以下に、本発明に係るグロメット及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係るグロメット及びワイヤハーネスの実施形態の1つを図1から図13に基づいて説明する。
図1から図4に示す符号1は、本実施形態のグロメットを示す。このグロメット1は、壁体Pwの貫通孔Pw1に挿通されるハーネス本体Weを保護するものである。ハーネス本体Weは、1本の電線を有するもの又は複数本の電線が束ねられたものであり、通信線としての電線であったり、電源線としての電線であったりする。このハーネス本体Weは、複数本の電線を備える場合、その複数本の電線が例えばコルゲートチューブや樹脂テープ等の外装部品によって一纏めにされる。例えば、壁体Pwとは、車両の場合、車体のパネル等のことをいう。ハーネス本体Weは、その壁体Pwの貫通孔Pw1に挿通させることによって、この壁体Pwで隔てられた2つの空間で引き回される。例えば、このハーネス本体Weは、それぞれの空間の装置間の通信を担ったり、一方の空間の電源から他方の空間の電気機器への給電等を担ったりする。グロメット1は、その壁体Pwにおける貫通孔Pw1の周縁部からハーネス本体Weを保護すると共に、その貫通孔Pw1とハーネス本体Weとの間の隙間への液体(水等)の浸入を防ぐために、その壁体Pwに取り付けられる。ここでは、そのグロメット1とハーネス本体Weとが組み付けられた状態のものをワイヤハーネスWHと称する。
例えば、ワイヤハーネスWHは、車両における車体側と可動部品側との間に亘って配策されるものであり、その間での通信や電源供給を担っている。可動部品とは、例えば、車体に対してヒンジ等の可動連結部品を介して連結された部品であり、バックドア、前席用又は後席用のサイドドア、トランクリッド等のことである。ここで例示するワイヤハーネスWHにおいては、車体側の壁体Pw(以下、「車体側パネル」という。)Pwbの貫通孔Pwb1と可動部品側の壁体Pw(以下、「可動側パネル」という。)Pwdの貫通孔Pwd1との間に亘ってハーネス本体Weが配索される(図1及び図2)。そして、そのハーネス本体Weは、一端側が車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1を通って車体側で引き回され、他端側が可動側パネルPwdの貫通孔Pwd1を通って可動部品側で引き回される。ここで示すワイヤハーネスWHは、そのようなハーネス本体Weの他に、車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1と可動側パネルPwdの貫通孔Pwd1との間に亘って配索されたグロメット1を備えている。このワイヤハーネスWHにおいては、その間でグロメット1とハーネス本体Weが弛みを持たせた状態で架け渡されており、車体に対する可動部品の動きに連動して、その間のグロメット1とハーネス本体Weを屈曲させたり、屈曲状態から元に戻すべく伸長させたりする。
グロメット1は、エラストマー等の弾性材料で成形される。このグロメット1は、ハーネス本体Weを筒内に挿通させる筒体2と、壁体Pwにおける貫通孔Pw1の周縁部に嵌め込ませる少なくとも1つの嵌合体3と、を有するものであり、これらが一体となって成形されている(図1から図4)。ここで示すグロメット1においては、筒体2が車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1と可動側パネルPwdの貫通孔Pwd1との間に亘って配策され、この筒体2の両端に各々嵌合体3が設けられている。このグロメット1は、その2つの嵌合体3の内の少なくとも1つに後述するハーネス保持部4が設けられたものであり、そのハーネス保持部4も合わせて一体となって成形されている(図1から図7)。
ここで示すグロメット1において、一方の嵌合体3は、車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれる車体側嵌合体3Aである(図1から図4)。この車体側嵌合体3Aは、その貫通孔Pwb1を通るハーネス本体Weの保護と貫通孔Pwb1からの液体の浸入を防ぐために設けられている。これに対して、他方の嵌合体3は、可動側パネルPwdの貫通孔Pwd1の周縁部に嵌め込まれる可動側嵌合体3Bである(図1から図4)。この可動側嵌合体3Bは、その貫通孔Pwd1を通るハーネス本体Weの保護と貫通孔Pwd1からの液体の浸入を防ぐために設けられている。この車体側嵌合体3Aと可動側嵌合体3Bは、互いに同等の構成を備えるものとして形成されてもよく、互いに異なる構成を備えるものとして形成されてもよい。以下においては、車体側嵌合体3Aを例に挙げて、嵌合体3の説明を行う。
本実施形態の筒体2は、車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1と可動側パネルPwdの貫通孔Pwd1との間で屈曲させたり伸長させたりするために、かかる動きに沿った弾性変形が可能なものとして形成される。よって、この例示の筒体2は、円筒状で、かつ、蛇腹状に形成されている。
車体側嵌合体3Aは、内部空間3aを有する椀状に形成され、その内部空間3aを筒体2の筒内に連通させる(図2、図6及び図7)。更に、この車体側嵌合体3Aは、弾性変形可能なものとして形成される。また更に、この車体側嵌合体3Aは、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に開口部3b側を嵌め込ませるものとして形成される(図2、図6及び図7)。このため、車体側嵌合体3Aは、その車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1の形状に合わせた形に形成される。例えば、車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1は、円形状又はオーバル形状(長円形状又は楕円形状)に形成される。このため、車体側嵌合体3Aは、一端が閉塞された円筒状又はオーバル筒状(長円筒状又は楕円筒状)に形成される。本実施形態のグロメット1においては、筒体2と車体側嵌合体3Aとがそれぞれの筒軸方向を同じ向きに合わせて繋がれている。以下において、特に言及が無く記された筒軸とは、車体側嵌合体3Aの筒軸のことを指し示している。
この車体側嵌合体3Aは、具体的に、荷重が加えられていないときの形状が次のような形に形成されている。
車体側嵌合体3Aは、筒体2の一端が外壁面11側から接続され、かつ、この筒体2の一端にて筒内を内部空間3aに連通させる接続壁10を有する(図1から図4、図6及び図7)。その接続壁10は、例えば、円形状又はオーバル形状(長円形状又は楕円形状)で且つ板状の壁体として形成される。この接続壁10においては、その中央に筒体2の一端が接続されている。例えば、この接続壁10においては、その中央に貫通孔10aが形成されており、その貫通孔10aに筒体2の一端の開口が繋がれている(図6及び図7)。よって、その貫通孔10aは、接続壁10においてのハーネス本体Weの配索経路となり、筒体2の筒内におけるハーネス本体Weの配索経路と内部空間3aにおけるハーネス本体Weの配索経路とを繋ぐ。車体側嵌合体3Aにおいては、接続壁10の貫通孔10aから開口部3b側に向けた筒軸方向に沿う領域が内部空間3aにおいてのハーネス本体Weの配索経路3cとなる(図6及び図7)。
更に、車体側嵌合体3Aは、接続壁10の外周縁部から開口部3b側に向けて突出させた筒状の周壁20を有する(図1から図4、図6及び図7)。その周壁20は、例えば、円筒状又はオーバル筒状(長円筒状又は楕円筒状)の壁体として形成される。つまり、この周壁20は、筒軸方向に対する直交断面形状が円環形状又はオーバル環形状(長円環形状又は楕円環形状)に形成される。この周壁20は、その筒軸方向に対する直交断面形状が筒軸上の各点で均等なものであってもよく、筒軸方向に対する直交断面形状が筒軸上の各点で不均等なものであってもよい。その筒軸方向に対する直交断面形状が不均等な周壁20とは、例えば、接続壁10側から開口部3b側にラッパ状に広がる錐台を成すもののことである。
また更に、車体側嵌合体3Aは、周壁20における開口部3b側の環状の端部に外周縁部が同軸上で結合された環状の第1嵌合壁30と、この第1嵌合壁30に対して軸方向(つまり、筒軸方向)に間隔を空けて同軸上に配置された環状の第2嵌合壁40と、これら第1嵌合壁30及び第2嵌合壁40の内周縁部同士を連結させた環状の連結壁50と、を有する。この車体側嵌合体3Aは、その第1嵌合壁30と第2嵌合壁40と連結壁50とで囲まれた空間であり、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部が嵌め込まれる環状の嵌合溝60を有している(図6及び図7)。
第1嵌合壁30と第2嵌合壁40は、例えば、円環状又はオーバル環状(長円環状又は楕円環状)で且つ板状の壁体として形成される。第1嵌合壁30は、外周縁部と内周縁部とが軸上(つまり、筒軸上)で同じ位置に存在するものであってもよく、外周縁部に対して内周縁部が開口部3b側に存在するものであってもよい。一方、第2嵌合壁40は、外周縁部と内周縁部とが軸上(つまり、筒軸上)で同じ位置に存在するものとして形成される。連結壁50は、その第1嵌合壁30及び第2嵌合壁40の形状に合わせて、これら第1嵌合壁30及び第2嵌合壁40の内周縁部同士を連結させる円環状又はオーバル環状(長円環状又は楕円環状)で且つ板状の壁体として形成される。嵌合溝60は、これら第1嵌合壁30と第2嵌合壁40と連結壁50の形状に応じた円環状又はオーバル環状(長円環状又は楕円環状)の溝として形成される。
この例示では、車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1がオーバル形状(具体的には長円形状)に形成され、この貫通孔Pwb1の形状に合わせて車体側嵌合体3Aがオーバル筒状(具体的には長円筒状)に形成される(図1及び図2)。このため、この例示の接続壁10は、オーバル形状(具体的には長円形状)で且つ板状の壁体として形成されている。また、この例示の周壁20は、筒軸方向に対する直交断面形状がオーバル環形状(具体的には長円環形状)で且つその直交断面形状が筒軸上の各点で不均等なオーバル筒状(具体的には長円筒状)の壁体であり、開口部3b側にラッパ状に広がる錐台を成すものとして形成されている。そして、この例示の周壁20は、接続壁10側の端部の外周面形状が車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1よりも小さく、かつ、第1嵌合壁30の端部の外周面形状が車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1よりも大きくなるように形成されている。また、この例示の第1嵌合壁30は、オーバル環状(具体的には長円環状)で且つ板状の壁体であり、開口部3b側に向けて外周縁部から内周縁部へと窄まる逆錐台(周壁20とは逆向きの錐台形状)を成すものとして形成されている。一方、この例示の第2嵌合壁40は、オーバル環状(具体的には長円環状)で且つ板状の壁体であり、外周縁部と内周縁部とが軸上で同じ位置に存在するものとして形成されている。この例示では、第1嵌合壁30と第2嵌合壁40の内周縁部が各々同等の大きさの長円環状を成しているので、連結壁50がオーバル環状(具体的には長円環状)で且つ板状の壁体として形成されている。よって、この例示の嵌合溝60は、これら第1嵌合壁30と第2嵌合壁40と連結壁50の形状に応じたオーバル環状(具体的には長円環状)の溝として形成されている。この嵌合溝60には、その周方向に亘って、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部が嵌め込まれる。このように、この例示の車体側嵌合体3Aは、一端が接続壁10で塞がれ且つ他端が開口部3bとなるオーバル筒状(具体的には長円筒状)に形成されている。このため、この例示の車体側嵌合体3Aにおいては、筒軸方向に対する直交方向の内、或る1つの方向が長手方向となり、その筒軸方向と長手方向とに対する直交方向が短手方向となる。
本実施形態の車体側嵌合体3Aには、筒体2の筒内から開口部3b側に引き出されたハーネス本体Weを保持させる。そこで、この車体側嵌合体3Aは、そのハーネス本体Weを保持させるハーネス保持部4を有する(図1から図5)。ハーネス保持部4は、ハーネス本体Weを保持させるべく、接続壁10の内壁面12から開口部3b側に向け且つ開口部3bよりも突出させる(図5及び図6)。このハーネス保持部4は、内部空間3aにおけるハーネス本体Weの配索経路3cに沿うものとして形成される。このハーネス保持部4は、開口部3bよりも突出させた部分にて、内部空間3aの外に向けて開口部3bから引き出されたハーネス本体Weを保持する。例えば、このハーネス保持部4は、筒軸方向に沿う軸線を有する弧状で且つ内周面をハーネス本体Weの配索経路3cに向けた弾性変形可能な片体として形成されている。ハーネス本体Weは、そのハーネス保持部4の内周面の軸方向(つまり、筒軸方向)に沿って配置され、その状態でハーネス保持部4に外周面側から樹脂テープ(図示略)を幾重にも巻き付けて保持される。その樹脂テープは、ハーネス保持部4における開口部3bから飛び出ている部分に巻き付けられる。
この例示では、そのハーネス保持部4が2つ設けられている(図1から図5及び図7)。ここで示すハーネス保持部4は、車体側嵌合体3Aにおける筒軸方向に対する直交方向の一端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間及びその直交方向における他端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間に設けられている。ここでは、車体側嵌合体3Aの長手方向における一端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間及びその長手方向における他端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間に、ハーネス保持部4が1つずつ設けられている。この例示では、その2つのハーネス保持部4の間がハーネス保持部4におけるハーネス本体Weの配索経路となっており、この一対のハーネス保持部4でハーネス本体Weを挟み込んで保持させる。ハーネス本体Weは、その一対のハーネス保持部4のそれぞれの内周面の間に配置され、その状態で一対のハーネス保持部4に外周面側から樹脂テープを巻き付けていくことによって、この一対のハーネス保持部4に挟み込まれた状態で保持される。
本実施形態のグロメット1は、それぞれの嵌合体3のハーネス保持部4を介してハーネス本体Weに組み付けられた状態で、それぞれの嵌合体3が壁体Pwにおける貫通孔Pw1の周縁部に取り付けられる。例えば、このグロメット1については、筒体2を車体側パネルPwbの貫通孔Pwb1に挿通させ、その貫通孔Pwb1に車体側嵌合体3Aの接続壁10の外壁面11を対向配置させる(図1)。作業者は、車体側嵌合体3Aが車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に接触するよう筒体2を引っ張り、その接触の後も筒体2を引っ張り続けることで、車体側嵌合体3Aを弾性変形させながら、この車体側嵌合体3Aの嵌合溝60に車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部を嵌め込ませる。この車体側嵌合体3Aにおいては、筒体2が引っ張られると、周壁20における筒軸方向の途中の外周面が車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に引っ掛かり、筒体2が更に引っ張られることによって、その周縁部に引き摺られながら弾性変形していく。
ここで、その車体側嵌合体3Aにおいては、周壁20の外周面が車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に引っ掛かっているときに、作業者に引っ張られた筒体2からの力を受けて、接続壁10を外壁面11側に弾性変形させる(図8)。そして、この車体側嵌合体3Aにおいては、その接続壁10の弾性変形に伴って周壁20と第1嵌合壁30とが引っ張られるので、周壁20の外周面を車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に引き摺らせながら、周壁20と第1嵌合壁30とを内部空間3a側に弾性変形させる(図8)。この車体側嵌合体3Aにおいては、その弾性変形に伴って、周壁20と第1嵌合壁30の結合部70が車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部を乗り越えていく(図9)。この車体側嵌合体3Aにおいては、そのようにして結合部70が貫通孔Pwb1を通り抜けることによって、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部が嵌合溝60に嵌め込まれていく。
このように、車体側嵌合体3Aは、少なくとも周壁20と第1嵌合壁30を弾性変形させることによって、周壁20と第1嵌合壁30が貫通孔Pwb1を通り抜けることができるように形成される。そこで、車体側嵌合体3Aは、周壁20及び第1嵌合壁30の内周面よりも内側に、この周壁20及び第1嵌合壁30における内部空間3a側への弾性変形を可能にする空洞部3dを有している(図5及び図6)。その空洞部3dは、内部空間3aの一部として形成されている。
この空洞部3dは、貫通孔Pwb1を通り抜けることが可能な弾性変形(所望の弾性変形)を周壁20と第1嵌合壁30に行わせる形状と大きさのものとして形成される。そして、この空洞部3dは、周壁20及び第1嵌合壁30の周方向に亘って全面に形成されてもよく、所望の弾性変形が可能な範囲で周壁20及び第1嵌合壁30の周方向にて部分的に形成されてもよい。この例示では、後述するように内部空間3aに突起80が設けられているので、その突起80を除いた場所に空洞部3dが形成されている(図5)。具体的には、周壁20及び第1嵌合壁30の内周面よりも内側で、かつ、その周壁20及び第1嵌合壁30の周方向で長手方向における両端部を除いた場所に空洞部3dが形成されている。
周壁20は、そのような貫通孔Pwb1の通過に必要な弾性変形を行うことができるように、第1嵌合壁30との結合部70に向かうほど肉厚が薄くなるものとして形成されている(図6及び図7)。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、筒体2が作業者に引っ張られているときに、周壁20が内部空間3a側へと弾性変形し易くなるので、この周壁20の弾性変形につられて第1嵌合壁30も内部空間3a側へと弾性変形し易くなる。つまり、この車体側嵌合体3Aにおいては、筒体2を引っ張る力が小さくても、周壁20と第1嵌合壁30を内部空間3a側へと弾性変形させながら貫通孔Pwb1に通すことができる。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aを低い挿入力で車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込むことができる。
ここで、周壁20と第1嵌合壁30は、これらの間の結合部70で肉厚が最も薄くなるものとして形成されることが望ましい(図6及び図7)。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、結合部70が折れ曲がり易くなるなど、この結合部70についても弾性変形し易くなる。このため、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aを更に低い挿入力で車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込むことができる。
更に、この例示では、車体側嵌合体3Aがオーバル筒状(具体的には長円筒状)を成しているので、そして、後述するように周壁20の内周面における長手方向の両端部に突起80が繋がっているので、短手方向側よりも長手方向側で周壁20と第1嵌合壁30の内部空間3a側への弾性変形が起こり難くなっている。そこで、本実施形態の接続壁10の内壁面12には、長手方向における一端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間及び長手方向における他端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間に、短手方向に延びる切欠き12aが形成されている(図5及び図7)。その切欠き12aは、接続壁10の長手方向における切欠き12aよりも両端側の弾性変形又は傾倒動作を促進させるためのものである。
この例示の切欠き12aは、接続壁10の短手方向に沿って直線状に形成されている(図5)。ここでは、延在方向に対する直交断面が矩形の四角柱の切欠きとして形成されている。但し、切欠き12aは、延在方向に対する直交断面が三角形の三角柱(換言するならば、楔形)に形成されたものであってもよい。
車体側嵌合体3Aにおいては、そのような切欠き12aが設けられていない場合と比較して、筒体2が作業者に引っ張られているときに、それぞれの切欠き12aによって、接続壁10の長手方向における両端がより内部空間3a側に倒れていく(図10)。このため、この車体側嵌合体3Aにおいては、その接続壁10の傾きにつられて、それぞれの切欠き12aが設けられていない場合よりも、周壁20と第1嵌合壁30の長手方向における両端が内部空間3a側に倒れていく。よって、この車体側嵌合体3Aにおいて、短手方向側では、周壁20と第1嵌合壁30の内部空間3a側への弾性変形によって、周壁20と第1嵌合壁30を貫通孔Pwb1に通すことができる。これに対して、長手方向側では、周壁20と第1嵌合壁30の内部空間3a側への弾性変形及び切欠き12aによる周壁20と第1嵌合壁30の内部空間3a側への傾倒動作によって、周壁20と第1嵌合壁30を貫通孔Pwb1に通すことができる。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aを周方向に亘って低い挿入力で車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込むことができる。
ここで、切欠き12aは、その延在方向における両端を前記周壁の内周面まで延在させることが望ましい(図5)。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、それぞれの切欠き12aによって、接続壁10の長手方向におけるそれぞれの切欠き12aよりも両端側全体を内部空間3a側に倒すことができるので、周壁20と第1嵌合壁30の長手方向における両端側が内部空間3a側に倒れ易くなる。
また、一方の切欠き12aは、接続壁10の長手方向における一端と一方のハーネス保持部4との間に設けている(図5及び図7)。そして、他方の切欠き12aは、接続壁10の長手方向における他端と他方のハーネス保持部4との間に設けている(図5及び図7)。換言するならば、ハーネス保持部4は、接続壁10における一方の切欠き12aとハーネス本体Weの配索経路3cとの間及び接続壁10における他方の切欠き12aとハーネス本体Weの配索経路3cとの間に各々設けられている。
切欠き12aは、そのハーネス保持部4における接続壁10の内壁面12側の根元に連接させる(図7)。この例示の切欠き12aは、ハーネス保持部4における接続壁10の内壁面12側の根元に筒軸方向に沿って連接させている。つまり、この例示では、切欠き12aにおけるハーネス保持部4側の一方の側壁の一部とハーネス保持部4の外周面の一部とが筒軸方向に沿って連なっている。ここでは、その切欠き12aにおける一方の側壁の中央部分とハーネス保持部4の外周面の中央部分とが筒軸方向に沿って連なっている。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、切欠き12aにより傾倒した接続壁10の長手方向側の端部の移動量が最大になるので、周壁20と第1嵌合壁30の長手方向における両端側の内部空間3a側に最も大きく弾性変形させることができる。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aの挿入力を更に低くすることができる。
このように、本実施形態の車体側嵌合体3Aは、貫通孔Pwb1への低挿入力化を図るべく、周壁20や第1嵌合壁30を弾性変形し易くしている。裏を返せば、この車体側嵌合体3Aは、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込んだ後も、周壁20や第1嵌合壁30が弾性変形し易くなっているといえる。
そこで、この車体側嵌合体3Aは、結合部70の折り曲げに伴い周壁20の内周面と第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方の内周面とを当接させることが可能で、かつ、周壁20で第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方を嵌合溝60に向けて押動させることが可能なものとして形成されることが望ましい(図11)。この車体側嵌合体3Aは、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、例えば、筒体2を開口部3b側に押し込んでいくことによって、そのような周壁20で第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方を嵌合溝60に向けて押動させることが可能な形状にする。従って、この車体側嵌合体3Aにおいては、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、かかる形状にすることで、周壁20によって、その周縁部に第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方が押し付けられる。この車体側嵌合体3Aにおいては、その周縁部への周壁20を介した第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方からの押付力が嵌合状態の保持力として利用される。よって、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込む際の車体側嵌合体3Aの低挿入力化を図りつつ、その嵌合状態の保持力を確保することができる。
また、本実施形態のグロメット1は、ハーネス本体Weの配索経路3cを間に挟んで接続壁10の内壁面12から開口部3b側に向けて突出させた一対の突起80(図2、図4、図5及び図7)を車体側嵌合体3Aに設け、この一対の突起80によって、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に対しての嵌合状態の保持力を確保してもよい。このグロメット1は、この一対の突起80も合わせて一体となって成形されている。
その突起80は、開口部3bまで突出させる(図7)。つまり、この突起80においては、その突出方向における先端(つまり、自由端)が開口部3bに設けられている。よって、この突起80は、ハーネス本体Weの配索経路3cと第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面(つまり、第1嵌合壁30と連結壁50と第2嵌合壁40のそれぞれの内周面)とに対向配置される。このため、この突起80は、ハーネス本体Weの配索経路3cに対向配置された第1壁面81と、第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面に対向配置された第2壁面82と、を有する(図5及び図7)。
その突起80は、接続壁10が内部空間3a側(つまり、内壁面12側)へと弾性変形したときに嵌合溝60側に傾倒させ(図12)、接続壁10がこれとは逆側(つまり、外壁面11側)へと弾性変形したときにハーネス本体Weの配索経路3c側に傾倒させる(図10)ものとして形成される。
ここで、この突起80は、接続壁10における内壁面12側への弾性変形に伴い嵌合溝60側へと傾倒した際に、第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方の内周面に当接させることが可能で、かつ、この第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方を嵌合溝60に向けて押動させることが可能なものとして形成される(図12)。車体側嵌合体3Aにおいては、例えば、先に示した短手方向側における図11の形状となった際に、接続壁10が内壁面12側に弾性変形し、これに伴って突起80が嵌合溝60側に傾倒した形状となる。突起80においては、嵌合溝60側へと傾倒させられた際に、第2壁面82を第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方の内周面に当接させ、これにより、第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方を嵌合溝60に向けて押動させる。よって、この車体側嵌合体3Aにおいては、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、かかる形状にすることで、突起80によって、その周縁部に第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方が押し付けられる。この車体側嵌合体3Aにおいては、その周縁部への突起80を介した第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方からの押付力が嵌合状態の保持力として利用される。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aが車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、その周縁部に対する車体側嵌合体3Aの嵌合後の保持力を確保することができる。
尚、車体側嵌合体3Aの長手方向側においては、それぞれの突起80が第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方の内周面に係止されるので、短手方向側よりも、接続壁10の内壁面12側への弾性変形量が少ない。
更に、この車体側嵌合体3Aは、荷重を掛けていないときの形状において、突起80と第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方との間の距離を狭めておくことによって、突起80が嵌合溝60側へと傾倒した際に、この突起80による第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方に対する嵌合溝60側への押動力を増やすことができる。つまり、この車体側嵌合体3Aにおいては、予め突起80と第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方との間の距離を狭めた形状に形成しておくことによって、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、その周縁部への突起80を介した第1嵌合壁30及び連結壁50の内の少なくとも一方からの押付力を増加させることができる。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aが車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれた後、その周縁部に対する車体側嵌合体3Aの嵌合後の保持力を増加させることもできる。
また、この突起80は、接続壁10における外壁面11側への弾性変形に伴いハーネス本体Weの配索経路3c側へと傾倒した際に、周壁20及び第1嵌合壁30における内部空間3a側への弾性変形を阻害させぬものとして形成されている(図10及び図13)。つまり、この突起80は、車体側嵌合体3Aを車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込むべく筒体2が引っ張られた際、周壁20及び第1嵌合壁30における内部空間3a側への弾性変形を邪魔せずに、周壁20及び第1嵌合壁30を貫通孔Pwb1に通させることができるものとして形成されている。従って、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHにおいては、車体側嵌合体3Aに突起80を設けたとしても、この車体側嵌合体3Aを車体側パネルPwbに組み付ける際の挿入力の増加を抑えることができる。このように、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHは、車体側嵌合体3Aを車体側パネルPwbに組み付ける際の挿入力の増加を抑えつつ嵌合後の車体側嵌合体3Aの保持力を確保することができる。
例えば、この突起80は、接続壁10における外壁面11側への弾性変形に伴いハーネス本体Weの配索経路3c側へと傾倒した際に、ハーネス本体Weの配索経路3cに交差させぬ形状のものとして形成される。具体的に、突起80は、接続壁10における外壁面11側への弾性変形に伴いハーネス本体Weの配索経路3c側へと傾倒した際に、ハーネス保持部4の外周面又はハーネス本体Weに当接させぬ形状のものとして形成される。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、突起80を設けたとしても、周壁20及び第1嵌合壁30を内部空間3a側に弾性変形させることができるので、貫通孔Pwb1への挿入力の増加が抑えられる。
また、この車体側嵌合体3Aは、接続壁10における外壁面11側への弾性変形に伴いハーネス本体Weの配索経路3c側へと傾倒した際に、突起80がハーネス保持部4の外周面又はハーネス本体Weに当接したとしても、周壁20及び第1嵌合壁30における内部空間3a側への弾性変形を阻害させぬものとして形成されたものであってもよい。例えば、ここで示す車体側嵌合体3Aにおいて、ハーネス保持部4は、その傾倒した突起80が外周面に当接した後、筒体2が更に引っ張り続けられることによって、弾性変形しながらハーネス本体Weと共に筒体2の筒内に一旦引き摺り込まれて突起80から離れるように形成されている(図13)。これにより、車体側嵌合体3Aにおいては、突起80を設けたとしても、周壁20及び第1嵌合壁30を内部空間3a側に弾性変形させることができるので、貫通孔Pwb1への挿入力の増加が抑えられる。尚、ここで示すハーネス保持部4は、車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部が嵌合溝60に嵌め込まれた後、筒体2に対する引っ張り力を開放させることによって、弾性変形に伴い溜められた弾発力で元の形状に戻りながら筒体2の筒内から飛び出させるように形成されている。
具体的に、この例示の突起80は、接続壁10の内壁面12から周壁20の内周面まで続く固定端を有している(図7)。このため、この例示の車体側嵌合体3Aにおいては、接続壁10の弾性変形だけでなく、周壁20の弾性変形にも連動して突起80を傾倒させることができる(図10、図12及び図13)。この例示の車体側嵌合体3Aにおいては、見方を変えると、突起80の傾倒に連動して、周壁20を弾性変形させることができる。
また、この例示の車体側嵌合体3Aにおいては、嵌合溝60が車体側パネルPwbにおける貫通孔Pwb1の周縁部に嵌め込まれているときに、その嵌合状態における短手方向側での保持力を先の図11に示す形状で確保し、その嵌合状態における長手方向側での保持力を突起80で確保する(図12)。そこで、この例示の突起80は、接続壁10の内壁面12における長手方向の一端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間及び接続壁10の内壁面12における長手方向の他端とハーネス本体Weの配索経路3cとの間から各々突出させる(図7)。
この例示の一方の突起80は、一方のハーネス保持部4の外周面と第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面における長手方向の一端とに対向配置させる(図7)。この一方の突起80においては、第1壁面81が一方のハーネス保持部4の外周面に対向配置され、第2壁面82が第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面における長手方向の一端に対向配置されている。また、この例示の他方の突起80は、他方のハーネス保持部4の外周面と第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面における長手方向の一端とに対向配置される(図7)。この他方の突起80においては、第1壁面81が他方のハーネス保持部4の外周面に対向配置され、第2壁面82が第1嵌合壁30から第2嵌合壁40までの内周面における長手方向の他端に対向配置されている。
それぞれの突起80の第1壁面81は、各々、ハーネス保持部4の外周面に対向配置させ、かつ、接続壁10の内壁面12から筒軸方向に沿って開口部3b側に延在させる(図7)。この例示の第1壁面81は、矩形に形成され、かつ、開口部3bまで延在させている。
また、それぞれの突起80の第2壁面82は、周壁20の内周面から開口部3b側に向け且つハーネス本体Weの配索経路3c側に向けて延在させることで、筒軸方向に対して傾斜させている(図7)。一方の突起80の第2壁面82は、周壁20の内周面から開口部3b側に向け且つ一方のハーネス保持部4の外周面に向けて延在させる。他方の突起80の第2壁面82は、周壁20の内周面から開口部3b側に向け且つ他方のハーネス保持部4の外周面に向けて延在させる。この例示の第2壁面82は、矩形に形成され、かつ、開口部3bまで延在させている。
この例示の突起80は、短手方向における一端と他端とに、この短手方向に対する直交平面としての第1側壁面83と第2側壁面84とを有する(図5)。この例示の突起80は、その第1側壁面83と第2側壁面84との間を厚さ方向とする板状に形成されている。
ここで、接続壁10の内壁面12には、一方の突起80とハーネス本体Weの配索経路3cとの間及び他方の突起80とハーネス本体Weの配索経路3cとの間に、その一対の突起80の対向配置方向と軸方向(軸線方向)とに対する直交方向に延びる切欠きが形成されることが望ましい。その切欠きは、突起80におけるハーネス本体Weの配索経路3c側への傾倒動作を促進させるためのものであり、先に示した切欠き12aとは別のものであってもよく、その切欠き12aと同じものであってもよい。この例示では、先に示した切欠き12aとの共用化を図っている。
その切欠き12aは、突起80における接続壁10の内壁面12側の根元に連接させる(図7)。この例示の切欠き12aは、突起80の第1壁面81における接続壁10の内壁面12側の根元に筒軸方向に沿って連接させている。つまり、この例示では、切欠き12aにおける突起80側の他方の側壁の一部と突起80の第1壁面81の一部とが筒軸方向に沿って連なっている。ここでは、その切欠き12aにおける他方の側壁の中央部分と突起80の第1壁面81とが筒軸方向に沿って連なっている。従って、車体側嵌合体3Aにおいては、それぞれの切欠き12aによって、それぞれの突起80をハーネス本体Weの配索経路3c側へと容易に傾倒させることができる。
以上示したように、本実施形態のグロメット1及びワイヤハーネスWHは、壁体Pwにおける貫通孔Pw1の周縁部に嵌め込む際の嵌合体3の低挿入力化を図ることができる。そして、このグロメット1及びワイヤハーネスWHは、そのような嵌合体3の低挿入力化を図りつつ、壁体Pwにおける貫通孔Pw1の周縁部に対する嵌合体3の嵌合状態の保持力を確保することができる。