以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
[共連続繊維状カーボンの製造方法]
図1は、第1の本実施形態に係る共連続繊維状カーボンの製造方法を示すフローチャートである。共連続繊維状カーボンは、本実施形態の睫毛用化粧料(マスカラ)の顔料として用いる。
図示する共連続繊維状カーボンの製造方法は、分散工程(ステップS1)、凍結工程(ステップS2)、乾燥工程(ステップS3)、及び炭化工程(ステップS4)を含む。この製造方法では、セルロースナノファイバー分散液が必要である。
セルロースナノファイバーであれば、原料は特に限定されることはない。セルロースナノファイバーには、例えば、木質由来、パルプ由来、甲殻類由来、バクテリア由来、食物由来、植物由来、その他生物由来などがある。本実施形態では、これらのセルロースナノファイバーのいずれかを用いてもよく、あるいは、これらから2種類以上を選択して混合したセルロースナノファイバーを用いてもよい。本実施形態では、このような低環境負荷の材料を顔料に用いる。
セルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーの形態は、分散した形態が好ましい。よって、図1に示す製造工程では、分散工程(ステップS1)を含むが、分散工程(ステップS1)は無くても良い。つまり、セルロースナノファイバーが分散した形態のセルロースナノファイバー分散液を用いる場合は、当該工程は不要である。
分散工程は、セルロースナノファイバー分散液に含まれるセルロースナノファイバーを分散する。分散媒は、水(HO)などの水系、または、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系からなる群より選択される少なくとも1つを用いることができる。
セルロースナノファイバーの分散は、例えば、ホモジナイザー、超音波洗浄器、超音波ホモジナイザー、マグネチックスターラー、撹拌機、振とう器等を用いれば良い。
また、セルロースナノファイバー分散液のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、0.001~80質量%が好ましく、0.01~30質量%がより好ましい。これは、固形分濃度が薄すぎると、セルロースナノファイバー同士のネットワークが形成できず、後述する炭化工程(ステップS4)において、カーボンの共連続構造を形成することが困難となるためである。また、固形分濃度が濃すぎると、後述する凍結工程(ステップS2)において凝集してしまい、更には、炭化工程(ステップS4)において、セルロースの焼結が進行し、繊維状構造を形成することが困難となるためである。
凍結工程は、セルロースナノファイバーを含む分散液を凍結させて凍結体を得る(ステップS2)。この工程は、例えば、セルロースナノファイバー分散液を試験管のような適切な容器に収容し、液体窒素などの冷却材中で試験管の周囲を冷却することで、試験管に収容したセルロースナノファイバーを凍結することで行う。
凍結させる手法は、分散液の分散媒を凝固点以下に冷却ができれば、特に限定されるものではなく、冷凍庫などで冷却してもよい。セルロースナノファイバー分散液を凍結することで、分散媒が流動性を失い、分散質であるセルロースナノファイバーが固定され、三次元ネットワーク構造が構築される。
乾燥工程は、凍結工程で凍結させた凍結体を真空中で乾燥させて乾燥体を得る(ステップS3)。この工程は、凍結した分散媒を固体状態から昇華させる。例えば、得られた凍結体をフラスコのような適切な容器に収容し、容器内を真空引きすることで実施される。凍結体を真空雰囲気下に配置することで、分散媒の昇華点が低下し、常圧では昇華しない物質においても昇華させることが可能である。
乾燥工程における真空度は、使用する分散媒によって異なるが、分散媒が昇華する真空度であれば特に制限されない。例えば、分散媒に水を使用した場合、圧力を0.06MPa以下とした真空度にする必要があるが、昇華潜熱として熱が奪われるため、乾燥に時間を要する。このため、真空度は1.0×10-6Pa~1.0×10-2Paが好適である。更に乾燥時にヒーターなどを用いて熱を加えても良い。
炭化工程は、乾燥工程で乾燥させた乾燥体を、燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化し、共連続繊維状カーボンを得る(ステップS4)。セルロースナノファイバーの炭化は、不活性ガス雰囲気中で100℃~2000℃、好ましくは150℃~1300℃で焼成して炭化すればよい。
また、炭化の進行度を調整することにより、共連続繊維状カーボンの色を変化させることが可能であり、150℃~400℃では、茶色になり、400℃より大きい温度では、黒色になる。すなわち、共連続繊維状カーボンは、炭化の進度に応じた色を有する。炭化の進度の調整は、焼成温度、焼成時間などによる。具体的には、前記乾燥体を150℃~400℃で焼成して炭化させた共連続繊維状カーボンの場合、睫毛には茶色の睫毛用化粧料が塗布される。また、前記乾燥体を400℃より大きい温度で焼成して炭化させた共連続繊維状カーボンの場合、睫毛には黒色の睫毛用化粧料が塗布される。なお、温度に応じて、例えば茶色でも、明るい茶色から濃い茶色など明度または彩度を調整することができる。本実施形態では、共連続繊維状カーボンを用いることで、複数の色の顔料をそれぞれ用意することなく、共連続繊維状カーボンの炭化の進度を調整することで、様々な色味の茶色または黒色の睫毛用化粧料を実現することができる。
セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであればよい。また、セルロースが燃焼しないガスは、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスであってもよく、また、二酸化炭素ガスであってもよい。コストの面から、窒素ガスがより好ましい。
以上述べた製造方法により、三次元ネットワーク構造を有する共連続繊維状カーボンを得る。
図2は、本実施形態の製造方法によって作製された共連続繊維状カーボンのSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。倍率は10000倍である。当該画像から、三次元ネットワーク構造が構築されている様子が分かる。
このように、本実施形態の共連続繊維状カーボンは、化石燃料から合成される、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、グラファイトとは異なり、自然由来の原料であり、環境への負荷が低い。
また、本実施形態では、繊維状のカーボンが枝分かれして共連続した三次元ネットワーク構造を有している。このため、この共連続繊維状カーボンを黒色顔料として睫毛用化粧料に添加した際にも、枝分かれ構造が繊維の束状のバンドル(凝集体)を形成することを抑制し、繊維状カーボンを均一に分散することが可能となる。
共連続繊維状カーボンの繊維径は、小さすぎると、枝分かれ構造が壊れやすく、睫毛用化粧料の保存中に凝集してしまう。また、繊維径が大きすぎると、睫毛用化粧料にした際に、分散性が低下し、十分な発色性能が得られない。このため、繊維径は10nm~200nmが好適である。
同様に、共連続繊維状カーボンの繊維長も、短すぎると、睫毛用化粧料の保存中に凝集してしまう。また、長すぎると、睫毛用化粧料にした際に、分散性が低下し、十分な発色性能が得られない。このため、繊維長は300nm~2μmが好適である。本実施形態で記載する繊維長は、共連続繊維状カーボンをSEM観察し、ある枝分かれ部から次の枝分かれ部まで(隣接する枝分かれ部の間)をトレースすることで測定した長さの平均値と定義する。また、測定個所は500個所以上とする。
繊維径が10nm~200nmで、繊維長が300nm~2μmの共連続繊維状カーボンを製造するためには、使用するセルロースナノファイバーの繊維径は、20nm~400nmで、繊維長は500nm~4μmが好適である。
通常、セルロースナノファイバーは炭化工程(ステップ4)で、分解、燃焼、賦活等により、繊維は、炭化前と比較して、細く且つ短くなる。しかし、繊維径が20nmより小さいセルロースナノファイバーを用いた場合、凍結工程(ステップS2)で繊維が凝集し、その後の乾燥工程(ステップS3)で繊維径の大きいセルロースナノファイバーの乾燥体が得られる。そのため、繊維径が20nmより小さいセルロースナノファイバーを使用した場合、得られる共連続繊維状カーボンの繊維径は200nmより大きくなってしまう。
〔睫毛用化粧料の製造方法〕
睫毛用化粧料は、顔料、ワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤を含む。本実施形態では、顔料として、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを含む。
図3は、本実施形態に係る睫毛用化粧料の製造方法を示すフローチャートである。図示する製造方法は、図1に示す製造方法(ステップS1-S4)に、粉砕工程(ステップS5)と、混合工程(ステップS6)とをさらに含む。すなわち、本実施形態の睫毛用化粧料は、ステップS1-S4で製造した共連続繊維状カーボンに対して、ステップS5-S6の工程を加える。ステップS1~S4については、図1の製造方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
粉砕工程は、前述の炭化工程(ステップS4)で炭化させた共連続繊維状カーボンを粉砕する(ステップS5)。粉砕工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライターなどを使用して、共連続繊維状カーボンを粉末またはスラリー状にする。
この場合、共連続繊維状カーボンは、二次粒子径が10nm~1mmが好ましく、1μm~50μmがより好ましい。これは、二次粒子径が10nmより小さくなるまで粉砕した場合、共連続な構造が壊れ、睫毛用化粧料の保存中に凝集してしまうためである。
また、二次粒子径が1mmより大きい場合、繊維状カーボンがバンドルを形成することは無いが、顔料として機能する共連続繊維状カーボンが十二分に分散せず、塗り斑が生じる原因となる。
また、共連続繊維状カーボンは、気孔率が高く、密度が低いため、共連続繊維状カーボンを単独で粉砕した場合、粉砕時または粉砕後に共連続繊維状カーボンの粉末が舞い、取扱いが困難である。そのため、共連続繊維状カーボンに溶媒を含浸させてから粉砕する湿式の粉砕手法が好ましい。
湿式で用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、3 - メチル - 3 - メトキシブチルエーテル、3 - メチル- 3 - メトキシブタノール、n-ブタノール、n-ブチルアミン、n-メチルピロリドン、アセトン、イソアミルアルコール、イソブタノール、イソプロパノール、エタノール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、オクタノール、カルボン酸、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエチルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ドデカン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロパノール、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレンモノメチルエーテル、ヘキサデカン、ヘプタン、メタノール、酢酸ブチル、乳酸ブチル、不飽和脂肪酸、グリセリンなどの有機系、および、水などの水系からなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、分散媒は、前記群から選択される少なくとも1種からなるものでもよい。
また、ここで用いる溶媒に、ステップS6で使用する睫毛用化粧料の成分を用いることも可能である。この場合、睫毛用化粧料に不要な溶媒を含有させないため、粉砕工程で用いる溶媒に、睫毛用化粧料の成分を使用することが好ましい。
混合工程は、粉砕工程(ステップS5)で粉砕した材料(共連続繊維状カーボン)と、睫毛用化粧料に用いるワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤とを混合させて睫毛用化粧料を得る(ステップS6)。
本実施形態で用いるワックスは、特に限定されないが、例えば、イボタロウ、カポックロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、サトウキビロウ、セラックロウ、ヌカロウ、ベイベリーロウ、ホホバロウ、ミツロウ、綿ロウ、モクロウ、モンタンロウ、還元ラノリン、硬質ラノリン、ラノリン、ワセリン、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン水素添加ラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、パラフィンワックス、ビーズワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバロウエステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ラウリン酸ヘキシル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリド、および、アルキルシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
睫毛用化粧料へのワックスの添加量は適宜調整されるが、好ましくは1~30質量%であり、さらに好ましくは5~25質量%である。
添加量が1質量%未満では、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、付着力(化粧持ち)などの点で必ずしも十分でない場合がある。一方、添加量が30質量%を超えると、化粧持ちが悪くなる。さらに、べたつき、粘度が高くなり塗布がしにくくなる。
本実施形態で用いる液状油分は、特に限定されないが、例えば、重質イソパラフィン、スクワラン、流動性パラフィン等の炭化水素油、セチルー2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、2-オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコールー2-エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート等のエステル類、オリーブオイル、アボカドオイル、ホホバオイル、ヒマワリオイル、サフラワーオイル、椿オイル、マカデミアナッツオイル、ミンクオイル、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシオイル等の油脂、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分、および、フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、パーフロカーボン等のフッ素系油分からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
睫毛用化粧料への液状油分の添加量は適宜調整されるが、好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。
添加量が0.1質量%未満では塗布時の伸び(塗り心地)の点で必ずしも十分でない場合がある。一方、添加量が20質量%を超えると化粧持ちが悪くなる。
本実施形態で用いる被膜剤は、特に限定されないが、例えば、アルキルセルロース、デキストリン、ニトロセルロース、等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸アルキル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のラテックス類、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシシリルプロピルカルバミド酸、アクリルシリコーン共重合樹脂、フッ素変性シリコーン、等のシリコーン系樹脂、フッ素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリマーエマルジョン樹脂、テルペン系樹脂、ポリブテン、ポリイソプレン、アルキド樹脂、ポリビニルピロリドン変性ポリマー、ロジン変性樹脂、および、ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
睫毛用化粧料への被膜剤の添加量は適宜調整されるが、好ましくは1~25質量%であり、さらに好ましくは2~20質量%である。添加量が1質量%未満では、カールアップ効果が低減し、化粧持ちが悪くなる。一方、添加量が25質量%を超えると、塗布がしにくくなる。
本実施形態で用いる増粘剤は、特に限定されないが、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ベントナイト、キサンタンガム、セルロースガムからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
睫毛用化粧料への増粘剤の添加量は適宜調整されるが、好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは1~20質量%である。添加量が0.1質量%未満では、十分な粘度に調整することが難しい場合がある。一方、添加量が30質量%を超えると粘度が高くなりすぎて、塗布がしにくくなる。
また、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、通常、睫毛用化粧料に添加される成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば、合成繊維、アルコール類、多価アルコール類、薬剤、界面活性剤、水溶性高分子、粘土鉱物、粉末、防腐剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水、油脂類、炭化水素油等の油性成分などが挙げられる。
混合工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、混練機などを使用することができる。
なお、本実施形態の製造方法は、図3に示す全ての工程を含まなくても良い。例えば、粉砕工程時に、共連続繊維状カーボンとともに、ワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤を同時に添加することで、粉砕及び混合を同時に行うことが可能であり、この場合、混合工程を行わなくても良い。
〔睫毛用化粧料の評価〕
以上述べた本実施形態の効果を確認する目的で、本実施形態の製造方法で作製した睫毛用化粧料(実験例1~12)と、本実施形態とは異なる製造方法の睫毛用化粧料(比較例1~6)とを比較する実験を行った。
以下の実験例1~12および比較例1~6における睫毛用化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
(1)カールキープ効果
評価パネル10名に、睫毛用化粧料を睫毛に塗布してもらい、睫毛が上向きにカールしたかどうかを肉眼で観察して、カールキープ効果があるかどうかを回答してもらった。カールキープ効果があると答えた人数を用いて、下記基準により評価した。
◎:カールキープ効果ありと答えた人数が7名以上
〇:カールキープ効果ありと答えた人数が5~6名
△:カールキープ効果ありと答えた人数が3~4名
×:カールキープ効果ありと答えた人数が2名以下
(2)ロングラッシュ効果
評価パネル10名に、睫毛用化粧料を睫毛に塗布してもらい、睫毛が長くなったかどうかを肉眼で観察して、ロングラッシュ効果があるかどうかを回答してもらった。ロングラッシュ効果があると答えた人数を用いて、下記基準により評価した。
◎:ロングラッシュ効果ありと答えた人数が7名以上
〇:ロングラッシュ効果ありと答えた人数が5~6名
△:ロングラッシュ効果ありと答えた人数が3~4名
×:ロングラッシュ効果ありと答えた人数が2名以下
(3)ボリュームアップ効果
評価パネル10名に、睫毛用化粧料を睫毛に塗布してもらい、睫毛が太くなったかどうかを肉眼で観察して、ボリュームアップ効果があるかどうかを回答してもらった。ボリュームアップ効果があると答えた人数を用いて、下記基準により評価した。
◎:ボリュームアップ効果ありと答えた人数が7名以上
〇:ボリュームアップ効果ありと答えた人数が5~6名
△:ボリュームアップ効果ありと答えた人数が3~4名
×:ボリュームアップ効果ありと答えた人数が2名以下
(4)塗り心地
評価パネル10名に、睫毛用化粧料を睫毛に塗布してもらい、塗り心地が良いかどうか(なめらかな使用性かどうか)を回答してもらった。塗り心地が良いと答えた人数を用いて、下記基準により評価した。
◎:塗り心地が良いと答えた人数が7名以上
〇:塗り心地が良いと答えた人数が5~6名
△:塗り心地が良いと答えた人数が3~4名
×:塗り心地が良いと答えた人数が2名以下
(5)化粧持ち
評価パネル10名に、睫毛用粧料を睫毛に塗布してもらい、1日の生活後も付着力が持続しているかどうかを肉眼にて観察して、化粧持ちが良いかどうかを回答してもらった。化粧持ちが良いと答えた人数を用いて、下記基準により評価した。
◎:化粧持ちが良いと答えた人数が7名以上
〇:化粧持ちが良いと答えた人数が5~6名
△:化粧持ちが良いと答えた人数が3~4名
×:化粧持ちが良いと答えた人数が2名以下
(6)経時安定性
睫毛用化粧料をガラス瓶に充填し、下記3つの条件下で放置し、30日間後の状態の変化を観察し、下記基準により評価した。
条件1:室温下で30日間放置
条件2:40℃に設定した恒温槽内で30日間放置
条件3:-5℃から45℃まで2日間で昇温し、その後45℃から-5℃まで2日間で降温する温度サイクルに設定した恒温槽内で30日間放置
◎:全ての条件下で、変化がなかった
〇:硬さ等の若干の変化は確認できたが、使用上、問題のない範囲内であった
△:少なくとも一つの条件下で、固化または分離が確認された
×:全ての条件下で、固化または分離が確認された
以下に、図4に示す水中油型の睫毛用化粧料(実験例1-4、比較例1-2)、図5に示す油性の睫毛用化粧料(実験例5-8、比較例3、4)、および、図6に示す油中水型の睫毛用化粧料(実験例9-12、比較例5-6)について説明する。
(実験例1)
実験例1は、顔料として、共連続繊維状カーボンを含む、水中油型の睫毛用化粧料である。実験例1の睫毛用化粧料は下記の手順で製造した。
<共連続繊維状カーボンの製造手順>
実験例1では、セルロースナノファイバー(平均繊維径40nm、平均繊維長1μm)を用い、セルロースナノファイバー1g、超純水10gをホモジナイザー(エスエムテー製)で12時間撹拌することで、セルロースナノファイバーの分散液を調整し、試験管の中に、流し込んだ。
上記試験管を-30℃の冷凍庫中で2時間冷凍することでセルロースナノファイバー分散液を完全に凍結させた。セルロースナノファイバー分散液を完全に凍結させた後、凍結させたセルロースナノファイバー分散液をシャーレ上に取り出し、これを凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製)により10Pa以下の真空中で24時間乾燥させることで、セルロースナノファイバーの乾燥体を得た。真空中で乾燥させた後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、セルロースナノファイバーをカーボン化させ、これにより実験例1の共連続繊維状カーボンを作製した。本実験例で作製した共連続繊維状カーボンをSEM観察したところ平均繊維径は20nm、平均繊維長は500nmであることを確認した。
<睫毛用化粧料の製造手順>
図4に示す組成の睫毛用化粧料の成分を、図4に示す実験例1の割合(質量%)で下記の製造手順により調整した。実験例1では、A相に、上記の作製手順で作製した共連続繊維状カーボンを用い、共連続繊維状カーボンの配合量を10質量%にした。
ここでは、B相に精製水、1,3-ブチレングリコール、キサンタンガム、トリエタノールアミン、エデト酸四ナトリウム二水塩、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、D-パントテニルアルコールを用いた。C相に、モノステアリン酸グリセリン、天然ビタミンE、サラシミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラ樹脂(日本ナチュラルプロダクツ社製)を用いた。D相に(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー(大東化成工業社製)を用い、E相にフェノキシエタノールを用い、F相にナイロン繊維(コスメテリアルズ社製) 長さ2mmを用いた。
図4に示す組成の水中油型の睫毛用化粧料の成分を下記の製造手順により調整した。図4に示すB相の混合物を85℃に、C相の混合物を95℃に加熱し、加熱したB相およびC相と、A相とをホモジナイザーで85℃を維持しながら2時間攪拌し、B相およびC相の乳化と、A相の粉砕および分散を行った。得られた混合物を攪拌下で60℃まで冷却し、D相、E相、およびF相の成分を添加し、ホモジナイザーで2時間混合した。均一になった混合物を32℃まで大気中で冷却し、水中油型の睫毛用化粧料を得た。
(比較例1)
比較例1は、実験例1の睫毛用化粧料の共連続繊維状カーボン(顔料)を、従来使用されている黒酸化鉄(球状、平均粒径2μm)に置き換えた睫毛用化粧料である。比較例1では、実験例1の製造手順において、A相に黒酸化鉄を用いて、その他は実験例1と同様に睫毛用化粧料を作製した。
図4に、上述の評価法により評価した実験例1の評価結果を示す。図4の実験例1を見ると、実験例1の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、および、経時安定性の全ての評価において、比較例1より優れていた。この結果からわかるように、本実施形態の共連続繊維状カーボンを顔料として用いる睫毛用化粧料は、黒酸化鉄を配合した睫毛用化粧料と比べて、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮するといえる。
(実験例2)
実験例2は、実験例1の作製方法で作製した共連続繊維状カーボンの配合量を5質量%にした睫毛用化粧料である。B相からF相の配合量は、実験例1と同じである。したがって、実験例2では、精製水の配合量を実験例1より20質量%増加した。図4に示す組成および配合量を用いて、本実験例の睫毛用化粧料を実験例1と同様の製造方法で調製した。
図4に、上述の評価法により評価した実験例2の評価結果を示す。図4の実験例2を見ると、実験例2の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の全ての評価において、比較例1より優れていた。また、実験例2は、実験例1と比べて、塗り心地がより優れていることが分かる。これは、睫毛用化粧料に含まれる共連続繊維状カーボンの割合が少なくなったことで、粘度が低下し、塗布時の睫毛用化粧料の伸びが良くなったためだと考えられる。
したがって、共連続繊維状カーボンの配合量は、睫毛用化粧料の5質量%以下であることが好ましい。なお、共連続繊維状カーボンの配合量を0.5質量%未満にし、精製水以外は実験例2と同じにした睫毛用化粧料の場合、十分な黒色を出すことができず、睫毛用化粧料として使用することができなかった。この場合の十分な黒色とは、睫毛用化粧料のブラシを使用して手の甲に3回5cmの線を重ね描きし、2cm以上黒線が途切れないことを指す。
(実験例3)
実験例3は、実験例2の睫毛用化粧料から、F相のナイロン繊維を含めないで製造した睫毛用化粧料である。A相からE相の配合量は、実験例2と同じである。したがって、実験例3では、精製水の配合量を実験例2より2質量%増加した。図4に示す組成および配合量を用いて、本実験例の睫毛用化粧料を実験例1と同様の製造方法で調製した。
図4に、上述の評価法により評価した実験例3の評価結果を示す。図4の結果から、実験例3は、比較例1と比べてカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において優れていた。また、実験例3は、実験例2と比べても、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ちも遜色ない評価となっている。
通常、ナイロン繊維などの合成繊維(繊維素材)を含まない睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果が悪くなる傾向にあるが、本実施形態の睫毛用化粧料では、顔料として使用している共連続繊維状カーボンが、通常、睫毛用化粧料に添加する合成繊維と同等の効果を示したと考えられる。また、実験例3は、実験例2と比べて経時安定性が高いことがわかる。これは、合成繊維がなくなったことで、合成繊維による凝集おおよび分離が生じなくなったことに起因する。
(実験例4)
実験例4は、実験例3のカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性に影響を与える成分(精製水以外のB相~E相)の配合量を増やした睫毛用化粧料である。
本実験例は、図4に示す組成および配合量を用いて、実験例1と同様の製造方法で睫毛用化粧料を調製した。具体的には、本実験例では、実験例1と実験例3のA相(共連続繊維状カーボン)とF相(ナイロン繊維)との重量の差分(7質量%分)を、実験例1の配合比率と同様になるように、精製水以外のB相~E相に割り振り、精製水以外の総重量が実験例1と同等になるように調製した。なお、図4では、実験例4の精製水以外の成分の合計が、実験例1の精製水以外の成分の合計と一致していないが、これは、小数点第3位を四捨五入したことによる差である。
図4に、上述の評価法により評価した実験例4の評価結果を示す。図4の結果から、実験例4は、比較例1と比べてカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において優れていた。また、実験例4は、実験例1-3と比較して化粧持ちがより優れていた。これは、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性に影響を与える成分(精製水以外のB相~E相)の配合量を増やしたことに起因する。本実験例は、分散性が高く、三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを顔料として用いることで、A相の顔料の添加量を減らし、また、F相のナイロン繊維を添加しない代わりに他の成分の添加量を増やすことができるため、このような優れた性能を実現できた。
(比較例2)
比較例2は、実験例4の共連続繊維状カーボンを、従来使用されている黒酸化鉄(球状、平均粒径2μm)に置き換えた睫毛用化粧料である。具体的には、比較例2では、実験例4のA相に黒酸化鉄を用い、その他は実験例4と同様に睫毛用化粧料を作製した。
比較例2では顔料として黒酸化鉄を用いているため、分散性が悪く、配合量が5質量%以下では、十分な黒色を出すことができず、睫毛用化粧料として使用することができなかった。この場合の十分な黒色とは、睫毛用化粧料のブラシを使用して手の甲に3回5cmの線を重ね描きし、2cm以上黒線が途切れないことを指す。
(実験例5~8、比較例3、4)
油性の睫毛用化粧料においても本実施形態の効果を評価するため、実験例5~8および比較例3、4では、実験例1~4および比較例1、2の水中油型の睫毛用化粧料のA相以外の成分を、油性の睫毛用化粧料に置き換えて、同様に作成し評価した。
図5に示す組成の油性の睫毛用化粧料の成分を、下記の製造手順により調整した。ここでは、B相にイソドデカンと、パラフィンと、マイクロクリスタリンワックスと、サラシミツロウと、ポリエチレンワックスと、パラオキシ安息香酸プロピルと、天然ビタミンEとを用いた。C相にジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトと、炭酸プロピレンとを用い、D相にトリメチルシロキシケイ酸/イソデカン(信越化学工業社製)を用い、E相にナイロン繊維(コスメテリアルズ社製) 長さ2mmを用いた。
図5に示すB相の混合物を90℃に加熱し、ホモジナイザーで1時間に混合した。B相の混合物にA相およびC相の組成を添加し、ホモジナイザーで再度2時間混砕した。次いで、得られた混合物を50℃下で、D相およびE相の成分を投入し、ホモジナイザーで2時間均一に混合して油性の睫毛用化粧料を得た。
図5の実験例5~8および比較例3、4の評価を見ると、実験例5~8の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の全てにおいて、比較例3、4より優れていた。この結果からわかるように、油性の睫毛用化粧料においても、本実施形態の共連続繊維状カーボンを含む睫毛用化粧料は、少ない顔料比率で睫毛用化粧料を製造することが可能であり、合成繊維を含まなくても、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮する。
(実験例9~12、比較例5、6)
油中水型の睫毛用化粧料においても本実施形態の効果を評価するため、実験例9~12および比較例5、6では、実験例1~4および比較例1、2の水中油型の睫毛用化粧料のA相以外の成分を油中水型の睫毛用化粧料に置き換えて、同様に作成し評価した。
図6に示す組成の油中水型の睫毛用化粧料の成分を、下記の製造手順により調整した。ここでは、B相にイソドデカンと、エステルガムと、マイクロクリスタリンワックスと、ポリエチレンワックスと、カルナウバロウと、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトと、エタノールと、ジイソステアリン酸ポリグリセリルと、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルと、天然ビタミンEと、雲母チタンとを用いた。C相に精製水と、ポリビニルピロリドンと、D-パントテニルアルコールと、塩化ナトリウムと、1,2-ペンタンジオールとを用いた。
図6に示すB相の混合物を95℃に、C相の混合物を85℃に加熱し、加熱したB相およびC相と、A相とをホモジナイザーで85℃を維持しながら2時間攪拌し、B相およびC相を乳化し、A相を粉砕および分散をした。得られた混合物を攪拌下で40℃まで冷却し、D相、E相、F相およびG相の成分を添加し、ホモジナイザーで2時間混合した。均一になった混合物を32℃まで大気中で冷却し、油中水型の睫毛用化粧料を得た。
図6の実験例9~12および比較例5、6の評価を見ると、実験例9~12の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の全てにおいて、比較例5、6より優れていた。この結果からわかるように、油中水型の睫毛用化粧料においても、本実施形態の共連続繊維状カーボンを含む睫毛用化粧料は、少ない顔料比率で睫毛用化粧料を製造することが可能であり、合成繊維を含まなくても、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮する。
以上説明した本実施形態の睫毛用化粧料は、顔料として、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを含み、前記共連続繊維状カーボンは、セルロースナノファイバーから作製される。
本実施形態の睫毛用化粧料は、顔料に三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを使用することで、繊維状のカーボンがバンドルを形成することなく、均一に睫毛用化粧料に分散する。また、本実施形態では、繊維状カーボンが分散媒に均一に分散することで、顔料の配合比を下げることができ、合成繊維を含まない場合であっても、カールキープ効果・ロングラッシュ効果・ボリュームアップ効果・塗布時の伸び(塗り心地)・付着力(化粧持ち)が得られる睫毛用化粧料を提供することができる。
また、本実施形態では、天然物由来のセルロースナノファイバーのカーボンを使用することで、低環境負荷な原料から構成された睫毛用化粧料を製造することが可能となる。
また、本実施形態では、通常、睫毛用化粧料に添加される合成繊維を含まない。睫毛用化粧料に使用される合成繊維は、マイクロプラスチックの一種であり、海洋汚染への影響が大きく、環境への意識が高い消費者層は購入を避ける傾向にある。本実施形態の睫毛用化粧料は、このような合成繊維を含まないため、環境に配慮した睫毛用化粧料を製造することができる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態の睫毛用化粧料について説明する。本実施形態の睫毛用化粧料は、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを粉砕したロッド状カーボンを含む睫毛用化粧料である。
本実施形態の共連続繊維状カーボン製造方法は、第1の実施形態の共連続繊維状カーボンの製造方法(図1参照)と同様であるため、ここでは説明を省略する。本実施形態の共連続繊維状カーボンは、図2に示すように、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造を有する。
ロッド状カーボンは、第1の実施形態で説明したように、共連続繊維状カーボンの炭化の進度に応じた色を有する。すなわち、炭化の進行度を調整することにより、共連続繊維状カーボンの色を変化させることが可能である。したがって、共連続繊維状カーボンを粉砕した本実施形態のロッド状カーボンを用いることで、複数の色の顔料をそれぞれ用意することなく、共連続繊維状カーボンの炭化の進度を調整することで、様々な色味の茶色または黒色の睫毛用化粧料を実現することができる。
〔ロッド状カーボンの製造方法〕
得られた共連続繊維状カーボンから、ロッド状カーボンを作製する。ロッド状カーボンは、中空でない棒状のナノカーボン材料である。ここでは、ロッドとは、中空でなく、アスペクト比(ロッド長/ロッド幅)が2~200である繊維(ファイバー)を指すこととする。
図7は、ロッド状カーボンの製造方法を示すフローチャートである。図7に示す製造方法は、共連続繊維状カーボンの製造方法に、さらに粉砕工程(ステップS5)を含む。すなわち、本実施形態のロッド状カーボンの製造方法は、図1の製造方法で得られた共連続繊維状カーボンを粉砕し、ロッド状カーボンを得る粉砕工程を含む。ステップS1~S4については、図1の製造方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
粉砕工程は、前述の炭化工程(ステップS4)で炭化させた乾燥体(共連続繊維状カーボン)を粉砕する(ステップS5)。粉砕工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライターなどを使用して、共連続繊維状カーボンを粉末またはスラリー状にする。粉砕手法には、湿式と乾式があるが、より均一かつ微粉砕が可能な湿式手法が好適である。
湿式で用いる分散媒は、特に限定されないが、例えば、水(H2O)などの水系、及び、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系からなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、分散媒は、前記群から選択される少なくとも1種からなるものでもよい。
また、ここで用いる分散媒に、後述する混合工程(図9:ステップS6)で使用する睫毛用化粧料の成分を用いることも可能である。この場合、睫毛用化粧料に不要な分散媒を含有させないため、粉砕工程で用いる分散媒に、睫毛用化粧料の成分を使用することが好ましい。
図8は、本実施形態の製造方法によって作製されたロッド状カーボンのSEM画像である。図8の倍率は100000倍である。図8から、ロッド状カーボンが形成されていることが分かる。
本実施形態では、図1の製造方法で得られた共連続繊維状カーボンを用いることで、低コストで大量生産が容易なロッド状カーボンの製造方法を提供することができる。
このように、本実施形態のロッド状カーボンは、化石燃料から合成される、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、グラファイトなどとは異なり、自然由来の原料であり、環境への負荷が低い。
また、本実施形態のロッド状カーボンは、ロッド状の構造(形状)を有する。このため、このロッド状カーボンを黒色顔料として睫毛用化粧料に添加した際にも、ロッド構造が塗布時に睫毛方向に沿って配向し、優れたカールキープ効果・ロングラッシュ効果・ボリュームアップ効果・塗布時の伸び(塗り心地)・付着力(化粧持ち)を実現することができる。すなわち、ロッド状カーボンが睫毛(塗布方向)と並行して長手方向に配向・配列する。
ロッド状カーボンのロッド径は、小さすぎると、生体内での沈着および生体への影響が懸念される。また、ロッド径が大きすぎると、睫毛用化粧料に添加した際に、分散性が低下し、十分な発色性能が得られない。このため、ロッド径は10nm~200nmが好適である。
同様に、ロッド状カーボンのロッド長も、ロッド長が、20nm~400nmが好ましく、50nm~200nmがより好ましい。これは、ロッド長が20nmより小さくなるまで粉砕した場合、ロッド状カーボンのアスペクト比(ロッド長/ロッド幅)が小さくなり、ナノロッドの形状による特異性が失われるためである。また、400nmを超える場合、共連続繊維状カーボンの枝分かれ構造が残ってしまい、ロッド状カーボンの製造が困難となる。具体的には、ロッド状カーボンは円柱であるが、枝分かれ部があると円柱の形状でなくなってしまうためである。すなわち、枝分かれ部が残ってしまうと、円柱の形状のロッド状カーボンの製造が困難になる。
例えばロッド径が10nm~200nmで、ロッド長が20nm~400nmのロッド状カーボンを、睫毛用化粧料に使用した場合、ロッド状カーボンが塗布時に睫毛方向に沿って配向することで、優れたカールキープ効果・ロングラッシュ効果・ボリュームアップ効果・塗布時の伸び(塗り心地)・付着力(化粧持ち)を実現することができる。
本実施形態で記載するロッド長は、ロッド状カーボンをSEM観察し、ロッドをトレースすることで測定した長さの平均値と定義する。また、測定個所は500個所以上とする。
ロッド径が10nm~200nmで、ロッド長が20nm~400nmのロッド状カーボンを製造するためには、使用するセルロースナノファイバーの繊維径は、20nm~400nmで、繊維長は500nm~4μmが好適である。
通常、セルロースナノファイバーは炭化工程(ステップ4)で、分解、燃焼、賦活等により、繊維は、炭化前と比較して、細く且つ短くなる。しかし、繊維径が20nmより小さいセルロースナノファイバーを用いた場合、凍結工程(ステップS2)で繊維が凝集し、その後の乾燥工程(ステップS3)で繊維径の大きいセルロースナノファイバーの乾燥体が得られる。そのため、繊維径が20nmより小さいセルロースナノファイバーを使用した場合、得られる共連続繊維状カーボンの繊維径は200nmより大きくなってしまう。
〔睫毛用化粧料の製造方法〕
睫毛用化粧料は、顔料、ワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤などを含む。本実実施形態では、顔料として、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンから造られたロッド状カーボンを含む。
図9は、本実施形態に係る睫毛用化粧料の製造方法を示すフローチャートである。図示する製造方法は、図7に示す製造方法(ステップS1-S5)に、混合工程(ステップS6)をさらに含む。すなわち、本実施形態の睫毛用化粧料は、図7のステップS1-S5で製造したロッド状カーボンに対して、ステップS6の混合工程を加える。
混合工程は、粉砕工程(ステップS5)で粉砕した材料(ロッド状カーボン)と、睫毛用化粧料に用いるワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤とを混合させて睫毛用化粧料を得る(ステップS6)。
本実施形態で用いるワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤は、第1の実施形態で説明したワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤と同様である。そのため、ここでは説明を省略する。
また、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、通常、睫毛用化粧料に添加される成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば、合成繊維、アルコール類、多価アルコール類、薬剤、界面活性剤、水溶性高分子、粘土鉱物、粉末、防腐剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水、油脂類、炭化水素油等の油性成分などが挙げられる。
混合工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、混練機などを使用することができる。
なお、本実施形態の製造方法は、全ての工程を含まなくても良い。例えば、粉砕工程時に、ワックス、液状油分、被膜剤、増粘剤を同時に添加することで、粉砕及び混合を同時に行うことが可能であり、この場合、混合工程を行わなくても良い。
〔睫毛用化粧料の評価〕
以上述べた本実施形態の効果を確認する目的で、本実施形態の製造方法で作製した睫毛用化粧料(実験例1~12)と、本実施形態とは異なる製造方法の睫毛用化粧料(比較例1~6)とを比較する実験を行った。
以下の実験例1~12および比較例1~6における睫毛用化粧料の評価方法は、第1の実施形態と同じである。
以下に、図10に示す水中油型の睫毛用化粧料(実験例1-4、比較例1-2)、図11に示す油性の睫毛用化粧料(実験例5-8、比較例3、4)、および、図12に示す油中水型の睫毛用化粧料(実験例9-12、比較例5-6)について説明する。
(実験例1)
実験例1は、共連続繊維状カーボンから造られたロッド状カーボンを含む水中油型の睫毛用化粧料である。実験例1の睫毛用化粧料は下記の手順で製造した。
<ロッド状カーボンの製造手順>
実験例1では、セルロースナノファイバー(平均繊維径60nm、平均繊維長1μm)を用い、セルロースナノファイバー1g、超純水10gをホモジナイザー(エスエムテー製)で12時間撹拌することで、セルロースナノファイバーの分散液を調整し、試験管の中に、流し込んだ。
上記試験管をー30℃の冷凍庫中で2時間冷凍することでセルロースナノファイバー分散液を完全に凍結させた。セルロースナノファイバー分散液を完全に凍結させた後、凍結させたセルロースナノファイバー分散液をシャーレ上に取り出し、これを凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製)により10Pa以下の真空中で24時間乾燥させることで、セルロースナノファイバーの乾燥体を得た。真空中で乾燥させた後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、セルロースナノファイバーをカーボン化させ、これにより実験例1の共連続繊維状カーボンを作製した。本実験例で作製した共連続繊維状カーボンをSEM観察したところ平均繊維径は30nm、平均繊維長は500nmであることを確認した。
作製した共連続繊維状カーボンを水に含浸させた後に、ボールミル(日本電産シンポ製)で直径0.8mm~1.0mmのジルコニアボールを使用し、回転数は60r/minで72時間粉砕することで、粉砕工程を行った。その後、ホットプレートを用いて、80℃で12時間乾燥させ、分散媒である水を蒸発させ、ロッド状カーボンを作製した。
本実験例で作製したロッド状カーボンをSEM観察したところ平均ロッド径は30nm、ロッド長は200nmであることを確認した。
<睫毛用化粧料の製造手順>
図10に示す実験例1の組成の水中油型の睫毛用化粧料の成分を、図10に示す実験例1の割合(質量%)で下記の製造手順により調整した。実験例1では、A相に、上記の作成手順で作成した共連続繊維状カーボンから造られたロッド状カーボンを用いた。実験例1では、ロッド状カーボンの配合量を10質量%にした。
なお、図10に示す睫毛用化粧料(実験例1-4、比較例1-2)のB相~F相の組成および配合量は、第1の実施形態の図4と同様である。
B相の混合物を85℃に、C相の混合物を95℃に加熱し、加熱したB相およびC相と、A相とをホモジナイザーで30分攪拌し、B相およびC相を乳化し、A相を粉砕および分散をした。得られた混合物を攪拌下で60℃まで冷却し、D相、E相、およびF相の成分を添加し、ホモジナイザーで30分混合した。均一になった混合物を32℃まで大気中で冷却し、実験例1の睫毛用化粧料を得た。
(比較例1)
比較例1は、実験例1の睫毛用化粧料のロッド状カーボンを従来使用されている黒酸化鉄(球状、平均粒径2μm)に置き換えた睫毛用化粧料である。
図10の実験例1および比較例1を見ると、実験例1の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において、比較例1より優れていた。この結果からわかるように、本実施形態の共連続繊維状カーボンから造られたロッド状カーボンを含む睫毛用化粧料は、黒酸化鉄を配合した睫毛用化粧料と比べて、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮した。
(実験例2)
実験例2は、実験例1の睫毛用化粧料のロッド状カーボンの配合量を5質量%にした睫毛用化粧料である。したがって、実験例2では、精製水の配合量を実験例1より5質量%増加した。図10に示す組成および配合量を用いて、本実験例の睫毛用化粧料を実験例1と同様の製造方法で調製した。
図10に、上述の評価法により評価した実験例2の評価結果を示す。図10の評価結果から、実験例2は、比較例1と比べてカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において優れていた。また、実験例1と比べて、塗り心地がより優れていることが分かる。これは、睫毛用化粧料に含まれるロッド状カーボンが少なくなったことで、粘度が低下し、塗布時の睫毛用化粧料の伸びが良くなったためだと考えられる。
したがって、ロッド状カーボンの配合量は、睫毛用化粧料の5質量%以下であることが好ましい。なお、ロッド状カーボンの配合量を0.5質量%未満にし、精製水以外は実験例2と同じにした睫毛用化粧料の場合、十分な黒色を出すことができず、睫毛用化粧料として使用することができなかった。この場合の十分な黒色とは、睫毛用化粧料のブラシを使用して手の甲に3回5cmの線を重ね描きし、2cm以上黒線が途切れないことを指す。
(実験例3)
実験例3は、実験例2の睫毛用化粧料から、F相のナイロン繊維を含めないで製造した睫毛用化粧料である。精製水を除くA相からE相の配合量は、実験例2と同じである。したがって、実験例3では、精製水の配合量を実験例2より2質量%増加した。図10に示す組成および配合量を用いて、本実験例の睫毛用化粧料を実験例1と同様の製造方法で調製した。
図10に、上述の評価法により評価した実験例3の評価結果を示す。図10の結果から、実験例3は、比較例1と比べてカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において優れていた。また、実験例3は、実験例2と比べても、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ちも遜色ない評価となっている。
通常、ナイロン繊維などの合成繊維(繊維素材)を含まない睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果が悪くなる傾向にあるが、本実施形態の睫毛用化粧料では、顔料として使用しているロッド状カーボンが、通常、睫毛用化粧料に添加する合成繊維と同等の効果を示したと考えられる。また、実験例3は、実験例2と比べて経時安定性が高いことがわかる。これは、合成繊維がなくなったことで、合成繊維による凝集および分離が生じなくなったことに起因する。
(実験例4)
実験例4は、実験例3のカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性に影響を与える成分(精製水以外のB相~E相)の配合量を増やした睫毛用化粧料である。
本実験例は、図10に示す組成および配合量を用いて、実験例1と同様の製造方法で睫毛用化粧料を調製した。具体的には、本実験例では、実験例1と実験例3のA相(ロッド状カーボン)とF相(ナイロン繊維)との重量の差分(7質量%分)を、実験例1の配合比率と同様になるように、精製水以外のB相~E相に割り振り、精製水以外の総重量が実験例1と同等になるように調製した。なお、図10では、実験例4の精製水以外の成分の合計が、実験例1の精製水以外の成分の合計と一致していないが、これは、小数点第3位を四捨五入したことによる差である。
図10に、上述の評価法により評価した実験例4の評価結果を示す。図10の結果から、実験例4は、比較例1と比べてカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の評価において優れていた。また、実験例4は、実験例1-3と比較して化粧持ちがより優れていた。これは、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性に影響を与える成分(精製水以外のB相~E相)の配合量を増やしたことに起因する。本実験例は、分散性が高く、三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを顔料として用いることで、A相の顔料の添加量を減らし、また、F相のナイロン繊維を添加しない代わりに他の成分の添加量を増やすことができるため、このような優れた性能を実現できた。
(比較例2)
比較例2は、実験例4のロッド状カーボンを、従来使用されている黒酸化鉄(球状、平均粒径2μm)に置き換えた睫毛用化粧料である。具体的には、比較例2では、実験例4のA相に黒酸化鉄を用い、その他は実験例4と同様に睫毛用化粧料を作製した。
比較例2では顔料として黒酸化鉄を用いているため、分散性が悪く、配合量が5質量%以下では、十分な黒色を出すことができず、睫毛用化粧料として使用することができなかった。この場合の十分な黒色とは、睫毛用化粧料のブラシを使用して手の甲に3回5cmの線を重ね描きし、2cm以上黒線が途切れないことを指す。
(実験例5~8、比較例3、4)
油性の睫毛用化粧料においても本実施形態の効果を評価するため、実験例5~8および比較例3、4では、実験例1~4および比較例1、2の水中油型の睫毛用化粧料のA相以外の成分を、油性の睫毛用化粧料に置き換えて、同様に作成し、上記の評価法に従ってその性能を評価した。
図11示す組成の油性の睫毛用化粧料の成分を、下記の製造手順により調整した。なお、図11に示す睫毛用化粧料(実験例5~8、比較例3、4)のB相~E相の組成および配合量は、第1の実施形態の図5と同様である。
図11に示すB相の混合物を90℃に加熱し、ホモジナイザーで30分に混合した。B相の混合物にA相およびC相の組成を添加し、ホモジナイザーで再度30分混砕した。次いで、得られた混合物を50℃下で、D相およびE相の成分を投入し、ホモジナイザーで30分均一に混合して油性の睫毛用化粧料を得た。
図11の実験例5~8および比較例3、4の評価を見ると、実験例5~8の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の全てにおいて、比較例3、4より優れていた。この結果からわかるように、油性の睫毛用化粧料においても、本実施形態のロッド状カーボンを含む睫毛用化粧料は、少ない顔料比率で睫毛用化粧料を製造することが可能であり、合成繊維を含まなくても、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮する。
(実験例9~12、比較例5、6)
油中水型の睫毛用化粧料においても本実施形態の効果を評価するため、実験例9~12および比較例5、6では、実験例1~4および比較例1、2の水中油型の睫毛用化粧料のA相以外の成分を油中水型の睫毛用化粧料に置き換えて、同様に作成し評価した。
図12に示す組成の油中水型の睫毛用化粧料の成分を、下記の製造手順により調整した。なお、図12に示す睫毛用化粧料(実験例5~8、比較例3、4)のB相~G相の組成および配合量は、第1の実施形態の図6と同様である。
図12に示すB相の混合物を95℃に、C相の混合物を85℃に加熱し、加熱したB相およびC相と、A相とをホモジナイザーで30分攪拌し、B相およびC相を乳化し、A相を粉砕および分散をした。得られた混合物を攪拌下で40℃まで冷却し、D相、E相、F相およびG相の成分を添加し、ホモジナイザーで30分混合した。均一になった混合物を32℃まで大気中で冷却し、油中水型の睫毛用化粧料を得た。
図12の実験例9~12および比較例5、6の評価を見ると、実験例9~12の睫毛用化粧料は、カールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性の全てにおいて、比較例5、6より優れていた。この結果からわかるように、油中水型の睫毛用化粧料においても、本実施形態のロッド状カーボンを含む睫毛用化粧料は、少ない顔料比率で睫毛用化粧料を製造することが可能であり、合成繊維を含まなくても、顕著に優れたカールキープ効果、ロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果、塗り心地、化粧持ち、経時安定性を発揮する。
以上説明した本実施形態の睫毛用化粧料は、顔料として、カーボンが枝分かれした三次元ネットワーク構造の共連続繊維状カーボンを粉砕したロッド状カーボンを含み、前記共連続繊維状カーボンは、セルロースナノファイバーから作製される。
本実施形態の睫毛用化粧料は、顔料にロッド状カーボンを使用することで、ロッド状のカーボンが睫毛方向に配向することで優れたカールキープ効果・ロングラッシュ効果・ボリュームアップ効果・塗布時の伸び(塗り心地)・付着力(化粧持ち)が得られる。
また、本実施形態では、ロッド状カーボンが、バンドルを形成することなく、均一に睫毛用化粧料に分散する。すなわち、本実施形態では、ロッド状カーボンが分散媒に均一に分散することで、顔料の配合比を下げることができ、合成繊維を含まない場合であっても、カールキープ効果・ロングラッシュ効果・ボリュームアップ効果・塗布時の伸び(塗り心地)・付着力(化粧持ち)が得られる睫毛用化粧料を提供することができる。
また、本実施形態では、天然物由来のセルロースナノファイバーから作製される共連続繊維状カーボンを粉砕したロッド状カーボンを使用することで、低環境負荷な原料から構成された睫毛用化粧料を製造することが可能となる。
また、本実施形態では、通常、睫毛用化粧料に添加される合成繊維を含まない。睫毛用化粧料に使用される合成繊維は、マイクロプラスチックの一種であり、海洋汚染への影響が大きく、環境への意識が高い消費者層は購入を避ける傾向にある。本実施形態の睫毛用化粧料は、このような合成繊維を含まないため、環境に配慮した睫毛用化粧料を製造することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、様々な変形および組み合わせが可能である。