以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1における工作機械1を示す斜視図であり、図2は工作機械1をその前側から見た概略図である。以下の説明において、前側、後側、左側及び右側は、特に断らない限り、工作機械1を基準とする方向を意味する(各図の方向軸参照)。また、各図において、板材については、肉厚を省略して図示することがあり、また、その断面についてのハッチングを省略していることがある。
この工作機械1は、横型マシニングセンタであって、工作機械1の前部に設けられた加工領域である加工室A内に水平に突出するように配置された主軸2と、加工室A内に配置されて不図示のワークを支持するワーク支持装置3と、標準工具交換装置4と、長尺工具交換装置5と、機械全体を覆うカバー体としての外装カバー6と、機械全体の動作を制御する制御装置100(図9にのみ示す)とを備えている。尚、図1では、工作機械1の前側の図示を省略しているが、実際には工作機械1の前側には、外装カバー6と該外装カバー6に取付けられた開閉扉(不図示)が設けられている。
図2に示すように、標準工具交換装置4は、いわゆるマガジン式の自動工具交換装置であって、工作機械1の左側端部に収容された標準工具ストッカ7と主軸2との間で工具交換を行う。長尺工具交換装置5は、後述する工具搬送機構50を用いて、工作機械1の上面に配置された長尺工具ストッカ8と主軸2との間で工具交換を行う。長尺工具ストッカ8には、標準工具ストッカ7に収容可能な工具サイズを超えた長尺の工具T2が収容される。長尺の工具T2の一例として、例えばラインボーリングバー等が挙げられる。この長尺工具ストッカ8が第1の工具ストッカに相当し、標準工具ストッカ7が第2の工具ストッカに相当する。
主軸2は、主軸頭9に回転可能に保持されている。主軸頭9は、ベッド11の後端部に立設された不図示のコラムに上下方向(Y軸方向)に移動可能に保持されている。コラムは、ベッド11の後端部の上面に左右方向(X軸方向)に移動可能に支持されている。この構成により、主軸頭9は、X軸-Y軸平面内で移動する。主軸頭9のX軸方向及びY軸方向の移動動作は、ボール螺子とこれを駆動するサーボモータとを含む送り駆動機構(不図示)によって実現される。
前記主軸頭9は、前記コラムの前側に配置された保護カバー10を貫通して加工室A内に突出している。保護カバー10は、前記コラム全体及び主軸頭9の基端側部分を収容するコラム側空間(不図示)と前記加工室Aとを区画するように配置されている。保護カバー10は、複数のカバー板をその背面側に設けられたパンタグラフ機構(いずれも不図示)により連結して構成されている。そうして、保護カバー10は、主軸頭9のX軸-Y軸平面内の移動を許容しつつ前記コラム側空間と加工室Aとを区画している。
ワーク支持装置3は、加工対象であるワーク(不図示)を支持する装置である。具体的には、ワーク支持装置3は、チルトテーブル31と、チルトテーブル31をX軸回りに揺動可能に支持する支持台32と、チルトテーブル31の上面に配置されたターンテーブル33とを有している。ターンテーブル33の上面には、ワーク装着用のパレットPがクランプ固定されている。支持台32は、ベッド11の前端部の上面に前後方向(Z軸方向)に移動可能に支持されている。支持台32のZ軸方向の移動は、ボール螺子とこれを駆動するサーボモータとを含む送り駆動機構(不図示)によって実現される。
ワークの加工に際しては、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各送り駆動機構と、前記チルトテーブル31及びターンテーブル33の駆動機構とをそれぞれ制御装置100により制御することで、ワークと、主軸2の先端に取り付けた工具T1又は工具T2との相対的な位置関係を制御する。これにより、ワークが所望の形状に加工される。
[外装カバーの構成]
外装カバー6は、加工室Aを囲むように形成された天井カバー61a及び右側の側壁カバー61bを含んで構成される第1カバー部61と、標準工具ストッカ7が収容されるストッカ収容空間Bを覆う第2カバー部62と、前記コラム全体及び主軸頭9の基端側部分を収容するコラム側空間(不図示)を覆おう第3カバー部63とを有している。
第1カバー部61は、前側に設けられる側壁カバー(図示省略)を備えており、この前側の側壁カバーには、ワークの投入払出し等を行うための前側開口部が形成され、この前側開口部は、左右にスライドする可動扉(不図示)によって開閉される。
第1カバー部61の右側の側壁カバー61bには、長尺工具ストッカ8に収容する工具T2の段取り作業を行うための第3開口部に相当する右側開口部61c(図10参照)が形成されている。右側開口部61cは、工作機械1が設置される床面よりも高い位置に形成されている。このため、工作機械1の右側には、右側開口部61cの下端位置と同じ高さに足場面を形成するための台座12が設けられている。台座12の前方部分には、作業者Wが台座12の上面(足場面)まで上がるための階段部12aが形成されている。台座12の上面が所定の作業領域に相当する。
右側開口部61cは、工作機械1の右側から見て上側が開かれた矩形状をなしている(図10参照)。右側開口部61cの上端は、第1カバー部61の天井カバー61aに形成された天井側開口部61dに繋がっている。天井カバー61aは、加工室Aの上側を覆うように配置され、天井側開口部61dは、天井カバー61aの右側端部に形成されている。天井側開口部61dは、上側から見て右側が開かれた矩形状をなしている。
右側開口部61c及び天井側開口部61dは、前後方向にスライドする1つの可動扉64によって開閉される。可動扉64は、右側開口部61cを開閉するための扉本体部64aと、天井側開口部61dを開閉するための天井側扉部64bとを有している。扉本体部64aは、鉛直に延びる矩形状の板材からなり、その中央部付近には透明板により閉塞された窓部64dが設けられている。天井側扉部64bは、矩形板状をなしていて、扉本体部64aの上端縁から左側に水平に突出している。
図3に示すように、可動扉64の天井側扉部64bには、後述する工具搬送機構50の昇降スライダ58の通過を許容する第2開口部としての開口64cが形成されている。開口64cは、前後方向に延びるとともに後側が開かれた矩形状に形成されている。開口64cは、左右方向にスライドする開閉シャッタ14(開閉部材の一例)により開閉される。開閉シャッタ14は、天井側扉部64bの上面にその駆動用アクチュエータと共に取付けられており、この開閉シャッタ14及び駆動用アクチュエータが第2開閉機構を構成する。この駆動用アクチュエータは、後述する制御装置100により作動制御される。
可動扉64が図1に示した閉位置にある状態では、天井カバー61aに形成された天井側開口部61dが天井側扉部64bによって閉じられ、側壁カバー61bに形成された右側開口部61cが扉本体部64aによって閉じられる。一方、可動扉64が前方に移動した図10に示す開位置にある状態では、天井カバー61aに形成された天井側開口部61d、及び壁カバー61bに形成された右側開口部61cはそれぞれ開かれた状態となる。
前記天井カバー61aの上面における天井側開口部61dの左側には、長尺工具ストッカ8を構成する3つの工具ポット81が設けられている。これら3つの工具ポット81は、左右方向に等間隔に配置されている。本例では、工具ポット81の数は3つとされているが、これに限られたものではなく、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
各工具ポット81は、ポット本体と、ポット本体を下方から支持する台形支持部とを有している。ポット本体は、前側が開口した、工具T2のシャンク部を受け入れる工具挿入孔を有している。ポット本体の内部には、例えば、スプリングを用いた工具保持機構が内蔵されている。この工具保持機構は、ポット本体の工具挿入孔に挿入された工具T2のシャンク部を挿抜可能に保持する。
前記天井カバー61aにおける長尺工具ストッカ8の左側には、後述する工具搬送機構50の昇降スライダ58の通過を許容する第1開口部としての開口61eが形成されている。この開口61eは、前後方向にスライドする開閉シャッタ13(開閉部材の一例)により開閉される。開閉シャッタ13は、天井カバー61aの上面にその駆動用アクチュエータと共に取付けられており、この開閉シャッタ13及び駆動用アクチュエータが第1開閉機構を構成する。この駆動用アクチュエータは、後述する制御装置100により作動制御される。以下の説明において、天井カバー61aに形成された開口61eを第1開口部61eと称し、上述した可動扉64の天井側扉部64bに形成された開口64cを第2開口部64cと称する。
図2を参照して、前記第2カバー部62により覆われたストッカ収容空間Bには、標準工具ストッカ7を構成する回転式の2つの工具マガジン71が収容されている。
2つの工具マガジン71は、左右方向に間隔を空けて互いに同軸に配置されている。各工具マガジン71は、円板状のマガジンフレームと、マガジンフレームの外周縁に周方向に隣接して並ぶ多数の工具保持部71aとからなる。工具保持部71aは、右側に開放する溝状をなしていて、標準サイズの工具T1を係脱自在に保持するように構成されている。但し、工具マガジンの構成はこのような構成に限られるものでは無く、工具保持部を無端状のチェーンで連結して回動するように構成されたものなど、従来公知の全ての構成を適用することができる。
[標準工具交換装置の構成]
標準工具交換装置4は、制御装置100による制御の下、各工具マガジン71と主軸2との間で工具交換を行う。具体的には、標準工具交換装置4は、工具交換アーム41と、搬送ユニット42と、搬送レール43とを有している。
工具交換アーム41は、ストッカ収容空間Bと加工室Aとの間に位置するアーム収容空間C内に収容されている。アーム収容空間Cと加工室Aとは、隔壁61fにより区画されている。隔壁61fは、加工室Aを囲む前記第1カバー部61の左側の側壁を構成している。隔壁61fには、アーム収容空間Cと加工室Aとを連通して、工具交換アームの加工室A内への進入を可能にする開口部61gが形成されている。開口部61gは、上下方向にスライドするATCシャッタ44により開閉可能に閉塞される。
搬送レール43は、左右方向に延設されていて、各工具マガジン71における工具割り出し位置(所定角度位置)と工具交換アーム41の左側近傍位置とに跨がって配置されている。搬送ユニット42は、各工具マガジン71により工具割出し位置に割り出された次工程工具T1を、工具交換アーム41の左側に設定された搬送終端位置まで搬送する。搬送ユニット42が搬送終端位置に到達すると、ATCシャッタ44が開放され、工具交換アーム41は、その中間部の支持軸を支点に回転して、搬送ユニット42に保持された次工程工具T1と、主軸2に装着された使用済み工具T1との工具交換動作を実行する。この交換動作によって、主軸2には次工程工具T1が装着され、搬送ユニット42には使用済み工具T1が装着される。工具交換アーム41による工具交換動作の終了後は、ATCシャッタ44が閉じられるとともに、搬送ユニット42が、搬送レール43に沿って左側に移動して使用済み工具T1を工具マガジン71の所定の工具係合部71aに戻す。
[長尺工具交換装置]
長尺工具交換装置5は、長尺工具ストッカ8と主軸2との間で工具交換を行うための工具搬送機構50を有している。工具搬送機構50は、NCプログラムに基づくワークの加工動作中は、図1に示すように工作機械1の天井カバー61aよりも上側に待機している。
図4は、この工具搬送機構50を左側から見た側面図であり、図5は、工具搬送機構50を前側から見た正面図である。工具搬送機構50は、左右移動ベース台51と、左右移動ベース台51に支持された昇降進退ユニット52と、左右移動ベース台51を左右方向(X軸方向)に駆動するX軸モータM1(図5参照)と、昇降進退ユニット52を前後方向(Z軸方向)に駆動するZ軸シリンダ57と、昇降進退ユニット52に設けられた昇降スライダ58を上下方向(Y軸方向)に伸縮駆動するY軸モータM2とを有している。
図1及び図4に示すように、左右移動ベース台51は、前後方向に長い矩形板からなり、一対の案内レール20に沿って左右方向に移動可能に構成されている。一対の案内レール20は、支持部材21の上面に形成されている。支持部材21は、工作機械1の第3カバー部63の上側に配置されている。支持部材21は、第3カバー部63の左右方向の全体に亘って延びる水平板部21aと、水平板部21aの両端部を支持する一対の脚部21bとを有している。
図4に示すように、左右移動ベース台51は、前記一対の案内レール20に対してスライダ53を介して支持されている。スライダ53は、各案内レール20に対して左右方向に移動可能に係合しており、左右移動ベース台51は、このスライダ53と共に一対の案内レール20に沿って左右方向に移動する。
X軸モータM1は、左右移動ベース台51の左側端部に固定されている。X軸モータM1は、その出力軸が鉛直下側を向く状態で配置されている。X軸モータM1の出力軸の先端部にはピニオンギアが取付けられている。前側の案内レール20の側面には、その左右方向の全体に亘って延びるとともに前記ピニオンギアに噛合するラックバーが取付けられている。X軸モータM1は、このラックバーに噛合するピニオンギアを回転させることで、左右移動ベース台51を該ピニオンギアと共に左右方向に駆動する。X軸モータM1は後述する制御装置100によって作動制御される。
また、左右移動ベース台51の上面には、昇降進退ユニット52を前後方向に移動可能に案内する左右一対の案内レール55(図4では一方のみを示す)が設けられている。一対の案内レール55は、左右移動ベース台51の上面において前後方向の略全体に亘って延設されている。
昇降進退ユニット52は、左右方向から見てL字状をなすベース部材54と、ベース部材54に取付けられた昇降スライダ58とを有している。
ベース部材54は、前後方向に長い矩形状の水平板54aと、水平板54aの前端縁から上方に延びる鉛直板54bと、水平板54aの左右の端縁部と鉛直板54bの後側面とを接続する略台形板状の一対のリブ54c(図4では一方のみを示す)とを有している。ベース部材54の水平板54aは、スライダ56を介して、左右移動ベース台51の上面に設けられた左右一対の案内レール55に支持されている。スライダ56は、各案内レール55に対して2つずつ、合計で4つ設けられている。各スライダ56は、各案内レール55に対して前後方向に移動可能に係合しており、ベース部材54は、このスライダ56と共に一対の案内レール55に沿って前後方向に移動可能に構成されている。
左右移動ベース台51の上面における一対の案内レール55の間には、昇降進退ユニット52全体を前後方向に進退駆動するZ軸シリンダ57が固定されている。Z軸シリンダ57は、油圧によりロッド57aを前後方向(Z軸方向)に駆動する油圧シリンダである。ロッド57aの先端部は、昇降進退ユニット52におけるベース部材54の下面に固定されている。Z軸シリンダ57は、制御装置100によって不図示の油圧供給装置の油圧流路を切替えることで作動制御される。
前記昇降スライダ58は、ベース部材54の鉛直板54bの前側面に取付けられている。本例では、昇降スライダ58は2段ストローク機構を有している。具体的には、昇降スライダ58は、第1スライド部58aと、第1スライド部58aの前側に重ねて配置された第2スライド部58bとを有している。第1スライド部58a及び第2スライド部58bは共に上下方向に長い矩形板状に形成されている。第1スライド部58aと第2スライド部58bとは、それぞれに固定された上下方向に延びるラック板の間にピニオンギアを噛合させた状態で重ね合わされている。2段ストローク機構では、第1スライド部58aを下降させると、該下降中の第1スライド部58aに対して第2スライド部58bが相対的に下側にスライドして全体として伸長し、第1スライド部58aを上昇させると、上昇中の第1スライド部58aに対して第2スライド部58bが相対的に上側に移動して全体として縮長する。これにより、2段ストローク機構を採用しない場合に比べて、昇降スライダ58の縮長時の長さを増加させることなく伸長時のストローク量を2倍に増加させることができる。
Y軸モータM2(図5参照)は、昇降スライダ58を昇降駆動するための駆動源であって、ベース部材54に対して上下方向に移動可能に支持されている。Y軸モータM2は、出力軸が左右方向に水平に延びるように配置されている。Y軸モータM2は、ギア機構を介して第1スライド部58aを上下方向に昇降駆動する。上述したように、第1スライド部58aと第2スライド部58bとは2段ストローク機構を介して連結されているので、Y軸モータM2により第1スライド部58aが昇降駆動されると、これに連動して第2スライド部58bが昇降駆動される。Y軸モータM2は後述する制御装置100により作動制御される。
前記昇降スライダ58における第2スライド部58bの下端部には、長尺の工具T2を保持する工具保持部59が設けられている。
図5に示すように、工具保持部59は、図示右側が開口した円弧状の係合部59aを有する係合板59bと、ロック板59cを含むロック機構とを有している。ロック板59cは、係合板59bにおける係合部59aよりも上側の部分に軸部59dを支点に回動可能に支持されている。ロック機構は、係合板59bの内部に形成された油圧流路への油圧供給を制御することでロック板59cをロック状態とアンロック状態とに切り替える。ロック状態では、ロック板59cが軸部59dを支点に図5の時計回り方向に回動し、工具T2がロック板59cにより係合孔59aに脱落不能に係止される。一方、アンロック状態ではロック板59cが軸部59eを支点に図5の反時計回り方向に回転し、係合部59aの右側部分から工具T2を水平方向に出し入れ可能となる。
[待機位置、工具交換位置、ストッカ位置、及び作業用位置の説明]
工具搬送機構50は、左右移動ベース台51の左右方向の移動動作と、昇降スライダ58の上下方向の昇降動作(伸縮動作)とを組合わせることにより、昇降スライダ58の下端部に設けられた工具保持部59を待機位置(図2参照)と工具交換位置(図6参照)とストッカ位置(図7参照)と作業用位置(図8参照)とに移動可能に構成されている。
前記待機位置は、工具搬送機構50に対する工具T2の搬送要求がない場合に工具保持部59を待機させておくための位置である。図2は、工具保持部59が待機位置ある状態を示している。工具保持部59は、待機位置において、天井カバー61aに形成された第1開口部61eの直上に位置している。
また、この待機位置の左右方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)の位置は、昇降スライダ58により工具保持部59を待機位置から加工室A内にY軸方向に下降させたときに、工具保持部59に保持された長尺の工具T2が第1開口部61eを干渉無く通過できる位置に設定されている。
また、待機位置の高さ方向の位置は、工具保持部59の下端が、長尺工具ストッカ8の各工具ポット81よりも高い位置となるように設定されている。これにより、工具保持部59を待機位置からストッカ位置に移動させる際の移動経路を簡素化して、この移動動作に要する時間を短縮することができる。
また、工具保持部59が待機位置にあるときは、昇降進退ユニット52は、Z軸シリンダ57により後退された状態にある。これにより、工具保持部59を待機位置からストッカ位置又は工具交換位置に移動させて工具保持部59に工具T2を保持(係合)させる際に、Z軸シリンダ57により昇降進退ユニット52を一旦後退させる必要がなくなる。よって、工具保持部59に工具T2を保持させる際の工具搬送機構50の動作時間を短縮することができる。
前記工具交換位置は、主軸2と工具保持部59との間で工具T2を受け渡しする位置である。図6は、工具保持部59が工具交換位置にある状態を示している。工具保持部59は、工具交換位置において、主軸2に装着された工具T2が係合部59a内に進入して係合され、当該係合部59aは主軸2に対して同軸に配置される。工具保持部59と主軸2との間の工具T2の受け渡し動作(挿抜動作)は、Z軸シリンダ57によるZ軸方向の進退動作と、X軸モータM1によるX軸方向への往復移動動作によって実現される。尚、この工具交換時の主軸2の位置は予め定められている。また、この工具交換位置に対して、工具保持部59を、その係合部59aが工具T2から外れるようにX軸左側に若干移動させた位置が、アプローチ位置として設定されている。
前記ストッカ位置は、長尺工具ストッカ8と工具保持部59との間で工具T2を受け渡しする位置である。図7は、工具保持部59がストッカ位置にある状態の一例を示している。工具保持部59は、ストッカ位置において、長尺工具ストッカ8を構成する工具ポット81に装着された工具T2が係合部59a内に進入して係合され、当該係合部59aは工具ポット81に対して同軸に配置される。本例では、工具ポット81は3つ設けられているので、ストッカ位置は3つの工具ポット81のそれぞれに対応して合計で3つ設定されている。図7の例では、最も左側の工具ポット81に対して設定されたストッカ位置に工具保持部59を移動させた状態を示している。工具保持部59と工具ポット81との間の工具T2の受け渡し動作(挿抜動作)は、上記と同様に、Z軸シリンダ57によるZ軸方向の進退動作と、X軸モータM1によるX軸方向への往復移動動作によって実現される。また、各ストッカ位置に対して、工具保持部59を、その係合部59aが工具T2から外れるようにX軸左側に若干移動させた位置が、アプローチ位置として設定されている。
前記作業用位置は、作業者Wが、工作機械1の右側に設置された前記台座12の上面(所定の作業領域)から工具保持部59にアクセスして工具T2を着脱可能な位置である。図8は、工具保持部59が作業用位置にある状態を示している。工具保持部59は、作業用位置においては、開閉扉64の天井側扉部64bに形成された第2開口部64cの直下に位置している。工具保持部59は、作業用位置において、右側開口部61cから左側に僅かに離間した位置に配置される。また、工具保持部59は、作業用位置において、一般的な成人男性の腰の高さと同程度の高さに位置していることが好ましい。
[制御系の構成]
図9は、前記工作機械1の制御系の一部を示すブロック図である。同図に示すように、工作機械1は制御装置100を有している。制御装置100は、CPU、ROM及びRAMを有するコンピュータからなる。制御装置100は、加工機構部101、標準工具交換装置4、長尺工具交換装置5、シャッタ駆動部102、主操作盤103、及び段取り操作部104に信号の授受可能に接続されている。
加工機構部101は、主軸2を駆動する主軸モータと、X軸、Y軸及びZ軸方向の送り駆動機構と、チルトテーブル31及びターンテーブル33の駆動機構とを含んでいる。
標準工具交換装置4は、上述した通り、工具交換アーム41により標準サイズの工具T1の交換動作を実行する装置である。制御装置100は、標準工具交換装置4に設けられたアクチュエータ(例えば工具交換アーム41の駆動モータ等)を駆動すること標準工具交換装置4に工具交換動作を実行させる。
長尺工具交換装置5は、前記工具搬送機構50により長尺の工具T2の交換動作を実行する装置である。この長尺工具交換装置5は、工具交換動作に加えて後述する段取り動作を実行する。制御装置100は、工具搬送機構50に設けられたアクチュエータに電気的に接続されている。このアクチュエータには、例えば、左右移動ベース台51を駆動するX軸モータM1、昇降スライダ58を駆動するY軸モータM2、及びZ軸シリンダ57に接続された油圧供給装置の流路切換えバルブ等が含まれる。X軸モータM1及びY軸モータM2は、昇降進退ユニット52のX軸-Y軸平面内の位置を変更することで、昇降スライダ58の下端に設けられた工具保持部59のX軸-Y軸平面内の位置を変更する。
シャッタ駆動部102は、天井カバー61aに形成された第1開口部61eの開閉シャッタ13と、可動扉64に形成された第2開口部64cの開閉シャッタ14とのそれぞれの駆動用アクチュエータを含んでいる。制御装置100は、この駆動用アクチュエータの作動制御を行う。
主操作盤103は、NCプログラムの実行を開始するためのサイクルスタートボタン103aや、作業者Wが工作機械1に対して各種設定を行うためのタッチパネル103b等を有している。タッチパネル103bには、作業者WがNCプログラムを入力するためのソフトキーや、工作機械1の運転モードを設定するための設定ボタンが表示される。運転モードの一例として、例えば、NCプログラムに基づいてワークを加工する自動運転モードや、作業者Wが各種の段取り作業を行うための段取りモードが挙げられる。段取り作業の一例として、例えば長尺工具ストッカ8に収容する工具T2の段取り作業が挙げられる。タッチパネル103bには、作業者Wが段取り対象となる工具T2が保持された工具ポット81を指定するための操作画面が設けられている。主操作盤103は、前記サイクルスタートボタン103aや前記タッチパネル103bを介した操作を受け付けて、その操作信号を制御装置100へと送信する。
段取り操作部104は、主操作盤103にて段取りモードが設定された状態で、工具搬送機構50に工具T2の搬送動作を実行させるための段取り実行ボタン104aを有している。段取り実行ボタン104aは、台座12の上面に立った作業者Wが操作できるように工作機械1の右側面に設けられている。段取り操作部104は、この段取り実行ボタン104aを介した操作を受け付けて、その操作信号を制御装置100に送信する。尚、段取り操作部104と前記主操作盤103とは、図9のブロック図においてのみ図示し、他の斜視図及び正面図では図示を省略している。
制御装置100は、主操作盤103よりサイクルスタートボタン103aの操作信号を受信すると、不図示の記憶部に記憶されたNCプログラムを実行する。そして、制御装置100は、NCプログラムに基づいて加工機構部101にワークの加工動作を実行させる。また、制御装置100は、NCプログラムの実行中に標準サイズの工具T1の交換指令を抽出した場合には、標準工具交換装置4に工具交換動作を実行させる。この工具交換動作では、上述したように工具交換アーム41を用いて主軸2と搬送ユニット42との間で工具交換を実行する。
また、制御装置100(搬送制御部の一例)は、NCプログラム中に長尺の工具T2の交換指令を抽出した場合には、長尺工具交換装置5(工具搬送機構50)に工具交換動作を実行させる。また、制御装置100は、段取り操作部104より段取り実行ボタン104aの操作信号を受信した場合には、長尺工具交換装置5(工具搬送機構50)に段取り動作を実行させる。
[工具交換動作]
図2、図6及び図7を参照して、長尺工具交換装置5による工具交換動作の詳細を説明する。この工具交換動作では、図2に示すように工具保持部59が待機位置から状態からスタートして、制御装置100による制御の下、先ず、工作機械1の天井カバー61aに設けられた開閉シャッタ13を、シャッタ駆動部102により開位置に移動させる。これにより、工具保持部59の待機位置の直下にある第1開口部61eが開かれる。そして、第1開口部61eが開かれた状態で、X軸モータM1、Y軸モータM2及びZ軸シリンダ57が駆動制御され、これにより工具保持部59がX軸、Y軸、Z軸方向に移動して、工具交換動作が実行される。以下では、工具保持部59の動作のみ説明する。まず、工具保持部59を、前記第1開口部61eを通じて所定位置まで下降させる。本例において、この降下した位置は、工具交換位置に対して設定されたアプローチ位置である。次に、工具保持部59をX軸方向右側に移動させて、工具交換位置に移動させる(図6参照)。これにより、係合板59bの係合部59aに使用済み工具T2が入り込み、ロック板59cをロック状態にすることで、工具保持部59に使用済み工具T2が保持される。次に、工具保持部59をZ軸方向前側に移動させることで、主軸2の工具装着孔から使用済み工具T2が前側に引き抜かれる。
ついで、工具保持部59をY軸方向上方に移動させて、前記第1開口部61eを通して加工室Aから退出させた後、長尺工具ストッカ8内における収容先の空の工具ポット81の前側(当該工具ポット81に対して設定されたストッカ位置のZ軸方向前側)に移動させる(図7参照)。この後、工具保持部59をZ軸方向後ろ側のストッカ位置に移動させることで、工具保持部59に保持された使用済み工具T2を工具ポット81に挿入する。ついで、工具保持部59のロック板59cをアンロック状態にした後、工具保持部59を、収容した使用済み工具T2から離れるように、X軸方向左側のアプローチ位置に移動させる。
次に、工具保持部59を、待機位置と同じ高さ位置になるようにY軸方向上側に移動させた後、次工程工具T2が収納されている他の工具ポット81に設定されたアプローチ位置の上方に移動させる。ついで、工具保持部59をY軸方向下側のアプローチ位置まで移動させた後、当該工具ポット81に対して設定されたX軸右方向のストッカ位置まで移動させる。これにより、係合板59bの係合部59aに次工程工具T2が入り込み、ロック板59cをロック状態にすることで、工具保持部59に次工程工具T2が保持される。この後、工具保持部59をZ軸方向前側に移動させることで、当該他の工具ポット81から次工程工具T2が引き抜かれる。
次に、工具保持部59を、主軸2の上方であり、且つ保持した次工程工具T2が主軸2よりZ軸方向前側に位置する位置に移動させた後、前記第1開口部61eを通して加工室A内に進入させ、工具保持部59に保持された次工程工具T2が主軸2と同軸になる位置に位置決めする。この後、工具保持部59をZ軸方向後側の工具交換位置に移動させることで、工具保持部59に保持された次工程工具T2が主軸2の工具装着孔に装着される。
ついで、工具保持部59のロック板59cをアンロック状態にした後、工具保持部59をX軸方向左側のアプローチ位置に移動させる。これにより、次工程工具T2が工具保持部59から主軸2に引き渡され、当該次工程工具T2が主軸2に装着される。この後、工具保持部59をY軸方向上側に移動させて待機位置に戻す(図2参照)。以上の動作により、主軸2に装着された使用済み工具T2を次工程工具T2に交換する工具交換動作が完了する。尚、工具交換動作が完了した後は、シャッタ駆動部102により前記開閉シャッタ13を閉位置に戻す。これにより、第1開口部61eが開閉シャッタ13により閉じられ、加工室Aと長尺工具ストッカ8側の空間とが完全に遮断される。
[段取り動作]
次に、図2、図7及び図8を参照して、長尺工具交換装置5の工具搬送機構50により実行される段取り動作の詳細を説明する。段取り動作の実行に際しては、先ず、制御装置100において、主操作盤103から受信した操作信号を基に、長尺工具ストッカ8を構成する3つの工具ポット81のうち、作業者Wが指定した段取り対象となる工具ポット81(搬出工具T2が収納された工具ポット81)が特定される。そして、工具ポット81の特定が完了すると、工具保持部59を、前記待機位置(図2参照)から、X軸方向右側に移動させて、前記特定された工具ポット81のアプローチ位置の上方に移動させた後、工具保持部59をY軸方向下側のアプローチ位置まで移動させ、この後、当該工具ポット81に対して設定されたX軸右方向のストッカ位置(図7参照)に移動させる。これにより、係合板59bの係合部59aに段取り対象の工具T2が入り込み、工具保持部59のロック板59cをロック状態にすることで、工具保持部59に段取り対象の搬出工具T2が保持される。ついで、工具保持部59をZ軸方向前側に移動させることで、当該工具ポット81から搬出工具T2が引き抜かれる。
ついで、可動扉64の天井側扉部64bに設けられた開閉シャッタ14を開位置に移動させることで、天井側扉部64bに形成された第2開口部64cを開いた後(図8参照)、工具保持部59を前記ストッカ位置(図7参照)から前記第2開口部64cの直下に位置する作業用位置(図8参照)の上方まで移動させた後、第2開口部64cを通して、作業用位置まで降下させる。
尚、この工具保持部59の作業用位置への移動が完了するまでは、制御装置100による制御の下、開閉扉64は不図示のロック装置により開放不能にロックされている。工具保持部59の作業用位置への移動が完了した後は、制御装置100よりこのロック装置のロックが解除される。これにより、作業者Wは可動扉64を開方向に移動させて、作業用位置に移動した工具保持部59に対して作業可能になる(図10参照)。可動扉64の天井側扉部64bに形成された第2開口部64cは、上述の図3に示すようにZ軸方向後側が開かれているので、開閉扉64を前側にスライドさせて開く際に天井側扉部64bと工具搬送機構50の昇降スライダ58とが干渉することはない。
作業者Wは、作業用位置に移動した工具保持部59から段取り対象である搬出工具T2を取外して、新たな工具T2を工具保持部59に装着することができる。そして、作業者Wが工具保持部59への新たな工具T2の装着を完了して段取り実行ボタン104aを押すと、工具搬送機構50による段取り動作(工具交換動作)が再開される。
再開された段取り動作では、工具保持部59を、前記搬出工具T2が収容されていた工具ポット81(前記制御装置100が特定した工具ポット81)の前側に移動させる。そしてこの状態で、工具保持部59をZ軸方向後側のストッカ位置まで移動させた後、工具保持部59のロック板59cをアンロック状態にし、ついで、工具保持部59をX軸方向左側のアプローチ位置に移動させる。これにより、新たな工具T2が工具保持部59から工具ポット81に引き渡され、当該新たな工具T2が工具ポット81に収容される。以上の動作により、搬出対象の工具T2を新たな工具T2と交換する段取り動作が完了する。尚、段取り対象となる工具T2が複数存在する場合には、上述した段取り動作を各工具T2ごとに実行すればよい。
作業者Wが段取り作業を終えて、主操作盤103にて段取りモードの終了操作(例えば、自動運転モードへの切り替え操作)を行うと、この操作信号が主操作盤103から制御装置100に送信される。制御装置100では、段取りモードの終了操作信号を受信すると、工具搬送機構50のXY移動アクチュエータMxyを駆動して工具保持部59を待機位置に戻す。
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、本実施形態では、工作機械1は、工具T2を着脱可能に保持する工具保持部59を有していて所定経路に沿って該工具保持部59を移動させる工具搬送機構50を備えている。そして、工具搬送機構50は、工具保持部59を、少なくとも、工具交換位置とストッカ位置と作業用位置とに移動可能に構成されている。この作業用位置は、作業者Wが、工作機械1の右側(機外の一例)に設けられた台座12の上面(所定の作業領域)から工具保持部59に対して工具T2を着脱可能な位置とされている。
斯くして、作業者Wは、長尺工具ストッカ8に直接アクセスしなくても、制御装置100による制御の下、工具搬送機構50の工具保持部59を作業用位置に移動させて、当該工具保持部59に対して工具T2の着脱作業を行うだけで、長尺工具ストッカ8に対する工具T2の段取り作業を完了させることができる(図10参照)。よって、作業者Wは、工作機械1の加工室A内に立ち入ったり、工作機械1の上面に上がったりすることなく、機外から工具T2の段取り作業を容易に且つ安全に行うことができる。
また、本実施形態では、長尺工具ストッカ8は、加工室Aを囲む第1カバー部61の外側に設けられている。具体的には、長尺工具ストッカ8は、加工室Aの上側を覆う天井カバー61a上に設けられている。
このような構成により、加工室A内にてワークの加工中に飛散したクーラント液や切屑が長尺工具ストッカ8内の工具T2に付着するのを防止することができる。よって、工具T2を常に清潔な状態に維持して、主軸2への工具T2の装着不良やワークの切削不良といった問題を回避することができる。また、長尺工具ストッカ8を天井カバー61a上に配置したことで安全対策に要するコストを低減することができる。すなわち、長尺工具ストッカ8を例えば作業者Wと同じフロアに設置した場合、作業者Wが誤って長尺工具ストッカ8が設置される領域内に侵入しないように、当該領域を囲む安全柵を設けたり、侵入検知用の人検知センサを設けたりする必要があるが、そもそも作業者Wが立ち入る可能性が低い工作機械1の天井カバー61a上に長尺工具ストッカ8を配置したので、このような安全対策に要するコストを削減することができる。
また、本実施形態では、天井カバー61aには、工具搬送機構50の工具保持部59が工具交換位置に移動する際に通過する第1開口部61eが形成されている。また、天井側扉部64bには、工具搬送機構50の工具保持部59が作業用位置に移動する際に通過する第2開口部64cが形成されている。
この構成によれば、長尺工具ストッカ8を天井カバー61a上に配設した状態での工具保持部59の移動経路(工具交換位置とストッカ位置と作業用位置とに経由する経路)を確保することができる。
また、本実施形態では、工作機械1は、前記第1開口部61eを開閉する開閉シャッタ13と、前記第2開口部64cを開閉する開閉シャッタ14とを備え、各開閉シャッタ13,14はそれぞれシャッタ駆動部102により開閉駆動される。
斯くして、加工室A内にてワークを加工している間、各開閉シャッタ13,14を駆動して、第1開口部61e及び第2開口部64cをそれぞれ閉じることにより、当該第1開口部61e及び第2開口部64cかを通して切屑やクーラント液飛散するのを防止することができる。
また、本実施形態では、工作機械1の右側の側壁カバー61b(つまり台座12の上面に設定された作業領域に隣接する側壁カバー61b)、及びこれに接続される天井カバー61aに、それぞれ作業用開口部としての右側開口部61c、及び天井側開口部61dが形成され、この右側開口部61c及び天井側開口部61dが可動扉64によって開閉されるように構成されている。
したがって、作業者Wが、重い工具T2を工具搬送機構50の工具保持部59に対して着脱する段取り作業を行う際に、可動扉64を閉位置から前側の開位置に移動させることで、右側開口部61c及び天井側開口部61dを開くことができ(図10参照)、作業者Wは、開いた天井側開口部61dを利用して、クレーン等の巻き上げ装置を用いて当該段取り作業を行うことができる。これにより、重い工具T2を扱う段取り作業の際に、作業者Wに作用する肉体的な負荷を軽減することができる。
また、本実施形態では、加工室Aの左側には標準サイズの工具T1を収容した標準工具ストッカ7が設けられており、前記長尺工具ストッカ8に対して段取り作業を行うための前記作業用位置は、前記工具マガジン71に対して前記主軸2を挟んで反対側(本実施形態では右側)に設定されているので、例えば、一の作業者Wが標準工具ストッカ7である工具マガジン71の工具段取り作業を行い、これと同時に他の一の作業者が長尺工具ストッカ8の工具段取り作業を行うといったことが可能になる。
また、本実施形態では、長尺工具ストッカ8には、標準工具ストッカ7にストックされる工具T1よりも長尺の工具T2がストックされる。一般的に、長尺の工具T2は標準サイズの工具T1に比べて重いので、段取り作業時の作業者Wに対する肉体的負荷も高くなる。本実施形態の工作機械1によれば、このような長尺の工具T2の段取り作業を行う場合であっても、長尺工具ストッカ8に対して直接作業することなく、工具搬送機構50の工具保持部59を作業用位置に移動させて、当該工具保持部59に対して工具T2の着脱作業を行うことで、当該段取り作業を行うことができるので、段取り作業時に作業者Wに作用する肉体的な負荷を軽減させることができる。
(実施形態2)
図11は、実施形態2を示している。この実施形態では、工具搬送機構50の工具保持部59を工具交換位置に位置させる際の主軸2の位置が前記実施形態1とは異なっている。尚、図11では、後述する主軸2の位置に関する説明が理解し易いように、工具搬送機構50の工具保持部59を工具交換位置に位置させた状態と、標準工具交換装置4の工具交換アーム41に工具交換動作(回転動作)を実行させた状態とを重ねて示しているが、実際にはこのような状況は生じ得ない。
この実施形態2では、図11に示すように、工具搬送機構50の工具保持部59が工具交換位置に移動して主軸2との間で工具T2の受け渡しを行う際の当該主軸2の位置と、標準工具交換装置4が工具交換アーム41を介した工具交換動作を実行する際の当該主軸2の位置とが同じ位置に設定されている。
したがって、例えば、標準工具交換装置4の工具交換アーム41により主軸2に装着された使用済み工具T1を抜き取った後、工具搬送機構50の工具保持部59を工具交換位置に移動して次工程工具T2を主軸2に装着する際に、主軸2の位置を変更する必要がないので、主軸2の移動量(X軸及びY軸の送り駆動機構の送り量)を削減してサイクルタイムを短縮することができる。
(他の実施形態)
上述した各実施形態では、長尺工具ストッカ8は、工作機械1の天井カバー61aの上面に載置された複数の工具ポット81により構成されているが、このような構成に限られるものではない。長尺工具ストッカ8は、例えば、標準工具ストッカ7と同様の回転式の工具マガジンや、複数の工具保持部を無端チェーンによって連結して回動させるように構成されたものでもよい。
また、上記各実施形態では、工具搬送機構50は、工具保持部59を、待機位置と工具交換位置とストッカ位置と作業用位置とに移動可能に構成されているが、待機位置は必ずしも必要ではなく、例えば、ストッカ位置を待機位置として兼用するようにしてもよい。すなわち、工具搬送機構50は、工具保持部59を、少なくとも、工具交換位置とストッカ位置と作業用位置とに移動可能に構成されていればよい。
また、上記各実施形態では、主軸2と工具搬送機構50の工具保持部59との間の工具T2の受け渡し動作を、Z軸シリンダ57による昇降進退ユニット52の前後方向の進退動作によって実現するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、工具保持部59の位置を固定しておき、主軸2の前後方向の進退動作によって実現するようにしてもよい。
同様に、上記各実施形態では、長尺工具ストッカ8における各工具ポット81と工具搬送機構50の工具保持部59との間の工具T2の受け渡し動作を、Z軸シリンダ57による昇降進退ユニット52の前後方向の進退動作によって実現するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、工具保持部59の位置を固定しておき、各工具ポット81を前後方向に進退駆動することにより実現するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、工具T2の段取り作業時における工具保持部59の移動先である作業用位置は、工作機械1の右側開口部61aに隣接する位置に設定されているが、これに限られるものではなく、例えば工作機械1の前側開口部(不図示)に隣接する位置に設定するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、制御装置100は、段取りモードにおいて、工具保持部59が作業用位置に移動するまでは、ロック装置によって可動扉64の開閉を禁止するように構成されているが、これに限られるものではなく、例えば可動扉64のロック装置を廃止してもよい。この場合、作業者Wが、工具T2の段取り作業のために可動扉64を開くタイミングは、工具保持部59が作業用位置に移動した後に限定されず、例えば、工具保持部59が作業用位置に移動する前であってもよい。
また、上記各実施形態では、工作機械1は、横型マシニングセンタにより構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、旋盤、立型マシニングセンタ、又は、旋削機能とミーリング機能とを併せ持つ複合加工装置等で構成されていてもよい。
また、上記各前記実施形態では、工具搬送機構50による工具交換動作及び段取り動作の対象工具を長尺の工具T2としたが、これに限られるものではなく、例えば標準サイズの工具T1として、前記長尺工具ストッカ8に標準サイズの工具T1を収容するようにしてもよい。
上記各実施形態では、長尺工具ストッカ8を、工作機械1の天井カバー61aの上側に配置するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば工作機械1の側方に配置するようにしてもよい。
上記各実施形態における標準工具交換装置4は、工具交換アーム41による工具交換を行う際に、工具マガジン71と主軸2との間に搬送ユニット42を介在させるように構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、搬送ユニット42を廃止して、工具マガジン71と主軸2との間で直接、工具交換アーム41を介した工具交換を実行するようにしてもよい。
尚、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。