JP7363199B2 - ベーパーチャンバー、電子機器 - Google Patents
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Description
冷却のための手段としてヒートパイプがよく知られている。これはパイプ内に封入された作動流体により、その相変化を利用して熱源における熱を他の部位に輸送することで拡散させ、熱源を冷却するものである。
第一シート10は、内面10a、該内面10aとは反対側となる外面10b及び内面10aと外面10bとを渡して厚さを形成する側面10cを備え、内面10a側に作動流体が移動する流路のためのパターンが形成されている。後述するようにこの第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとが対向するようにして重ね合わされることで中空部が形成され、ここに作動流体が封入されて密閉空間2となる。
注入部12は第一シート10と第二シート20により形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体11の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第一シート10の注入部12は内面10a側も外面10b側も平坦面とされている。
当該構造として具体的には、本体11の内面10a側に、外周接合部13、外周液流路部14、内側液流路部15、蒸気流路溝16、及び、蒸気流路連通溝17が具備されている。
図3、図4にA10で示した外周接合部13の幅は必要に応じて適宜設定することができるが、最も小さいところで0.05mm以上5.0mm以下であることが好ましい。この幅が0.05mmより小さくなると第一シートと第二シートとの接合時における位置ずれが生じた際に接合面積が不足する虞がある。また、この幅が5.0mmより大きくなると、密閉空間の内容積が小さくなり蒸気流路や凝縮液流路が十分確保できなくなる虞がある。
ここで液流路溝14aは溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
このようにオフセットして連通開口部14cを設けることで、凝縮液流路3を進行する作動流体からみたときに、連通開口部14cが両側に同時に表れることがなく、連通開口部14cが表れても少なくとも一方の側面は常に壁14bが存在する。そのため、毛細管力を連続的に得ることができる。かかる観点からオフセットして連通開口部14cを形成することで作動流体に働く毛細管力を高く維持することができるため、凝縮液を円滑に流すことが可能となる。
図3、図4、図5(a)、図5(b)にB10で示した外周液流路部14の幅は、ベーパーチャンバー全体の大きさ等から適宜設定することができるが、0.03mm以上2mm以下であることが好ましい。この幅が0.03mmより小さいと外側を流れる液の量が十分得られない虞がある。またこの幅が2mmを超えると内側の凝縮液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。
また、図5(a)、図5(b)にDで示した液流路溝14aの深さは5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより凝縮液が流れるために必要な液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。ここで、液流路溝の深さDは、第一シート10の厚さから当該溝の深さDを引いた残りのシート厚さよりも小さいことが好ましい。これにより作動流体の凍結時においてシートが破れてしまうことをより確実に防止することができる。
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、C1をDで除した値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きい、又は1.0よりも小さいことが好ましい。その中でも製造しやすさの観点からC1がDよりも大きいことが好ましく、アスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
また、図6にC4で示した液流路溝14aが延びる方向における隣り合う連通開口部14cのピッチは300μm以上2700μm以下であることが好ましい。
各内側液流路部15には、内側液流路部15が延びる方向に平行な溝である液流路溝15aが形成され、複数の液流路溝15aが、該液流路溝15aが延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、図4、図8(a)からわかるように内側液流路部15ではその断面において凹部である液流路溝15aと液流路溝15a間の凸部である壁15bとが凹凸を繰り返して形成されている。
ここで液流路溝15aは溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
このようにオフセットして連通開口部15cを設けることで、凝縮液流路3を進行する作動流体からみたときに、連通開口部15cが両側に同時に表れることがなく、連通開口部15cが表れても少なくとも一方の側面は常に壁15bが存在する。そのため、毛細管力を連続的に得ることができる。かかる観点からオフセットして連通開口部15cを形成することで作動流体に働く毛細管力を高く維持することができるため、作動流体のより円滑な移動が可能となる。
図3、図4、図8(a)にE10で示した内側液流路部15の幅は、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。また、複数の内側液流路部15のピッチは200μm以上4000μm以下であることが好ましい。これにより蒸気流路の流路抵抗を十分に下げ、蒸気流路における作動流体の移動と、凝縮液流路における毛細管力の作用による作動流体の移動とをバランスよく行うことができる。
また、図8(a)にGで示した溝の深さは5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより凝縮液の移動に必要な凝縮液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。ここで、溝の深さGは、第一シート10の厚さから当該溝の深さGを引いた残りのシート厚さよりも小さいことが好ましい。これにより作動流体の凍結時においてシートが破れてしまうことをより確実に防止することができる。
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、F1をGで除した値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きい、又は1.0よりも小さいことが好ましい。その中でも製造の観点からF1がGより大きいことが好ましく、アスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
また、図8(b)にF4で示した液流路溝15aが延びる方向における隣り合う連通開口部15cのピッチは300μm以上2700μm以下であることが好ましい。
ここで蒸気流路溝16は溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
図3、図4にH10で示した蒸気流路溝16の幅は、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの幅C1、幅F1より大きく形成され、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
一方、図4にI10で示した蒸気流路溝16の深さは、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの深さD、深さGより大きく形成され、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
これにより、蒸気流路が形成されたときに作動流体の安定した移動が行われるとともに、蒸気流路溝の流路断面積を液流路溝よりも大きくすることで、作動流体の性質上、凝縮液よりも体積が大きくなる蒸気を円滑に移動させることができる。
また、これにより蒸気流路4にある作動流体の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの液流路溝14a、液流路溝15aによる凝縮液流路3を効率よく利用できるようになったりもする。
図3、図5(b)にJ10で示した蒸気流路連通溝17の幅は、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
また、図5(b)にK10で示した蒸気流路連通溝17の深さは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、その中でも蒸気流路溝16の深さI10と同じであることが好ましい。これにより第一シート10の製造が容易になる。
ここで直線部と湾曲部との境界は、各溝において流れの方向が変化し始める点を境界とすればよい。以下、同様に考えることができる。図11(a)には図3のうち湾曲部18cの部位に注目して拡大した図を表した。
図9(a)乃至図9(c)に表した符号の意味は次の通りである。
・蒸気流路溝16は湾曲部18cにおいて、湾曲の内側壁winは湾曲の半径がrinであり、その中心がO1の円弧状である。
・蒸気流路溝16は湾曲部18cにおいて、湾曲の外側壁woutは湾曲の半径がroutであり、後で説明するように形態によってその中心がO1、O2、又はO3の円弧状である。
・直線部18a、直線部18bで蒸気流路溝16の幅がαであるところ、湾曲部18cで蒸気流路溝16の幅がβに広げられている(α<β)。
・点線で示した曲線は、蒸気流路溝16の幅が湾曲部18cでもαが維持された場合の仮想線であり、このときの曲率半径はrcであり、その中心がO1の円弧状である。
ここで、湾曲の半径は、湾曲部において壁(内側壁、外側壁)の向きが変化し始めた2点、及び、この2点の中央における1点の合計3点を通る円を考え、この円の半径を湾曲の半径とすることができる。また、湾曲を円や楕円の一部であると見なしたとき、図9、図11に示したように、湾曲に対して円、楕円の中心側(すなわちO1、O2、O3側)を湾曲部の「内側」、湾曲に対して円、楕円の中心側とは反対側を湾曲の「外側」とする。また、湾曲の形状は正円の一部のような形状であることに限らず、楕円の一部のような形状でもよく、湾曲部において配置される複数の蒸気流路溝のうち一部が直線であるような形状であってもよい。以下湾曲部に関する形状は同様に考えることができる。
深さの違いは流動抵抗の低下が可能であれば特に限定されることはないが、直線部に比べて湾曲部において蒸気流路溝が10%以上深いことが望ましい。10%未満では十分に流動抵抗が下げられない虞がある。
かかる観点から、図10に示したように、長い蒸気流路溝16に対して柱16aを設けることができる。ただしこれに限らず、必要に応じて他のいずれかの蒸気流路溝16に対して柱16aを設けてもよく、全ての蒸気流路溝16に柱16aを設けてもよい。
このときには例えば、湾曲の半径が小さい蒸気流路溝の溝幅に対して湾曲の半径が大きい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。これにより、蒸気の移動距離が長い、湾曲の曲率半径が大きい蒸気流路の流動抵抗を下げることができる。
また、湾曲の曲率半径が大きい蒸気流路溝の溝幅に対して湾曲の曲率半径が小さい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。これにより、半径が小さいことによる、湾曲部の蒸気流路の流動抵抗を下げることができる。
さらに、中央に配置される蒸気流路に対し、半径の大きい蒸気流路溝と半径の
小さい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。
以上のような手段によってさらに複数の蒸気流路溝間で流動抵抗の差を小さくすることが可能となり、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる。
図3からわかるように、本形態の湾曲部18cでは、液流路溝14a、液流路溝15a、及び蒸気流路溝16は、これら各流路溝が配列される方向において、配列方向一方側の蒸気流路の湾曲の半径が、配列方向他方側の蒸気流路の湾曲の半径よりも大きくなるように構成されている。このように構成してもよい。
湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも大きくした形態では、蒸気流路溝16(蒸気流路4)を流れる作動流体が湾曲部18cで連通開口部14c、連通開口部15cへ進入することを抑制することができる。湾曲部18cでは蒸気流路溝16(蒸気流路4)を移動する作動流体がその流れ方向により直接的に連通開口部14c、連通開口部15cに流れ込もうとする力が働くため、蒸気が凝縮液流路3に入り込むことや、連通開口部14c、連通開口部15cの凹凸で流動抵抗が高くなる傾向にある。これに対して、湾曲部18cで蒸気流路溝16に接する連通開口部14c、連通開口部15cのピッチを大きくしたり、蒸気流路溝16に接する連通開口部14c、連通開口部15cをなくしたりすることでこのような流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝16(蒸気流路4)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
一方、湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態では、湾曲部では蒸気流路溝(蒸気流路)を流れる蒸気が壁面に強く当たる機会が増えるため、凝縮し易い傾向にある。このとき湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態することで、連通開口部の数を増やし、凝縮液を円滑に液流路溝(凝縮液流路)に導入させることができ、蒸気流路が凝縮液で閉鎖されることを抑制することが可能となる。これにより流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝(蒸気流路)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
第二シート20は、内面20a、該内面20aとは反対側となる外面20b及び内面20aと外面20bとを渡して厚さを形成する側面20cを備え、内面20a側に作動流体が移動するパターンが形成されている。後述するようにこの第二シート20の内面20aと上記した第一シート10の内面10aとが対向するようにして重ね合わされて接合されることで中空部となり、ここに作動流体が封入されて密閉空間2が形成される。
注入部22は第一シート10と第二シート20とにより形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体21の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第二シート20の注入部22には内面20a側に注入溝22aが形成されており、第二シート20の側面20cから本体21の内側(中空部、密閉空間2となるべき部位)に連通している。
図14、図15、図16にA20で示した外周接合部23の幅は上記した本体11の外周接合部13の幅A10と同じであることが好ましい。
なお、このように第二シート20では外周接合部23と外周液流路部24とが面一であるため、構造的には両者を区別する境界線は存在しない。しかし、わかり易さのため、図13、図14では点線により両者の境界を表している。
図14、図15、図16に示した外周液流路部24の幅B20は特に限定されることはなく、第一シート10の外周液流路部14の幅B10と同じでもよいし、異なってもよい。本形態では幅B10と幅B20とは同じである。
幅B20を幅B10より小さくした場合、外周液流路部14のうち少なくとも一部において、液流路溝14aの開口が外周液流路部24により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、また、蒸気が出やすいため、より円滑な作動流体の移動をさせることができる。
本形態で各内側液流路部25は、その内面20a側の表面が第一シート10との接合前において平坦面となるように形成されている。これにより上記した第一シート10の複数の液流路溝15aのうち少なくとも一部の液流路溝15aの開口を閉鎖して凝縮液流路3を形成する。
なお、本形態のように内側液流路部25に凝縮液流路3を形成するための溝が形成されていない場合、第二シート20の厚さは、第一シート10の厚さから液流路溝15aの深さG(図8(a)参照)を引いた厚さ以上であることが好ましい。これにより、ベーパーチャンバーにおける第二シート側における破断(破れ)を防止することができる。
幅E20と幅E10とが異なっていると接合時の位置ズレの影響を小さくすることができる。なお、幅E20を幅E10より小さくした場合には、内側液流路部15のうち少なくとも一部において、液流路溝15aの開口が内側液流路部25により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、また、発生した蒸気が出やすいため、より円滑に作動流体を移動させることができる。
ここで蒸気流路溝26は溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
図14、図15にH20で示した蒸気流路溝26の幅は特に限定されることはなく、第一シート10の蒸気流路溝16の幅H10と同じでもよいし、異なっていてもよい。本形態では幅H10と幅H20とは同じである。
幅H20と幅H10とが異なっていると、接合時の位置ズレの影響を小さくすることができる。なお、幅H20を幅H10より大きくした場合には、内側液流路部15のうち少なくとも一部において、液流路溝15aの開口が内側液流路部25により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、蒸気が出やすいため、より円滑な作動流体の移動をさせることができる。
一方、図15にI20で示した蒸気流路溝26の深さは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
図17には、図1(a)にXV-XVで示したy方向に沿ってベーパーチャンバー1を厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は第一シート10における図4に表した図と、第二シート20における図15に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバー1の切断面が表されたものである。
図18には図17にXVIで示した部位を拡大した図を表した。
図19には、図1(a)にXVII-XVIIで示したx方向に沿ってベーパーチャンバー1の厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は、第一シート10における図5(b)に表した図と、第二シート20における図16に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバー1の切断面が表されたものである。
同様に、第一シート10の凸条である内側液流路部15と第二シート20の凸条である内側液流路部25とが重なるように配置されている。これにより内側液流路部15の液流路溝15a及び内側液流路部25により凝縮液が流れる凝縮液流路3が形成される。
このとき、凝縮液流路3の幅は、本形態では液流路溝15aの幅F1に準じるが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。幅が10μmより小さくなると流路抵抗が大きくなり輸送能力が低下する虞がある。一方、幅が300μmより大きくなると毛細管力が小さくなるため輸送能力が低下する虞がある。
また、凝縮液流路3の高さは、本形態において液流路溝15aの深さGに準じるが5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより移動に必要な凝縮液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。なお、この高さは、凝縮液流路3を挟んで厚さ方向(z方向)一方側及び他方側における第一シート10及び第二シート20の厚さ(肉厚)以下であることが好ましい。これにより凝縮液流路3に起因するベーパーチャンバーの破断(破れ)をさらに防止することができる。
図20(a)の例は、第一シート及び第二シートの液流路溝が同じ幅、同じ位置に配置されている例である。
図20(b)の例は、第二シートにおける液流路溝の幅が第一シートにおける液流路溝の幅よりも大きくされ位置は一致する例である。この例では凝縮液流路内にPで示したように凸部ができ、毛細管力を向上させ、凝縮液が移動する力(凝縮液の供給力)を高めることができる。
図20(c)の例は、第一シート及び第二シートの液流路溝が同じ幅であるが、位置がずれされて配置された例である。この例でも凝縮液流路内にPで示したように凸部ができ、毛細管力を向上させ、凝縮液が移動する力(凝縮液の供給力)を高めることができる。
ここで、蒸気流路4はベーパーチャンバー1の薄型化に伴い、その断面形状が扁平形状とされていることが好ましい。これにより薄型化されても流路内の表面積を確保することが可能とされ、熱輸送能力を高い水準に維持することが可能となる。より具体的には、図18に表した蒸気流路4の幅WB、高さHBにおいて、WBをHBで除した値で表される比(アスペクト比)が2.0以上であることが好ましい。さらに高い熱輸送能力を確保する観点から、当該比は4.0以上がさらに好ましい。
図18、図21等からわかるように、ベーパーチャンバー1は、2つの蒸気流路4の間に、複数の凝縮液流路3が配置されてなる形状を具備する。これにより凝縮液が主要に流れるべき凝縮液流路3と、蒸気及び凝縮液が移動する蒸気流路4とが分離して交互に並ぶような形態となり、作動流体の円滑な移動が助けられる。
ここで「流路断面積」は、流路が延びる方向に直交する面における流路の断面積である。
湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも大きくした形態では、蒸気流路4を流れる作動流体が湾曲部7で連通開口部14c、連通開口部15cへ進入することを抑制することができる。湾曲部7では蒸気流路4を移動する作動流体がその流れ方向により直接的に連通開口部14c、連通開口部15cに流れ込もうする力が働くため、蒸気が凝縮液流路3に入り込むことや、連通開口部14c、連通開口部15cの凹凸により流動抵抗が高くなる傾向にある。これに対して、湾曲部7で蒸気流路4に接する連通開口部14c、連通開口部15cのピッチを大きくしたり、蒸気流路4に接する連通開口部14c、連通開口部15cをなくしたりすることでこのような流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路4ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができることがある。
一方、湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態では、湾曲部では蒸気流路溝(蒸気流路)を流れる蒸気が壁面に強く当たる機会が増えるため、凝縮し易い傾向にある。このとき湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態することで、連通開口部の数を増やし、凝縮液を円滑に液流路溝(凝縮液流路)に導入させることができ、蒸気流路が凝縮液で閉鎖されることを抑制することが可能となる。これにより流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝(蒸気流路)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
ただし、注入流路5から密閉空間2に対して作動流体を注入した後は、注入流路5は閉鎖されるので、最終的な形態のベーパーチャンバー1では外部と密閉空間2とは連通していない。
そして仮止め後に拡散接合を行い恒久的にこれらシートを接合する。なお、拡散接合の代わりにろう付けにより接合してもよい。ただし、本形態のように厚さが薄いベーパーチャンバーの場合、その流路が細いため、ろう材によるろう付けを用いた場合にはろう材が流路に侵入する虞がある。そして流路には上記したように強い毛細管力が働くためろう材が流路の広い範囲に広がる虞もある。かかる観点からこのような問題が生じない拡散接合、超音波接合等の溶接による接合が好ましい。
電子部品30が発熱すると、その熱が第一シート10内を熱伝導により伝わり、密閉空間2内における電子部品30に近い位置に存在する凝縮液が熱を受ける。この熱を受けた凝縮液は熱を吸収し蒸発し気化する。これにより電子部品30が冷却される。
このとき、蒸気流路4には湾曲部7の湾曲した部位が含まれているが、湾曲部7が上記構成を備えているので、流路長さが異なっていても流動抵抗が小さくされたり、バランス良くされたりして、作動流体が円滑に蒸気流路4を移動する。これにより高い熱輸送能力を発揮することができる。
そして作動流体の当該移動の際に、作動流体は順次第一シート10及び第二シート20に熱を奪われながら冷却される。蒸気から熱を奪った第一シート10及び第二シート20はその外面10b、外面20bに接触した携帯型端末装置の筐体等に熱を伝え、最終的に熱は外気に放出される。そして、蒸気流路4を移動しつつ熱を奪われた作動流体は凝縮して液化する。
また、ベーパーチャンバー1では湾曲部7を有する流路を形成することにより、ベーパーチャンバーを電子機器に配置する際に、その配置に関する制約を受け、一直線状のみによる流路を形成することができないときであっても、熱源から発生した熱を効率的に離隔した位置にまで移動させることができる。
そして、当該湾曲部7では上記のように複数の蒸気流路4で流動抵抗を下げたり、必要に応じて流動抵抗の差が低くなるようにしたりする構成とされているので、バランスよく作動流体を移動させることができ、熱輸送能力を高めることができる。
注入部212は第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230により形成された密閉空間に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体211の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第一シート210の注入部212は内面210a側も外面210b側も平坦面とされている。
注入部232は第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230により形成された密閉空間に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体231の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。注入部232には、第一シート210に重なる面側に注入溝232aが形成されている。注入溝232aは上記した注入溝22aと同様に考えることができる。
外周接合部233は上記した外周接合部13と同様に考えることができる。
外周液流路部234、及び、ここに具備される液流路溝234aは上記した外周液流路部14、及び、液流路溝14aと同様に考えることができる。
本形態では液流路溝235aは第二シート220に対向する側の面にのみ設けられているが、これに加えて第一シート210に対向する側の面にも液流路溝が設けられてもよい。
そして、複数(本形態では6つ)の蒸気流路スリット236が、延びる方向とは異なる方向に配列されている。従って、図27からわかるように第三シート230は、外周液流路部234及び内側液流路部235と蒸気流路スリット236とが交互に繰り返された形状を備えている。
また、これにより蒸気流路にある作動流体の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの液流路溝234a、液流路溝235aによる凝縮液流路を効率よく利用できるようになったりもする。
2 密閉空間
3 凝縮液流路
4 蒸気流路
10 第一シート
11 本体
12 注入部
13 外周接合部
14 外周液流路部
14a 液流路溝
14c 連通開口部
15 内側液流路部
15a 液流路溝
15c 連通開口部
16 蒸気流路溝
17 蒸気流路連通溝
20 第二シート
21 本体
22 注入部
23 外周接合部
24 外周液流路部
25 内側液流路部
26 蒸気流路溝
27 蒸気流路連通溝
230 第三シート
236 蒸気流路スリット
Claims (8)
- 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも流路断面積が大きくなるように構成されており、
前記蒸気流路と前記凝縮液流路とを連通する開口部が前記凝縮液流路及び前記蒸気流路が延びる方向に沿って複数設けられ、前記湾曲部における前記開口部の配列ピッチが前記直線部における前記開口部の配列ピッチと異なる、
ベーパーチャンバー。 - 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも流路断面積が大きくなるように構成されており、
前記湾曲部において、前記蒸気流路のうち湾曲の半径の中心に遠い側の流路壁の湾曲の半径をr out 、前記蒸気流路のうち湾曲の半径の中心に遠い側の流路壁において、前記湾曲部が前記直線部と同じ流路幅であったと仮定したときの仮想の湾曲の半径をr c としたとき、r out <r c であるとともに、前記r out の中心位置は、前記r c の中心位置より前記蒸気流路に近い、
ベーパーチャンバー。 - 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも前記ベーパーチャンバーの厚さ方向の大きさが大きいことにより流路断面積が大きくなるように構成されている、ベーパーチャンバー。 - 前記湾曲部における前記蒸気流路は、該蒸気流路が延びる方向で流路断面積が一定である、請求項1乃至3のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
- 前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも幅が大きくなるように構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
- 複数の前記蒸気流路は繋がっている、請求項1乃至5のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
- 前記湾曲部における複数の前記蒸気流路は、幅が異なるように構成されている請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
- 筐体と、
前記筐体の内側に配置された電子部品と、
前記電子部品に対して直接又は他の部材を介して接触して配置された請求項1乃至7のいずれかに記載されたベーパーチャンバーと、を備える、電子機器。
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