5に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図1には、実施形態に係る質量分析システムの構成の一例が示されている。質量分析システム10は、元試料に含まれる複数の化合物を時間的に分離し、個々の化合物に対して質量分析を実行するシステムである。質量分析システム10は、例えば、クロマトグラフ装置12と、質量分析装置14と、情報処理装置16とを含む。なお、クロマトグラフ装置12は、質量分析システム10に含まれなくてもよい。
クロマトグラフ装置12は、ガスクロマトグラフ装置又は液体クロマトグラフである。クロマトグラフ装置12に対して元試料が導入されると、出力側に、時間的に分離された複数の化合物が現れる。複数の化合物は、それぞれ、質量分析装置14から見て分析対象としての試料である。分離された複数の化合物が質量分析装置14に順次導入される。質量分析装置14は、例えば、イオン源18と、質量分析部20と、検出部22とを含む。
イオン源18は、ソフトイオン源又はハードイオン源を有する。イオン源18は、ソフトイオン源及びハードイオン源の両方を有してもよい。ソフトイオン源は、例えば、電界イオン化(FI)法、化学イオン化(CI)法、光イオン化(PI)法、又は、電界脱離イオン化(FD)法等に従うイオン源である。ハードイオン源は、例えば、電子イオン化(EI)法に従うイオン源である。
イオン源18において、導入された試料からイオンが生成される。そのイオンは、電界の作用によって質量分析部20に導入される。
質量分析部20は、イオンが有する質量電荷比(m/z)に基づいて、イオンに対して質量分析を実行する。例えば、質量分析部20が飛行時間型質量分析部である場合、個々のイオンは、イオンが有するm/zに応じた飛行時間を経て、検出部22によって検出される。他のタイプの質量分析部(例えば、磁場セクター型質量分析部、四重極型質量分析部)が利用されてもよい。
検出部22は、例えば、電子増倍管を有し、イオンを検出する。検出部22から検出信号が出力される。検出信号は、情報処理装置16へ送られる。
情報処理装置16は、プロセッサ24と、メモリ26と、操作部28と、表示部30とを含む。プロセッサ24は、例えば、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)によって構成される。プロセッサ24に代えて、又は、プロセッサ24と共に、演算や制御や処理を行う回路等が利用されてもよい。情報処理装置16が、複数のコンピュータによって構成されてもよい。また、情報処理装置16の一部の機能が、ネットワーク等の通信経路を介して提供されてもよい。
プロセッサ24は、演算部、制御部及び処理部として機能する。例えば、プロセッサ24は、選択部、推定部、第1算出部、第2算出部、第3算出部、第4算出部、判定部、及び、表示制御部として機能する。例えば、CPUがプログラムを実行することで、これらの機能が実現される。
メモリ26は、半導体メモリやハードディスクドライブ等によって構成される。メモリ26には、CPUによって実行される複数のプログラムが記憶されている。例えば、スペクトル処理プログラムや組成推定プログラム等が記憶されている。
操作部28は、キーボードやマウスやポインティングデバイス等によって構成されている。ユーザーによって操作部28が操作されて、各種の情報が情報処理装置16に入力される。
表示部30は、液晶ディスプレイやELディスプレイ等のディスプレイである。表示部30には、例えば、クロマトグラフ、マススペクトル、及び、その他の情報が表示される。
以下、各実施例について説明する。
<実施例1>
以下、図2を参照して実施例1について説明する。図2には、実施例1に係る処理の流れを示すフローチャートが示されている。
クロマトグラフ装置12に対して元試料が導入され、クロマトグラフ装置12によってクロマトグラムデータが得られる。プロセッサ24は、得られたクロマトグラムデータからピークを検出する(S01)。ピーク検出によって、c個(c=1~C)のサンプル成分に対応するクロマトグラムピークが得られる。
まず、c=1のサンプル成分について、以下の処理が実行される。
c=1のサンプル成分に対応するクロマトグラムピークから、その検出時間に対応するマススペクトルが生成される(S02)。
プロセッサ24は、ステップS02にて生成されたマススペクトル上の分子関連イオンのピーク群から組成推定対象ピークを選択する(S03)。具体的には、プロセッサ24は、マススペクトル上において、強度が閾値以上であり、かつ、最も高質量のm/zを有するピーク群を選択し、そのピーク群の中から、最も低質量のm/zを有するピークを、組成推定対象ピークとして選択する。このようにして選択された組成推定対象ピークは、通常、対象サンプル成分のモノアイソトピックピークである。また、同位体群から、予め設定された条件に従って、同位体ピークが排除され、その上で、組成推定対象ピークが選択される。同位体ピークを排除するデアイソトープ処理として、公知の処理を用いることができる。組成推定対象ピークは、c=1のサンプル成分の組成の候補を推定するために用いられる。
プロセッサ24は、ステップS03にて選択された組成推定対象ピークの重心のm/zを算出し、そのm/zを用いて組成推定処理を実行することで、c=1のサンプル成分の分子イオン組成の候補を推定する(S04)。この組成推定処理として、公知の処理を用いることができる。
プロセッサ24は、分子イオン組成の候補に基づいて、理論的な同位体ピーク(以下、「理論同位体ピーク」と称する)の分布を生成する(S05)。具体的には、プロセッサ24は、候補を構成する各元素の天然同位体比を足し合わせることで、各同位体ピークについて、m/zと相対強度(モノアイソトピックピークの強度を「1」とする)との組み合わせを生成する。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークについて、ステップS03にて選択された組成推定対象ピークを基準ピークPとして定め、1Da毎に高質量側のピークをピークP,P,・・・,Pと定める。理論的同位体ピーク分布は、同位体ピークP毎にm/z(mtn)と相対強度(Itn)とを有する。
プロセッサ24は、実際に測定された同位体ピーク(以下、「実測同位体ピーク」と称する)の分布を対象として、ステップS05にて得られた理論同位体ピーク毎に、その理論同位体ピークのm/zを基準として予め定められたm/z範囲に含まれるm/zを有する実測同位体ピークを、その理論同位体ピークに割り当てる(S06)。その割り当てられた各実測同位体ピークのm/zをm/z(mjn)と定義し、相対強度を相対強度(Ijn)と定義する。実測同位体ピークの相対強度(Ijn)は、ピークPに割り当てられたモノアイソトピックピークの相対強度(Ijn)を「1」として相対化された値である。また、各m/zにおいて、閾値以上の相対強度を有する実測同位体ピークが割り当てられる。必ずしも、理論同位体ピークの数と実測同位体ピークの数とが同じになるとは限らない。
その割り当てられた実測同位体ピークは、組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークの一例である。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Itn)と、実測同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Ijn)とを比較し、それらの一致度(同位体分布スコア)を算出する(S07)。例えば、コサイン類似度等、一般的な一致度の算出方法が用いられる。プロセッサ24は、相対強度の値の差を算出し、その差をスコアリングして一致度を算出してもよい。
ここで、実測同位体ピークPの相対強度において、同位体の存在比の真値を「1」と定義し、付加イオンの存在比を「α」と定義する。つまり、実測同位体ピークPの相対強度には、同位体ピークの相対強度と付加イオンの相対強度とが混在しており、ここでは、それらの存在比を1:αと定義する。
プロセッサ24は、下記の式(1)に従って、実測同位体ピークPにおける付加イオンの存在比αを算出する(S08)。
α=(Δm-a)/(b-Δm)・・・(1)
Δm=mj1-mj0-1
a=mt1-mt0-1
b=0.00783
Δmは、同位体間(P-P)の質量欠損の差の実測値である。
aは、同位体間(P-P)の質量欠損の差の理論値である。aとして、簡易的に12Cと13Cとの間の質量欠損差である0.00336を用いてもよい。
bは、水素原子の質量欠損である。
Δmは、実測同位体ピークの分布における同位体間の第1質量差の一例に相当する。aは、理論同位体ピークの分布における同位体間の第2質量差の一例に相当する。
プロセッサ24は、付加イオンの存在比αを用いて、付加イオンが検出されたか否かを判定する(S09)。
例えば、プロセッサ24は、α>0の場合に付加イオンが存在すると判定し、α≦0の場合に付加イオンが存在しないと判定する。
プロセッサ24は、測定誤差等を考慮して判定基準値βを設定し、α>βの場合に付加イオンが存在すると判定し、α≦βの場合に付加イオンが存在しないと判定してもよい。
付加イオンが存在すると判定された場合(S09,Yes)、プロセッサ24は、付加イオンの存在比αに基づいて、実測同位体ピーク毎に、実測同位体ピークの相対強度を補正することで、補正実測同位体ピークの相対強度を算出する(S10)。補正実測同位体ピークの相対強度を、相対強度(I´jn)と定義する。相対強度(I´jn)は、以下の式(2)に従って算出される。
I´j0=Ij0=1
I´j1=Ij1/(1+α)
I´jn=Ijn-I´j(n-1)×I´j1×α (n≧2)
・・・(2)
ここでは、ピークP(つまりモノアイソトピックピーク)の強度を「1」と定義し、各ピークの強度を相対化している。
補正後の相対強度(I´jn)は、実測値である相対強度(Ijn)から付加イオンの相対強度が差し引かれた強度(つまり、付加イオンの相対強度が除去された同位体ピークの相対強度の真値)に相当する。
上記の式(2)について詳しく説明する。ピークPのm/zをM、ピークPのm/zをM+1、ピークPのm/zをM+2、ピークPのm/zをM+nと定義すると、実測値である相対強度Ijnと、補正後の相対強度I´jnとの間は以下のように定義される。
M:I´j0=Ij0=1
M+1:I´j1+S=Ij1
M+2:I´j2+I´j1×S=Ij2
M+3:I´j3+I´j2×S=Ij3
M+4以降についても同様である。
ここで、係数Sは、実測同位体ピークの相対強度において、付加イオンの存在比αに対応する相対強度である。上述したように、同位体の存在比の真値は、付加イオンの存在比αに対して「1」である。例えば、真値である補正後の相対強度I´j1の存在比は、付加イオンの存在比αに対して「1」である。
したがって、I´j1:S=1:αの関係が成立し、S=I´j1×αとなる。
係数Sを、M+1についての式に代入すると、上述した式(2)によって表現される相対強度(I´j1)が得られる。また、M+2以降の各式に、係数Sを代入し、式を整理すると、上述した式(2)によって表現される相対強度(I´jn)が得られる。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Itn)と、補正実測同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(I´jn)(つまり補正後の相対強度)とを比較し、それらの一致度(同位体分布スコア)を算出する(S11)。
ステップS09にて付加イオンが存在しないと判定された場合(S09,No)、ステップS10,S11の処理は実行されない。以上で、c=1のサンプル成分についての処理は終了する。その後、c≦Cになるまで、全てのサンプル成分について、ステップS02~S11の処理を繰り返す。
全てのサンプル成分についての処理が終了すると、プロセッサ24は、全てのサンプル成分についての処理の結果を表示部30に表示させる(S12)。
例えば、図3に示されている処理の結果が、表示部30に表示される。図3には、組成が既知である17個のサンプル成分(c=1~17のそれぞれのサンプル成分)についての処理の結果が示されている。例えば、サンプル成分毎に、組成と、相対強度が補正される前の同位体分布スコアと、付加イオンの存在比αと、付加イオンの存在の判定結果と、相対強度が補正された後の同位体分布スコアと、補正前の同位体分布スコアと補正後の同位体分布スコアとの差(スコア差)と、が紐付けられている。これらの全部又は一部が表示される。
図3に示す例では、17成分中9個の成分に付加イオンが存在すると判定された。9個の成分のそれぞれについて補正後の同位体分布スコアが算出され、9成分中7個の成分について、補正後の同位体分布スコアは、補正前の同位体分布スコアよりも高くなった。つまり、付加イオンの存在比αを用いて相対強度を補正することで、組成の同定の精度を向上させることができる。
<実施例2>
以下、図4を参照して実施例2について説明する。図4には、実施例2に係る処理の流れを示すフローチャートが示されている。
クロマトグラフ装置12に対して元試料が導入され、クロマトグラフ装置12によってクロマトグラムデータが得られる。プロセッサ24は、得られたクロマトグラムデータからピークを検出する(S20)。ピーク検出によって、c個(c=1~C)のサンプル成分に対応するクロマトグラムピークが得られる。
まず、c=1のサンプル成分について、以下の処理が実行される。
c=1のサンプル成分に対応するクロマトグラムピークから、その検出時間に対応するマススペクトルが生成される(S21)。
プロセッサ24は、ステップS21にて生成されたマススペクトル上の分子関連イオンのピーク群から組成推定対象ピークを選択する(S22)。具体的には、プロセッサ24は、マススペクトル上において、強度が閾値以上であり、かつ、最も高質量のm/zを有するピーク群を選択し、そのピーク群の中から、最も低質量のm/zを有するピークを、組成推定対象ピークとして選択する。このようにして選択された組成推定対象ピークは、通常、対象サンプル成分のモノアイソトピックピークである。また、同位体群から、予め設定された条件に従って、同位体ピークが排除され、その上で、組成推定対象ピークが選択される。組成推定対象ピークは、c=1のサンプル成分の組成の候補を推定するために用いられる。
図5及び図6には、マススペクトルの一例が示されている。図6は、図5の一部を拡大した図である。図5及び図6において、横軸はm/zであり、縦軸は相対強度である。
図5に示されているピーク群32は、相対強度が閾値以上であり、かつ、最も高質量のm/zを有するピーク群である。図6には、拡大されたピーク群32が示されている。ピーク34は、ピーク群32の中で最も低質量のm/zを有するピークである。プロセッサ24は、ピーク群32を選択し、そのピーク群32の中からピーク34を組成推定対象ピークとして選択する。
プロセッサ24は、ステップS22にて選択された組成推定対象ピーク(つまりピーク34)の重心のm/zを算出し、そのm/zを用いて組成推定処理を実行することで、c=1のサンプル成分の分子イオン組成の候補を推定する(S23)。ピーク34の重心のm/zは、227.11985であり、この値を用いてサンプル成分の分子イオン組成の候補が推定される。例えば、s個(s=1~S)の候補が推定される。
図7には、ステップS23にて推定された組成の候補の一覧が示されている。図7に示す例では、4個の候補(s=1~4の候補)が推定されており、各候補のm/zの理論値が算出されている。
まず、c=1のサンプル成分についてのs=1の組成の候補(つまり、C9H17N5S)について、以下の処理が実行される。
プロセッサ24は、s=1の候補について、理論同位体ピークの分布を生成する(S24)。具体的には、プロセッサ24は、s=1の候補を構成する各元素の天然同位体比を足し合わせることで、各同位体ピークについて、m/zと相対強度(モノアイソトピックピークの強度を「1」とする)との組み合わせを生成する。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークについて、ステップS22にて選択された組成推定対象ピークを基準ピークPとして定め、1Da毎に高質量側のピークをピークP,P,・・・,Pと定める。理論的同位体ピーク分布は、同位体ピークP毎にm/z(mtn)と相対強度(Itn)とを有する。
図8中の(a)には、s=1についての各理論同位体ピーク(ピークP~P)のm/z(mtn)と相対強度(Itn)とが示されている。
プロセッサ24は、実際に測定された同位体ピークである実測同位体ピークの分布を対象として、ステップS24にて得られた理論同位体ピーク毎に、その理論同位体ピークのm/zを基準として予め定められたm/z範囲に含まれるm/zを有する実測同位体ピークを、その理論同位体ピークに割り当てる(S25)。その割り当てられた各実測同位体ピークのm/zをm/z(mjn)と定義し、相対強度を相対強度(Ijn)と定義する。実測同位体ピークの相対強度(Ijn)は、ピークPに割り当てられたモノアイソトピックピークの相対強度(Ijn)を「1」として相対化された値である。また、各m/zにおいて、閾値以上の相対強度を有する実測同位体ピークが割り当てられる。必ずしも、理論同位体ピークの数と実測同位体ピークの数とが同じになるとは限らない。
図8中の(b)には、s=1についての各実測同位体ピーク(ピークP~P)のm/z(mjn)と相対強度(Ijn)とが示されている。
ステップS25の処理について更に詳しく説明する。プロセッサ24は、ピークPに相当する理論同位体ピークのm/z(mt0)を基準として予め定められたm/z範囲に含まれるm/zを有する実測同位体ピークを、ピークPに相当する理論同位体ピークに割り当てる。ピークPに相当する理論同位体ピークのm/z(mt0)は、227.11992であり、プロセッサ24は、その値を基準として予め定められたm/z範囲内に含まれるm/zを有する実測同位体ピークを、ピークPに相当する理論同位体ピークに割り当てる。図8の(b)に示す例では、m/zが227.11985である実測同位体ピークが検出されている。そのm/z(=227.11985)は、ピークPに相当する理論同位体ピークのm/z(mt0)(=227.11992)を基準として予め定められたm/z範囲内に含まれる。したがって、プロセッサ24は、m/zが227.11985である実測同位体ピークを、ピークPに相当する理論同位体ピークに割り当てる。
m/z(mt0)が227.11992である理論同位体ピークと、m/z(mj0)が227.11985である実測同位体ピークが、s=1の組成の候補についてピークPに相当するピークとして扱われる。
ピークP以降の各ピークについても、ピークPと同様に、実測同位体ピークが理論同位体ピークに割り当てられる。
割り当てられた実測同位体ピークは、組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークの一例である。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Itn)と、実測同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Ijn)とを比較し、それらの一致度(同位体分布スコア)を算出する(S26)。例えば、コサイン類似度等、一般的な一致度の算出方法が用いられる。プロセッサ24は、相対強度の値の差を算出し、その差をスコアリングして一致度を算出してもよい。
実施例1と同様に、実測同位体ピークPの相対強度において、同位体の存在比の真値を「1」と定義し、付加イオンの存在比を「α」と定義する。
プロセッサ24は、上述した式(1)に従って、実測同位体ピークPにおける付加イオンの存在比αを算出する(S27)。Δm、a及びbの定義は、実施例1に係る定義と同じである。図9中の(a)に、α、a、b及びΔmが示されている。
プロセッサ24は、付加イオンの存在比αを用いて、付加イオンが検出されたか否かを判定する(S28)。
例えば、プロセッサ24は、α>0の場合に付加イオンが存在すると判定し、α≦0の場合に付加イオンが存在しないと判定する。
プロセッサ24は、測定誤差等を考慮して判定基準値βを設定し、α>βの場合に付加イオンが存在すると判定し、α≦βの場合に付加イオンが存在しないと判定してもよい。
図9中の(b)には、付加イオンの有無の判定結果が示されている。ここでは、付加イオンが存在すると判定されている。
付加イオンが存在すると判定された場合(S28,Yes)、プロセッサ24は、付加イオンの存在比αに基づいて、実測同位体ピーク毎に、実測同位体ピークの相対強度を補正することで、補正実測同位体ピークの相対強度を算出する(S29)。補正実測同位体ピークの相対強度を、相対強度(I´jn)と定義する。相対強度(I´jn)は、上述した式(2)に従って算出される。
図8中の(c)には、補正後の相対強度(I´jn)が示されている。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(Itn)と、補正実測同位体ピークの分布に含まれる各ピークの相対強度(I´jn)(つまり補正後の相対強度)とを比較し、それらの一致度(同位体分布スコア)を算出する(S30)。
以上で、c=1のサンプル成分について、s=1の組成の候補に対する処理は終了する。つまり、s=1の組成の候補(C9H17N5S)(図7参照)に対する処理は終了する。その後、s≦S(図7に示す例ではS=4)になるまで、全ての組成の候補について、ステップS24~S30の処理を繰り返す。
s>Sになった場合、c=1のサンプル成分についての処理は終了し、その後、c≦Cとなるまで、全てのサンプル成分について、ステップS21~S30の処理を繰り返す。
全てのサンプル成分についての処理が終了すると、プロセッサ24は、全てのサンプル成分についての処理の結果を表示部30に表示させる(S31)。
図10には、組成が既知である試料(分子組成がC9H17N5S)についての解析の結果が示されている。つまり、分子組成がC9H17N5Sであることが分かっている試料を対象としてステップS20~S30の処理が実行され、その解析の結果が、図10に示されている。
具体的には、s=1~4のそれぞれの組成の候補について、付加イオンの判定結果、補正前の同位体分布スコア、補正後の同位体分布スコア、補正前の同位体分布スコアの順位、及び、補正後の同位体分布スコアの順位が、示されている。補正前の同位体分布スコアは、ステップS26にて算出された値、つまり、補正前の実測同位体ピークの分布を用いて算出された値である。補正後の同位体分布スコアは、ステップS30にて算出された値、つまり、補正後の実測同位体ピークの分布(つまり、補正実測同位体ピークの分布)を用いて算出された値である。同位体分布スコアは、コサイン類似度を用いて算出されており、値が「1」に近いほど一致度が高い。同位体分布スコアの「1」に近いほど、つまり、一致度が高いほど、同位体分布スコアの順位は高い。
s=1の候補(つまり、C9H17N5S)は、実際に測定された試料の組成である。s=1の候補について、補正前の順位は4位であるが、補正後の順位は1位になっている。つまり、付加イオンの存在比αを用いて実測同位体ピークの相対強度を補正することで、正しい組成の候補の同位体分布スコアが上昇し、スコア順位が上昇する。
プロセッサ24は、理論同位体ピークの相対強度と実測同位体ピークの相対強度との比較結果を表示部30に表示させてもよい。この場合、プロセッサ24は、補正前の比較結果を表示部30に表示させてもよいし、補正後の比較結果を表示部30に表示させてもよい。ユーザーが操作部28を用いて、比較結果の表示の切替を指示した場合、プロセッサ24は、その指示に従って、表示対象を補正前の比較結果から補正後の比較結果に切り替え、又は、表示対象を補正後の比較結果から補正前の比較結果に切り替えてもよい。プロセッサ24は、補正前の比較結果と補正後の比較結果の両方を同時に表示部30に表示させてもよい。
図11には、補正前の比較結果が示されている。図12には、補正後の比較結果が示されている。図11及び図12において、横軸は、ピークPを示しており、縦軸は、相対強度を示している。図12には、補正後の実測同位体ピークの相対強度と共に、補正前の実測同位体ピークの相対強度も示されている。例えば、図11に示されている比較結果や、図12に示されている比較結果が、表示部30に表示される。また、ユーザーの指示に従って、図12に示されている比較結果において、補正前の実測同位体ピークの相対強度が表示されずに補正後の相対強度が表示されてもよいし、補正後の相対強度と共に補正前の相対強度が表示されてもよい。
<実施例3>
実施例1,2において、分子量関連イオンのピークであると判定されて選択されたピークが、[M-H]+,[M-H2]+,・・・,[M-Hn]等の分子組成から水素が脱離したイオンであった場合であっても、実施例1,2の基準ピークPが、分子イオンからHn脱離したイオンのピークとして、実施例1,2と同様の処理が実行されてもよい。その場合も、基準ピークから1Da毎に高質量側のピークを、ピークP,P,・・・,Pと定める。各ピークが基準ピークPから見てHが付加された組成を有するピークとして解釈されて、付加イオンの存在の有無が判定される。実施例3では、脱離イオンの有無が判定され、それ以外の構成及び処理は、実施例1,2に係る構成及び処理と同じである。
<実施例4>
実施例4では、イオン源18は、ソフトイオン化法に従ったイオン源である。ソフトイオン化法によって得られたマススペクトル上の分子量関連イオンにおいて、付加イオンが存在すると判定された場合、プロセッサ24は、その候補の組成から電子総数を算出し、その算出された電子総数が奇数であるか否かを判定する。算出された電子総数が奇数である場合、プロセッサ24は、相対強度を補正し、その補正後の相対強度に基づいて、同位体分布スコアを算出する。算出された電子総数が奇数でない場合(つまり、算出された電子総数が偶数である場合)、プロセッサ24は、その候補の組成を対象として、相対強度の補正、及び、補正後の相対強度を用いた同位体分布スコアの算出を実行しない。
図13に、実施例4に係る処理の流れを示すフローチャートが示されている。図13に示すように、実施例4に係る処理は、実施例2に係るステップS20~S31(図4参照)に係る処理と、ステップ32に係る処理とを含む。
ステップS28の処理によって、付加イオンが存在すると判定された場合(S28,Yes)、プロセッサ24は、ステップS32の処理を実行する。ステップS32では、プロセッサ24は、候補である組成sから電子総数を算出し、その電子総数が奇数であるか否かを判定する。電子総数が奇数である場合(S32,Yes)、プロセッサ24は、実施例2と同様に、ステップS29,S30の処理を実行する。電子総数が奇数でない場合(S32,No)、プロセッサ24は、ステップS29,S30の処理を実行しない。つまり、電子総数が奇数でない組成は、候補から除外される。
電子総数の代わりに不飽和度が用いられてもよい。不飽和度を用いる場合、プロセッサ24は、不飽和度が整数であるか否かを判定する。不飽和度が整数でない場合(つまり、不飽和度が端数を有する場合)、プロセッサ24は、ステップS29,S30の処理を実行しない。不飽和度が整数である場合、プロセッサ24は、ステップS29,S30の処理を実行する。
図14には、実施例4の解析結果が示されている。この解析結果は、組成が既知である試料(分子組成がC9H17N5S)についての解析結果である。つまり、分子組成がC9H17N5Sであることが分かっている試料を対象としてステップS20~S30,S32の処理が実行され、その解析の結果が、図14に示されている。
具体的には、s=1~4のそれぞれの組成の候補について、付加イオンの判定結果、補正前の同位体分布スコア、補正後の同位体分布スコア、補正前の同位体分布スコアの順位、補正後の同位体分布スコアの順位、電子総数、及び、電子総数の判定結果が、示されている。電子総数は、ステップS32の処理によって算出された値である。
s=1,4の組成の電子総数は奇数であり、s=2,3の組成の電子総数は偶数である。s=2,3の組成の電子総数は偶数であるため、s=2,3の組成は、候補から除外されている。
電子総数の判定を実行することで、4つの候補の中から、電子総数が偶数である2つの候補(s=2,3の組成の候補)が除外され、電子総数が奇数である2つの候補(s=1,4の組成の候補)が残る。補正後の同位体分布スコアの順位を含めて、より正しい候補を得ることができる。
<実施例5>
実施例5では、EIイオン化法に従ったイオン源18を用いて測定が行われて、実施例2に係る処理が実行される。また、ソフトイオン化法に従ったイオン源18を用いて測定が行われて、実施例2に係る処理が実行される。つまり、EIイオン化法とソフトイオン化法のそれぞれに従って実施例2に係る処理が実行される。
プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られたクロマトグラムピークとソフトイオン化法によって得られたクロマトグラムピークとを比較し、同一成分のピークが存在する場合、そのマススペクトル上で選択された基準ピークのm/z差(ΔmP)を算出する。この差が、予め定められた許容範囲内に含まれる場合、プロセッサ24は、EIイオン化法とソフトイオン化法のそれぞれの付加イオンの存在判定結果を考慮して、対象の成分が分子イオン又はH脱離イオンのいずれかであるのかを判定する。更に、プロセッサ24は、EIイオン化法とソフトイオン化法のそれぞれについて電子総数を算出し、その電子総数が奇数であるのか偶数であるのかに応じて、組成の候補を絞ってもよい。
なお、EIイオン化法ではカチオン付加分子は検出されず、ソフトイオン化法を用いて検出された基準ピークは脱離イオンでないことを前提として、EIイオン化法によって検出された基準ピークのm/zと、ソフトイオン化法によって検出された基準ピークのm/zとが一致する場合、その基準ピークは分子イオンであると判断することができる。
分子量関連イオンに付加イオンが存在することが確認することができる場合、EIイオン化法又はソフトイオン化法を用いて、分子量関連イオンの同位体ピークのどこに分子イオンピークが位置するのかが分かる。それにより、プロセッサ24は、他方のイオン化法を用いて得られた基準ピークが、分子イオンであるのかH脱離イオンであるのかを判定する。
図15に、実施例5に係る処理の流れを示すフローチャートが示されている。
EIイオン化法に従ったイオン源18が用いられ、プロセッサ24は、c>CになるまでステップS20~S30の処理(図4参照)を実行する。また、ソフトイオン化法に従ったイオン源18が用いられ、プロセッサ24は、c>CになるまでステップS20~S30の処理(図4参照)を実行する。
プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られたクロマトグラムピークとソフトイオン化法によって得られたクロマトグラムピークとが一致するか否かの判定を行う(S60)。具体的には、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた情報とソフトイオン化法によって得られた情報とに基づいて、同一成分が検出されたか否かを判定する。例えば、プロセッサ24は、それぞれの方法によって得られたクロマトグラムピークの保持時間(RT)が予め定められた許容範囲に含まれる否かによって、同一成分が検出されたか否かを判定してもよいし、ピーク間の強度パターンの一致度によって、同一成分が検出されたか否かを判定してもよい。
次に、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた基準ピークの質量(具体的にはm/z)とソフトイオン化法によって得られた基準ピークの質量(具体的にはm/z)との差を算出する(S61)。ステップS60にて、同一成分が検出されたと判定された場合、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られたマススペクトル上で選択された基準ピークPの実測のm/zと、ソフトイオン化法によって得られたマススペクトル上で選択された基準ピークPのm/zと、差Δmp(例えば、ソフトイオン化法によって得られた基準ピークPのm/zからEIイオン化法によって得られた基準ピークPのm/zを減算して得られた値)を算出する。
次に、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた組成の候補から電子総数を算出し、ソフトイオン化法によって得られた組成の候補から電子総数を算出する(S62)。
プロセッサ24は、ステップS61にて算出されたΔmPと、付加イオンの存在の有無とに基づいて、EIイオン化法によって得られた基準ピークとソフトイオン化法によって得られた基準ピークが、分子イオン由来のピークであるのか、H脱離イオン由来のピークであるのかを判定する。また、プロセッサ24は、電子総数に応じて候補を除外する。以下、具体的な方法について説明する。
ΔmP=0±γの場合、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた基準ピークとソフトイオン化法によって得られた基準ピークとを分子イオン由来のピークであると判定する。また、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた組成の候補とソフトイオン化法によって得られた組成の候補から、電子総数が偶数である組成を除外する。
ΔmP=-1±γであり、かつ、EIイオン化法及びソフトイオン化法の中の少なくとも1つの方法によって得られたピークの分布に付加イオンが存在すると判定された場合、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた基準ピークをH脱離イオン由来のピークであると判定し、EIイオン化法によって組成の候補から、電子総数が奇数である候補を除外する。また、プロセッサ24は、ソフトイオン化法によって得られた基準ピークを分子イオン由来のピークであると判定し、ソフトイオン化法によって得られた組成の候補から、電子総数が偶数である候補を除外する。
ΔmP=-2±γであり、かつ、ソフトイオン化法によって得られたピークの分布に付加イオンが存在すると判定された場合、プロセッサ24は、EIイオン化法によって得られた基準ピークをH脱離イオン由来のピークであると判定し、EIイオン化法によって得られた組成の候補から、電子総数が偶数である候補を除外する。また、プロセッサ24は、ソフトイオン化法によって得られた基準ピークを分子イオン由来のピークであると判定し、ソフトイオン化法によって得られた組成の候補から、電子総数が偶数である候補を除外する。
なお、γは、質量分析装置の測定誤差に起因する値であり、通常、0.01程度の値である。
プロセッサ24は、ステップS62にて得られた結果を表示部30に表示させる(S63)。
各実施例によれば、マススペクトル上において分子イオンと付加イオンとが同時に検出されているのか否かを判定することができる。付加イオンが存在していると判定された場合、実測の同位体ピークの強度を補正することで、正しい組成を判別することができる。また、電子総数を用いて組成の候補を絞ることで、更に正しい組成を判別することができる。
10 質量分析システム、12 クロマトグラフ装置、14 質量分析装置、16 情報処理装置、18 イオン源、20 質量分析部、22 検出部、24 プロセッサ、26 メモリ、28 操作部、30 表示部。

Claims (4)

  1. 試料に対する質量分析を行うことで測定されたマススペクトルから組成推定対象ピークと、前記組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークとを選択し、
    前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の候補を推定し、
    前記組成の候補に対応する理論同位体ピークの分布を算出し、
    前記実測同位体ピークの分布における同位体間の第1質量差と、前記理論同位体ピークの分布における同位体間の第2質量差と、に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定
    前記第1質量差と前記第2質量差との差に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの存在比を算出し、
    前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、補正実測同位体ピークの強度を算出し、
    前記補正実測同位体ピークの分布の強度と前記理論同位体ピークの分布の強度との一致度を算出する、
    ことを特徴とする質量分析方法。
  2. 請求項に記載の質量分析方法において、
    前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の複数の候補を推定し、
    組成の候補毎に、前記理論同位体ピークの分布を算出し、
    組成の候補毎に、前記存在比を算出し、
    組成の候補毎に、前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、前記補正実測同位体ピークの強度を算出し、
    組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度と前記理論同位体ピークの強度との一致度を算出し、
    組成の候補毎に、前記一致度を表示する、
    ことを特徴とする質量分析方法。
  3. 試料に対する質量分析を行うことでマススペクトルを生成する質量分析部と、
    前記マススペクトルから組成推定対象ピークと、前記組成推定対象ピークに関連する一群の実測同位体ピークとを選択する選択部と、
    前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の候補を推定する推定部と、
    前記組成の候補に対応する理論同位体ピークの分布を算出する第1算出部、
    前記実測同位体ピークの分布における同位体間の第1質量差と、前記理論同位体ピークの分布における同位体間の第2質量差と、に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの有無を判定する判定部と、
    前記第1質量差と前記第2質量差との差に基づいて、前記試料における付加イオン又は脱離イオンの存在比を算出する第2算出部と、
    前記存在比に基づいて前記実測同位体ピークの強度を補正することで、補正実測同位体ピークの強度を算出する第3算出部と、
    前記補正実測同位体ピークの分布の強度と前記理論同位体ピークの分布の強度との一致度を算出する第4算出部と、
    を含むことを特徴とする情報処理装置。
  4. 請求項に記載の情報処理装置において、
    情報を表示部に表示させる表示制御部を更に含み、
    前記推定部は、前記組成推定対象ピークに基づいて、前記試料の組成の複数の候補を推定し、
    前記第1算出部は、組成の候補毎に、前記理論同位体ピークの分布を算出し、
    前記第2算出部は、組成の候補毎に、前記存在比を算出し、
    前記第3算出部は、組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度を算出し、
    前記第4算出部は、組成の候補毎に、前記補正実測同位体ピークの強度と前記理論同位体ピークの強度との一致度を算出し、
    前記表示制御部は、組成の候補毎に、前記一致度を前記表示部に表示させる、
    ことを特徴とする情報処理装置。
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