JP7360666B2 - ロタキサンポリウレア、ロタキサンポリウレア・ウレタン、およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
前記ロタキサンジアミンは、少なくとも1個の環状分子と前記環状分子を貫通しているジアミンとを有するものである。すなわち、ロタキサンジアミンは、環状分子の空洞部を軸分子であるジアミンが貫通しているロタキサン構造を有している。
前記ジイソシアネートとは、イソシアネート基を2つ有する有機化合物である。前記ジイソシアネートは、軸分子であるポリウレア鎖を構成する。また、ポリウレア鎖において、環状分子の可動領域を構成することから、立体障害が小さいジイソシアネートが好ましい。
[式(1)中、nは、繰り返し単位の数を表し、7~180の数である。]
本発明のロタキサンポリウレアは、軸分子であるポリウレア鎖を構成する成分として、前述したロタキサンジアミンとジイソシアネートに加えて、ジアミンおよび/またはジオールなどを構成成分として有しても良い。
本発明のロタキサンポリウレアは、少なくとも1個の環状分子と前記環状分子を貫通しているポリウレア鎖とを有し、前記ポリウレア鎖は、前記環状分子がポリウレア鎖から脱離するのを封鎖する封鎖構造を主鎖中または主鎖末端に有することが好ましい。
二官能基封鎖化合物の割合=100×[二官能基封鎖化合物のモル数/(二官能基封鎖化合物のモル数+ジイソシアネートのモル数+ロタキサンジアミンのモル数)
(1)1H-NMRスペクトルの測定
1H-NMRスペクトルは、重水素化溶媒を用いてBruker Biospin AVANCE DPX-300およびBruker AVANCEIIIHD500により記録した。前記スペクトルは、非重水素化溶媒およびテトラメチルシランを内部標準物質として用いて較正した。
数平均分子量および重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてDMF(LiBr 5mM)、カラムとしてTOSOH TSKgel G2500HとG4000Hカラムセットを備えたJASCO PU-2080システムを用いて、30℃、流速0.85ml/分間の条件で測定した。分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量により算出した。
引張り試験は、50N荷重セルを備えたSHIMADZU AG-ISを用いて、伸長率167%/分間、25℃で測定した。この引張り試験の結果から、引張り物性(ヤング率、破壊ひずみ、破壊応力、破壊エネルギー)を算出した。ヤング率は、0%~10%間のひずみとその応力を用いて算出した。なお、ロタキサンポリウレアからなるシートを、パンチングブレードを用いてダンベル形(60mm)に打抜き、引張り試験用サンプルとした。
1H-NMRの測定結果から、以下のようにして算出した。図10は、下記に示したようにして作製したPU1の1H NMRのデータ(400MHz、298K,DMF-d7)である。ドデカン鎖の-(CH2)10-の積分値は20、PPG鎖中のメチル基aの積分値は3×33×0.9=89.1、嵩高いイソシアナート中のメチル基fの積分値は、3×4×0.1=1.2であり、これらの合計値は20+89.1+1.2=110.3である。この積分値を基準値とする。シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は3.4である。ここで、ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、カバー率を100%と定義する。ドデカン鎖を2つのシクロデキストリンが包接した場合、シクロデキストリンのC(1)Hの積分値は12である。
従って、ドデカン鎖部分のカバー率θ1は、以下のようにして算出される。
θ1=(3.4/12)×100=28%(PU1)
シクロデキストリンは、2つのPPGユニットを包接することができる。すなわち、カバー率θ2=100%の場合、16.5のシクロデキストリンユニットが、ジイソシアネートマクロマー(「NCO-PPG」)を包接する。これに、ドデカン鎖の2個のシクロデキストリンユニットを加えると18.5のシクロデキストリンユニットが存在する。ここで、前記で算出したように、PU1のドデカン鎖部分のシクロデキストリンユニット数は、0.57(=3.4/12×2)となる。
従って、ポリウレア鎖のカバー率θ2は、以下のようにして算出される。
θ2=(0.57/18.5)×100=3.0%(PU1)
(1)ロタキサンジアミン
ロタキサンジアミンは、Eur. J. Org. Chem. 2019, 3605-3613に記載した擬[3] ロタキサンP1の合成方法に従って合成した。具体的には、1,12-ジアミノドデカン(8.8g、44mmol)をα-シクロデキストリン(86g、89mmol)の水(600ml)溶液に添加し、混合液を1時間還流させた後、室温で一晩静置した。ろ過により沈殿を収集し、収集した沈殿を水で洗浄した後、真空乾燥し、白色結晶としてロタキサンジアミン(95g)を得た。
ジイソシアネートマクロモノマーとして、下記式(2)の化合物(以下、「NCO-PPG」と略称する)(メルク社製、Mn=2300)を用いた。なお、この化合物は、オキシプロピレンユニットの平均重合度が33のポリプロピレングリコールの両末端に2,4-トルエンジイソシアネートが反応してなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(3量体)である
ビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタンは、下記のように合成した。トリホスゲン(9.6g、32mmol)をトルエン(300ml)に溶かした溶液に、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(4.5g、15mmol)のトルエン(60ml)溶液を添加し、12時間還流させた。この混合液を室温で冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過して得られたろ過液を蒸発させ、残留物を真空乾燥し、白色固体としてビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(2.8g、7.8mmol)を得た。ビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタンの構造は、下記式(3)に示される。なお、生成物は、精製せずにそのまま次の反応に用いた。
(1)PU1の製造(ワンショット法)
NCO-PPG(9.6g、4.2mmol)とビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(0.17g、0.47mmol)を0℃でDMF(60ml)に溶かした溶液に、擬[3]ロタキサンジアミン(10g、4.7mmol)を添加し、室温で24時間攪拌した。得られた混合液を水に注ぎ込み、沈殿を80℃で真空乾燥し、白色固体としてロタキサンポリウレアPU1(10.5g、収率:53%)を得た。PU1の反応スキームは、図6に示した。得られたロタキサンポリウレアは、ランダム構造を有する。PU1の1H NMRのデータは、下記の通りである。
NCO-PPG(9.6g、4.2mmol)を0℃でDMF(60ml)に溶かした溶液に、擬[3]ロタキサンジアミン(10g、4.7mmol)を添加し1時間反応させた後、ビス(4-イソシアネート-3,5-ジエチルフェ二ル)メタン(0.17g、0.47mmol)を添加し、室温で24時間攪拌した。得られた混合液を水に注ぎ込み、沈殿を80℃で真空乾燥し、白色固体としてロタキサンポリウレアPU2(10.9g、収率:55%)を得た。得られたロタキサンポリウレアは、ランダム構造を有する。
NCO-PPGをDMFに溶かした溶液に、擬[3]ロタキサンジアミンを添加し24時間攪拌した後、封鎖化合物としてビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェ二ル)メタンを使用し、また各原料の配合や使用溶媒を表1の通り変更した以外、PU2の製造と同様にして、各ロタキサンポリウレアPU3~PU7を製造した。PU3~PU7の反応スキームを図7に示した。
封鎖化合物を使用せず、ジイソシアネートとしてさらにMDIを使用し、各原料の配合を表1の通り変更した以外、PU1の製造と同様にして、各ロタキサンポリウレアPU8~PU10を製造した。PU8~PU10の反応スキームを図8に示した。
封鎖化合物を使用せず、擬[3]ロタキサンジアミンとNCO-PPGの当量比を1:0.9から1:1に変更し、またNCO-PPGをDMFに溶かした溶液に、擬[3] ロタキサンジアミンを添加し室温で24時間攪拌した後、反応温度を表1の通り変更しさらに24時間反応した以外、PU1の製造と同様にして、各ロタキサンポリウレアPU11~PU13を製造した。PU11~PU13の反応スキームを図9に示した。
Claims (17)
- 少なくとも1個の環状分子と前記環状分子を貫通しているポリウレア鎖とを有するロタキサンポリウレアであって、
前記ポリウレア鎖は、少なくとも1個の環状分子と前記環状分子を貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンとジイソシアネートとの反応により分子鎖にウレア結合が形成されたものであることを特徴とするロタキサンポリウレア。 - 前記ジイソシアネートは、ジイソシアネートモノマーあるいはジイソシアネートマクロモノマーである請求項1に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記ロタキサンジアミンは、2個の環状分子と、前記2個の環状分子を貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するものである請求項1または2に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記ロタキサンジアミンは、環状分子が炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンから脱離するのを防止する封鎖基を有さないものである請求項1~3のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記ロタキサンジアミンが有する炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンは、ドデカンジアミンである請求項1~4のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記ポリウレア鎖は、前記環状分子がポリウレア鎖から脱離するのを封鎖する封鎖構造を主鎖中または主鎖末端に有する請求項1~5に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記主鎖中の封鎖構造は、前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を二つ有する化合物であって、前記環状分子を立体障害により封鎖する封鎖化合物により形成されている請求項6に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記封鎖化合物は、ジアミン、ジイソシアネート、ジオールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項7に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記主鎖末端の封鎖構造は、前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を一つ有する化合物であって、前記環状分子を立体障害により封鎖する封鎖化合物により形成されている請求項6に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記封鎖化合物は、モノアミン、モノイソシアネート、モノアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項9に記載のロタキサンポリウレア。
- 前記環状分子は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ―シクロデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~10のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレア。
- 請求項1~11のいずれか一項に記載のロタキサンポリウレアのポリウレア鎖の分子鎖に、さらにウレタン結合を有することを特徴とするロタキサンポリウレア・ウレタン。
- 環状分子と前記環状分子を貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンと、前記環状分子を貫通することができるジイソシアネートとを反応させることを特徴とするロタキサンポリウレアの製造方法。
- 環状分子と前記環状分子を貫通している炭素数が6~20の直鎖アルカンジアミンとを有するロタキサンジアミンと、
前記環状分子を貫通することができるジイソシアネートと、
前記ロタキサンジアミンまたはジイソシアネートと反応する官能基を二つ有する化合物であって、前記環状分子を立体障害により封鎖する封鎖化合物とを反応させることにより、
前記環状分子を貫通しているポリウレア鎖を形成することを特徴とするロタキサンポリウレアの製造方法。 - 前記ジイソシアネートとして、ジイソシアネートマクロモノマーを使用する請求項13または14に記載のロタキサンポリウレアの製造方法。
- 前記ジイソシアネートマクロモノマーとして、ジイソシアネートモノマーとポリエーテルジオールとを反応させてなるものを使用する請求項15に記載のロタキサンポリウレアの製造方法。
- 前記封鎖化合物として、ジアミン、ジイソシアネート、ジオールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用する請求項14に記載のロタキサンポリウレアの製造方法。
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