JP7356200B2 - バイポーラ膜を用いた電気透析方法 - Google Patents
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Description
バイポーラ膜のこの特殊機能を利用して、カチオン交換膜、さらにはアニオン交換膜をバイポーラ膜とともに電気透析装置に組み込み、電気透析を行うことにより、各種の塩から酸とアルカリとが生成する。従って、このようなバイポーラ電気透析方法は、種々の酸やアルカリの製造に利用されている。
以下の説明において、バイポーラ膜を形成しているカチオン交換膜をカチオン交換体と呼び、バイポーラ膜を形成しているアニオン交換膜をアニオン交換体と呼び、独立して使用されるカチオン交換膜やアニオン交換膜と区別する。
特許文献8には、バイポーラ電気透析を実施するに際して、酸室(または酸塩混合室)に供給する塩水溶液に酸を添加し、塩室のpHを、常時、1未満に保持することにより、多価陽イオンの水酸化物の析出を防止する方法が提案されている。
さらに、特許文献9には、バイポーラ電気透析により有機酸を製造するに際して、通電下、一部の酸室(塩室)にpHが1未満の鉱酸を供給する方法が開示されている。
しかるに、バイポーラ電気透析を長期にわたって連続的に実行していくと、バイポーラ膜に多価金属イオンが検出されるようになり、アルカリ液の品質を低下させるという問題がある。前述した特許文献では、このようなアルカリ液の多価金属イオンによる汚染については何ら言及されておらず、実際、これらの方法では、アルカリ液の品質低下を防止することができない。
本発明の他の目的は、バイポーラ膜でのブリスターの発生も有効に防止されたバイポーラ電気透析方法を提供することにある。
前記陽極と陰極との間に電圧を印加して通電を行いながら、塩水溶液を該電気透析装置内に循環供給することにより電気透析を行って、塩から酸及びアルカリを連続的に生成していくバイポーラ電気透析方法において、
一定時間経過後に前記通電を停止し、前記バイポーラ膜及びカチオン交換膜を該電気透析装置から取り外すことなく、前記アルカリ室を、pHが3.5以下の酸水溶液で酸洗浄し、
酸洗浄後、再び通電を開始して、電気透析を行うことを特徴とするバイポーラ電気透析方法が提供される。
(1)前記電気透析装置が、陽極と陰極との間に、カチオン交換膜とバイポーラ膜とが交互に配置されている二室基本構造を有しており、前記塩水溶液は、該酸室に循環供給されること。
(2)前記電気透析装置が、さらにアニオン交換膜を含み、陽極と陰極との間に、カチオン交換膜、バイポーラ膜及びアニオン交換膜がこの順に配置されており、該アニオン交換膜とカチオン交換膜とにより塩室が形成されている三室基本構造を有しており、前記塩水溶液は、該塩室に循環供給されること。
(3)前記アルカリ室の酸濃度が、前記バイポーラ膜を挟んで該アルカリ室に隣接している酸室の酸濃度よりも高くならない状態を維持しながら、前記酸洗浄を行うこと。
(4)前記酸洗浄にあたり、まず前記酸室に洗浄用の酸を送りこんでから、遅れて前記アルカリ室に洗浄用の酸を送りこむこと。
(5)前記酸洗浄が終了した後に、まず前記アルカリ室の洗浄用の酸を抜き、水洗液に置換した後、遅れて前記酸室の洗浄用の酸を抜き、水洗液に置換すること。
本発明によれば、このようにアルカリ室を酸洗浄することにより、多価金属陽イオンによるバイポーラ膜汚染に起因するアルカリ液の品質低下を有効に防止することができる。
本発明のバイポーラ電気透析方法は、少なくともバイポーラ膜とカチオン交換膜を用いるものであるが、用いる電気透析装置の構造に応じて、二室式(二室基本構造を有するもの)と三室式(三室基本構造を有するもの)とに大別される。図1及び図3には、二室式の電気透析装置の概略構造が示されており、図2及び図4には、三室式の電気透析装置の概略構造が示されている。
二室式の電気透析装置の一例を示す図1を参照して、この装置では、膜としてバイポーラ膜BPとカチオン交換膜Cとが使用される。この装置には、全体として1で示す電気透析槽が設けられており、また、原料である塩の水溶液が収容される塩液タンク3と共に、アルカリ液タンク5及び洗浄用の酸液タンク7が設けられ、これらは、所定の循環配管を介して電気透析槽1の内部の所定の室に、各液が循環されるようになっている。
尚、バイポーラ膜BPは、アニオン交換体a側が陽極10側に面し、カチオン交換体c側が陰極に面するようにして配置される。
尚、この方法では、酸室17に塩水溶液が供給されることから、この酸室17が塩室、或いは酸塩混合室と呼ばれることもある。
また、図1では、酸液タンク7に連なる洗浄用酸液循環配管23は、右側のアルカリ室19cと酸室17cのみに循環連結されているが、実際は、アルカリ室19a、19b及び酸室17a、17bにも循環連結されている。洗浄用酸液循環配管23の一部を省略しているのは、全ての配管を示すと、図が煩雑になり、判り難くなるからである。
尚、図1では、後述する酸洗浄のために、酸洗浄専用の酸液タンク7を設けられている。
三室式の電気透析装置では、膜として、バイポーラ膜BP及びカチオン交換膜Cに加えてアニオン交換膜Aが使用される。
また、アルカリ室19では、二室法の場合と全く同様、カチオンがバイポーラ膜BPから生成した水酸化物イオン(OH-)と結合してアルカリが生成し、アルカリ室19に循環されるアルカリ水溶液のアルカリ濃度は次第に上昇し、一定濃度に上昇した時点で、これを回収することにより、目的とするアルカリを得ることができるわけである。
尚、図2の例では、7が酸洗浄専用に使用される酸が収容される酸液タンクとなっている。
また、図2では、酸液タンク7に連なる洗浄用酸液循環配管23は、右側のアルカリ室19、酸室17-1、17-2のみに循環連結されているが、実際は、左側のアルカリ室19、酸室17-1、17-2にも循環連結されている。図1と同様、洗浄用酸液循環配管23の一部を省略しているのは、全ての配管を示すと、図が煩雑になり、判り難くなるからである。
尚、図1及び図2には示されていないが、アルカリ室19や酸室17(17-2)の酸濃度を調節でき、さらには水洗浄ができるように、アルカリ室19や酸室17(17-2)や塩室17-1には、イオン交換水や水道水などの水を循環できるようにされている。
(1)カチオン交換膜とアニオン交換膜とをポリエチレンイミン-エピクロルヒドリンの混合物で張り合わせ硬化接着する方法(特公昭32-3962号公報);
(2)カチオン交換膜とアニオン交換膜とをイオン交換性接着剤で接着させる方法(特公昭34-3961号公報);
(3)カチオン交換膜とアニオン交換膜とを微粉のイオン交換樹脂、アニオンまたはカチオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物を塗布し圧着させる方法(特公昭35-14531号公報);
(4)カチオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物とからなる糊状物質を塗布し、これに放射線照射することによって製造する方法(特公昭38-16633号公報);
(5)アニオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射架橋させる方法(特公昭51-4113号公報);
(6)イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(特開昭53-37190号公報);
(7)ポリエチレンフィルムにスチレン、ジビニルベンゼンを含浸重合したシート状物をステンレス製の枠にはさみつけ、一方の側をスルホン化させた後、シートを取り外して残りの部分にクロルメチル化、次いでアミノ化処理する方法(米国特許3562139号明細書);
(8)アニオン交換膜とカチオン交換膜との界面を無機化合物で処理し、両膜を接合する方法(特開昭59-47235号公報);
また、カチオン交換膜Cは、重合或いは縮合の何れの方法で得られたものであってもよいし、均質膜或いは不均質膜の何れでもよいし、適宜、補強心材を有していてもよい。また、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂等、公知の樹脂で形成されていてよい。さらには、2N-食塩水溶液を5A/dm2の電流密度で電気透析し、電流効率が70%以上の実質的にカチオン交換膜として機能するものであれば、一般に両性イオン交換膜と称されるものも使用することができる。また、陽極10にカチオン交換膜Cを対面させる場合には、酸に対して耐性の高いフッ素系のカチオン交換膜Cが好適に使用される。
尚、アニオン交換膜は酸を透過させ易い傾向があるので、酸を透過させにくいものを使用することが好適である。
陽極液;
ニッケルまたは鉄-水酸化ナトリウム水溶液
鉛-硫酸水溶液
白金-硫酸または硫酸ナトリウム水溶液
黒鉛-食塩水溶液
陰極液;
ニッケル、鉄またはステンレススチール-水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム
または食塩水溶液
勿論、このバイポーラ電気透析は、有機酸塩の水溶液からの有機酸の製造にも適用することができる。このような有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、トリクロロ酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、モノクロロ酢酸塩、チオグリコロール酸塩、モノクロロ酢酸塩、マロン酸塩、プロピオン酸塩、L-乳酸塩、D-乳酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酪酸塩、フェノール酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ピクリン酸塩、ピコリン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩などを用いることができ、塩を形成するカチオンとしては、Na+、K+、NH4 +などが好適である。
ところで、上述したバイポーラ電気透析においては、当然のことながら、膜の交換などとは別に、膜を装着したままの状態で通電を停止する(即ち、装置の運転を休止する)ことがある。例えば、装置運転後、一定時間が経過して目的とする量の酸或いはアルカリが得られたとき、一旦装置の運転を停止する。
また、装置の運転停止の必要性が生じた場合にも通電が停止される。例えば、プラントの生産計画の都合にあわせて、一定時間の装置運転後に停止される。また、膜の性能低下予防や性能回復の観点から、運転中の電圧を常時監視していて、電圧の異常な上昇が認められた場合に、不純物による膜の汚染を疑って停止することがある。
他方で、運転があまりに長時間経過しても、酸洗浄による、アルカリ液の品質低下の防止効果は十分に発揮されなくなるので、運転時間は100時間を超えない範囲、特には120時間を超えない範囲にするのが効果的である。前記別の基準で示せば、運転時間は、運転中の電圧が初期電圧に対して4倍を超えない範囲、特には5倍を超えない範囲とするのが効果的である。
また、酸水溶液の調整に用いる水(希釈に用いる水)は、例えばイオン交換水、水道水が挙げられる。
ここで、前記アルカリ室の酸濃度が、前記酸室の酸濃度よりも高くならない状態に維持されている時間は、アルカリ室の洗浄の全期間であることが最も好ましいが、ブリスター発生防止の効果に大きく影響しない極短時間、具体的には連続して1分以内程度であれば、上記アルカリ室と酸室の酸濃度の関係が満足されない期間が存在しても、本発明では、実質的には維持されたものとして許容される。
本発明において、上記のような酸洗浄は、通電を停止し、バイポーラ膜BPや、カチオン交換膜C、さらにはアニオン交換膜Aが装着されたままの状態で行われるが、上記の様に、アルカリ室19の酸濃度が酸室17(17-2)の酸濃度を超えないように配慮しながら行われる。
即ち、アルカリ室19の酸洗浄にあたっては、他の室の水洗、酸洗浄も行われるが、液抜き、水洗(水の循環)、洗浄用の酸水溶液の循環などは、アルカリ室19の酸濃度が酸室17(17-2)の酸濃度を超えないように、各配管のバルブなどによりタイミング調整して行われる。これは、二室法も三室法も同じである。
次いで、酸液タンク(或いは洗浄用の酸液タンク)に洗浄用の一定濃度の鉱酸を入れ、酸室17(17-2)に一定濃度の鉱酸(例えば塩酸)を循環させる。これにより、酸室17(17-2)についての酸洗浄が行われ、カチオン交換膜Cに付着しているカルシウムイオンなどの多価金属イオンもしくはその水酸化物が除去される。
尚、上述したプロセスでは、三室式での塩室17-1の液抜き、水洗、酸洗をアルカリ室19と同期して行っているが、塩室17-1については、酸室17-2と同期して液抜き、水洗、酸洗を行うことは可能である。
例えば、本発明方法により製造される製品であるアルカリや酸が収容されるアルカリ液タンク5や酸液タンク25を空にして酸洗浄を行うのは効率的ではない。このため、酸洗浄の専用タンクと連なる洗浄用酸液循環配管23を分岐し、所定のバルブを介して、該配管23を、図3(二室法)では、アルカリ液循環配管21及び塩液循環配管20に接続する。また、図4(三室法)では、この洗浄用酸液循環配管23を、所定のバルブを介して、アルカリ液循環配管21、塩液循環配管20及び製品である酸液が収容される酸液タンク25に連なる酸液循環配管30に接続する。ここで、塩液タンク3,アルカリ液タンク5,酸液タンク25に連なる循環配管20,21,30には、バルブを介して、それぞれ純水が循環されるようにし、酸洗浄とは独立して、各タンク3,5,25を水洗できるようにしておく。このようにして、アルカリタンク5や酸液タンク25を空にすることなく、酸洗浄を行うことも可能である。
以下の膜を用意した。
バイポーラ膜BP;
特開2002-306975号公報の比較例1に開示されている
ブリスターが起こりやすいバイポーラ膜
カチオン交換膜C;
株式会社アストム製CM-2
アニオン交換膜A;
株式会社アストム製ACM
また、膜電位を測定するために、代表して陽極側から4枚目のバイポーラ膜BPおよび6枚目のカチオン交換膜Cの陽極側、陰極側に白金箔を挿入し、それぞれ電圧計をつないだ。
塩液タンク3には2モル/リットルの塩化ナトリウム溶液5リットルを用意し、カルシウムが250ppmとなるように塩化カルシウムを加え、pHが3程度になるように塩酸を加えた。
アルカリ液タンク5には0.1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液5リットルを用意した。
尚、洗浄専用の酸液タンクは設けていない。
このように各タンクに液が収容された状態で、それぞれ6cm/secの線速度で、酸室17-2、塩室17-1及びアルカリ室19に、各タンクから液を循環した。陽極室13、陰極室15には、それぞれ硫酸ナトリウム水溶液5リットル(490gの硫酸ナトリウムを含む)を循環した。
40℃、電流密度8A/dm2で電気透析を行った。
この酸洗浄は、以下の手順を踏んだ。
(1)全室の液抜きを行った。
(2)各タンクを洗浄し純水を入れ、全室に一斉に純水を送り、水運転を5分行った。
(3)酸室17-2だけ水の循環を停止し、水を抜いた。
(4)酸液タンク25に1モル/リットルの、pHが約0の塩酸を入れ循環を再開した。
(5)5分運転後、アルカリ室19、塩室17-1の水循環を停止し、水を抜いた。
(6)アルカリ液タンク5、塩液タンク3に1モル/リットルの、pHが約0の塩酸を入れ循環を再開した。
(7)60分運転後、アルカリ室、塩室の酸循環を停止し酸を抜いた。
(8)アルカリ液タンク5、塩液タンク3に純水を入れ循環を再開した。
(9)5分運転後、酸室17-2の酸循環を停止し酸を抜いた。
(10)酸液タンク25に純水を入れ循環を再開した。
(11)5分運転後、全室の循環を停止し水を抜いた。
運転開始して5分後、カチオン交換膜Cの膜電位は初期まで回復していることを確認した。ここで、この状態で解枠をして、バイポーラ膜BPを10枚とも観察したがブリスターの発生は見られなかった。また、カチオン交換膜も11枚観察したが外観上異常はなかった。
また、陽極側から6枚目のカチオン交換膜C1枚を蛍光X線分析器で元素分析を行ったがカルシウムは検出限界以下であった。
実験例1と同じ種類の膜と電気透析槽を使用し、実験例1と同様の条件で運転を行った。するとやはり3時間程度でカチオン交換膜Cの膜電位が初期の3倍まで上昇した。なお、この時点でバイポーラ膜BPの膜電位に変化は見られなかった。
通電停止後、食塩水でのアルカリ室の洗浄を以下の手順で実施した。
(1)全室の液抜きを行った。
(2)各タンクを洗浄し純水を入れ、全室に一斉に純水を送り、水運転を5分行った。
(3)酸室17-2だけ水の循環を停止し、水を抜いた。
(4)酸液タンク25に、pHが4の食塩水を入れ循環を再開した。
(5)5分運転後、アルカリ室19、塩室17-1の水循環を停止し、水を抜いた。
(6)アルカリ液タンク5、塩液タンク3に、pHが4の食塩水を入れ循環を再開した。
(7)60分運転後、アルカリ室、塩室の食塩水循環を停止し食塩水を抜いた。
(8)アルカリ液タンク5、塩液タンク3に純水を入れ循環を再開した。
(9)5分運転後、酸室17-2の食塩水循環を停止し食塩水を抜いた。
(10)酸液タンク25に純水を入れ循環を再開した。
(11)5分運転後、全室の循環を停止し水を抜いた。
引き続き、前述した運転条件でバイポーラ電気透析を行った。
運転開始して5分後、カチオン交換膜Cの膜電位を測定したところ、初期の約2.7倍までしか回復していなかった。
実験例1と同じ種類の膜と電気透析槽を使用し、実験例1と同様の条件で運転を行った。するとやはり3時間程度でカチオン交換膜Cの膜電位が初期の3倍まで上昇した。なお、この時点でバイポーラ膜BPの膜電位に変化は見られなかった。
通電停止後、以下の手順で酸洗浄を行った。
(1)各タンクから液抜きを行い、次いで純水を入れ、全室に一斉に純水を送り、水運転を5分行った。
(2)アルカリ室19だけ水の循環を停止し、水を抜いた。
(3)アルカリ液タンク5に1モル/リットルの塩酸を入れ循環を再開した。
(4)5分運転後、酸室17-2、塩室17-1の水循環を停止し、水を抜いた。
(5)酸液タンク25、塩液タンク3に1モル/リットルの、pHが約0の塩酸を入れ循環を再開した。
(6)60分運転後、酸室17-2、塩室17-1の酸循環を停止し酸を抜いた。
(7)酸液タンク25、塩液タンク3に純水を入れ循環を再開した。
(8)5分運転後、アルカリ室19の酸循環を停止し酸を抜いた。
(9)アルカリ液タンク5に純水を入れ循環を再開した。
(10)5分運転後、全室の循環を停止し水を抜いた。
運転開始して5分後、陽イオン交換膜Cの膜電位は初期まで回復していることを確認した。しかし、バイポーラ膜BPの膜電位は初期の2倍に上がっていた。この状態で解枠をして、バイポーラ膜BPを観察すると10枚ともブリスターが発生していた。なお、カチオン交換膜Cは11枚とも観察したが外観上異常はなかった。うち陽極側から6枚目のカチオン交換膜C1枚を蛍光X線分析器で元素分析を行ったがカルシウムは検出限界以下であった。
実験例1と同じ種類の膜と電気透析槽を使用し、実験例1と同様の運転条件でバイポーラ電気透析を行った。
するとやはり3時間程度でカチオン交換膜Cの膜電位が初期の3倍まで上昇した。なお、この時点でバイポーラ膜BPの膜電位に変化は見られなかった。
ここで酸洗浄を行わずに解枠して、バイポーラ膜を観察すると外観上異常はなかった。また、陽極側から6枚目の陽イオン交換膜を取り出し、表面を水洗いして蛍光X線分析器で元素分析を行うと、カルシウムが検出された。
この例では、図3に示された二室法の電気透析装置を用いてバイポーラ電気透析を行った。
以下の膜を用意した。
バイポーラ膜BP;
特開2002-306975号公報の比較例1に開示されている
ブリスターが起こりやすいバイポーラ膜
カチオン交換膜C;
株式会社アストム製CMB
なお、カチオン交換膜Cの枚数は11枚、バイポーラ膜BPは10枚とし、各膜の有効膜面積はいずれも0.55dm2である。
また、膜電位を測定するために、代表して陽極側から4枚目のバイポーラ膜BPおよび6枚目のカチオン交換膜Cの陽極側、陰極側に白金箔を挿入し、それぞれ電圧計をつないだ。
アルカリ液タンク5には0.5当量/リットルの水酸化ナトリウム水溶液500ミリリットルを用意した。
洗浄専用の酸液タンク7には0.01当量/リットル、pHが約2の塩酸水溶液5リットルを用意した。
このように各タンクに液が収容された状態で、それぞれ6cm/secの線速度で、酸室17には塩液タンク3から、アルカリ室19にはアルカリ液タンクから液を供給した。陽極室13、陰極室15には、0.1当量/リットルの水酸化ナトリウム水溶液5リットルを循環した。25℃、電流密度8A/dm2で電気透析を開始した。
この酸洗浄は、以下の手順を踏んだ。図3において
(1)全室の液抜きを行った。
(2)各タンク下の出口バルブを閉め、純水バルブを開けて、純水を、塩液循環配管20を経由して酸室17、アルカリ液循環配管21を経由してアルカリ室19に供給した。
(3)酸室17行きの純水バルブを閉め、酸室17および塩液循環配管20の水を抜いた。
(4)洗浄用酸液タンク7から0.01モル/リットルの、pHが約2の塩酸を、洗浄用酸液循環配管23経由で塩液循環配管20に入れ、酸室17の酸洗浄循環を開始した。
(5)5分運転後、アルカリ室19行きの純水バルブを閉め、アルカリ室19およびアルカリ液循環配管21中の水を抜いた。
(6)洗浄用酸液タンク7から0.01モル/リットルの、pHが約2の塩酸を、洗浄用酸液循環配管23経由でアルカリ液循環配管21に入れ、アルカリ室19の酸洗浄循環を開始した。
(7)60分運転後、アルカリ室19の酸洗浄循環を停止し、アルカリ室19およびアルカリ液循環配管21中の酸を抜いた。
(8)アルカリ液循環配管21につながっている純水バルブを開けて純水を供給した。
(9)5分運転後、酸室17の酸洗浄循環を停止し、酸室17および塩液循環配管20中の酸を抜いた。
(10)塩液循環配管20につながっている純水バルブを開けて純水を供給した。
(11)5分運転後、全室への純水供給を停止し、全室と配管の水を抜いた。
運転開始して5分後、カチオン交換膜Cの膜電位は初期まで回復していることを確認した。ここで、この状態で解枠をして、バイポーラ膜BPを10枚とも観察したがブリスターの発生は見られなかった。また、カチオン交換膜も11枚観察したが外観上異常はなかった。
また、陽極側から6枚目のカチオン交換膜C1枚を蛍光X線分析器で元素分析を行ったがカルシウムは検出限界以下であった。
3:塩液タンク
5:アルカリ液タンク
7:酸液タンク(或いは酸洗浄用酸液タンク)
10:陽極
11:陰極
17:酸室
17-1:塩室
17-2:酸室
19:アルカリ室
BP:バイポーラ膜
a:アニオン交換体
c:カチオン交換体
C:カチオン交換膜
Claims (3)
- 一方の面がアニオン交換体であり且つ他方の面がカチオン交換体であるバイポーラ膜と、カチオン交換膜とが、陽極と陰極の間に配置され、該バイポーラ膜は、アニオン交換体側が陽極側に位置するように配置されており、該バイポーラ膜のアニオン交換体側がアルカリ室となっており、該バイポーラ膜のカチオン交換体側が酸室となっている電気透析装置を使用し、
前記陽極と陰極との間に電圧を印加して通電を行いながら、塩水溶液を該電気透析装置内に循環供給することにより電気透析を行って、塩から酸及びアルカリを連続的に生成していくバイポーラ電気透析方法において、
一定時間経過後に前記通電を停止し、前記バイポーラ膜及びカチオン交換膜を該電気透析装置から取り外すことなく、前記アルカリ室を、pHが3.5以下の酸水溶液で酸洗浄し、
酸洗浄後、再び通電を開始して、電気透析を行うと共に、
前記酸洗浄にあたり、まず前記酸室に洗浄用の酸を送りこんでから、遅れて前記アルカリ室に洗浄用の酸を送り込み、これにより、前記アルカリ室の酸濃度が、前記酸室の酸濃度よりも高くならない状態を維持しながら前記酸洗浄が行われ、
前記酸洗浄が終了した後には、まず前記アルカリ室の洗浄用の酸を抜き、該アルカリ室の液を水洗液に置換した後、遅れて前記酸室の洗浄用の酸を抜き、該酸室の液を水洗液に置換すること、
を特徴とするバイポーラ電気透析方法。 - 前記電気透析装置が、陽極と陰極との間に、カチオン交換膜とバイポーラ膜とが交互に配置されている二室基本構造を有しており、前記塩水溶液は、該酸室に循環供給される請求項1に記載のバイポーラ電気透析方法。
- 前記電気透析装置が、さらにアニオン交換膜を含み、陽極と陰極との間に、陽極から陰極へ向かってカチオン交換膜、バイポーラ膜及びアニオン交換膜がこの順に配置されており、
該陽極と陰極に対面する膜がそれぞれバイポーラ膜であり、
該アニオン交換膜とカチオン交換膜とにより塩室が形成されている三室基本構造を有しており、前記塩水溶液は、該塩室に循環供給される請求項1に記載のバイポーラ電気透析方法。
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