JP7360993B2 - 空転検出装置と空転検出方法 - Google Patents

空転検出装置と空転検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両の駆動輪の空転を検出する技術に関する。
車両の加速時や制動時に、車両の駆動輪のトルクが、駆動輪と走行面との摩擦力よりも大きくなると、駆動輪が空転してしまう。この場合には、車両の挙動が不安定になり、例えば駆動輪のスリップが発生する。そのため、駆動輪の空転を防止する装置として、トラクションコントロールシステム(TCS:Traction Control System)と呼ばれるものがある。
TCSでは、車両の進行速度と駆動輪の回転速度を計測し、これらの計測値に基づいて、駆動輪の空転を検出する(例えば、特許文献1を参照)。より詳しくは、車両の進行速度と、駆動輪の回転速度(角速度)に駆動輪の有効半径を乗じた値との差に基づいて、駆動輪の空転を検出する。空転が検出された場合には、例えば駆動輪の回転を減少させることにより、車体の安定性が保たれるようにする。
特開2001-82199号公報 特許第6346934号公報
上述のように、TCSにおける駆動輪の空転検出では車両の進行速度を用いている。
TCSに用いる車両の進行速度を、特許文献1では次のように求めている。すなわち、特許文献1では、求める進行速度に路面勾配による誤差が生じないように、複数の車輪のうち最も回転速度が小さいものを選択し、選択した車輪の回転速度と車両の加速度とから車両の進行速度を推定している。しかし、この場合に、車両の加速度を検出する加速度センサとして、慣性センサを用いる場合、車両の低速走行時に加速度センサからの検出信号のS/N比が低くなる。その結果、加速度に基づいて求めた車両の進行速度の精度が下がり、駆動輪の空転を検出するのが困難となることがある。
一方、TCSに用いる車両の進行速度を、レーザドップラ効果を利用して計測することもできる(例えば特許文献2)。レーザドップラ効果を利用するセンサでは、レーザ光を走行面へ下方に射出し、その散乱光に基づいて、走行面と車両との相対速度を車両進行速度として検出する。このようなセンサの場合、当該センサと走行面(例えば地面)との距離が許容範囲内にある場合に、車両進行速度が検出可能である。そのため、岩場などのような凹凸の激しい走行面の場合、センサと走行面との距離が許容範囲外となり、加速度の検出精度が低下する。その結果、駆動輪の空転を検出するのが困難となる。
そこで、本発明の目的は、車両が勾配のある走行面を低速で走行する時であっても、車両が岩場のような凹凸の激しい走行面を走行する時であっても、駆動輪の空転を検出できる技術を提供することにある。
本発明による空転検出装置は、車両の駆動輪の空転を検出する装置であって、
前記駆動輪と同軸の中心軸回りに回転自在な従動回転部と、
前記駆動輪の回転速度を検出する第1速度検出装置と、
前記従動回転部の回転速度を検出する第2速度検出装置と、
前記第1速度検出装置が検出した回転速度と第2速度検出装置が検出した回転速度に基づいて、前記駆動輪の空転を検出する空転検出部とを備え、
前記従動回転部は、前記駆動輪に対して中心軸回りに回転自在な中心部と、該中心部に結合され前記中心軸に対して放射状に突出する複数の突出部とを有し、
前記複数の突出部は、前記駆動輪の半径方向において前記駆動輪の外周面よりも外側まで突出している。
本発明による空転検出方法は、車両の駆動輪の空転を検出する方法であって、
前記駆動輪と同軸の中心軸回りに回転自在な従動回転部を前記車両に設け、前記従動回転部は、前記中心軸回りに回転自在な中心部と、該中心部に結合され前記中心軸に対して放射状に突出する複数の突出部とを有し、前記複数の突出部は、前記駆動輪の半径方向において前記駆動輪の外周面よりも外側まで突出し、
車両の走行時に、前記駆動輪の回転速度を検出するとともに、前記従動回転部の回転速度を検出し、
検出した前記駆動輪の回転速度と検出した従動回転部の回転速度に基づいて、前記駆動輪の空転を検出する。
上述した本発明によると、車両の駆動輪と同軸で且つ回転自在な従動回転部を設け、従動回転部は、該従動回転部の中心軸に対して放射状に延びる複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、前記駆動輪の半径方向において前記駆動輪の外周面よりも外側まで突出している。
このような構成により以下の作用が得られる。車両が走行面を走行する時に、走行面は車両に対して後方へ相対移動する。この時、従動回転部の各突出部は、駆動輪の外周面よりも半径方向外側に突出しているので、走行面に接触する。そのため、走行面に接触している突出部は、後方側へ相対移動する走行面による摩擦や押圧等により後方側へ引かれ又は押される。したがって、複数の突出部が、順に、車両に対して後方側へ相対移動する走行面に引かれ又は押され、その結果、従動回転部が回転する。したがって、従動回転部は、車両の進行速度に応じて回転する。
このような従動回転部は、車両が低速度で走行している時でも、車両の進行速度に応じた速さで回転するので、駆動輪が空転すると、その分、従動回転部の回転速度は低下する。したがって、この場合に、第1速度検出装置が検出する駆動輪の回転速度と、第2速度検出装置が検出する従動回転部の回転速度との差が十分に大きくなるので、これらの回転速度に基づいて、駆動輪の空転を検出できる。
また、岩場のような凹凸の激しい走行面を走行する時に、突出部は、走行面の凹凸に接触するので、複数の突出部が、順に、車両に対して後方側へ相対移動する走行面に押され、その結果、従動回転部が回転する。したがって、凹凸の激しい走行面を走行する時でも、駆動輪が空転した場合に、第1速度検出装置が検出する駆動輪の回転速度と、第2速度検出装置が検出する従動回転部の回転速度との差が生じるので、これらの回転速度に基づいて、駆動輪の空転を検出できる。
本発明の実施形態による空転検出装置を備える車両の一例を示す側面図である。 図1Aの1B-1B矢視図ある。 本発明の実施形態による空転検出装置の構成を示すブロック図である。 図1Aの部分拡大図であり、従動回転部を示す。 本発明の実施形態による空転検出方法を示すフローチャートである。 変更例による空転検出装置の構成を示すブロック図である。 変更例による従動回転部を示す側面図である。
(車両の構成)
図1Aと図1Bは、本発明の実施形態による空転検出装置10を備える車両20の一例を示す。図1Aは、水平方向に見た車両20の側面図であり、図1Bは、図1Aの1B-1B矢視図ある。なお、図1Aは、図1Bの1A-1A矢視図でもある。車両20は、地球以外の天体(例えば月)の表面又は地球の表面を走行し、観測や作業を行うための車両であってよい。車両20には、観測を行うためのカメラや放射線検出器などの観測機器(図示せず)が設けられてよい。これに加えて又は代わりに、車両20には、作業(例えば、土砂の掘削、整地、物体の採取など)を行うためのアーム等の作業装置(図示せず)が設けられてもよい。車両20は、駆動輪21と駆動装置22と制御部23を備える。
車両20は全輪駆動車である。すなわち、車両20の全ての車輪が駆動輪21である。図1Aと図1Bの例では、駆動輪21は、4つ設けられており、車両20は4輪駆動車である。すなわち、車両20の前方側(図1Aの右側)に設けられた左右一対の前輪と、車両20の後方側(図1Aの左側)に設けられた左右一対の後輪とが、それぞれ駆動輪21である。各駆動輪21は、走行面1に接触し、車両20の進行時に走行面1上を転動する。なお、砂地や岩場での走行を容易にするために、駆動輪21の外周面21aには、図示を省略するが、外周面21aから突出した複数の爪部が、外周面21aの周方向に間隔をおいて設けられていてもよい。
図1Aの例では、駆動輪21は、駆動装置22に回転駆動される回転シャフト24に結合されている。この回転シャフト24は、車体25に結合されたシャフト支持部材26に軸受け(図示せず)を介して回転可能に支持されている。
駆動装置22は、駆動輪21を回転駆動する。駆動装置22は、一例では、図1Aのようにモータであってよいが、これに限定されず、駆動輪21を回転駆動できる装置であればよい。また、図1Bのように、駆動輪21毎に、当該駆動輪21を回転駆動する駆動装置22が設けられてよい。あるいは、図1Bと違って、複数の駆動輪21に対して、1つの駆動装置22が設けられ、これら複数の駆動輪21は、当該1つの駆動装置22から伝達される回転駆動力により回転駆動されてもよい。この場合、例えば、前輪としての左右一対の駆動輪21に対して1つの駆動装置22が設けられ、後輪としての左右一対の駆動輪21に対して別の1つの駆動装置22が設けられてよい。
制御部23は、駆動装置22を制御することにより、駆動輪21の回転速度を制御する。車両20は、制御部23の制御により自律移動するように構成されていてもよいし、車両20の外部から(例えば進行方向や進行速度が)遠隔操縦されてもよい。
車両20が自律移動する場合、例えば車両20に障害物センサが設けられる。障害物センサは、車両20から進行方向側の障害物を検出する。制御部23は、検出された障害物を避ける経路を車両20が走行するように車両20の走行制御を行う。例えば、目標位置と、この目標位置へ至る前に通過する複数の経由点とが予め設定されており、制御部23は、検出された障害物を避けつつ、次の経由点に向かう移動経路を生成して、当該経路を車両20が走行するように車両20の走行制御を行う。
車両20が遠隔操縦される場合には、例えば車両20にカメラが搭載される。カメラは、車両20の進行方向側の画像を取得する。この画像が、車両20から離れた遠隔操縦装置へ送信され、遠隔操縦装置のディスプレイに表示される。操作者は、表示された画像を見て、車両20への指令を与えるための操作を遠隔操縦装置の操作部にする。この操作による指令が、車両20へ送信され、この指令に基づいて、制御部23は、車両20の走行制御を行う。
なお、制御部23による車両20の走行制御は、次のように行われてよい。すなわち、制御部23は、車両20のステアリング(図示せず)と駆動装置22を制御することにより車両20の走行制御を行ってもよいし、前輪又は後輪である左右一対の駆動輪21のそれぞれの駆動装置22を制御して当該一対の駆動輪21の回転速度の差を制御することにより車両20の進行方向を変えて車両20の走行制御を行ってもよい。
(空転検出装置の構成)
図2は、本発明の実施形態による空転検出装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態では、複数の駆動輪21(図1Bの例では、2つの駆動輪21)の各々に対して空転検出装置10が設けられてよい。以下の説明では、1つの空転検出装置10の構成を説明するが、各空転検出装置10は、同じ構成を有していてよい。なお、本発明によると、複数の駆動輪21のいずれか1つに対してのみ空転検出装置10が設けられてもよい。
空転検出装置10は、車両20に設けられ、従動回転部11(図1Aと図1Bを参照)と第1速度検出装置12と第2速度検出装置13と空転検出部14を備える。
従動回転部11は、駆動輪21と同軸に設けられ、駆動輪21と同軸の中心軸C(図1Bを参照)回りに回転自在である。従動回転部11は、少なくとも1つの駆動輪21に対して設けられていればよい。例えば、図1Bでは2つの駆動輪21の各々に対して従動回転部11が設けられているが、車両20における全ての駆動輪21(例えば4つの駆動輪21)の各々に対して従動回転部11が設けられてもよい。2つの駆動輪21の各々に対して従動回転部11が設ける場合には、当該2つの駆動輪21は、2つの前輪であってもよいし、2つの後輪であってもよい。従動回転部11は、対応する駆動輪21に近接して設けられてよい。本実施形態では、従動回転部11は、車両20の左右方向において対応する駆動輪21の外側に設けられていてよい。すなわち、従動回転部11は、対応する駆動輪21に関して車体25の左右方向中央部の反対側に設けられていてよい。ただし、本発明は、これに限定されない。
図3は、図1Aの部分拡大図であり、従動回転部11を示す。従動回転部11は、駆動輪21に対して中心軸C回りに回転自在な中心部11aと、該中心部11aに結合され中心軸Cに対して放射状に突出する複数の突出部11bとを有する。各突出部11bは、駆動輪21の半径方向において駆動輪21の外周面21aよりも外側まで突出している。各突出部11bは、中心軸Cに対する半径方向において駆動輪21の外周面21aよりも外側まで棒状に延びる部材であってよい。この場合、図3の例では、各突出部11bが棒状に延びる方向は、中心軸Cに対する半径方向であってもよいし、車両20の前進走行時の駆動輪21の回転方向の側に傾いた方向であってもよいし、当該回転方向と反対側に傾いた方向であってもよい。
なお、従動回転部11(中心部11a)は、例えば、シャフト支持部材26に結合された、中心軸Cと同軸の支持シャフト27に軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されていてよい。
各突出部11bは、弾性変形可能に構成されている。これについて、平らで水平な硬い走行面1(例えばコンクリートの表面)を車両20が走行している時に、車両20の重量により突出部11bが弾性変形することにより駆動輪21(駆動輪21の外周面21aに上述の爪部がある場合には爪部、上述の爪部が無い場合には外周面21a)が常に走行面1に接するようになっていてよい。本実施形態では、各突出部11bは、弾性変形可能な材質(例えば鋼等の金属)により形成されている。また、各突出部11bは、弾性変形しやすくなるように細長く(例えば図3のように細長い棒状に)形成されていてよい。
また、複数の突出部11bは、中心軸C回りの周方向において等間隔で設けられていてよい。すなわち、中心軸Cを中心とする仮想の円(或いは、中心軸Cの方向から見た場合に円形である中心部11aの外周面)において、複数の突出部11bは等間隔で設けられてよい。図3の例では、突出部11bの数は、12本であるが、12本よりも多くてもよいし、場合によっては12本より少なくてもよい。
第1速度検出装置12は、駆動輪21の回転速度を検出する。第2速度検出装置13は、従動回転部11の回転速度を検出する。本実施形態では、第2速度検出装置13は、各時点における従動回転部11の回転速度を検出する回転速度センサ13aと、回転速度センサ13aが検出した各時点での回転速度の平均値を求める平均算出部13bとを有する。第2速度検出装置13の回転速度センサ13a(及び第1速度検出装置12)として、周知の(例えば光学式の)回転速度センサを用いることができるので、その詳しい説明を省略する。
空転検出部14は、第1速度検出装置12が検出した回転速度と第2速度検出装置13が検出した回転速度に基づいて、駆動輪21の空転を検出する。本実施形態では、空転検出部14は、空転率算出部14aと判断部14bを有する。
空転率算出部14aは、第1速度検出装置12が検出した回転速度と第2速度検出装置13が検出した回転速度に基づいて、駆動輪21の空転率を求める。本実施形態では、空転率算出部14aは、第1速度検出装置12が検出した回転速度と、第2速度検出装置13が求めた従動回転部11の回転速度の平均値(すなわち平均算出部13bが求めた平均値)とに基づいて、駆動輪21の空転率を求める。
例えば、空転率算出部14aは、次の式(1)で表される空転率λを算出する。

λ=(V-V)/max(V,V) ・・・(1)
式(1)において、Vは、第1速度検出装置12が算出した駆動輪21の回転速度に基づく車両20の進行速度であり、Vは、第2速度検出装置13が算出した従動回転部11の回転速度(本実施形態では、上記平均値)に基づく車両20の進行速度である。
より具体的には、V=Rωであり、V=Rωである。ここで、Rは、駆動輪21の既知の有効半径である。例えば、Rは、駆動輪21の回転軸から駆動輪21の外周面21aまでの長さである。ωは、第1速度検出装置12が検出した駆動輪21の回転速度としての角速度である。ωは、従動回転部11の回転速度としての角速度の平均値であり、第2速度検出装置13の平均算出部13bにより算出される。
また、式(1)において、max(V,V)は、VとVのうち大きい方の値を用いることを示す。したがって、V>Vである場合には、式(1)は、λ=(V-V)/Vとなり、V>Vである場合には、式(1)は、λ=(V-V)/Vとなる。なお、V=Vの場合には、λ=0である。
なお、上述のようにV=Rωであり、V=Rωである場合、ωは、1つの時点での駆動輪21の角速度であり、ωは、当該1つの時点を含む所定時間内の各時点で回転速度センサ13aが検出した従動回転部11の角速度の平均値であってよい。当該所定時間の長さは、例えば、1秒程度であってもよいし、又は、1秒よりも短い時間(例えば0.5秒以上であり1秒未満の時間)であってもよいし、又は、数秒程度(例えば2秒以上であり5秒以下の時間)であってもよいが、これらに限定されない。
本発明によると、ωとωの両方が平均値であってもよい。この場合、第1速度検出装置12は、回転速度センサと平均算出部を有し、当該回転速度センサは、所定時間内の各時点で駆動輪21の角速度を検出し、当該平均算出部は、これらの角速度の平均値をωとして算出する。当該所定時間は、ωの場合における上記所定時間と同じであってよい。また、本発明によると、ωとωの両方が、1つの時点での回転速度であってもよい。この場合、平均算出部13bは省略され、ωは、回転速度センサ13aが検出した従動回転部11の角速度である。
判断部14bは、空転率算出部14aが算出した空転率が予め定めた閾値よりも大きいかどうかを判断する。判断部14bは、空転率が閾値よりも大きいと判断した場合には、空転が発生している旨の空転信号を制御部23に出力する。制御部23は、空転信号を受けると、駆動装置22を制御することにより駆動輪21の回転速度を減少させる。これにより、駆動輪21の空転により車体25が不安定になることを回避できる。一例では、空転信号は、空転率を示す信号であり、制御部23は、空転率に応じて駆動輪21の回転速度を減少させるように駆動装置22を制御する。
(空転検出方法)
図4は、本発明の実施形態による空転検出方法を示すフローチャートである。この空転検出方法は、車両20が走行面1を走行している期間において、上述した空転検出装置10により繰り返し行われる。また、この空転検出方法は、互いに対応する各組の駆動輪21と従動回転部11について行われ、ステップS1~S3を有する。
ステップS1において、第1速度検出装置12により駆動輪21の回転速度を検出するとともに、第2速度検出装置13により従動回転部11の回転速度を検出する。本実施形態では、この時、第2速度検出装置13において、回転速度センサ13aが各時点で従動回転部11の回転速度を検出し、平均算出部13bが、これらの回転速度の平均値を算出する。
ステップS2において、ステップS1で検出した駆動輪21の回転速度と従動回転部11の回転速度に基づいて、空転検出部14により、駆動輪21が空転しているかどうかを判断する。ステップS2は、ステップS21,S22を有する。
ステップS21では、ステップS1で検出した駆動輪21の回転速度と従動回転部11の回転速度(本実施形態では、当該回転速度の上記平均値)に基づいて、空転率算出部14aにより駆動輪21の空転率を算出する。
ステップS22では、判断部14bにより、ステップS21で算出された空転率が予め定めた閾値を超えるかどうかを判断する。ここで、判断部14bは、空転率が予め定めた閾値を超えると判断した場合には、判断部14bは、駆動輪21が空転しているとして、その旨を示す空転信号を制御部23へ出力し、処理はステップS3へ進む。
ステップS3では、制御部23は、ステップS22で出力された空転信号を受けると、ステップS21で算出された空転率に基づいて、空転率をゼロに近づける制御を行う。例えば、駆動輪21の回転速度を調整するように、駆動輪21に対応する駆動装置22を制御する。ステップS3は、ステップS31~S33を有していてよい。
ステップS31において、空転信号を受けた時に、制御部23が車両20の加速制御(すなわち、駆動輪21の回転速度を増加させる制御)を行っている場合(又は、車両20の加速制御と減速制御のいずれも行っていない場合)には、ステップS32へ進み、そうでない場合(制御部23が車両20の減速制御を行っている場合)には、ステップS33へ進む。
ステップS32では、制御部23は、駆動輪21の回転速度を減少するように、駆動輪21に対応する駆動装置22を制御する。
ステップS33では、制御部23は、駆動輪21の回転速度を増加するように、駆動輪21に対応する駆動装置22を制御する。なお、この時、減速制御中にステップS31からステップS33へ移行してきた場合には、制御部23は、駆動輪21の回転速度を増加させる制御の代わりに又は当該制御に加えて、駆動輪21の回転に対する制動力を弱めるように、駆動輪21に対応するブレーキを制御してもよい。この場合、車両20において、ブレーキは、駆動輪21毎に設けられていてよい。
ステップS3の制御の結果、駆動輪21の空転によって車体25が不安定になることが回避される。ステップS3の後、ステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返す。
一方、ステップS22において、判断部14bは、空転率が予め定めた閾値を超えていないと判断した場合には、ステップS3を行わずに、ステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返す。
なお、互いに対応する各組の駆動輪21と従動回転部11について上述の空転検出方法を行う場合に、複数の駆動輪21の回転速度のバランスをとる制御が行われてもよい。例えば、駆動輪21同士の回転速度差が閾値を超えない範囲内でステップS3が行われるように制御部23を制御する別のバランス制御部(図示せず)が設けられてもよい。
(実施形態の効果)
本実施形態による以下の作用が得られる。車両20が走行面1を走行する時に、走行面1は車両20に対して後方へ相対移動する。この時、従動回転部11の各突出部11bは、駆動輪21の外周面21aよりも半径方向外側に突出しているので、走行面1に接触する。そのため、走行面1に接触している突出部11bは、後方側へ相対移動する走行面1による摩擦や押圧等により後方側へ引かれ又は押される。したがって、複数の突出部11bが、順に、車両20に対して後方側へ相対移動する走行面1に引かれ又は押され、その結果、従動回転部11が回転する。したがって、従動回転部11は、車両20の進行速度に応じて回転する。
このような従動回転部11は、車両20が低速度で走行している時でも、車両20の進行速度に応じた速さで回転するので、駆動輪21が空転すると、その分、従動回転部11の回転速度は低下する。したがって、この場合に、第1速度検出装置12が検出する駆動輪21の回転速度と、第2速度検出装置13が検出する従動回転部11の回転速度との差が十分に大きくなるので、これらの回転速度に基づいて、駆動輪21の空転を検出できる。
また、岩場のような凹凸の激しい走行面1を車両20が走行する時に、突出部11bは、走行面1の凹凸に接触するので、複数の突出部11bが、順に、車両20に対して後方側へ相対移動する走行面1に押され、その結果、車両20の進行速度に応じて従動回転部11が回転する。したがって、凹凸の激しい走行面1を走行する時でも、駆動輪21が空転した場合に、第1速度検出装置12が検出する駆動輪21の回転速度と、第2速度検出装置13が検出する従動回転部11の回転速度との差が生じるので、これらの回転速度に基づいて、駆動輪21の空転を検出できる。
また、砂地の走行面1を走行する時に、突出部11bは、砂に食い込むので、複数の突出部11bが、順に、車両20に対して後方側へ相対移動する走行面1に押され、その結果、車両20の進行速度に応じて従動回転部11が回転する。したがって、砂地の走行面1を走行する時でも、駆動輪21が空転した場合に、第1速度検出装置12が検出する駆動輪21の回転速度と、第2速度検出装置13が検出する従動回転部11の回転速度との差が生じるので、これらの回転速度に基づいて、駆動輪21の空転を検出できる。
各突出部11bが上述のように弾性変形するように構成されていることにより、突出部11bは走行面1に接触する時に、走行面1の形状に合わせて弾性変形するので、従動回転部11は車両20の走行時に円滑に回転しやすくなる。
車両20の走行時(特に岩場を走行する時)に、走行面1に接触する突出部11bが、走行面1により、しなり又ははじかれながら、車両20が進行する。これにより、従動回転部11の回転速度は変動する。そこで、上述のように、駆動輪21の空転率を求める時に、従動回転部11の回転速度の平均値を用いる。これにより、従動回転部11の回転速度が変動しても、駆動輪21の空転の発生有無を適切に判断できる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1~4のいずれかを採用してもよいし、変更例1~4の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
(変更例1)
図5は、変更例1による空転検出装置10の構成を示すブロック図である。この変更例では、空転検出装置10は、更に、回転速度センサ13aが検出した回転速度(角速度)の変動幅を求める変動監視部14cを備える。変動監視部14cが求めた変動幅が基準値以下である場合には、空転率算出部14aは、第1速度検出装置12が検出した回転速度と、第2速度検出装置13の回転速度センサ13aが検出した回転速度との差に基づいて、駆動輪21の空転率を算出する。変動監視部14cが求めた変動幅が基準値を超える場合には、空転率算出部14aは、第1速度検出装置12が検出した回転速度と、第2速度検出装置13の平均算出部13bが求めた平均値との差に基づいて、駆動輪21の空転率を算出する。以下、この場合の一例を詳しく説明する。
変動監視部14cは、所定周期毎に、当該周期内の各時点で回転速度センサ13aにより検出された回転速度の変動幅(例えば、これらの回転速度の最大値と最小値との差の大きさ)を求める。なお、当該周期の長さは、例えば、1秒程度であってもよいし、又は、1秒よりも短い時間(例えば0.5秒以上であり1秒未満の時間)であってもよいし、又は、数秒程度(例えば2秒以上であり5秒以下の時間)であってもよいが、これらに限定されない。
変動監視部14cは、上記変動幅を求める度に、当該変動幅が基準値を超えるかを判定し、その結果を示す判定信号を空転率算出部14aへ出力する。空転率算出部14aは、上記変動幅が基準値を超えることを示す判定信号を受けた場合には、平均算出部13bにより算出された平均値を用いて空転率を算出する。例えば、空転率算出部14aは、上述の式(1)を用いて空転率λを算出する際に、上記ωとして上記平均値を用いる。
一方、空転率算出部14aは、上記変動幅が基準値以下であることを示す判定信号を受けた場合には、回転速度センサ13aにより検出された1つの時点での回転速度(角速度)を用いて空転率を算出する。例えば、空転率算出部14aは、上述の式(1)を用いて空転率λを算出する際に、上記ωとして、回転速度センサ13aにより検出された1つの時点での回転速度(角速度)を用いる。
この変更例1によると、従動回転部11の回転速度の変動幅に応じて、空転率の算出方法を適切に切り替えることができる。
(変更例2)
各突出部11bは、その一部又は全体が、駆動輪21の半径方向外側へ棒状又は平板状に(例えば細長く)延びているものであってよい。ここで、平板状について、当該平板の厚み方向は、駆動輪21の半径方向と、中心軸Cの方向との両方に交差(例えば直交)する方向(外周面21aの周方向)であってよい。また、突出部11bの一部が駆動輪21の半径方向外側へ平板状に延びている場合、当該突出部11bの他の部分は、駆動輪21の半径方向外側へ棒状に延びていてよい。突出部11bにおける平板状の部分は、その厚み方向への剛性が小さくなっているので、突出部11bが走行面1に接触する時に、走行面1の形状に合わせてより柔軟に弾性変形する。なお、上述の図3では、各突出部11bは、全体が、駆動輪21の半径方向外側へ棒状に延びている。
或いは、各突出部11bは、図6のように形成されていてもよい。図6は、図3に対応する図であり、従動回転部11を中心軸Cの方向から見た図である。図6のように、各突出部11bは、内側部11b1と外側部11b2とを有するように構成されてもよい。内側部11b1は、中心軸Cに対する半径方向又は当該半径方向から傾いた方向を軸とするコイルの形に形成されたコイル形状部分15を有し、中心部11aに結合されている。外側部11b2は、内側部11b1から駆動輪21の半径方向外側へ延びる。コイル形状部分15は、弾性変形可能な材質(例えば鋼等の金属)で形成されている。この構成で、各突出部11bは、走行面1に接触する時に、走行面1の形状に合わせてより柔軟に弾性変形する。
(変更例3)
上述では、上記式(1)で算出した空転率と上記閾値が正の値であることを前提として説明した。上記式(1)で算出された空転率が正の値である場合と負の値である場合とで異なる制御が制御部23により行われてもよい。以下において、このような変更例3について説明する。なお、負の値の空転率は、例えば、走行中の急ブレーキにより駆動輪21が完全にロックした状態(空転率=-1)、又は、このようなロックに近い状態であり駆動輪21が多少回転している状態(-1<空転率<0)を示している。
上述のステップS21において上記式(1)を用いて算出した空転率が負の値である場合には、ステップS22では、判断部14bは、負の値である閾値を用いる。この閾値は、ゼロより小さく且つ-1よりも大きい値であってよい(すなわち、-1<閾値<0)。負の閾値を用いるステップS22では、判断部14bは、ステップS21で算出された空転率が閾値よりも小さいかどうかを判断する。判断部14bは、空転率が閾値よりも小さいと判断した場合には(すなわち、-1≦空転率<閾値)、判断部14bは、その旨を示す車輪ロック信号を制御部23へ出力し、処理はステップS3へ進み、そうでない場合には、ステップS1へ戻る。
車輪ロック信号は、駆動輪21が上述のように急ブレーキによりロックしていることを示す。制御部21は、車輪ロック信号を受けると、上述のステップS3の代わりに、駆動輪21のロックを解消するための制御を行う。例えば、制御部21は、駆動輪21の回転に対する制動力を弱めるように、駆動輪21に対応するブレーキを制御するとともに、駆動輪21の回転を維持するように駆動装置22を制御する。
(変更例4)
空転率λを算出する式として、上述の(1)の代わりに、次の式(2)を用いてもよい。

λ=(V-V)/max(V,V) ・・・(2)

この式(2)で算出された空転率λが正の値である場合には、上記式(1)で算出された空転率λが負の値の場合と同様の処理(変更例3の処理)が行われ、式(2)で算出された空転率λが負の値である場合には、上記式(1)で算出された空転率λが正の値の場合と同様の処理が行われる。
1 走行面、10 空転検出装置、11 従動回転部、11a 中心部、11b 突出部、11b1 内側部、11b2 外側部、12 第1速度検出装置、13 第2速度検出装置、13a 回転速度センサ、13b 平均算出部、14 空転検出部、14a 空転率算出部、14b 判断部、14c 変動監視部、15 コイル形状部分、20 車両、21 駆動輪、21a 外周面、22 駆動装置、23 制御部、24 回転シャフト、25 車体、26 シャフト支持部材、27 支持シャフト、C 中心軸

Claims (7)

  1. 車両の駆動輪の空転を検出する空転検出装置であって、
    前記駆動輪と同軸の中心軸回りに回転自在な従動回転部と、
    前記駆動輪の回転速度を検出する第1速度検出装置と、
    前記従動回転部の回転速度を検出する第2速度検出装置と、
    前記第1速度検出装置が検出した回転速度と第2速度検出装置が検出した回転速度に基づいて、前記駆動輪の空転を検出する空転検出部とを備え、
    前記従動回転部は、前記駆動輪に対して中心軸回りに回転自在な中心部と、該中心部に結合され前記中心軸に対して放射状に突出する複数の突出部とを有し、
    前記複数の突出部は、前記駆動輪の半径方向において前記駆動輪の外周面よりも外側まで突出している、空転検出装置。
  2. 前記複数の突出部は、弾性変形可能に構成されている、請求項1に記載の空転検出装置。
  3. 前記各突出部は、
    一部又は全体が、前記駆動輪の半径方向外側へ棒状又は平板状に延びているものであり、又は、
    コイル状に形成されたコイル形状部分を有し前記中心部に結合された内側部と、当該内側部から前記半径方向外側へ延びる外側部とを備えるものである、請求項1又は2に記載の空転検出装置。
  4. 前記空転検出部は、
    前記第1速度検出装置が検出した回転速度と前記第2速度検出装置が検出した回転速度に基づいて、前記駆動輪の空転率を求める空転率算出部と、
    算出された前記空転率が閾値よりも大きいか否かを判断し、前記空転率が前記閾値よりも大きい場合には、空転が発生している旨の空転信号を出力する判断部とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の空転検出装置。
  5. 前記第2速度検出装置は、各時点における前記従動回転部の回転速度を検出する回転速度センサと、前記回転速度センサが検出した各時点での回転速度の平均値を求める平均算出部とを有し、
    前記空転率算出部は、前記第1速度検出装置が検出した回転速度と、前記第2速度検出装置が求めた前記平均値とに基づいて、前記駆動輪の空転率を求める、請求項4に記載の空転検出装置。
  6. 前記空転検出部は、前記回転速度センサが検出した回転速度の変動幅を求める変動監視部を有し、
    前記変動監視部が求めた前記変動幅が基準値以下である場合には、前記空転率算出部は、前記第1速度検出装置が検出した回転速度と、前記第2速度検出装置の前記回転速度センサが検出した回転速度との差に基づいて、前記駆動輪の空転率を算出し、
    前記変動監視部が求めた前記変動幅が前記基準値を超える場合には、前記空転率算出部は、前記第1速度検出装置が検出した回転速度と、前記第2速度検出装置の前記平均算出部が求めた前記平均値との差に基づいて、前記駆動輪の空転率を算出する、請求項5に記載の空転検出装置。
  7. 車両の駆動輪の空転を検出する空転検出方法であって、
    前記駆動輪と同軸の中心軸回りに回転自在な従動回転部を前記車両に設け、前記従動回転部は、前記中心軸回りに回転自在な中心部と、該中心部に結合され前記中心軸に対して放射状に突出する複数の突出部とを有し、前記複数の突出部は、前記駆動輪の半径方向において前記駆動輪の外周面よりも外側まで突出し、
    車両の走行時に、前記駆動輪の回転速度を検出するとともに、前記従動回転部の回転速度を検出し、
    検出した前記駆動輪の回転速度と検出した従動回転部の回転速度に基づいて、前記駆動輪の空転を検出する、空転検出方法。
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