JP7363199B2 - ベーパーチャンバー、電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、密閉空間に封入された作動流体が移動しつつ熱輸送を行うベーパーチャンバーに関する。
パソコン並びに携帯電話及びタブレット端末等の携帯型端末に代表される電子機器には、CPU(中央演算処理装置)等の電子部品が用いられている。このような電子部品からの発熱量は、情報処理能力の向上により増加する傾向にあるため、これを冷却する技術が重要となっている。
冷却のための手段としてヒートパイプがよく知られている。これはパイプ内に封入された作動流体により、その相変化を利用して熱源における熱を他の部位に輸送することで拡散させ、熱源を冷却するものである。
一方、近年においてはこれら電子機器の薄型化が顕著であり、従来のヒートパイプよりも薄型の冷却手段が必要となってきた。これに対してベーパーチャンバーが提案されている。ベーパーチャンバーは、シート型ヒートパイプと呼ばれることもあり、ヒートパイプによる熱輸送の考え方を平板状の部材に展開した機器である。すなわち、ベーパーチャンバーでは、対向する平板の間に作動流体が封入されており、この作動流体の相変化を利用して熱源における熱を輸送及び拡散して熱源を冷却する。
このようなベーパーチャンバーは電子機器の内側に配置されており、電子機器の内側には他にも多くの部材が配置されているため、ベーパーチャンバーが配置できる位置には制約があることが多い。そうすると、必ずしも直線状に作動流体のための流路を設けることはできず、例えば特許文献1に記載のように、方向が変化するように曲がった部位を有する流路を設けることで、配置に対する制約に対応する必要があった。
特開2016-205693号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、作動流体の流路の方向が変化するベーパーチャンバーでは、熱輸送能力を高め難いという問題があった。
そこで本発明は上記問題を鑑み、方向が変化する流路を有する場合であっても熱輸送能力を高めることができるベーパーチャンバーを提供することを課題とする。また、このベーパーチャンバーを備える電子機器を提供する。
発明者は、鋭意検討の結果、方向が変化する複数の蒸気流路を有するベーパーチャンバーでは、作動流体の流路の方向が変化する際に作動流体の流動抵抗が高くなり、流路の末端まで蒸気が伝わり難く、十分に熱輸送ができなくなることがあるという知見を得た。また、複数の蒸気流路でその長さが異なるため、流動抵抗に差ができてしまうため作動流体がバランスよく移動しないため流動抵抗の差が大きくなると熱輸送能力が低下し、想定していた性能を出すことができないことがあることもわかった。これらの知見に基づいて発明者は本発明を完成させた。以下本発明について説明する。
本発明の1つの態様は、密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、密閉空間には、作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、凝縮液流路より流路断面積が大きく、作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、複数の凝縮液流路と複数の蒸気流路が直線状に延びる直線部と、直線部に連続し、複数の凝縮液流路と複数の蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、湾曲部における蒸気流路は、直線部における蒸気流路よりも流路断面積が大きくなるように構成されている、ベーパーチャンバーである。
上記ベーパーチャンバーの湾曲部における蒸気流路は、該蒸気流路が延びる方向で流路断面積が一定であるように構成してもよい。
上記のベーパーチャンバーにおいて、湾曲部における蒸気流路は、直線部における蒸気流路よりも幅が大きくなるように構成してもよい。
上記のベーパーチャンバーにおいて、複数の蒸気流路は繋がっているように構成してもよい。
上記のベーパーチャンバーにおいて、湾曲部における複数の蒸気流路は、幅が異なるように構成されてもよい。
また、本発明の他の態様は、筐体と、筐体の内側に配置された電子部品と、電子部品に対して直接又は他の部材を介して接触して配置された上記したベーパーチャンバーと、を備える、電子機器である。
本発明によれば、ベーパーチャンバーが、方向が変化する流路を有する場合であっても、熱輸送能力を高めることができる。
図1(a)はベーパーチャンバー1の斜視図、図1(b)はベーパーチャンバー1の分解斜視図である。 図2は第一シート10の斜視図である。 図3は第一シート10の平面図である。 図4は第一シート10の切断面である。 図5(a)、図5(b)は第一シート10の他の切断面である。 図6は外周液流路部14を平面視して一部を拡大して表した図である。 図7は他の例の外周液流路部14を平面視して一部を拡大して表した図である。 図8(a)は内側液流路部15に注目した切断面、図8(b)は内側液流路部15を平面視して一部を拡大して表した図である。 図9(a)乃至図9(c)は湾曲部18cの形態例を説明する図である。 図10は蒸気流路溝16に柱16aを設けた例を説明する図である。 図11(a)は湾曲部18cに注目して平面視した図、図11(b)は他の例における湾曲部18cを表す図である。 図12は他の例における湾曲部18cを表す図である。 図13は第二シート20の斜視図である。 図14は第二シート20の平面図である。 図15は第二シート20の切断面である。 図16は第二シート20の他の切断面である。 図17はベーパーチャンバー1の切断面である。 図18は、図17の一部を拡大した図である。 図19はベーパーチャンバー1の他の切断面である。 図20(a)乃至図20(c)は凝縮液流路の形態例を説明する図である。 図21は凝縮液流路3及び蒸気流路4を説明する図である。 図22は、電子機器40を説明する斜視図である。 図23は、ベーパーチャンバー1の作動を説明する図である。 図24はベーパーチャンバー201の外観斜視図である。 図25はベーパーチャンバー201の分解斜視図である。 図26(a)は第三シート230を一方の面側から見た図、図26(b)は第三シート230を他方の面側から見た図である。 図27は第三シート230の切断面である。 図28は第三シート230の他の切断面である。 図29はベーパーチャンバー201の切断面である。 図30は図27の一部を拡大した図である。 図31はベーパーチャンバー201の他の切断面である。
以下、図面に基づき各形態を説明する。ただし、本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさのため説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。
図1(a)には第一の形態にかかるベーパーチャンバー1の外観斜視図、図1(b)にはベーパーチャンバー1の分解斜視図を表した。これら図及び以下に示す各図には必要に応じて便宜のため、互いに直交する方向を表す矢印(x、y、z)も表した。ここでxy面内方向は平板状であるベーパーチャンバー1の板面に沿った方向であり、z方向は厚さ方向である。
本形態のベーパーチャンバー1は、図1(a)、図1(b)からわかるように第一シート10及び第二シート20を有している。そして、後で説明するように、この第一シート10と第二シート20とが重ねられて接合(拡散接合、ろう付け等)されていることにより第一シート10と第二シート20との間に中空部が形成され、この中空部に作動流体が封入されて密閉空間2とされている(例えば図17参照)。
本形態で第一シート10は全体としてシート状の部材で、平面視でL字状とされている。図2には第一シート10を内面10a側から見た斜視図、図3には第一シート10を内面10a側から見た平面図をそれぞれ表した。また、図4には図3のIV-IVで切断したときの第一シート10の切断面を示した。
第一シート10は、内面10a、該内面10aとは反対側となる外面10b及び内面10aと外面10bとを渡して厚さを形成する側面10cを備え、内面10a側に作動流体が移動する流路のためのパターンが形成されている。後述するようにこの第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとが対向するようにして重ね合わされることで中空部が形成され、ここに作動流体が封入されて密閉空間2となる。
第一シート10の厚さは特に限定されることはないが、0.01mm以上1.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上0.2mm以下である。これにより薄型のベーパーチャンバーとして適用できる場面を多くすることができる。
第一シート10は本体11及び注入部12を備えている。本体11は作動流体が移動する部位を形成するシート状であり、本形態では平面視で湾曲する部位を有するL字型である。
注入部12は第一シート10と第二シート20により形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体11の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第一シート10の注入部12は内面10a側も外面10b側も平坦面とされている。
本体11の内面10a側には作動流体が移動するための構造が形成されている。
当該構造として具体的には、本体11の内面10a側に、外周接合部13、外周液流路部14、内側液流路部15、蒸気流路溝16、及び、蒸気流路連通溝17が具備されている。
外周接合部13は、本体11の内面10a側に、該本体11の外周に沿って形成された面である。この外周接合部13が第二シート20の外周接合部23に重なって接合(拡散接合、ろう付け等)されることにより、第一シート10と第二シート20との間に中空部が形成され、ここに作動流体が封入されることで密閉空間2となる。
図3、図4にA10で示した外周接合部13の幅は必要に応じて適宜設定することができるが、最も小さいところで0.05mm以上5.0mm以下であることが好ましい。この幅が0.05mmより小さくなると第一シートと第二シートとの接合時における位置ずれが生じた際に接合面積が不足する虞がある。また、この幅が5.0mmより大きくなると、密閉空間の内容積が小さくなり蒸気流路や凝縮液流路が十分確保できなくなる虞がある。
外周液流路部14は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る流路である凝縮液流路3(例えば図18参照)の一部を構成する部位である。図5(a)には図4のうち矢印Vaで示した部分、図5(b)には図3にVb-Vbによる切断面を示した。いずれの図にも外周液流路部14の断面形状が表れている。また、図6には図5(a)に矢印VIで示した方向から見た外周液流路部14を平面視した拡大図を表した。
これら図からわかるように、外周液流路部14は本体11の内面10aのうち、外周接合部13の内側に沿って形成され、密閉空間2の外周に沿って環状となるように設けられている。また、外周液流路部14には、該外周液流路部14が延びる方向に平行に延びる複数の溝である液流路溝14aが形成され、複数の液流路溝14aが、該液流路溝14aが延びる方向とは異なる方向に間隔を有して配置されている。従って、図5(a)、図5(b)からわかるように外周液流路部14ではその断面において凹部である液流路溝14aと液流路溝14a間の凸部である壁14bとが凹凸を繰り返して形成されている。
ここで液流路溝14aは溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
このように複数の液流路溝14aを備えることで、1つ当たりの液流路溝14aの深さ及び幅を小さくし、凝縮液流路3(例えば図18参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。一方、液流路溝14aを複数とすることにより合計した全体としての凝縮液流路3の内容積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができる。
さらに、外周液流路部14では、図6からわかるように隣り合う液流路溝14aは、壁14bに間隔を有して設けられた連通開口部14cにより連通している。これにより複数の液流路溝14a間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができる。また、蒸気流路4を形成する蒸気流路溝16に隣接する壁14bに設けられた連通開口部14cは、蒸気流路4と凝縮液流路3とを連通させる。従って、連通開口部14cを設けることにより蒸気流路4で生じた凝縮液を円滑に凝縮液流路3に移動させることができるとともに、凝縮液流路3で生じた蒸気を円滑に蒸気流路4に移動させることもでき、これによっても作動流体の円滑な移動を促進することが可能となる。
本形態では図6で示したように1つの液流路溝14aの該溝を挟んで液流路溝14aが延びる方向において同じ位置に対向するように連通開口部14cが配置されている。ただしこれに限定されることはなく、例えば図7に示したように、1つの液流路溝14aの該溝を挟んで液流路溝14aが延びる方向において異なる位置に連通開口部14cが配置されてもよい。すなわち、この場合は液流路溝14aが延びる方向にオフセットして連通開口部14cが配置されている。
このようにオフセットして連通開口部14cを設けることで、凝縮液流路3を進行する作動流体からみたときに、連通開口部14cが両側に同時に表れることがなく、連通開口部14cが表れても少なくとも一方の側面は常に壁14bが存在する。そのため、毛細管力を連続的に得ることができる。かかる観点からオフセットして連通開口部14cを形成することで作動流体に働く毛細管力を高く維持することができるため、凝縮液を円滑に流すことが可能となる。
以上のような構成を備える外周液流路部14は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図3、図4、図5(a)、図5(b)にB10で示した外周液流路部14の幅は、ベーパーチャンバー全体の大きさ等から適宜設定することができるが、0.03mm以上2mm以下であることが好ましい。この幅が0.03mmより小さいと外側を流れる液の量が十分得られない虞がある。またこの幅が2mmを超えると内側の凝縮液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。
液流路溝14aについて、図5(a)、図6にCで示した溝幅は10μm以上300μm以下であることが好ましい。
また、図5(a)、図5(b)にDで示した液流路溝14aの深さは5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより凝縮液が流れるために必要な液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。ここで、液流路溝の深さDは、第一シート10の厚さから当該溝の深さDを引いた残りのシート厚さよりも小さいことが好ましい。これにより作動流体の凍結時においてシートが破れてしまうことをより確実に防止することができる。
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、CをDで除した値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きい、又は1.0よりも小さいことが好ましい。その中でも製造しやすさの観点からCがDよりも大きいことが好ましく、アスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
また、壁14bについて、図5(a)、図6にCで示した幅は20μm以上300μm以下であることが好ましい。この幅が20μmより小さいと作動流体の凍結と溶融との繰り返しにより破断し易くなり、この幅が300μmより大きくなると連通開口部14cの幅が大きくなりすぎ、隣り合う凝縮液流路3との作動流体の円滑な連通が阻害される虞がある。
連通開口部14cについて、図6にCで示した液流路溝14aが延びる方向に沿った連通開口部14cの大きさは20μm以上180μm以下であることが好ましい。
また、図6にCで示した液流路溝14aが延びる方向における隣り合う連通開口部14cのピッチは300μm以上2700μm以下であることが好ましい。
本形態では液流路溝14aの断面形状は半楕円形であるがこれに限定されることなく、正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形等であってもよい。
また、液流路溝14aは、密閉空間内の縁に沿って連続して形成されていることが好ましい。すなわち、液流路溝14aは他の構成要素によって寸断されることなく1周に亘って環状に延びていることが好ましい。これにより凝縮液の移動を阻害する要因が減るため、円滑に凝縮液を移動させることができる。
本形態では外周液流路部14が設けられているが、外周液流路部14は必ずしも設けられる必要はなくベーパーチャンバーの形状、ベーパーチャンバーが適用される機器との関係、及び、使用環境等の観点から、外周液流路部14が設けられていない形態としてもよい。この形態では密閉空間の外周部を蒸気流路として、ベーパーチャンバーの外周部まで蒸気により熱を運ぶように構成することができ、より高い均熱化をすることができる場合がある。
図2乃至図4に戻って内側液流路部15について説明する。内側液流路部15も液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る凝縮液流路3の一部を構成する部位である。図8(a)には図4のうちVIIIaで示した部分を示した。この図にも内側液流路部15の断面形状が表れている。また、図8(b)には図8(a)に矢印VIIIbで示した方向から見た内側液流路部15を平面視した拡大図を示した。
これら図からわかるように、内側液流路部15は本体11の内面10aのうち、環状である外周液流路部14(又は、外周接合部13)の環の内側に形成されている。本形態の内側液流路部15は、図2、図3からわかるように、湾曲部を有して延びる凸条であり、複数(本形態では5つ)の内側液流路部15が延びる方向とは異なる方向に間隔を有して配列され、蒸気流路溝16の間に配置されている。
各内側液流路部15には、内側液流路部15が延びる方向に平行な溝である液流路溝15aが形成され、複数の液流路溝15aが、該液流路溝15aが延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、図4、図8(a)からわかるように内側液流路部15ではその断面において凹部である液流路溝15aと液流路溝15a間の凸部である壁15bとが凹凸を繰り返して形成されている。
ここで液流路溝15aは溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
このように複数の液流路溝15aを備えることで、1つ当たりの液流路溝15aの深さ及び幅を小さくし、凝縮液流路3(例えば図18参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。一方、液流路溝15aを複数とすることにより合計した全体としての凝縮液流路3の内容積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができる。
さらに、内側液流路部15でも、図8(b)からわかるように、外周液流路部14の例に倣って図6と同じようにして隣り合う液流路溝15aは、壁15bに間隔を有して設けられた連通開口部15cにより連通している。これにより複数の液流路溝15a間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができる。また、蒸気流路4を形成する蒸気流路溝16に隣接する壁15bに設けられた連通開口部15cは、蒸気流路4と凝縮液流路3とを連通させる。従って、後で説明するように連通開口部15cを構成することにより蒸気流路4で生じた凝縮液を円滑に凝縮液流路3に移動させることができるとともに、凝縮液流路で発生した蒸気を円滑に蒸気流路4に移動させることもでき、これによっても作動流体の円滑な移動を促進することが可能となる。
内側液流路部15についても、図7の例に倣って、1つの液流路溝15aの該溝を挟んで液流路溝15aが延びる方向において異なる位置に連通開口部15cが配置されてもよい。
このようにオフセットして連通開口部15cを設けることで、凝縮液流路3を進行する作動流体からみたときに、連通開口部15cが両側に同時に表れることがなく、連通開口部15cが表れても少なくとも一方の側面は常に壁15bが存在する。そのため、毛細管力を連続的に得ることができる。かかる観点からオフセットして連通開口部15cを形成することで作動流体に働く毛細管力を高く維持することができるため、作動流体のより円滑な移動が可能となる。
以上のような構成を備える内側液流路部15は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図3、図4、図8(a)にE10で示した内側液流路部15の幅は、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。また、複数の内側液流路部15のピッチは200μm以上4000μm以下であることが好ましい。これにより蒸気流路の流路抵抗を十分に下げ、蒸気流路における作動流体の移動と、凝縮液流路における毛細管力の作用による作動流体の移動とをバランスよく行うことができる。
液流路溝15aについて、図8(a)、図8(b)にFで示した溝幅は10μm以上300μm以下であることが好ましい。
また、図8(a)にGで示した溝の深さは5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより凝縮液の移動に必要な凝縮液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。ここで、溝の深さGは、第一シート10の厚さから当該溝の深さGを引いた残りのシート厚さよりも小さいことが好ましい。これにより作動流体の凍結時においてシートが破れてしまうことをより確実に防止することができる。
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、FをGで除した値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きい、又は1.0よりも小さいことが好ましい。その中でも製造の観点からFがGより大きいことが好ましく、アスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
また、壁15bについて、図8(a)、図8(b)にFで示した幅は20μm以上300μm以下であることが好ましい。この幅が20μmより小さいと作動流体の凍結と溶融の繰り返しにより破断し易くなり、この幅が300μmより大きくなると連通開口部15cの幅が大きくなりすぎ、凝縮液流路3間の円滑な連通が阻害される虞がある。
連通開口部15cについて、図8(b)にFで示した液流路溝15aが延びる方向に沿った連通開口部の大きさは20μm以上180μm以下であることが好ましい。
また、図8(b)にFで示した液流路溝15aが延びる方向における隣り合う連通開口部15cのピッチは300μm以上2700μm以下であることが好ましい。
また、本形態で液流路溝15aの断面形状は半楕円形であるが、これに限らず、正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形等であってもよい。
次に蒸気流路溝16について説明する。蒸気流路溝16は、蒸気状及び凝縮液状の作動流体が移動する部位で、蒸気流路4の一部を構成する。図3には平面視した蒸気流路溝16の形状、図4には蒸気流路溝16の断面形状がそれぞれ表れている。
これらの図からもわかるように、蒸気流路溝16は本体11の内面10aのうち、環状である外周液流路部14の環の内側に形成された溝により構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路溝16は、隣り合う内側液流路部15の間、及び、外周液流路部14と内側液流路部15との間に形成され、湾曲した部位を有して延びた溝である。そして、複数(本形態では6つ)の蒸気流路溝16が当該延びる方向とは異なる方向に配列されている。従って、図4からわかるように第一シート10は、内側液流路部15を凸条とし、蒸気流路溝16を凹条とした凹凸が繰り返された形状を備えている。
ここで蒸気流路溝16は溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
蒸気流路溝16は、第二シート20の蒸気流路溝26と組み合わされて蒸気流路4が形成されたとき、当該蒸気流路4で作動流体が移動するように構成されていればよい。そのため、蒸気流路溝16は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図3、図4にH10で示した蒸気流路溝16の幅は、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの幅C、幅Fより大きく形成され、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
一方、図4にI10で示した蒸気流路溝16の深さは、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの深さD、深さGより大きく形成され、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
これにより、蒸気流路が形成されたときに作動流体の安定した移動が行われるとともに、蒸気流路溝の流路断面積を液流路溝よりも大きくすることで、作動流体の性質上、凝縮液よりも体積が大きくなる蒸気を円滑に移動させることができる。
ここで蒸気流路溝16は、後で説明するように第二シート20と組み合わされて蒸気流路4が形成されたときに、蒸気流路4の幅が高さ(厚さ方向大きさ)よりも大きい扁平形状となるように構成されていることが好ましい。そのため、H10をI10で除した値で示されるアスペクト比は好ましくは4.0以上、より好ましくは8.0以上である。
本形態では蒸気流路溝16の断面形状は半楕円形であるが、これに限らず正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が円形、底部が半楕円形等であってもよい。
蒸気流路連通溝17は、複数の蒸気流路溝16を連通させ、第二シート20の蒸気流路連通溝27と組み合わされて蒸気流路溝16による複数の蒸気流路4をその端部で連通する流路を形成する溝である。これにより、内側液流路部15が延びる方向における蒸気流路4で生じる作動流体の移動を円滑に行うことができる。
また、これにより蒸気流路4にある作動流体の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの液流路溝14a、液流路溝15aによる凝縮液流路3を効率よく利用できるようになったりもする。
本形態の蒸気流路連通溝17は、図2、図3からわかるように、内側液流路部15が延びる方向の両端部及び蒸気流路溝16が延びる方向の両端部と、外周液流路部14との間に形成されている。図5(b)には蒸気流路連通溝17の連通方向に直交する断面が表れている。なお、蒸気流路連通溝17と蒸気流路溝16との境界は必ずしも形状による境界が形成されるわけではないので、図2、図3にはわかりやすさのため、当該境界を点線で表した。
蒸気流路連通溝17は、隣り合う蒸気流路溝16を繋ぐように連通させることができればよく、その形状は特に限定されることはないが、例えば次のような構成を備えることができる。
図3、図5(b)にJ10で示した蒸気流路連通溝17の幅は、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
また、図5(b)にK10で示した蒸気流路連通溝17の深さは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、その中でも蒸気流路溝16の深さI10と同じであることが好ましい。これにより第一シート10の製造が容易になる。
本形態で蒸気流路連通溝17の断面形状は半楕円形であるが、これに限らず、正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形等であってもよい。
また、本形態では第一シート10は、液流路溝14a(外周液流路部14)、液流路溝15a(内側液流路部15)、及び蒸気流路溝16において、これらが延びる方向が変化する部位である湾曲部18cを備えている。すなわち、第一シート10は、液流路溝14a(外周液流路部14)、液流路溝15a(内側液流路部15)、及び蒸気流路溝16がx方向に直線状に延びる直線部18a、液流路溝14a(外周液流路部14)、液流路溝15a(内側液流路部15)、及び蒸気流路溝16がy方向に直線状に延びる直線部18b、並びに、直線部18a及び直線部18bにおける液流路溝14a(外周液流路部14)、液流路溝15a(内側液流路部15)、及び蒸気流路溝16を連結する湾曲部18cを備える。従って湾曲部18cは、その一端が一方の直線部18aに接続され、他端が他方の直線部18bに接続され、x方向からy方向へ、及び、y方向からx方向へ流れが向きを変えるように液流路溝14a(外周液流路部14)、液流路溝15a(内側液流路部15)、及び蒸気流路溝16が湾曲している。
ここで直線部と湾曲部との境界は、各溝において流れの方向が変化し始める点を境界とすればよい。以下、同様に考えることができる。図11(a)には図3のうち湾曲部18cの部位に注目して拡大した図を表した。
図3、図11(a)からよくわかるように本形態では、湾曲部18cにおいて、直線部18a、直線部18bに対して蒸気流路溝16の幅が大きく形成されている。これによれば、流路の湾曲により流動抵抗が大きくなる湾曲部18cで流動抵抗を下げることができ、ベーパーチャンバー全体として流動抵抗が小さくなるため、作動流体の移動がより円滑となって熱輸送能力を高めることができる。その際、湾曲部18cの範囲では当該幅の大きさを一定としてもよい。これにより作動流体の流動抵抗を低く抑えることができる。
このように湾曲部18cにおいて蒸気流路溝16の幅を、直線部18a、直線部18bにおける蒸気流路溝16の幅より大きくする手段は特に限定されることはない。本形態では湾曲部18cに属する部位の外周液流路部14、及び、内側液流路部15の幅を、直線部18a、直線部18bに属する部位の外周液流路部14、及び、内側液流路部15の幅より小さくすることによりなされている。この際には、この部位において外周液流路部14の液流路溝14a及び内側液流路部15の液流路溝15aの幅を小さくしてもよいし、液流路溝14a及び液流路溝15aの数を減らしてもよい。
この他、湾曲部18cに属する外周液流路部14、及び、内側液流路部15の幅を、直線部18a、直線部18bに属する外周液流路部14、及び、内側液流路部15の幅と同じとしたままで、湾曲部18cにおける蒸気流路溝16の幅を直線部18a、直線部18bにおける蒸気流路溝16の幅より大きくする手段を適用してもよい。具体的な例として図9(a)乃至図9(c)に説明のための図を示した。
図9(a)乃至図9(c)では、1つの蒸気流路溝16に注目して説明する図である。他の複数の蒸気流路溝16についても同じように考えることができる。
図9(a)乃至図9(c)に表した符号の意味は次の通りである。
・蒸気流路溝16は湾曲部18cにおいて、湾曲の内側壁winは湾曲の半径がrinであり、その中心がOの円弧状である。
・蒸気流路溝16は湾曲部18cにおいて、湾曲の外側壁woutは湾曲の半径がroutであり、後で説明するように形態によってその中心がO、O、又はOの円弧状である。
・直線部18a、直線部18bで蒸気流路溝16の幅がαであるところ、湾曲部18cで蒸気流路溝16の幅がβに広げられている(α<β)。
・点線で示した曲線は、蒸気流路溝16の幅が湾曲部18cでもαが維持された場合の仮想線であり、このときの曲率半径はrであり、その中心がOの円弧状である。
ここで、湾曲の半径は、湾曲部において壁(内側壁、外側壁)の向きが変化し始めた2点、及び、この2点の中央における1点の合計3点を通る円を考え、この円の半径を湾曲の半径とすることができる。また、湾曲を円や楕円の一部であると見なしたとき、図9、図11に示したように、湾曲に対して円、楕円の中心側(すなわちO、O、O側)を湾曲部の「内側」、湾曲に対して円、楕円の中心側とは反対側を湾曲の「外側」とする。また、湾曲の形状は正円の一部のような形状であることに限らず、楕円の一部のような形状でもよく、湾曲部において配置される複数の蒸気流路溝のうち一部が直線であるような形状であってもよい。以下湾曲部に関する形状は同様に考えることができる。
図9(a)の例は、湾曲部18cにおいて、蒸気流路溝16の外側壁woutの湾曲の半径routが湾曲の半径rよりも大きい(rout>r)とともに、その中心がOである。
図9(b)の例は、湾曲部18cにおいて、蒸気流路溝16の外側壁woutの湾曲の半径routが曲率半径rと同じ(rout=r)であるが、その中心がOよりも蒸気流路溝16側にずれたOにある。
図9(c)の例は、湾曲部18cにおいて、蒸気流路溝16の外側壁woutの湾曲の半径routが曲率半径rin及び曲率半径rよりも小さく(rout<rin<r)、その中心がOよりも蒸気流路溝16側にずれたOにある。
なお、図9(a)及び図9(b)の例では、外側壁woutにおいて、直線状の部分と円弧部分とが1つの屈折部により接続されている。これに限らず、この1つの屈折部を小さな多数の屈折部としたり、曲線としたりすることで、徐々に滑らかに向きが変わるように接続するように構成してもよい。
湾曲部18cにおける蒸気流路溝16の幅は、流動抵抗の低下が可能であれば特に限定されることはないが、直線部18a、直線部18bに比べて10%以上100%以下の範囲で幅が大きいことが好ましい。10%未満では十分に流動抵抗が下げられない虞がある。一方、直線部18a、直線部18bに比べて湾曲部18cで100%を超えて蒸気流路溝の幅を大きくすると、逆に直線部の流動抵抗が上がってしまう虞がある。
また、上記では蒸気流路溝の幅に注目して形態を説明したが、その代わり、又は、それに加えて湾曲部18cにおける蒸気流路溝16の深さを直線部18a、直線部18bと比べて深くしても良い。深さ方向に変更することによる形態では、平面方向(xy方向)に広がることが抑制されるため、凝縮液流路を配置する部位を多く確保して熱輸送能力の向上が図れたり、外周接合部を広く取ることができて耐圧の信頼性の向上が図れたりする。その際、湾曲部18cの範囲では当該深さは一定としてもよい。これにより作動流体の流動抵抗を低く抑えることができる。
深さの違いは流動抵抗の低下が可能であれば特に限定されることはないが、直線部に比べて湾曲部において蒸気流路溝が10%以上深いことが望ましい。10%未満では十分に流動抵抗が下げられない虞がある。
また、図10に示したように、湾曲部18cにおける蒸気流路溝16には、その幅方向中央の底部から立設するように複数の柱16aを配列してもよい。これがベーパーチャンバー1の第一シート10と第二シート20を支持する柱となる。従って、湾曲部18cの蒸気流路溝の幅を広げたことによって蒸気流路の幅が広くなったことに起因する強度低下を抑制することができる。具体的には、第一シート10と第二シート20とを組み合わせてベーパーチャンバー1とする際の接合や減圧のとき、及び、ベーパーチャンバーを電子機器に組み込む際に強度不足で蒸気流路が潰れてしまうのを防ぐことができる。
かかる観点から、図10に示したように、長い蒸気流路溝16に対して柱16aを設けることができる。ただしこれに限らず、必要に応じて他のいずれかの蒸気流路溝16に対して柱16aを設けてもよく、全ての蒸気流路溝16に柱16aを設けてもよい。
本形態では図11(a)に表れているように、湾曲部と直線部との接続部位で、蒸気流路溝16の幅が段状に変化するように形成されている。これに対して図11(b)に表した例では、湾曲部と直線部との接続部位で、蒸気流路溝16の幅がテーパ状の傾斜面によって漸次溝の幅が変化するように形成されている。これによれば当該接続部位を作動流体が通過する際に渦の発生を防止することができ、さらに流動抵抗を低く抑えることが可能となる。
また、上記の形態では、湾曲部18cにおいて複数の蒸気流路溝16の幅を同じとしたが、これに限らず蒸気流路溝ごとに幅を変更してもよい。
このときには例えば、湾曲の半径が小さい蒸気流路溝の溝幅に対して湾曲の半径が大きい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。これにより、蒸気の移動距離が長い、湾曲の曲率半径が大きい蒸気流路の流動抵抗を下げることができる。
また、湾曲の曲率半径が大きい蒸気流路溝の溝幅に対して湾曲の曲率半径が小さい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。これにより、半径が小さいことによる、湾曲部の蒸気流路の流動抵抗を下げることができる。
さらに、中央に配置される蒸気流路に対し、半径の大きい蒸気流路溝と半径の
小さい蒸気流路溝の溝幅を大きくしてもよい。
以上のような手段によってさらに複数の蒸気流路溝間で流動抵抗の差を小さくすることが可能となり、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる。
上記の他、第一シート10は次のような構成を備えてもよい。
図3からわかるように、本形態の湾曲部18cでは、液流路溝14a、液流路溝15a、及び蒸気流路溝16は、これら各流路溝が配列される方向において、配列方向一方側の蒸気流路の湾曲の半径が、配列方向他方側の蒸気流路の湾曲の半径よりも大きくなるように構成されている。このように構成してもよい。
その中でも、本形態ではこれら複数の各溝が同心円の円弧を描くように湾曲している。ただし、これに限らず円弧の中心位置がずれていてもよい。さらには、湾曲部18cにおいて、各流路溝の長さが長くなる流路溝ほど半径が大きくなるように構成されている。
ベーパーチャンバーにおいて、湾曲した流路が複数配列される場合、内側ほど流路長さが短く、外側ほど流路長さが長くなるため、内側と外側との流動抵抗の差が大きくなる。この流動抵抗の差はベーパーチャンバーにおいて作動流体の移動のバランスを悪くし、十分な熱輸送能力が発揮できない一因となる。これに対して上記のような湾曲の半径を有する構成とすることで、特に蒸気流路溝16において、内側と外側との間の流動抵抗の差を緩和することが可能となる。そしてこれにより作動流体の移動のバランスが向上し、さらに熱輸送能力も高くすることができる。
ただし、これに限らず図12に示したように、湾曲部18cにおいて複数の蒸気流路溝16の湾曲の半径が同じとしてもよい。
また、湾曲部18cでは、液流路溝14a及び液流路溝15aと蒸気流路溝16とを仕切る壁14b及び壁15bに設けられた連通開口部14c及び連通開口部開口部15c(図6、図8(b)参照)について、そのピッチを他の部位(直線部18a、直線部18b)と異なるように構成することができる。これは湾曲部における連通開口部のピッチを直線部における湾曲部のピッチよりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。いずれの形態とするかは、ベーパーチャンバーの全体形状、熱源の位置等の影響を考慮し、流動抵抗を下げることができる形態を総合的に判断して採用することができる。または、この湾曲部18cについては、液流路溝14a及び液流路溝15cと蒸気流路溝16とを仕切る壁14b及び壁15bに設けられた連通開口部14c及び連通開口部開口部15cを設けなくてもよい。
湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも大きくした形態では、蒸気流路溝16(蒸気流路4)を流れる作動流体が湾曲部18cで連通開口部14c、連通開口部15cへ進入することを抑制することができる。湾曲部18cでは蒸気流路溝16(蒸気流路4)を移動する作動流体がその流れ方向により直接的に連通開口部14c、連通開口部15cに流れ込もうとする力が働くため、蒸気が凝縮液流路3に入り込むことや、連通開口部14c、連通開口部15cの凹凸で流動抵抗が高くなる傾向にある。これに対して、湾曲部18cで蒸気流路溝16に接する連通開口部14c、連通開口部15cのピッチを大きくしたり、蒸気流路溝16に接する連通開口部14c、連通開口部15cをなくしたりすることでこのような流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝16(蒸気流路4)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
一方、湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態では、湾曲部では蒸気流路溝(蒸気流路)を流れる蒸気が壁面に強く当たる機会が増えるため、凝縮し易い傾向にある。このとき湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態することで、連通開口部の数を増やし、凝縮液を円滑に液流路溝(凝縮液流路)に導入させることができ、蒸気流路が凝縮液で閉鎖されることを抑制することが可能となる。これにより流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝(蒸気流路)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
次に第二シート20について説明する。本形態で第二シート20も全体としてシート状の部材であり、平面視でL字型に湾曲している。図13には第二シート20を内面20a側から見た斜視図、図14には第二シート20を内面20a側から見た平面図をそれぞれ表した。また、図15には図14にXIII-XIIIで切断したときの第二シート20の切断面を示した。また、図16には図14にXIV-XIVで切断したときの第二シート20の切断面を示した。
第二シート20は、内面20a、該内面20aとは反対側となる外面20b及び内面20aと外面20bとを渡して厚さを形成する側面20cを備え、内面20a側に作動流体が移動するパターンが形成されている。後述するようにこの第二シート20の内面20aと上記した第一シート10の内面10aとが対向するようにして重ね合わされて接合されることで中空部となり、ここに作動流体が封入されて密閉空間2が形成される。
第二シート20の厚さは特に限定されることはないが、0.01mm以上1.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上0.2mm以下である。これにより薄型のベーパーチャンバーとして適用できる場面を多くすることができる。
第二シート20は本体21及び注入部22を備えている。本体21は作動流体が移動する部位を形成するシート状であり、本形態では平面視で湾曲する部位を有するL字型である。
注入部22は第一シート10と第二シート20とにより形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体21の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第二シート20の注入部22には内面20a側に注入溝22aが形成されており、第二シート20の側面20cから本体21の内側(中空部、密閉空間2となるべき部位)に連通している。
本体21の内面20a側には、作動流体が移動するための構造が形成されている。具体的には、本体21の内面20a側には、外周接合部23、外周液流路部24、内側液流路部25、蒸気流路溝26、及び、蒸気流路連通溝27が具備されている。
外周接合部23は、本体21の内面20a側に、該本体21の外周に沿って形成された面である。この外周接合部23が第一シート10の外周接合部13に重なって接合(拡散接合やろう付け等)されることにより、第一シート10と第二シート20との間に中空部を形成し、ここに作動流体が封入されて密閉空間2となる。
図14、図15、図16にA20で示した外周接合部23の幅は上記した本体11の外周接合部13の幅A10と同じであることが好ましい。
外周液流路部24は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る流路である凝縮液流路3(例えば図18参照)の一部を構成する部位である。
外周液流路部24は本体21の内面20aのうち、外周接合部23の内側に沿って形成され、密閉空間2の外周に沿って環状を成すように形成されている。本形態において第二シート20の外周液流路部24は、図15、図16からわかるように第一シート10との接合前において平坦面であり外周接合部23と面一である。これにより上記した第一シート10の複数の液流路溝14aのうち少なくとも一部の液流路溝14aの開口を閉鎖して凝縮液流路3を形成する。第一シート10と第二シート20との組み合わせに関する詳しい態様は後で説明する。
なお、このように第二シート20では外周接合部23と外周液流路部24とが面一であるため、構造的には両者を区別する境界線は存在しない。しかし、わかり易さのため、図13、図14では点線により両者の境界を表している。
外周液流路部24は、次のような構成を備えていることが好ましい。
図14、図15、図16に示した外周液流路部24の幅B20は特に限定されることはなく、第一シート10の外周液流路部14の幅B10と同じでもよいし、異なってもよい。本形態では幅B10と幅B20とは同じである。
幅B20を幅B10より小さくした場合、外周液流路部14のうち少なくとも一部において、液流路溝14aの開口が外周液流路部24により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、また、蒸気が出やすいため、より円滑な作動流体の移動をさせることができる。
本形態では第二シート20の外周液流路部24は平坦面からなるように構成されているが、これに限らず、外周液流路部14と同様に液流路溝が設けられてもよい。このときには第一シートの液流路溝と第二シートの液流路溝とが重ね合わされることで凝縮液流路3とすることができる。
また、本形態では第一シートでも説明したように、外周液流路部24は必ずしも設けられる必要はなく、外周液流路部24が設けられていない形態であってもよい。
次に内側液流路部25について説明する。内側液流路部25も液流路部であり、凝縮液流路3を構成する1つの部位である。
内側液流路部25は、図13乃至図16よりわかるように、本体21の内面20aのうち、外周液流路部24の環状である環の内側に形成されている。本形態の内側液流路部15は、湾曲部を有して延びる凸条であり、複数(本形態では5つ)の内側液流路部25が延びる方向とは異なる方向に間隔を有して配列され、蒸気流路溝26の間に配置されている。
本形態で各内側液流路部25は、その内面20a側の表面が第一シート10との接合前において平坦面となるように形成されている。これにより上記した第一シート10の複数の液流路溝15aのうち少なくとも一部の液流路溝15aの開口を閉鎖して凝縮液流路3を形成する。
なお、本形態のように内側液流路部25に凝縮液流路3を形成するための溝が形成されていない場合、第二シート20の厚さは、第一シート10の厚さから液流路溝15aの深さG(図8(a)参照)を引いた厚さ以上であることが好ましい。これにより、ベーパーチャンバーにおける第二シート側における破断(破れ)を防止することができる。
本形態では第二シート20の内側液流路部25は平坦面からなるように構成されているが、これに限らず、内側外周液流路部15と同様に液流路溝が設けられてもよい。このときには第一シートの液流路溝と第二シートの液流路溝とが重ね合わされることで凝縮液流路3とすることができる。
図14、図15に示した内側液流路部25の幅E20は特に限定されることはなく、第一シート10の内側液流路部15の幅E10と同じでもよいし、異なっていてもよい。本形態では幅E10と幅E20とは同じである。
幅E20と幅E10とが異なっていると接合時の位置ズレの影響を小さくすることができる。なお、幅E20を幅E10より小さくした場合には、内側液流路部15のうち少なくとも一部において、液流路溝15aの開口が内側液流路部25により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、また、発生した蒸気が出やすいため、より円滑に作動流体を移動させることができる。
次に蒸気流路溝26について説明する。蒸気流路溝26は、蒸気状及び凝縮液状の作動流体が移動する部位であり、蒸気流路4の一部を構成する。図14には平面視した蒸気流路溝26の形状、図15には蒸気流路溝26の断面形状がそれぞれ表れている。
これら図からもわかるように、蒸気流路溝26は本体21の内面20aのうち、環状である外周液流路部24の環の内側に形成された湾曲部を有する溝により構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路溝26は、隣り合う内側液流路部25の間、及び、外周液流路部24と内側液流路部25との間に形成された溝である。そして、複数(本形態では6つ)の蒸気流路溝26が、蒸気流路溝26が延びる方向とは異なる方向に配列されている。従って、図14からわかるように第二シート20は、内側液流路部25を凸とする凸条が形成され、蒸気流路溝26を凹とする凹条が形成されて、これらの凹凸が繰り返された形状を備えている。
ここで蒸気流路溝26は溝であることから、その断面形状において、底部と、該底部に向かい合う反対側の部位に存する開口と、を備えている。
蒸気流路溝26は、第一シート10と組み合わされた際に該第一シート10の蒸気流路溝16と厚さ方向に重なる位置に配置されていることが好ましい。これにより蒸気流路溝16と蒸気流路溝26とで蒸気流路4を形成することができる。
図14、図15にH20で示した蒸気流路溝26の幅は特に限定されることはなく、第一シート10の蒸気流路溝16の幅H10と同じでもよいし、異なっていてもよい。本形態では幅H10と幅H20とは同じである。
幅H20と幅H10とが異なっていると、接合時の位置ズレの影響を小さくすることができる。なお、幅H20を幅H10より大きくした場合には、内側液流路部15のうち少なくとも一部において、液流路溝15aの開口が内側液流路部25により閉鎖されずに開口し、ここから凝縮液が入りやすく、蒸気が出やすいため、より円滑な作動流体の移動をさせることができる。
一方、図15にI20で示した蒸気流路溝26の深さは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
ここで蒸気流路溝26は、後で説明するように第一シート10と組み合わされて蒸気流路4が形成されたときに、蒸気流路4の幅が高さ(厚さ方向大きさ)よりも大きい扁平形状となるように構成されていることが好ましい。そのため、H20をI20で除した値で示されるアスペクト比は好ましくは4.0以上、より好ましくは8.0以上である。
本形態で蒸気流路溝26の断面形状は半楕円形であるが、正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形等であってもよい。
蒸気流路連通溝27は、第一シート10の蒸気流路連通溝17と組み合わされて、蒸気流路溝26による複数の蒸気流路4の端部を連通する流路を形成する溝である。これにより、内側液流路部25が延びる方向における蒸気流路4で生じる作動流体の移動がバランス良く行われる。また、蒸気流路4の作動流体の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの凝縮液流路3を効率よく利用できるようになったりするため、作動流体の移動をより円滑にすることが可能となる。
本形態の蒸気流路連通溝27は、図14、図16からわかるように、内側液流路部25が延びる方向の両端部及び蒸気流路溝26が延びる方向の両端部と、外周液流路部24との間に形成されている。また、図16には蒸気流路連通溝27の連通方向に直交する断面が表れている。
図14、図16にJ20で示した蒸気流路連通溝27の幅は特に限定されることはなく、第一シート10の蒸気流路連通溝17の幅J10と同じであってもよいし、幅J10と異なっていてもよい。なお、幅J20を幅J10よりも大きくしたときには、第一シート10の外周液流路部14のうち少なくとも一部において、液流路溝14aの開口が蒸気流路4の一部を形成するように配置されるため凝縮液が入りやすくなるとともに発生した蒸気が出やすくなり、より円滑に作動流体を移動させることができる。
幅J20の大きさは、100μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましく、図14にK20で示した蒸気流路連通溝27の深さは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
本形態で蒸気流路連通溝27の断面形状は半楕円形であるが、これに限らず正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形等であってもよい。
また、本形態では第二シート20は、外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26において、これらが延びる方向が変化する部位である湾曲部28cを備えている。すなわち、図14からわかるように、第二シート20は、外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26がx方向に直線状に延びる直線部28a、外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26がy方向に直線状に延びる直線部28b、及び、直線部28a及び直線部28bにおける外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26を連結する湾曲部28cを備える。従って湾曲部28cは、その一端が一方の直線部28aに接続され、他端が他方の直線部28bに接続され、x方向からy方向へ、及び、y方向からx方向へ流れが向きを変えるように外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26が湾曲している。
そして図14からわかるように、本形態の湾曲部28cでは、外周液流路部24、内側液流路部25、及び蒸気流路溝26の態様は、上記した第一シート10の湾曲部18cと同様に考えることができる。
次に、第一シート10と第二シート20とが組み合わされてベーパーチャンバー1とされたときの構造について説明する。この説明により、第一シート10及び第二シート20が有する各構成の配置、大きさ、形状等がさらに理解される。
図17には、図1(a)にXV-XVで示したy方向に沿ってベーパーチャンバー1を厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は第一シート10における図4に表した図と、第二シート20における図15に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバー1の切断面が表されたものである。
図18には図17にXVIで示した部位を拡大した図を表した。
図19には、図1(a)にXVII-XVIIで示したx方向に沿ってベーパーチャンバー1の厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は、第一シート10における図5(b)に表した図と、第二シート20における図16に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバー1の切断面が表されたものである。
図1(a)、図1(b)、及び図17乃至図19よりわかるように、第一シート10と第二シート20とが重ねられるように配置され接合されることでベーパーチャンバー1とされている。このとき第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとが向かい合うように配置されており、第一シート10の本体11と第二シートの本体21とが重なり、第一シート10の注入部12と第二シート20の注入部22とが重なっている。
このような第一シート10と第二シート20との積層体により、本体11及び本体21に具備される各構成が図17乃至図19に表れるように配置される。具体的には次の通りである。
本形態のベーパーチャンバー1は、薄型である場合に特にその効果が大きい。かかる観点から図1、図17にLで示したベーパーチャンバー1の厚さは1mm以下、より好ましくは0.4mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。0.4mm以下とすることにより、ベーパーチャンバー1を設置する電子機器において、ベーパーチャンバーを配置するスペースを形成するための加工(例えば溝形成等)をすることなく電子機器内部にベーパーチャンバーを設置できることが多くなる。そして本形態によれば、このような薄いベーパーチャンバーであっても熱的な性能を維持しつつ強度が高く変形に対して強いものとなる。
一方、第一シート10の外周接合部13と第二シート20の外周接合部23とが重なるように配置されており、拡散接合やろう付け等の接合手段により両者が接合されている。これにより、第一シート10と第二シート20との間に密閉空間2が形成されている。
第一シート10の外周液流路部14と第二シート20の外周液流路部24とが重なるように配置されている。これにより外周液流路部14の液流路溝14a及び外周液流路部24により作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる凝縮液流路3が形成される。
同様に、第一シート10の凸条である内側液流路部15と第二シート20の凸条である内側液流路部25とが重なるように配置されている。これにより内側液流路部15の液流路溝15a及び内側液流路部25により凝縮液が流れる凝縮液流路3が形成される。
ここで、凝縮液流路3はベーパーチャンバー1の薄型化に伴い、その断面形状が扁平形状とされていることが好ましい。これにより毛細管力を高めることができ、凝縮液の移動をさらに円滑に行うことができるため、熱輸送能力を高い水準に維持することが可能となる。より具体的には凝縮液流路3の幅を高さで除した値で表される比(アスペクト比)が1.0より大きく4.0以下であることが好ましい。
このとき、凝縮液流路3の幅は、本形態では液流路溝15aの幅Fに準じるが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。幅が10μmより小さくなると流路抵抗が大きくなり輸送能力が低下する虞がある。一方、幅が300μmより大きくなると毛細管力が小さくなるため輸送能力が低下する虞がある。
また、凝縮液流路3の高さは、本形態において液流路溝15aの深さGに準じるが5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより移動に必要な凝縮液流路の毛細管力を十分に発揮することができる。なお、この高さは、凝縮液流路3を挟んで厚さ方向(z方向)一方側及び他方側における第一シート10及び第二シート20の厚さ(肉厚)以下であることが好ましい。これにより凝縮液流路3に起因するベーパーチャンバーの破断(破れ)をさらに防止することができる。
凝縮液流路3の断面形状は液流路溝14a及び液流路溝15aの断面形状により、半楕円形であるが、これに限らず正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形及びこれらも組み合わせ等であってもよい。また、三日月形状のようにすることもできる。
なお、本形態では液流路溝14a、液流路溝15aは第一シート10にのみ設けられているため、凝縮液流路の高さは液流路溝14a、液流路溝15aの深さに基づくものとなるが、これに限らず第二シート20にも液流路溝が設けられてもよい。この場合には第一シートの液流路溝と第二シートの液流路溝とが重なることで凝縮液流路が形成され、両方の液流路溝の深さの合計に準じた凝縮液流路の高さとなる。
このように第一シート及び第二シートに液流路溝を設けてこれを重ねることで凝縮液流路とした場合、図20(a)乃至図20(c)のように凝縮液流路を構成することができる。
図20(a)の例は、第一シート及び第二シートの液流路溝が同じ幅、同じ位置に配置されている例である。
図20(b)の例は、第二シートにおける液流路溝の幅が第一シートにおける液流路溝の幅よりも大きくされ位置は一致する例である。この例では凝縮液流路内にPで示したように凸部ができ、毛細管力を向上させ、凝縮液が移動する力(凝縮液の供給力)を高めることができる。
図20(c)の例は、第一シート及び第二シートの液流路溝が同じ幅であるが、位置がずれされて配置された例である。この例でも凝縮液流路内にPで示したように凸部ができ、毛細管力を向上させ、凝縮液が移動する力(凝縮液の供給力)を高めることができる。
また、上記したように凝縮液流路3には連通開口部14c、及び連通開口部15cが形成されている。これにより複数の凝縮液流路3が連通し、凝縮液の均等化が図られて効率よく凝縮液の移動が行われる。また、蒸気流路4に隣接し、蒸気流路4と凝縮液流路3を連通する連通開口部14c、連通開口部15cについては、蒸気流路4で生じた凝縮液を円滑に凝縮液流路3に移動させ、及び、凝縮液流路3で発生した蒸気を円滑に蒸気流路4に移動させ、作動流体の移動を速やかに行わせることができる。
また、外周液流路部14、外周液流路部24により形成される凝縮液流路3は、密閉空間2内の縁に沿って連続して環状に形成されていることが好ましい。すなわち、外周液流路部14、外周液流路部24により形成される凝縮液流路3は、他の構成要素によって寸断されることなく1周に亘って環状となって延びていることが好ましい。これにより凝縮液の移動を阻害する要因を減らせることができ、円滑に凝縮液を移動させることができる。
本形態では、ここまで説明したように、シートに凝縮液流路溝を設けてこれにより流路を形成することで凝縮液流路としたが、その代わりに毛細管力を生じる手段を別途ここに配置して凝縮液流路としてもよい。そのために例えば、メッシュ(網状)材料、不織布、より線、及び金属粉の焼結体などのような、いわゆるウィックと呼ばれるものを配置することもできる。
第一シート10の蒸気流路溝16の開口と第二シート20の蒸気流路溝26の開口とが向かい合うように重なって流路を形成しこれが蒸気流路4となる。
ここで、蒸気流路4はベーパーチャンバー1の薄型化に伴い、その断面形状が扁平形状とされていることが好ましい。これにより薄型化されても流路内の表面積を確保することが可能とされ、熱輸送能力を高い水準に維持することが可能となる。より具体的には、図18に表した蒸気流路4の幅W、高さHにおいて、WをHで除した値で表される比(アスペクト比)が2.0以上であることが好ましい。さらに高い熱輸送能力を確保する観点から、当該比は4.0以上がさらに好ましい。
図17からわかるように、第一シート10の蒸気流路連通溝17の開口と第二シート20の蒸気流路連通溝27の開口とが向かい合うように重なり流路を形成して、蒸気流路溝16、及び、蒸気流路溝26により形成される複数の蒸気流路4をその端部を連通させ、作動流体の移動をバランスよく行うための流路になる。
以上のようにベーパーチャンバー1の密閉空間2には、第一シート10及び第二シートが有する形状により、凝縮液流路3及び蒸気流路4が形成される。図18には密閉空間2に形成された凝縮液流路3及び蒸気流路に注目した図を表した。
図18、図21等からわかるように、ベーパーチャンバー1は、2つの蒸気流路4の間に、複数の凝縮液流路3が配置されてなる形状を具備する。これにより凝縮液が主要に流れるべき凝縮液流路3と、蒸気及び凝縮液が移動する蒸気流路4とが分離して交互に並ぶような形態となり、作動流体の円滑な移動が助けられる。
蒸気流路4及び凝縮液流路3により、蒸気流路4では蒸気及び凝縮液の状態である作動流体が移動して効率よく熱の移動及び拡散が行われる。一方、当該蒸気流路4とは分離して設けられた凝縮液流路3により毛管力で凝縮液が効率よく移動するため、ドライアウトの発生を抑制することが可能となる。
また、ベーパーチャンバー1では、凝縮液流路3及び蒸気流路4が延びる方向が異なる2つの直線部6が湾曲部7によって連結された態様となる。このような流路を形成することにより、ベーパーチャンバーを電子機器に配置する際に、その配置に関する制約を受け、一直線状のみによる流路を形成することができないときであっても、湾曲部7を設けることで熱源から発生した熱を効率的に離隔した位置にまで移動させることができる。
この湾曲部7は第一シート10の湾曲部18c及び第二シート20の湾曲部28cにより形成される。従って、湾曲部7は、その一端が一方の直線部6に接続され、他端が他方の直線部6に接続され、x方向からy方向へ、及び、y方向からx方向へ流れが向きを変えるように凝縮液流路3及び蒸気流路4が湾曲している。
そして本形態では、湾曲部7において、直線部6に対して蒸気流路4の流路断面積(本形態では幅)が大きく形成されている。これによれば、蒸気流路4の湾曲により流動抵抗が大きくなる湾曲部7における流動抵抗を下げることができ、ベーパーチャンバー全体として流動抵抗が小さくなるため、作動流体の移動がより円滑となって熱輸送能力を高めることができる。その際、湾曲部7における蒸気流路4の流路断面積は、少なくとも湾曲部7の範囲内で一定としてもよい。これにより流路断面の拡大縮小による作動流体の流動損失を低下させることができる。
ここで「流路断面積」は、流路が延びる方向に直交する面における流路の断面積である。
このように湾曲部7において蒸気流路4の流路断面積(本形態では幅)を大きくする手段、程度、及び考え方は、上記した第一シート10の湾曲部18cにおいて説明したことと同様である。
また、図21からわかるように、本形態の湾曲部7では、凝縮液流路3、及び蒸気流路4は、これら各流路が配列される方向において、外側の蒸気流路の湾曲の半径が、内側の蒸気流路の湾曲の半径よりも大きくなるように構成されている。このように構成してもよい。
その中でも、本形態ではこれら複数の各溝が同心円の円弧を描くように湾曲している。ただし、これに限らず円弧の中心位置がずれていてもよい。さらには、湾曲部7において、各流路溝の長さが長くなる流路溝ほど湾曲の半径が大きくなるように構成されている。
ベーパーチャンバーにおいて、湾曲した流路が複数配列される場合、内側ほど流路長さが短く、外側ほど流路長さが長くなるため、内側と外側との流動抵抗の差が大きくなる。この流動抵抗の差はベーパーチャンバーにおいて作動流体の移動のバランスを悪くし、十分な熱輸送能力が発揮できない一因となる。これに対して上記のような湾曲の半径を有する構成とすることで、特に蒸気流路4において、内側と外側との間の流動抵抗の差を緩和することが可能となる。そしてこれにより作動流体の移動のバランスが向上し、さらに熱輸送能力も高くすることができる。
ただし、これに限らず図12の例に倣って湾曲部7において複数の蒸気流路4の湾曲の半径が同じとしてもよい。
また、湾曲部7では、凝縮液流路3と蒸気流路4とを仕切る壁14b及び壁15bに設けられた連通開口部14c及び連通開口部15c(図6、図8(b)参照)について、そのピッチを直線部6と異なるように構成することができる。これは湾曲部における連通開口部のピッチを直線部における湾曲部のピッチよりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。いずれかの形態とするかは、ベーパーチャンバーの全体形状、熱源の位置等の影響を考慮し、流動抵抗を下げることができる形態を総合的に判断して採用することができる。または、この湾曲部7については、凝縮液流路3と蒸気流路4とを仕切る壁14b及び壁15bに連通開口部14c及び連通開口部開口部15cを設けなくてもよい。
湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも大きくした形態では、蒸気流路4を流れる作動流体が湾曲部7で連通開口部14c、連通開口部15cへ進入することを抑制することができる。湾曲部7では蒸気流路4を移動する作動流体がその流れ方向により直接的に連通開口部14c、連通開口部15cに流れ込もうする力が働くため、蒸気が凝縮液流路3に入り込むことや、連通開口部14c、連通開口部15cの凹凸により流動抵抗が高くなる傾向にある。これに対して、湾曲部7で蒸気流路4に接する連通開口部14c、連通開口部15cのピッチを大きくしたり、蒸気流路4に接する連通開口部14c、連通開口部15cをなくしたりすることでこのような流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路4ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができることがある。
一方、湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態では、湾曲部では蒸気流路溝(蒸気流路)を流れる蒸気が壁面に強く当たる機会が増えるため、凝縮し易い傾向にある。このとき湾曲部の連通開口部のピッチを直線部の連通開口部のピッチよりも小さくした形態することで、連通開口部の数を増やし、凝縮液を円滑に液流路溝(凝縮液流路)に導入させることができ、蒸気流路が凝縮液で閉鎖されることを抑制することが可能となる。これにより流動抵抗の上昇を抑えることができ、蒸気流路溝(蒸気流路)ごとの流動抵抗の差をさらに小さくし、作動流体の移動のバランスを向上させ、熱輸送能力を高めることができる場合がある。
また、上記ピッチの大きさの代わりに、湾曲部において、隣り合う連通開口部の間である壁の長さ(流路に沿った方向の大きさ)が、直線部における壁の長さに対して大きくなるように構成してもよいし、小さくなるように構成してもよい。このとき、湾曲部に属する壁の長さは一定である必要はなく、壁ごとに異なっていてもよい。この場合に、湾曲部の壁の長さと直線部の壁の長さとの大小関係は、それぞれの部位に属する壁の長さの平均値同士の関係によるものとする。
一方、注入部12、注入部22についても図1に表れているように、その内面10a、内面20a同士が向かい合うように重なり、第二シート20の注入溝22aの底部とは反対側の開口が第一シート10の注入部12の内面10aより塞がれ、外部と本体11、本体21間の中空部(凝縮液流路3及び蒸気流路4)とを連通する注入流路5が形成されている。
ただし、注入流路5から密閉空間2に対して作動流体を注入した後は、注入流路5は閉鎖されるので、最終的な形態のベーパーチャンバー1では外部と密閉空間2とは連通していない。
そしてベーパーチャンバー1の密閉空間2には、作動流体が封入されている。作動流体の種類は特に限定されることはないが、純水、エタノール、メタノール、アセトン等、通常のベーパーチャンバーに用いられる作動流体を用いることができる。
以上のようなベーパーチャンバーは例えば次のように作製することができる。
第一シート10を構成する材料からなり第一シート10の外周形状を有するシート、及び、第二シート20を構成する材料からなり第二シート20の外周形状を有するシートを準備する。これらシートに対して上記説明した、液流路溝14a、液流路溝15a、蒸気流路溝16、蒸気流路溝26、蒸気流路連通溝17、蒸気流路連通溝27をハーフエッチングにより形成する。ここでハーフエッチングとは、エッチングにより厚さ方向を貫通させることなく厚さ方向の途中までエッチングによる材料の除去を行い、溝や窪みを形成することである。
次いで、第一シート10の形状を有するエッチング済みのシート、及び、第二シート20の形状を有するエッチング済みのシートの、内面10aと内面20aとを向かい合わせるように重ねて仮止めを行う。仮止めの方法は特に限定されることはないが、抵抗溶接、超音波溶接、及び接着剤による接着等を挙げることができる。
そして仮止め後に拡散接合を行い恒久的にこれらシートを接合する。なお、拡散接合の代わりにろう付けにより接合してもよい。ただし、本形態のように厚さが薄いベーパーチャンバーの場合、その流路が細いため、ろう材によるろう付けを用いた場合にはろう材が流路に侵入する虞がある。そして流路には上記したように強い毛細管力が働くためろう材が流路の広い範囲に広がる虞もある。かかる観点からこのような問題が生じない拡散接合、超音波接合等の溶接による接合が好ましい。
接合の後、形成された注入流路5から真空引きを行い、中空部内を減圧する。その後、減圧された中空部に対して注入流路5から作動流体を注入して中空部に作動流体が入れられる。そして注入部12、注入部22に対してレーザーによる溶融を利用したり、かしめたりして注入流路5を閉鎖する。これにより密閉空間2となり、その内側に作動流体が安定的に保持されてベーパーチャンバー1となる。
次にベーパーチャンバー1が作動したときの作用について説明する。図22には電子機器の一形態である携帯型端末40の内側にベーパーチャンバー1が配置された状態を模式的に表した。ここではベーパーチャンバー1は携帯型端末40の筐体41の内側に配置されているため点線で表している。このような携帯型端末40は、各種電子部品を内包する筐体41、及び、筐体41の開口部を通して外部に画像が見えるように露出したディスプレイユニット42を備えて構成されている。そしてこれら電子部品の1つとして、ベーパーチャンバー1により冷却すべき電子部品30が筐体41内に配置されている。
ベーパーチャンバー1は携帯型端末等の筐体内に設置され、CPU等の冷却すべき対象物である電子部品30に取り付けられる。電子部品30はベーパーチャンバー1の外面10b又は外面20bに直接、又は、熱伝導性の高い粘着剤、シート、テープ等を介して取り付けられる。
図23には作動流体の挙動を説明する図を表した。説明のし易さのため、この図は図21と同じ視点による図で、密閉空間2内に形成された凝縮液流路3及び蒸気流路4に注目した図である。
電子部品30が発熱すると、その熱が第一シート10内を熱伝導により伝わり、密閉空間2内における電子部品30に近い位置に存在する凝縮液が熱を受ける。この熱を受けた凝縮液は熱を吸収し蒸発し気化する。これにより電子部品30が冷却される。
気化した作動流体は蒸気となって、蒸気流路4を移動する。気化した作動流体の移動は、図23に実線の直線矢印で示したように蒸気流路4内を振動するように移動する場合や、図示はしていないが振動することなく熱源である電子部品30から離隔する方向に移動する場合もある。
このとき、蒸気流路4には湾曲部7の湾曲した部位が含まれているが、湾曲部7が上記構成を備えているので、流路長さが異なっていても流動抵抗が小さくされたり、バランス良くされたりして、作動流体が円滑に蒸気流路4を移動する。これにより高い熱輸送能力を発揮することができる。
そして作動流体の当該移動の際に、作動流体は順次第一シート10及び第二シート20に熱を奪われながら冷却される。蒸気から熱を奪った第一シート10及び第二シート20はその外面10b、外面20bに接触した携帯型端末装置の筐体等に熱を伝え、最終的に熱は外気に放出される。そして、蒸気流路4を移動しつつ熱を奪われた作動流体は凝縮して液化する。
蒸気流路4に生じた凝縮液の一部は、連通開口部等から凝縮液流路3に移動する。本形態の凝縮液流路3は連通開口部14c、連通開口部15cを備えているので、凝縮液はこの連通開口部14c、連通開口部15cを通って複数の凝縮液流路3に分配される。
凝縮液流路3に入った凝縮液は、凝縮液流路による毛管力により、図23に点線の直線矢印で表したように熱源である電子部品30に近づくように移動する。そして再度熱源である電子部品30からの熱により気化して上記過程を繰り返す。
以上のように、ベーパーチャンバー1によれば、蒸気流路の作動流体の移動、及び、凝縮液流路における高い毛細管力で、作動流体の移動が円滑で良好になり、熱輸送能力を高めることができる。
また、ベーパーチャンバー1では湾曲部7を有する流路を形成することにより、ベーパーチャンバーを電子機器に配置する際に、その配置に関する制約を受け、一直線状のみによる流路を形成することができないときであっても、熱源から発生した熱を効率的に離隔した位置にまで移動させることができる。
そして、当該湾曲部7では上記のように複数の蒸気流路4で流動抵抗を下げたり、必要に応じて流動抵抗の差が低くなるようにしたりする構成とされているので、バランスよく作動流体を移動させることができ、熱輸送能力を高めることができる。
図24乃至図31は、第二の形態にかかるベーパーチャンバー201を説明する図である。図24はベーパーチャンバー201の外観斜視図、図25はベーパーチャンバー201の分解斜視図である。
ベーパーチャンバー201は、図24、図25からわかるように第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230を有している。そして、この第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230が重ねられて接合(拡散接合、ろう付け等)されていることにより、第一シート210と第二シート220との間で、第一シート210、第二シート220、及び第三シート230に囲まれる中空部が形成され、この中空部に作動流体が封入されて密閉空間202となる。
本形態で第一シート210は全体としてシート状の部材である。第一シート210は表裏とも平坦な面により構成されており、内面210a、該内面210aとは反対側となる外面210b、及び、内面210aと外面210bとを渡して厚さを形成する側面210cを備える。
第一シート210は本体211及び注入部212を備えている。本体211は作動流体が移動する密閉空間を形成するシート状の部位であり、本形態では平面視で角が円弧(いわゆるR)にされた長方形である。
注入部212は第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230により形成された密閉空間に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体211の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。本形態では第一シート210の注入部212は内面210a側も外面210b側も平坦面とされている。
本形態で第二シート220は全体としてシート状の部材である。第二シート220は表裏とも平坦な面により構成されており、内面220a、該内面220aとは反対側となる外面220b、及び、内面220aと外面220bとを渡して厚さを形成する側面220cを備える。
そして第二シート220も本体221及び注入部222を有している。
本形態で第三シート230は、第一シート210の内面210aと第二シート220の内面220aとの間に挟まれて重ねられるシートであり、本体231に作動流体が移動するための構造が形成されている。図26には第三シート230を平面視した図を表した。図26(a)は第二シート220に重ねられる面の図、図26(b)は第一シート210に重ねられる面の図である。また図27には図26(a)にXXIV-XXIVで示した線に沿った切断面、図28には図26(a)にXXV-XXVで示した線に沿った切断面をそれぞれ示した。
第三シート230は本体231及び注入部232を備えている。本体231は作動流体が移動する密閉空間を形成するシート状の部位であり、本形態では平面視で湾曲部を有するL字状である。
注入部232は第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230により形成された密閉空間に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では本体231の平面視L字型から突出する平面視四角形のシート状である。注入部232には、第一シート210に重なる面側に注入溝232aが形成されている。注入溝232aは上記した注入溝22aと同様に考えることができる。
本体231は、外周接合部233、外周液流路部234、内側液流路部235、蒸気流路スリット236、及び、蒸気流路連通溝237が具備されている。
外周接合部233は、本体231の外周に沿って形成された部位である。そして外周接合部233のうち一方の面が第一シート210の面に重なって接合(拡散接合、ろう付け等)され、他方の面が第二シート220の面に重なって接合(拡散接合、ろう付け等)される。これにより、第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230に囲まれた中空部が形成され、ここに作動流体が封入されて密閉空間202となる。
外周接合部233は上記した外周接合部13と同様に考えることができる。
外周液流路部234は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る流路である凝縮液流路3の一部を構成する部位である。外周液流路部234は本体231のうち外周接合部233の内側に沿って形成され、密閉空間202の外周に沿って環状となるように設けられている。そして外周液流路部234のうち、第二シート220に対向する側の面には液流路溝234aが形成されている。本形態では液流路溝234aは第二シート220に対向する側の面にのみ設けられているが、これに加えて第一シート210に対向する側の面にも液流路溝が設けられてもよい。
外周液流路部234、及び、ここに具備される液流路溝234aは上記した外周液流路部14、及び、液流路溝14aと同様に考えることができる。
内側液流路部235も液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る凝縮液流路3の一部を構成する部位である。内側液流路部235は本体231のうち、環状である外周液流路部234の環の内側に湾曲部を有して延びるよう形成されている。そして、複数(本形態では5つ)の内側液流路部235が当該延びる方向とは異なる方向に配列され、蒸気流路スリット236の間に配置されている。
内側液流路部235のうち、第二シート220に対向する側の面には、内側液流路部235が延びる方向に平行な溝である液流路溝235aが形成されている。内側液流路部235及び液流路溝235aは、上記した内側液流路部15及び液流路溝15aと同様に考えることができる。
本形態では液流路溝235aは第二シート220に対向する側の面にのみ設けられているが、これに加えて第一シート210に対向する側の面にも液流路溝が設けられてもよい。
蒸気流路スリット236は、蒸気状及び凝縮液状の作動流体が移動する部位で、蒸気流路4を構成するスリットである。蒸気流路スリット236は本体231のうち、環状である外周液流路部234の環の内側に形成された、湾曲部を有するスリットにより構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路スリット236は、隣り合う内側液流路部235の間、及び、外周液流路部234と内側液流路部235との間に形成されたスリットである。従って蒸気流路スリット236は第三シート230の厚さ方向(z方向)に貫通している。
そして、複数(本形態では6つ)の蒸気流路スリット236が、延びる方向とは異なる方向に配列されている。従って、図27からわかるように第三シート230は、外周液流路部234及び内側液流路部235と蒸気流路スリット236とが交互に繰り返された形状を備えている。
このような蒸気流路スリット236は、上記した蒸気流路溝16と蒸気流路溝26とが組み合わされて形成される蒸気流路4の態様と同様に考えることができる。
本形態では蒸気流路スリット236の断面形状は楕円の円弧の一部同士が重なるようにして形成された形状で、厚さ方向中央が突出する形であるが、これに限らず正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形、三日月形、及びこれらの組み合わせ等のように他の形態であってもよい。
蒸気流路連通溝237は、複数の蒸気流路スリット236を連通させる流路を形成する溝である。これにより、内側液流路部235が延びる方向における蒸気流路で生じる作動流体の移動のバランスを取ることができる。
また、これにより蒸気流路にある作動流体の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの液流路溝234a、液流路溝235aによる凝縮液流路を効率よく利用できるようになったりもする。
本形態の蒸気流路連通溝237は、内側液流路部235が延びる方向の両端部及び蒸気流路スリット236が延びる方向の両端部と、外周液流路部234との間に形成されている。蒸気流路連通溝237は、隣り合う蒸気流路スリット236を連通させることができればよく、その形状は特に限定されることはないが、上記した蒸気流路連通溝17と蒸気流路連通溝27とを重ねて形成された流路と同様に考えることができる。
また第三シート230についても、ベーパーチャンバー201が密閉空間202において凝縮液流路3及び蒸気流路4が直線部と湾曲部とを有するように、直線部238a、直線部238b、及び湾曲部238cを具備してなる。これら直線部及び湾曲部の考え方はここまで説明したものと同様である。
このような第三シート230は、両面ごとに個別になされるエッチング、両面から同時のエッチング、プレス加工、又は、切削加工などにより作製することが可能である。
図29乃至図31には、第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230が組み合わされてベーパーチャンバー201とされたときの構造について説明する図を表した。図29には図24にXXVI-XXVIで示した線に沿った切断面、図30には図29の一部を拡大した図を表した。また図31には図24にXXVIII-XXVIIIで示した線に沿った切断面を表した。
図24、及び、図29乃至図31よりわかるように、第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230が重ねられるように配置され接合されることでベーパーチャンバー201とされている。このとき第一シート210の内面210aと第三シート230の一方の面(液流路溝234a、液流路溝235aが配置されていない側の面)とが向かい合うように配置され、第二シート220の内面220aと第三シート230の他方の面(液流路溝234a、液流路溝235aが配置された側の面)とが向かい合うように重ねられる。同様にして各シートの注入部212、注入部222、及び注入部232も重ねられる。
これにより、第一シート210と第二シート220との間には、第一シート210、第二シート220、及び、第三シート230で囲まれる密閉空間202が形成される。そしてここには凝縮液流路3、及び、蒸気流路4が形成される。これら密閉空間202内における凝縮液流路3及び蒸気流路4の形態については、上記したベーパーチャンバー1と同様の考え方を適用することができる。
なお、上記形態では2つの直線部が90度で交差してL字型となるように延びる場合の交差部分に湾曲部を有するベーパーチャンバーについて説明した。ただし湾曲の形態はこれに限定されず他の形態であっても上記説明の湾曲部の態様を適用することが可能である。例えば、2つの直線部がT字に交差する方向に延びる場合の交差部分、2つの直線部が十字に交差する方向に延びる場合の交差部分、2つの直線が鋭角(90度より小さい角度)で交差してV字型となるように延びる場合の交差部分、及び、2つの直線が鈍角(90度より大きい角度)で交差してV字型となるように延びる場合の交差部分の各交差部分に上記した湾曲部を適用することができる。
1 ベーパーチャンバー
2 密閉空間
3 凝縮液流路
4 蒸気流路
10 第一シート
11 本体
12 注入部
13 外周接合部
14 外周液流路部
14a 液流路溝
14c 連通開口部
15 内側液流路部
15a 液流路溝
15c 連通開口部
16 蒸気流路溝
17 蒸気流路連通溝
20 第二シート
21 本体
22 注入部
23 外周接合部
24 外周液流路部
25 内側液流路部
26 蒸気流路溝
27 蒸気流路連通溝
230 第三シート
236 蒸気流路スリット

Claims (8)

  1. 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
    前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
    前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
    複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
    前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
    前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも流路断面積が大きくなるように構成されており
    前記蒸気流路と前記凝縮液流路とを連通する開口部が前記凝縮液流路及び前記蒸気流路が延びる方向に沿って複数設けられ、前記湾曲部における前記開口部の配列ピッチが前記直線部における前記開口部の配列ピッチと異なる、
    ベーパーチャンバー。
  2. 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
    前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
    前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
    複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
    前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
    前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも流路断面積が大きくなるように構成されており
    前記湾曲部において、前記蒸気流路のうち湾曲の半径の中心に遠い側の流路壁の湾曲の半径をr out 、前記蒸気流路のうち湾曲の半径の中心に遠い側の流路壁において、前記湾曲部が前記直線部と同じ流路幅であったと仮定したときの仮想の湾曲の半径をr としたとき、r out <r であるとともに、前記r out の中心位置は、前記r の中心位置より前記蒸気流路に近い、
    ベーパーチャンバー。
  3. 密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、
    前記密閉空間には、前記作動流体が凝縮液の状態で移動する流路である凝縮液流路と、
    前記凝縮液流路より流路断面積が大きく、前記作動流体が蒸気及び凝縮液の状態で移動する複数の蒸気流路と、が備えられており、
    複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路が直線状に延びる直線部と、
    前記直線部に連続し、複数の前記凝縮液流路と複数の前記蒸気流路の延びる方向が変化する湾曲部と、を有し、
    前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも前記ベーパーチャンバーの厚さ方向の大きさが大きいことにより流路断面積が大きくなるように構成されている、ベーパーチャンバー。
  4. 前記湾曲部における前記蒸気流路は、該蒸気流路が延びる方向で流路断面積が一定である、請求項1乃至3のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
  5. 前記湾曲部における前記蒸気流路は、前記直線部における前記蒸気流路よりも幅が大きくなるように構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
  6. 複数の前記蒸気流路は繋がっている、請求項1乃至のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
  7. 前記湾曲部における複数の前記蒸気流路は、幅が異なるように構成されている請求項1乃至請求項のいずれかに記載のベーパーチャンバー。
  8. 筐体と、
    前記筐体の内側に配置された電子部品と、
    前記電子部品に対して直接又は他の部材を介して接触して配置された請求項1乃至のいずれかに記載されたベーパーチャンバーと、を備える、電子機器。
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