JP7356706B2 - トバモライト含有建材の製造方法、トバモライト及びトバモライト含有建材 - Google Patents

トバモライト含有建材の製造方法、トバモライト及びトバモライト含有建材 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 (1)刊行物名:無機マテリアル学会第137回学術講演会講演要旨集、発行年月日:平成30年11月15日 (2)集会名:無機マテリアル学会第137回学術講演会、開催場所:穂の国とよはし芸術劇場PLAT(アートスペース)(愛知県豊橋市西小田原街123)、開催日:平成30年11月15日
発明は、トバモライト含有建材の製造方法、トバモライト及びトバモライト含有建材に関する。
トバモライト(CaSi16(OH)・4HO)は、ケイ酸カルシウム水和物の一種であり、軽量気泡コンクリート(ALC)やケイ酸カルシウム板(ケイカル板)などの建築材料の原料として広く利用されている。ALCは軽量で断熱性が高いことから、建築物の外壁材として利用され、ケイカル板は、耐火性が高いことから、建築物の内壁材や外壁材として利用されている。
トバモライトは、一般に、カルシウム化合物と二酸化ケイ素と水とを含む含水組成物を水熱合成反応させることによって製造されている。含水組成物には、水熱合成反応を促進させるために硫酸カルシウムなどの硫酸塩を添加することが行なわれている。例えば、特許文献1には、硫酸化合物原料をSO量換算で固体原料の総重量に対して0.15~15重量%含む含水組成物が記載されている。また、特許文献2には、乾燥成分が硫酸ナトリウムを2.62%含む含水組成物が記載されている。
また、トバモライトに対して抗菌性能及び防カビ性能を付与するために、銀、銅、亜鉛などの金属元素を含む金属塩をトバモライトに担持させることが検討されている。特許文献3には、金属塩を担持させる方法として、金属塩を純水に溶解させた後、トバモライトに添加して80℃で真空乾燥させる方法、金属塩を純水に溶解後にチオ硫酸ナトリウムを溶解させて金属錯体とした後、基材に添加して80℃で真空乾燥させる方法が記載されている。
特開2001-122674号公報 特開2014-210709号公報 特開2008-100862号公報
内壁材や外壁材は、人目につきやすいところであるから、長期間にわたって変質しにくいことが望ましい。しかしながらトバモライトは炭酸化による変質が起こりやすい傾向がある。炭酸化とは、トバモライト結晶内のCaO層とSiO層との層間に配置された層間カルシウムが、外部に溶出して炭酸化する現象である。この炭酸化によってトバモライトが変質すると、建材としての見栄えが悪くだけでなく、強度が低下する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、炭酸化が起こりにくいトバモライトを含むトバモライト含有建材の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、炭酸化が起こりにくいトバモライト及びトバモライト含有建材を提供することも、その目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カルシウム化合物と二酸化ケイ素と水とを含む含水組成物に、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛及び硫酸アンモニウムなどの硫酸塩を所定の量で添加し、その含水組成物を160℃以上180℃以下の温度で水熱合成反応させることによって、炭酸化が起こりにくいトバモライトを得ることが可能となることを見出して、本発明を完成させた。
従って、本発明は以下の態様を含む。
[1]水酸化カルシウム及び酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を含有するカルシウム化合物と、二酸化ケイ素と、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の硫酸塩と、水と、を含み、前記カルシウム化合物と前記二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの前記硫酸塩のモル数が、前記硫酸塩が前記硫酸リチウムの場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあり、前記硫酸塩が前記硫酸ナトリウムの場合は、0.57mmol以上1.15mmol以下の範囲内にあり、前記硫酸塩が前記硫酸マグネシウムの場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、前記硫酸塩が前記硫酸亜鉛の場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあり、前記硫酸塩が前記硫酸アンモニウムの場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にある含水組成物を調製する工程と、前記含水組成物を、160℃以上180℃以下の温度で水熱合成反応させる工程と、を有するトバモライト含有建材の製造方法。
[2]前記含水組成物に含まれる前記二酸化ケイ素に対する前記カルシウム化合物のモル比が0.5以上2.0以下の範囲内にある前記[1]に記載のトバモライト含有建材の製造方法。
[3]前記含水組成物に含まれる固形分に対する水分の質量比が1以上50以下の範囲内にある前記[1]又は[2]に記載のトバモライト含有建材の製造方法。
[4]リチウム、ナトリウム、マグネシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素と、カルシウムと、ケイ素とを含み、前記カルシウムと前記ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの前記金属元素のモル数が、前記金属元素が前記リチウムの場合は、1.14mmol以上2.86mmol以下の範囲内にあり、前記金属元素が前記ナトリウムの場合は、1.14mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、前記金属元素が前記マグネシウムの場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、前記金属元素が前記亜鉛の場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあるトバモライト。
[5]前記[4]に記載のトバモライトを含有するトバモライト含有建材。
本発明によれば、炭酸化が起こりにくいトバモライトを含むトバモライト含有建材の製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、炭酸化が起こりにくいトバモライト及びトバモライト含有建材を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るトバモライト含有建材の製造方法のフロー図である。 トバモライトの結晶構造を示す概念図である。 実験例1~5及び比較実験例1~4で作製したケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンである。 実験例1で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 実験例2で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 実験例3で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 実験例4で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 実験例5で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 比較実験例1で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。 実験例1~4及び比較実験例1~4で用いた硫酸塩中の金属のイオン半径と、その硫酸塩を用いて作製したケイ酸カルシウム水和物の炭酸化率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施態様に係るトバモライト含有建材の製造方法、トバモライト及びトバモライト含有建材について説明する。
[トバモライト含有建材の製造方法]
本実施形態において、製造目的物であるトバモライト含有建材は、トバモライトもしくはトバモライトを含む組成物である。トバモライトは、CaSi16(OH)・4HOで表されるケイ酸カルシウム水和物の一種である。トバモライトを含む組成物は、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)である。
図1は、本発明の一実施形態に係るトバモライト含有建材の製造方法のフロー図である。本実施形態のトバモライト含有建材の製造方法は、混合工程S01と、水熱処理工程S02と、ろ過工程S03と、乾燥工程S04とを含む。
混合工程S01は、カルシウム化合物と、二酸化ケイ素と、硫酸塩と、水とを混合して、含水組成物を得る工程である。カルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウムを用いる。カルシウム化合物は、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムのうちの一方を単独で用いてもよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。二酸化ケイ素は、粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内にあることが好ましい。硫酸塩としては、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウムを用いる。これらの硫酸塩は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
混合工程S01において、カルシウム化合物と二酸化ケイ素と硫酸塩と水の混合順序は特に制限はない。例えば、図1のフロー図に示すように、カルシウム化合物、二酸化ケイ素及び水を含む混合物と硫酸塩とを混合してもよい。また、カルシウム化合物及び二酸化ケイ素を含む混合物と硫酸塩水溶液とを混合してもよいし、カルシウム化合物、二酸化ケイ素及び硫酸塩を含む混合物と水とを混合してもよい。
含水組成物中の硫酸塩の添加量は、カルシウム化合物と二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの硫酸塩のモル数として、硫酸塩が硫酸リチウムの場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内(金属元素量として1.14mmol以上2.86mmol以下の範囲内)にあり、好ましくは0.57mmol以上0.86mmol以下の範囲内(金属元素量として1.14mmol以上1.72mmol以下の範囲内)である。硫酸塩が硫酸ナトリウムである場合は0.57mmol以上1.15mmol以下の範囲内(金属元素量として1.14mmol以上2.30mmol以下の範囲内)にあり、好ましくは0.57mmol以上0.86mmol以下の範囲内(金属元素量として1.14mmol以上1.72mmol以下の範囲内)である。硫酸塩が硫酸マグネシウムである場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、好ましくは0.57mmol以上1.71mmol以下の範囲内である。硫酸塩が硫酸亜鉛である場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあり、好ましくは0.70mmol以上1.43mmol以下の範囲内である。硫酸塩が硫酸アンモニウムである場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、好ましくは0.86mmol以上1.43mmol以下の範囲内である。硫酸塩を0.57mmol以上とすることによって、水熱処理工程S02での水熱合成反応を促進させることができる。また、硫酸塩の上限を上記の値とすることによって得られるトバモライトの炭酸化を抑制することができる。硫酸塩を過剰に添加すると、得られるトバモライトの炭酸化が起こりやすくなるおそれがある。
含水組成物に含まれるカルシウム化合物と二酸化ケイ素の含有量は、二酸化ケイ素に対するカルシウム化合物の比(カルシウム化合物/二酸化ケイ素比)として、モル比で0.5以上2.0以下の範囲内にあることが好ましい。カルシウム化合物/二酸化ケイ素比は、0.6以上1.5以下の範囲内にあることが特に好ましい。
製造目的物がALCである場合、含水組成物は、さらに、セメントと発泡剤とを含む。セメントとしては、特に制限はなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントを用いることができる。発泡剤としては、アルミニウムを用いることができる。
製造目的物がケイカル板である場合、含水組成物は、さらに、繊維状補強材を含む。繊維状補強材は、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。有機物の繊維状補強材の例としては、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維等を挙げることができる。無機物の繊維補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維を挙げることができる。
含水組成物に含まれる固形分と水分の含有量は、固形分に対する水分の比(水分/固形分比)として、質量比で1以上50以下の範囲内にあることが好ましい。水分/固形分比は、2以上40以下であることが特に好ましい。
水熱処理工程S02では、含水組成物を水熱処理して、水熱合成反応させることにより、トバモライトを生成させる工程である。
水熱処理は、含水組成物をオートクレーブに入れ、160℃以上180℃以下の温度で加熱することによって行う。加熱温度は、好ましくは162℃以上178℃以下の範囲内であり、特に好ましくは165℃以上175℃以下の範囲内である。水熱処理は、含水組成物を撹拌しながら行うことが好ましい。水熱処理の時間は、水熱処理する含水組成物の量、オートクレーブの容量、加熱温度等の条件によって変動するが、一般に1時間以上40時間以下の範囲内、好ましくは2時間以上20時間以下の範囲内である。
製造目的物がALCやケイカル板である場合は、含水組成物を型枠に収容した状態で、オートクレーブに入れて、水熱処理を行うことが好ましい。製造目的物がALCである場合は、水熱処理によって発泡剤が発泡してALCが生成する。
ろ過工程S03は、水熱処理後の含水組成物を固液分離して、含水組成物から含水固形物(ケーキ)を回収する工程である。固液分離法としては、例えば、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離を用いることができる。ろ過工程の前に、含水組成物を水洗して、含水組成物中の硫酸塩を除去してもよい。
乾燥工程S04は、含水固形物を乾燥することによって、トバモライト含有建材を生成させる工程である。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥を用いることができる。
本実施形態の製造方法によれば、含水組成物が、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の硫酸塩を所定の量で含む。このため、160℃以上180℃以下と比較的低温度で水熱合成反応させることができ、かつ炭酸化が起こりにくいトバモライトを得ることが可能となる。本実施形態の製造方法によって、炭酸化が起こりにくいトバモライトを得られる理由としては、硫酸塩として、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛などの硫酸金属塩を用いた場合は、これらの硫酸金属塩中の金属元素がトバモライトに取り込まれるためであると考えられる。これらの金属元素による効果は後述する。また、硫酸塩として、硫酸アンモニウムを用いた場合は、アンモニウムイオンがトバモライトの結晶性を向上させ、トバモライト結晶内のCaO層とSiO層との層間に配置された層間カルシウムが炭酸化しにくくなるためであると考えられる。
また、本実施形態の製造方法において、含水組成物に含まれる二酸化ケイ素に対するカルシウム化合物の比(カルシウム化合物/二酸化ケイ素比)が、モル比で0.5以上2.0以下の範囲内にある場合は、トバモライトをより安定して生成させることができる。
さらに、本実施形態の製造方法において、含水組成物に含まれる固形分に対する水分の比(水分/固形分比)が、質量比で1以上50以下の範囲内にある場合は、水熱合成反応によりトバモライトをより効率よく生成させることができる。
[トモバライト]
図2は、トバモライトの結晶構造を示す概念図である。図2に示すように、トバモライトは、Ca-Oの8面体配位であるCaO八面体が頂点を共有して連結したCaO層と、Si-Oの4面体配位であるSiO4面体が頂点を共有して連結したSiO層とを含む層状の結晶構造を有する。CaO層とSiO層との層間にはカルシウムイオン(層間カルシウム)が配置されている。この層間カルシウムが、外部に溶出して炭酸化する。
本実施形態のトバモライトは、上述の製造方法によって製造される。本実施形態のトバモライトは、含水組成物に添加された硫酸金属塩に含まれるリチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む。これら金属元素の含有量は、カルシウムとケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの金属元素のモル数として、金属元素がリチウムである場合は、1.14mmol以上2.86mmol以下の範囲内にあり、好ましくは1.14mmol以上1.72mmol以下の範囲内である。金属元素がナトリウムである場合は、1.14mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、好ましくは1.14mmol以上1.72mmol以下である。金属元素がマグネシウムである場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にあり、好ましくは0.57mmol以上1.71mmol以下の範囲内である。金属元素が亜鉛の場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあり、好ましくは0.70mmol以上1.43mmol以下の範囲内である。
本実施形態のトバモライトにおいて、上記の金属元素は、トバモライトの層間カルシウムの一部に置換されていると考えられる。上記の金属元素は、イオン半径がカルシウムよりも小さい。このため、層間カルシウムの一部が上記の金属元素に置換されることによって、CaO層とSiO層との層間の距離が短くなり、層間カルシウムが外部に溶出しにくくなる。このため、本実施形態のトバモライトは、長期間にわたって炭酸化が起こりにくい。
[トモバライト含有建材]
本実施形態のトモバライト含有建材は、上述のトバモライトもしくは上述のトバモライトを含む組成物である。
トバモライトは、例えば、セメントと、砂と、水とを混合して、ペースト状組成物とすることによって、建築物の内壁用塗料や外壁用塗料として利用することができる。
トバモライトを含む組成物としては、例えば、ALC、ケイカル板が挙げられる。
ALCは、軽量で断熱性が高いことから、建築物の外壁材として利用される。ALCは、トバモライトとセメントを含む発泡体である。ケイカル板は、耐火性が高いことから、建築物の内壁材や外壁材として利用されている。ケイカル板はトバモライトと繊維状補強材とを含む組成物である。
本実施形態のトモバライト含有建材は、上述のトバモライトを含むため、トバモライトの炭酸化による変質が起こりにくい。このため、本実施形態のトモバライト含有建材は、人目につきやすい建築物の内壁材や外壁材の材料として有用である。
[実験例1]
水酸化カルシウムと、二酸化ケイ素(粒径:0.8μm)と、純水とを混合して懸濁液を作製した。懸濁液に含まれる二酸化ケイ素に対する水酸化カルシウムの比(水酸化カルシウム/二酸化ケイ素比)はモル比で0.83とし、固形分に対する水分の比(水分/固形分比)は質量比で40とした。得られた懸濁液に、硫酸塩として硫酸リチウムを添加し、混合して含水組成物を作製した。硫酸リチウムの添加量は、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの硫酸リチウムのモル数として、0.57mmol、0.86mmol、1.15mmol、1.43mmol、1.71mmol、2.30mmolとなる量とした。こうして、6種の含水組成物を作製した。
得られた含水組成物をオートクレーブに入れ、420rpmの撹拌速度で撹拌しながら、170℃の温度で水熱処理を5時間行った。水熱処理後の含水組成物を純水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄した後、ろ過した。ろ過により回収した含水固形物を100℃の温度で加熱乾燥して、ケイ酸カルシウム水和物を得た。
[実験例2]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸ナトリウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[実験例3]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸マグネシウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[実験例4]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸亜鉛を用いた。また、硫酸亜鉛の添加量は、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの硫酸亜鉛のモル数が0.70mmol、0.86mmol、1.00mmol、1.43mmol、1.80mmol、2.30mmolとなる量として、6種の含水組成物を作製した。以上のこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[実験例5]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸アンモニウムを用いた。硫酸アンモニウムの添加量は、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの硫酸アンモニウムのモル数が0.86mmol、1.43mmol、2.30mmolとなる量として、3種の含水組成物を作製した。以上のこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[比較実験例1]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸カルシウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[比較実験例2]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸カリウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[比較実験例3]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸ルビジウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[比較実験例4]
硫酸塩として、硫酸リチウムの代わりに、硫酸ストロンチウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にしてケイ酸カルシウム水和物を得た。
[評価]
実験例1~5及び比較実験例1~4で得られケイ酸カルシウム水和物について、X線回折パターン、粒子形状、組成、炭酸化率を下記のようにして評価した。
(1)X線回折パターン
X線回折パターンの測定は、Cu-Kα線を用いて行った。
図3に、実験例1~5及び比較実験例1~4で作製したケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンを示す。なお、図3に示すX線回折パターンは、硫酸塩添加量が1.43mmolの条件で作製したケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンである。
図3のX線回折パターンの測定結果から、実験例1~5及び比較実験例1、2、4で作製したケイ酸カルシウム水和物はいずれもトモバライトであることが確認された。一方、硫酸ルビジウムを用いた比較実験例3で作製したケイ酸カルシウム水和物は低結晶性CSH(ケイ酸カルシウム水和物)であった。なお、硫酸塩添加量が1.43mmolの以外の条件で作製したケイ酸カルシウム水和物について、X線回折パターンを測定した結果、実験例1~5及び比較実験例1、2、4では硫酸塩の添加量に関わらず、作製したケイ酸カルシウム水和物は、全てトモバライトであることが確認された。一方、比較実験例3では、硫酸ルビジウムの添加量が少ないものはトバモライト結晶が生成しており、硫酸ルビジウムの添加量の増加に伴って、トバモライトの結晶性が低下することが確認された。
(2)粒子形状
粒子形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。図4~8に、実験例1~5で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真を、図9に比較実験例1で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真を示す。なお、SEM写真は、硫酸塩添加量が1.43mmolの条件で作製したケイ酸カルシウム水和物のSEM写真である。
図4~9のSEM写真から、実験例1~5及び比較実験例1で作製したケイ酸カルシウム水和物は、いずれも鱗片状粒子を形成していることが確認された。
(3)組成
組成は、EDX(エネルギー分散型X線分析)を用いて分析した。
組成分析の結果、実験例1~5及び比較実験例1~4で作製したケイ酸カルシウム水和物は、いずれも硫黄が検出されなかった。この結果から、含水組成物が硫酸塩を含んでいても、ケイ酸カルシウム水和物には硫酸イオンが混入しにくいことが確認された。また、硫酸金属塩を用いた実験例1~4及び比較実験例1~4で作製したケイ酸カルシウム水和物は、硫酸金属塩に含まれる金属成分の存在は確認できた。
(4)炭酸化率
炭酸化率は、次のようにして測定した。
300cmの純水に、ケイ酸カルシウム水和物を加えて、濃度が1質量%のケイ酸カルシウム水和物懸濁液を調製する。得られたケイ酸カルシウム水和物懸濁液を、30℃のウォータバス中で、撹拌しながら、その懸濁液にCO-N混合ガス(CO濃度:9.9体積%)を140cm/分の流量で1時間吹き込んで、ケイ酸カルシウム水和物を炭酸化させる。炭酸化させたケイ酸カルシウム水和物を、ろ過により、ケイ酸カルシウム水和物懸濁液から回収し、乾燥する。乾燥したケイ酸カルシウム水和物を、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を行って、650~850℃の間での重量減少量を、ケイ酸カルシウム水和物の脱炭酸によるものとして、下記の式より炭酸化率を算出する。
炭酸化率(%)={(650℃でのケイ酸カルシウム水和物の重量-850℃でのケイ酸カルシウム水和物の重量)/650℃でのケイ酸カルシウム水和物の重量}×100
炭酸化率の測定結果を、ケイ酸カルシウム水和物の作製で用いた硫酸塩の種類と硫酸塩中の金属のイオン半径と共に、下記の表1に示す。また、実験例1~4及び比較実験例1~4で用いた硫酸塩中の金属のイオン半径と、その硫酸塩を用いて作製したケイ酸カルシウム水和物の炭酸化率との関係を図10に示す。なお、図10のケイ酸カルシウム水和物の炭酸化率は、表1に示す炭酸化率の最小値である。
Figure 0007356706000001
表1の結果から、含水組成物が、カルシウム化合物と二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときに、硫酸リチウムを0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内で含む実験例1、硫酸ナトリウムを0.57mmol以上1.15mmol以下の範囲内で含む実験例2、硫酸マグネシウムを0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内で含む実験例3、硫酸亜鉛を0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内で含む実験例4、硫酸アンモニウムを0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内で含む実験例5は、含水組成物が硫酸カルシウムを含む比較実験例1と比較して、炭酸化率が大きく低下することがわかる。また、図10のグラフから炭酸化率を低下させる効果は、イオン半径が小さい金属元素の方が高いことがわかる。これは、イオン半径が小さい金属元素が、層間カルシウムと置換することによって、CaO層とSiO層との層間の距離が短くなり、層間カルシウムが外部に溶出しにくくなるためと考えられる。
本発明の製造方法で得られるトバモライト含有建材は、長期間にわたって炭酸化が起こりにくく、変質しにくい。よって、ALCやケイカル板などの内壁材や外壁材に用いられる材料の原料として有用である。また、本発明の製造方法によれば、160℃以上180℃以下と比較的低温度での水熱合成反応によって、トバモライトを生成させることができるので、製造コストを安価にできる。

Claims (5)

  1. 水酸化カルシウム及び酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を含有するカルシウム化合物と、二酸化ケイ素と、硫酸亜鉛又は硫酸アンモニウムのいずれかの硫酸塩と、水と、を含み、前記カルシウム化合物と前記二酸化ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの前記硫酸塩のモル数が、前記硫酸塩が前記硫酸亜鉛の場合は、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあり、前記硫酸塩が前記硫酸アンモニウムの場合は、0.57mmol以上2.30mmol以下の範囲内にある含水組成物を調製する工程と、
    前記含水組成物を、160℃以上180℃以下の温度で水熱合成反応させる工程と、を有するトバモライト含有建材の製造方法。
  2. 前記含水組成物に含まれる前記二酸化ケイ素に対する前記カルシウム化合物のモル比が0.5以上2.0以下の範囲内にある請求項1に記載のトバモライト含有建材の製造方法。
  3. 前記含水組成物に含まれる固形分に対する水分の質量比が1以上50以下の範囲内にある請求項1又は2に記載のトバモライト含有建材の製造方法。
  4. 亜鉛元素、カルシウムと、ケイ素とを含み、前記カルシウムと前記ケイ素の合計モル数を0.18molとしたときの前記亜鉛元素のモル数が、0.57mmol以上1.43mmol以下の範囲内にあるトバモライト。
  5. 請求項4に記載のトバモライトを含有するトバモライト含有建材。
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