JP7361128B2 - 電極埋設セラミックス構造体 - Google Patents

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Description

本明細書は、電極埋設セラミックス構造体に関する技術を開示する。
特開2011-207222号公報(以下、特許文献1と称する)に、内部に電極が埋設されたセラミックス構造体(柱状のセラミックスヒータ)が開示されている。特許文献1では、まず、セラミックスシートの表面に電極を印刷する。次に、セラミックスシートにセラミックス軸を押し付けながらセラミックス軸の周りにセラミックスシートを巻き付け、セラミックスシートがセラミックス軸に圧着された中間成形体を作製する。その後、中間成形体を焼成し、セラミックスシートとセラミックス軸を焼結してセラミックスヒータを作製している。
上記したように、特許文献1では、セラミックスシートがセラミックス軸に圧着された中間成形体を焼成している。その結果、焼結によりセラミックスシートとセラミックス軸が一体化し、セラミックス内に電極が埋設された構造が完成する。特許文献1のセラミックスヒータは、マトリックス(セラミックス)内に、マトリックスとは別材料(電極)が埋設された構造を有している。そのため、例えばセラミックスと電極の熱膨張率差に起因して、マトリックスにクラックが生じる等の劣化が起こり得る。内部に電極が埋設されたセラミックス構造体においては、耐久性の向上(劣化の抑制)が必要とされている。本明細書は、耐久性の改善された電極埋設セラミックス構造体を実現することを目的とする。
本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体は、外周部に電極が設けられているセラミックス軸と、セラミックス軸を収容しているともに、セラミックス軸と結合しているセラミックス筒を備えていてよい。この電極埋設セラミックス構造体では、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙が設けられていてよい。
第1実施例の電極埋設セラミックス構造体の概略図(斜視図)を示す。 図1のII-II線に沿った断面図を示す。 図2の破線IIIで囲った範囲の拡大図を示す。 図2のIV-IV線に沿った断面図を示す。 図2のV-V線に沿った断面図を示す。 図5の破線VIで囲った範囲の拡大図を示す。 電極埋設セラミックス構造体の製造工程を示す。 第1実施例の電極埋設セラミックス構造体の変形例(断面図)を示す。 第2実施例の電極埋設セラミックス構造体の断面図を示す。 図9のX-X線に沿った断面図を示す。
本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体は、外周部に電極が設けられているセラミックス軸と、セラミックス軸を収容しているセラミックス筒を備えていてよい。セラミックス軸とセラミックス筒は結合していてよい。本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体では、電極(配線パターン)を外周部に形成したセラミックス軸と、セラミックス筒を別々に用意し、セラミックス軸をセラミックス筒に挿入し、焼成することによって作製される。なお、セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態で焼成することによって、セラミックス軸をセラミックス筒が焼結して一体化される。すなわち、電極が、セラミックスに埋設される。また、セラミックス筒に挿入する前のセラミックス軸において、電極がセラミックス軸の表面(外周面)に露出していなくてよい。例えば、セラミックス筒に挿入する前のセラミックス軸において、電極の表面が保護層等によって被覆されていてもよい。
電極埋設セラミックス構造体では、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙が設けられていてよい。なお、セラミックス軸とセラミックス筒の間とは、両者が焼結する前のセラミックス軸の外面とセラミックス筒の内面(筒の内壁)が接合(接触)している界面部分のことを意味する。セラミックス軸とセラミックス筒の界面は、両者が焼結して一体化した後であっても、電極埋設セラミックス構造体の中心軸又は外面からの距離、電極埋設セラミックス構造体の断面画像の観察、あるいは、断面画像における電極の位置等から特定することができる。
セラミックス軸及びセラミックス筒の材料は、アルミナ質又はジルコニア質であってよい。アルミナ質の一例として、アルミナ(Al)、ムライト(Al13Si)、スピネル(MgAl)等が挙げられる。ジルコニア質の一例として、ジルコニア(ZrO)、安定化剤としてイットリア(Y),カルシア(CaO)等が添加された、部分安定化ジルコニア,安定化ジルコニア等のジルコニア質が挙げられる。なお、同質材料(例えば、セラミックス軸及びセラミックス筒がアルミナ製)であってもよいし、異質材料(例えば、セラミックス軸がアルミナ製であり、セラミックス筒がジルコニア製)であってもよい。セラミックス軸とセラミックス筒が良好に焼結するために、両者は同質材料であることが好ましい。
セラミックス軸は、円柱状、あるいは、円筒状であってよい。すなわち、セラミックス軸は、中実、あるいは、中空であってよい。なお、円筒状のセラミックス軸の場合、一端が閉塞(有底円筒状)されていてもよいし、両端が閉塞(中空の円柱状)されていてもよいし、両端が開口していてもよい。両端が開口しているセラミックス軸は、軸方向に、一端から他端まで伸びる貫通孔(第1貫通孔)が設けられていると捉えることができる。セラミックス軸に第1貫通孔を設けることにより、セラミックス軸内に物体(水等の液体、金属線等の固体)を配置することができる。
セラミックス軸の外周部には、電極が設けられていてよい。セラミックス軸に電極を設けることにより、電極埋設セラミックス構造体をヒータ(セラミックスヒータ)として用いることができる。なお、セラミックス軸に第1貫通孔が設けられている場合、第1貫通孔内に物体を配置した状態で、その物体を加熱することができる。電極材料は、例えば、白金(Pt)、あるいは、金(Au)を含むAu-Pt合金等が用いられていてよい。電極は、スクリーン印刷、蒸着等によってセラミックス軸の外周面に形成されてよい。また、セラミックス軸の外周面に電極を形成した後、電極の表面を保護層で被覆してもよい。保護層の材料に特に制限はなく、樹脂、セラミックス等を用いることができる。
セラミックス筒は、セラミックス軸を収容する孔(収容部)を備えていてよい。具体的には、セラミックス筒は、セラミックス軸の長手方向端面と接触する底面と、セラミックス軸の外周面と接触する内周面を有する有底円筒状であってよい。また、底面に、セラミックス筒の外部と連通する貫通孔(第2貫通孔)が設けられていてよい。この場合、第2貫通孔は、第1貫通孔と連通していてよい。すなわち、セラミックス筒は、セラミックス軸が収容されている収容部からセラミックス筒の外部まで伸びるとともに、第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けられていてよい。この場合、第2貫通孔を通じて第1貫通孔内を吸引することにより、第1貫通孔内を減圧することができる。
第1貫通孔内に物体を配置し、第2貫通孔を通じて第1貫通孔内を減圧すると、第1貫通孔内配置した物体に他の物質(金属等)を吸着させることができる。すなわち、第1貫通孔及び第2貫通孔を有することにより、電極埋設セラミックス構造体を真空吸着機として用いることができる。また、上述したように、セラミックス軸に電極を設けることにより、電極埋設セラミックス構造体をヒータとして用いることができる。そのため、電極埋設セラミックス構造体は、第1貫通孔及び第2貫通孔を有することにより、物体を温めながら、物体に他の物質を吸着させることができる。
電極埋設セラミックス構造体が第1貫通孔及び第2貫通孔を有する場合、第1貫通孔と第2貫通孔の径は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1貫通孔と第2貫通孔の径が異なる場合、第2貫通孔の径が、第1貫通孔の径より小さくてよい。上述したように、セラミックス軸に第1貫通孔を設けることにより、第1貫通孔内に物体を配置し、加熱、吸着等を行うことができる。第2貫通孔の径を第1貫通孔の径より小さくすることにより、第1貫通孔内の物体が電極埋設セラミックス構造体の外部に漏れることを抑制することができる。また、第1貫通孔内を減圧(脱気)する際、第2貫通孔の径が小さい程、第1貫通孔内の圧力を低下させやすくなる。なお、セラミックス筒の外側形状は、任意であり、例えば、円柱状、多角柱状であってよい。
また、セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態のときに、セラミックス軸の長手方向端面は、全面がセラミックス筒に接触してもよいし、一部が非接触であってもよい。同様に、セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態のときに、セラミックス軸の外周面は、全面がセラミックス筒の内周面に接触してもよいし、一部が非接触であってもよい。なお、「セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態」とは、セラミックス軸とセラミックス筒を焼結するための焼成を行う前の状態を意味する。
例えば、セラミックス軸の端面、及び/又は、セラミックス筒の底面に窪みを設けることにより、セラミックス軸の端面とセラミックス筒の底面を部分的に非接触にすることができる。同様に、セラミックス軸の外周面、及び/又は、セラミックス筒の内周面に窪みを設けることにより、セラミックス軸の外周面とセラミックス筒の内周面を部分的に非接触にすることができる。セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態で両者を部分的に非接触にすることによって、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙を設けることができる。
また、セラミックス軸、及び/又は、セラミックス筒内に造孔材を添加し、電極埋設セラミックス構造体(セラミックス軸とセラミックス筒)を焼成する際に造孔材を消失させてもよい。このような方法によっても、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙を設けることができる。なお、造孔材として、ポリマー粒子、カーボン粒子等を用いることができる。造孔材の種類(材料,粒径)及び添加量を調整することによって、電極埋設セラミックス構造体全体の空隙量(空隙率)、及び、セラミックス軸とセラミックス筒の間の空隙量(空隙率)を調整することができる。
また、電極埋設セラミックス構造体を焼成する際の条件(焼成温度、焼成時間等)を調整することによっても、セラミックス軸とセラミックス筒の間に空隙を設けることができる。上記したように、本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体は、セラミックス軸とセラミックス筒を別々に用意し、セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した後、焼成を行うことにより作製する。そのため、焼成前(セラミックス軸をセラミックス筒に挿入した状態)は、セラミックス軸とセラミックス筒の間には明確な界面が存在する。そして、焼成を行うことによって、セラミックス軸とセラミックス筒の界面で焼結が進み、両者が一体化する。焼成の条件を制御することにより、セラミックス軸とセラミックス筒の界面における焼結の程度(焼結の進み具合)を制御することができ、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙を設けることができる。
上記したように、本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体は、セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙が設けられている。そのため、例えば電極が発熱したとき、あるいは、電極埋設セラミックス構造体が加熱されたときに、電極からセラミックスに加わる力を、セラミックス軸とセラミックス筒の間の空隙によって緩和することができる。具体的には、セラミックス(セラミックス軸及びセラミックス筒)と電極の熱膨張率差に起因して、マトリックス(セラミックス)にクラック等が発生することを抑制することができる。セラミックス軸とセラミックス筒の間に空隙を設けることにより、電極埋設セラミックス構造体の耐久性を向上させることができる。
セラミックス軸とセラミックス筒の間(界面)の空隙量(空隙割合)は、電極埋設セラミックス構造体の断面(セラミックス軸を含む平面に現れる断面、あるいは、セラミックス軸に直交する平面に現れる断面)の画像より判断することができる。具体的には、まず、セラミックス構造体の断面のSEM画像を撮影し、セラミックス軸とセラミックス筒の界面を特定する。次に、界面長さ1μmあたりの空隙の面積を測定する。空隙の面積測定は、例えば、撮影したSEM画像を、iTEM解析ソフト(西華産業(株)製)を用いて画像処理することによって算出することができる。界面長さ1μmあたりの空隙の面積(空隙面積/μm)は、0.3μm以上であってよい。空隙面積が0.3μm/μmであれば、電極からセラミックスに加わる力が十分に緩和され、耐久性が向上した電極埋設セラミックス構造体を得ることができる。
セラミックス軸とセラミックス筒の界面における空隙面積は、0.5μm以上であってよく、1μm以上であってよく、1.5μm以上であってよく、2μm以上であってもよい。界面長さ1μmあたりの空隙の面積が大きくなるに従って、セラミックスに加わる力を緩和する利点が得られやすくなる。また、セラミックス軸とセラミックス筒の界面における空隙面積は、5μm以下であってよい。空隙面積が5μm以下であれば、セラミックス軸とセラミックス筒が十分に接合(焼結)し、衝撃等によりセラミックス軸とセラミックス筒が分離することを防止することができる。セラミックス軸とセラミックス筒の界面における空隙面積は、4.5μm以下であってよく、4μm以下であってよく、3.5μm以下であってよく、3μm以下であってもよい。
空隙は、セラミックス軸とセラミックス筒の界面全体に、均一に分散して設けられていることが好ましい。例えば、セラミックス軸の軸線を含む平面に現れる断面画像において、セラミックス軸の端面とセラミックス筒の界面を4個の領域に等分割したときに、空隙が2領域以上で確認されることが好ましい。特に好ましくは、空隙が4領域全てで確認されることである。また、同断面画像において、セラミックス軸の側面(外周面)とセラミックス筒の界面についても、界面を4個の領域に等分割し(電極が設けられている部分は除く)、空隙が2領域以上で確認されることが好ましく、空隙が4領域全てで確認されることが特に好ましい。セラミックス軸の軸線に直交する平面に現れる断面においても、界面を4個の領域に等分割し(電極が設けられている部分は除く)、空隙が2領域以上で確認されることが好ましく、空隙が4領域全てで確認されることが特に好ましい。
(第1実施例)
図面を参照し、セラミックス構造体50について説明する。セラミックス構造体50は、電極埋設セラミックス構造体の一例である。セラミックス構造体50は、セラミックスヒータとして用いられる。図1及び図2に示すように、セラミックス構造体50は、外周部(外周面)に電極22が設けられている円柱状のセラミックス軸20と、有底円筒状のセラミックス筒10を備えている。セラミックス筒10の外形は、ほぼ円筒状であるが、一端が端部に向かうに従って直径が小さくなる略円錐状である。セラミックス軸20は、セラミックス筒10に収容されている。セラミックス軸20及びセラミックス筒10はアルミナ製であり、両者は焼結して一体化している。そのため、電極22は、セラミックス内に埋設された状態となっている。
図3は、セラミックス軸20の軸線を含む断面(長手方向の断面)の一部であり、図2の破線III部分の拡大図である。図3に示すように、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面には、空隙40が間欠的に設けられている。空隙40は、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面の全体にほぼ均一に設けられている。空隙40が設けられていない部分では、セラミックス軸20とセラミックス筒10が焼結している。なお、図3では、セラミックス構造体50の特徴を理解し易くするため、空隙40を比較的大きく、模式的に示している。実際の空隙は、不定形であり、様々なサイズが存在する。
図4は、セラミックス軸20の軸線に直交する断面(径方向の断面)を示しており、図2のIV-IV線に沿った断面を示している。図4から明らかなように、セラミックス軸20は中実構造である。図4に示すように、セラミックス軸20の周方向においても、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面の全周に、空隙40が、間欠的に、ほぼ均一に設けられている。換言すると、セラミックス軸20とセラミックス筒10が焼結した焼結部分42が、セラミックス軸20の周方向に、間欠的に、ほぼ均一に設けられている。そのため、セラミックス構造体50を焼成(焼きばめ)したときの内部応力が、周方向の局所に集中することが抑制されている。なお、図4においても、空隙40を比較的大きく、模式的に示している。
図5は、電極22が設けられている部分について、セラミックス軸20の軸線に直交する断面(径方向の断面)を示しており、図2のV-V線に沿った断面を示している。なお、図5では、電極22の状態を明確に示すため、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面に存在する空隙を省略している。図5に示すように、電極22は、表裏面がセラミックス(セラミックス軸20とセラミックス筒10)に接している。すなわち、電極22は、セラミックス構造体50を構成するセラミックス内に埋設されている。セラミックス構造体50では、電極22は周方向に一巡しておらず、電極22,22間にセラミックス軸20とセラミックス筒10が焼結した部分が存在している。
図6は、電極22が設けられている部分と設けられていない部分(セラミックス軸20とセラミックス筒10が接している部分)との境界部分の拡大図であり、図5の破線VIで囲った範囲を示している。図6に示すように、電極22とセラミックス軸20の界面、及び、電極22とセラミックス筒10の界面には空隙が確認されなかった。一方、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面には、間欠的に空隙40が確認された。
図3から図6に示したように、セラミックス構造体50では、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面の全体に、ほぼ均一に、間欠的に空隙40が設けられていた。そのため、電極22とセラミックスの熱膨張率差に基づいてセラミックスに加わる力を、空隙40が緩和することができる。一方、電極22とセラミックスの間には空隙が設けられていなかった。そのため、電極22が発熱したときに、電極22とセラミックス間が断熱されることが抑制され、応答性のよい(セラミックス温度変化が電極22の温度変化によく追従する)ヒータを実現することができる。
図7を参照し、セラミックス構造体50の製造方法について説明する。まず、セラミックス構造体50は、表面に電極(Pt電極)22を蒸着したアルミナ製のセラミックス軸20を用意し、中心に孔(有底孔)12が設けられたアルミナ製のセラミックス筒10をセラミックス軸20とは別に用意し、セラミックス軸20を孔12に挿入した。すなわち、孔12は、セラミックス軸20を収容するために収容部である。セラミックス軸20は、端面が孔12の底部分に接触するまで挿入した。なお、孔12の直径は、一端から他端まで等しく、セラミックス軸20の直径とほぼ同一である。その後、大気雰囲気において1600℃で焼成を行い、セラミックス構造体50を得た。セラミックス構造体50について図3~図5に示す断面の画像を撮影し、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面全体に、ほぼ均一に空隙が設けられていることを確認した。また、界面100μm分について界面長さ1μmあたりの空隙面積を測定した結果、0.3μm/μmであった。
セラミックス構造体50の特性(耐久性)について評価した。具体的には、電極22に印加する電圧を繰り返し変化させ、セラミックス構造体50を10秒で600℃に昇温し、20秒で100℃まで冷却する工程を1サイクルとする試験(熱衝撃試験)を行った。また、比較例として、従来の製造方法、すなわち、表面にPt電極を印刷したアルミナ製のセラミックスシートを用意し、セラミックスシートにアルミナ製のセラミックス軸を押し付けながらセラミックス軸の周りにセラミックスシートを巻き付け、その後、大気雰囲気において1600℃で焼成を行い、セラミックス構造体を作製した。比較例のセラミックス構造体は、セラミックスシートとセラミックス軸の界面全体が焼結しており、界面にほぼ空隙が確認されなかった。具体的には、空隙面積は、0.01μm/μm未満であった。
上記試験の結果、比較例のセラミックス構造体は、20サイクル目でセラミックスシートとセラミックス軸の界面にクラックが生じる結果となった。一方、セラミックス構造体50は、100サイクル試験を行った後も、セラミックス軸20とセラミックス筒10の界面にクラックが確認されなかった。セラミックス構造体50は、セラミックス軸20とセラミックス筒10の間の空隙40が、電極22とセラミックス(セラミックス軸20及びセラミックス筒10)の熱膨張率差による熱衝撃を緩和し、セラミックスの劣化を抑制することが確認された。
上記実施例では、一端から他端までの直径が等しい孔12が形成されたセラミックス筒10を用いたセラミックス構造体50について説明した。しかしながら、図8に示すセラミックス構造体50aのように、孔12の底面12aに窪み14が形成され、内周面12bに複数の窪み16が形成されたセラミックス筒10aを用いることもできる。なお、窪み16は、セラミックス筒10aの内周面を一巡している。窪み14を設けることにより、セラミックス軸20の端面において、セラミックス軸20とセラミックス筒10aの間に確実に空隙を設けることができる。同様に、窪み16を設けることにより、セラミックス軸20の外周面において、セラミックス軸20とセラミックス筒10aの間に確実に空隙を設けることができる。
なお、セラミックス構造体50aの変形例として、窪み14のみを設けて窪み16は設けなくてもよいし、窪み14を設けることなく窪み16のみを設けてもよい。また、窪み16は、セラミックス筒10aの内周面を一巡していなくてもよく、例えば、周方向に間欠的に設けられていてもよい。あるいは、窪み16は、電極22が設けられていない部分でセラミックス軸20に対向するように設けられていてもよい。
(第2実施例)
図9及び図10を参照し、セラミックス構造体50bについて説明する。セラミックス構造体50bは、セラミックス構造体50の変形例であり、セラミックス軸20b及びセラミックス筒10bが貫通孔を備えている点が、セラミックス構造体50のセラミックス軸20及びセラミックス筒10と異なる。セラミックス構造体50bについて、セラミックス構造体50と実質的に同一の構造については、セラミックス構造体50に付した参照番号と同一の参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。なお、図9は、セラミックス構造体50において図2で示した断面に相当し、図10は、セラミックス構造体50において図5で示した断面に相当する。
図9に示すように、セラミックス軸20bは、軸方向(長手方向)に、一端から他端まで伸びる第1貫通孔24が設けられている。すなわち、セラミックス軸20bは、中空構造である。図10に示すように、第1貫通孔24は、軸方向の両端に開口している。第1貫通孔24の直径は、200~3000μmに調整されている(200~1000μmであってもよい)。また、セラミックス軸20bの外周面に、電極22が周方向に間隔をあけて設けられている。電極22は、セラミックス軸20bとセラミックス筒10bが焼結して一体化したセラミックス内に埋設されている。
セラミックス筒10bは、孔(収容孔)12の底面(セラミックス軸20bの軸方向端面が接触する面)からセラミックス筒10bの外部まで伸びる第2貫通孔18を備えている。第2貫通孔18は、第1貫通孔24と連通している。第2貫通孔18の直径は、20~1000μmに調整されている(20~300μmであってもよい)。すなわち、第2貫通孔18の直径は、第1貫通孔24の直径より小さくてもよい。セラミックス構造体50bは、軸方向の一端から他端まで伸びる貫通孔(第1貫通孔24と第2貫通孔18)を備えていると捉えることができる。
セラミックス構造体50bは、第1貫通孔24内に物体(液体、固体)を配置し、その物体を加熱するヒータとして用いることができる。また、セラミックス構造体50bは、第2貫通孔18から第1貫通孔24の気体と脱気して第1貫通孔24内を減圧し、第1貫通孔24内に配置した物体に他の物質を吸着させる真空吸着機として用いることもできる。その場合、ヒータをオンすることにより、第1貫通孔24内の物体を加熱しながら、その物体に他の物質を吸着させることもできる。典型的に、物体の温度が高くなると、吸着速度が速くなる。セラミックス構造体50bは、ヒータ付の真空吸着機として用いることもできる。
セラミックス構造体50bの変形例として、セラミックス軸20bに第1貫通孔24を設け、セラミックス筒10bに第2貫通孔18を設けない形態(すなわち、セラミックス筒10bに代えてセラミックス筒10を用いる形態)が挙げられる。このような形態であっても、第1貫通孔24内に物体を配置し、その物体を加熱することができる。第1貫通孔24及び第2貫通孔18の径は、目的に応じて適宜変更可能であり、例えば第1貫通孔24と第2貫通孔の径を同一にすることもできる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

Claims (11)

  1. 外周部に電極が設けられているセラミックス軸と、
    セラミックス軸を収容しているともに、セラミックス軸と結合しているセラミックス筒と、を備えており、
    セラミックス軸の前記電極が設けられていない部分セラミックス筒の間の一部に空隙が設けられている電極埋設セラミックス構造体。
  2. 外周部に電極が設けられているセラミックス軸と、
    セラミックス軸を収容しているともに、セラミックス軸と結合しているセラミックス筒と、を備えており、
    セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙が設けられており、
    セラミックス軸の周方向において、前記空隙が、間欠的に設けられている電極埋設セラミックス構造体。
  3. セラミックス軸は、軸方向に、一端から他端まで伸びる第1貫通孔が設けられている請求項1又は2に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  4. セラミックス筒は、セラミックス軸が収容されている収容部からセラミックス筒の外部まで伸びるとともに、第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けられている請求項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  5. 第2貫通孔の径が、第1貫通孔の径より小さい請求項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  6. 外周部に電極が設けられているセラミックス軸と、
    セラミックス軸を収容しているともに、セラミックス軸と結合しているセラミックス筒と、を備えており、
    セラミックス軸は、軸方向に、一端から他端まで伸びる第1貫通孔が設けられており、
    セラミックス筒は、セラミックス軸が収容されている収容部からセラミックス筒の外部まで伸びるとともに、第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けられており、
    第2貫通孔の径が、第1貫通孔の径より小さく、
    セラミックス軸とセラミックス筒の間の一部に空隙が設けられている電極埋設セラミックス構造体。
  7. セラミックス軸の周方向において、前記空隙が、間欠的に設けられている請求項1または6に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  8. 前記空隙が、セラミックス軸とセラミックス筒の界面長さ1μmあたり0.3μm以上設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  9. セラミックス軸及びセラミックス筒の材料が、アルミナ質又はジルコニア質である請求項1から8のいずれか一項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  10. セラミックス軸及びセラミックス筒が、同質材料である請求項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
  11. 電極埋設セラミックス構造体がヒータである請求項1から10のいずれか一項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
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