JP7364870B2 - 旋盤、及び、その切粉排出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、切粉受けを備える旋盤、及び、その切粉排出方法に関する。
旋盤は、加工室内においてワークを主軸で把持して工具により加工することを繰り返し、これにより多数の製品を製造する。多数の製品を加工室外へ搬出するため、製品コンベアが使用されることがある。ここで、ワークの加工には切削油が使用され、ワークの加工により切粉が生じる。製品コンベアにより搬送される製品に切削油及び切粉が付着するため、製品コンベアの搬出端部の下方に切粉等を受ける切粉受けが配置されている。切粉受けは、機械本体に複数のねじで取り付けられている。
製品コンベアにより搬送される製品に付着した切粉等を受ける技術ではないが、特許文献1には、チップコンベアから排出される切粉及び切削剤を回収する切削剤回収装置が開示されている。この切削剤回収装置のオイルパンは、台車を内部に進入させることが可能な大型のフレームに支持され、複雑なリンク機構により台車の移動に連動する。台車がフレーム内においてチップコンベアの排出端部下方の回収位置に位置しているとき、オイルパンは退避姿勢をとり、チップコンベアから排出される切粉及び切削剤が台車に回収される。台車が回収位置から移動させられたとき、オイルパンは受け姿勢を取り、チップコンベアから落下する切削剤がオイルパンに回収される。
特開2016-196072号公報
製品コンベアの搬出端部の下方に配置された切粉受けに切粉が溜まると、溜まった切粉を切粉受けから排出する必要がある。そこで、旋盤のオペレーターは、複数のねじを緩めて機械本体から切粉受けを取り外し、切粉受けに溜まった切粉を廃棄してから、複数のねじで切粉受けを機械本体に取り付けている。この一連の切粉廃棄作業は、非常に手間がかかる。しかし、上述した切削剤回収装置は、台車を内部に進入させるための大型のフレーム、及び、複雑なリンク機構が必要である。
本発明は、旋盤において簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる技術を開示するものである。
本発明の旋盤は、保持部と、
ヒンジを介して前記保持部に接続された基端部、及び、該基端部とは反対側の可動端部を有し、前記保持部の下方に配置され、落下する切粉を受ける受け姿勢、及び、該受け姿勢よりも前記可動端部が下にある排出姿勢に傾動可能な切粉受けと、
前記保持部に設けられた第一ロック部、及び、前記切粉受けに設けられた第二ロック部を有し、前記切粉受けが前記受け姿勢であるときに前記第一ロック部と前記第二ロック部とが解除可能にロックするロック機構と、を備え、
前記第一ロック部と前記第二ロック部とのロックが解除されると前記切粉受けが前記排出姿勢に移行可能である、態様を有する。
また、本発明の旋盤の切粉排出方法において、前記旋盤は、
保持部と、
ヒンジを介して前記保持部に接続された基端部、及び、該基端部とは反対側の可動端部を有し、前記保持部の下方に配置され、落下する切粉を受ける受け姿勢、及び、該受け姿勢よりも前記可動端部が下にある排出姿勢に傾動可能な切粉受けと、
前記受け姿勢において前記切粉受けを前記保持部に対して解除可能にロックするロック機構と、
加工室内の収容位置においてワークの加工により生じる切粉を受け、前記収容位置から前記加工室外へ引き出し可能な切粉バケットと、を備え、
前記切粉排出方法は、
前記切粉バケットを前記収容位置から引き出した引き出し状態にする引き出し工程と、
前記ロック機構によるロックを解除し、前記切粉受けを前記受け姿勢から前記排出姿勢に移行させ、該排出姿勢の前記切粉受けから前記引き出し状態における前記切粉バケットに切粉を落下させる排出工程と、を含む、態様を有する。
本発明によれば、旋盤において簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させることができる。
旋盤の例を模式的に示す正面図である。 旋盤の例を模式的に示す右側面図である。 製品の搬出に伴って切粉受けに切粉が溜まる例を模式的に示す図である。 保持部、ヒンジ、切粉受け、及び、ロック機構の例を模式的に示す正面図である。 切粉受けと、張り出し部及び閉塞部材と、の水平面における位置関係の例を模式的に示す平面図である。 傾き制限構造の例を模式的に示す右側面図である。 切粉受けと、引き出し状態の切粉バケットと、の水平面における位置関係の例を模式的に示す平面図である。 排出姿勢制限構造の例を模式的に示す右側面図である。 切粉受けから切粉を切粉バケットに排出する例を模式的に示す斜視図である。 図10Aは切粉受け及び保持部の例を模式的に示す縦断面図であり、図10B,10Cは切粉受けの別の例を保持部とともに模式的に示す縦断面図である。 チップコンベアを備える旋盤の例を模式的に示す右側面図である。 比較例に係る切粉受けを備える旋盤を模式的に示す右側面図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~12に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
[態様1]
本技術の一態様に係る旋盤1は、保持部40、切粉受け50、及び、ロック機構60を備える。前記切粉受け50は、ヒンジ45を介して前記保持部40に接続された基端部52、及び、該基端部52とは反対側の可動端部53を有し、前記保持部40の下方に配置され、落下する切粉C1を受ける受け姿勢PO1、及び、該受け姿勢PO1よりも前記可動端部53が下にある排出姿勢PO2に傾動可能である。前記ロック機構60は、前記保持部40に設けられた第一ロック部(例えばピン61)、及び、前記切粉受け50に設けられた第二ロック部(例えばフック62)を有し、前記切粉受け50が前記受け姿勢PO1であるときに前記第一ロック部(61)と前記第二ロック部(62)とが解除可能にロックする。前記第一ロック部(61)と前記第二ロック部(62)とのロックが解除されると前記切粉受け50が前記排出姿勢PO2に移行可能である。
上記態様1では、切粉受け50が受け姿勢PO1である状態で第一ロック部(61)と第二ロック部(62)とがロックしていると、切粉受け50の受け姿勢PO1が維持され、落下する切粉C1を切粉受け50が受ける。旋盤のオペレーターが第一ロック部(61)と第二ロック部(62)とのロックを解除し、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2まで傾動させると、切粉受け50から切粉C1を排出することができる。その後、オペレーターは、切粉受け50を排出姿勢PO2から受け姿勢PO1になるまで傾動させ、第一ロック部(61)と第二ロック部(62)とをロックすると、切粉受け50が受け姿勢PO1の状態で維持される。
以上より、オペレーターは、切粉受けに溜まった切粉を排出する際、複数のねじを用いて切粉受けを着脱するという手間がかかる操作を行う必要がない。オペレーターは、ヒンジ45を介して切粉受け50が保持部40に繋がっている状態でロック機構60の簡単な操作により切粉受け50を一時的に排出姿勢PO2にして切粉受け50から切粉C1を排出させることができる。また、旋盤1に大型のフレームや複雑なリンク機構も不要である。従って、本態様は、簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる旋盤を提供することができる。
尚、所定量よりも多く溜まった切粉の重量により切粉受けが受け姿勢から排出姿勢まで傾動するようになっている場合、切粉受けが傾動するタイミングを制御することができないため、常に、切粉受けから排出される切粉を受ける受け部材を切粉受けの下に設置する必要がある。上記態様1では、オペレーターが不在であるときに第一ロック部と第二ロック部とをロックしておけば切粉受けが受け姿勢の状態で維持されるので、前述の受け部材を常に設置する必要が無く、省スペース化に繋がる。
ここで、傾動は、所定範囲内(例えば図6に示す受け姿勢PO1と排出姿勢PO2との間)で傾きが変わる運動を意味する。この付言は、以下の態様においても適用される。
[態様2]
図3等に例示するように、本旋盤1は、ワークW1の加工により得られた製品P1を搬出する製品搬送装置(例えば製品コンベア30)をさらに備えていてもよい。前記切粉受け50は、前記製品搬送装置(30)の搬出端部32の下方に配置されてもよい。本態様は、製品搬送装置の搬出端部から落下する切粉を受ける切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させることができる。
[態様3]
図1等に例示するように、本旋盤1は、加工室11内の収容位置11aにおいてワークW1の加工により生じる切粉C1を受け、前記収容位置11aから前記加工室11外へ引き出し可能な切粉バケット20をさらに備えていてもよい。また、図8,9に例示するように、前記切粉バケット20が前記収容位置11aから引き出された引き出し状態(例えば引き出し位置14aの状態)であって前記切粉受け50が前記排出姿勢PO2であるときに該切粉受け50から前記切粉バケット20に切粉C1が落下してもよい。オペレーターは、加工室11内で切粉C1が溜まった切粉バケット20を収容位置11aから引き出したとき、第一ロック部(61)と第二ロック部(62)とのロックを解除し、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2になるまで傾動させると、切粉受け50から切粉C1を切粉バケット20に排出することができる。これにより、オペレーターは、切粉バケット20に溜まった切粉C1を廃棄するときに切粉受け50に溜まった切粉C1も廃棄することができる。従って、本態様は、切粉を廃棄する作業性を向上させることができる。
ここで、切粉バケットの引き出し状態は、排出姿勢の切粉受けから切粉バケットに切粉が落下する状態であればよく、切粉バケットの一部が加工室内に残っていてもよい。この付言は、以下の態様においても適用される。
[態様4]
図7等に例示するように、前記ヒンジ45は、水平面H0において、前記引き出し状態における前記切粉バケット20の範囲A1外にあってもよい。前記受け姿勢PO1における前記切粉受け50の前記可動端部53は、水平面H0において、前記引き出し状態における前記切粉バケット20の範囲A1内にあってもよい。図8等に例示するように、本旋盤1は、前記排出姿勢PO2における前記切粉受け50の前記可動端部53を水平面H0において前記引き出し状態における前記切粉バケット20の範囲A1内に制限する排出姿勢制限構造ST1をさらに備えていてもよい。排出姿勢PO2の切粉受け50は可動端部53が受け姿勢PO1よりも下がっているので、切粉受け50に溜まった切粉C1は排出姿勢PO2の切粉受け50の可動端部53から落下する。ここで、可動端部53が水平面H0において引き出し状態の切粉バケット20の範囲A1内に制限されているので、切粉C1は可動端部53から切粉バケット20に落下する。従って、本態様は、切粉受けの切粉を確実に切粉バケットに移すことができる。
[態様5]
図6等に例示するように、本旋盤1は、前記切粉バケット20が前記収容位置11aにあるときに前記切粉受け50が前記受け姿勢PO1から傾く範囲を前記切粉バケット20が前記引き出し状態であるときよりも少なくさせる傾き制限構造ST2をさらに備えていてもよい。この態様は、切粉バケット20が収容位置11aにあるときに切粉受け50が受け姿勢PO1から傾く範囲が少なくなるので、切粉バケットが収容位置から引き出されていないときに切粉受けから切粉が落下することを抑制することができる。
[態様6]
ところで、本技術の一態様に係る切粉排出方法において、旋盤1は、保持部40、切粉受け50、ロック機構60、及び、切粉バケット20を備える。前記切粉受け50は、ヒンジ45を介して前記保持部40に接続された基端部52、及び、該基端部52とは反対側の可動端部53を有し、前記保持部40の下方に配置され、落下する切粉C1を受ける受け姿勢PO1、及び、該受け姿勢PO1よりも前記可動端部53が下にある排出姿勢PO2に傾動可能である。前記ロック機構60は、前記受け姿勢PO1において前記切粉受け50を前記保持部40に対して解除可能にロックする。前記切粉バケット20は、加工室11内の収容位置11aにおいてワークW1の加工により生じる切粉C1を受け、前記収容位置11aから前記加工室11外へ引き出し可能である。本切粉排出方法は、以下の工程(b),(c)を含む。
(b)前記切粉バケット20を前記収容位置11aから引き出した引き出し状態(例えば引き出し位置14aの状態)にする引き出し工程。
(c)前記ロック機構60によるロックを解除し、前記切粉受け50を前記受け姿勢PO1から前記排出姿勢PO2に移行させ、該排出姿勢PO2の前記切粉受け50から前記引き出し状態における前記切粉バケット20に切粉C1を落下させる排出工程。
上記態様6に従う場合、オペレーターは、まず、切粉バケット20を収容位置11aから引き出した引き出し状態にする。次に、オペレーターは、ロック機構60によるロックを解除し、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2に移行させ、該排出姿勢PO2の切粉受け50から引き出し状態の切粉バケット20に切粉C1を落下させる。
以上より、オペレーターは、複数のねじを用いて切粉受け50を着脱するという手間がかかる操作を行う必要がない。オペレーターは、加工室11内で切粉C1が溜まった切粉バケット20を収容位置11aから引き出したとき、ヒンジ45を介して切粉受け50が保持部40に繋がっている状態でロック機構60の操作により切粉受け50を一時的に排出姿勢PO2にして切粉受け50から切粉C1を切粉バケット20に排出させることができる。これにより、切粉バケット20に溜まった切粉C1を廃棄するときに切粉受け50に溜まった切粉C1も廃棄することができる。また、旋盤1に大型のフレームや複雑なリンク機構も不要である。従って、本態様は、旋盤において簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる切粉排出方法を提供することができる。
[態様7]
図5等に例示するように、前記旋盤1は、前記切粉バケット20が前記加工室11外へ引き出される切粉バケット通過部14に対して取り外し可能に取り付けられた閉塞部材15をさらに備えていてもよい。この場合、以下の工程(a),(b),(c)が行われてもよい。
(a)前記閉塞部材15を前記切粉バケット通過部14から取り外す取り外し工程。
(b)前記閉塞部材15が取り外された前記切粉バケット通過部14の方へ前記切粉バケット20を前記収容位置11aから引き出した引き出し状態(例えば引き出し位置14aの状態)にする引き出し工程。
(c)前記ロック機構60によるロックを解除し、前記切粉受け50を前記受け姿勢PO1から前記排出姿勢PO2に移行させ、該排出姿勢PO2の前記切粉受け50から前記引き出し状態における前記切粉バケット20に切粉C1を落下させる排出工程。
上記態様7に従う場合、オペレーターは、まず、切粉バケット20が引き出される切粉バケット通過部14から閉塞部材15を取り外す。次に、オペレーターは、閉塞部材15が取り外された切粉バケット通過部14の方へ切粉バケット20を収容位置11aから引き出した引き出し状態にする。その後、オペレーターは、ロック機構60によるロックを解除し、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2に移行させ、該排出姿勢PO2の切粉受け50から引き出し状態の切粉バケット20に切粉C1を落下させる。
以上より、上記態様7は、切粉バケットが引き出される切粉バケット通過部に取り付けられた閉塞部材を備える旋盤において切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させることができる。
(2)旋盤の具体例:
図1は、具体例において、ドア18が開いている状態の旋盤1の正面を模式的に示している。図2は、旋盤1の右側面を模式的に示している。尚、本明細書において参照される図面は、本技術を説明するための例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。また、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右を逆にしたり、回転方向を逆にしたり等することも、本技術に含まれる。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。
便宜上、旋盤1において上面を除いてドア18が存在する外面を前面として、各図には、必要に応じて、前方向D1、後方向D2、上方向D3、下方向D4、左方向D5、及び、右方向D6を示している。断りが無い限り、これらの方向(D1~D6)に合わせて旋盤1における位置関係を説明する。また、制御軸として、左右方向をZ軸方向とし、Z軸方向と直交する水平方向をX軸方向とし、Z軸方向と直交する鉛直方向をY軸方向とする。図1,2には、X軸方向を示す「X」、Y軸方向を示す「Y」、及び、Z軸方向を示す「Z」を示している。
図1等に示す旋盤1は、不図示のNC(数値制御)装置を備えるNC旋盤であり、加工室11を囲む覆い10の前面に操作部85が配置されている。加工室11には、Z軸方向において互いに対向している主軸81,82、該主軸81,82に把持されたワークW1を加工するための工具を保持する刃物台83,84、等が配置されている。ワークW1の加工は、ドア18が閉じている状態で行われる。
主軸81は正面主軸とも呼ばれ、主軸82は背面主軸とも呼ばれる。主軸81,82は、ワークW1を把持している状態でZ軸方向に沿った回転軸を中心として回転可能である。主軸81,82の少なくとも一方はZ軸方向へ移動可能であり、Z軸方向において両主軸81,82が近付くことにより主軸82が主軸81から正面加工後のワークW1を受け取る。ここで、旋盤1が主軸移動型である場合は主軸81がZ軸方向へ移動し、旋盤1が主軸固定型である場合は主軸81がZ軸方向へ移動しない。刃物台83,84は、X軸方向とY軸方向の少なくとも1軸方向へ移動可能であり、Z軸方向へ移動してもよい。刃物台83,84は、図1に示すようにタレット刃物台でもよいし、くし形刃物台等でもよい。工具には、突っ切りバイトを含むバイト、ドリルやエンドミルといった回転工具、等が含まれる。主軸82に把持されたワークW1に背面加工が行われると、製品P1となる。ワークW1の加工により得られた製品P1は、主軸82の把持から解放されると、製品コンベア30(製品搬送装置の例)に落下し、加工室11内の搬入端部31から加工室11外の搬出端部32の方へ搬送される。図1には、覆い10の側部10aから出た搬出端部32がカバー35で覆われていることが示されている。尚、主軸82は、製品P1を製品コンベア30に落下させるためにX軸方向へ移動してもよい。操作部85は、表示パネルや各種ボタンを有し、各種操作を受け付ける。NC装置は、不図示の不揮発性半導体メモリーに記憶されているNCプログラムを実行する。
ワークW1の加工には切削油が使用され、ワークW1の加工により切粉が発生する。そこで、ワークW1の加工により生じる切粉を切削油とともに受ける切粉バケット20が切粉バケット収容部12に収容されている。切粉バケット収容部12における切粉バケット20の収容位置11aは、加工室11の内部にあり、主軸81,82の下方である。切粉バケット収容部12は、切粉バケット20が加工室11外へ引き出される部位である切粉バケット通過部14を備えている。これにより、切粉バケット20は、把手22の操作により収容位置11aから加工室11外へ引き出し可能である。図1には、収容位置11aにある切粉バケット20が破線で示され、切粉受け50からの切粉を受ける引き出し位置14aにある切粉バケット20が二点鎖線で示されている。切粉バケット20の内側にある貯留部21に切削油を含んだ切粉が落下する。貯留部21に溜まった切削油は、切粉から分離し、旋盤1の下部にあるクーラントタンク70の内部に落下する。旋盤1のオペレーターは、切粉バケット20を収容位置11aから引き出し位置14aに引き出すと、貯留部21に溜まった切粉を切粉搬出台車に移して旋盤1の外部O1にある廃棄場所に廃棄する。
切削油と切粉は、製品P1にも付着する。製品P1に付着した切削油及び切粉は、製品コンベア30により加工室11内から搬出端部32へ移動する。切粉等が工場の床に落下することを防ぐため、製品コンベア30の搬出端部32の下方に保持部40とともに切粉受け50が配置されている。
図3は、製品P1の搬出に伴って切粉受け50に切粉C1が溜まる様子を模式的に例示している。製品コンベア30の搬出端部32には、製品P1が通り抜けない程度の隙間CL1を空けてスクレーパー33が配置されている。従って、スクレーパー33の先に製品回収容器38を設置しておけば、搬出端部32において製品P1がスクレーパー33に沿って製品回収容器38まで落下する。製品P1とともに搬出端部32まで移動した切削油及び切粉C1は、隙間CL1を通り抜け、保持部40を介して切粉受け50に落下する。
図4は、保持部40、ヒンジ45、切粉受け50、及び、ロック機構60の前側を模式的に例示している。分かり易く示すため、図4は、切粉受け50が受け姿勢PO1に保たれている状態でフック62(第二ロック部の例)がロック解除状態にされた様子を示している。また、図4において、切粉受け50の排出姿勢PO2、及び、ロック状態のフック62が二点鎖線で示されている。図5は、切粉受け50と、張り出し部13及び閉塞部材15と、の水平面H0における位置関係を模式的に例示している。図6は、閉塞部材15による傾き制限構造ST2の右側を模式的に例示している。図6において、切粉受け50の傾き制限姿勢PO3が実線で示され、切粉受け50の受け姿勢PO1及び排出姿勢PO2が二点鎖線で示されている。図7は、切粉受け50と、引き出し状態の切粉バケット20と、の水平面H0における位置関係を模式的に例示している。図8は、張り出し部13による排出姿勢制限構造ST1の右側を模式的に例示している。図8において、切粉受け50の排出姿勢PO2が実線で示され、切粉受け50の受け姿勢PO1が二点鎖線で示されている。図9は、切粉受け50から切粉C1を切粉バケット20に排出する様子を模式的に例示している。図10Aは、切粉受け50及び保持部40の縦断面を模式的に例示している。図10Aにおいて、切粉受け50の受け姿勢PO1が実線で示され、切粉受け50の傾き制限姿勢PO3及び排出姿勢PO2が二点鎖線で示されている。図5,7は上から見た図であり、水平面H0は図5,7に沿った面、すなわち、前後方向(D1,D2)に沿った直線と左右方向(D5,D6)に沿った直線とが交わっている場合に前述の2直線により定まる面である。
以下、切粉C1を排出するための各構成要素を説明する。
図3に示すように、製品コンベア30の搬出端部32の直下に配置された保持部40における左の側端部41は、例えばねじSC1(ボルトを含む。)により覆い10の側部10aに取り付けられている。保持部40における右の側端部42には、ロック機構60に含まれるピン61(第一ロック部の例)が固定されている。保持部40の下方には、切粉受け50が配置されている。図4に示すように、保持部40の前面部43は、ヒンジ45を介して切粉受け50の基端部52に繋がっている。図6等に示すように、保持部40は、搬出端部32のカバー35を支持している。
図4,6等に示すように、ヒンジ45は、左右方向に沿った傾動軸AX1を中心として折れ曲がる動作が可能である。ヒンジ45は、例えば、ねじSC2により保持部40の前面部43に取り付けられた第一片45aと、ねじSC3により切粉受け50の基端部52に取り付けられた第二片45bと、を備える。切粉受け50の基端部52は、ヒンジ45を介して保持部40に接続されている。第一片45aと第二片45bとが傾動軸AX1を中心として互いに回転可能に連結されていることにより、切粉受け50は傾動軸AX1を中心として傾動可能である。傾動軸AX1は、切粉受け50の回転運動の中心となる回転軸ともいえる。本具体例において、ヒンジ45を介した切粉受け50の傾動は、回転軸(傾動軸AX1)を中心として所定範囲内(受け姿勢PO1と排出姿勢PO2との間)で切粉受け50の傾きが変わるような切粉受け50の回転運動を意味する。
図8,10A等に示すように、切粉受け50は、ヒンジ45を介して保持部40に接続された基端部52、及び、該基端部52とは反対側の可動端部53を有し、受け姿勢PO1と排出姿勢PO2との間で傾動可能である。ここで、受け姿勢PO1は、切粉受け50の傾動範囲において可動端部53が最も上の位置にあるときの姿勢であり、製品コンベア30の搬出端部32から落下する切粉C1を受ける姿勢である。受け姿勢PO1において、切粉受け50の内側にある貯留部51の底部51aは、可動端部53から基端部52に向かうにつれて下がっている。図10Aに示すように、底部51aは、折れ曲がり部51bから前方向D1にある一般部51c、及び、折れ曲がり部51bから後方向D2にある傾斜変更部51dを含んでいる。受け姿勢PO1において、一般部51cは折れ曲がり部51bから基端部52に向かうにつれて緩やかに下がっており、傾斜変更部51dの傾斜は一般部51cの傾斜よりも急である。排出姿勢PO2は、切粉受け50の傾動範囲において可動端部53が最も下の位置にあるときの姿勢であり、切粉受け50に溜まった切粉C1を排出するための姿勢である。排出姿勢PO2において、貯留部51の底部は、基端部52から可動端部53に向かうにつれて下がっている。
図3等に示すように、切粉受け50における左の側端部54には、基端部52の近傍において切削油戻し流路56が設けられている。切粉受け50が受け姿勢PO1である場合、貯留部51に溜まった切粉C1から分離した切削油は、基端部52の方へ移動し、切削油戻し流路56を通って加工室11に戻り、不図示の経路に沿って移動し、最終的にクーラントタンク70の内部に落下する。切削油戻し流路56には、メッシュ等といった切粉C1の流出を抑制する構造が設けられてもよい。切粉受け50における右の側端部55には、ロック機構60に含まれるフック62が設けられている。
切粉受け50は、保持部40の下方にあるため、ロック機構60が無ければ自重により可動端部53が下がってしまう。ロック機構60があることにより、切粉受け50が受け姿勢PO1において維持され、切粉受け50の下に切粉回収手段を常時配置しておく必要が無く、省スペース化に繋がる。また、切粉受け50から切粉C1を排出する際もピン61とフック62とのロックを解除する簡単な操作で済むため、オペレーターの操作性が向上する。以下、ロック機構60の詳細を説明する。
保持部40に設けられたピン61は、右の側端部42から右方向D6へ出ている。図4に示すように、ピン61は、側端部42に繋がっている細径部61a、及び、細径部61aから先の太径部61bを含んでいる。細径部61aはフック62の凹部62c(図6も参照)に入る大きさであり、太径部61bはフック62の凹部62cに入らない大きさである。
切粉受け50に設けられたフック62は、右の側端部55から右方向D6へ出たピン部62a、及び、該ピン部62aに対して左右方向に沿った回転軸AX2を中心として回転可能なフック本体62bを含んでいる。ピン部62aは、ピン61と同様の細径部及び太径部を含み、該太径部より脱落しないように設けられたフック本体62bが細径部を中心として回転可能に設けられている。フック本体62bは、ピン61の細径部61aが入る大きさの凹部62c、及び、オペレーターがフック本体62bを回転させるための操作部62dを有している。
ピン61とフック62とがロックしていない状態において、オペレーターが切粉受け50を受け姿勢PO1にし、フック本体62bを回転させて凹部62cにピン61を入れると、ピン61とフック62とがロックする。これにより、受け姿勢PO1の切粉受け50がヒンジ45及びロック機構60を介して保持部40に保持され、切粉受け50の受け姿勢PO1が維持される。この状態において、オペレーターがフック本体62bを回転させて凹部62cをピン61から外すと、ピン61とフック62とのロックが解除される。これにより、オペレーターは、保持部40に対してヒンジ45を介して切粉受け50を傾動させることができ、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2に移行させることができる。
尚、オペレーターは、覆い10の側部10aに面する位置において、切粉受け50から切粉C1を排出する作業を行う。本具体例のロック機構60はオペレーターに面する位置にあるので、オペレーターは、ロック機構60をロックさせたり、ロック機構60のロックを解除したりする作業を行い易い。
切粉受け50に溜まった切粉C1は、切粉搬出台車等といった切粉回収手段に排出されてもよいが、図8,9に示すように旋盤1に備わる切粉バケット20に排出されてもよい。切粉バケット20が収容位置11aにあって切粉受け50が受け姿勢PO1であるとき、図5,6等に示すように、切粉バケット通過部14には、左右方向(D5,D6)において厚みを有する板状の閉塞部材15が取り付けられる。閉塞部材15は、受け姿勢PO1の切粉受け50の下方にあり、ピン61とフック62とのロックが解除されても切粉受け50が受け姿勢PO1から傾く範囲を傾き制限姿勢PO3までに制限する。切粉バケット20が収容位置11aから引き出されるとき、切粉バケット通過部14から閉塞部材15が取り外されることで、切粉受け50が排出姿勢PO2まで傾くことが可能になる。従って、切粉バケット20が収容位置11aにあるときに切粉受け50が受け姿勢PO1から傾く範囲は、切粉バケット20が引き出し状態であるときよりも少なくなる。切粉バケット通過部14に取り付けられた閉塞部材15は、傾き制限構造ST2の例である。
切粉バケット通過部14に閉塞部材15が取り付けられることにより、切粉受け50が受け姿勢PO1から傾く範囲が傾き制限姿勢PO3までと少なくなる。これにより、切粉バケット20が収容位置11aから引き出されていないときに切粉受け50から切粉C1が落下することが抑制される。特に、切粉受け50が傾き制限姿勢PO3である場合、図10Aに示すように、貯留部51の底部51aの傾斜変更部51dは、可動端部53から基端部52に向かうにつれて下がっている。従って、切粉受け50から切粉C1が落下することが効果的に抑制される。
尚、上述した切粉受け50の代わりに、図10Bに例示するような切粉受け50Aを使用することも可能である。図10Bに示す切粉受け50Aは、貯留部51の底部51aに折れ曲がり部51bが無く、受け姿勢PO1において底部51aが可動端部53から基端部52に向かうにつれて一定の傾斜で下がっている。ただ、切粉受け50Aが図10A等に示す傾き制限姿勢PO3となった時、切粉C1が切粉受け50Aからこぼれる可能性がある。図10A等に示す切粉受け50は、底部51aに傾斜変更部51dが有ることにより、制限姿勢PO3となった時に切粉C1が切粉受け50からこぼれ難い。
また、切粉バケット収容部12は、閉塞部材15の前方向D1に配置された張り出し部13を備えている。図7に示すように、張り出し部13は、左右方向(D5,D6)において厚みを有している。図8に示すように、張り出し部13は、排出姿勢PO2の切粉受け50の底部が接触する接触部13aを角部に有している。
図8,9に示すように切粉バケット20が引き出し位置14aに引き出されたとき、水平面H0において、製品コンベア30の一部は切粉バケット20の範囲よりも前にある。切粉受け50に溜まった切粉C1を確実に切粉バケット20に排出させるため、保持部40及び切粉受け50の前面にヒンジ45が配置され、切粉受け50の後端に可動端部53が配置されている。図7に示すように、ヒンジ45は、水平面H0において、引き出し位置14aにある切粉バケット20の範囲A1外にある。受け姿勢PO1における切粉受け50の可動端部53は、水平面H0において、引き出し位置14aにある切粉バケット20の範囲A1内にある。図8に示すように、張り出し部13の接触部13aは、排出姿勢PO2における切粉受け50の可動端部53を水平面H0において引き出し位置14aの切粉バケット20の範囲A1内に制限する。接触部13aは、排出姿勢制限構造ST1の例である。
尚、切粉バケット収容部12に張り出し部13が無い場合、切粉バケット20の貯留部21の前壁21aが排出姿勢PO2における切粉受け50の可動端部53を水平面H0において引き出し位置14aの切粉バケット20の範囲A1内に制限する。この場合、前壁21aが排出姿勢制限構造ST1の例となる。
切粉受け50が排出姿勢PO2であるとき、貯留部51の底部51aが基端部52から可動端部53に向かうにつれて下がっているので、貯留部51の切粉C1が可動端部53から落下する。ここで、排出姿勢PO2でも可動端部53が水平面H0において切粉バケット20の範囲A1内にあるので、貯留部51の切粉C1が確実に可動端部53から切粉バケット20に落下する。
尚、上述した切粉受け50の代わりに、図10Cに例示するような切粉受け50Bを使用することも可能である。図10Cに示す切粉受け50Bは、可動端部53に受け姿勢PO1において略鉛直の壁が有り、貯留部51の底部51aに折れ曲がり部51bが無く、受け姿勢PO1において底部51aが可動端部53から基端部52に向かうにつれて一定の傾斜で下がっている。ただ、切粉受け50Bが図10A等に示す排出姿勢PO2となった時、底部51aが基端部52から可動端部53に向かうにつれて下がっていても、可動端部53の壁が邪魔となって貯留部51から切粉C1を落下させ難い。図10A等に示す切粉受け50は、排出姿勢PO2となった時に傾斜変更部51dが折れ曲がり部51bから可動端部53に向かうにつれて下がった状態となるので、貯留部51から切粉C1を落下させ易い。
(3)旋盤の切粉排出方法の具体例:
次に、旋盤1の切粉排出方法の例を説明する。
ワークW1の加工が行われるとき、オペレーターは、切粉受け50を受け姿勢PO1にしてピン61とフック62とをロックする作業、及び、切粉バケット20を収容位置11aにセットして閉塞部材15を切粉バケット通過部14に取り付ける作業を行う。作業後の状態は、図2に示されている。この状態において、切粉バケット20に溜まった切粉C1を廃棄するタイミングとなったとき、オペレーターは、例えば、以下の工程に従って切粉C1を廃棄する作業を行う。
(a)取り外し工程:
まず、オペレーターは、切粉バケット通過部14から傾き制限構造ST2としての閉塞部材15を取り外す。これにより、ピン61とフック62とのロックが解除されると、切粉受け50が受け姿勢PO1から排出姿勢PO2まで傾動することが可能となる。
(b)引き出し工程:
閉塞部材15の取り外し後、オペレーターは、切粉バケット20を収容位置11aから引き出し位置14aまで右方向D6へ引き出した引き出し状態にする。作業後の状態は、図7に示されている。受け姿勢PO1の切粉受け50の可動端部53は、水平面H0において、引き出し位置14aにある切粉バケット20の範囲A1内にある。
(c)排出工程:
切粉バケット20の引き出し後、オペレーターは、まず、フック本体62b(図4参照)を回転させて凹部62cからピン61を外すことにより、ピン61とフック62とのロックを解除する。次に、オペレーターは、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2に移行させる。移行後の状態は、図8,9に示されている。さらに、オペレーターは、排出姿勢PO2の切粉受け50から引き出し状態における切粉バケット20に切粉C1を落下させる。
(d)廃棄工程:
切粉受け50の切粉C1の排出後、オペレーターは、まず、切粉受け50を排出姿勢PO2から受け姿勢PO1に移行させ、フック本体62bを回転させて凹部62cにピン61を入れることにより、ピン61とフック62とをロックさせる。次に、オペレーターは、切粉バケット20に溜まった切粉C1を切粉搬出台車に移して旋盤1の外部O1にある廃棄場所に廃棄する。
(e)再セット工程:
切粉C1の廃棄後、オペレーターは、切粉バケット20を引き出し位置14aから収容位置11aに戻し、切粉バケット通過部14に閉塞部材15を取り付ける。これにより、ピン61とフック62とのロックが解除されても、切粉受け50が受け姿勢PO1から傾き制限姿勢PO3までしか傾動しない。
(4)具体例の作用、及び、効果:
図12は、比較例に係る切粉受け950を備える旋盤の右側を模式的に示している。尚、上述した例に類似する要素は、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図12に示す切粉受け950は、上述した例における保持部40と切粉受け50とを合わせた形状に類似し、製品コンベア30の搬出端部32の下方に配置されている。切粉受け950は、覆い10の側部10aに複数のねじSC9で取り付けられている。切粉受け950に溜まった切粉を排出する際、オペレーターは、まず、切粉受け950の上にあるカバー35を取り外し、複数のねじSC9を緩めて覆い10の側部10aから切粉受け950を取り外す必要がある。また、オペレーターは、切粉受け950に溜まった切粉を切粉バケット20又は切粉搬出台車に排出してから、複数のねじSC9で切粉受け950を覆い10の側部10aに取り付ける必要があり、切粉受け950の上にカバー35を取り付ける必要もある。
上述した一連の切粉排出作業は、非常に手間がかかる。
本具体例では、切粉受け50が受け姿勢PO1である状態でピン61とフック62とがロックしていると、切粉受け50の受け姿勢PO1が維持され、製品コンベア30から落下する切粉C1を切粉受け50が受ける。オペレーターがピン61とフック62とのロックを解除し、切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2まで傾動させると、切粉受け50から切粉C1を排出することができる。この作業は、切粉バケット20に溜まった切粉C1を廃棄するときに行われてもよい。オペレーターは、切粉バケット20を収容位置11aから引き出し位置14aに引き出すと、切粉受け50を排出姿勢PO2にすることにより、切粉受け50から切粉C1を切粉バケット20に排出することができる。これにより、オペレーターは、切粉バケット20に溜まった切粉C1を廃棄するときに切粉受け50に溜まった切粉C1も廃棄することができる。
以上説明したように、オペレーターは、切粉受けに溜まった切粉を排出する際、ヒンジ45を介して切粉受け50が保持部40に繋がっている状態でロック機構60の簡単な操作により切粉受け50を一時的に排出姿勢PO2にして切粉受け50から切粉C1を排出させることができる。複数のねじを用いて切粉受けを着脱するという手間がかかる操作は不要であるので、本具体例は、簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させることができる。また、オペレーターが不在であるときにピン61とフック62とをロックしておけば切粉受け50が受け姿勢PO1の状態で維持されるので、切粉受け50の下に切粉回収手段を常に設置する必要が無く、省スペース化に繋がる。
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、切粉受けの位置は、旋盤の右側面に限定されず、旋盤の左側面、旋盤の背面、等でもよい。
上述した実施形態では保持部40にピン61が設けられて切粉受け50にフック62が設けられていたが、保持部にフックが設けられて切粉受けにピンが設けられてもよい。また、ロック機構は、ピンとフックの組合せに限定されず、ノブねじ(指で回すことが可能なねじ)とねじ穴の組合せやマグネットによる接着等でもよい。例えば、保持部にねじ穴が設けられて切粉受けにノブねじが設けられると、ノブねじがねじ穴に螺合するとロック機構がロックし、ねじ穴からノブねじが外れるとロック機構のロックが解除される。
ヒンジの位置は、保持部及び切粉受けの前面に限定されず、保持部及び切粉受けの背面、保持部及び切粉受けの左側面、等でもよい。
尚、切粉バケット通過部に取り付けられた閉塞部材が切粉受け50の傾きを傾き制限姿勢PO3に制限しない構成の旋盤も、簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる効果が得られる。また、傾き制限構造、排出姿勢制限構造、及び、切粉バケットの少なくとも一部が無い旋盤も、簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる効果が得られる。
旋盤には、切粉バケットの代わりにチップコンベアが設けられてもよい。図11は、チップコンベア16を備える旋盤1においてチップコンベア16を断面視して旋盤1の右側面を模式的に示している。尚、上述した例に類似する要素は、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
チップコンベア16における切粉の搬入端部は、切粉バケット収容部12の切粉バケット通過部14から加工室内に挿入されている。切粉バケット通過部14から出たチップコンベア16は、図示していないが、切粉の搬出端部に向かって上昇している。
チップコンベア16にはカバー17があるため、切粉受け50からチップコンベア16に切粉を排出することができない。そこで、保持部40及び切粉受け50の背面にヒンジ45を設けることにより、切粉受け50から切粉が前方へ排出されるようにしている。すなわち、切粉受け50の後端が基端部52であり、切粉受け50の前端が可動端部53である。フック62は、切粉受け50の右の側端部に設けられている。切粉受け50が受け姿勢PO1と排出姿勢PO2との間で傾動するように、切粉バケット収容部12に張り出し部13は無い。
オペレーターは、チップコンベア16の前方において切粉受け50から切粉が落下する位置に切粉搬出台車を配置し、ピン61とフック62とのロックを解除して切粉受け50を受け姿勢PO1から排出姿勢PO2に移行させる操作を行えばよい。これにより、オペレーターは、切粉受け50の前端である可動端部53から切粉受け50の切粉を切粉搬出台車に落下させることができる。
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、旋盤において簡易な構造で切粉受けの切粉を排出する作業性を向上させる技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…旋盤、
10…覆い、10a…側部、11…加工室、11a…収容位置、
12…切粉バケット収容部、13…張り出し部、13a…接触部、
14…切粉バケット通過部、14a…引き出し位置、15…閉塞部材、
20…切粉バケット、21…貯留部、22…把手、
30…製品コンベア(製品搬送装置の例)、31…搬入端部、32…搬出端部、
40…保持部、41,42…側端部、43…前面部、
45…ヒンジ、
50…切粉受け、51…貯留部、
51a…底部、51b…折れ曲がり部、51c…一般部、51d…傾斜変更部、
52…基端部、53…可動端部、54,55…側端部、
60…ロック機構、
61…ピン(第一ロック部の例)、61a…細径部、61b…太径部、
62…フック(第二ロック部の例)、62a…ピン部、62b…フック本体、
A1…切粉バケットの範囲、
AX1…傾動軸、AX2…回転軸、
C1…切粉、
D1…前方向、D2…後方向、D3…上方向、D4…下方向、
D5…左方向、D6…右方向、
H0…水平面、
P1…製品、
PO1…受け姿勢、PO2…排出姿勢、PO3…傾き制限姿勢、
ST1…排出姿勢制限構造、ST2…傾き制限構造、
W1…ワーク。

Claims (7)

  1. 保持部と、
    ヒンジを介して前記保持部に接続された基端部、及び、該基端部とは反対側の可動端部を有し、前記保持部の下方に配置され、落下する切粉を受ける受け姿勢、及び、該受け姿勢よりも前記可動端部が下にある排出姿勢に傾動可能な切粉受けと、
    前記保持部に設けられた第一ロック部、及び、前記切粉受けに設けられた第二ロック部を有し、前記切粉受けが前記受け姿勢であるときに前記第一ロック部と前記第二ロック部とが解除可能にロックするロック機構と、を備え、
    前記第一ロック部と前記第二ロック部とのロックが解除されると前記切粉受けが前記排出姿勢に移行可能である、旋盤。
  2. ワークの加工により得られた製品を搬出する製品搬送装置をさらに備え、
    前記切粉受けは、前記製品搬送装置の搬出端部の下方に配置されている、請求項1に記載の旋盤。
  3. 加工室内の収容位置においてワークの加工により生じる切粉を受け、前記収容位置から前記加工室外へ引き出し可能な切粉バケットをさらに備え、
    前記切粉バケットが前記収容位置から引き出された引き出し状態であって前記切粉受けが前記排出姿勢であるときに該切粉受けから前記切粉バケットに切粉が落下する、請求項1又は請求項2に記載の旋盤。
  4. 前記ヒンジは、水平面において、前記引き出し状態における前記切粉バケットの範囲外にあり、
    前記受け姿勢における前記切粉受けの前記可動端部は、水平面において、前記引き出し状態における前記切粉バケットの範囲内にあり、
    前記排出姿勢における前記切粉受けの前記可動端部を水平面において前記引き出し状態における前記切粉バケットの範囲内に制限する排出姿勢制限構造をさらに備える、請求項3に記載の旋盤。
  5. 前記切粉バケットが前記収容位置にあるときに前記切粉受けが前記受け姿勢から傾く範囲を前記切粉バケットが前記引き出し状態であるときよりも少なくさせる傾き制限構造をさらに備える、請求項3又は請求項4に記載の旋盤。
  6. 旋盤の切粉排出方法であって、
    前記旋盤は、
    保持部と、
    ヒンジを介して前記保持部に接続された基端部、及び、該基端部とは反対側の可動端部を有し、前記保持部の下方に配置され、落下する切粉を受ける受け姿勢、及び、該受け姿勢よりも前記可動端部が下にある排出姿勢に傾動可能な切粉受けと、
    前記受け姿勢において前記切粉受けを前記保持部に対して解除可能にロックするロック機構と、
    加工室内の収容位置においてワークの加工により生じる切粉を受け、前記収容位置から前記加工室外へ引き出し可能な切粉バケットと、を備え、
    前記切粉排出方法は、
    前記切粉バケットを前記収容位置から引き出した引き出し状態にする引き出し工程と、
    前記ロック機構によるロックを解除し、前記切粉受けを前記受け姿勢から前記排出姿勢に移行させ、該排出姿勢の前記切粉受けから前記引き出し状態における前記切粉バケットに切粉を落下させる排出工程と、を含む、旋盤の切粉排出方法。
  7. 前記旋盤は、前記切粉バケットが前記加工室外へ引き出される切粉バケット通過部に対して取り外し可能に取り付けられた閉塞部材と、をさらに備え、
    前記切粉排出方法は、前記閉塞部材を前記切粉バケット通過部から取り外す取り外し工程をさらに含み、
    前記引き出し工程では、前記閉塞部材が取り外された前記切粉バケット通過部の方へ前記切粉バケットを前記収容位置から引き出した前記引き出し状態にする、請求項6に記載の旋盤の切粉排出方法。
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