JP7353422B1 - 果実片を含有する容器詰飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、経時的な外観変化が抑制された、果実片を含有する容器詰茶飲料を提供することである。【解決手段】本発明によって、(a)表面積が6.0~80cm2である果実片、および、(b)茶葉抽出物を含み、タンニン濃度が0.5~40mg/100g、pHが2.5~4.0である液体、が容器に密封されている容器詰飲料が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、果実片を含有する容器詰飲料に関する。
香りの高い飲料は、気分を落ち着かせたり、リフレッシュしたりするのに適している。茶葉に香りをつけたフレーバーティー(着香茶ともいう)や果物のエキスや皮、ドライフルーツなどをブレンドして作られるフルーツティーは、茶葉の芳香とともに様々な香りを楽しめる飲料として広く飲用されている。特にフルーツティーは、フルーツを原材料としたお茶であり、フルーツの香りだけでなく、ビタミン、ミネラルなどの果実由来の成分も摂取できることから人気を集めている。
フルーツティーを長期保存可能な容器詰飲料として工業的に製造することに関して、種々の報告がある。例えば、特許文献1には、ホップ抽出物を含有することを特徴とするフルーツティーが記載されており、「フルーティーリッチ レモン&ティー」(日東紅茶)という容器詰飲料が市販されている。その他にも、例えば、茶液成分と果実成分を含有する容器詰にごり紅茶飲料であって、不溶性食物繊維量が3.0~30.0mg/100mLであり、有機酸含有量が5.0~50.0mg/100mLであり、且つ、有機酸量に対するリンゴ酸量の比率(リンゴ酸/有機酸)が0.6~1.0であることを特徴とする、容器詰にごり紅茶飲料(特許文献2)、マスカット、桃、オレンジ、ベルガモット、リンゴからなる群から選ばれる1種類又は2種類以上の果汁を含む容器詰非アルコール性果汁含有紅茶飲料であって、ブリックス値が0.4~5.0であり、茶由来ポリフェノール類が10~400ppmであり、且つ果汁由来ポリフェノール類が0.6~150ppmであると共に、甘味料が添加されておらず、カフェイン含有量が100ppm以下であることを特徴とする容器詰非アルコール性果汁含有紅茶飲料(特許文献3)、果汁を10~90質量%含有する果汁入り容器詰紅茶飲料であって、テオガリンを10ppm~24ppm含有し、かつカリウムの含有量に対するテオガリンの比率が0.015~0.100であることを特徴とする果汁入り容器詰紅茶飲料(特許文献4)、特定の色価を有する糖液焙焼物を0.01~1.2重量%含有する、果汁を含む紅茶飲料(特許文献5)などが挙げられる。
特開2021-132639号公報 特開2021-153541号公報 特開2017-046604号公報 特開2011-155892号公報 特開2018-002330号公報
淹れたての紅茶にレモンの輪切りを浮かべたレモンティーが古くから飲用されている。また、オレンジ、リンゴ、モモなど、レモン以外の甘味フルーツを入れたフルーツティーが知られており、最近では、咀嚼できるような大型の果肉を入れたフルーツティーが、ジューススタンドなどの店舗においてテイクアウト式で提供されることが増えている。
しかし、果肉入りのフルーツティーを容器詰飲料として工業的に提供しようとすると、果肉由来の酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)等により茶飲料中のカテキン類が酸化されてテアフラビン等の赤褐色色素に変化したり、テアフラビン類が酸化されてテアルビジン等の褐色色素に変化したりして、製造中や保存中に茶飲料の液色が変化するという問題がある。また、この色素成分が果肉等に沈着して果肉本来の色を損ない、果肉入り飲料の外観上の品質低下を招くことがある。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、果実片を含有する容器詰茶飲料に関して、長期保存したような場合にも、茶飲料の液色の変化が抑制され、果肉の色味が維持できる技術を確立することである。
本発明者らは、茶飲料のpHとタンニン量を特定範囲に制御することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
これに限定されるものではないが、本発明は以下に関する。
[1](a)表面積が6.0~80cmである果実片、および、(b)茶葉抽出物を含み、タンニン濃度が0.5~40mg/100g、pHが2.5~4.0である液体、が容器に密封されている容器詰飲料。
[2] 果実片/液体の重量比が5/95~45/55である、[1]に記載の飲料。
[3] 液体の明度(L値)が50以上である、[1]または[2]に記載の飲料。
[4] 液体と果実片の明度差が15以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5] 液体がカルシウム塩および/または塩化物イオンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6] 常温保存可能な加熱殺菌済飲料である、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7] 液体が紅茶抽出物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
本発明によると、長期保存したような場合にも、茶飲料の液色の変化が抑制され、果肉の色味が維持されるような容器詰飲料が提供される。本発明によれば、経時的な外観変化が抑制された、見た目にも楽しめる大きな果肉入りのフルーツティーが容器詰飲料として提供される。
実験3で使用した果肉片の一つについて、その大きさを示す概略図である(白桃)。 実験4で使用した果肉片の一つについて、その大きさを示す概略図である(パインアップル)。
果実片
本発明の飲料は、果実片を含有する。本発明の飲料に含まれる果実片は、可食性であれば特に制限はないが、後述するように一定の大きさを有する。果実片として用いる果実の種類に特に制限はないが、モモ、サクランボ等の核果果実、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ミカン等の柑橘類果実、ナシ、リンゴ等の仁果果実、キウイフルーツ、マンゴー、パパイヤ、バナナ等の熱帯産果実、イチゴ、パイナップル、メロン、スイカ等の果実的野菜、これら以外のブドウ、ブルーベリー等の果実を挙げることができる。また、本明細書中においては、便宜上、アロエ葉肉も果実として扱う。
本発明の飲料によれば、製造時や保存時における液体部分の色の変化(褐色化)や、果実片への液体部分の着色を抑制することができる。果実由来の酵素であるポリフェノールオキシダーゼが外観変化の要因となる場合があるため、ポリフェノールオキシダーゼを多く含む果実の果実片を含有する飲料は、本発明によって外観変化を効果的に抑制できることから好適な態様の一例である。ポリフェノールオキシダーゼを多く含む果実としては、核果果実、仁果果実、熱帯産果実及び果実的野菜を例示できる。すなわち、果実片として、核果果実、仁果果実、熱帯産果実及び果実的野菜からなる群から選択される果実を1種又は2種以上含む飲料は、本発明の好適な態様である。果実は、生果であってもよいし、凍結及び/又は糖浸漬などの処理がされた加工果実であってもよい。
果実片としてレモンの輪切りを例示する。レモン果実片は、黄色い外果皮(フラべド)、白い綿状の中果皮(アルベド)、可食部にあたるである果肉部分を包む内果皮(じょうのう膜)、果肉の砂じょう(さのう)に分類される部位で構成されている。本発明の飲料に含有される果実片は、保存中等における飲料の色移りが抑制された果実片である。果実片が複数の部位で構成されていると、構成部位の有する色や成分が大きく異なるため、色移りの制御が極めて困難となる。したがって、本発明の効果の享受のしやすさから、果実片は略均質であることが好ましい。略均質な果実片としては、不可食部(果皮や種子など)や可食性の果皮等を含まない、いわゆる果肉であることが好ましい。
本発明の飲料は、咀嚼できる程度に大型の果実片を含有するにも関わらず、長期保存しても果実片の色合いが維持され、飲料の液色からの着色(色移り)が抑制された飲料である。果実片の色合いの経時的変化は、果実片の表面積が大きくなるほど顕在化するため、本発明の対象となるのは、比較的大きな果実片、具体的には表面積が6.0cm以上となるような大きさの果実片を含有する飲料である。本発明による効果を十分に享受できるという観点から、果実片の表面積は8cm以上が好ましく、10cm以上がより好ましく、15cm以上がさらに好ましく、20cm以上が特に好ましい。果実片の表面積の上限は80cm程度であり、75cm以下が好ましく、70cm以下がより好ましく、65cm以下がさらに好ましく、60cm以下が特に好ましい。
本発明の果実片入り飲料は、長期保存(例えば、常温で6ヶ月間保存)しても果実片の色合いが維持されており、果実片の美味しそうな外観が視認できる飲料である。美味しそうな果実片の外観が視認できる飲料として、後述するような液体と果実片の明度差が15以上の飲料を例示できる。果実片の明度は、反射式の分光色差計で測定することができる。果実片の表面部分に凹凸があると、明度が小さくなる傾向があり、液体との明度差が大きくなる。表面部分に凹凸のある果実片は効果の顕著さから好適な態様な一例である。ここで、表面部分に凹凸のある果実片としては、切断面を有する果実片が例示できる。具体的には、角切りやくし形などにカットされた果実片が挙げられる。
本発明に係る容器詰飲料においては、果実片を咀嚼した際の噛みごたえや飲みやすさ、飲料内に存在する果実片の色合いの維持のし易さなどから、固形片/液体の重量比は、5/95~45/55が好ましい。固形片/液体の重量比は10/90~40/60がより好ましく、15/85~35/65がさらに好ましい。
液体(内容液)
本発明は、上述の果実片が、茶葉抽出物を含む液体、すなわち茶飲料とともに容器に充填されている。ここで、本発明でいう茶飲料とは、Camellia属の茶葉抽出物を茶原料として含み、液体として飲用に供されるものをいう。茶葉抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、植物の種類に応じて公知の方法を採用することができる。
Camellia属の茶葉としては、例えば、C. sinensis var. sinensis(やぶきた種を含む)、C. sinensis var. assamica等のCamellia sinensisおよびそれらの雑種が挙げられ、不発酵茶に分類される茶葉(例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等)や、発酵茶(例えば、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉)及び半発酵茶(例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等のウーロン茶葉)に分類される茶葉のいずれも用いることができる。また茶葉は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、茶葉の茶品種及び採取時期は特に限定されず、また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。
本発明によれば、製造時や保存時における液色の変化(例えば、褐色や黒色などへの変色)が効果的に抑制される。液色が変化する原因としては、ポリフェノールオキシダーゼなどの果実由来の酵素、鉄分によるカテキン類の酸化などが考えられるところ、本発明では、液色の変化を抑制するために、内容液のタンニン濃度とpHを所定範囲内とすることが重要である。
本発明の飲料の液体のタンニン濃度は、40mg/100ml以下である。タンニンが上記範囲を超える濃度であると、pHを所定範囲に設定したとしても液色の褐色化を抑制できないことがある。タンニン濃度は酒石酸鉄を用いた比色定量法により定量できるが、35mg/100ml以下であることが好ましく、30mg/100ml以下であることがさらに好ましく、25mg/100ml以下であることが特に好ましい。タンニン濃度の下限値は、茶飲料としての香味の観点から0.5mg/100ml以上であり、1.0mg/100ml以上が好ましく、1.5mg/100ml以上がより好ましい。なお、果実には低分子のタンニン系色素が含まれている場合があり、これらの色素が飲料液に溶出することがある。したがって、本発明において飲料を構成する液体に含まれるタンニンの量は、茶抽出物由来のタンニンだけでなく、液体に溶出した果実由来のタンニン系色素の総量となる。
また、本発明に係る容器詰飲料は、20℃における液体のpHが2.5~4.0である。pHをこの範囲とすることにより、テアフラビン等に含まれるトロポロン構造のOがOHとなるため、液色が赤色や黒色を呈することや、果実片が赤色や黒色に着色されることを抑制することができる。20℃における液体のpHは、3.0~4.0がより好ましく、3.2~4.0がさらに好ましい。なお、pHは、20℃に温度調整をしてpHメーターにより測定するものとする。
液体のpHは、酸味料などを用いて調整することができる。酸味料としては、食品に使用可能な酸味料であれば特に制限されない。例えば、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等を用いることができる。
本発明に係る容器詰飲料は、茶と果実の風味を楽しむことができるフルーツティーであり、液体の酸度が一定範囲にあるとフルーツティーの味わいが特に好ましいものとなる。すなわち、一つの態様において、本発明に係る飲料の酸度は、クエン酸酸度を指標として0.02g/100ml以上が好ましく、0.05g/100ml以上であることがより好ましい。また、クエン酸酸度の上限は0.35g/100ml以下が好ましく、0.30g/100ml以下であることがより好ましい。ここで、クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表される数値であり、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
タンニン濃度とpHが所定範囲に制御された本発明に係る容器詰飲料は、常温で長期保存した場合にも液色と果実片の色合いとが維持されるため、優れた香味や食感を楽しめるだけでなく、見た目も果実片が美味しそうに視認できる飲料となる。具体的に、容器詰飲料を構成する液体の明度(L値)が50以上であると、美味しそうな外観を備えたフルーツティーとなるため好ましく、明度(L値)は60以上であることがより好ましく、70以上であることがさらに好ましい。ここで、液体の明度(L値)は透過式の分光色差計で測定することができる。
また、果実片が美味しそうに視認できる飲料として、別の態様では、液体と果実片の明度差が15以上の飲料を挙げられる。通常、液体に含まれるタンニン系色素による果実片表面の変色(着色)が抑制されると、明度差が15以上ある状態となる。液体と果実片の明度差は20以上あることがより好ましく、25以上あることがさらに好ましい。ここで、明度差ΔLは、液体の透過式測定における明度(L)から果実片の反射式測定における明度(L)を減じた値である(ΔL=L-L)。
本発明の飲料を構成する液体は、0.001~0.1g/100mlのカルシウムを含有することが好ましい。本発明の果実含有飲料は、保存時や輸送時に果実片の形崩れが起こったり、表面部分がささくれ立ったりして、微細な果実片が発生することがある。この微細な果実片は、飲料の濁りの原因となる。上記範囲のカルシウムを含有させることにより、果実片の軟化を抑制することができるので、果実片の食感の維持や液体の明度を維持しやすくなる。液体のより好ましいカルシウム含有量は0.005~0.09g/100mlであり、さらに好ましくは0.01~0.08g/100ml程度である。液体に含有されるカルシウムは、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム等、食品に許容される添加物を用いて含有量を調整することができる。果汁や乳性分に含まれるカルシウム分でも良いが、カルシウム含有量の制御のしやすさからカルシウム塩が好適に用いられる。カルシウムはポリフェノールと反応して濁りの原因になることが知られているが、本発明の飲料は、タンニンが低濃度に抑えられているため、カルシウムを添加した場合にも濁りが発生しにくいという利点がある。
さらに、本発明の飲料に係る液体には、0.0001~0.05g/100mlの塩化物イオンが含まれることが好ましく、塩化物イオン濃度は、0.0005~0.01g/100mlがより好ましく、0.001~0.005g/100mlがさらに好ましい。上記範囲の塩化物イオンを含有させることにより、果実由来の酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)反応を低減させることができるので、より一層、液色の変化を抑制することができる。塩化物イオンは、塩化物の形態で飲料に配合することができ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物の他、塩化第二鉄、塩化アンモニウム等を挙げることができる。中でも、アルカリ金属の塩化物及びアルカリ土類金属の塩化物から選択される少なくとも1種が好ましい。特に、カルシウムを同時に配合できる点から塩化カルシウムが好適に用いられる。
本発明の飲料に係る液体には、上記成分以外に、必要に応じて、飲料調製に用いることができる各種成分が含まれていてもよい(例えば、『最新・ソフトドリンクス』,全国清涼飲料工業会他監修,光琳,2003年を参照)。液色の変化を抑制するという観点からは、ビタミンC等の酸化防止剤を配合することが好ましい。その他、砂糖、果糖などの糖類、甘味料、香料、色素成分、保存料、調味料、ビタミン、カルシウム、アミノ酸等を含有してもよい。
容器詰飲料
本発明の飲料は、上述の果実片と液体とが密封容器に収容されてなる容器詰飲料である。容器の材質は、飲料として通常使用されている紙、樹脂(プラスチック)、金属、ガラスなどいずれのものを用いてもよい。樹脂製などの酸素透過性容器は、本発明の課題が顕著であり、本発明の効果を享受しやすいことから、好ましい態様の一例である。具体的には、樹脂製フィルムから構成される袋状容器(本明細書中、パウチとも表記する)が挙げられる。かかる容器は、好ましくは、温度30℃、相対湿度80%の条件下における容器の壁面全体での酸素透過度の平均値(以下「平均酸素透過度」という)が、5cc/m・day・atm以下である。このような容器を構成し得る樹脂フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、エチレンビニルアルコール樹脂をポリエチレン等に積層したフィルム、ポリアミドまたはアルミニウム薄膜をポリエチレン等に積層したフィルム、セラミックスや酸化アルミニウム等の蒸着層を有する積層フィルム、ポリアクリル酸系樹脂を塗工した積層フィルムをあげることができる。酸素透過性容器は特に限定されないが、約0.05mm~1mm(例えば、約0.1mm)の平均厚さを有する。
本発明の飲料は、常温で長期保存した場合にも果実片と液体部分の色の変化が抑制されている。したがって、常温保存可能な加熱殺菌処理(例えば、F値4以上の加熱条件)が施された加熱殺菌済飲料は、本発明の好適な態様の一例である。
本発明に係る容器詰飲料は、そのままRTD飲料(RTD=Ready To Drink:蓋を開けてすぐ飲める容器詰飲料)として飲用してもよいが、RTS飲料(RTS=Ready To Serve)として氷や炭酸水などと混合して飲用してもよい。なお、本発明に係る容器詰飲料は、比較的大きな可食性固形片を含有するため、食品表示上、果肉入飲食品などと表記される場合がある。
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
飲料の分析
(1)pHの測定
飲料中の液体100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をしてpHメーター(堀場製作所製、HORIBA pHメーターF21)を用いて測定した。
(2)タンニンの測定
タンニンの定量は、阿南他(茶業研究報告71(1990)43-74)による酒石酸鉄法に準じて実施した。
(3)明度(L値)の測定
分光色差計(日本電色工業社製、SE6000)を用いて明度(L値)を測定した。飲料の液体部は透過式、果実片は反射式で測定した。
実験1.リンゴ果肉入り紅茶飲料(1)
紅茶葉(ダージリン)10gに、1000gの純水を加え、55℃で5分間抽出した。得られた抽出液を20℃まで冷却した後、遠心分離機を用いて微細濾過し、濾過して得られた抽出液に純水を加えて5000gとなるようにメスアップした。この紅茶抽出液に、100gあたりの濃度が、ショ糖9.0g、クエン酸0.02g、アスコルビン酸0.03gとなるように糖類や酸味料を添加し、pHが5.2となるように重曹を添加した後、UHT殺菌機を用いて136℃で30秒殺菌して紅茶液を製造した。
また、果実片として、20°の糖液に浸漬処理された缶詰リンゴを、5mm角または10mm角に切断してダイス状のリンゴ片を調製した(果実片1つあたりの表面積:約0.75cmまたは約6.0cm)。
このように調製したリンゴ片と紅茶液を、リンゴ片/紅茶液の重量比が25/75となるようにカップ状のプラスチック容器(上部口径6.7cm、底部直径5.3cm、厚さ0.7mm)に無菌充填し、プラスチックフィルム(厚さ0.1mm)によって上部開口部を封止した上で加熱殺菌し、容器詰飲料を製造した。
このように製造した加熱殺菌済の容器詰飲料について、1ヶ月間常温で保存した後の飲料(液体部及びリンゴ片)の色調を観察した。サンプル1-1(5mm角のリンゴ片を含有)およびサンプル1-2(10mm角のリンゴ片を含有)のいずれも、液色が泥状色(muddy)に濁っているだけでなく、リンゴ片が褐色(brown)に着色してしまっており、製造直後の美味しそうで贅沢な外観が大きく損なわれてしまっていた。
サンプル1-1のように果実片が小さく、ストローを用いて飲用できるような場合は飲用時に外観があまり意識されないが、サンプル1-2のように果実片が大きくなるとストローでの飲用は難しいため、容器の上部開口部のフィルムを剥がして開口部から飲用することになる。その場合、容器内の液色を確認し、中にあるリンゴ片をスプーン等で掬いながら飲食することになるため、飲料容器内にある液体および果実片の見た目(色)が重要視される。すなわち、果実片を含有するフルーツティーを容器詰飲料として商品化する場合、果実片が大きくなる程、外観変化を抑制することが重要であると考えられた。
Figure 0007353422000001
実験2.リンゴ果肉入り紅茶飲料(2)
クエン酸の添加量を変えて液体のpHを表2に示すように調整した以外は、実験1のサンプル1-2と同様にして10mm角リンゴ片入り紅茶飲料を製造した(果実片1つあたりの表面積:約6.0cm、果実片/液体の重量比:25/75)。
実験1と同様にして1ヶ月保存後の飲料の色調を観察した。結果を表2に示すが、pHを2.5~4.0に調整することで、大型の果肉片を含有する紅茶飲料の色調を大きく改善でき、美味しそうな外観を有する容器詰茶飲料を実際に製造することができた。すなわち、本発明に係る容器詰茶飲料は、長期保存した場合にも、液体の濁りが少なく、紅茶の色調である黄褐色(brownish yellow)が維持されており、また、果実片についても、色調変化が少なく、ストロー色(straw)が維持されていた。
Figure 0007353422000002
実験3.桃果肉入り紅茶飲料
表3に示す濃度の紅茶抽出物エキス(三井農林製)、ショ糖9.5g/100g、無水クエン酸0.12g/100g、リンゴ酸0.03g/100g、L-アスコルビン酸ナトリウム0.05g/100g、塩化カルシウム0.1g/100g、香料0.2g/100gと、純水(残量)を混合して紅茶液を製造した。
また、果実片として20°の糖液に浸透処理された缶詰の白桃果実を用いた。この実験で用いた白桃の果実片は図1に示す形状を有しており、果実片の表面積は約17.5cmであった。
白桃果実片7個(計50g)と紅茶液150gとを樹脂製パウチ容器(厚さ0.1mm)に入れた後、F値が4以上となる条件でレトルト殺菌し、果実片入り紅茶飲料を調製した(果実片/液体の重量比:25/75、液体のpH:約3.6)。
このパウチ入り紅茶飲料を常温で2ヶ月保存した後の飲料の色調を5名のパネルで観察し、果実片の色調については、色名見本と照らし合わせて一番近い色をパネルが合議の上で選択した。容器詰飲料の内容液については、サンプル3-9がわずかに濁っていたが、他のサンプルは製造直後の色合いとほぼ変化がみられなかった。一方、果実片はタンニン濃度によって着色の程度が異なっており、タンニン濃度が高くなるに伴って着色の程度も大きくなった。サンプル3-7のストロー色(straw)やサンプル3-8のオーカー色(ocher)までは果実片として魅力ある色合いであるといえるが、サンプル3-9のオリーブ色(olive)については原料の白桃からの色調変化が大きく、商品価値を損なうと判断された。この実験結果より、常温保存される果実片入り飲料のタンニン濃度は、40mg/100g以下が好ましいことが示唆された。
また、サンプル3-1(タンニン濃度:0.17mg/100g)は、果実片の色調は保持されていたものの、茶由来のコクや苦味が知覚され難く、フルーツティーとしての美味しさが十分とはいえなかった。
Figure 0007353422000003
実験3のサンプル3-4について、製造直後(保存前)及び2ヶ月常温保存後の液体部及び果実片のL値を測定した。結果を表4に示す。保存前後で液体部、果肉部に大きな色調の変化はなく、果実片の美味しそうな外観が視認できるフルーツティーであった。本発明によって製造したフルーツティーは、飲用した場合に、紅茶と果実の両方について風味と食感を楽しめるものであり、本発明によって極めて嗜好性の高い容器詰茶飲料を製造することができた。
Figure 0007353422000004
実験4.パインアップル果肉入り紅茶飲料
果実片として、図2に示す形状のパイナップル片(21°の糖液に浸漬処理された缶詰、果実片一つあたりの表面積:約24cm)5個を用いた以外は、実験3のサンプル3-4と同様にしてパウチ入り紅茶飲料を調製した(果実片/液体の重量比:25/75、液体のpH:約3.6、液体のタンニン濃度:約1.7mg/100g)。
実験3と同様に、保存前後における色調(L値)を測定した。表5に結果を示す。果実片がパインアップルの場合にも、本発明によって、保存前後における色調の変化が効果的に抑制されていた。
Figure 0007353422000005

Claims (7)

  1. (a)表面積が6.0~80cmである果実片、および、
    (b)茶葉抽出物を含み、タンニン濃度が0.5~40mg/100g、pHが2.5~4.0である液体、
    が容器に密封されている容器詰飲料。
  2. 果実片/液体の重量比が5/95~45/55である、請求項1に記載の飲料。
  3. 液体の明度(L値)が50以上である、請求項1または2に記載の飲料。
  4. 液体と果実片の明度差が15以上である、請求項1または2に記載の飲料。
  5. 液体がカルシウム塩および/または塩化物イオンを含む、請求項1または2に記載の飲料。
  6. 常温保存可能な加熱殺菌済飲料である、請求項1または2に記載の飲料。
  7. 液体が紅茶抽出物を含む、請求項1または2に記載の飲料。
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