JP7360667B2 - ロタキサンポリウレア架橋体、ロタキサンポリウレア・ウレタン架橋体、およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
前記ロタキサンジアミンは、少なくとも1個のシクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通しているジアミンとを有するものである。すなわち、ロタキサンジアミンは、シクロデキストリンの空洞部を軸分子であるジアミンが貫通しているロタキサン構造を有している。
前記ジイソシアネートとは、イソシアネート基を2つ有する有機化合物である。前記ジイソシアネートは、軸分子であるポリウレア鎖を構成する。また、ポリウレア鎖において、シクロデキストリンの可動領域を構成することから、立体障害が小さいジイソシアネートが好ましい。
本発明で使用するロタキサンポリウレアは、軸分子であるポリウレア鎖を構成する成分として、前述したロタキサンジアミンとジイソシアネートに加えて、ジアミンおよび/またはジオールなどを構成成分として有しても良い。
本発明で使用するロタキサンポリウレアは、少なくとも1個のシクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通しているポリウレア鎖とを有し、前記ポリウレア鎖は、前記シクロデキストリンがポリウレア鎖から脱離するのを封鎖する封鎖構造を主鎖中または主鎖末端に有することが好ましい。
二官能基封鎖化合物の割合=100×[二官能基封鎖化合物のモル数/(二官能基封鎖化合物のモル数+ジイソシアネートのモル数+ロタキサンジアミンのモル数)
架橋剤としては、前記ロタキサンポリウレアの環状分子であるシクロデキストリンが有するヒドロキシ基と反応する官能基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。前記官能基としては、エポキシ基やイソシアネート基が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
(1)1H-NMRスペクトルの測定
1H-NMRスペクトルは、重水素化溶媒を用いてBruker Biospin AVANCE DPX-300およびBruker AVANCEIIIHD500により記録した。前記スペクトルは、非重水素化溶媒およびテトラメチルシランを内部標準物質として用いて較正した。
数平均分子量および重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてDMF(LiBr 5mM)、カラムとしてTOSOH TSKgel G2500HとG4000Hカラムセットを備えたJASCO PU-2080システムを用いて、30℃、流速0.85ml/分間の条件で測定した。分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量により算出した。
引張り試験は、50N荷重セルを備えたSHIMADZU AG-ISを用いて、伸長率167%/分間、25℃で測定した。この引張り試験の結果から、引張り物性(ヤング率、破壊ひずみ、破壊応力、破壊エネルギー)を算出した。ヤング率は、0%~10%間のひずみとその応力を用いて算出した。なお、ロタキサンポリウレア架橋体からなるシートを、パンチングブレードを用いてダンベル形(60mm)に打抜き、引張り試験用サンプルとした。
1H-NMRの測定結果から、以下のようにして算出した。図8は、下記に示したようにして作製したPU1の1H-NMR(400MHz、298K,DMF-d7)のデータである。ドデカン鎖の-(CH2)10-の積分値は20、PPG鎖中のメチル基aの積分値は3×33×0.9=89.1、嵩高いイソシアナート中のメチル基fの積分値は、3×4×0.1=1.2であり、これらの合計値は20+89.1+1.2=110.3である。この積分値を基準値とする。シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は3.4である。ここで、ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、カバー率を100%と定義する。ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は12である。
従って、ドデカン鎖部分のカバー率θ1は、以下のようにして算出される。
θ1=(3.4/12)×100=28%(PU1)
シクロデキストリンは、2つのPPGユニットを包接することができる。すなわち、カバー率θ2=100%の場合、16.5のシクロデキストリンユニットが、ジイソシアネートマクロマー(「NCO-PPG」)を包接する。これに、ドデカン鎖の2個のシクロデキストリンユニットを加えると18.5のシクロデキストリンユニットが存在する。ここで、前記で算出したように、PU1のドデカン鎖部分のシクロデキストリンユニット数は、0.57(=3.4/12×2)となる。
従って、ポリウレア鎖のカバー率θ2は、以下のようにして算出される。
θ2=(0.57/18.5)×100=3.0%(PU1)
1H-NMRの測定結果から、以下のようにして算出した。図9は、下記に示したようにして作製したPU10の1H-NMR(400MHz、298K、DMSO-d6)のデータである。ドデカン鎖の-(CH2)10-の積分値は20×0.95=19、PPG鎖中のメチル基aの積分値は3×33=99、嵩高いイソシアナート中のメチル基fの積分値は、3×4 ×0.05=0.6であり、これらの合計値は19+99+0.6=118.6である。この積分値を基準値とする。シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は3.4である。ここで、ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、カバー率を100%と定義する。ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は12×0.95=11.4である。
従って、ドデカン鎖部分のカバー率θ1は、以下のようにして算出される。
θ1=(3.4/(12×0.95))×100=30%(PU10)
シクロデキストリンは、2つのPPGユニットを包接することができる。すなわち、カバー率θ2=100%の場合、16.5のシクロデキストリンユニットが、ジイソシアネートマクロマー(「NCO-PPG」)を包接する。これに、ドデカン鎖の2×0.95=1.9個のシクロデキストリンユニットを加えると、18.4のシクロデキストリンユニットが存在する。ここで、前記で算出したように、PU1のドデカン鎖部分のシクロデキストリンユニット数は、0.57(=2×0.30×0.95)となる。
従って、ポリウレア鎖のカバー率θ2は、以下のようにして算出される。
θ2=(0.57/18.4)×100=3.1%(PU10)
(1)ロタキサンジアミン
ロタキサンジアミンは、Eur. J. Org. Chem. 2019, 3605-3613に記載した擬[3] ロタキサンP1の合成方法に従って合成した。具体的には、1,12-ジアミノドデカン(8.8g、44mmol)をα-シクロデキストリン(86g、89mmol)の水(600ml)溶液に添加し、混合液を1時間還流させた後、室温で一晩静置した。ろ過により沈殿を収集し、収集した沈殿を水で洗浄した後、真空乾燥し、白色結晶としてロタキサンジアミン(95g)を得た。
ジイソシアネートマクロモノマーとして、下記式(2)の化合物(以下、「NCO-PPG」と略称する)(メルク社製、Mn=2300)を用いた。なお、この化合物は、オキシプロピレンユニットの平均重合度が33のポリプロピレングリコールの両末端に2,4-トルエンジイソシアネートが反応してなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(3量体)である
封鎖化合物として、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(市販品)を用いた。その構造は、下記式(3)で示される。
架橋剤として、4,4’-ジフェ二ルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
NCO-PPG(9.6g、4.2mmol)とビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(0.17g、0.47mmol)を0℃でDMF(60ml)に溶かした溶液に、擬[3]ロタキサンジアミン(10g、4.7mmol)を添加し、室温で24時間攪拌した。得られた混合液を水に注ぎ込み、沈殿を80℃で真空乾燥し、白色固体としてロタキサンポリウレアPU1(10.5g、収率:53%)を得た。PU1の反応スキームは、図6に示した。得られたロタキサンポリウレアは、ランダム構造を有する。PU1の1H NMRのデータは、下記の通りである(図8参照)。
NCO-PPG(10.8g、4.7mmol)を0℃でDMF(60ml)に溶かした溶液に、擬[3] ロタキサンジアミン(9.7g、4.5mmol)を添加し室温で24時間攪拌した後、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(73mg、0.24mmol)を添加し、続いて24時間攪拌した。得られた混合液(ロタキサンポリウレア生成物および溶媒などを含むもの)に、架橋剤としてMDI(77mg、0.31mmol)とジブチルチンジラウリレート(19mg、0.032mmol)を添加し、続いて24時間攪拌した。得られた混合液を水に注ぎ込み、沈殿を80℃で真空乾燥し、白色固体としてロタキサンポリウレア架橋体No.1(PU10)(12g、収率:59%)を得た。ロタキサンポリウレア架橋体No.1(PU10)の1H-NMRのデータは、下記の通りである(図9参照)。
Claims (19)
- 少なくとも1個のシクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通しているポリウレア鎖とを有するロタキサンポリウレアの架橋体であって、前記ポリウレア鎖は、少なくとも1個のシクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンとジイソシアネートとの反応により分子鎖にウレア結合が形成されたものであり、前記ロタキサンポリウレアのシクロデキストリンが架橋剤により架橋されていることを特徴とするロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記架橋剤は、ポリイソシアネートであり、シクロデキストリンが有するヒドロキシ基と反応して、ロタキサンポリウレアを架橋している請求項1に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記ジイソシアネートは、ジイソシアネートモノマーあるいはジイソシアネートマクロモノマーである請求項1または2に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記ロタキサンジアミンは、2個のシクロデキストリンと、前記2個のシクロデキストリンを貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記ロタキサンジアミンは、シクロデキストリンが炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンから脱離するのを防止する封鎖基を有さないものである請求項1~4のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記ロタキサンジアミンが有する炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンは、ドデカンジアミンである請求項1~5のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記ポリウレア鎖は、前記シクロデキストリンがポリウレア鎖から脱離するのを封鎖する封鎖構造を主鎖中または主鎖末端に有する請求項1~6に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記主鎖中の封鎖構造は、前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を二つ有する化合物であって、前記シクロデキストリンを立体障害により封鎖する封鎖化合物により形成されている請求項7に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記封鎖化合物は、ジアミン、ジイソシアネート、ジオールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項8に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記主鎖末端の封鎖構造は、前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を一つ有する化合物であって、前記シクロデキストリンを立体障害により封鎖する封鎖化合物により形成されている請求項7に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記封鎖化合物は、モノアミン、モノイソシアネート、モノアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項10に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ―シクロデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~11のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアの架橋体。
- 請求項1~12のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアのポリウレア鎖は、ポリウレア鎖の分子鎖にさらにウレタン結合を有するポリウレア・ウレタン鎖であるロタキサンポリウレア・ウレタンの架橋体。
- シクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンと、前記シクロデキストリンを貫通することができるジイソシアネートとを反応させて、少なくとも1個のシクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通しているポリウレア鎖とを有するロタキサンポリウレアを製造する工程と、
前記ロタキサンポリウレアが有するシクロデキストリンを架橋剤で架橋させる工程とを有することを特徴とするロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。 - シクロデキストリンと前記シクロデキストリンを貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンと、前記シクロデキストリンを貫通することができるジイソシアネートと、前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を二つ有する化合物であって、前記シクロデキストリンを立体障害により封鎖する封鎖化合物とを反応させることにより、前記シクロデキストリンを貫通しているポリウレア鎖を有するロタキサンポリウレアを製造する工程と、
前記ロタキサンポリウレアが有するシクロデキストリンを架橋剤で架橋させる工程とを有することを特徴とするロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。 - 前記ジイソシアネートとして、ジイソシアネートマクロモノマーを使用する請求項14または15に記載のロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。
- 前記ジイソシアネートマクロモノマーとして、ジイソシアネートモノマーとポリエーテルジオールとを反応させてなるものを使用する請求項16に記載のロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。
- 前記封鎖化合物として、ジアミン、ジイソシアネート、ジオールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用する請求項15に記載のロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。
- 前記架橋剤として、ポリイソシアネートを用い、シクロデキストリンが有するヒドロキシ基と反応させて、ロタキサンポリウレアを架橋する請求項14~18のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレア架橋体の製造方法。
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