JP7368041B1 - 欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法 - Google Patents

欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7368041B1
JP7368041B1 JP2023542017A JP2023542017A JP7368041B1 JP 7368041 B1 JP7368041 B1 JP 7368041B1 JP 2023542017 A JP2023542017 A JP 2023542017A JP 2023542017 A JP2023542017 A JP 2023542017A JP 7368041 B1 JP7368041 B1 JP 7368041B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silicon carbide
carbide substrate
ultraviolet light
bpd
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023542017A
Other languages
English (en)
Inventor
和美 高野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
INTERNATIONAL TEST & ENGINEERING SERVICES CO., LTD.
Original Assignee
INTERNATIONAL TEST & ENGINEERING SERVICES CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by INTERNATIONAL TEST & ENGINEERING SERVICES CO., LTD. filed Critical INTERNATIONAL TEST & ENGINEERING SERVICES CO., LTD.
Application granted granted Critical
Publication of JP7368041B1 publication Critical patent/JP7368041B1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Testing Or Measuring Of Semiconductors Or The Like (AREA)

Abstract

基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDをPL検査によって、短時間で検出することができる欠陥検査方法を提供する。基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)を拡張させる第一紫外光L1を、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100の全体に照射する照射工程と、第一紫外光L1よりも低照度の第二紫外光L2を、炭化珪素基板100の全体に照射して炭化珪素基板100をPL発光させることにより可視化する可視化工程と、PL発光している炭化珪素基板100を撮影する撮影工程と、撮影工程で撮影されたPL発光画像において、ショックレー型積層欠陥(SSF)の欠陥像が生じている領域に貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定する判定工程とを包含する。

Description

本発明は、基板層、バッファ層、及びドリフト層を有する炭化珪素基板において、基板層とバッファ層との界面で貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)を検出する欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法に関する。
炭化珪素は、ワイドギャップ半導体であり、パワーデバイス分野において近年注目されている材料である。通常、パワーデバイスに用いる炭化珪素基板は、基板層上にドリフト層を結晶成長させるエピタキシャル成長法により製造されるが、炭素原子と珪素原子との原子半径の差が大きいため、同じワイドギャップ半導体である窒化ガリウムと比較して、ドリフト層に結晶欠陥を生じやすい。結晶欠陥は、デバイス特性に影響を及ぼす順方向通電劣化の原因となるため、パワーデバイスの製造において問題となる。
パワーデバイスにおける順方向通電劣化の発生は、ドリフト層中の基底面転位(以下、「BPD」と称する。)においてキャリアが捕捉され、捕捉されたキャリアの再結合エネルギーによりショックレー型積層欠陥(以下、「SSF」と称する。)が拡張することが原因であると考えられる。そこで、エピタキシャル成長法による成膜工程においてドリフト層におけるBPDの形成を抑制する技術が開発されている。例えば、オフ角を4°に設定することで、基板層のBPDからエピタキシャル成長法により成膜されたドリフト層に継承される結晶欠陥の95%以上を、貫通刃状転位(以下、「TED」と称する。)に構造変換させることができる。
パワーデバイスに用いる炭化珪素基板では、ドリフト層におけるSSFの拡張を抑えるために、基板層とドリフト層との界面にキャリア寿命の短いバッファ層を挿入して、通電時にドリフト層へ注入されるキャリア密度を減少させている。
しかしながら、車載用途のパワーデバイスでは、特殊な状況、例えば脱輪時等により定格電流を超えた大電流が通電することがあり、このような場合、バッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換したBPD、及び基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDからもSSFが拡張することがある。また、電流密度が小さくとも、長期にわたる使用によってSSFが拡張することがある。そのため、車載用途でのパワーデバイスのさらなる安定性向上のためには、炭化珪素基板の検査において、ドリフト層に継承されたBPDだけではなく、バッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換したBPD、及び基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDも検出することが望まれる。
炭化珪素基板における結晶欠陥を検出する手法として、フォトルミネッセンス(以下、「PL」と称する。)を利用した欠陥検査方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される欠陥検査方法は、炭化珪素基板全体に紫外光を照射し、BPDが存在する候補領域を選出し、当該候補領域に高照度の紫外光を照射することで、ドリフト層のBPD、及びTEDに変換したバッファ層のBPDからSSFを拡張させ、SSFの欠陥像が生じた候補領域を、BPDが存在する領域として検出するものである。特許文献1の欠陥検査方法では、高照度の紫外光の照射により生じたキャリアが、ドリフト層に存在するBPD、及びバッファ層とドリフト層との界面においてTEDに変換したBPDに捕捉されてSSFが拡張する。その結果、ドリフト層のBPDだけではなく、TEDに変換したバッファ層のBPDをPL検査によって検出することができる。
国際公開第2021/177127号
しかしながら、エピタキシャル成長法において、BPDからTEDへの変換位置は、上述したように、バッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換する場合と、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換する場合とがある。ここで、ドリフト層のBPD、及びバッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換したBPDから拡張したSSFの形状は三角形となるが、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDから拡張したSSFの形状は長く伸びた帯状となる。したがって、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDから拡張したSSFの方が、バッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換したBPDから拡張したSSFより欠陥の面積が大きくなり、製品不良の原因となり易い。
この点に関し、特許文献1の欠陥検査方法は、ドリフト層に存在するBPD、及びバッファ層とドリフト層との界面でTEDに変換したBPDを検査対象とするものであり、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDの検査については想定されていない。また、特許文献1の欠陥検査方法は、候補領域を選出し、候補領域にのみ高照度の紫外光を照射し、BPDからSSFを拡張させているため、工程数が多く、欠陥検査に時間がかかるという問題がある。炭化珪素基板は、近年の製造技術の改良により大口径化を果たしており、大口径の炭化珪素基板に特許文献1の欠陥検査方法を適用した場合、検査時間の問題はさらに顕著なものとなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDをPL検査によって、短時間で検出することができる欠陥検査方法、及び欠陥検査装置を提供することを目的とする。また、本発明の欠陥検査方法によって検査した炭化珪素基板から炭化珪素チップを製造する炭化珪素チップの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明にかかる欠陥検査方法の特徴構成は、
基板層、バッファ層、及びドリフト層を有する炭化珪素基板において、前記基板層と前記バッファ層との界面で貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)を検出する欠陥検査方法であって、
基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)を拡張させる第一紫外光を、少なくとも前記基板層と前記バッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、前記炭化珪素基板の全体に照射する照射工程と、
前記第一紫外光よりも低照度の第二紫外光を、前記炭化珪素基板の全体に照射して当該炭化珪素基板をPL発光させることにより可視化する可視化工程と、
PL発光している前記炭化珪素基板を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影されたPL発光画像において、ショックレー型積層欠陥(SSF)の欠陥像が生じている領域に貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定する判定工程と
を包含することにある。
本構成の欠陥検査方法によれば、照射工程により少なくとも基板層とバッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板の全体に第一紫外光を照射するため、第一紫外光の照射により生じたキャリアが、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDに捕捉され、BPDがTEDに変換した変換点からSSFを拡張させることができる。次いで、可視化工程により第二紫外光を炭化珪素基板の全体に照射することで、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDをPL検査によって検出することができる。また、照射工程では、第一紫外光を炭化珪素基板全体に紫外光を照射してSSFを拡張させるため、工程数が少なくなり、短時間で欠陥を検出することができる。
本発明にかかる欠陥検査方法において、
前記照射工程において、前記炭化珪素基板を100~200℃に加熱した状態で、前記第一紫外光を照射することが好ましい。
本構成の欠陥検査方法によれば、炭化珪素基板を100~200℃に加熱した状態で、第一紫外光を照射することで、キャリアの発生効率が向上し、短時間でSSFを拡張させることができ、検査時間を短縮することができる。また、第一紫外光の照射時の温度を、自動車のエンジンルーム等での使用温度(100~200℃)として想定される温度に設定することで、車載用パワーデバイスにおいて、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDのうちSSFが拡張する虞のあるBPDを適切に検出することができる。
本発明にかかる欠陥検査方法において、
前記第一紫外光は、波長が325~365nmであり、UV照度が10W/cm以上であることが好ましい。
本構成の欠陥検査方法によれば、第一紫外光は、波長が325~365nmであり、UV照度が10W/cm以上であるため、基板層に十分なキャリアを発生させ、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDからSSFを適切に拡張させることができる。また、波長とUV照度とを適切な範囲に設定することで、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDのうちSSFが拡張する虞のあるBPDを適切に検出することができる。
本発明にかかる欠陥検査方法において、
前記第一紫外光は、中心部の照度が相対的に高く、周縁部の照度が相対的に低い同心円状の照度分布を有する光束であり、当該光束の照度が所定以上となる円の領域が連続するように一定間隔でずらしながらパルス照射されることが好ましい。
本構成の欠陥検査方法によれば、光束の中心部ほど照度が高い第一紫外光を炭化珪素基板に照射するにあたり、照度が所定以上となる円の領域が連続するように一定間隔でずらしながらパルス照射されるため、SSFの拡張に必要な照度の第一紫外光を、その照度分布を平均化しながら炭化珪素基板全体に対して照射することができ、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDからSSFを均一に拡張させることができる。
本発明にかかる欠陥検査方法において、
前記照射工程において、前記第一紫外光を、ガルバノスキャナを用いて照射することが好ましい。
本構成の欠陥検査方法によれば、第一紫外光を、ガルバノスキャナを用いて照射するため、炭化珪素基板に第一紫外光を高精度かつ均一に照射することができる。
本発明にかかる欠陥検査方法において、
前記基板層と前記バッファ層との界面に存在する基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)が拡張した炭化珪素基板を加熱することにより、前記ショックレー型積層欠陥(SSF)を収縮させる収縮工程をさらに包含することが好ましい。
本構成の欠陥検査方法によれば、基板層とバッファ層との界面に存在するBPDがTEDに変換した変換点から拡張させたSSFを加熱により収縮させることで、検査後の炭化珪素基板をそのまま製品化することができる。したがって、本構成の欠陥検査方法によれば、パワーデバイスの製造において、全数検査が可能となる。
上記課題を解決するための本発明にかかる欠陥検査装置の特徴構成は、
基板層、バッファ層、及びドリフト層を有する炭化珪素基板において、前記基板層と前記バッファ層との界面で貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)を検出する欠陥検査装置であって、
基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)を拡張させる第一紫外光を、少なくとも前記基板層と前記バッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、前記炭化珪素基板の全体に照射する欠陥拡張用照射手段と、
前記第一紫外光よりも低照度の第二紫外光を、前記炭化珪素基板の全体に照射して当該炭化珪素基板をPL発光させる可視化用照射手段と、
PL発光している前記炭化珪素基板を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影されたPL発光画像において、ショックレー型積層欠陥(SSF)の欠陥像が生じている領域に貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定する判定手段と
を備えることにある。
本構成の欠陥検査装置によれば、欠陥拡張用照射手段により少なくとも基板層とバッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板の全体に第一紫外光を照射するため、第一紫外光の照射により生じたキャリアが、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDに捕捉され、BPDがTEDに変換した変換点からSSFを拡張させることができる。次いで、可視化用照射手段により第二紫外光を炭化珪素基板の全体に照射することで、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDをPL検査によって検出することができる。また、欠陥拡張用照射手段は、第一紫外光を炭化珪素基板全体に照射してSSFを拡張させるため、工程数が少なくなり、短時間で欠陥を検出することができる。
上記課題を解決するための本発明にかかる炭化珪素チップの製造方法の特徴構成は、
上記に記載の欠陥検査方法によって前記ショックレー型積層欠陥(SSF)を収縮させた炭化珪素基板から炭化珪素チップを製造する炭化珪素チップの製造方法であって、
前記判定工程により貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定された領域を前記炭化珪素基板の全体に対してマッピングしたマッピングデータを作成するマッピング工程と、
前記炭化珪素基板上に、回路を形成する回路形成工程と、
前記炭化珪素基板を複数のチップに切断する切断工程と、
前記マッピングデータに基づき、貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定された領域を含む不良チップを除外する除外工程と
を包含することにある。
本構成の炭化珪素チップの製造方法によれば、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDが存在すると判定された領域を炭化珪素基板の全体に対してマッピングし、回路形成工程及び切断工程を経て、マッピングデータに基づき、当該領域を含む不良チップを除外するため、順方向通電劣化の原因となる結晶欠陥を含まず、安定性が高い炭化珪素チップを製造することができる。
図1は、炭化珪素基板を模式的に示す説明図であり、(a)は炭化珪素基板の断面図、(b)は基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDからのSSFの拡張を示す斜視図である。 図2は、基板層とバッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で紫外光を照射した炭化珪素基板に対してKOHエッチングを行った顕微鏡写真であり、(a)はドリフト層表面の写真、(b)はバッファ層とドリフト層とを研磨により取り除いた基板層表面の写真である。 図3は、本発明の欠陥検査装置の概略構成図である。 図4は、本発明の第一紫外光の説明図であり、(a)は照度分布の説明図、(b)はパルス照射の説明図である。 図5は、 本発明の欠陥検査方法、及び炭化珪素チップの製造方法の手順を示すフローチャー卜である。 図6は、 異なる温度条件下で第一紫外光を照射後、PL発光させた炭化珪素基板の顕微鏡写真(PL発光画像)である。
以下、本発明の欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法に関する実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることは意図しない。なお、図1に示される炭化珪素基板の層構造の厚み関係は、説明の容易化のため適宜誇張又は簡略化しており、実際の各層の厚みの大小関係を厳密に反映したものではない。
〔炭化珪素基板〕
本発明の欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法を説明する前に、パワーデバイスの製造に用いる炭化珪素基板について説明する。図1は、炭化珪素基板100を模式的に示す説明図であり、(a)は炭化珪素基板100の断面図、(b)は基板層101とバッファ層102との界面IでTEDに変換したBPDからのSSFの拡張を示す斜視図である。図1(b)では、炭化珪素基板100の一部を切り欠いて基底面に平行な平面を図示している。なお、基底面とは結晶構造を特定する際に用いるc軸に垂直な面である。また、図1(b)では、切り欠いた領域に存在したTEDを破線により図示している。
炭化珪素基板100は、基板層101、バッファ層102、及びドリフト層103が積層された構造を有する。基板層101は、エピタキシャル成長法による薄膜製造のための下地となる炭化珪素単結晶(4H-SiC)の基板である。バッファ層102、及びドリフト層103は、エピタキシャル成長法により基板層101上に堆積された炭化珪素単結晶(4H-SiC)からなる薄膜である。バッファ層102は、窒素、バナジウム等の不純物が高濃度にドープされており、パワーデバイスにおいてドリフト層103への小数キャリアの到達を抑制するよう機能する。ドリフト層103は、不純物がバッファ層102よりも低濃度にドープされており、SiC-MOSFETのドリフト層103として機能する。
炭化珪素基板100では、基板層101とバッファ層102との界面IでTEDに変換したBPD(以下、「潜在BPD」と称する。)は、基板層101におけるキャリア寿命が短いため、炭化珪素基板100に励起光が照射されてもPL発光しない。
炭化珪素基板100を用いて製造されたパワーデバイスにおいて順方向通電劣化が発生するメカニズムは、通電により生じたキャリアがBPDに捕捉されて再結合することで、再結合エネルギーによりBPDからSSFが拡張し、デバイスの特性が変化するというものである。このとき、ドリフト層103のBPD、バッファ層102とドリフト層103との界面でTEDに変換したBPD、及び潜在BPDから拡張したSSFは、基底面と平行に形成されたBPDから基底面と平行な平面に沿って拡張し、三角形状、又は帯状となる。基板層101中の潜在BPDから拡張したSSFは、図1(b)に矢印で示すように、長く伸びた帯状となり、三角形状のSSFよりも面積が大きくなるため、パワーデバイスに与える影響も大きくなる。
ここで、基板層101中の潜在BPD自体は、炭化珪素基板100に励起光が照射されてもPL発光しないが、潜在BPDから拡張したSSFは、励起光の照射によりPL発光する。このことから、PL発光を撮影する前に、基板層101中の潜在BPDからSSFを拡張させておき、PL発光を撮影した画像(以下、「PL発光画像」と称する。)において帯状のSSFの欠陥像を抽出することで、パワーデバイスに大電流が通電したときに順方向通電劣化が生じる虞のある潜在BPDが存在する領域を検出することが可能になると考えられる。そこで、パワーデバイスを製造する前のウェハ等の段階で炭化珪素基板100をPL検査するために、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100の全体に紫外光を照射することにより、潜在BPDからSSFを拡張させることが可能であるかを確認するために、化学エッチングを行った。
図2は、基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で紫外光を照射した炭化珪素基板100に対してKOHエッチングを行った顕微鏡写真であり、(a)はドリフト層表面の写真、(b)はバッファ層とドリフト層とを研磨により取り除いた基板層表面の写真である。溶融水酸化カリウム(KOH)中に炭化珪素基板100を浸漬すると、炭化珪素基板100の表面がアルカリにより侵食されるが、転位等の結晶欠陥は、原子配列が乱れている領域であるため、周囲に比べて化学的に活性度が高く、正常な結晶の部分よりも速く浸食されて、転位芯の部分から選択的にエッチングされ、エッチピットと呼ばれるエッチングされた窪みが形成される。このエッチピットの形状や大きさにより、結晶欠陥の種類を検出することができる。図2(a)に示すように、基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で紫外光を照射した炭化珪素基板100に対してKOHエッチングを行うことで、ドリフト層103の表面にTEDと、拡張されたSSFとが観察された。ここで、バッファ層102とドリフト層103とを研磨により取り除いたところ、図2(b)に示すように、基板層101の表面にTEDへの変換点となるBPDが観察された。このことから、基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100に紫外光を照射したことにより、基板層101とバッファ層102との界面IでTEDに変換したBPD(すなわち、潜在BPD)からSSFが拡張したと考えられる。
このような知見に基づき、本発明者は、パワーデバイスを製造する前のウェハ等の段階において、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100の全体に紫外光を照射することにより、潜在BPDを検出することができる欠陥検査方法、及び欠陥検査装置を開発した。
〔欠陥検査装置〕
図3は、本発明の欠陥検査装置1の概略構成図である。欠陥検査装置1は、半導体に励起光を照射したときに発生するPL光を利用して載置台6に載置された炭化珪素基板100を検査する装置である。図3に示すように、欠陥検査装置1は、欠陥拡張用照射手段2、可視化用照射手段3、撮影手段4、及び判定手段5を備えている。欠陥拡張用照射手段2、可視化用照射手段3、撮影手段4、及び判定手段5は、制御手段7によって夫々の動作が制御される。以下、欠陥検査装置1の各構成について詳細に説明する。
<欠陥拡張用照射手段>
欠陥拡張用照射手段2は、BPDがTEDに変換した変換点からSSFを拡張させる第一紫外光L1を、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100の全体に照射する手段である。第一紫外光L1の波長は、325~365nmが好ましく、355nmがより好ましい。第一紫外光L1のUV照度は、10W/cm以上が好ましく、100W/cm以上がより好ましい。第一紫外光L1の波長が325~365nmであり、UV照度が10W/cm以上であることにより、第一紫外光L1は、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達するため、基板層101にキャリアを発生させ、潜在BPDからSSFを拡張させることができる。なお、第一紫外光L1のUV照度が10W/cmより小さい場合、SSFの拡張速度が遅くなり、パワーデバイスの製造プロセスにおいて望まれる迅速な検査を行うことができない虞がある。このように、波長とUV照度とを適切な範囲に設定することで、BPDのうちSSFが拡張する虞のある潜在BPDを適切に検出することができる。なお、第一紫外光L1は、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度であればその種類は限定されず、例えば、He-Cdレーザー、YAGレーザー、InGaNレーザー等が挙げられる。これらの中でも、YAGレーザーを用いることが好ましい。
図4は、本発明の第一紫外光L1の説明図であり、(a)は照度分布の説明図、(b)はパルス照射の説明図である。第一紫外光L1において、光束の輪郭を破線、光束のうち所定以上の照度を有する部分の輪郭を実線で示している。この所定以上の照度を有する部分とは、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで第一紫外光L1が到達するUV照度が10W/cm以上の領域である。図4(a)に示すように、第一紫外光L1は、中心部Oの照度が相対的に高く、周縁部の照度が相対的に低い同心円状の照度分布を有する光束であるため、第一紫外光L1の周縁部(実践と破線とで挟まれた領域)は、潜在BPDからSSFを拡張させることに寄与しない。そこで、図4(b)に示すように、第一紫外光L1は、当該光束の照度が所定以上となる円の領域が連続するように一定間隔でずらしながらパルス照射されることが好ましい。これにより、SSFの拡張に必要な照度の第一紫外光L1を、その照度分布を平均化しながら炭化珪素基板100全体に対して照射することができ、潜在BPDからSSFを均一に拡張させることができる。第一紫外光L1のパルス照射は、1パルスあたりの照射時間を10~15nsec程度、パルス照射間隔を10msec以上とすることが好ましい。第一紫外光L1の移動速度は、20~50cm/sが好ましい。
第一紫外光L1は、ガルバノスキャナを用いて照射されることが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、欠陥拡張用照射手段2は、光源21、集光部22、及びガルバノスキャナ23を含む。ガルバノスキャナ23は、X軸ガルバノミラー23x、Y軸ガルバノミラー23y、並びにX軸ガルバノミラー23x及びY軸ガルバノミラー23yを回転させるアクチュエータ(図示せず)を有する。光源21は、第一紫外光L1を生成する。集光部22は、光源21より出力された第一紫外光L1を集光し、所望のスポット径に調整する。ガルバノスキャナ23は、集光部22から出力された第一紫外光L1の照射方向を変えながら、第一紫外光L1を炭化珪素基板100に照射する。このように、欠陥拡張用照射手段2は、第一紫外光L1を、ガルバノスキャナ23を用いて照射するため、炭化珪素基板100に第一紫外光L1を高精度かつ均一に照射することができる。その結果、第一紫外光L1の照射により炭化珪素基板100に生じたキャリアは、潜在BPDに捕捉され、BPDがTEDに変換した変換点からSSFを拡張させる。
<可視化用照射手段>
可視化用照射手段3は、第一紫外光L1よりも低照度の第二紫外光L2を、炭化珪素基板100の全体に照射して炭化珪素基板100をPL発光させる手段である。第二紫外光L2のUV照度は、1W/cm以下が好ましい。第二紫外光L2の波長は、365nm以下が好ましい。第二紫外光L2は、炭化珪素基板100を励起し、PL発光させる。可視化用照射手段3により第二紫外光L2を炭化珪素基板100の全体に照射することで、拡張されたSSFからPL光L3が発光し、潜在BPDを検出することができる。第二紫外光L2は、第一紫外光L1よりも低照度であり、光源には、例えば、紫外線レーザー、水銀キセノンランプ等を用いることができる。上記の照射条件であれば、BPDがTEDに変換した変換点からこれ以上SSFを拡張させることなく、炭化珪素基板100が励起され、PL光L3を発光させることができる。
<撮影手段>
撮影手段4は、PL発光している炭化珪素基板100を撮影する手段である。撮影手段4は、CCD(Charged-coupled devices)、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)等の固体撮像素子を二次元アレイ状に配列したイメージセンサーを有し、撮影手段4への入射光を、イメージセンサーで検知するデジタルカメラである。撮影手段4は、炭化珪素基板100の任意の位置を、基板表面の法線方向から撮影できるように、移動可能に構成されることが好ましい。撮影手段4は、可視化用照射手段3から第二紫外光L2が照射された後に、PL光L3を含むPL発光画像を撮影する。PL発光画像では、SSFが存在する位置に線状の明るい欠陥像が現れる。撮影手段4は、撮影した画像を、例えば、ハードディスク等のストレージ(図示せず)に記録する。
<判定手段>
判定手段5は、撮影手段4で撮影されたPL発光画像において、SSFの欠陥像が生じている領域に潜在BPDが存在するか否かを判定する。判定手段5は、CPU、メモリ、及びストレージ等を有するコンピュータにおいて、メモリに記録されているプログラムをCPUが読み出して実行することで、判定機能が実現される。具体的には、判定手段5は、PL発光画像を画像解析することによって、線状の明るい欠陥像であるSSFの欠陥像を抽出し、この欠陥像が生じた領域にBPDが存在していると判定する。欠陥像の抽出は、例えば、エッジ検出処理等により実行することができる。
<載置台>
載置台6は、ヒーターを内蔵し、上面に載置された炭化珪素基板100を加熱する。載置台6は、欠陥拡張用照射手段2により炭化珪素基板100の全体に第一紫外光L1を照射する際に、炭化珪素基板100の温度が100~200℃になるように加熱することが好ましく、100~150℃になるように加熱することがより好ましい。炭化珪素基板100を100~200℃に加熱することで、キャリアの発生効率が向上し、第一紫外光L1を照射すると、短時間でSSFを拡張させることができ、検査時間を短縮することができる。また、第一紫外光L1の照射時の温度を、自動車のエンジンルーム等での使用温度(100~200℃)として想定される温度に設定することで、車載用パワーデバイスにおいて、順方向通電劣化を引き起こす虞のある潜在BPDを適切に検出することができる。
<制御手段>
制御手段7は、CPU、メモリ、ストレージ等を有するコンピュータにおいて、メモリに記録されているプログラムをCPUが読み出して実行することで、欠陥拡張用照射手段2、可視化用照射手段3、撮影手段4、及び判定手段5の各動作を制御する機能が実現される。
〔欠陥検査方法〕
図5は、本発明の欠陥検査方法、及び炭化珪素チップの製造方法の手順を示すフローチャートである。本発明の欠陥検査方法は、図3の欠陥検査装置1を用いて、照射工程、可視化工程、撮影工程、及び判定工程の各工程が順に実行され、さらに任意の工程として、収縮工程が実行される。また、本発明の炭化珪素チップの製造方法は、上記の欠陥検査方法の各工程に続いて、マッピング工程、回路形成工程、切断工程、及び除外工程が順に実行される。なお、図5のフローチャートにおいて、欠陥検査方法、及び炭化珪素チップの製造方法の各ステップを記号「S」で示してある。
<照射工程:S1>
照射工程では、欠陥拡張用照射手段2によって炭化珪素基板100に、少なくとも基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で第一紫外光L1を照射する(S1)。照射工程において、炭化珪素基板100を100~200℃に加熱した状態で、第一紫外光L1を照射することが好ましく、炭化珪素基板100を100~150℃に加熱した状態で、第一紫外光L1を照射することがより好ましい。炭化珪素基板100を100~200℃に加熱した状態で、第一紫外光L1を照射することで、キャリアの発生効率が向上し、短時間でSSFを拡張させることができ、検査時間を短縮することができる。また、第一紫外光L1の照射時の温度を、自動車のエンジンルーム等での使用温度(100~200℃)として想定される温度に設定することで、車載用パワーデバイスにおいて、BPDのうちSSFが拡張する虞のある潜在BPDを適切に検出することができる。照射工程における第一紫外光L1は、波長が325~365nmであり、UV照度が10W/cm以上であることが好ましく、波長が355nmであり、UV照度が100W/cm以上であることがより好ましい。上記の照射条件で第一紫外光L1を照射することにより、基板層101に十分なキャリアを発生させ、潜在BPDからSSFを適切に拡張させることができる。また、波長とUV照度とを上記の範囲に設定することで、BPDのうちSSFが拡張する虞のある潜在BPDを適切に検出することができる。また、照射工程においては、第一紫外光L1は、中心部Oの照度が相対的に高く、周縁部の照度が相対的に低い同心円状の照度分布を有する光束であり、当該光束の照度が所定以上となる円の領域が連続するように一定間隔でずらしながらパルス照射されることが好ましい。これにより、SSFの拡張に必要な照度の第一紫外光L1を、その照度分布を平均化しながら炭化珪素基板100全体に対して照射することができ、潜在BPDからSSFを均一に拡張させることができる。さらに、照射工程において、第一紫外光L1を、ガルバノスキャナ23を用いて照射することが好ましい。ガルバノスキャナ23を用いて照射することで、炭化珪素基板100の全体に第一紫外光L1を高精度かつ均一に照射することができる。S2においては、制御手段7は、第一紫外光L1が照射されていない未照射の領域があるかを判定する。未照射の領域がある場合(S2:Yes)、制御手段7はガルバノスキャナ23を制御し、S1に戻って未照射の領域に対する照射工程を繰り返し実行する。未照射の領域がない場合(S2:No)、可視化工程へ処理を進める。
<可視化工程:S3>
可視化工程では、可視化用照射手段3によって炭化珪素基板100の全体に第二紫外光L2を照射することで、炭化珪素基板100をPL発光させる(S3)。可視化工程における第二紫外光L2は、波長が365nm以下であり、UV照度が1W/cm以下であることが好ましい。上記の照射条件で第二紫外光L2を照射することにより、BPDがTEDに変換した変換点からこれ以上SSFを拡張させることなく、炭化珪素基板100が励起され、PL光L3を発光させることができる。
<撮影工程:S4>
撮影工程では、PL発光している炭化珪素基板100を撮影する(S4)。一般に、SiC-MOSFET等のパワーデバイスでは、ドリフト層103が厚み5~10μm程度に形成され、オフ角が4°に設定されるため、基板表面の法線方向から撮影したドリフト層103中の帯状のSSFの幅は70~140μm程度となる。そのため、PL発光画像は、幅が70~140μm程度である帯状のSSFを、複数画素に相当する大きさで撮影する。撮影工程では、炭化珪素基板100の全体を一括して撮影してもよいし、炭化珪素基板100を複数の領域に分割して撮影してもよい。
<判定工程:S5>
判定工程では、PL発光画像においてSSFの欠陥像が生じている領域に潜在BPDが存在するか否かを判定する(S5)。欠陥像の抽出は、例えば、エッジ検出処理等により実行することができる。PL発光画像を画像解析することによって、線状の明るい欠陥像であるSSFの欠陥像を抽出し、この欠陥像が生じた領域にBPDが存在していると判定する。
<収縮工程:S6>
収縮工程では、炭化珪素基板100を加熱し、炭化珪素基板100中の拡張したSSFを収縮させる(S6)。炭化珪素基板100の加熱は、載置台6に内蔵されるヒーターとは別に、例えば加熱炉等により行われる。収縮工程における炭化珪素基板100の温度は、照射工程の実行時の炭化珪素基板100の加熱温度よりも高温にされ、例えば、300~1000℃に設定される。上記の温度で加熱することにより、拡張したSSFが収縮して欠陥が修復されるため、検査後の炭化珪素基板100をそのまま製品化することができる。したがって、本発明の欠陥検査方法によれば、パワーデバイスの製造において、全数検査が可能となる。
〔炭化珪素チップの製造方法〕
炭化珪素チップの製造方法は、欠陥検査方法における収縮工程の実行後に、マッピング工程、回路形成工程、切断工程、及び除外工程の各工程を順に実行するものである。
<マッピング工程:S7>
マッピング工程では、判定工程により潜在BPDが存在すると判定された領域を炭化珪素基板100の全体に対してマッピングしたマッピングデータを作成する(S7)。マッピングデータの作成は、例えば、制御手段7が、判定手段5より潜在BPDの位置情報を受け取り、マッピングを行う。マッピングデータを作成することにより、潜在BPDの位置を確認することができる。
<回路形成工程:S8>
回路形成工程は、炭化珪素基板100上に、回路を形成する(S8)。回路形成工程では、例えば、炭化珪素基板100上に、ソース、ドレイン、ゲートの各端子が形成される。
<切断工程:S9>
切断工程は、炭化珪素基板100を複数のチップに切断する(S9)。切断工程は、例えば、金属ブレードによるブレードダイシング、及びレーザーを用いるステルスダイシング等を用いて炭化珪素基板100を切断することができる。
<除外工程:S10>
除外工程は、マッピング工程において作成されたマッピングデータに基づき、潜在BPDが存在すると判定された領域を含む不良チップを除外する(S10)。不良チップを除外するため、順方向通電劣化の原因となる結晶欠陥を含まず、安定性が高い炭化珪素チップを製造することができる。
以上のように、本発明の欠陥検査方法、及び欠陥検査装置では、基板層101とバッファ層102との界面Iまで到達する波長及びUV照度で、炭化珪素基板100の全体に第一紫外光L1を照射するため、ドリフト層103のBPD、及びTEDに変換したバッファ層102のBPDからもSSFを拡張させることができ、これまで検出が難しかった潜在BPDをPL検査によって検出することが可能となった。
次に、本発明の欠陥検査装置に関する実施例を、以下に説明する。
以下の試験では、欠陥拡張用照射手段により炭化珪素基板の全体に紫外光を照射する場合において、自動車のエンジンルーム等での使用温度を想定し、炭化珪素基板を100~200℃の範囲で加熱することによりBPDの検出のし易さを比較した(実施例1~3)。また、加熱を行わなかった20℃の炭化珪素基板(比較例1)、及び高温の250℃で加熱した炭化珪素基板(比較例2)についても同様の試験を行った。
<実施例1>
炭化珪素基板として、エピタキシャル成長法により製造された炭化珪素単結晶の薄膜基板(4インチウェハ)を用い、炭化珪素基板を100℃に加熱した状態で、第一紫外光を炭化珪素基板全体に照射し、次いで、第一紫外光よりも低照度の第二紫外光を照射した。第一紫外光は、波長355nm、及びUV照度150W/cmであるYAGレーザーを光源として用いた。第二紫外光は、波長313nm、UV照度0.3W/cmである超高圧水銀灯を光源として用いた。PL発光した炭化珪素基板をカメラで撮影し、PL発光画像を得た。PL発光画像の撮影は、画素数が100万である冷却CCDイメージセンサーを有するデジタルカメラで、顕微鏡対物レンズ10倍を使用し、露光時間5秒、バンドパスフィルター420nmの条件で行った。
<実施例2~3、及び比較例1~2>
実施例1と同様の炭化珪素基板を用い、第一紫外光を照射する際の温度を図6に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にしてPL発光画像を得た。
図6は、異なる温度条件下で第一紫外光を照射後、PL発光させた炭化珪素基板の顕微鏡写真(PL発光画像)である。図6に示すように、炭化珪素基板を100~200℃に加熱した状態で、第一紫外光を照射することで、基板層とバッファ層との界面でTEDに変換したBPDのうちSSFが拡張する虞のある潜在BPDを適切に検出することができた(実施例1~3)。これに対し、炭化珪素基板を加熱しなかった比較例1、炭化珪素基板の加熱温度が高過ぎる比較例2は、第一紫外光を照射しても適切にSSFが拡張しなかったため、潜在BPDを特定することができなかった。
本発明の欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法は、SiC-MOSFET等のパワーデバイス素子の製造プロセスにおいて、炭化珪素基板の検査に利用することが可能である。
1 欠陥検査装置
2 欠陥拡張用照射手段
3 可視化用照射手段
4 撮影手段
5 判定手段
100 炭化珪素基板
101 基板層
102 バッファ層
103 ドリフト層
L1 第一紫外光
L2 第二紫外光
I 界面
O 中心部

Claims (8)

  1. 基板層、バッファ層、及びドリフト層を有する炭化珪素基板において、前記基板層と前記バッファ層との界面で貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)を検出する欠陥検査方法であって、
    基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)を拡張させる第一紫外光を、少なくとも前記基板層と前記バッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、前記炭化珪素基板の全体に照射する照射工程と、
    前記第一紫外光よりも低照度の第二紫外光を、前記炭化珪素基板の全体に照射して当該炭化珪素基板をPL発光させることにより可視化する可視化工程と、
    PL発光している前記炭化珪素基板を撮影する撮影工程と、
    前記撮影工程で撮影されたPL発光画像において、ショックレー型積層欠陥(SSF)の欠陥像が生じている領域に貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定する判定工程と
    を包含する欠陥検査方法。
  2. 前記照射工程において、前記炭化珪素基板を100~200℃に加熱した状態で、前記第一紫外光を照射する請求項1に記載の欠陥検査方法。
  3. 前記第一紫外光は、波長が325~365nmであり、UV照度が10W/cm以上である請求項1に記載の欠陥検査方法。
  4. 前記第一紫外光は、中心部の照度が相対的に高く、周縁部の照度が相対的に低い同心円状の照度分布を有する光束であり、当該光束の照度が所定以上となる円の領域が連続するように一定間隔でずらしながらパルス照射される請求項1に記載の欠陥検査方法。
  5. 前記照射工程において、前記第一紫外光を、ガルバノスキャナを用いて照射する請求項4に記載の欠陥検査方法。
  6. 前記基板層と前記バッファ層との界面に存在する基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)が拡張した炭化珪素基板を加熱することにより、前記ショックレー型積層欠陥(SSF)を収縮させる収縮工程をさらに包含する請求項1~5の何れか一項に記載の欠陥検査方法。
  7. 基板層、バッファ層、及びドリフト層を有する炭化珪素基板において、前記基板層と前記バッファ層との界面で貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)を検出する欠陥検査装置であって、
    基底面転位(BPD)が貫通刃状転位(TED)に変換した変換点からショックレー型積層欠陥(SSF)を拡張させる第一紫外光を、少なくとも前記基板層と前記バッファ層との界面まで到達する波長及びUV照度で、前記炭化珪素基板の全体に照射する欠陥拡張用照射手段と、
    前記第一紫外光よりも低照度の第二紫外光を、前記炭化珪素基板の全体に照射して当該炭化珪素基板をPL発光させる可視化用照射手段と、
    PL発光している前記炭化珪素基板を撮影する撮影手段と、
    前記撮影手段で撮影されたPL発光画像において、ショックレー型積層欠陥(SSF)の欠陥像が生じている領域に貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定する判定手段と
    を備える欠陥検査装置。
  8. 請求項6に記載の欠陥検査方法によって前記ショックレー型積層欠陥(SSF)を収縮させた炭化珪素基板から炭化珪素チップを製造する炭化珪素チップの製造方法であって、
    前記判定工程により貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定された領域を前記炭化珪素基板の全体に対してマッピングしたマッピングデータを作成するマッピング工程と、
    前記炭化珪素基板上に、回路を形成する回路形成工程と、
    前記炭化珪素基板を複数のチップに切断する切断工程と、
    前記マッピングデータに基づき、貫通刃状転位(TED)に変換した基底面転位(BPD)が存在すると判定された領域を含む不良チップを除外する除外工程と
    を包含する炭化珪素チップの製造方法。
JP2023542017A 2023-07-11 2023-07-11 欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法 Active JP7368041B1 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023025618 2023-07-11

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP7368041B1 true JP7368041B1 (ja) 2023-10-24

Family

ID=88418471

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023542017A Active JP7368041B1 (ja) 2023-07-11 2023-07-11 欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7368041B1 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016121628A1 (ja) * 2015-01-28 2016-08-04 東レエンジニアリング株式会社 ワイドギャップ半導体基板の欠陥検査方法及び欠陥検査装置
JP2016166112A (ja) * 2015-03-10 2016-09-15 株式会社東芝 半導体基板及び半導体装置
JP2016197079A (ja) * 2015-04-06 2016-11-24 レーザーテック株式会社 検査装置
JP2019160999A (ja) * 2018-03-13 2019-09-19 株式会社アイテス 欠陥検査装置、及び欠陥検査方法
WO2021177127A1 (ja) * 2020-03-03 2021-09-10 株式会社アイテス 欠陥検査方法、及び欠陥検査装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016121628A1 (ja) * 2015-01-28 2016-08-04 東レエンジニアリング株式会社 ワイドギャップ半導体基板の欠陥検査方法及び欠陥検査装置
JP2016166112A (ja) * 2015-03-10 2016-09-15 株式会社東芝 半導体基板及び半導体装置
JP2016197079A (ja) * 2015-04-06 2016-11-24 レーザーテック株式会社 検査装置
JP2019160999A (ja) * 2018-03-13 2019-09-19 株式会社アイテス 欠陥検査装置、及び欠陥検査方法
WO2021177127A1 (ja) * 2020-03-03 2021-09-10 株式会社アイテス 欠陥検査方法、及び欠陥検査装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8216361B2 (en) Monocrystalline semiconductor wafer comprising defect-reduced regions and method for producing it
JP6999212B1 (ja) 欠陥検査方法、及び欠陥検査装置
JP7106217B2 (ja) ファセット領域の検出方法及び検出装置
TWI398911B (zh) 製造半導體晶圓之方法
JP2011040564A (ja) 半導体素子の製造方法および製造装置
JP6585799B1 (ja) SiC基板の評価方法及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法
JP6516583B2 (ja) 半導体試料の結晶欠陥検出装置及び結晶欠陥検出方法
JP4886761B2 (ja) 炭化珪素半導体装置の検査方法および検査装置、並びに炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2020102520A (ja) レーザ加工方法、及び、半導体部材製造方法
JP7368041B1 (ja) 欠陥検査方法、欠陥検査装置、及び炭化珪素チップの製造方法
TW201832284A (zh) 蝕刻方法
JP4836626B2 (ja) 半導体基板の検査方法、半導体基板の検査装置、半導体基板の評価方法、および半導体基板の評価装置
JP2011171377A (ja) シリコンウェーハの製造方法
JP4338178B2 (ja) 炭化珪素半導体装置の検査方法および検査装置、並びに炭化珪素半導体装置の製造方法
TWI743312B (zh) 剝離基板製造方法
JP5615251B2 (ja) 結晶欠陥検出方法、炭化珪素半導体装置の製造方法
JP5477697B2 (ja) シリコンウェーハの表面または表層評価方法
JP7007656B2 (ja) 剥離基板製造方法
WO2020130108A1 (ja) レーザ加工方法、及び、半導体デバイス製造方法
JP6466604B1 (ja) 太陽電池試料検査装置、及び太陽電池試料検査方法
Moser et al. Laser processing of GaN-based LEDs with ultraviolet picosecond laser pulses
JP2020102522A (ja) レーザ加工装置
KR102628328B1 (ko) SiC 단결정 기판
JP5544734B2 (ja) シリコンウェーハの製造方法、エピタキシャルウェーハの製造方法、および固体撮像素子の製造方法
TWI849945B (zh) 碳化矽單結晶基板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230711

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20230711

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231003

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231004

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7368041

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150