特許文献1に記載の試料採取システムでは採取対象となる生体標本はシャーレあるいはスライドガラスに載せて顕微鏡の所定の位置に載置される。生体標本の下にはシリコンシートあるいはPDMSなどの膜が敷かれており中空採取針の破損を防止している。中空採取針は生体標本を貫通し、微小切片を作製し、上記シリコン膜の途中で停止する。微小切片は中空採取針の内部に保持されるので、溶液などを用いて押し出し回収する。このためには中空採取針の先端が生体標本を貫通したところ、すなわちシリコンシートやPDMS膜の内部にとどまるように下降限界位置を詳細に調整する必要がある。中空採取針の先端が行き過ぎるとシャーレやスライドガラスと中空採取針の先端が衝突して中空採取針を破損してしまう。一方、針の先端が生体標本を突き抜けないと生体標本から微小切片を採取できない。
対象となる生体標本の複数部位から微小切片を採取する場合には、中空採取針が常に生体標本を打ち抜いた直後に、シリコンシートなどの途中で停止することが望まれる。種々部位を打ち抜く場合には、採取針ユニットが生体標本表面X-Y方向に移動して打ち抜く場合と、生体標本保持台が移動して採取部位を中空採取針の真下に移動して打ち抜く場合がある。いずれの場合も移動平面に対して生体標本が平行に置かれている必要がある。平行でないと中空採取針の下降限界位置が生体標本を保持している標本保持台の表面よりも下になったりあるいは表面に届かなかったりする。この場合には中空採取針の先端を破損したり、あるいは生体標本を打ち抜けなかったり、という問題が生じる。
一方、蛍光を測定するなどの光学的な要請から、生体標本を石英製のスライドガラスに直接載置する場合がある。この場合には中空採取針は石英表面と衝突するので先端が破損しやすい。
また、中空採取針の先端は円環形状をしており、その端面は、通常は平坦に形成されている。しかし、中空採取針の出来具合により、一部が欠けていたり、針の先端が平坦でなかったりする場合がある。このような場合には中空採取針の一部は生体標本を貫通するが、他の一部は貫通しない状態となる。このようになると微小切片は部分的に生体標本とつながっているので、微小切片として打ち抜かれておらず中空採取針の内部に回収できない。
生体標本はガラスあるいは石英製のシャーレやスライドガラスに保持されるが、中空採取針の先端がガラスや石英の表面にぶつかると中空採取針が破損する。このために下降限界の位置設定は厳密に行う必要があり手間がかかる難点があった。一方、中空採取針の先端の刃が平坦でないと、得られる微小切片の切断部に生体標本と部分的につながっているところが存在して、微小切片の回収が困難になる。また、生体標本を載置する生体標本保持台のなす平面と、中空採取針を移動させる採取針駆動機構あるいは生体標本保持台を移動させる標本保持台駆動機構の動作平面が平行でないと採取位置により中空採取針が下降する下限の位置と生体標本保持台の表面との距離が変化してやはり切断が不十分となり微小切片を採取回収することができない。
生体の機能を知るには生体標本の種々部位の遺伝子発現やたんぱく質発現情報の取得が重要である。このためには生体標本の種々部位から微小切片を分析用に採取する必要がある。これを可能とする採取システムには繰り返し微小切片を採取可能な採取針ユニットが必要である。生体標本を打ち抜き採取するには、中空採取針が生体標本を載置している生体標本保持台の表面まで到達する必要がある。種々部位の打ち抜き採取では中空採取針あるいは生体標本保持台をX-Y平面に沿って動かす。しかし、中空採取針あるいは生体標本保持台のX-Y平面上の移動が生体標本保持台の平面と一致しないときには不都合が生じる。すなわち、中空採取針が採取部位によって生体標本の一部又は全部を打ち抜けなかったり、あるいは中空採取針が激しく生体標本を載置したシャーレやスライドガラスの表面に衝突して中空採取針を損傷したりすることがある。生体標本が固く打ち抜けないことや、中空採取針が多少かけており打ち抜けないこともある。
このような難点を解消するために新たな技術の開発が望まれていた。すなわち、中空採取針の先端の下降限界を、詳細に手間をかけて設定する必要がなく、打ち抜くときの中空採取針の破損を防止し、どのような生体標本でも打ち抜ける手法あるいはシステムの開発が望まれていた。
本発明はこのような難点を克服するためになされたものである。すなわち詳細な下降限界位置設定を不要とし、従来法による打ち抜きで不完全な切断状況になる場合でも微小切片の採取回収を可能とする手段を開示することが本発明の目的である。
上記課題を克服するために、本発明では採取針ユニットを少なくとも中空採取針、それを保持する採取針ホルダーおよび採取針ホルダーカバーから構成する。採取針ユニットは採取針ホルダーカバーを介しZ軸アクチュエータにより上下する可動アームに取り付けられる。採取の時には可動アームが下がることで中空採取針を降下させて生体標本を打ち抜く。採取針ホルダーの軸とばねの軸をほぼ同じにするように、また、採取針に過剰の力がかかった時には採取針ホルダーカバーに対して上下方向に移動するばね機構を取り付けてある。本発明のシステムでは中空採取針は生体標本を載置したシャーレやスライドガラスの上部表面位置よりも下まで来るように設定する。これにより多少生体標本の下部位置が上下に変動しても中空採取針は破損することなく生体標本を完全に打ち抜くことができる。中空採取針はシャーレやスライドガラスに衝突するが、ばね機構により中空採取針の大きな損傷を免れることができる。ばね機構は生体標本の下部位置が最大0.5mm程度変動しても中空採取針で打ち抜けるように設定できるので中空採取針の下限位置を詳細に設定する必要はない。
ばねは採取針ホルダーと同軸状に外側に配置され、採取針ホルダーの中空採取針取り付け側先端近傍に設けられたストッパーと採取針ホルダーカバーの間に設置される。あるいは、採取針ホルダーの中空採取針取り付け側と反対側あるいは中間に設けても良い。さらに、採取針ユニットを保持する可動アーム内に取り付けても良い。
一方、中空採取針の刃先面が平面でなかったり、生体標本保持台と平行でなかったりすると、生体標本を完全には切断できない。本発明ではこのような難点を回避する方法として採取針ホルダーに回転機構を付与し、中空採取針を回転させることで微小切片を回収できる。一般に、物は切断方向に単に押して切るよりも、切断方向に押すと同時に水平方向にこすって切るほうが弱い力で切断できる。この場合、刃先にかかる力も弱くて済み、硬い生体標本でも採取の失敗が少ない利点を持つ。
回転機構を持つ生体微小切片採取用中空採取針システムでは中空採取針を中空採取針の中心を軸として正確に回転させることが重要である。回転軸が中空採取針の中心軸と一致していないと中空採取針の先端が歳差運動を行い、生体標本を傷つける。このために本発明では中空採取針の先端を保持する偏心防止体を設けて中空採取針のブレを防いでいる。また、中空採取針が生体標本に食い込んだ後、回転することで生体標本に無用な傷がつかないようにしている。
採取した微小切片は溶液流により押し出すので溶液流の通り道の配管も回転部分と固定部分から構成する。この間はOリングを介して結合し、配管にゆがみが生じないようにしている。
本方式では回転機構を具備した生体微小切片採取用中空採取針システムを用いて厚みのある生体標本の打ち抜き採取も可能である。この場合には採取した微小切片と中空採取針内側の接着力が大きく、溶液流の圧力だけでは押し出せないことがある。このような場合に備えて溶液流に加えて中空採取針の先端を貫通可能な押し出し棒を中空採取針ホルダーに具備している。微小切片回収時に押し出し棒を押し込み、押し出し棒の先端に微小切片が付着する形で中空採取針から押し出す。さらに溶液流で先端にある微小切片を回収容器へと運搬する。押し出し棒としては中空採取針内径よりも細いタングステンワイヤーが用いられる。ワイヤーの外径は中空採取針の内径の7割以下が目安である。
本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、前記微小切片を前記生体標本から切断採取する中空採取針と、前記生体標本を載置する載置部と、前記微小切片の採取時に、前記中空採取針と前記載置部とが衝突した場合に、前記衝突による衝撃を緩和する緩衝機構と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記中空採取針を保持する採取針ホルダーと、前記採取針ホルダーを移動可能に挿通する採取針ホルダーカバーと、を備え、前記緩衝機構が前記採取針ホルダーの移動方向に変形可能な弾性体を有し、前記微小切片の採取時に、前記中空採取針に対して所定以上の外力が付加されると、前記弾性体が変形し、前記採取針ホルダーが前記採取針ホルダーカバー内を移動する場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記採取針ホルダーを回転させる回転機構を備え、前記採取針ホルダーが前記中空採取針の軸を中心とて回転可能である場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、溶液吐出機構を備え、前記中空採取針内に溶液を流動させ、前記中空採取針内に保持された前記微小切片を前記溶液と共に外部に吐出する場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、押出部と、前記押出部を移動させる押出部駆動機構と、を備え、前記中空採取針内に保持された前記微小切片を前記押出部により外部に押し出す場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記弾性体が圧縮コイルばねであって、前記圧縮コイルばねに前記採取針ホルダーが挿通され、前記中空採取針と、前記採取針ホルダーと、前記採取針ホルダーカバーと、前記圧縮コイルばねと、を有する採取針ユニットが、前記採取針ユニットを移動させる可動アームに装着される場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記採取針ホルダーが前記中空採取針を保持する保持部材を備え、前記保持部材に前記中空採取針を位置決めする位置決め部が形成されている場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記中空採取針が金属製であり、内径が0.5mm~0.2mmである場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記中空採取針が金属製であり、内径が0.2mm~0.05mmである場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記緩衝機構が前記載置部を保持する弾性部材を有し、前記微小切片の採取時に、前記載置部に対して所定以上の外力が付加されると、前記弾性部材が変形し、前記載置部が移動する場合がある。
また、本発明の生体微小切片採取用中空採取針システムは、前記中空採取針を保持する採取針ホルダーと、前記採取針ホルダーを回転させる回転機構と、を備え、前記採取針ホルダーが前記中空採取針の軸を中心とて回転可能である場合がある。
中空採取針が生体標本を載置するシャーレやスライドガラス等の載置用容器に接触しても中空採取針が損傷するのを回避することができる。回転機構は中空採取針の刃をターゲットに当てて擦ることで切断し、打ち抜きを容易にする。この結果、硬い生体標本でも、また、中空採取針の一部が欠けていても生体標本から微小切片を打ち抜くことができる。回転機構は中空採取針の刃を強く生体標本に押し付けなくても切断打ち抜きを可能にするので中空採取針の損傷を防ぎ長持ちさせることができる。この結果、多くの微小切片を中空採取針の交換なしに採取することが可能となる。これは全自動で多くの微小切片を採取するのに有効である。
本明細書において、「生体標本」とは、動物、ヒト、植物、微生物等の生体の個体の一部若しくは全部をいう。具体的には、動物、ヒト若しくは植物由来の組織材料をいう。生体標本の中には、疾患を有する患者より採取された生検のための材料を含む。
本明細書において、「試料」、「微小切片試料」あるいは「微小切片」とは、前記「生体標本」の一部又は全部を観察、分析、解析、疾患の診断等に使用するために、採取された微小切片をいう。
また、本明細書における反応セルとは採取した試料を入れる容器、それらが連なったものおよび「タイタープレート」あるいは、一般に、「マイクロタイタープレート」と言われるものを含んだ容器のことである。
本明細書において、「顕微鏡」とは光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、ラマン顕微鏡あるいはレーザ顕微鏡など生体標本の画像を取得して観察するための装置を言う。この装置で得られるイメージ画像情報をコンピュータに取り込み、採取位置を決定する。イメージ画像座標から採取システムの座標に変換し、生体標本保持台駆動XYアクチュエータの移動量の計算などを行う。ここでイメージ画像座標とはカメラの受光素子の1ピクセルを刻み単位とした座標系であり、観測機器に固有のものである。採取システム座標とは生体標本保持台と中空採取針のX-Y座標を相対的に駆動するアクチュエータの動き方向を基準とし、アクチュエータの1ステップを刻み幅とした座標系である。
本明細書において、採取位置とは中空採取針が下降して微小切片を採取する箇所のX-Y座標位置である。採取部位とは生体標本中の微小切片を採取する微小領域である。
本発明のシステムにおいて、中空採取針は生体標本保持台のなす平面に垂直な軸方向に少なくとも移動させる。本明細書において、この方向をZ軸と記載し、Z軸と直交する平面方向をX-Y平面と記載する。生体標本は、このZ軸方向以外の方向、例えば、X-Y平面方向に移動可能な生体標本保持台に載置され、生体標本の採取部位を中空採取針の移動軸上の採取位置に移動させて配置し、中空採取針をZ軸方向に下降限界まで移動させて生体標本の採取部位を切断採取することにより、微小切片試料を採取する。また、中空採取針は採取した微小切片試料を収納するときにZ軸と直行するもう1軸あるいは2軸方向に移動する場合がある。また、生体標本保持台を固定して中空採取針をX-Y-Zの3軸方向に移動してもよい。
以下、本発明の実施例について、添付図1~図17を参照して説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。なお、図1、図3~図8、図10、図13、図16、図17における上下を本試料採取システムの上下として説明する。
図1および図2には、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムの全体構成の模式図および1例の写真を示した。顕微鏡8のステージ8A上には、採取機構部が固定されている。採取機構部は、採取針ユニット1と、可動アーム2と、採取針駆動Z軸アクチュエータ3と、生体標本から採取した微小切片を収容するタイタープレート4と、採取針システム基板5と、生体標本を載置する生体標本保持台6と、生体標本保持台駆動XYアクチュエータ7と、を備えている。また、顕微鏡8には高解像度カメラ9が取り付けてあり、生体標本保持台6に載置された生体標本(図示せず)のイメージ画像を撮影し、コンピュータ12のモニター画面12Aで見ることができる。本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは採取機構部、電源制御部11、コンピュータ12からなっている。本実施例は主に採取機構部の中の採取針ユニット1およびそれを保持する可動アーム2に関する。高解像度カメラ9の情報はコンピュータ12に送られ、採取位置決定に使用される。図1に示す10は、照明用光源である。
生体標本201は、直接あるいはシャーレ202あるいはスライドガラス203などの載置用容器(図9~図14参照)を介して生体標本保持台6に載置されるが、載置部である生体標本保持台6や載置用容器がガラスなどの硬い物質でできている場合には中空採取針101の先端部101Aが接触した際に中空採取針101を破損する恐れがある。これを回避するために本実施例では中空採取針101を保持している採取針ユニット1あるいは採取機構部に衝突ダメージを緩和するばね機構を取り付けている。中空採取針101は円筒形状を有し、その内径は一定であるが外径は先端部101Aで円錐状に先細りしている。先端部101Aのナイフ端の曲率は10ミクロン以下である。
中空採取針101は採取針ホルダー102に取り付けられ、採取針ホルダーカバー103と共に採取針ユニット1を構成する。採取針ユニット1は採取針駆動Z軸アクチュエータ3の可動アーム2に取り付けられる。生体標本201は生体標本保持台6に載置された後に、生体標本保持台駆動XYアクチュエータ7の所定の位置にセットされる。採取針ユニット1の下降限界の決定および採取位置の確認には、まず生体標本201を載せる前に中空採取針101の先端部101Aがシャーレ202あるいはスライドガラス203に触れるまで中空採取針101を採取針駆動Z軸アクチュエータ3により降下させる。採取針駆動Z軸アクチュエータ3の相対位置は制御コンピュータ12のモニター画面12Aに表示されるので、中空採取針101の降下はモニター画面12Aに表示された映像を確認しながら行う。
図3は本実施例による採取針ユニット1を可動アーム2に取り付けたときの断面模式図である。採取針ユニット1は、中空採取針101、採取針ホルダー102、採取針ホルダーカバー103、スリットカバー104、弾性体である圧縮コイルばね105、偏心防止体106、保持用カバー107、下ストッパー108および上ストッパー109を備えている。採取針ユニット1は、内径0.2mmの金属製の中空採取針101を具備し、外径1.0mmの採取針ホルダー102を装備しており、Z軸方向に移動可能な可動アーム2に装着される。もちろん内径0.1mmの金属製中空採取針を用いることや外径が1.1mmなど1.0mmと異なる採取針ホルダー102を用いても良い。可動アーム2には回転駆動を行うモーター112および押出部としての押し出し棒114を駆動する押出部駆動機構であるソレノイド117が装着されている。
中空採取針101は、円筒形状に形成された採取針ホルダー102に下側から内部に押し込まれる形で固定される。採取針ホルダー102は、円筒形状に形成された採取針ホルダーカバー103に挿通されており、採取針ホルダーカバー103内を摺動することができる。採取針ホルダーカバー103の下側部103Aは、円筒形状に形成されたスリットカバー104に挿入され保持されている。採取針ホルダーカバー103の上側部103Bは、円筒形状に形成された保持用カバー107に挿入され保持されている。スリットカバー104の上端部104Bと保持用カバー107の下端部107Aは当接している。採取針ユニット1は、保持用カバー107を可動アーム2に固定することにより可動アーム2に取り付けられる。また、採取針ホルダー102の下端側は圧縮コイルばね105に挿通されている。採取針ホルダー102の下端部102Aには、圧縮コイルばね105が抜け落ちないようにストパー108がつけられている。圧縮コイルばね105は内径1.28mm、外形1.92mmで外径1.0mmの採取針ホルダー102を中に通すことができる。採取針ホルダーカバー103は内径が採取針ホルダー102の外径よりもわずかに大きく形成され、採取針ホルダーカバー103の外径は2.0mmなので、圧縮コイルばね105の上端側のストッパーの役割をする。しかし内径2.0mmのスリットカバー104の中には納まる。圧縮コイルばね105はストッパー108と採取針ホルダーカバー103で挟まれる形となる。また、採取針ホルダー102が採取針ホルダーカバー103に対して相対的に下側に移動することを規制するために、採取針ホルダー102には採取針ホルダーカバー103の上部出口側にストッパー109が設けられている。この位置を調整することで圧縮コイルばね105の弾性力をコントロールすることができる。
採取針ホルダー102のストッパー109が取り付けられた部分よりも上側には、採取針ホルダー102を軸中心に回転させる回転機構111が取り付けられている。回転機構111としては、ギヤあるいはプーリーが使用される。さらに、採取針ホルダー102の上端部102Bには、T字ジョイント113が取り付けられており、このT字ジョイント113を介して溶液流路を形成するチューブ115および押し出し棒114が取り付けられている。すなわち、採取針ホルダー102は先端(下端)に中空採取針101を保持し、中心軸を中心として回転が可能である。この回転を支えるのは採取針ホルダー102の外径とほほ同じ内径を持つ採取針ホルダーカバー103であり、回転時に中空採取針101がブレ回転するのを防ぐ偏心防止体106がスリットカバー104の下端部104Aに取り付けられている。
押し出し棒114を用いない場合にはL字ジョイント(図示せず)を介してチューブ115が取り付けられる。L字あるいはT字ジョイント113は、採取針ホルダー102が回転機構111を介して回転してもチューブ115が回転しないように、Oリングなどを用いた回転防止機構(図示せず)を具備している。押し出し棒114は、採取針ホルダー102内を軸方向(長手方向)に摺動可能である。溶液流路を形成するチューブ115は溶液吐出機構116に接続されている。採取した微小切片を反応セル(図示せず)に回収するときには吐出機構116から溶液流がチューブ115、採取針ホルダー102、中空採取針101の内部を通って中空採取針101の先端(下端)から微小切片を押し出す形で吐出される。また、押し出し棒114も押出部駆動機構であるソレノイド117に接続されており、微小切片を回収するときに押し出し動作を行うことができる。
以下、微小切片の採取の手順に従って説明する。中空採取針101をスリットカバー104の先端にある偏心防止体106に形成されたスリット106A(細孔)を通して採取針ホルダー102に押し込み固定する。採取針ユニット1は回転機構111が装備されている可動アーム2に取り付ける。次に、採取機構部の初期化を行う。生体標本201を載せる前のシャーレ202あるいはスライドガラス203を生体標本保持台6に載置する。次に採取針ユニット1を徐々に下げ、中空採取針101の先端部101Aがシャーレ202あるいはスライドガラス203の表面に接触するまで下げる。接触したところから0.2mm下がったところを採取針ユニット1の下降限界と設定する。中空採取針101を下降限界まで下げるとシャーレ202あるいはスライドガラス203に衝突することになるが、中空採取針101の先端部101Aに外力が付加された場合に、圧縮コイルばね105が収縮することで、中空採取針101が採取針ホルダーカバー103に対して相対的に上昇し、中空採取針101に付加される外力を低減するため、中空採取針101は損傷を免れる。この下げた状態で中空採取針101の先端部101Aが顕微鏡8で観察できるので、コンピュータ12のモニター画面12Aに表示される顕微鏡8の画像の中空採取針101の中心軸C上に生体標本保持台6に付された位置マーカーを持ってくる。ここが微小切片の採取位置である。採取針ユニット1を引き上げ、待機位置に戻す。採取針ユニット1は採取時あるいは回収時以外は待機位置に停止している。
シャーレ202あるいはスライドガラス203上に生体標本201を載置する。顕微鏡8の画像を見て採取すべき位置をコンピュータ12のモニター画面12A上で決定する。採取部位の画像上の位置座標は生体標本201を載置した生体標本保持台6を移動させる生体標本保持台駆動XYアクチュエータ7の座標に変換される。この情報を用いて採取部位を採取位置まで移動する生体標本保持台駆動アクチュエータ7の動作が決定される。
コンピュータ12のモニター画面12A上のコントローラタブ(図示せず)で採取開始をクリックすると微小切片の採取が開始される。採取信号を得て、採取針ユニット1が下降限界に達すると中空採取針101は一定時間回転し、生体標本201から微小切片を切断採取する。回転時間はあらかじめ指定するが、通常1~2秒である。生体標本201の厚さが大きいときや硬いときには回転時間を増やす必要がある。回転が終わると採取針ユニット1は待機位置に戻る。切断採取された微小切片は中空採取針101の先端部101A内部に保持される。
この回転切断打ち抜き方式で重要なことは中空採取針101が中心軸Cを中心に回転することである。回転動力は外部のモーター112から採取針ホルダー102に伝えられる。この時、採取針ホルダー102の回転軸上に中空採取針101が配置され、中空採取針101の中心軸Cと採取針ホルダー102の回転軸が一致すればよいが必ずしもそうならないことが多い。このような場合にも生体標本201の採取部位から正確に回転採取できるようにスリットカバー104の先下端部104Bには中空採取針101の外径とほぼ同じサイズのスリット106A(細孔)を有する偏心防止体106が設けられている。これにより中空採取針101が偏心回転することを防いでいる。
次いでタイタープレート4が移動し、微小切片を回収する反応セルが中空採取針101の真下に配置される。採取針ユニット1が降下し、中空採取針101の先端部101Aが反応セルの底面から5mm程度の位置で停止する。次に、溶液吐出機構116が駆動し、溶液がチューブ115、採取針ホルダー102および中空採取針101の内部を流動し、先端部101Aから溶液流が吐出される。このとき中空採取針101の内部に保持されていた微小切片が反応セル中に押し出される。生体標本201の厚さが大きいときには溶液流により採取された微小切片が中空採取針101の内部から排出されないこともある。このようなトラブルをなくすために本実施例ではタングステン線からなる押し出し棒114が中空採取針101の内部に置かれている。中空採取針101の内部に配置された押し出し棒114は溶液流の抵抗にもなるので、外径は中空採取針101の内径の7割以下が良い。押し出し棒114は溶液吐出とほぼ同時に中空採取針101の先端部101Aから微小切片を機械的に中空採取針101の外へ押し出す。微小切片が押し出されるのとほぼ同時に溶液が吐出されるので微小切片は反応セル中に回収される。この時、溶液で中空採取針101の先端部101Aおよび押し出し棒114が洗浄されるので連続採取が可能である。
微小切片の回収が終わると採取針ユニット1は待機位置に戻る。反応セルを具備したタイタープレート4も元の待機位置に戻る。次の採取部位が中空採取針101の真下に配置され、次の採取動作が繰り返される。この採取動作は指定した採取部位の数だけ繰り返される。
中空採取針101を回転させると押す力が弱くても生体標本201を打ち抜き切断できる利点がある。打ち抜き時、中空採取針101の刃の部分は固いシャーレあるいはスライドガラスの表面と衝突するが、当該表面に押し付ける力は圧縮コイルばね105を介するので固定されている場合に比べると遥かに弱く、中空採取針101の刃を痛めることはない。すなわち繰り返し採取が可能となる。
生体標本201が薄い病理切片などの場合には回転機構を使うまでもない。生体標本201をPDMS膜あるいは薄いシリコンシートを介してシャーレ202あるいはスライドガラス203の上に載置する。ばね機構のある採取針ユニット1を用いれば中空採取針101の先端(下端)位置を詳細に位置決めすることなく微小切片を打ち抜き採取できる。この場合も中空採取針101の先端部101Aはシャーレ202やスライドガラス203表面に衝突するが圧縮コイルばね105により過剰な圧力が中空採取針101の刃にかかることはなく、中空採取針101の刃が破損することはない。
本実施例の中空採取針101には、先端部101Aの端面がほぼ平坦であるものを用いているが、回転機構を用いる場合はこの限りでない。一部が欠けているもの、波型のものなども用いることができる。
上記説明では生体標本201を観察し、複数の採取部位をあらかじめ決定して採取する例で説明したが、生体標本201を観察しながらその都度採取することもできる。この場合には生体微小切片採取用中空採取針システムの操作をタッチパネルなどで行うこともできる。
本実施例では採取針ホルダー102を支える部分である採取針ホルダーカバー103の長さを長くすることで、採取針ホルダー102自身のブレを小さくすることができる利点がある。
図4に示すように、本実施例では採取針ホルダー102はステンレススチール製のパイプ(外径1.0mm、内径0.7~0.8mm)に保持部材であるテフロン(登録商標)チューブ118を挿入した形のものを用いている。中空採取針101を挿入し、3mm程度入ったところで止まるようにするためにテフロンチューブ118を採取針ホルダー102に挿入後、採取針ホルダー102先端(下端)約3mmのところに位置決め部としての絞り118Aを入れて内径が細くなるようにしてある。これにより気密を保ちつつ、中空採取針101を一定長さだけ採取針ホルダー102に押し込んで固定することができる。
もちろん、外径の小さな金属パイプに段継する形で中空採取針101を固定して用いても良い。この場合には採取針ホルダー102と中空採取針101は一体化していることになる。
本実施例では、採取針ホルダーカバー103、圧縮コイルばね105、ストッパー108が緩衝機構を構成する。
以上のように、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、微小切片を生体標本201から切断採取する中空採取針101と、生体標本201を載置する生体標本保持台6、スライドガラス202あるいはシャーレ203と、微小切片の採取時に、中空採取針101と生体標本保持台6、スライドガラス202あるいはシャーレ203とが衝突した場合に、前記衝突による衝撃を緩和する採取針ホルダーカバー103、圧縮コイルばね105、ストッパー108と、を備えることにより、中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避し、中空採取針101の破損を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、中空採取針101を保持する採取針ホルダー102と、採取針ホルダー102を移動可能に挿通する採取針ホルダーカバー103と、を備え、緩衝機構が採取針ホルダー102の移動方向に変形可能な圧縮コイルばね105を有し、微小切片の採取時に、中空採取針101に対して所定以上の外力が付加されると、圧縮コイルばね105が変形し、採取針ホルダー102が採取針ホルダーカバー103内を移動することにより、中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避し、中空採取針101の破損を防止することができる。また、これにより、生体標本201から微小切片を採取する際に下降する中空採取針101の下降限界位置の設定に詳細な調整が不要となるため、下降限界位置の設定が容易となる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、採取針ホルダー102を回転させる回転機構111を備え、採取針ホルダー102が中空採取針101の軸Cを中心とて回転可能であることにより、生体標本201が硬い場合や中空採取針101の一部が欠けていても生体標本201から微小切片を容易に打ち抜くことができる。また、中空採取針101を回転させることにより中空採取針101の刃を生体標本に強く押し付けなくても切断打ち抜きを可能にするので中空採取針101の損傷を防ぎ長持ちさせることができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、溶液吐出機構116を備え、中空採取針101内に溶液を流動させ、中空採取針101内に保持された微小切片を溶液と共に外部に吐出することにより、溶液により微小切片の吐出と中空採取針101内部の洗浄を同時に行うことができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、押し出し棒114と、押し出し棒114を移動させるソレノイド117と、を備え、中空採取針101内に保持された微小切片を押し出し棒114により外部に押し出すことにより、微小切片を中空採取針101内から確実に取り出すことができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、弾性体が圧縮コイルばね105であって、圧縮コイルばね105に採取針ホルダー102が挿通され、中空採取針101と、採取針ホルダー102と、採取針ホルダーカバー103と、圧縮コイルばね105と、を有する採取針ユニット1が、採取針ユニット1を移動させる可動アーム2に装着されることにより、圧縮コイルばね105が収縮することで中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避すると共に、可動アーム2により採取針ユニット1を所望の位置に移動させることができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、採取針ホルダー102が中空採取針101を保持するテフロンチューブ118を備え、テフロンチューブ118に中空採取針101を位置決めする絞り118Aが形成されていることにより、採取針ホルダー102に対して中空採取針101を所望の位置で位置決めし固定することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、中空採取針101が金属製であり、内径が0.5mm~0.2mmであることにより、生の生体標本や厚みが0.2mm以上の厚い生体標本から微小切片の打ち抜き採取が可能になる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、中空採取針101が金属製であり、内径が0.2mm~0.05mmであることにより、薄い生体標本201の詳細な位置を採取部位として指定し、指定した狭い範囲から微小切片を採取することができる。
図5は、本発明の実施例2を示したものであり、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例は採取針ホルダー102をベアリング121A,121Bで支える例である。ここでは採取針ホルダー102の外径よりもかなり大きな内径を持った採取針ホルダーカバー103を用いている。採取針ホルダーカバー103内に2つのベアリング121A,121Bを配置し、採取針ホルダー102を支持している。また、採取針ホルダーカバー103が実施例1におけるスリットカバー104の役目も果たしている。ベアリング121Aは上方向に動かないように固定金具122で固定され、ベアリング121Bは下方向に動かないように固定金具123で固定される。採取針ホルダー102はベアリング121A,121Bの内部を摺動することができる。2つのベアリング121A,121Bの中間に採取針ホルダー102に固定された2つのストッパー108A,108Bを配置し、ベアリング121Aとストッパー108Aとの間に弾性体である圧縮コイルばね105Aを配置し、ベアリング121Bとストッパー108Bとの間に弾性体である圧縮コイルばね105Bを配置する。これにより、上方向および下方向にばね作用を発生させることができる。
中空採取針101は偏心防止体106のスリット106Aに通して採取針ホルダー102に挿入され、固定される。回転に際して中空採取針101が偏芯運動をしないようにするのが偏心防止体106の役目である。以下、基本的な動作は実施例1と同じである。
本実施例では、圧縮コイルばね105A、圧縮コイルばね105B、ストッパー108A,ストッパー108B、ベアリング121A、ベアリング121Bが緩衝機構を構成する。
以上のように、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、中空採取針101と、中空採取針101を保持する採取針ホルダー102と、採取針ホルダー102を移動可能に挿通する採取針ホルダーカバー103と、採取針ホルダー102の移動方向に変形可能な圧縮コイルばね105A,105Bと、を備え、微小切片の採取時に、中空採取針101に対して所定以上の外力が付加されると、圧縮コイルばね105A,105Bが変形し、採取針ホルダー102が採取針ホルダーカバー103内を移動することにより、中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避し、中空採取針101の破損を防止することができる。また、これにより、生体標本201から微小切片を採取する際に下降する中空採取針101の下降限界位置の設定に詳細な調整が不要となるため、下降限界位置の設定が容易となる。
図6及び図7は、本発明の実施例3を示したものであり、上記実施例1および実施例2と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例は回転機能を有しない採取針ユニット1の例である。この場合には実施例1および実施例2で用いた偏心防止体106およびスリットカバー104は不要となる。この場合には保持用カバー107も取り除き、採取針ホルダーカバー103を図6に示すように直接可動アーム2に取り付けても良い。また、図7に示すように、圧縮コイルばね105を保持用カバー107内に配置し、下側をストッパー108で保持し、上側をストッパー109で保持した状態で取り付けることもできる。
本実施例では、回転機構111を用いないので採取針ユニット1の構成部品点数が少なくなるため、コスト低減に役に立つ。これは薄い生体標本を打ち抜くのに適している。この場合、溶液流で採取した微小切片は押し出せるので押し出し棒114も不要となる場合が多い。この実施例では採取針ホルダー102および採取針ホルダーカバー103は共にステンレススチール製である。もちろん他の材料を用いても良い。
本実施例では、図6における、採取針ホルダーカバー103、圧縮コイルばね105、ストッパー108が緩衝機構を構成する。また、図7における、圧縮コイルばね105、ストッパー108、ストッパー109が緩衝機構を構成する。
以上のように、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、中空採取針101と、中空採取針101を保持する採取針ホルダー102と、採取針ホルダー102を移動可能に挿通する採取針ホルダーカバー103と、採取針ホルダー102の移動方向に変形可能な圧縮コイルばね105と、を備え、微小切片の採取時に、中空採取針101に対して所定以上の外力が付加されると、圧縮コイルばね105が変形し、採取針ホルダー102が採取針ホルダーカバー103内を移動することにより、中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避し、中空採取針101の破損を防止することができる。また、これにより、生体標本201から微小切片を採取する際に下降する中空採取針101の下降限界位置の設定に詳細な調整が不要となるため、下降限界位置の設定が容易となる。
図8は、本発明の実施例4を示したものであり、上記実施例1~実施例3と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例はばね機構を可動アーム2に持たせた例である。採取針ホルダーカバー103は可動アーム2に固定されている。採取針ホルダーカバー103の代わりに可動アーム2の一部をくりぬいて代用しても良い。この場合には図8に示したよりも採取針ホルダーカバー103の長さは短くなる。採取針ホルダー102に固定されたストッパー108とアーム2の上面部に固定されたストッパー122の間に圧縮コイルばね105が配置される。採取針ホルダー102を挿通するために穿設されたストッパー122の貫通孔122Aの直径は、採取針ホルダー102の外径よりも大きく、圧縮コイルばね105の外径よりも小さいため、圧縮コイルばね105を保持するが、採取針ホルダー102はストッパー122を抵抗なく通過できる。採取針ホルダー102が押し上げられると圧縮コイルばね105は縮んで中空採取針101の先端部101Aにかかる圧力を低減する。図8ではT字ジョイント113などへの接続は省略されている。もちろんチューブ115および押し出し棒114なども装着できる。
本実施例のように回転機構111が不要の時には、採取針カバー103および偏心防止体106が不要となるので簡単な構成となる利点がある。
本実施例では、圧縮コイルばね105、ストッパー108、ストッパー124が緩衝機構を構成する。
以上のように、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、中空採取針101と、中空採取針101を保持する採取針ホルダー102と、採取針ホルダー102を移動可能に挿通する採取針ホルダーカバー103と、採取針ホルダー102の移動方向に変形可能な圧縮コイルばね105と、を備え、微小切片の採取時に、中空採取針101に対して所定以上の外力が付加されると、圧縮コイルばね105が変形し、採取針ホルダー102が採取針ホルダーカバー103内を移動することにより、中空採取針101に過剰な外力が付加されることを回避し、中空採取針101の破損を防止することができる。また、これにより、生体標本201から微小切片を採取する際に下降する中空採取針101の下降限界位置の設定に詳細な調整が不要となるため、下降限界位置の設定が容易となる。
図9~図17は、本発明の実施例5を示したものであり、上記実施例1~実施例4と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例は、緩衝機構を生体標本保持台6側に設けた例である。生体標本201は、スライドガラス202あるいはシャーレ203などの載置部である載置用容器に載置された後に生体標本保持台6に載置される。載置用容器の底面の端部には、弾性部材である厚さ約1mmのスポンジ状物質204が取り付けられている。そのため、載置用容器を生体標本保持台6に載置すると、スポンジ状物質204のみが生体標本保持台6と接触し、載置用容器は生体標本保持台6と接触せず、載置用容器がスポンジ状物質204によって支持された状態となる。この状態で、微小切片を生体標本201から切断採取するため、中空採取針101を降下させると、中空採取針101が生体標本201を貫通し、載置用容器に接触することで、中空採取針101が載置用容器を押圧する。この押圧力が所定以上の外力となると、スポンジ状物質204が弾性変形し、載置用容器が押し下げられる。このため、中空採取針101と載置用容器との衝突による中空採取針101の先端部101Aへの衝撃が緩和される。なお、生体標本201が固い場合には、中空採取針101が生体標本201を貫通する前(中空採取針101が生体標本201に触れた状態)に、又は、生体標本201を切断しながら載置用容器を押し下げる場合もある。
スポンジ状物質204は、矩形状のスライドガラス202に取り付ける場合には、図9~図11に示すように、スライドガラス202の長手方向の端部202A,202Bの下面に取り付けられ、円形状のシャーレ203に取り付ける場合には、図12~図14に示すように、シャーレ203の下面外周部203Aに円環状に取り付けられる。なお、スポンジ状物質204の取り付け位置は、載置用容器が中空採取針101により押圧された場合に、載置用容器の下面が極端に傾くことなく載置用容器が押し下げられる位置であれば、他の位置であってもい。また、本実施例では、スライドガラス202に2つのスポンジ状物質204、シャーレ203に1つのスポンジ状物質204を取り付けているが、スライドガラス202に3以上のスポンジ状物質204を取り付けてもよく、シャーレ203に2以上のスポンジ状物質204を取り付けてもよい。この場合、それぞれのスポンジ状物質204の形状は同一でもよく、異なっていてもよい。なお、スライドガラス202およびシャーレ203を支持可能であり、弾性変形するものであれば、スポンジ状物質204に代えてゲル状部材などの他の部材を用いてもよい。
スポンジ状物質204を用いず、生体標本201を載置した載置用容器が生体標本保持台6に固定され動かないときには中空採取針101が生体標本201に到達したかどうかを見分けるのは容易でない。しかし、この実施例では中空採取針101の押圧力で載置用容器が降下する。このため中空採取針101が生体標本201に触れたことが容易に目視で確認できる利点がある。なお、載置用容器の位置を検出する位置検知手段である光センサー(図示せず)などを設け、載置用容器の移動を検知することで、中空採取針101と載置用容器との接触を検知してもよい。
本実施例では、緩衝機構として載置用容器にスポンジ状物質204を設けたが、生体標本保持台6が圧縮コイルばね205の収縮により降下する構成としてもよい。図15及び図16はこの例である。生体標本保持台6には、シャーレ203と、ばね取付用部材であるスペーサー206を配設する配置孔207が穿設されている。スペーサー206は、上部が開口した有底円筒状の本体部208と、本体部208の上端部から径方向外側に延設されたばね取付部209を有する。ばね取付部209の下面に4つの圧縮コイルばね205が等間隔で固定されている。スペーサー206の底部210には、顕微鏡8により生体標本201を観察するための観察用孔211が穿設されている。シャーレ203を本体部208に収容すると2重構造となる。
生体標本保持台6の配置孔207の周囲には、圧縮コイルばね205を配置する有底のばね配置孔213が4箇所に形成されている。図15及び図16に示すように、シャーレ203をスペーサー206の本体部208に収容した状態で、本体部208を配置孔207内に配置すると共に、圧縮コイルばね205をばね配置孔213内に配置する。このとき、生体標本保持台6の上面とばね取付部209の下面との間には、隙間Dが形成され、圧縮コイルばね205が収縮することで、シャーレ203がスペーサー206と共に隙間Dの長さだけ降下可能となっている。なお、シャーレ203を収容したスペーサー206を傾きなく支持し、中空採取針101から受ける外力により降下可能であれば圧縮コイルばね205の数は適宜変更可能である。また、ばね配置孔213は、使用する圧縮コイルばね205の数以上であればよく、圧縮コイルばね205よりも多く形成することで、圧縮コイルばね205を配置するばね配置孔213の選択肢を増やすことができる。
シャーレ203を収容したスペーサー206を生体標本保持台6に取り付けた状態で、微小切片を生体標本201から切断採取するため、中空採取針101を降下させると、中空採取針101が生体標本201を貫通し、シャーレ203に接触することで、中空採取針101がシャーレ203を押圧する。この押圧力が所定以上の外力となると、圧縮コイルばね207が弾性変形(収縮)し、載置用容器が押し下げられる。このため、中空採取針101と載置用容器との衝突による中空採取針101の先端部101Aへの衝撃が緩和される。なお、生体標本201が固い場合には、中空採取針101が生体標本201を貫通する前(中空採取針101が生体標本201に触れた状態)に、又は、生体標本201を切断しながら載置用容器を押し下げる場合もある。
実施例1で述べたように中空採取針101は採取針ホルダー102に挿入する形で固定される。中空採取針101は必要に応じて交換可能である。採取針ホルダー102は、図4および図17に示したような形状を有している。本実施例では、図17に示すように、採取針ホルダー102の先端部分に拡径部102Cを設け、採取針ホルダー102の先端部分の内径および外径を拡大している。そのため、採取針ホルダー102と拡径部102Cにより段差構造が形成され、採取針ホルダー102の下端面部102Dが位置決め部として機能する。テフロンチューブ118は、採取針ホルダー102から連続して拡径部102Cの内部にも配設されており、気密性が保たれている。位置決め部である下端面部102Dにより、拡径部102Cに挿入された中空採取針101は所定の位置で保持される。
本実施例においても、中空採取針101の回転機構111を設けることで、弱い力でも生体標本201を切断することができる。中空採取針101は、中空採取針101の外径より少し大きなサイズの内径を持つスリット106Aに挿通することにより、回転時の軸ブレを防いでいる。中空採取針101の外径に対してスリット106Aの内径が大きいと摩擦抵抗は小さくなり、中空採取針101の回転は容易であるが軸のブレが大きくなる。一方、ほぼ同じサイズだと軸のブレは小さくなるが、中空採取針101が上下動する時の摩擦抵抗は大きくなる。このため採取針ユニット1あるいは採取機構部に緩衝機構としてのばね機構を設けた場合に、中空採取針101とスリット106Aの間の摩擦抵抗でばね機構が影響を受けることがある。本実施例で提示した生体標本保持台6に緩衝機構を設けることで、この問題を解消できる利点がある。なお、採取針ユニット1あるいは採取機構部にばね機構を設けると共に、生体標本保持台6に緩衝機構を設ける構成としてもよい。
本実施例では、図9~図11における、スライドガラス202、スポンジ状物質204が緩衝機構を構成する。また、図12~図14における、シャーレ203、スポンジ状物質204が緩衝機構を構成する。また、図15及び図16における、生体標本保持台6、圧縮コイルばね205、スペーサー206が緩衝機構を構成する。
以上のように、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、微小切片を生体標本201から切断採取する中空採取針101と、生体標本201を載置するスライドガラス202と、微小切片の採取時に、中空採取針101とスライドガラス202とが衝突した場合に、前記衝突による衝撃を緩和するスライドガラス202およびスポンジ状物質204と、を備えることにより、中空採取針101とスライドガラス202との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、微小切片を生体標本201から切断採取する中空採取針101と、生体標本201を載置するシャーレ203と、微小切片の採取時に、中空採取針101とシャーレ203とが衝突した場合に、前記衝突による衝撃を緩和するシャーレ203およびスポンジ状物質204と、を備えることにより、中空採取針101とシャーレ203との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、生体標本201から微小切片を採取する生体微小切片採取用中空採取針システムであって、微小切片を生体標本201から切断採取する中空採取針101と、生体標本201を載置するシャーレ203と、微小切片の採取時に、中空採取針101とシャーレ203とが衝突した場合に、前記衝突による衝撃を緩和する生体標本保持台6、圧縮コイルばね205およびスペーサー206と、を備えることにより、中空採取針101とシャーレ203との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、緩衝機構がスライドガラス202を保持するスポンジ状物質204を有し、微小切片の採取時に、スライドガラス202に対して所定以上の外力が付加されると、スポンジ状物質204が変形し、スライドガラス202が移動することにより、中空採取針101とスライドガラス202との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、緩衝機構がシャーレ203を保持するスポンジ状物質204を有し、微小切片の採取時に、シャーレ203に対して所定以上の外力が付加されると、スポンジ状物質204が変形し、シャーレ203が移動することにより、中空採取針101とシャーレ203との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
また、本実施例の生体微小切片採取用中空採取針システムは、緩衝機構がシャーレ203を保持する圧縮コイルばね205を有し、微小切片の採取時に、スライドガラス202に対して所定以上の外力が付加されると、圧縮コイルばね205が変形し、シャーレ203が移動することにより、中空採取針101とシャーレ203との衝突による中空採取針101の損傷を防止することができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、上記では生体微小切片採取用中空採取針システムを倒立顕微鏡8に載せて動作する例を説明しているが、生体微小切片採取用中空採取針システムが顕微鏡8とは独立しており、コンピュータ12のモニター画面12Aに表示された生体標本画像と採取部位の位置情報だけを用いて打ち抜き採取する生体微小切片採取用中空採取針システムや倒立顕微鏡8以外のシステムとドッキングして用いる生体微小切片採取用中空採取針システムについても本発明の技術は同様に用いることができる。