JP7200607B2 - ベーパーチャンバ、電子機器、及びベーパーチャンバ用シート - Google Patents
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Description
熱源からの熱を輸送した気体状態の作動流体は熱源から離れた位置にまで移動し、周囲に熱を吸収されることで冷却されて凝縮し、液体状態に相変化する。相変化した液体状態の作動流体は凝縮液用流路を通り、熱源の位置にまで戻ってまた熱源からの熱を受けて蒸発して気体状態に変化する。
以上のような循環により熱源から発生した熱が熱源から離れた位置に輸送され熱源が冷却される。
第一シート10は、内面10a、該内面10aとは反対側となる外面10b及び内面10aと外面10bとを連結して厚さを形成する側面10cを備え、内面10a側に作動流体が還流する流路のためのパターンが形成されている。後述するようにこの第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとが対向するようにして重ね合わされることで中空部が形成され、ここに作動流体が封入されて密閉空間2となる。
ただし、第一シート10の本体11は本形態のように四角形である他、円形、楕円形、三角形、その他の多角形、並びに、屈曲部を有する形である例えばL字型、T字型、クランク型等であってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせた形状とすることもできる。
これにより薄型のベーパーチャンバとして適用できる場面を多くすることができる。
ただし、必ずしも金属材料である必要はなく、例えばAlN、Si3N4、又はAl2O3などセラミックスや、ポリイミドやエポキシなど樹脂も可能である。
また、1つシート内で2種類以上の材料を積層したものを用いてもよいし、部位によって材料が異なってもよい。
図4、図5にAで示した外周接合部13の幅(外周接合部13が延びる方向に直交する方向の大きさで、第二シート20との接合面における幅)は必要に応じて適宜設定することができるが、この幅Aは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよい。幅Aが3mmより大きくなると、密閉空間の内容積が小さくなり蒸気流路や凝縮液流路が十分確保できなくなる虞がある。一方、幅Aは0.2mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であってもよく、0.8mmであってもよい。幅Aが0.2mmより小さくなると第一シートと第二シートとの接合時における位置ずれが生じた際に接合面積が不足する虞がある。幅Aの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Aの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
本形態で液流路溝14aはその断面が半楕円形状とされている。これにより後で説明するように、第2流路である凝縮液流路3について、該凝縮液流路3の断面で最大幅となる流路内面の部位において局所相当半径が最小となるような内面形状とすることができる。
ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、第二シート20と組み合わされた際に、第2流路である凝縮液流路3について、該凝縮液流路3の断面で最大幅となる流路内面の部位において局所相当半径が最小となるような形状が形成されていればよい。
本形態では図8で示したように1つの液流路溝14aの該溝を挟んで液流路溝14aが延びる方向で同じ位置に対向するように連通開口部14cが配置されている。ただしこれに限定されることはなく、例えば図10に示したように、1つの液流路溝14aの該溝を挟んで液流路溝14aが延びる方向で異なる位置に連通開口部14cが配置されてもよい。すなわち、液流路溝14aが延びる方向と直交する方向に沿って凸部14bと連通開口部14cとが交互に配置されてもよい。
すなわち、図8に示した凸部14bでは、連通開口部14cが形成される端部においてもその幅が他の部位と同じであり一定である。これに対して図11~図13に示した形状の凸部14bでは、連通開口部14cが形成される端部においてその幅が、凸部14bの最大幅よりも小さくなるように形成されている。より具体的には、図11の例では当該端部において角が円弧状となり角にRが形成されることにより端部の幅が小さくなる例、図12は端部が半円状とされることにより端部の幅が小さくなる例、図13は端部が尖るように先細りとなる例である。
図4~図7にBで示した外周液流路部14の幅(液流路部14aが配列される方向の大きさで、第二シート20との接合面における幅)は、ベーパーチャンバ全体の大きさ等から適宜設定することができるが、幅Bは、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。幅Bが3.0mmを超えると内側の液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。一方、幅Bは0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であってもよく、0.4mm以上であってもよい。幅Bが0.1mmより小さいと外側を還流する液の量が十分得られない虞がある。幅Bの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Bの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
そして当該幅Bは第二シート20の外周液流路部24の幅S(図19参照)と同じであっても良いし、大きくても小さくてもよい。本形態では同じとされている。
また、図6、図7、図9にDで示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さDは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。深さDの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さDの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
以上のように構成することにより、還流に必要な凝縮液流路の毛細管力をより強く発揮することができる。
その中でも製造の観点からCはDより大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
これにより、凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して凝縮液流路が潰れることを抑制することができる。
各内側液流路部15には、内側液流路部15が延びる方向に平行な溝である液流路溝15aが形成され、複数の液流路溝15aが、該液流路溝15aが延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、図5、図14からわかるように内側液流路部15では、その断面において内面10a側に、凹部である液流路溝15aと液流路溝15aの間である凸部15bとが凹凸を繰り返して形成されている。
本形態で液流路溝15aはその断面が半楕円形状とされている。これにより後で説明するように、凝縮液流路3について、該凝縮液流路3の断面で凝縮液流路3と蒸気流路とが配列された方向である幅方向において、これが最大となる流路内面の部位で局所相当半径が最小となるような形状とすることができる。
ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、第二シート20と組み合わされた際に、凝縮液流路3について、該凝縮液流路3の断面で最大幅となる流路内面の部位で局所相当半径が最小となるような形状であればよい。具体的には、断面形状は半楕円形状であることに限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、他の幾何学形状、及び、これらのいずれか複数を組み合わせた形態であってもよい。
この連通開口部15cについても、連通開口部14cと同様に、図10に示した例に倣って、液流路溝15aが延びる方向と直交する方向に沿って凸部15bと連通開口部15cとが交互に配置されてもよい。また、図11~図13の例に倣って連通開口部15c及び凸部15bの形状としてもよい。
図4、図5、図14にGで示した内側液流路部15の(内側液流路部15と蒸気流路溝16が配列される方向の大きさで、第二シート20との接合面における幅)幅は、3000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、この幅Gは100μm以上であること好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅Gの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Gの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
当該幅Gは第二シート20の内側液流路部25の幅T(図19参照)と同じであってもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。本形態では同じとされている。
これにより蒸気流路の流路抵抗を下げ、蒸気の移動と、凝縮液の還流とをバランスよく行うことができる。
また、図14、図15にJで示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、この深さJは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。この深さJの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さJの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより還流に必要な凝縮液流路の毛細管力を強く発揮することができる。
その中でも製造の観点から溝幅Hは深さJよりも大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
これにより、凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して流路が潰れることを抑制することができる。
また、図16にLで示した、液流路溝15aが延びる方向における隣り合う連通開口部15cのピッチは、2700μm以下であることが好ましく、1800μm以下であってもよく、900μm以下であってもよい。一方、このピッチLは60μm以上であることが好ましく、110μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。このピッチLの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、このピッチLの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
ここで蒸気流路溝16は溝であることから、その断面形状において、外面10b側となる底部、及び、底部とは向かい合わせとなる反対側で内面10a側に開口を備えている。
図4、図5にMで示した蒸気流路溝16の幅(内側液流路部15と蒸気流路16が配列される方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの幅C、幅Hより大きく形成され、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、この幅Mは100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅Mの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Mの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
蒸気流路溝16のピッチは、内側液流路部15のピッチにより決まるのが通常である。
このように、蒸気流路溝の流路断面積を液流路溝の流路断面積よりも大きくすることにより、作動流体の性質上、凝縮液よりも体積が大きくなる蒸気を円滑に還流することができる。
また、第二シート20に蒸気流路溝が形成されていれば、第一シート10の一部または全部に蒸気流路溝が形成されない形態であってもよい。
図4、図7にPで示した蒸気流路連通溝17の幅(連通方向に直交する方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、1000μm以下であることが好ましく、750μm以下であってもよく、500μm以下であってもよい。一方、この幅Pは100μm以上であることが好ましく、150μm以上であってもよく、200μm以上であってもよい。この幅Pの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Pの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、図7にQで示した蒸気流路連通溝17の深さは、300μm以下であることが好ましく225μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。一方、この深さQは10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。この深さQの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さQの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
蒸気流路連通溝は蒸気の流動抵抗を小さくすることにより作動流体の円滑な還流をさせることができるので、かかる観点から流路断面の形状を決定することもできる。
第二シート20は、内面20a、該内面20aとは反対側となる外面20b及び内面20aと外面20bとを連結し厚さを形成する側面20cを備え、内面20a側に作動流体が還流するパターンが形成されている。後述するようにこの第二シート20の内面20aと上記した第一シート10の内面10aとが対向するようにして重ね合わされることで中空部が形成され、ここに作動流体が封入されて密閉空間2となる。
ただし、第二シート20の本体21は本形態のように四角形である他、円形、楕円形、三角形、その他の多角形、並びに、屈曲部を有する形である例えばL字型、T字型、クランク型等であってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせた形状とすることもできる。
このような第二シート20の厚さ及び構成する材料は第一シート10と同様に考えることができる。ただし、第一シート10と第二シート20とは同じ厚さ及び材料である必要はない。
図18~図20にRで示した外周接合部23の幅(外周接合部23が延びる方向に直交する方向の大きさで、第一シート10との接合面における幅)は、上記した本体11の外周接合部13の幅Aと同じであることが好ましい。ただしこれに限らず大きくてもよく、小さくてもよい。
なお、このように第二シート20では外周接合部23と外周液流路部24とが面一であるため、構造的には両者を区別する境界線は存在しない。しかし、わかり易さのため、図17、図18では点線により両者の境界を表している。
図18~図20にSで示した外周液流路部24の幅(外周液流路部24が延びる方向に直交する方向の大きさで、第一シート10との接合面における幅)は、第一シート10の外周液流路部14の幅Bと同じでもよいし、大きくても小さくてもよい。
本形態で各内側液流路部25は、その内面20a側の表面が第一シート10との接合前において平坦面により形成されている。これにより上記した第一シート10の複数の液流路溝15aの開口を閉鎖して凝縮液流路3を形成する。
ここで蒸気流路溝26は溝であることから、その断面形状において、外面20b側である底部、及び、底部とは向かい合わせとなる反対側の部位で内面20a側となる開口を備えている。
また、図19にVで示した蒸気流路溝26の深さは、300μm以下であることが好ましく、225μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。一方、この深さVは10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。この深さVの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さVの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また第一シート10の蒸気流路溝16と第二シート20の蒸気流路溝26の深さは同じであってもよく、大きくても小さくてもよい。
また、第一シート10に蒸気流路溝が形成されていれば、第二シート20の一部または全部に蒸気流路溝が形成されない形態であってもよい。
また、図20にXで示した蒸気流路連通溝27の深さは、300μm以下であることが好ましく、225μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。一方、この深さXは10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。この深さXの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さXの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また第一シート10の蒸気流路連通溝17と第二シート20の蒸気流路連通溝27の深さは同じでもよく、大きくても小さくてもよい。
図21には、図1にXII-XIIで示したy方向に沿ってベーパーチャンバ1を厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は第一シート10における図5に表した図と、第二シート20における図19に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバ1の切断面が表されたものである。
図22には図21にXIIIで示した部位を拡大した図、図23には、図1にXIV-XIVで示したx方向に沿ってベーパーチャンバ1の厚さ方向に切断した切断面を表した。この図は、第一シート10における図7に表した図と、第二シート20における図20に表した図とが組み合わされてこの部位におけるベーパーチャンバ1の切断面が表されたものである。
第一シート10の壁である内側液流路部15と第二シート20の壁である内側液流路部25とが重なるように配置されている。これにより内側液流路部15の液流路溝15a及び内側液流路部25により中空部のうち、作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第2流路である凝縮液流路3が形成される。
凝縮液流路3は蒸気流路4とは分離されて形成されているため、作動流体の循環を円滑にさせることができる。
このように断面においてその四方を壁で囲まれた細い流路を形成することにより強い毛細管力で凝縮液を移動させ、円滑な循環が可能となる。
さらには内側液流路部15と内側液流路部25とが重なることにより密閉空間2の内部における支柱として機能するため、製造時においてつぶれ等の不具合を抑制することができる。
これにより、より強い毛細管力を発揮することができ、さらに円滑な凝縮液の循環が可能となる。本形態では、流路幅αが最大となる両方の部位βで局所相当半径が最小となる例を示したが、これに限らず、いずれか一方において局所相当半径が最小であればよい。
ベーパーチャンバを切断及び研磨する等して、流路断面が表れるようにした上で、当該流路断面を高倍率の顕微鏡又はSEMを用いて、50倍~200倍の範囲で拡大して表す。そしてこの拡大した流路断面から、流路の内周面の輪郭を抽出し、この輪郭において流路幅及び局所相当半径を測定したとき、流路幅が最大αになる流路内面の部位βにおける局所相当半径が最小となる。
そのとき部位βとなる点を挟んで隣接する輪郭上の決められた所定の2つの部位β1、β2となる点は、輪郭の全長を100%としたとき、部位βの点から0.5%の距離で離隔した位置における輪郭上の点である。
このような凝縮液流路3においても、上記したように得た最大幅αにおける流路内面の部位βで局所相当半径が最小となるような形状であれば効果を有するものとなる。
ベーパーチャンバを切断及び研磨する等して、流路断面が表れるようにした上で、当該流路断面を高倍率の顕微鏡又はSEMを用いて、50倍~200倍の範囲で拡大して表す。そしてこの拡大した流路断面から、流路の内周面の輪郭を抽出し、この輪郭において流路幅及び局所相当半径を測定したとき、流路幅が最大αになる流路内面の部位βにおける局所相当半径が最小となる。
上記輪郭において流路幅が最大となる流路内面の部位βとなる点、及び、この部位βとなる点を挟んで隣接する輪郭上の所定の2つの点である部位β1、部位β2となる点の合計3点を抽出し、この3点を通る円C1の半径を局所相当半径とする。そのとき部位βとなる点を挟んで隣接する輪郭上の決められた所定の2つの部位β1、β2となる点は、輪郭の全長を100%としたとき、部位βの点から0.5%の距離で離隔した位置における輪郭上の点である。
このような凝縮液流路3においても、上記したように得た最大幅αにおける流路内面の部位βで局所相当半径が最小となるような形状であれば効果を有するものとなる。
その中でも製造の観点から流路幅が流路高さより大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
これにより、微細な凝縮液流路3の内面に、さらに微細な溝が形成されているため、内面溝3aに凝縮液が入り、さらに毛細管力を高めることができ、凝縮液の還流を促進することが可能となる。従って、ベーパーチャンバ1の熱輸送能力が高まる。
上記した第2流路である凝縮液流路3の流路断面積は、当該第1流路である蒸気流路4の流路断面積より小さくされている。より具体的には、隣り合う2つの蒸気流路4(本形態では1つの蒸気流路溝16及び1つの蒸気流路溝26により形成される流路)の平均の流路断面積をAgとし、隣り合う2つの蒸気流路4の間に配置される複数の凝縮液流路3(本形態では1つの内側液流路部15、及び、1つの内側液流路溝25により形成される複数の凝縮液流路3)の平均の流路断面積をAlとしたとき、凝縮液流路3と蒸気流路4とは、AlがAgの0.5倍以下の関係にあるものとし、好ましくは0.25倍以下である。これにより作動流体はその相態様(気相、液相)によって第1流路と第2流路とを選択的に通り易くなる。
この関係はベーパーチャンバ全体のうち少なくとも一部において満たせばよく、ベーパーチャンバの全部でこれを満たせばさらに好ましい。
ただし、注入流路5から中空部に対して作動流体を注入した後は、注入流路5は閉鎖されて密閉空間2とされる、最終的な形態のベーパーチャンバ1では外部と中空部とは連通していない。
第一シート10及び第二シート20の外周形状を有する金属シートに対して、液流路溝14a、液流路溝15a、蒸気流路溝16、蒸気流路溝26、及び蒸気流路連通溝17、蒸気流路連通溝27をハーフエッチングにより形成する。ハーフエッチングとは、厚さ方向に貫通することなく厚さ方向の途中までエッチングを行うことである。
次いで、第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとを向かい合わせるように重ね、位置決め手段としての穴13a、穴23aを用いて位置決めし、仮止めを行う。仮止めの方法は特に限定されることはないが、抵抗溶接、超音波溶接、及び接着剤による接着等を挙げることができる。
そして仮止め後に拡散接合を行い恒久的に第一シート10と第二シート20とを接合する。なお、拡散接合の代わりにろう付けにより接合してもよい。ここで、「恒久的に接合」とは、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密閉空間2の密閉性を維持可能な程度に、第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとの接合を維持できる程度に接合されていることを意味する。
例えば3Dプリンタによりベーパーチャンバを製造する場合にはベーパーチャンバを複数のシートを接合して作製する必要がなく、接合部のないベーパーチャンバとすることが可能となる。
図33には作動流体の流れを説明する図を表した。説明のし易さのため、この図では第二シート20は省略し、第一シート10の内面10aが見えるように表示している。
蒸気流路4内の蒸気は熱源である電子部品30から離れ、比較的温度が低いベーパーチャンバ1の外周部に移動し、当該移動の際に順次第一シート10及び第二シート20に熱を奪われながら冷却される。蒸気から熱を奪った第一シート10及び第二シート20はその外面10b、20bに接触した携帯型端末装置の筐体等に熱を伝え、最終的に熱は外気に放出される。
このとき、凝縮液流路3は第二シート20により液流路溝14a、15aの開口が塞がれているので断面においてその四方が壁となり、毛細管力を高めることができる。これにより円滑な凝縮液の移動が可能とされている。
さらに本形態では凝縮液流路3の断面において、その最大幅となる流路内面の部位で局所相当半径が最小となるような形状を有しているのでより高い毛細管力を得ることができ、さらに円滑な凝縮液の移動が可能である。
そして再度熱源である電子部品30からの熱により気化して上記を繰り返す。
この時の、第一シート10および第二シート20の厚さは、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であってもよく、0.1mm以下であってもよい。一方、この厚さ0.005mm以上であること好ましく、0.015mm以上であってもよく、0.030mm以上であってもよい。この厚さの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、この厚さの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
蒸気流路溝51は、第三シート50を厚さ方向に貫通した溝であり、上記した蒸気流路溝16と蒸気流路溝26とを重ねて第1流路である蒸気流路4を構成すると同様の溝であり、これに相当する形態を有している。
壁52は、隣り合う蒸気流路溝51の間に具備される壁であり、上記した外周液流路部14と外周液流路部24、及び、内側液流路部15と内側液流路部25を重ねた壁に相当する形態を有している。
液流路溝53は、壁52のうち第一シート10に対向する面に配置される溝であり、上記した液流路溝14a、15aに相当する形態を有している。液流路溝53により第2流路である凝縮液流路3が形成される。
凸部54は、隣り合う液流路溝53の間に配置される凸部であり、上記した凸部14b、15bに相当する形態で配置される。
本形態における液流路溝14a、液流路溝15a、及び、蒸気流路溝16は、第三シート60を厚さ方向に貫通した溝であるが、それ以外においては、上述した液流路溝14a、液流路溝15a、及び、蒸気流路溝16と同様の形態とすることができる。
本形態における蒸気流路溝26は、第四シート70を厚さ方向に貫通した溝であるが、それ以外においては、上述した蒸気流路溝26と同様の形態とすることができる。
同様に、蒸気流路溝16と蒸気流路溝26とが重なり、第一シート10と第二シート20との間に配置されることで第1流路である蒸気流路4となる。
そして、第2流路である凝縮液流路3の形態が上記したように最大幅αの内周面β上で最小の局所相当半径を有するように構成されている。
2 密閉空間
3 凝縮液流路
4 蒸気流路
10 第一シート
10a 内面
10b 外面
10c 側面
11 本体
12 注入部
13 外周接合部
14 外周液流路部
14a 液流路溝
14c 連通開口部
15 内側液流路部
15a 液流路溝
15c 連通開口部
16 蒸気流路溝
17 蒸気流路連通溝
20 第二シート
20a 内面
20b 外面
20c 側面
21 本体
22 注入部
23 外周接合部
24 外周液流路部
25 内側液流路部
26 蒸気流路溝
27 蒸気流路連通溝
30 電子部品
40 電子機器
41 筐体
Claims (5)
- 内側に具備された密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
前記ベーパーチャンバは複数のシートが積層されてなり、
前記密閉空間には、
複数の第1流路と、隣り合う前記第1流路の間に設けられた第2流路と、を有し、
隣り合う2つの前記第1流路の平均の流路断面積をAgとし、隣り合う前記第1流路の間に配置された複数の前記第2流路の平均の流路断面積をAlとしたとき、少なくとも一部でAlはAgの0.5倍以下であり、
前記第2流路は、その流路断面で幅が最大となる部位が前記複数のシートの接合部とならない位置であり、流路内面において、当該部位及び当該部位を挟んで決められた所定の距離を有して隣接する流路内面の2点を通る円の半径を局所相当半径としたとき、前記局所相当半径が前記流路断面の内面の中で最小となる流路形状を備えている、ベーパーチャンバ。 - 内側に具備された密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
前記ベーパーチャンバは複数のシートが積層されてなり、
前記密閉空間には、
気体状態の前記作動流体が流れる複数の第1流路と、
隣り合う前記第1流路間に設けられ、液体状態の前記作動流体が流れる第2流路と、が備えられ、
前記第2流路は、その流路断面で幅が最大となる部位が前記複数のシートの接合部とならない位置であり、流路内面において、当該部位及び当該部位を挟んで決められた所定の距離を有して隣接する流路内面の2点を通る円の半径を局所相当半径としたとき、前記局所相当半径が前記流路断面の内面の中で最小となる流路形状を備えている、ベーパーチャンバ。 - 筐体と、
前記筐体の内側に配置された電子部品と、
前記電子部品に配置された請求項1又は2に記載されたベーパーチャンバと、
を備える、電子機器。 - 中空部を有するベーパーチャンバ用シートであって、
前記中空部には、
複数の第1流路と、隣り合う前記第1流路の間に設けられた第2流路と、を有し、
隣り合う2つの前記第1流路の平均の流路断面積をAgとし、隣り合う前記第1流路の間に配置された複数の前記第2流路の平均の流路断面積をAlとしたとき、少なくとも一部でAlはAgの0.5倍以下であり、
前記第2流路は、その流路断面で幅が最大となる部位が他のシートとの接合部とならない位置であり、流路内面において、当該部位及び当該部位を挟んで決められた所定の距離を有して隣接する流路内面の2点を通る円の半径を局所相当半径としたとき、前記局所相当半径が前記流路断面の内面の中で最小となる流路形状を備えている、ベーパーチャンバ用シート。 - 中空部を有するベーパーチャンバ用シートであって、
前記中空部には、
気体状態の作動流体が流れる蒸気流路となる複数の第1流路と、
隣り合う前記第1流路間に設けられ、液体状態の作動流体が流れる凝縮液流路となる第2流路と、が備えられ、
前記第2流路は、その流路断面で幅が最大となる部位が他のシートとの接合部とならない位置であり、流路内面において、当該部位及び当該部位を挟んで決められた所定の距離を有して隣接する流路内面の2点を通る円の半径を局所相当半径としたとき、前記局所相当半径が前記流路断面の内面の中で最小となる流路形状を備えている、ベーパーチャンバ用シート。
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