以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
(実施例)
図1及び図2に示すように、実施例の車両用スロープロック装置1(以下、単に「ロック装置1」という。)は、本発明の車両用スロープロック装置の具体的態様の一例である。ロック装置1は、基体8及びスロープ5と共に、車両用スロープロックシステム9(以下、単に「ロックシステム9」という。)に備えられている。
本実施例では、ロックシステム9は、車椅子等を搬出入可能な福祉車両C1に適用されている。福祉車両C1は、本発明の「車両」の一例である。図1に示すように、基体8は、福祉車両C1の車体C2における後部開口C3側の一部を構成しており、上面8A及び後端面8Bを有している。上面8Aは後部開口C3に向かって緩やかに下り傾斜する平坦面である。後端面8Bは、上面8Aにおける後部開口C3側の端縁から下向きに略垂直に延びる平坦面である。
以下の説明では、福祉車両C1の後部開口C3側、すなわち図1の紙面左側を後方と規定し、福祉車両C1の左側面側、すなわち図1の紙面奥側を左方と規定する。そして、図2以降の各図に示す前後、左右及び上下の各方向は、全て図1に対応させて表示する。
<ロックシステムの全体構成>
図1及び図2に示すように、ロックシステム9において、基体8は、左右方向において互いに対向する第1壁81及び第2壁82を有している。第1壁81と第2壁82とは、基体8の上面8Aの後端縁に隣接する位置から上向きに突出し、かつ前後方向に延びている。
本実施例では、車椅子等が福祉車両C1の後部開口C3を経由して基体8の上面8A上まで搬入され、また、福祉車両C1内の車椅子等が後部開口C3を経由して福祉車両C1の外部に搬出される場合について説明する。第1壁81と第2壁82とは、車椅子等の搬出入を行うためのゲート8Gを区画している。
スロープ5は、略矩形平板部材である。スロープ5の左右の側面には、軸心X5を中心とする一対の揺動軸5S、5Sが設けられている。軸心X5は、基体8の上面8Aの後端縁から前方かつ上方に若干ずれた位置で左右方向に延びている。両揺動軸5S、5Sは、左右方向において互いに離間するように突出する円柱軸である。左方の揺動軸5Sは、第1壁81の下端部に揺動可能に支持されている。右方の揺動軸5Sは、第2壁82の下端部に揺動可能に支持されている。こうして、スロープ5は、基体8の第1壁81及び第2壁82によって、軸心X5周りに揺動可能に支持されている。
図1に実線で示すスロープ5の位置P1は、保持位置である。スロープ5は、保持位置P1にある状態で、軸心X5から略垂直に起立してゲート8Gを閉鎖する。図2に示すスロープ5の位置も、保持位置P1である。図3~図6に示すストライカ4は、保持位置P1にあるスロープ5に対応している。
図1に二点鎖線で示すスロープ5の位置P2は、展開位置である。スロープ5は、展開位置P2にある状態で、軸心X5から後向きに下り傾斜するように延びる。この状態で、スロープ5は、ゲート8Gを開放するとともに、基体8の後端面8Bよりも後方に片持ち梁状に突出する。そして、スロープ5に内蔵された引出し部5Pを後向きに引出すことにより、引出し部5Pの後端が接地する。これにより、ゲート8Gを経由して車椅子等を搬出入する際に、展開位置P2にあるスロープ5を利用して、車椅子等を好適に移送できる。
図1に二点鎖線で示すスロープ5の位置P3は、収容位置である。スロープ5は、収容位置P3にある状態で、軸心X5から前向きに延びる。この状態で、スロープ5は、ゲート8Gを開放するとともに、基体8の上面8Aに重なる。これにより、手荷物等をゲート8Gを経由して搬出入する際に、収容位置P3にあるスロープ5が手荷物等の搬出入の邪魔になり難い。
スロープ5は、展開位置P2から前向きに揺動して保持位置P1を通過し、収容位置P3に到達することが可能となっている。また、スロープ5は、収容位置P3から後向きに揺動して保持位置P1を通過し、展開位置P2に到達することが可能となっている。
スロープ5が展開位置P2から揺動して保持位置P1を通過する前向きの方向は、本発明の「第1方向」の一例である。スロープ5が収容位置P3から揺動して保持位置P1を通過する後向きの方向は、本発明の「第2方向」の一例である。
図1及び図2に示すように、ロック装置1は、基体8の第1壁81と、スロープ5の左側面との間、及び基体8の第2壁82と、スロープ5の右側面との間に、1個ずつ設けられている。
ロック装置1は、解除操作部6を備えている。解除操作部6は、操作レバー6A及び伝達手段6Cを有している。操作レバー6Aは、第1壁81における左方のロック装置1よりも上方の位置に配置され、第1壁81の後面から後向きに突出している。伝達手段6Cは、操作レバー6Aに対する操作を左右のロック装置1、1に伝達する。
伝達手段6Cは、例えば、伝達ケーブル、伝達ロッド、レバー等の少なくとも1つを含んで構成されている。本実施例では、伝達手段6Cは一例として、図3及び図5に示すように、解除レバー61と、解除レバー61に連結された伝達ロッド6Rとを含んでいる。なお、伝達手段6Cは、伝達ロッド6Rの代わりに、解除レバー61に連結された図示しない伝達ケーブルを含んでいてもよい。
図1及び図2に示すように、解除操作部6が操作されていない状態で、左右のロック装置1、1は、展開位置P2から前向きに揺動して保持位置P1に到達するスロープ5を保持位置P1に保持するとともに、収容位置P3から後向きに揺動して保持位置P1に到達するスロープ5を保持位置P1に保持するようになっている。ロック装置1の具体的構成については後で説明する。
車椅子等の搬出入を行う作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、その操作が伝達手段6Cを介して左右のロック装置1、1に伝達される。その結果、左右のロック装置1、1がスロープ5を保持位置P1に保持しなくなるので、スロープ5は、保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に揺動可能となる。
こうして、このロックシステム9では、作業者が解除操作部6を適宜操作して、スロープ5を展開位置P2、保持位置P1又は収容位置P3に揺動させることで、車椅子等の搬出入を好適に実施可能となっている。
<ロック装置の具体的構成>
次に、ロック装置1の具体的構成について詳しく説明する。左方のロック装置1と右方のロック装置1とは、例えば、勝手違いの同一構成、同じ複数の部品のうちの一部の部品を反対向きに組み付けた構成、大部分の部品が同じであるが一部の部品が異なる構成、等であることにより、同一の作用効果を発揮するようになっている。このため、以下の説明では、左方のロック装置1について説明を行い、右方のロック装置1の説明については省略する。図面についても、図3以降の各図において左方のロック装置1を図示し、右方のロック装置1の図示は省略する。また、以下の説明において、特に説明なく「ロック装置1」と記載する場合、左方のロック装置1のことである。
図2~図6に示すように、ロック装置1は、ストライカ4を備えている。ストライカ4は、鋼製丸棒が略U字形状に折り曲げ加工等されてなる。図2に示すように、ストライカ4は、スロープ5が保持位置P1にある状態でロック装置1の下側に位置するように、スロープ5の側面に固定されている。
図3~図7に示すように、ロック装置1は、ベースプレート91、バックプレート92、ラッチ10、ラッチ固定手段20、捩じりコイルバネ19及び緩衝手段40を備えている。ベースプレート91及びバックプレート92は、本発明の「ベース部材」の一例である。捩じりコイルバネ19は、本発明の「付勢部材」の一例である。
図3、図5及び図7に示すように、ベースプレート91及びバックプレート92はそれぞれ、肉厚の鋼板がプレス加工及び折り曲げ加工等されてなる。
図3及び図7に示すように、ベースプレート91には、2つの取付穴91Hが形成されている。前方の取付穴91Hは、ベースプレート91の前端部を左右方向に貫通している。後方の取付穴91Hは、ベースプレート91の後端部を左右方向に貫通している。
ベースプレート91の下端縁側、かつ前後方向の中間の位置には、ラッチ支持軸10Sの一端部が固定されている。ラッチ支持軸10Sは、左右方向に延びる第1軸心X10を中心とする円柱軸である。
ベースプレート91の上端縁側、かつ前後方向において後方の取付穴91Hに近い位置には、ラチェット支持軸30Sの一端部が固定されている。ラチェット支持軸30Sは、第1軸心X10と平行な第3軸心X30を中心とする円柱軸である。
図5及び図7に示すように、バックプレート92には、2つの取付穴92Hが形成されている。前方の取付穴92Hは、バックプレート92の下部分における前端部を左右方向に貫通している。後方の取付穴92Hは、バックプレート92の下部分における後端部を左右方向に貫通している。
バックプレート92の下部分における前端部と後端部との間には、屈曲部93A、93B及び対向部93が形成されている。屈曲部93Aは、バックプレート92の下部分における後端部から右向きに屈曲している。屈曲部93Bは、バックプレート92の下部分における前端部から右向きに屈曲している。対向部93は、屈曲部93A、93Bのそれぞれの右端部に接続している。対向部93は、前後方向及び上下方向に延びる略平板形状である。
図7に示すように、対向部93におけるラッチ支持軸10Sに対応する位置には、結合穴93Cが左右方向に貫通するように形成されている。対向部93におけるラチェット支持軸30Sに対応する位置には、結合穴93Dが左右方向に貫通するように形成されている。
図7に示すように、ラッチ支持軸10Sの他端部を結合穴93Cに挿入して加締め加工を行うとともに、ラチェット支持軸30Sの他端部を結合穴93Dに挿入して加締め加工を行う。これにより、図5に示すように、ベースプレート91とバックプレート92とが結合される。この状態で、ベースプレート91及びバックプレート92のそれぞれの前後の端部が重なり、各取付穴91Hと各取付穴92Hとが一致する。また、この状態で、バックプレート92の対向部93は、ベースプレート91に対して離間する状態でベースプレート91と対向する。
ベースプレート91及びバックプレート92は、各取付穴91H、92Hに図示しない止めネジが挿入されて、その止めネジが第1壁81に捻じ込まれることによって、基体8の第1壁81に固定されている。この状態で、バックプレート92は、ベースプレート91に対して右方に位置している。
図7に示すように、バックプレート92の対向部93には、バネ規制部99、変位部材規制部94、変位部材支持軸45S、バネ係止部98及びアウターチューブ保持部96が形成されている。
バネ規制部99は、対向部93の中央を貫通する大きな開口93Hの下端縁から左向きに突出する小片である。バネ規制部99は、ラッチ支持軸10Sの真上に配置されている。変位部材規制部94は、対向部93における開口93Hの下端縁であって、バネ規制部99よりも前方にずれた部分から右向きに突出する小片である。
変位部材支持軸45Sは、対向部93における屈曲部93Bに近い部分にその一端部が固定されている。変位部材支持軸45Sは、第1軸心X10と平行な第2軸心X45をを中心とする円柱軸であり、右向きに突出している。バネ係止部98は、対向部93の後端縁から右向きに突出する小片である。
図8~図17では、バックプレート92の図示を省略しているため、バネ規制部99等も図示されていない。
図7に示すように、アウターチューブ保持部96は、対向部93における開口93Hより上方において上向きかつ後向きに傾斜するように突出している。本実施例では、伝達手段6Cは、図3及び図5に示す伝達ロッド6Rを含んでいるので、アウターチューブ保持部96は使用されない。なお、伝達手段6Cが伝達ロッド6Rの代わりに図示しない伝達ケーブルを含む場合、アウターチューブ保持部96は、図示しないブラケット等によってその伝達ケーブルのアウターチューブを保持するようになっている。
図3~図7に示すように、ラッチ10は肉厚の鋼板からなり、複数の切り欠きを有する略円盤形状である。ラッチ10は、ラッチ支持軸10Sに挿通されることにより、第1軸心X10周りに揺動可能にベースプレート91及びバックプレート92に支持されている。
図7に示すように、ラッチ10には、バネ当接部18が設けられている。バネ当接部18は、ラッチ10の右面から右向きに突出する円柱である。バネ当接部18は、第1軸心X10の径方向において、第1軸心X10とラッチ10の外周縁との中間の位置に配置されている。
捩じりコイルバネ19は、ラッチ支持軸10Sに挿通された状態でラッチ10とバックプレート92との間に配置されたコイル部と、そのコイル部から上向きに突出する一端部19A及び他端部19Bとを有している。
捩じりコイルバネ19の一端部19Aの中間部は、バネ当接部18に後から当接可能である。捩じりコイルバネ19の一端部19Aの上端は、バネ規制部99に後から当接可能である。
捩じりコイルバネ19の他端部19Bの中間部は、バネ当接部18に前から当接可能である。捩じりコイルバネ19の他端部19Bの上端は、バネ規制部99に前から当接可能である。
図7に示すラッチ10の位置は、中立位置である。図12及び図15に示すラッチ10の位置も、中立位置である。
図8に示すラッチ10の位置は、図7に示す中立位置から図8の紙面の反時計方向に揺動した位置であって、第1位置である。図3~図6及び図13に示すラッチ10の位置も、第1位置である。
図14に示すラッチ10の位置は、図13に示す第1位置から図14の紙面の反時計方向に、すなわち中立位置とは反対側に揺動した位置である。
図9に示すラッチ10の位置は、図7に示す中立位置から図9の紙面の時計方向に揺動した位置であって、第2位置である。図16に示すラッチ10の位置も、第2位置である。
図17に示すラッチ10の位置は、図16に示す第2位置から図17の紙面の時計方向に、すなわち中立位置とは反対側に揺動した位置である。
つまり、ラッチ10は、第1位置と、第2位置と、第1位置と第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能である。
ラッチ10が図7等に示す中立位置にある状態では、バネ当接部18は、ラッチ支持軸10Sの真上、かつバネ規制部99の真下に位置している。捩じりコイルバネ19は、一端部19Aがバネ当接部18及びバネ規制部99に後から当接し、他端部19Bがバネ当接部18及びバネ規制部99に前から当接することにより、ラッチ10を中立位置に保持する。
図8に示すように、ラッチ10が中立位置から図8の紙面の反時計方向に揺動すると、バネ当接部18及び捩じりコイルバネ19の一端部19Aも、ラッチ10と共に揺動する。その一方、捩じりコイルバネ19の他端部19Bは、バネ規制部99に当接したまま変位しない。これにより、捩じりコイルバネ19は復元力を蓄えて、ラッチ10を図8の紙面の時計方向に、すなわち中立位置に向けて付勢する。
図14に示すように、ラッチ10が第1位置から中立位置とは反対側に揺動した場合、図示は省略するが、捩じりコイルバネ19はより大きな復元力を蓄えて、ラッチ10を中立位置に向けて付勢する。
図9に示すように、ラッチ10が中立位置から図9の紙面の時計方向に揺動すると、バネ当接部18及び捩じりコイルバネ19の他端部19Bも、ラッチ10と共に揺動する。その一方、捩じりコイルバネ19の一端部19Aは、バネ規制部99に当接したまま変位しない。これにより、捩じりコイルバネ19は復元力を蓄えて、ラッチ10を図9の紙面の反時計方向に、すなわち中立位置に向けて付勢する。
図17に示すように、ラッチ10が第2位置から中立位置とは反対側に揺動した場合、図示は省略するが、捩じりコイルバネ19はより大きな復元力を蓄えて、ラッチ10を中立位置に向けて付勢する。
図7に示すように、ラッチ10は、第1凹部11、第2凹部12、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22を有している。第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、ラッチ固定手段20の一部を構成している。
第1凹部11、第2凹部12、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、ラッチ10の外周縁からそれぞれ第1軸心X10の径内方向に凹むように形成されている。
第1被嵌合部21は、第1軸心X10を挟んで第1凹部11とは反対側に配置されている。つまり、第1被嵌合部21は、第1位置に対応するようにラッチ10に設けられている。
第2被嵌合部22は、第1軸心X10を挟んで第2凹部12とは反対側に配置されている。つまり、第2被嵌合部22は、第2位置に対応するようにラッチ10に設けられている。
第1凹部11及び第2凹部12は、左右方向に沿って見て、略U字形状に深く切り欠かれている。第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、左右方向に沿って見て、略矩形状に浅く切り欠かれている。
ラッチ10が中立位置にある状態で、第1凹部11がラッチ10の後方かつ下方の部分に配置され、第2凹部12がラッチ10の前方かつ下方の部分に配置され、第1被嵌合部21がラッチ10の前方かつ上方の部分に配置され、第2被嵌合部22がラッチ10の後方かつ上方の部分に配置されている。
ラッチ10の外周縁には、摺接面15が形成されている。摺接面15は、第1軸心X10を中心とする円弧であり、第1被嵌合部21から第2被嵌合部22まで延びている。
ラッチ10の外周縁には、さらに第1摺接面15A及び第2摺接面15Bが形成されている。第1摺接面15Aは、第1被嵌合部21から第2凹部12まで湾曲しながら延びている。第2摺接面15Bは、第2被嵌合部22から第1凹部11まで湾曲しながら延びている。
ラッチ固定手段20は、上述した第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22と、ラチェット30及び捩じりコイルバネ39とを有している。ラッチ固定手段20は、以下に説明するように、図4、図6及び図8に示す第1固定状態と、図9に示す第2固定状態と、図7に示す解除状態とに切り替わることが可能である。
図4、図6及び図7~図9に示すように、ラチェット30は、肉厚の鋼板からなる略レバー形状の部材である。ラチェット30は、ラチェット支持軸30Sに挿通されることにより、第3軸心X30周りに揺動可能にベースプレート91及びバックプレート92に支持されている。
ラチェット30は、被当接部30D及び嵌合凸部31を有している。被当接部30Dは、ラチェット30におけるラチェット支持軸30Sを囲む部分から上向きに突出するように形成されている。嵌合凸部31は、ラチェット30におけるラチェット支持軸30Sを囲む部分から前方に延びた後にラッチ10の外周縁に向かって下向きに突出する部分の下端部である。嵌合凸部31は、左右方向に沿って見て、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22に整合する略矩形状である。
図7に示すように、捩じりコイルバネ39は、図示しないコイル部がラチェット支持軸30Sに挿通され、そのコイル部から一端部39A及び他端部39Bが後向きに突出している。
捩じりコイルバネ39の一端部39Aは、ベースプレート91におけるラチェット支持軸30Sよりも後方の位置に形成された係止片に係止されている。捩じりコイルバネ39の他端部39Bは、被当接部30Dの後端縁に係止されている
ラチェット30は、図4、図6及び図8~図10に示す第3位置と、図7及び図11に示す第4位置との間で揺動可能である。ラチェット30は、捩じりコイルバネ39によって、第3位置に向けて付勢されている。
図4、図6及び図7に示すように、伝達手段6Cの解除レバー61は、熱可塑性樹脂の射出成形等によって製造された略レバー形状の樹脂製部材である。解除レバー61は、左右方向においてラチェット30とバックプレート92との間に位置する状態でラチェット支持軸30Sに挿通されることにより、第3軸心X30周りに揺動可能にベースプレート91及びバックプレート92に支持されている。
解除レバー61は、当接部61D、ロッド連結穴61R、ケーブル連結穴61C及び伝達部68を有している。図4に示すように、当接部61Dは、解除レバー61におけるラチェット支持軸30Sを囲む部分よりも上方の位置から左向きに突出し、被当接部30Dに前方から当接可能な凸部である。
解除レバー61におけるラチェット支持軸30Sを囲む部分から前方に延びる部分の先端部には、ロッド連結穴61Rが左右方向に貫通するように形成され、その前方に延びる部分の中間部には、ケーブル連結穴61Cが左右方向に貫通するように形成されている。
図6及び図7に示すように、伝達部68は、解除レバー61におけるケーブル連結穴61Cよりも下方に位置する部分から右向きに突出する円柱である。伝達部68は、後述する変位部材45の被伝達部48と共に連動機構60を構成している。
図3及び図5に示すように、ロッド連結穴61Rに伝達ロッド6Rの下端が挿入されることにより、伝達ロッド6Rが解除レバー61に連結されている。なお、伝達手段6Cが伝達ロッド6Rの代わりに図示しない伝達ケーブルを含む場合、その伝達ケーブルのインナーケーブルの一端がケーブル連結穴61Cに連結される。
図3、図4及び図8~図10に示すように、解除操作部6の操作レバー6Aが操作されていない状態では、解除レバー61は初期位置にあって、当接部61Dが第3位置にあるラチェット30の被当接部30Dから離間している。
解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、その操作が伝達ロッド6Rを経由して解除レバー61に伝達され、解除レバー61が初期位置から図8等の紙面の反時計方向に揺動する。これにより、図示は省略するが、当接部61Dが第3位置にあるラチェット30の被当接部30Dに当接する。そして、解除レバー61は、さらに揺動することにより、図7及び図11に示すようにラチェット30を第4位置に揺動させる。
図11に示す解除レバー61及びラチェット30は、図7に示す解除レバー61及びラチェット30の位置から紙面の反時計方向に若干揺動している。つまり、ラチェット30の第4位置は幅を有しており、解除レバー61のストロークも第4位置の幅に応じて設定されている。
図8に示すように、解除レバー61が初期位置にある状態で、ラチェット30の嵌合凸部31がラッチ10の第1被嵌合部21に対向することにより、ラチェット30が捩じりコイルバネ39に付勢されて第3位置に揺動し、嵌合凸部31が第1被嵌合部21に嵌合する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10を第1位置で固定する第1固定状態に切り替わる。
また、図9に示すように、解除レバー61が初期位置にある状態で、ラチェット30の嵌合凸部31がラッチ10の第2被嵌合部22に対向することにより、ラチェット30が捩じりコイルバネ39に付勢されて第3位置に揺動し、嵌合凸部31が第2被嵌合部22に嵌合する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10を第2位置で固定する第2固定状態に切り替わる。
作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作され、図7に示すように、解除レバー61が揺動してラチェット30を捩じりコイルバネ39の付勢力に抗して第4位置に揺動させると、ラチェット30の嵌合凸部31が第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22から離間する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10の揺動を許容する解除状態に切り替わる。
ラチェット30は、図7等に示す第4位置では、ラッチ10の揺動を許容する。解除操作部6が操作されなくなって解除レバー61が初期位置に復帰しても、嵌合凸部31が第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22に対向していなければ、嵌合凸部31が摺接面15、第1摺接面15A又は第2摺接面15Bに当て止まるので、ラチェット30が第4位置に維持される。そして、嵌合凸部31が摺接面15、第1摺接面15A又は第2摺接面15Bに摺接することにより、ラチェット30は、ラッチ10の揺動を許容する。
緩衝手段40は、図4~図7、図10及び図11に示す変位部材45と、図5に示す引っ張りコイルバネ49とを有している。図8、図9及び図12~図17では、変位部材45の一部を二点鎖線で図示している。引っ張りコイルバネ49は、本発明の「弾性部材」の一例である。
図6及び図7に示すように、変位部材45は、中間部45C、一端部45A及び他端部45Bを有している。
中間部45Cには、挿通穴45Hが左右方向に貫通するように形成されている。また、中間部45Cには、バネ係止部45Tが形成されている。バネ係止部45Tは、中間部45Cにおける挿通穴45Hから上方かつ後方にずれた位置から右向きに突出する小片である。
一端部45Aは、中間部45Cから上向きに延びた後に屈曲し、解除レバー61の伝達部68に上から対向する位置で、後向きに上り傾斜している。一端部45Aにおける後向きに上り傾斜する部分は、断面略L字形状に曲げ加工されており、その下向きの傾斜面を形成する平板部分によって、被伝達部48が形成されている。被伝達部48は、解除レバー61の伝達部68と共に連動機構60を構成している。換言すると、連動機構60は、緩衝手段40の変位部材45と、解除操作部6の解除レバー61との間に設けられている。
他端部45Bは、中間部45Cから後向きに下り傾斜した後に屈曲し、後向きに上り傾斜している。本実施例では、変位部材45は、金属部材であって、他端部45Bが樹脂コーティングされている。他端部45Bには、緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42が形成されている。
図5に示すように、変位部材45は、挿通穴45Hに変位部材支持軸45Sが挿入され、変位部材支持軸45Sの他端が加締められることによって、第2軸心X45周りに揺動可能にバックプレート92に支持されている。
引っ張りコイルバネ49の一端は、変位部材45のバネ係止部45Tに係止されている。引っ張りコイルバネ49の他端は、バックプレート92のバネ係止部98に係止されている。これにより、変位部材45は、引っ張りコイルバネ49によって、図10等の紙面の反時計方向に揺動するように付勢されている。そして、変位部材45は、図5及び図7に示す変位部材規制部94に当て止まることにより、図10、図12及び図15に示す位置に保持される。
図12に示すように、緩衝基部43は、変位部材45における下向きの山形状に屈曲する他端部45Bの最下端よりも後方にずれた部分に形成されている。
第1緩衝部41は、緩衝基部43に後方から隣接する位置に設けられ、緩衝基部43に一体に形成されている。第2緩衝部42は、緩衝基部43に第1緩衝部41とは反対側から、すなわち前方から隣接する位置に設けられ、緩衝基部43に一体に形成されている。
図10に示すように、解除操作部6の操作レバー6Aが操作されておらず解除レバー61が初期位置にある状態では、変位部材45の被伝達部48が解除レバー61の伝達部68に対して上方に離間している。この状態において、第1凹部11又は第2凹部12にストライカ4が収容されておらず、変位部材45が変位部材規制部94に当て止まっている場合には、ラッチ10の第1凹部11及び第2凹部12と、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42との位置関係が図12及び図15に示すようになっている。
図13及び図16に示すように、第1凹部11又は第2凹部12にストライカ4が収容された状態では、変位部材45が図13及び図16の紙面の時計方向に揺動し、ストライカ4に当接する。
解除操作部6の操作レバー6Aが操作されて解除レバー61が図10に示す初期位置から図10の紙面の反時計方向に揺動すると、解除レバー61の伝達部68が変位部材45の被伝達部48に当接して押し上げ、解除レバー61の揺動を変位部材45に伝達する。これにより、変位部材45が図10の紙面の時計方向に揺動し、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42が第1凹部11又は第2凹部12から離れる方向に、すなわち上向きに変位する。
そして、図11に示すように、解除操作部6の解除レバー61がラチェット30を第4位置に揺動させたときに、緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42が第1凹部11又は第2凹部12から完全に離れる位置に変位する。図14及び図17に示す緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42も、第1凹部11又は第2凹部12から完全に離れる位置にある。
つまり、連動機構60は、解除操作部6がラッチ固定手段20を解除状態に切り替える動作に連動して変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42をストライカ4から離れる方向に変位させる。そして、連動機構60は、解除レバー61が図11に示すようにラチェット30を第4位置に揺動させたときに、緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42をストライカ4から完全に離れる位置に変位させる。
図13及び図16に示すストライカ4の位置は、スロープ5が保持位置P1にある状態に対応している。ストライカ4は、図13及び図16の紙面よりも下方に位置する軸心X5周りに大きな円弧状の軌跡を描いて、図13及び図16の紙面の左右方向に変位する。
変位部材45において、緩衝基部43は、スロープ5が保持位置P1にあるときに、ユーザによる操作レバー6Aの操作が無く、連動機構60が作動していなければストライカ4に上から当接し、引っ張りコイルバネ49の付勢力によってストライカ4に押圧されるようになっている。
第1緩衝部41は、図12及び図13に示すように、スロープ5が保持位置P1に向かって前向きに揺動するときに、ユーザによる操作レバー6Aの操作が不要であって連動機構60が作動していないため、ストライカ4に上から当接し、引っ張りコイルバネ49の付勢力によってストライカ4に押圧されるようになっている。
第2緩衝部42は、図15及び図16に示すように、スロープ5が保持位置P1に向かって後向きに揺動するときに、ユーザによる操作レバー6Aの操作が不要であって連動機構60が作動していないため、ストライカ4に上から当接し、引っ張りコイルバネ49の付勢力によってストライカ4に押圧されるようになっている。
第1緩衝部41は、図16及び図17に示すように、スロープ5が保持位置P1から後向きに揺動するときに、例えばユーザが操作レバー6Aを操作してラッチ固定手段20を解除状態に切り替えた直後に操作レバー6Aから手を離すことによって連動機構60が作動しなくなれば、図17に二点鎖線で示す位置から下向きに変位してストライカ4に上から当接し、引っ張りコイルバネ49の付勢力によってストライカ4に押圧されるようになっている。
第2緩衝部42は、図13及び図14に示すように、スロープ5が保持位置P1から前向きに揺動するときに、例えばユーザが操作レバー6Aを操作してラッチ固定手段20を解除状態に切り替えた直後に操作レバー6Aから手を離すことによって連動機構60が作動しなくなれば、図14に二点鎖線で示す位置から下向きに変位してストライカ4に上から当接し、引っ張りコイルバネ49の付勢力によってストライカ4に押圧されるようになっている。
こうして、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42は、連動機構60が作動していなければストライカ4に抵抗を作用させる一方、連動機構60が作動すればその抵抗を低下させ、又はゼロにするようになっている。
<スロープの揺動に伴うロック装置の動作>
次に、スロープ5の揺動に伴うロック装置1の動作について詳しく説明する。スロープ5が図1に示す展開位置P2又は収容位置P3にある状態では、ラッチ10は中立位置にある。
この状態では、スロープ5が展開位置P2から保持位置P1に向けて前向きに揺動するのに伴って、図12に示すように、前向きに変位するストライカ4が第1凹部11に進入可能である。また、この状態では、スロープ5が収容位置P3から保持位置P1に向けて後向きに揺動するのに伴って、図15に示すように、後向きに変位するストライカ4が第2凹部12に進入可能である。
<スロープが展開位置から保持位置に向けて前向きに揺動する場合>
図12に示すように、前向きに変位するストライカ4が第1凹部11に進入すると、そのストライカ4に押されてラッチ10が図12に示す中立位置から図13に示す第1位置に揺動する。このため、ラッチ固定手段20が図7に示す解除状態から図8に示す第1固定状態に切り替わる。その結果、第1凹部11がストライカ4を前後から当て止める。
また、この際、図12及び図13に示すように、緩衝手段40の第1緩衝部41は、前向きに変位するストライカ4に当接して抵抗を作用させることで衝撃を吸収する。そして、緩衝手段40の緩衝基部43は、スロープ5が保持位置P1にある状態でストライカ4に当接して抵抗を作用させることによって、ストライカ4のがたつきを抑制する。
スロープ5が保持位置P1に保持された状態で、作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、ラッチ固定手段20が解除状態に切り替わってラッチ10の揺動を許容するとともに、連動機構60が作動する。
これにより、ストライカ4が第1凹部11から離脱可能となる。また、連動機構60によって、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42がストライカ4から離れる方向に変位し、ストライカ4に対する抵抗を低下させ、又はゼロにする。
作業者が操作レバー6Aを操作したままスロープ5を保持位置P1から前向きに動かすことによりストライカ4が図13に示す位置から前向きに変位する場合、図14に示すように、ラッチ10が図14の紙面の反時計方向に揺動して、ストライカ4が第1凹部11から前方に離脱する。この際、変位部材45の緩衝基部43及び第2緩衝部42からの抵抗が低下し、又はゼロとなるので、ストライカ4は、スムーズに前方に変位できる。ストライカ4が前方に離脱した後、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図12に示す中立位置に復帰する。
作業者が操作レバー6Aを操作したままスロープ5を保持位置P1から後向きに動かすことによりストライカ4が図13に示す位置から後向きに変位する場合、図12に示すように、ラッチ10が図12の紙面の時計方向に揺動して中立位置に復帰しようとする。この際、変位部材45の緩衝基部43及び第1緩衝部41からの抵抗が低下し、又はゼロとなるので、ストライカ4は、スムーズに後方に変位できる。ストライカ4が後方に離脱した後、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図12に示す中立位置に復帰する。
<スロープが収容位置から保持位置に向けて後向きに揺動する場合>
図15に示すように、後向きに変位するストライカ4が第2凹部12に進入すると、そのストライカ4に押されてラッチ10が図15に示す中立位置から図16に示す第2位置に揺動する。このため、ラッチ固定手段20が図7に示す解除状態から図9に示す第2固定状態に切り替わる。その結果、第2凹部12がストライカ4を前後から当て止める。
また、この際、図15及び図16に示すように、緩衝手段40の第2緩衝部42は、後向きに変位するストライカ4に当接して抵抗を作用させることで衝撃を吸収する。そして、緩衝手段40の緩衝基部43は、スロープ5が保持位置P1にある状態でストライカ4に当接して抵抗を作用させることによって、ストライカ4のがたつきを抑制する。
スロープ5が保持位置P1に保持された状態で、作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、ラッチ固定手段20が解除状態に切り替わってラッチ10の揺動を許容するとともに、連動機構60が作動する。
これにより、ストライカ4が第2凹部12から離脱可能となる。また、連動機構60によって、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42がストライカ4から離れる方向に変位し、ストライカ4に対する抵抗を低下させ、又はゼロにする。
作業者が操作レバー6Aを操作したままスロープ5を保持位置P1から後向きに動かすことによりストライカ4が図16に示す位置から後向きに変位する場合、図17に示すように、ラッチ10が図17の紙面の時計方向に揺動して、ストライカ4が第2凹部12から後方に離脱する。この際、変位部材45の緩衝基部43及び第1緩衝部41からの抵抗が低下し、又はゼロとなるので、ストライカ4は、スムーズに後方に変位できる。ストライカ4が後方に離脱した後、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図15に示す中立位置に復帰する。
作業者が操作レバー6Aを操作したままスロープ5を保持位置P1から前向きに動かすことによりストライカ4が図16に示す位置から前向きに変位する場合、図15に示すように、ラッチ10が図15の紙面の反時計方向に揺動して中立位置に復帰しようとする。この際、変位部材45の緩衝基部43及び第2緩衝部42からの抵抗が低下し、又はゼロとなるので、ストライカ4は、スムーズに前方に変位できる。ストライカ4が前方に離脱した後、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図15に示す中立位置に復帰する。
<作用効果>
実施例のロック装置1では、ラッチ固定手段20は、図8に示すように、第1凹部11にストライカ4が進入したラッチ10を第1位置で固定する第1固定状態と、図9に示すように、第2凹部12にストライカ4が進入したラッチ10を第2位置で固定する第2固定状態と、図7に示すように、ラッチ10の揺動を許容する解除状態とに切り替わる。この構成により、スロープ5が保持位置P1から展開位置P2と収容位置P3とに向けて移動することを確実性高く規制できる。
この際、このロック装置1では、ストライカ4に当接可能な緩衝手段40によって、ラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12に対するストライカ4のがたつきを抑制することができる。その結果、福祉車両C1の走行時に、スロープ5が保持位置P1で振動することを抑制でき、ストライカ4がラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12に繰り返し当たることを抑制できる。
したがって、実施例のロック装置1では、スロープ5を保持位置P1に保持する保持性能の向上と、福祉車両C1の走行時における雑音及び振動の低減とを実現できる。
さらに、このロック装置1では、連動機構60は、解除操作部6がラッチ固定手段20を解除状態に切り替える動作に連動して緩衝手段40をストライカ4から離れる方向に変位させる。これにより、ユーザがスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させるときに、緩衝手段40からストライカ4に作用する抵抗を低下させたり、ゼロにしたりすることができる。その結果、ユーザが小さい力でスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させることができるので、利便性の向上を実現できる。
また、このロック装置1では、スロープ5が展開位置P2から保持位置P1に向けて前向きに、又は収容位置P3から保持位置P1に向けて後向きに揺動するときに、揺動するラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12が選択的にストライカ4を前後から当て止めることにより、スロープ5が保持位置P1から展開位置P2と収容位置P3とに向けて移動することを確実性高く規制できる。
この際、このロック装置1では、緩衝手段40の一部を構成する変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42によって、ストライカ4がラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12に進入する際の衝撃を弱めることができる。また、スロープ5が保持位置P1にある状態で緩衝手段40の緩衝基部43がストライカ4に当接することによって、ストライカ4の前後方向のがたつきを確実性高く抑制できる。その結果、福祉車両C1の走行時に、スロープ5が保持位置P1で振動することを抑制でき、ストライカ4がラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12に繰り返し当たることを抑制できる。
したがって、実施例のロック装置1では、スロープ5を保持位置P1に保持する保持性能の向上と、福祉車両C1の走行時における雑音及び振動の低減とを実現できる。
さらに、このロック装置1では、図10及び図11に示すように、連動機構60は、解除操作部6がラッチ固定手段20を解除状態に切り替える動作に連動して緩衝手段40をストライカ4から離れる方向に変位させる。より詳しくは、解除操作部6の操作レバー6Aが操作されて解除レバー61が図10に示す初期位置から図10の紙面の反時計方向に揺動すると、解除レバー61の伝達部68が変位部材45の被伝達部48に当接して押し上げ、解除レバー61の揺動を変位部材45に伝達する。これにより、変位部材45が図10の紙面の時計方向に揺動し、変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42が第1凹部11又は第2凹部12から離れる方向に、すなわち上向きに変位する。これにより、ユーザがスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させるときに、緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42からストライカ4に作用する抵抗を低下させたり、ゼロにしたりすることができる。その結果、ユーザが小さい力でスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させることができるので、利便性の向上を実現できる。
また、このロック装置1では、図11に示すように、連動機構60は、解除操作部6がラッチ固定手段20を解除状態に切り替える動作に連動して変位部材45の緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42をストライカ4から完全に離れる位置に変位させる。つまり、ラッチ固定手段20が解除状態に切り替わったときに緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42がストライカ4から完全に離れるので、ユーザがスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させるときに、緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42からストライカ4に作用する抵抗をゼロにできる。その結果、ユーザが一層小さい力でスロープ5を保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に変位させることができるので、利便性の一層の向上を実現できる。
さらに、このロック装置1では、図5に示すように、変位部材45と引っ張りコイルバネ49との役割分担によって、緩衝手段40がラッチ10とストライカ4とに作用する衝撃を好適に抑制できるとともに、引っ張りコイルバネ49の付勢力によって、変位部材45を元の位置に確実に復帰させることができる。また、変位部材45は金属部材であって、他端部45Bが樹脂コーティングされているので、変位部材45がストライカ4との当接によって摩耗や変形することを抑制できる。さらに、引っ張りコイルバネ49がストライカ4と当接せず、ラッチ10とストライカ4とに作用する衝撃を直接受けないので、引っ張りコイルバネ49の破損を抑制できる。その結果、このロック装置1は、耐久性の向上を実現できる。
また、このロック装置1では、図10及び図11に示すように、連動機構60は、解除レバー61に設けられた伝達部68と、変位部材45に設けられ、伝達部68に当接することにより解除レバー61の揺動を変位部材45に伝達する被伝達部48と、を有している。この構成により、ラチェット30が第4位置に到達するタイミングよりも前において、変位部材45に形成された緩衝基部43、第1緩衝部41及び第2緩衝部42がストライカ4から離れる方向に変位し始めるタイミングを容易に調整できる。また、ラチェット30は、ラッチ10を固定するための強度が必要であるので金属製となっており、解除レバー61は、ラチェット30及び変位部材45を揺動させるだけであるので樹脂製となっている。このため、樹脂製である解除レバー61に伝達部68を設けることにより、仮に伝達部68と同様の伝達部を金属製のラチェット30に設ける場合と比較して、ラチェット30の大型化及び重量増加を抑制できる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
実施例では、緩衝手段40が変位部材45と引っ張りコイルバネ49とを有しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、緩衝手段がゴムブロック等の弾性体であり、連動機構が作動することによってストライカから離れる方向に直動又は揺動してもよい。また、変位部材が直動してもよい。
実施例では、伝達部68が解除レバー61に設けられているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、伝達部がラチェットに設けられていてもよい。
実施例では、スロープ5が軸心X5を中心とする円弧状の軌跡を描いて変位するように基体8に支持されているが、この構成には限定されない。例えば、スロープは、リンク機構やガイド機構等によって、円弧とは異なる軌跡を描いて変位するように基体8に支持されていてもよい。
実施例では、ラチェット30が揺動するがこの構成には限定されない。ラチェットは、例えば直動してもよい。
実施例では、ストライカ4がスロープ5に固定され、ベースプレート91及びバックプレート92が基体8に固定されているがこの構成には限定されない。ストライカが基体に固定され、ベース部材がスロープに固定されている構成も本発明に含まれる。
実施例の左右2つのロック装置1、1のそれぞれについて、上下の向きを実施例とは逆にした構成も本発明に含まれる。
実施例では、左右2つのロック装置1、1でスロープ5を保持位置P1に保持するがこの構成には限定されない。例えば、左方のロック装置1を無くして右方のロック装置1のみでスロープ5を保持位置P1に保持する構成や、その逆の構成も本発明に含まれる。また、スロープ5における軸心X5から遠い位置で軸心X5と平行に延びる端縁に1つのストライカ4を設け、1つのロック装置1を保持位置P1に到達したスロープ5の上方に位置するように基体8に設ける構成も本発明に含まれる。