本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
肌側シート、非肌側シート、及び前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収体を備える吸収性物品であって、着用者が前記吸収性物品を着用してから20分後に、0.1度以上5.0度以下だけ前記着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材を有することを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者は、皮膚表面温度が0.1度以上上昇するため、吸収性物品を着用したことによる温かさを感じることができる。また、皮膚表面温度が5.0度よりも高く上昇しないため、着用者が痛みや痒さを感じる恐れが少なく、着用者は心地良い温かさを感じることができる。
かかる吸収性物品であって、着用者が前記吸収性物品を着用してから20分後に、0.4度以上0.9度以下だけ前記着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材を有することを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、より多くの着用者が、吸収性物品を着用したことにより、心地良い温かさを感じることができる。
かかる吸収性物品であって、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、前記長手方向において、前記吸収性物品の一端から中央側に150mm離れた位置までの領域の少なくとも一部に、前記温度上昇材が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者の下腹部や腰部近傍の臀部に当たる領域に温度上昇材を配置でき、着用者の下腹部や腰部近傍の臀部を温めることができる。
かかる吸収性物品であって、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、前記厚さ方向の非肌側にそれぞれウィング粘着部を備えた、前記幅方向の外側に突出する一対のウィング部を有しており、前記ウィング粘着部と前記長手方向について重なる領域、且つ前記吸収体と前記幅方向について重なる領域において、前記幅方向における中央部には、前記温度上昇材が設けられておらず、前記幅方向における端部には、前記温度上昇材が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者の股下部を温めつつ、着用者の排泄口を温度上昇材で刺激してしまうことを防止できる。
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品を前記厚さ方向における肌側から見て、前記吸収性物品の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記温度上昇材が設けられた端部配置領域を有し、前記ウィング粘着部と前記長手方向について重なる領域、且つ前記吸収体と前記幅方向について重なる領域は、前記温度上昇材が設けられた中央配置領域を有し、前記幅方向において、前記端部配置領域の最大長さは、前記中央配置領域の最大長さより長いことを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者の身体の形状に合わせて温度上昇材が配置され、
着用者の下腹部や腰部近傍の臀部をより広い範囲に亘り温めることができる。よって、着用者は、吸収性物品を着用したことによる心地良い温かさをより感じやすくなる。
かかる吸収性物品であって、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、前記厚さ方向の非肌側にそれぞれウィング粘着部を備えた、前記幅方向の外側に突出する一対のウィング部を有しており、前記吸収性物品を前記厚さ方向における肌側から見て、前記吸収性物品の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記温度上昇材が設けられた端部配置領域を有し、前記端部配置領域の少なくとも一部の色は、前記ウィング粘着部と前記長手方向について重なる領域且つ前記吸収体と前記幅方向について重なる領域の色と異なることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者は、端部配置領域に着目しやすくなり、吸収性物品の長手方向の端部に温度上昇材が設けられていることを認識しやすくなる。よって、着用者は、吸収性物品を着用したことによる心地良い温かさをより感じやすくなる。
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品を前記厚さ方向における肌側から見て、前記ウィング粘着部と前記長手方向について重なる領域且つ前記吸収体と前記幅方向について重なる領域において、前記幅方向における中央部には、前記温度上昇材が設けられておらず、前記幅方向における端部には、前記温度上昇材が設けられており、前記幅方向における中央部と前記幅方向における端部の色が同じであることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者は、吸収性物品の股下部に温度上昇材が配置されていることを認識し難くなり、股下部が温度上昇材で刺激される不安を着用者に抱かせてしまうことを防止できる。よって、着用者の股下部を温めつつ、着用者に安心感を付与できる。
かかる吸収性物品であって、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、前記吸収性物品を前記厚さ方向における肌側から見て、前記吸収性物品の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記温度上昇材が設けられた端部配置領域を有し、前記端部配置領域には、前記吸収性物品の腹側であることを示す表示又は前記吸収性物品の背側であることを示す表示が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、腹側又は背側であることを示す表示を見た着用者は、正しい前後の向きで吸収性物品を着用できる。よって、着用者の身体における目的の部位に温度上昇材を当てて、その目的の部位を温めることができる。
かかる吸収性物品であって、前記肌側シート、前記非肌側シート、及び前記吸収体を備える吸収性物品本体部と、前記温度上昇材を備える温度上昇部と、を有し、前記吸収性物品本体部と温度上昇部とが分離可能であることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、着用者は、身体の所望の部位に温度上昇部を当てて温めることができるので、心地良い温かさをより感じやすくなる。また、温度上昇部は取り付けたままで吸収性物品本体部を交換したり、吸収性物品本体部は取り付けたままで温度上昇部だけを取り外したりすることができる。
かかる吸収性物品であって、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、前記吸収性物品の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記温度上昇材が設けられたシートを有し、前記吸収性物品は、前記シートが配置された領域において、前記シートが前記吸収体と前記厚さ方向に重なる重複領域と、前記シートが前記吸収体と前記厚さ方向に重ならない非重複領域と、を有し、前記非重複領域は、前記重複領域に比べて、前記温度上昇材の坪量が高い領域を有することを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、厚みがあり着用者に密着しやすい重複領域において温度上昇材の坪量が高くなり過ぎないため、着用者に痒み等を感じさせてしまうことを防止でき、着用者は心地良い温かさを感じることができる。また、着用者の下腹部や腰部近傍の臀部に当たる重複領域において温度上昇材の坪量が高くなるため、着用者の身体の目的の場所を効率よく温めることができる。
かかる吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する包装材と、を備える吸収性物品包装体であって、前記包装材が、前記吸収性物品が前記温度上昇材を備えていることを想起させる想起表示を有することを特徴とする吸収性物品包装体。
このような吸収性物品包装体によれば、着用者は、吸収性物品包装体の展開時に包装材の想起表示を見て、吸収性物品の着用により温かさが得られることを認識しやすくなる。よって、着用者は、吸収性物品を着用したことによる心地良い温かさをより感じやすくなる。
かかる吸収性物品が、包装材で包装された吸収性物品包装体と、前記吸収性物品包装体を収容する袋体と、を有する吸収性物品包装体のパッケージであって、前記袋体は、前記吸収性物品を示す図柄を有し、前記吸収性物品を示す図柄の中に、前記温度上昇材を配置した領域を示す表示を備えることを特徴とする吸収性物品包装体のパッケージ。
このような吸収性物品包装体のパッケージによれば、着用者は、パッケージを見て、吸収性物品を着用することにより温かくなること、及び、温かくなる部位を認識しやすくなる。よって、着用者は、吸収性物品を着用したことによる心地良い温かさをより感じやすくなる。
肌側シート、非肌側シート、及び前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収体を備える吸収性物品と、着用者が前記吸収性物品を着用してから20分後に、0.1度以上5.0度以下だけ前記着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材を備える温度上昇部材と、を有することを特徴とする吸収性物品と温度上昇部材のセット。
このような吸収性物品と温度上昇部材のセットによれば、着用者は、吸収性物品と共に温度上昇部材を使用したり、吸収性物品のみを使用したり、温度上昇部材のみを使用したりすることができる。
肌側シート、非肌側シート、及び前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収体を備える吸収性物品と共に使用される温度上昇部材であって、着用者が前記吸収性物品を着用してから20分後に、0.1度以上5.0度以下だけ前記着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材を備えることを特徴とする温度上昇部材。
このような温度上昇部材によれば、着用者は、一般の吸収性物品と共に、温度上昇部材を適宜使用することができる。
以下、本実施形態に係る吸収性物品の一例として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。ただし、吸収性物品は生理用ナプキンに限定されず、他の吸収性物品として、例えば、パンティライナーや失禁パッド、使い捨ておむつ等が挙げられる。
===生理用ナプキン1の基本構成===
図1は、生理用ナプキン1(以下「ナプキン」と呼ぶ)を肌側から見た平面図である。図2は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。図3は、ナプキン1の前後方向に沿う概略断面図である。
ナプキン1は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。長手方向において着用者の腹側となる側が前側であり、着用者の背側となる側が後側である。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。また、ナプキン1は、吸収体2、肌側シート3、中間シート4、非肌側シート5、一対のサイドシート6、及び、温度上昇材30(後述)が配置された前側シート7を有する。
肌側シート3は、吸収体2より肌側に配置された液透過性のシートである。中間シート4は、肌側シート3と吸収体2の間に配置された液透過性のシートである。液透過性のシートとしては、不織布や開孔フィルム等を例示できる。非肌側シート5は、吸収体2(吸収性コア)よりも非肌側に配置された液不透過性のシートである。サイドシート6は、肌側シート3の肌側面の幅方向の両側部から外側に延出したシートである。サイドシート6としては、肌側シート3と同じ柔軟な不織布や疎水性の不織布等を例示できる。
吸収体2は、吸収性コアと、吸収性コアを覆う液透過性のコアラップシートを有する。吸収性コアとしては、パルプ繊維やセルロース系吸収性繊維等の液体吸収性繊維に、高吸収性ポリマー(SAP)が加えられ、所定の形状に成形されたもの等を例示できる。なお、吸収体はコアラップシートを有さなくてもよい。
また、ナプキン1は、前後方向において、吸収体2の前端2aより前側の前方領域1Aと、前方領域1Aより後側の後方領域1Bとに区画される。前側シート7は、主に前方領域1Aに配置されている。図1に例示するナプキン1では、前側シート7の後端部が、吸収体2の前端部と重複し、後方領域1Bに配置されている。ただし、これに限定されず、前側シート7の後端が、吸収体2の前端2aと接するか、又は前側に離間していてもよい。
本実施形態の前側シート7は、図2に示すように、3枚のシートが厚さ方向に積層されて構成されている。また、前側シート7は、中間シート4及び吸収体2より非肌側であり、非肌側シート5より肌側に配置されている。ただし上記に限定されず、前側シート7は、1枚のシートで構成されていてもよいし、3枚以外の複数枚のシートが積層されて構成されていてもよい。
ナプキン1の後方領域1Bは、概ね一般的な生理用ナプキンの形状であり、前後方向の中央部において、幅方向の外側に突出一対のウィング部1wを有する。ウィング部1wは、サイドシート6と非肌側シート5によって形成されている。また、後方領域1Bにおいて、前後方向の中央やや前方寄りの領域(前後方向におけるウィング部1wの中央)が、着用者の排泄口に当接するように想定されている。なお、ナプキンはウィング部を有さなくてもよい。
ナプキン1の前方領域1Aの形状は特に限定はなく、例えば、三角形や矩形や多角形(角が丸い場合や辺が曲線の場合を含む)、円形や楕円形、生物の形状、又はそれらの組み合わせが挙げられる。本実施形態の前方領域1Aは、一対のウィング部1wを除いた後方領域1Bの最大幅よりも大きい幅を有する。また、前方領域1Aは、その前端部から後端部に向かって幅が狭くなった略三角形の形状である。前側シート7も前方領域1Aの形状を相似的に縮小した略三角形の形状である。ただし上記に限定されず、前側シート7が例えば矩形形状等であり、前方領域1Aと異なる形状であってもよい。
ナプキン1は、その非肌側面(つまり非肌側シート5の非肌側面)に、ずれ止め部8が設けられている。ずれ止め部8は、接着剤が塗布された粘着部(物品側粘着部)であり、図2に示すように、中央ずれ止め部81と、前方ずれ止め部82と、ウィングずれ止め部83を有する。
中央ずれ止め部81は、ナプキン1の本体部を下着の内側面に貼付するためのものであり、ナプキン1の前方から後方にかけて、ナプキン1の幅方向の中央部に設けられている。中央ずれ止め部81では、前後方向に長辺を有する長方形状の粘着部が幅方向に間隔をあけて8個並んでいる。
前方ずれ止め部82は、幅広な前方領域1Aの幅方向の両端部を下着の内側面に貼付するためのものであり、前方領域1Aの幅方向の両側に一対設けられている。各前方ずれ止め部82では、前後方向に長辺を有する長方形状の粘着部が幅方向に間隔をあけて3個並んでいる。前方ずれ止め部82は、中央ずれ止め部81に比べて前後方向の長さが短い。また、前方ずれ止め部82は、前後方向において中央ずれ止め部81と一部が重複しつつ、中央ずれ止め部81よりも前側に延びて配置されている。
ウィングずれ止め部83は、下着の外側に折り返されたウィング部1wを下着の外側面に貼付するためのものであり、一対のウィング部1wにそれぞれ設けられている。各ウィングずれ止め部83では、前後方向に長辺を有する長方形状の粘着部が幅方向に間隔をあけて3個並んでいる。
なお、各ずれ止め部81~83の形状や数や配置位置は、図2に例示するものに限定されない。
また、ナプキン1は、ナプキン1が厚さ方向に窪んだ圧搾部20を有する。圧搾部20は、前後方向や幅方向に連続して厚さ方向に窪んでいる(溝状の)圧搾部であってもよいし、非連続に厚さ方向に窪んだ点状の圧搾部であってもよい。圧搾部20によって、吸収体2の型崩れを防止したり、ナプキン1の液拡散性を向上させたりすることができる。本実施形態のナプキン1は、図1に示すように、点状の圧搾部が離散的に配置された圧搾部や、点状の圧搾部が線状に並んで配置された圧搾部や、点状の圧搾部が図柄(例えば熊の目や鼻)を形成するように配置された圧搾部や、文字の形状に圧搾された圧搾部を有する。
圧搾部20では、周囲に比べてナプキン1の厚さが薄く、ナプキン1の繊維密度が高くなっている。これらの比較は周知の方法で行うとよい。ナプキン1の厚さの比較としては、目視で比較する方法や、ミツトヨ(株)製のダイアルシックネスゲージID-C1012C又はそれと同等のものを使用し、対象部位を例えば3.0gf/cm2で加圧して測定した値を取得して比較する方法を例示できる。ナプキン1の密度の比較としては、ナプキン1を厚さ方向に切った断面を電子顕微鏡等で拡大した画像に基づき比較する方法を例示できる。
本実施形態では、前方領域1Aの幅方向の中央部に設けられた圧搾部20は、肌側シート3及び前側シート7が肌側から圧搾されている。後方領域1Bの幅方向の中央部に設けられた圧搾部20は、肌側シート3から吸収体2まで肌側から圧搾された圧搾部と、吸収体2のみが圧搾された圧搾部(不図示)とする。
===温度上昇材30を有するナプキン1===
図4は、肌側シート3における温度上昇材30の配置領域31,311の説明図である。図5は、前側シート7における温度上昇材30の配置領域31,312の説明図である。図6は、ナプキン1における温度上昇材30の配置領域31の説明図である。つまり、図6は、肌側シート3の配置領域311と、前側シート7の配置領域312を合わせた領域を示す。図7は、ナプキン1の着用者の官能評価を示す表である。図8は、ナプキン1の肌側面における温度上昇材30の配置領域31を示す図である。図9から図12は、ナプキン1の変形例の説明図である。
本実施形態のナプキン1は、前方領域1Aを有し、一般的なナプキン1の形状に比べて前側に長く幅広い形状となっている。ナプキン1の排泄口当接領域が着用者の排泄口に対応するようにナプキン1が装着されると、ナプキン1の前方領域1Aが着用者の下腹部に対応する。着用者の下腹部が前方領域1Aで覆われるため、前方領域1Aを有さないナプキン1に比べて、着用者の下腹部を温めることができる。
さらに、本実施形態のナプキン1は、着用者の皮膚表面温度を上昇させる「温度上昇材30」を有する。温度上昇材30が配置された領域を「配置領域31」と呼ぶ。図2に示すように、温度上昇材30は、肌側シート3の非肌側面と、最も肌側に位置する前側シート7aの肌側面に配置されている。ただし、これに限定されず、温度上昇材30は、ナプキン1を構成する資材の何れか(例えば吸収体2や中間シート4等)に配置されていればよい。また、肌側シート3及び前側シート7は、温度上昇材30を保持可能なシートであれば特に制限されず、不織布等が挙げられる。
温度上昇材30の配置は、噴霧法やローラーコート法、刷毛塗り法等の各種公知の塗布方法で行ったり、シートを浸漬したりする方法や、粒子状の剤をシートの繊維に混在させる方法等が挙げられる。また、温度上昇材30の配置領域31には、その全域に温度上昇材30が配置(べた塗り)されていてもよいし、ストライプパターンやスパイラルパターン等の各種公知のパターンで温度上昇材30が配置されていてもよい。
温度上昇材30としては、例えば、TRPチャネル(温度受容器(温熱知覚受容器))を活性化する温感成分と、溶媒成分とを含むものを例示できる。ナプキン1に温度上昇材
30が配置されていることで、ナプキン1の着用者のTRPチャネルが刺激される。その結果、交感神経系を介して、温度上昇材30の接触部分から熱が生じ、温度上昇材30の接触部分における皮膚表面温度を上昇させることが期待できる。
本実施形態では、図2に示すように、着用者の肌と直接接触する場所に温度上昇材30が配置されていない。しかし、着用時に温度上昇材30が溶出したり揮発したりすることで、着用者の肌に到達する。着用者の肌に到達した温感成分が、着用者のTRPチャネルを活性化し、その場所に温感が付与される。
温度上昇材30の温感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、液体状であっても、固体状(ペースト状、粉体状等を含む)であってもよい。また、温感成分は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましい。温感刺激剤としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン(LD50:47mg/kg,分子量:305)、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル(LD50:2,188mg/kg,分子量:213)、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル(LD50:4,900mg/kg,分子量:210)、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール(LD50:250mg/kg,分子量:294)、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
溶媒成分としては、温感成分を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。このような溶媒成分は、温感成分を溶解、分散等することができる。親油性溶媒としては、油脂、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等)、炭化水素(例えば、パラフィン、例えば、流動パラフィン)等が挙げられる。親水性溶媒は、水及びアルコールが挙げられる。上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。それらの中でも、溶媒成分としては、揮発性を制御しやすい、特に揮発性を下げやすい観点からは、油脂(親油性溶媒)又はアルコール(親水性溶媒)が好ましい。また、ナプキン1では、吸収性を阻害しにくい観点から、上記溶媒成分は親油性溶媒であることが好ましい。
上記のような温度上昇材30では、温感成分自体が発熱する発熱剤とは異なるため、低温やけどを起こし難い。また、ナプキン1を下着に貼付するためのずれ止め部8が軟化し難いので、ナプキン1を下着から取り外す際にずれ止め部8が下着に残り難く、好ましい。
しかし、上記に限定されず、温感成分自体が発熱する温度上昇材30であってもよい。例えば、空気との接触により発熱する被酸化性金属を含む温度上昇材30であってもよい。被酸化性金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム、及び、トルマリンやコーディエライト等の鉱物から選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。発熱温度や発熱時間の持続のために、温度上昇材30は、被酸化性金属に加えて、活性炭、保水剤、食塩、水等を含むとよい。
肌側シート3における温度上昇材30の配置領域311は、図4に示すように、一対の前側配置領域311Aと、一対の前側配置領域311Aよりも長手方向の後側に間隔をあけて配置された一対の後側配置領域311Bを有する。一対の前側配置領域311Aと一対の後側配置領域311Bでは、それぞれ、ナプキン1の幅方向の中央部(幅20mm程度)の両側に、長手方向に沿った帯状の配置領域が並んでいる。また、一対の前側配置領域311Aは、吸収体2よりも前側であり、前側シート7と厚さ方向に重なる領域に配置されている。一対の後側配置領域311Bは、前側シート7よりも後側であり、吸収体2と厚さ方向に重なる領域に配置されている。
前側シート7は、図5に示すように、その全域に亘り温度上昇材30が配置されている。つまり、前側シート7の全域が温度上昇材30の配置領域312となっている。
上記のように、本実施形態のナプキン1では、着用者の股下部から下腹部に当たる領域に温度上昇材30が設けられている。そのため、着用者の股下部から下腹部にかけての範囲が温められる。着用者の下腹部、すなわち着用者の子宮に近い部分が温められることによって、着用者の生理痛を緩和したり、月経前症候群や冷え性、更年期障害などの症状を軽減したりすることが期待される。
また、本実施形態のナプキン1は、着用者がナプキン1を着用してから20分後に、0.1度以上5.0度以下だけ着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材30を有するとした。
皮膚表面温度の上昇が0.1度未満であると、着用者はナプキン1を着用したことによる温かさを感じ難い。一方、皮膚表面温度の上昇が5.0度よりも高いと、皮膚表面温度の過度な上昇により、着用者が痛みや痒さを感じる恐れがある。使い捨てカイロ等では、貼付時の皮膚表面温度が38~42度になるように設定されていることがあり、皮膚表面温度が42度以下であれば低温やけどの恐れが少ないとされている。そのため、ナプキン1の着用前の皮膚表面温度から上昇する温度が5.0度以下であれば、皮膚表面温度は42度以下を保たれ、低温やけどを防止できる。よって、皮膚表面温度を0.1度以上5.0度以下だけ上昇させる温度上昇材30をナプキン1に配置することで、着用者は、心地良い温かさを感じることができる。
なお、着用者の皮膚表面温度とは、ナプキン1を着用したことにより影響を受ける皮膚の位置の表面温度とする。具体的には、着用者の上下方向において、へその位置から股下部までの範囲に位置する皮膚の表面温度とする。
例えば、本実施形態のように、着用者の下腹部を温めることを目的としたナプキン1の場合、着用者の腹側面のうち、へそから下方に10mm~12mm下がった位置であり、着用者の幅方向の中心位置における皮膚の表面温度とすることが好ましい。本実施形態では、ナプキン1が適切な位置で装着された状態において、ナプキン1の前方領域1Aの最大幅となる上下方向の位置であり、幅方向の中心である位置p1(図6参照)が当たる皮膚の表面温度とした。
また、例えば、着用者の腰部近傍を温めることを目的とした変形例のナプキン1(図9)の場合、着用者の背面のうち、腹側のへその位置と対応する上下方向の位置であり、着用者の幅方向の中心位置における皮膚の表面温度とすることが好ましい。
また、着用者の皮膚表面温度を上昇させる場合には、温度上昇材30における温感成分の濃度を高くしたり、温度上昇材30の坪量(単位面積当たりの質量:g/m2)を高くしたり、温度上昇材30の配置面積31を大きくしたりするとよい。逆に、着用者の皮膚表面温度を下降させる場合には、温度上昇材30の濃度を低くしたり、温度上昇材30の坪量を低くしたり、温度上昇材30の配置面積31を小さくしたりするとよい。また、温度上昇材30の種類を変えることで、着用者の皮膚表面温度を調整してもよい。
具体的には、温度上昇材30の温感成分の濃度は、好ましくは1~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~55質量%であるとよい。また、ナプキン1における、温度上昇材30の温感成分の坪量は、好ましくは0.001~40g/m2であり、より好ましくは0.1~30g/m2であり、さらに好ましくは1~20g/m2であるとよい。
着用者の皮膚表面温度の測定方法は、以下に示す方法で行う。
まず、測定対象者に温度センサを取り付ける。本実施形態では、前述のように、へそから真っ直ぐ下方に10mm~12mm下がった位置に、温度センサを取り付ける。温度センサは、安立計器株式会社製のテープ型温度センサ(コンパクトサーモロガー)、又はそれと同等のものを使用して行うとよい。
次に、測定対象者は、ナプキン1を着用しない状態で、室温24℃、湿度55%に保たれた部屋において、椅子に座った状態で10分間安静にする。その後、ナプキン1を着用する前の測定対象者の皮膚表面温度を測定する。
次に、測定対象者は、ナプキン1を着用し、再び椅子に座った状態で20分間安静にする。ナプキン1を着用してから20分経過した後に、再び、測定対象者の皮膚表面温度を測定する。こうして得られた測定値の差が、着用者がナプキン1を着用してから20分後に皮膚表面温度が上昇した温度である。
また、ナプキン1の温かさに関する官能試験を実施した。被験者に実際にナプキン1を着用してもらい、上記の測定方法に従って、ナプキン1の着用前の皮膚表面温度と、ナプキン1を着用してから20分後の皮膚表面温度を測定した。そして、ナプキン1を着用してから20分後の着け心地について、被験者に評価してもらった。ナプキン1の着用による温かさについて、1強い、2ちょうど良い、3弱い、4感じない、の4段階で評価してもらった。
対象のナプキン1は、肌側シート3の非肌側面、及び、前側シート7の肌側面に温度上昇材30が配置されたものとする。また、温度上昇材30として、温感成分がバニリルブチルエーテルであり、溶媒成分がトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルであるものを使用した。また、肌側シート3における温度上昇材30の坪量は3g/m2とし、前側シート7における温度上昇材30の坪量は14g/m2とした。被験者は、20歳~45歳の女性6名であり、BMI値が25未満であり、肥満体型ではない女性とした。
その結果を図7に示す。表の結果より、温度上昇材30を有するナプキン1を着用することで、20分後に着用者の皮膚表面温度が上昇することが分かった。具体的には、0.4℃~1.1℃の範囲で皮膚表面温度が上昇した。
上昇温度が0.4度~0.7度であった被験者は、ナプキン1の着用による温かさが、ちょうど良いと感じることが分かった。皮膚表面温度が上昇したことで、生理痛に効きそうと感じる被験者もいた。また、上昇温度が0.8度であった被験者は、ちょうど良いから強いに感じ始めたのに対して、上昇温度が0.9度であっても、ちょうど良いと感じる被験者もいることが分かった。一方、上昇温度が1.1度であった被験者は、温かさが強く、痒みを感じていた。
そこで、ナプキン1は、着用者がナプキン1を着用してから20分後に、0.4度以上0.9度以下だけ着用者の皮膚表面温度を上昇させる温度上昇材30を有することが好ましい。そうすることで、より多くの着用者が、ナプキン1を着用したことにより心地良い温かさを感じることができる。また、皮膚表面温度の過度な上昇により、着用者が痛みや痒さを感じてしまうことを、より確実に防止できる。
また、図8に示すように、ナプキン1を厚さ方向に見て、温度上昇材30の配置領域31と重なる領域に圧搾部20を設けるとよい。圧搾部20では、肌側シート3の厚さが薄くなるため、肌側シート3の非肌側面や前側シート7に設けられた温度上昇材30が着用者に伝達しやすくなり、効率よく着用者を温めることができる。また、温度上昇材30を有するナプキン1の着用者は汗をかく場合がある。圧搾部20ではナプキン1の肌側面が厚さ方向に凹むため、空気が通りやすくなる。よって、着用者の汗や排泄液による蒸れを抑制でき、ナプキン1の着け心地を向上させることができる。
また、非肌側シート5を通気性のある液不透過性シートにするとよい。例えば、多孔質プラスチックシート(ポリエチレンシート等)や、疎水性樹脂を塗工する等した不織布(SMS不織布等)を例示できる。そうすることで、着用者の汗や排泄液による蒸れを抑制でき、ナプキン1の着け心地を向上させることができる。一方で、非肌側シート5を合成樹脂フィルムのような非通気性のシートにすることで、温度上昇材30の効果で温められた空気が散逸し難くなり、効率よく着用者を温めることができる。
また、綿繊維は吸水性が良い。そのため、肌側シート3は、綿繊維を含む不織布等のシートにするとよい。好ましくは綿繊維を70%以上含むシートにするとよい。そうすることで、着用者の汗や排泄液が吸収されやすく、ナプキン1の肌側面がべたつき難くなる。よって、ナプキン1の着け心地を向上させることができる。また、ナプキン1の肌側面がべたつかずに、さらっとしていることで、着用者は温度上昇材30による温かさを感じやすくなる。肌側シート3における綿繊維の比率の確認は、周知の方法で行うことができ、例えば、硫酸を用いて綿繊維を溶解する溶解法や、顕微鏡法により確認できる。
また、上記のように綿繊維を含む肌側シート3を使用したり、肌側シート3と吸収体2の間に中間シート4を設けたりする等して、汗や排泄液のリウェット率を比較的に小さくするとよい。好ましくはリウェット率を50%以下にするとよい。そうすることで、ナプキン1の肌側面がべたつき難くなる。そのため、ナプキン1の着け心地を向上させることができ、また、着用者は温度上昇材30による温かさを感じやすくなる。
リウェット率は以下の方法で測定できる。
まず、ナプキン1の上に、穴の開いたアクリル板(200mm×100mm,125g,中央に40mm×10mmの穴が開いている)を置き、上記穴から、37±1℃のウマEDTA血(ウマの血液に、凝結防止のため、エチレンジアミン四酢酸が添加されたもの)3gを、ピペットを用いて滴下(1回目)する。1分後、37±1℃のウマEDTA血3gを、アクリル板の穴から、ピペットで再度滴下する(2回目)。
2回目の血液の滴下後、直ちに上記アクリル板を外し、血液を滴下した場所に、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙 No.2,50mm×35mm)10枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置く。1分後、上記ろ紙を取り外し、以下の式に従って、「リウェット率」を算出する。
リウェット率(%)=100×(試験後のろ紙質量-試験前のろ紙質量)/6(g)
また、本実施形態のように、着用者の下腹部を覆る程に前方に延びたナプキン1の場合、図6に示すように、長手方向において、ナプキン1の前端1a1から中央側に150mm離れた位置までの領域34の少なくとも一部に、温度上昇材30が設けられているとよい。より好ましくは、長手方向において、ナプキン1の前端1a1から中央側に100mm離れた位置までの領域35の少なくとも一部に、温度上昇材30が設けられているとよい。そうすることで、着用者の下腹部に当たるナプキン1の領域に温度上昇材30を配置でき、着用者の下腹部を温めることができる。
また、図9に示す変形例のナプキン1は、ナプキン1の後方に長く幅広い形状となっている。そして、着用者の股下部から腰部近傍の臀部までに当たる領域に温度上昇材30が設けられている。具体的には、ナプキン1の後方には、肌側シート3と非肌側シート5の間に後側シート9が設けられ、後側シート9に温度上昇材30が設けられている。また、肌側シート3の長手方向の中央部と後方に温度上昇材30が配置されている。そのため、着用者の股下部から腰部近傍の臀部にかけての範囲が温められ、着用者の腰痛を緩和することが期待される。
図9に示す変形例のナプキン1では、着用者の腰部近傍の臀部を覆る程に後方に延びている。この場合、長手方向において、ナプキン1の後端1a2から中央側に150mm離れた位置までの領域34の少なくとも一部に、より好ましくは、ナプキン1の後端1a2から中央側に100mm離れた位置までの領域35の少なくとも一部に、温度上昇材30が設けられているとよい。そうすることで、着用者の腰部近傍の臀部に当たるナプキン1の領域に温度上昇材30を配置でき、着用者の腰部近傍を温めることができる。
しかし、ナプキン1は温度上昇材30を有していればよく、温度上昇材30の配置領域31は、図6や図9に例示する大きさや形状や配置位置に限定されない。例えば、上記の範囲(ナプキン1の一端から100mm~150mm離れた位置までの領域34,35)に温度上昇材30が配置されていなくてもよい。また、ナプキン1の長手方向の両側の端部に温度上昇材30が配置されていてもよい。また、ナプキン1の長手方向の中央部にのみ温度上昇材30が配置されていてもよい。また、ナプキン1の肌側面がべたついていない方が、着用者は温度上昇材30による温かさを感じやすくなるため、ナプキン1を厚さ方向に見て吸収体2と重ならない領域に温度上昇材30を配置してもよい。
また、温度上昇材30の配置領域31の特定方法としては、例えば、コールドスプレー等を用いて、厚さ方向に積層されたナプキン1の資材を分解し、各資材に竹炭やココアパウダーなどの有色の細かい粒子を撒いた後に、粒子を払う方法がある。温度上昇材30が配置された部分には粒子が多く付着するため、温度上昇材30の配置領域31を特定できる。
その他、ナプキン1から長手方向及び幅方向に所定のサイズで細かく多数のサンプルを切り出し、官能試験を行ってもよい。例えば検査者の二の腕に切り出したサンプルを当て、その上にPEシート等の気密性の高いシートを重ねる。検査者は、サンプルの温感効果を感じるまでの時間を計測して記録する。サンプルごとの計測時間を比較し、計測時間が短いサンプルを切り出したナプキン1の位置を、温度上昇材30の配置領域31として特定できる。
また、本実施形態のナプキン1の長手方向の前側の端部は、温度上昇材30が設けられた前側シート7(シート)を有する。前側シート7の後端部は吸収体2と厚さ方向に重なっている。そのため、ナプキン1は、図6に示すように、前側シート7が配置された領域において、前側シート7が吸収体2と厚さ方向に重なる重複領域101と、前側シート7が吸収体2と厚さ方向に重ならない非重複領域102と、を有する。また、前述の図4にて説明したように、肌側シート3における温度上昇材30の配置領域311は、吸収体2よりも前側であり、前側シート7と厚さ方向に重なる一対の前側配置領域311Aと、前側シート7よりも後側であり、吸収体2と厚さ方向に重なる一対の後側配置領域311Bである。また、図5に示すように、前側シート7の全域に温度上昇材30が配置されている。
肌側シート3では、重複領域101を避けた領域に温度上昇材30が配置されている。そのため、重複領域101には、前側シート7に塗布された温度上昇材30のみが配置される。一方、非重複領域102は、前側シート7に塗布された温度上昇材30と、肌側シート3に塗布された温度上昇材30とが重ねて配置される領域(前側配置領域311Aが位置する領域)を有する。つまり、非重複領域102は、重複領域101に比べて、温度上昇材30の坪量(g/m2)が高い領域を有する。
前側シート7と吸収体2が重なり厚みのある重複領域101は、厚みの薄い非重複領域102に比べて、着用者の肌に密着しやすい。そのため、重複領域101には、温度上昇材30の坪量が高くなる領域を設けないことが好ましい。そうすることで、着用者の肌を局所的に温めて、かゆみ等を生じさせてしまうことを防止でき、着用者に心地良い温かさを付与できる。特に、肌側シート3は前側シート7よりも着用者の肌に近いため、重複領域101に対応する肌側シート3の部分に温度上昇材30を配置しないことで、着用者の肌を刺激し過ぎてしまうことを防止できる。一方、吸収体2よりも前側の下腹部に近い非重複領域102には、温度上昇材30の坪量が高くなる領域を設けるとよい。そうすることで、着用者の下腹部を効率的に温めることができる。
図9に示す変形例のナプキン1の場合、肌側シート3のうち、後側シート9(シート)が吸収体2と厚さ方向に重なる重複領域を避けた領域に、温度上昇材30を配置することで、着用者にかゆみ等を生じさせてしまうことを防止できる。また、肌側シート3のうち、吸収体2よりも後側であり、後側シート9と重なる領域に温度上昇材30を配置することで、着用者の腰部近傍の臀部を効率的に温めることができる。
重複領域101と非重複領域102の温度上昇材30の坪量を比較するには、温度上昇材30の配置領域31を特定するときと同様に官能試験行うとよい。ナプキン1の重複領域101と非重複領域102からそれぞれ所定のサイズの細かいサンプルを切り出して、検査者の二の腕等にサンプルを当て、サンプルの温感効果を感じるまでの時間を計測する。非重複領域102から切り出したサンプルの計測時間が、重複領域101から切り出したサンプルの計測時間よりも短ければ、非重複領域102は温度上昇材20の坪量が高い領域を有することが分かる。
また、本実施形態のように一対のウィング部1wを有するナプキン1において、図6に示すように、ウィング粘着部83と長手方向について重なる領域、且つ吸収体2と幅方向について重なる領域(点abcdで囲われた領域)を、ナプキン1の中央領域1Cとする。この中央領域1Cは、下着のクロッチ部に固定され、着用者の排泄口及びその近傍が当接するように想定された領域である。
そこで、ナプキン1の中央領域1Cにおいて、幅方向における中央部には、温度上昇材30が設けられておらず、幅方向における端部には、温度上昇材30が設けられていることが好ましい。
そうすることで、着用者の股下部に心地良い温かさを付与しつつ、生理中で敏感になっている排泄口(膣口)を温度上昇材30で刺激して着用者に痛みを付与してしまうことを防止できる。また、中央領域1Cの幅方向における中央部に温度上昇材30が設けられていないことで、温度上昇材30により排泄液の吸収が阻害されてしまうことを防止でき、ナプキン1の吸収性能を確保できる。
また、本実施形態のナプキン1(図6,図8)、及び、図9に示す変形例のナプキン1は、ナプキン1を厚さ方向における肌側から見て、端部配置領域32、及び、中央配置領域33を有する。端部配置領域32は、ナプキン1の長手方向の一方側の端部において、温度上昇材30が設けられた領域である。具体的には、長手方向において吸収体2の端2aよりも外側の領域において温度上昇材30が設けられた領域を端部配置領域32とする。中央配置領域33は、ナプキン1の中央領域1C(点abcdで囲われた領域)において、温度上昇材30が設けられた領域である。そのため、ナプキン1は、着用者の股下部から下腹部にかけて心地良い温かさを付与したり、着用者の股下部から腰部近傍の臀部にかけて心地良い温かさを付与したりすることができる。
ただし、上記に限定されず、ナプキン1は中央配置領域33を有さなくてもよいし、中央配置領域33の長手方向の長さが短くてもよい。つまり、長手方向において、ウィング粘着部83よりも前側(又は後側)にのみ温度上昇材30が配置されていてもよいし、長手方向においてウィング粘着部83の一部と重なる領域に温度上昇材30が配置されていてもよい。
さらに、ナプキン1の幅方向において、端部配置領域32の最大長さW1は、中央配置領域33の最大長さW2よりも長いことが好ましい。そうすることで、幅方向のより広い範囲に亘り下腹部や腰部近傍の臀部を温めることができる。また、下腹部や腰部近傍の臀部は股下部に比べて面積が広い。そのため、身体の形状に合わせて端部配置領域32の幅を長くすることで、より効果的に、心地良い温かさを着用者に付与できる。
なお、中央配置領域33のように、帯状の配置領域が幅方向に間隔を空けて配置されている場合がある。この場合、ナプキン1の中央領域1Cにおいて、幅方向の最も一方側及び最も他方側に温度上昇材30が配置された位置33a,33bの間隔を最大幅とする。同様に、長手方向における吸収体2の端2aよりも外側の領域において、幅方向の最も一方側及び最も他方側に温度上昇材30が配置された位置32a,32bの間隔を最大幅とする。
また、本実施形態では、温度上昇材30が配置された前側シート7の色が、ナプキン1を構成する他の資材(肌側シート3や中間シート4や吸収体2等)と異なる色とする。前側シート7の色は肌側シート3を介して、ナプキン1の肌面側から視認可能とする。そのため、ナプキン1を厚さ方向の肌側から見て(図8)、前側シート7が配置されている端部配置領域32の色は、ナプキン1の中央領域1Cの色と異なる。
このように、端部配置領域32の少なくとも一部の色が中央領域1Cの色と異なれば、端部配置領域32は目立ち、着用者は端部配置領域32に着目しやすくなる。そのため、着用者は、ナプキン1の長手方向の端部に温度上昇材30が設けられていることを認識しやすくなる。具体的には、ナプキン1を構成する主な資材の色が白色であるのに対して、前側シート7は温かさを表す暖色系の色(ピンク色、赤色、オレンジ色、黄色等)に着色されているとよい。そうすることで、着用者はナプキン1の温感機能を認識しやすくなる。ただし前側シート7の色は暖色系の色に限定されないものとする。
また、端部配置領域32と中央領域1Cの色が異なるとは、ユーザーがナプキン1を肌側から視認した際に、端部配置領域32を識別できる程に色差があればよい。具体的には、コニカミノルタ社製の色彩色差計CR-300又はそれと同等のものを使用して測定した場合の色差が13以上であったり、オストワルト色相環によって分類された24色の色票で2以上ずれていたりすることが好ましい。
一方、本実施形態のナプキン1では、中央領域1Cにも温度上昇材30が設けられているが、温度上昇材30が設けられていない幅方向における中央部の色と、温度上昇材が設けられている幅方向における端部(中央配置領域33)の色が、同じとなっている。
そうすることで、着用者は、ナプキン1の中央領域1Cに温度上昇材30が配置されていることを認識し難くなる。そのため、生理中で敏感になっている股下部が温度上昇材30で刺激される不安を着用者に抱かせてしまうことを防止できる。よって、着用者の股下部を温めつつ、着用者に安心感を付与できる。
ただし、上記に限定されず、例えば、端部配置領域32の色が中央領域1Cと同じ色であってもよいし、温度上昇材30の配置領域31の全域を周囲と異なる色にしてもよい。また、前側シート7を着色されたシートにするのではなく、端部配置領域32に位置する他の資材(例えば肌側シート3)を着色してもよい。
また、ナプキン1を厚さ方向における肌側から見て、温度上昇材30が設けられた端部配置領域32には、ナプキン1の前後方向を示す表示が設けられていることが好ましい。そうすることで、正しい前後の向きでナプキン1が装着され、着用者の身体の目的の部位を温度上昇材30で温めることができる。
本実施形態のナプキン1の場合、前側の端部配置領域32に、ナプキン1の腹側であることを示す表示が設けられているとよい。図8では、ナプキン1の腹側であることを示す表示として、上下方向を有する熊の図柄40が端部配置領域32に設けられている。なお、熊の図柄40の少なくとも一部が端部配置領域32に設けられていればよい。熊の図柄40の上下方向がナプキン1の前後方向に沿い、熊の図柄40の頭側(上側)がナプキン1の前側(腹側)に対応している。そのため、ナプキン1の着用時に熊の図柄40を見た着用者は、熊の図柄40が配置されている側が腹側であることを認識でき、前側の端部配置領域32が自身の腹側に位置するように、ナプキン1を着用できる。よって、端部配置領域32の温度上昇材30により着用者の下腹部を温めることができる。
また、図9に示す変形例のナプキン1の場合、後側の端部配置領域32に、ナプキン1の背側であることを示す表示が設けられているとよい。図9では、ナプキン1の背側であることを示す表示として、熊の脚(肉球)の図柄41と、「back」という文字42が設けられている。これらを見た着用者は、これらが配置されている側が背側であることを認識でき、後側の端部配置領域32が自身の背側に位置するように、ナプキン1を着用できる。よって、端部配置領域32の温度上昇材30により着用者の腰部近傍の臀部を温めることができる。
上記の表示40~42は、圧搾部20によって形成されたものであるが、印刷によって形成されていてもよい。また、腹側又は背側であることを示す表示は、ナプキン1の長手方向の前後を示すことのできる表示であればよく、上下方向を有する図柄(例えば動物や植物や乗り物等)や、文字、数字、上下方向を有する記号、及びこれらの組み合わせ等であってもよい。また、腹側又は背側であることを示す表示の上下方向は、ナプキン1の長手方向に沿って平行であるに限らず、ナプキン1の長手方向に対して90度未満で傾いていてもよい。
また、本実施形態のナプキン1には、端部配置領域32以外の領域にも、ナプキン1の前後を示す表示が設けられている。例えば、図8に示すナプキンは、圧搾部20によって形成された「HOT」という文字43や熊の脚の図柄44である。このように複数の表示40~44がナプキン1の前後を示すことで、着用者はナプキン1の前後を認識しやすく、正しい前後の向きでナプキンが装着されやすくなる。
また、図10に示す変形例のナプキン1のように、吸収性能を有する本体部50(吸収性物品本体部)と、温度上昇材30を備える温度上昇部51を有し、本体部50と温度上昇部51とが分離可能なナプキン1であってもよい。本体部50は、少なくとも肌側シート3と非肌側シート5と吸収体2を備えるものとする。温度上昇部51は、少なくとも温度上昇材30が配置されたシートを備えるものとする。温度上昇部51としては、図1に示すナプキン1の前方領域1Aのように、肌側シート3と非肌側シート5の間に、温度上昇材30が配置された前側シート7が設けられたものを例示できる。また、本体部50と温度上昇部51の分離後に吸収体2や前側シート7が露出しないように、各部50,51の外周縁50a,51aを溶着等で封止するとよい。また、本体部10にも温度上昇材30が配置されていてもよい。
本体部50と温度上昇部51は幅方向に沿う切り取り線52で接合された状態で、着用者に提供される。そうすることで、個包装体からナプキン1を取り出した着用者は、本体部50と温度上昇部51を容易に分離でき、本体部50から離れた身体の部位に温度上昇部51を貼付することができる。温度上昇部51は、非肌側面に設けられたずれ止め部(不図示)にて、着用者の下着に固定してもよいし、服に固定してもよい。また、本体部50と温度上昇部51を分離せずに使用することもできる。そのため、着用者は、自身の身体の所望の部位に温度上昇部51を当てて温めることができ、より心地良い温かさを感じることができる。
また、着用者は、温度上昇部51は取り付けたままで、本体部50だけを取り外し、別のナプキンを着用することができる。そのため、着用者は清潔なナプキンを使用することができる。逆に、着用者は、本体部50は取り付けたままで、温度上昇部51だけを取り外すこともできる。そのため、温度上昇部51によって過度な温かさを着用者に付与してしまうことを防止できる。
また、図10に示すナプキン1では、本体部50に対して、温度上昇部51が長手方向の前側にずれて配置されているがこれに限らず、温度上昇部51が長手方向の後側や幅方向の外側にずれて配置されていてもよい。また、温度上昇部51が本体部50上に厚さ方向に重なって配置されていてもよい。その場合、本体部50と温度上昇部51の分離時に、本体部50の肌側シート3が破損しないようにする。例えば、温度上昇部51の非肌側面に面ファスナーの雄材を設けるとよい。また、温度上昇部51の非肌側面のずれ止め部(接着剤)を剥離可能な資材を、本体部50の肌側面のうち吸収性能に影響しない部位に設けてもよい。
図11は、ショーツ型のナプキン1の斜視図である。図12Aは、展開且つ伸長状態であるショーツ型のナプキン1の概略平面図である。図12Bは、ショーツ型のナプキン1の概略断面図である。ここまで下着に貼付する型のナプキン1を例示したが、ショーツ型のナプキン1であってもよい。
なお、展開状態とは、ショーツ型のナプキン1の幅方向の両側部53eの接合が解かれ、ナプキン1が上下方向に展開された状態である。伸長状態とは、ショーツ型のナプキン1を皺なく伸長させた状態であり、ショーツ型のナプキン1を構成する資材の寸法が伸縮性部材の影響を受けない状態での寸法と一致又はそれに近い長さになるまでショーツ型のナプキン1を伸長させた状態である。
ショーツ型のナプキン1は外装部材53と吸収性本体54を有する。外装部材53は、図12Bに示すように、非伸縮性シート531と、長手方向に折り返された非伸縮性シートの間に配置された伸縮性シート532を備える。図示しないが、吸収性本体20は、少なくとも液透過性の肌側シートと液不透過性の非肌側シートと吸収体を備えるものとする。ただし、ショーツ型のナプキン1の構成は図示するものに限定されない。
そして、ショーツ型のナプキン1にも温度上昇材30を配置するとよい。例えば、図12Aに示すように、前側(腹側)の外装部材53に、幅方向に沿って温度上昇材30を設けたり、吸収性本体54の前側の部位に、長手方向に沿って温度上昇材30を設けたりするとよい。そうすることで、ショーツ型のナプキン1の着用者は心地良い温かさを感じることができる。
また、ショーツ型のナプキン1は、外装部材53によって着用者の胴回り、すなわち下腹部や腰部近傍の臀部が覆われる。そこで、前述のナプキン1(図6)と同様に、展開且つ伸長状態であるショーツ型のナプキン1の長手方向において、ナプキン1の前端1a1から中央側に150mm離れた位置までの領域34の少なくとも一部に、より好ましくは、ナプキン1の前端1a1から中央側に100mm離れた位置までの領域35の少なくとも一部に、温度上昇材30が設けられていることが好ましい。そうすることで、着用者の下腹部に当たるナプキン1の領域に温度上昇材30を配置でき、着用者の下腹部を温めることができる。
また、図示しないが、展開且つ伸長状態であるショーツ型のナプキン1の長手方向において、ナプキン1の後端1a2から中央側に150mm離れた位置までの領域の少なくとも一部に、より好ましくは、ナプキン1の後端1a2から中央側に100mm離れた位置までの領域の少なくとも一部に、温度上昇材30が設けられていることが好ましい。そうすることで、着用者の腰部近傍の臀部に当たるナプキン1の領域に温度上昇材30を配置でき、着用者の腰部近傍の臀部を温めることができる。ただし、ショーツ型のナプキン1が温度上昇材30を有していればよく、温度上昇材30の配置領域31は上記に限定されないものとする。
===ナプキン1の個包装体(吸収性物品包装体)===
図13は、ナプキン1を包装する包装材11を外側から見た平面図である。図14Aは、展開途中のナプキン1の個包装体10の平面図であり、図14Bは、展開前のナプキン1の個包装体10の平面図である。
個包装体10は、ナプキン1と、ナプキン1を包装する包装材11と、止着テープ12を備えている。図示する個包装体10では、包装材11の上に配置されたナプキン1が、ナプキン1の長手方向に沿う折り部F1,F2、及び、幅方向に沿う折り部F3,F4にて包装材11と共に折り畳まれる。ただし、個包装体10の折り畳み方法は特に限定されず、例えば、幅方向に沿う折り部F1,f2のみで折り畳まれていてもよいし、包装材11とは別にナプキン1のみで折り畳まれていてもよい。
温度上昇材30を備えるナプキン1を包装する包装材11は、ナプキン1が温度上昇材30を備えていることを想起させる想起表示13を有することが好ましい。想起表示13は、温かさが表現される図柄や文字や数字や記号であればよい。図13の包装材11には、包装材11の外側面側から視認可能な想起表示13が設けられている。具体的には、想起表示13として、「Feeling of Warmth」、「Keep Warming」、「Warm U UP」等の温かさを示す文字(表現)131や、熊がハートを抱きしめている図柄132が、包装材11に設けられている。
そのため、着用者は、個包装体10の展開時に包装材11の想起表示13を見て、ナプキン1の着用により温かさが得られることを認識しやすくなる。よって、ナプキン1の着用後に温度上昇材30により付与される心地よい温かさをより感じやすくなる。
想起表示13は、印刷や包装材11の圧搾によって形成するとよい。また、想起表示13は図13に示すものに限定されず、例えば、ナプキン1を着用したことにより想定される皮膚表面度を表す数字や、熊がマフラーや手袋をしている図柄等であってもよい。また、想起表示13は1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。また、想起表示13は、個包装体10が展開された状態で視認可能であったり、包装材11の内側面側から視認可能であったりしてもよい。ただし、上記に限定されず、温度上昇材30を有するナプキン1を包装する包装材が、想起表示13を有していなくてもよいとする。
===ナプキン1の個包装体10のパッケージ60===
図15は、個包装体のパッケージ60の斜視図である。図16は、パッケージ60の裏面図である。
パッケージ60は、ナプキン1が包装材11で包装された個包装体10と、個包装体10を収容する袋体61を有する。袋体61は、少なくとも合成樹脂を含むフィルム状の部材で形成された袋状の部材である。本実施形態では、透明の低密度ポリエチレン層(LDPE)と乳白色のポリエチレン層(PE)が接着した状態のフィルム部材によって形成されている。なお、図15に示すパッケージ60は、略直方体形状であるが、パッケージの形状は特に限定されず、例えば、筒状の包装材の上下を封じた袋形状のもの等であってもよい。
そして、パッケージ60の袋体61が、ナプキン1を示す図柄62,63(以下「ナプキン図柄」とも呼ぶ)を有し、ナプキン図柄62,63の中に、温度上昇材30を配置した領域を示す表示64~66(以下「領域表示」とも呼ぶ)を備えることが好ましい。ナプキン図柄62,63及び領域表示64~66は、より確実に着用者に視認されるように、パッケージ60の外側から視認可能であるとよい。また、ナプキン図柄62,63や領域表示64~66は袋体61に印刷で形成するとよい。また、ナプキン1において温度上昇材30が配置されている位置と、ナプキン図柄62,63における領域表示64~66の位置とが、完全に一致していなくてもよい。
具体的に、袋体61の正面(図15)には、ナプキン図柄62が設けられている。そして、領域表示64として、前側シート7が配置された領域に対応するナプキン図柄62の部分に格子柄が付され、前記部分が暖色系の色で着色されている。
また、袋体61の裏面(図16)にも、ナプキン図柄63が設けられている。そして、領域表示65として、前側シート7が配置された領域に対応するナプキン図柄63の部分に格子柄が付され、前記部分が暖色系の色で着色されており、前記部分の中に「腹部熱感10cm」という文字が設けられている。また、袋体61の裏面には、領域表示66として、吸収体2と重なるように温度上昇材30が配置された領域に対応するナプキン図柄63の部分にも、暖色系の色の格子柄が付されている。また、ナプキン図柄63の外には、「25cmの吸収区域にも温熱感あり」という文字67が設けられている。
そのため、着用者は、パッケージ60の購入時や開封時にナプキン図柄62,63及び領域表示64~66を見て、ナプキン1を着用することにより温かくなること、及び、ナプキン1において温かくなる部位を認識しやすくなる。よって、ナプキン1の着用後に温度上昇材30により付与される心地よい温かさをより感じやすくなる。また、着用者はナプキン1の温かくなる部位を自身の身体の温めたい部位(例えば下腹部等)に適切に当てることができ、ナプキン1が正しく装着されやすくなる。
ただし、上記に限定されず、温度上昇材30を有するナプキン1の個包装体10は、ナプキン図柄62,63及び領域表示64~66を有さないパッケージ60に収容されていてもよい。
また、パッケージ60の袋体61が、温度上昇材30の機能を想起させる想起表示を、外部から視認可能に有することが好ましい。本実施形態では、製品名表示68の「HOT暖℃」が、想起表示でもある。「HOT暖℃」の「HOT」や「暖」は、いずれも温度上昇材30による温め機能を想起させるものである。具体的には、袋体61の正面(図15)において、想起表示である「HOT暖℃」より外側の領域を黒色等の濃い色とし、「HOT暖℃」の文字の縁を赤色(所定の色)で着色し、「HOT暖℃」の文字の内側に、箔押し加工で銀色の粒子状の金属が圧着されている。なお、箔押し加工による圧着させる金属は、粒子状でもシート状、ブロック状等、任意の状態の金属を用いることができる。これによって、「HOT暖℃」の文字の内側の金属で、「HOT暖℃」の文字の縁の赤色が乱反射して、「HOT暖℃」の文字が立体感のある文字となり、着用者が想起表示に着目しやすくなり、着用者は、温感剤30の機能を認識しやすくなる。また、「HOT暖℃」より外側の領域を黒色等の濃い色とすることで、より「HOT暖℃」の文字を目立たせることができる。
===温度上昇部材70===
図17A及び図17Bは、温度上昇部材70の個包装体72の説明図である。図17Aは、展開状態の個包装体72の平面図であり、図17Bは、展開前の個包装体72の平面図である。図18は、ナプキン80(吸収性物品)の個包装体82の説明図であり、展開状態の個包装体82の平面図である。
前述の図10に示すナプキン1では、吸収性能を有する本体部50と、温度上昇材30を備える温度上昇部51とが、分離可能に接合された状態で、着用者に提供される。これに限らず、吸収性能を有するナプキン80(図18)と、温度上昇材30を備える温度上昇部材70(図17A)とが、別々に包装され、分離された状態で、着用者に提供されてもよい。
ナプキン80は、少なくとも、液透過性の肌側シート、液不透過性の非肌側シート、及び肌側シートと非肌側シートとの間に設けられた吸収体2を備えていればよい。ナプキン80は、温度上昇材30を備えていても、備えていなくてもよい。
温度上昇部材70は、ナプキン80と共に使用され、少なくとも、温度上昇材30が配置されたシートを備えていればよい。具体的には、図1に示すナプキン1の前方領域1Aのように、肌側シート3と、非肌側シート5の間に、温度上昇材30が配置された前側シート7が設けられたものを例示できる。また、図17Aに示す温度上昇部材70の平面形状は、長手方向の両端部が外側に湾曲した略長方形状であるが、特に制限されない。
ナプキン80及び温度上昇部材70は、それぞれの包装材81,71と共に折り部Fにて折り畳まれ、個包装体72,82となる。ナプキン80の個包装体82及び温度上昇部材70の個包装体72は、同じパッケージの袋体に収容されるとよい。つまり、ナプキン80と温度上昇部材70とがセットで着用者に提供されるとよい。そうすることで、着用者は、生理痛や冷え等を感じる時には、ナプキン80と共に温度上昇部材70を使用でき、心地良い温かさを感じることができる。一方、着用者は、生理痛や冷え等を感じない時には、ナプキン80のみを使用でき、着用者の身体を過度に温めてしまうことを防止できる。
また、温度上昇部材70の個包装体72のみが、パッケージの袋体に収容されて、着用者に提供されてもよい。この場合、着用者は、一般のナプキン(着用者が好んで使用しているナプキンや昼用,夜用等の用途に応じたナプキン)と共に適宜温度上昇部材70を使用できる。
なお、温度上昇部材70は、ナプキン80や一般のナプキンに接合された状態で使用されてもよい。例えば、温度上昇部材70の非肌側面に設けられたずれ止め部(不図示)がナプキン80等に接合された状態で使用されてもよい。また、温度上昇部材70がナプキン80等を破損せずにナプキン80等に剥離や接合が可能なように、温度上昇部材70の非肌側面に面ファスナーを設けてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。