この種の固体酸化物形燃料電池システムではセルスタックの作動温度が700~900℃と高温であり、このような高温状態にて高い発電性能を持たせる必要があることから、燃料極としては、例えば金属状態のニッケルと電解質材料である安定化ジルコニアの混合物が用いられ、また酸素極(空気極)としては、例えばランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)やランタンマンガナイトが用いられる。このような燃料極材料は還元雰囲気でしか安定せず、また酸素極材料は酸化雰囲気でしか安定せず、そのために、システムの起動、発電、停止において、燃料極側には常に還元性のガスが流れ、酸素極側(空気極側)には酸素を含む酸化剤ガス(空気)が流れるようになっている。
この固体酸化物形燃料電池システムでは一般的課題として、システムをシャットダウン停止する、例えば発電中に直ちに遮断弁を閉じて緊急停止なければならないようなシャットダウン動作(例えば、システムの故障、システムへの燃料ガスの供給遮断、各種センサの異常検知などのときに行われる動作)を行う場合、セルスタックへの悪影響が生じるおそれがある。尚、この明細書全体を通して、「シャットダウン停止」とはセルスタックの高温状態(例えば、500℃以上)のときに燃料ガスの供給流量をゼロ(零)にする停止をいう。
シャットダウン停止を行う場合、セルスタックの燃料極側においては、次のよう問題が生じる。この燃料極は、例えば金属状態のニッケルと電解質材料である安定化ジルコニアの混合物が用いられており、それ故に、シャットダウン停止して燃料ガスの供給が停止すると、セルスタックの酸素極側や排気ガス排出流路からの空気が燃料極側(その出口側)に到達するおそれがある。セルスタックの温度が高い(例えば、400℃以上)状態において燃料極側に空気が達すると、燃料極中のニッケルの一部(その粒子表面から)が酸化して酸化ニッケルになる。
この燃料極側の酸化は、シャットダウン停止後の通常の起動において改質燃料ガス(還元性ガス)が流れることによって還元状態である金属ニッケルに戻るようになるが、こうした酸化、還元の酸化深さ、回数によって燃料極の微構造や寸法に変化が生じ、これらのことに起因して、電極性能の劣化、燃料極と接している固体電解質のクラック発生などの問題が生じることがある。
また、セルスタックの酸素極側(空気極側)においては、次のような問題が生じる。酸素極側には酸素を含む酸化剤ガス(空気)が流れるようになっているが、シャットダウン停止時には酸化剤ガス(空気)の供給も同時に停止することが行われる(燃料ガスの供給停止状態でセルスタックへの空気供給を続けると、結果的に出口側から燃料極への酸素供給となり、燃料極側で上述した問題が起こり易くなるためである。)。
セルスタックの高温状態(例えば、700℃前後)において、燃料ガス及び酸化剤ガス(空気)の供給を停止させると、次のようなことが発生する。燃料ガス供給系には気化器(水蒸気発生器)が存在しており、システムがシャットダウン停止したときには、この気化器内に改質用水が残存している。気化器に熱を与えるための燃焼器は、シャットダウン停止時には燃焼を止めるが、この気化器の周囲温度は充分に高いので、燃料ガスがない状態で燃料ガス供給系(主として気化器)にて水蒸気が発生する。その結果、少しの燃料ガスを含む水蒸気がスタックの燃料極側を通って燃焼器に流れることになる。
このように燃焼器に流れる燃料ガス混じりの水蒸気は、そのまま排気ガス排出流路を通して外部に排出されれば問題はないが、実際には、この水蒸気は、排気ガス排出流路及び酸化材オフガス送給流路(セルスタックの酸素極側と燃焼器とを接続する流路)に分配され、これらの流れやすい方に多く分配されて流れることになる。
セルスタックの酸素極側(空気極側)に燃料ガス混じりの水蒸気が高温(例えば、500℃以上)で到達すると、酸素極側材料であるLSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)電極(固体酸化物形燃料電池セルの代表的な酸素極材料である例えばペロブスカイト型酸化物)が還元を受け、この酸素極の一部が還元作用を受けると、LSCFが膨張し、その程度によっては酸素極層(LSCF層)にクラックが生じたり、この酸素極層が固体電解質から部分的に剥離し、このクラックや剥離は一度起こると不可逆な大きな劣化につながることになる。
本発明の目的は、シャットダウン停止時に発生しやすい酸素極側の劣化を抑えることができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、改質用水を気化させるための気化器と、前記気化器からの水蒸気を用いて燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの酸化及び還元によって発電を行うセルスタックと、前記酸化剤ガスを酸化剤ガス供給流路を通して前記セルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを燃料ガス供給流路を通して前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、前記燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すためのリサイクル流路と、を備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記酸化剤ガス供給手段からの前記酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの前記燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収され、前記水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された前記燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が前記燃焼器に送給され、前記セルスタックの前記酸素極側からの酸化材オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記気化器、前記改質器、前記セルスタック及び前記燃焼器が高温空間を規定するための高温ハウジング内に収容され、更に、システムのシャットダウン停止時に前記燃焼器内の還元性ガスが前記セルスタックの前記酸素極側に流入するのを防止するための還元性ガス流入防止手段が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記還元性ガス流入防止手段は、前記酸化剤ガス供給手段又は前記酸化剤ガス供給流路に配設された逆流防止構造体から構成され、前記逆流防止構造体は、前記システムのシャットダウン停止時に前記酸化剤ガス供給手段又は前記酸化剤ガス供給流路における前記酸化剤ガスの逆流を防止し、これによって、前記燃焼器から前記セルスタックの前記酸素極側への前記還元性ガスの流入が防止されることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記還元性ガス流入防止手段は、前記酸化剤ガス供給手段又は前記酸化剤ガス供給流路に配設された酸化剤ガス流量検知手段と、前記酸化剤ガス供給手段を作動制御して前記酸化剤ガスの逆流を防止するための逆流防止制御手段とから構成され、前記システムのシャットダウン停止時に前記酸化剤ガス流量検知手段が前記酸化剤ガスの逆流を検知すると、前記逆流防止制御手段は、前記酸化剤ガス流量検知手段からの検知信号に基づいて前記酸化剤ガス供給手段を作動制御して前記酸化剤ガスを前記セルスタックの前記酸素極側に供給し、これによって、前記燃焼器から前記セルスタックの前記酸素極側への前記還元性ガスの流入が防止されることを特徴とする。
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段が更に設けられ、前記酸化剤ガス流量検知手段が前記酸化剤ガスの逆流を検知し且つ前記温度検知手段が前記セルスタックの高温度を検知すると、前記逆流防止制御手段は前記酸化剤ガス供給手段を作動制御して前記酸化剤ガスを前記セルスタックの前記酸素極側に供給し、これによって、前記燃焼器から前記セルスタックの前記酸素極側への前記還元性ガスの流入が防止されることを特徴とする。
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記還元性ガス流入防止手段は、前記セルスタックの前記酸素極側からの前記酸化材オフガスを前記燃焼器に送給する酸化材オフガス送給流路に配設された還元性ガス吸着材から構成され、前記還元性ガス吸着材は、前記システムのシャットダウン停止時に前記燃焼器から前記セルスタックの前記酸素極側に流れる前記還元性ガスを吸着し、これによって、前記燃焼器から前記セルスタックの前記酸素極側への前記還元性ガスの流入が防止されることを特徴とする。
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料ガス(例えば、都市ガス)は改質器にて気化器からの水蒸気を用いて水蒸気改質され、この改質器からの改質燃料ガスがセルスタックの燃料極側に送給され、酸化剤ガス供給手段からの酸化剤ガス(例えば、空気)がセルスタックの酸素極側に送給され、セルスタックの燃料極側からの燃料オフガスに含まれる水蒸気が水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収される。また、水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された燃料オフガスの一部がリサイクル流路を通して燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が燃焼器に送給され、セルスタックの酸素極側からの酸化材オフガス(例えば、空気オフガス)により燃焼される。
気化器、改質器、セルスタック及び燃焼器が高温ハウジング内に収容され、更に還元性ガスの流入を防ぐための還元性ガス流入防止手段が設けられているので、高温状態においてシステムがシャットダウン停止すると、気化器にて還元性ガスの混じった水蒸気が生じるが、この還元性ガス流入防止手段がこの水蒸気の燃焼器からセルスタックの酸素極側への流入するのを防ぎ、これによって、還元性ガスによるセルスタックの酸素極の劣化を抑えることができる。
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、還元性ガス流入防止手段は、酸化剤ガス供給手段(又は酸化剤ガス供給流路)に配設された逆流防止構造体から構成されているので、この逆流防止構造体により、セルスタックの酸素極から酸化剤ガス供給手段に向けての酸化剤ガスの逆流を防ぎ、これによって、シャットダウン停止時における燃焼器からセルスタックの酸素極側への還元性ガスの流入を防止することができる。
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、還元性ガス流入防止手段は、酸化剤ガス供給手段(又は酸化剤ガス供給流路)に配設された酸化剤ガス流量検知手段と、酸化剤ガス供給手段を作動制御して酸化剤ガスの逆流を防止するための逆流防止制御手段とから構成されているので、システムのシャットダウン停止時に酸化剤ガス流量検知手段により酸化剤ガスの逆流を検知すると、セルスタックの酸素極から酸化剤ガス供給手段に向けての酸化剤ガスの逆流が生じないように酸化剤ガス供給手段が作動制御され、これによって、シャットダウン停止時に燃焼器からセルスタックの酸素極側への還元性ガスの流入を防止することができる。
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、セルスタックの温度を検知するための温度検知手段が更に設けられ、酸化剤ガス流量検知手段が酸化剤ガスの逆流を検知し且つ温度検知手段がセルスタックの高温度を検知すると、逆流防止制御手段は酸化剤ガス供給手段を作動制御するので、セルスタックの高温状態においてセルスタックの酸素極側への還元性ガスの流入を防止し、これによって、高温状態におけるセルスタックの酸素極の劣化を防止することができる。
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、還元性ガス流入防止手段は、酸化材オフガス送給流路に配設された還元性ガス吸着材から構成されているので、シャットダウン停止時に燃焼器からの還元性ガスの混じった水蒸気がセルスタックの酸素極側に流れたとしても、この還元性ガス吸着材が還元性ガスを吸着し、これによって、還元性ガスのセルスタックの酸素極側への流入を防止することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、原燃料ガスとして都市ガス、LPガスなどの燃料ガスを用いて発電を行うものであり、燃料ガス(原燃料ガス)を改質するための改質器4と、この改質器4にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスとしての空気の酸化及び還元によって発電(所謂、発電反応)を行う固体酸化物形のセルスタック6と、を備えている。
セルスタック6は、発電反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の片側に設けられた燃料極と、固体電解質の他側に設けられた酸素極(空気極)とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
このセルスタック6の燃料極側8は、改質燃料ガス送給流路10介して改質器4に接続され、この形態では、改質器4は、改質用水を気化するための気化器12と一体的に改質ユニットとして構成されている。尚、気化器12は、改質器4と別体に構成し、気化器12にて気化された水蒸気を水蒸気送給流路(図示せず)を介して改質器4に送給するようにしてもよい。
気化器12は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源(図示せず)(例えば、埋設管や貯蔵タンクなどから構成される)に接続され、燃料ガス供給源からの燃料ガス(原燃料ガス)が燃料ガス供給流路14を通して気化器12に供給される。尚、この燃料ガス供給流路14を改質器4に接続し、燃料ガス供給源からの燃料ガスを改質器4に直接的に供給するようにしてもよい。
また、この気化器12には、水供給流路18を通して改質用水が供給される。改質器4には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスが気化器12にて気化された水蒸気でもって水蒸気改質される。
この燃料ガス供給流路14には、気化器12から上流側に向けて順に脱硫器20、第1絞り部材22、燃料ガス供給ポンプ24(燃料ガス供給手段を構成する)、第2絞り部材26、圧力調整部材としてのゼロガバナ28、燃料流量センサ30及び遮断弁32が配設されている。脱硫器20は、燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、燃料ガス供給ポンプ24は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスを昇圧して気化器12に供給し、この燃料ガス供給ポンプ24の回転数を制御することによって燃料ガスの供給流量が調整され、燃料ガス供給ポンプ24の回転数を大きくする(又は小さくする)と、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
また、ゼロガバナ28は、燃料ガス供給源(図示せず)から燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスを所定圧力(即ち、大気圧)に調整し、燃料ガス流量センサ30は、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの流量を測定し、遮断弁32は、閉状態になると燃料ガス供給流路14を遮断して燃料ガスの供給を停止する。また、燃料ガス供給ポンプ24の両側(即ち、下流側及び上流側)に位置する第1及び第2絞り部材22,26は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの流量を安定させるために設けられ、第1絞り部材22は例えばキャピラリー管から構成され、第2絞り部材26は、例えば小さいオリフィスを有する絞り部材から構成される。また、燃料ガス流量センサ30は、例えば熱式流量センサから構成される。尚、燃料ガスを安定的して供給することができるときには、第1絞り部材22を省略するようにしてもよく、また第2絞り部材26に代えて例えばバッファ-タンクを用いるようにしてもよい。
水供給流路18には水供給ポンプ34(水供給手段を構成する)が配設され、この水供給ポンプ34によって、改質用水が後述するように水供給流路18を通して気化器12に供給される。この水供給ポンプ34の回転数を制御することによって改質用水の供給流量が調整され、水供給ポンプ34の回転数を大きくする(又は小さくする)と、水供給流路18を通して供給される改質用水の供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
このセルスタック6の酸素極(空気極)側36は、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路を構成する)を介して酸化剤ガス供給手段としての空気ブロア40に接続されている。空気ブロア40は、空気(酸化剤ガス)を空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)を通してセルスタック6の酸素極側36(空気極側)に供給する。この空気ブロア40の回転数を制御することによって空気の供給流量が調整され、空気ブロア40の回転数を大きくする(又は小さくする)と、空気供給流路38を通して供給される空気(酸化剤ガス)の供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
セルスタック6の燃料極側8から排出される燃料オフガス(即ち、アノードオフガス)は、燃料オフガス導出流路44を通して水蒸気凝縮部46に送給され、この水蒸気凝縮部46にて燃料オフガスに含まれている水蒸気が凝縮されて除去され、水蒸気が除去された燃料オフガスは、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。また、セルスタック6の酸素極側36から排出される空気オフガス(酸化材オフガス)(即ち、カソードオフガス)は、空気オフガス送給流路52を通して燃焼器50に送給され、この燃焼器50において、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガス(燃料ガスを含んでいる)と酸素極側36(空気極側)からの空気オフガス(酸素を含んでいる)とが燃焼される。気化器12及び改質器4は、この燃焼器50に接触乃至近接して配置されており、この燃料オフガスの燃焼熱を利用して気化器12及び改質器4などが加熱されるとともに、後述する高温空間64が高温状態に保たれる。燃焼器50からの燃焼排気ガスは排気ガス排出流路54を通して大気に排出される。
更に、燃料オフガス送給路48から分岐してリサイクル流路56が設けられ、このリサイクル流路56の下流側は、燃料ガス供給流路14、具体的には燃料ガス供給ポンプ24の配設部位と第2絞り部材26の配設部位との間の部位に接続されている。このようにリサイクル流路56が設けられているので、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガス(アノードオフガス)の一部はリサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14における燃料ガス供給ポンプ24の配設部位の上流側に戻され、その残部は、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。
この実施形態では、改質ユニット(改質器4及び気化器12)、セルスタック6及び燃焼器50が高温ハウジング62に収容されている。高温ハウジング62は、金属製(例えば、ステンレス鋼製)であり、その内面は断熱部材(図示せず)で覆われており、その内側に高温空間64を規定し、改質ユニット(改質器4及び気化器12)、セルスタック6及び燃焼器50がこの高温空間64内で高温状態に保たれる。
この固体酸化物形燃料電池システム2では、燃料オフガス導出流路44の一部が高温ハウジング62(高温空間64)外に導出されて水蒸気凝縮部46に接続され、この水蒸気凝縮部46からの燃料オフガス送給流路48の一部が高温ハウジング62(高温空間64)外からその内側に導入されて燃焼器50に接続されている。
この実施形態では、水蒸気凝縮部46は、排熱回収用の第1熱交換器66と、燃料オフガスから凝縮水を分離するための気液分離器68と、凝縮水に含まれる不純物を除去するためのイオン交換器70と、凝縮水を溜めるための水回収容器72とを含んでいる。気液分離器68は例えばドレンセパレータから構成され、第1熱交換器66は、例えば、燃料オフガスの熱を温水として貯湯するためのコ-ジェネレーションシステム用の貯湯装置74と組み合わせて用いられている。
この貯湯装置74は、温水として貯湯するための貯湯タンク76と、第1熱交換器66を通して循環する循環流路78と、循環流路78に配設された循環ポンプ80とを備えている。この貯湯装置74と組み合わせて用いると、循環ポンプ80によって貯湯タンク76内の水が循環流路66を通して循環され、この第1熱交換器66にて循環流路78を流れる水と燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスとの間で熱交換が行われ、熱交換により加温された温水が貯湯タンク76に貯えられる。また、この熱交換により燃料オフガスが冷却されてそれに含まれた水蒸気が凝縮され、燃料オフガス及び凝縮された水(凝縮水)が下流側の気液分離器68に流れる。
気液分離器68は、凝縮水と燃料オフガスとを分離し、分離された凝縮水は、下側のイオン交換器70に流れ、内蔵されたイオン交換樹脂によってイオン成分などの不純物が除去された後に水回収タンク72に蓄えられる。この水回収タンク72に回収された水(凝縮水)は改質用水として用いられ、水供給ポンプ34の作用によって水供給流路18を通して気化器12に送給される。尚、この実施形態では、水蒸気凝縮部46にて凝縮された凝縮水を改質用水として用いているが、この凝縮水に代えて、水タンクなどに充填された水を用いるようにしてもよい。
また、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)に関連して、空気予熱用の第2熱交換器82が配設され、この第2熱交換器82は、空気供給流路38を流れる空気(酸化剤ガス)と排気ガス排出流路54を通して排出される燃焼排気ガスとの間で熱交換を行い、この熱交換により加温された空気がセルスタック6の酸素極側36に送給される。
更に、燃料オフガス送給流路48に関連して、燃料オフガス余熱用の第3熱交換器84が配設され、この第3熱交換器84は、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスと燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスとの間で熱交換を行い、この熱交換により加温された燃料オフガスが燃焼器50に送給される。尚、第2及び第3熱交換器82.84は、高温ハウジング62(高温空間64)内に収容されて高温状態に保たれる。
この固体酸化物形燃料電池システム2の発電運転は、次のように行われる。燃料ガス(原燃料ガス)が燃料ガス供給ポンプ24の作用によって気化器12に供給され、また改質用水(凝縮水)が水供給ポンプ34の作用によって気化器12に供給され、気化器12にて改質用水が気化されて水蒸気となり、発生した水蒸気に燃料ガスが混合されて改質器4に送給される。改質器4では燃料ガスが水蒸気と反応して水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスがセルスタック6の燃料極側8に送給される。また、空気(酸化剤ガス)が空気ブロア40の作用によってセルスタック6の酸素極側8に送給される。
セルスタック6では、改質燃料ガス及び空気(酸化剤ガス)の酸化及び還元により発電反応が行われ、発生した発電電力は電力負荷(図示せず)に送給されて消費される。セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガス(アノードオフガス)は、水蒸気凝縮部46に送給され、第1熱交換器66における熱交換により冷却されて燃料オフガス中の水蒸気が凝縮され、凝縮された凝縮水は水回収容器72に回収される。このとき、第1熱交換器66における熱交換により加温された温水は、貯湯装置74の貯湯タンク76に貯えられる。
水蒸気が除去された燃料オフガスは燃焼器50に送給され、またセルスタック6の酸素極側36から排出された空気オフガス(カソードオフガス)も燃焼器50に送給され、この燃焼器50において、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガスと酸素極側36からの空気オフガスとが燃焼される。燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスの一部は、リサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14(燃料ガス供給ポンプ24の配設部位の上流側)に戻され、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスに混合される。
このような固体酸化物形燃料電池システム2においては、システムの異常故障などによってシステムがシャットダウン停止するようになっており、このシャットダウン停止時には、燃料ガス供給ポンプ24、水供給ポンプ34及び送風ブロア40が作動停止し、燃料ガス、改質用水及び空気の供給が停止される。高温ハウジング62内が高温状態(例えば、500℃以上の状態)においてシステムがシャットダウン停止すると、気化器12内に改質用水が残存しているために、気化器12の周囲の熱によってこの改質用水が気化して水蒸気となり、燃料ガス(改質燃料ガス)混じりの水蒸気(即ち、還元性ガス)がセルスタック6の燃料極側8を通って燃焼器50に流れるようになる。燃焼器50に流れた燃料ガス混じりの水蒸気(還元性ガス)は、排気ガス排出流路54及空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)に分配されて流れ、その一部は排気ガス排出流路54を通して外部に排出されるが、その残部は、空気オフガス送給流路52を通してセルスタック6の酸素極側36に逆流するようになる。この逆流した燃料ガス混じりの水蒸気が酸素極側36に達すると、この酸素極側36が還元を受け、酸素極層(空気極層)が部分的に剥離したり、部分的にクラックが発生するおそれがある。
この固体酸化物形燃料電池システム2では、燃料ガス混じりの水蒸気が燃焼器50からセルスタック6の酸素極側36に逆流するのを防止するために、更に、次のように構成されている。更に説明すると、この第1の実施形態では、燃料ガス混じりの水蒸気がセルスタック6の酸素極側36に流入するのを防止するための還元性ガス流入防止手段92が空気供給流路38に関連して設けられ、この還元性ガス流入防止手段92が逆流防止構造体94から構成されている。この逆流防止構造体94は、送風ブロア40からセルスタック6の酸素極側36への空気の流れを許容するが、この酸素極側36から送風ブロア40側への空気の流れを阻止するものであり、例えば市販の逆流防止ダンパから構成される。
この逆流防止構造体94は、図1に示すように、空気供給流路38における高温ハウジング62外に位置する部位に配設するのが好ましく、このような部位に設けることにより、逆流防止構造体94が高温に晒されることがなく、その寿命を長く保つことができる。
このように逆流防止構造体94を設けた場合、高温状態においてシステムがシャットダウン停止して気化器12内の改質用水が気化して水蒸気となり、燃料ガス混じりの水蒸気がスタック6の燃料極側8を通って燃焼器50に流れると、この燃料ガス混じりの水蒸気は、排気ガス排出流路54及空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)に分配されて流れようとするが、逆流防止構造体94がセルスタック6(酸素極側36)から送風ブロア40への空気の流れを阻止するために、この水蒸気の燃焼器50からセルスタック6(酸素極側36)への分配流れが阻止され、これによって、燃焼器50に流れた燃料ガス混じりの水蒸気は、セルスタック6の酸素極側36に逆流することなく、その全てが排気ガス排出流路54を通して外部に排出され、その結果、シャットダウン停止時の還元性ガスによるセルスタック6の酸素極の劣化を抑えることができる。
この第1の実施形態では、逆流防止構造体94を逆流防止ダンパから構成しているが、逆流防止ダンパに代えて、逆流防止弁から構成するようにしてもよく、或いは電磁開閉弁から構成し、シャットダウン停止時にこの電磁開閉弁を作動させて空気供給流路38を閉塞するようにしてもよい。
また、この第1実施形態では、還元性ガス流入防止手段92を空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)に配設しているが、このような構成に代えて、送風ブロア40(酸化剤ガス供給手段)に内蔵するようにしてもよい。
次に、図2を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態においては、還元性ガス流入防止手段の構成が第1の実施形態のものと異なっている。尚、以下の実施形態において、第1の実施形態と実質上同一のものには同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
図2において、この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aでは、空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)にガス吸着器102が設けられ、このガス吸着器102内に還元性ガス吸着材が充填され、還元性ガス吸着材を含むガス吸着器102が還元性ガス流入防止手段92Aとして機能している。還元性ガス吸着材としては、例えば酸化コバルト、酸化ニッケルや酸素極(空気極)として用いられているランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)やランタンマンガナイトなどを含む材料を用いることができる。この第2の実施形態のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aにおいては、高温状態でシステムがシャットダウン停止して気化器12内の改質用水が気化し、燃料ガス混じりの水蒸気がスタック6の燃料極側8を通って燃焼器50に流れると、この燃料ガス混じりの水蒸気は、排気ガス排出流路54及空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)に分配され、この水蒸気の一部は、この排気ガス排出流路54を通して外部に排出されるが、その残部は、この空気オフガス送給流路52及びガス吸着器102を通してセルスタック6の酸素極側36に流れる。このとき、水蒸気に混ざった燃料ガス(還元性ガス)は還元性ガス吸着材に吸着されて除去され、燃料ガスが除去された水蒸気がセルスタック6の酸素極側36に流れるようになる。
従って、セルスタック6の酸素極側36に逆流する水蒸気には燃料ガス(還元性ガス)が含まれておらず、セルスタック6の酸素極が燃料ガスによる還元作用を受けることがなく、このように構成することによってもシャットダウン停止時の還元性ガスによるセルスタック6の酸素極の劣化を抑えることができる。
この第2の実施形態においては、空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)にガス吸着器102を配設しているが、このような構成に限定されず、空気オフガス送給流路52を規定する配管部材の内周面に、還元性ガス流入防止手段としての還元性ガス吸着材を設けて水蒸気に混じった燃料ガスを吸着するようにしてもよい。
次に、図3を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態においては、還元性ガス流入防止手段の構成が第1及び第2の実施形態のものと異なっている。
図3において、この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Bでは、高温ハウジング62内のセルスタック6に接触乃至近接して温度センサ112(温度検知手段を構成する)が配設され、この温度センサ112はセルスタック6の温度を検知する。また、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)に空気流量センサ114(酸化剤ガス流量検知手段を構成する)が設けられ、この空気流量センサ114は空気供給流路38を流れる空気の流量を検知する。更に、燃料ガス供給ポンプ24(燃料ガス供給手段)、送風ファン40(酸化剤ガス供給手段)及び水供給ポンプ34(水供給手段)を作動制御するためのコントローラ116が設けられ、このコントローラ116は、空気(酸化剤ガス)の逆流を防止するために送風ファン40を作動制御するための逆流防止制御手段118を含んでいる。
この固体酸化物形燃料電池システム2Bでは、温度センサ112、燃料ガス流量センサ30及び空気流量センサ114の検知信号がコントローラ116に送給され、コントローラ116はこれらセンサ112,30,114からの検知信号に基づいて燃料ガス供給ポンプ24、送風ブロア40及び水供給ポンプ34を作動制御し、後の説明から理解される如く、温度センサ112、空気流量センサ114及びコントローラ116の逆流防止制御手段118が還元性ガス流入防止手段92Bを構成し、更に送風ブロア40(酸化剤ガス供給手段)が還元性ガス流入防止手段92Bの一部としても機能する。この第3の実施形態のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Bにおいて、システムがシャットダウン停止すると、温度センサ112(温度検知手段)及び空気流量センサ114(酸化剤ガス流量検知手段)からの検知信号がコントローラ116に送給される。このとき、高温ハウジング62内が高温状態であると、気化器12内の改質用水が気化し、燃料ガス混じりの水蒸気がスタック6の燃料極側8を通って燃焼器50に流れ、その水蒸気の一部が空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)を通してセルスタック6の酸素極側36側に流れる。そして、この水蒸気の一部がセルスタック6の酸素極側36に流れると、この水蒸気の流れに押されて、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)内の空気(酸化剤ガス)が送風ブロア40に向けて逆流するようになる。
このように高温状態において空気供給流路38内の空気が逆流する、換言すると温度センサ112(温度検知手段)が高温度(例えば、500℃以上)を検知し、且つ空気流量センサ114(酸化剤ガス流量検知手段)が空気の逆流(即ち、セルスタック6の酸素極側36から送風ブロア40に向けての流れ)を検知すると、コントローラ116の逆流防止制御手段118は逆流防止信号を生成し、この逆流防止信号に基づき送風ブロア40が送給方向に作動される。
かくすると、送風ブロア40からの空気(酸化剤ガス)は、空気供給流路36及びセルスタック6の酸素極側36を通して燃焼器50に流れ、燃焼器50から空気オフガス送給流路52(酸化材オフガス送給流路)に分配される水蒸気がこの空気の流れによって燃焼器50に戻され、これによって、燃料ガス混じりの水蒸気は、セルスタック6の酸素極側36に逆流することなく、その全てが排気ガス排出流路54を通して外部に排出され、このように構成しても、シャットダウン停止時の還元性ガスによるセルスタック6の酸素極の劣化を抑えることができる。
このとき、セルスタック6の酸素極側36に送る空気の送給流量が多くなると、送給された空気が燃焼器50から燃料オフガス送給流路48燃料オフガス導出流路44を通してセルスタック6の燃料極側8に流れ、その燃料極が酸化して劣化するおそれがあり、それ故に、このときの空気(酸化剤ガス)の送給流量は、燃焼器50内の水蒸気が空気オフガス送給流路52に逆流しない程度にするのが望ましい。
この第3の実施形態においては、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)に配設した空気流量センサ114(酸化剤ガス流量検知手段)により空気の逆流を検知しているが、このような構成に代えて、送風ブロア40に回転数検知センサを設け、この回転数検知センサの検知回転数に基づいて空気流量(空気の逆流を含む)を検知するようにしてもよく、この場合、この回転数検知センサが酸化剤ガス流量検知手段として機能する。
また、この第3の実施形態においては、温度センサ112を設け、この温度センサ112が高温(例えば、500℃以上)を検知したときに送風ブロア40を作動させているが、この温度センサ112を省略し、シャットダウン停止時に作動するタイマ手段を設け、このタイマ手段が所定時間(例えば、10~20分程度)を計時するまで空気流量センサ114(酸化剤ガス流量検知手段)により空気の逆流を監視するようにしてもよい。
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。